ローズィー・シン(H. Rosie Xing)(米)

2016年10月27日掲載。

ワンポイント:2014年、研究公正局がねつ造・改ざんで3年間の締め出し処分をした米国・シカゴ大学・助教授。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文
7.白楽の感想
8.主要情報源
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●1.【概略】

3021263ローズィー・シン(Hongmei Rosie Xing、写真出典)は、米国・シカゴ大学 (University of Chicago)・助教授で、専門は病理学(がん研究)である。医師ではない。

2014年12月17日(38歳?)、研究公正局は、シンのねつ造・改ざんを発表し、3年間の締め出し処分を科した。

事件の詳細は不明である。

ct-uofc-faked-experiments-0610-biz-20160609-001シカゴ大学・コッブ門(Cobb Gate at the University of Chicago is seen April 27, 2016. (Terrence Antonio James / Chicago Tribune))。写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:カナダ
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:米国のスローン・ケタリング記念癌研究所
  • 男女:女性
  • 生年月日:不明。仮に1976年1月1日生まれとする。1994年の大学入学時を18歳と仮定した
  • 現在の年齢:48 歳?
  • 分野:病理学(がん研究)
  • 最初の撤回論文発表:2004年(28歳?)
  • 発覚年:2012年9月(36歳?)
  • 発覚時地位:シカゴ大学・助教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者はネカト・ハンターのクレア・フランシス(Clare Francis)。シカゴ大学に公益通報した
  • ステップ2(メディア):
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①シカゴ大学・調査委員会。②研究公正局
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:少なくとも1報。撤回論文数は2報ある。他にも疑念論文が指摘されている
  • 時期:研究キャリアの初期から
  • 結末:辞職(解雇?)

●2.【経歴と経過】

  • 生年月日:不明。仮に1976年1月1日生まれとする。1994年の大学入学時を18歳と仮定した
  • 1994年 – 1998年(18-22歳?):カナダのマギル大学(McGill University)を卒業
  • 1999年?(23歳?):米国・ニューヨークのスローン・ケタリング記念癌研究所(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center)のリチャード・コレスニック(Richard N. Kolesnick)研究室で研究博士号(PhD)を取得した
  • 2006年?(30歳?):米国・シカゴ大学 (University of Chicago)・病理学科・助教授
  • 2012年9月(36歳?):不正研究が発覚する。シカゴ大学が調査開始。その後、研究公正局も調査開始
  • 2013年11月27日(37歳?):電子メールがあて先不明になって戻ってきたから、この日以前に、米国・シカゴ大学を辞職(解雇?)
  • 2014年12月17日(38歳?):研究公正局は、シンのねつ造・改ざんを発表し、3年間の締め出し処分を科した。

xing写真出典

●5.【不正発覚の経緯と内容】

kolesnick-richardローズィー・シンはカナダのマギル大学(McGill University)を卒業し、米国・ニューヨークのスローン・ケタリング記念癌研究所(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center)のリチャード・コレスニック(Richard N. Kolesnick、写真出典)の研究室で研究博士号(PhD)を取得した。

2006年頃(30歳?)、米国・シカゴ大学 (University of Chicago)・病理学科・助教授になった。

2012年9月(36歳?)、著名なネカト・ハンターのクレア・フランシス(Clare Francis)が論文不正を見つけ、シカゴ大学に公益通報した。

シカゴ大学は調査委員会を設置し調査した。シカゴ大学の調査終了後、研究公正局も調査した。

2014年12月17日(38歳?)、研究公正局は、ローズィー・シン(H. Rosie Xing)の1出版論文(以下)にデータねつ造・改ざんがあったと発表した(【主要情報源】①)。

研究公正局は上記の「2010年のMol Cancer Ther.」論文の図1D, 2Aと 補助的な図1B、1Cの画像にねつ造・改ざんがあったとした。但し、ローズィー・シンは不正を認めていない。

図1Dのねつ造・改ざんを以下に示そう。

パブピアでも不正を指摘していた。以下は、パブピアの「Peer 2:( July 7th, 2015 10:22pm UTC )」を図を引用する。なお、最初の指摘は「Unregistered Submission: ( November 27th, 2013 12:46pm UTC )」だった。

オレンジ色に囲った5・10と60・90のウェスタン・ブロット画像が全く同じである(つまり、ねつ造)。
duxg1o0なお、研究公正局は指摘してないが、ネカト・ハンターのポール・ブルックスは「2011年のMol Cancer Ther.」論文(以下)の画像もねつ造・改ざんだと指摘している。

図2Dと図5Bは別の図なのに、以下のように同じ画像を少し変えて使用(つまり、ねつ造)した。同じ画像だという証拠として、ポール・ブルックスが画像の特徴を矢印で示している(出典)。
gfncdb7

●6.【論文数と撤回論文】

2016年10月26日現在、パブメド(PubMed)で、ローズィー・シン(H. Rosie Xing)の論文を「H. Rosie Xing [Author]」で検索すると、2003~2014年の12年間の14論文がヒットした。

2016年10月26日現在、2論文が撤回されている。1つ目は、研究公正局が指摘した「2010年のMol Cancer Ther.」論文で2016年2月に撤回している。2つ目は、2004年のスローン・ケタリング記念癌研究所時代の論文で、2013年に撤回している。

  1. Pharmacologic inactivation of kinase suppressor of Ras1 sensitizes epidermal growth factor receptor and oncogenic Ras-dependent tumors to ionizing radiation treatment.
    Xiao H, Zhang Q, Shen J, Bindokas V, Xing HR.
    Mol Cancer Ther. 2010 Oct;9(10):2724-36. doi: 10.1158/1535-7163.MCT-10-0124. Epub 2010 Sep 28. Retraction in: Mol Cancer Ther. 2016 Feb;15(2):343-4.
    PMID:20876746
  2. The kinase activity of kinase suppressor of Ras1 (KSR1) is independent of bound MEK.
    Xing HR, Campodonico L, Kolesnick R.
    J Biol Chem. 2004 Jun 18;279(25):26210-4. Epub 2004 Apr 13. Retraction in: J Biol Chem. 2013 Nov 22;288(47):34052.
    PMID:15084597

●7.【白楽の感想】

《1》詳細は不明

この事件の詳細は不明です。

ローズィー・シンは、どうしてデータねつ造・改ざんをしたのか? 証拠が明白なのに不正を認めないのはなぜか?(損なのか?) ローズィー・シンの個人生活は? 研究機関はどんな改善策を施したのか? 事例分析し、研究ネカトシステムの改善につながる点、学べる点は何か?

全くわかりません。

《2》全キャリアでの調査が必要

シカゴ大学・助教授の時のネカトだから、シカゴ大学が調査した。それはよい。

しかし、それ以前に所属したスローン・ケタリング記念癌研究所で、2000-2005年の6年間にリチャード・コレスニック(Richard N. Kolesnick)の指導下で6論文を出版している。そのうちの2004年に出版した論文が2013年に撤回されている。

スローン・ケタリング記念癌研究所の論文にもネカトがたくさんあるのではないだろうか? 博士論文もネカトだろう。

ところが、スローン・ケタリング記念癌研究所は調査していない。スローン・ケタリング記念癌研究所が調査しないから、研究公正局も調査しない。なんかヘン。

研究ネカトでクロの場合、研究者の全キャリアでの調査が必要である。

●8.【主要情報源】

① 2014年12月17日、研究公正局の報告:NOT-OD-15-043: Findings of Research Misconduct
② 2013年11月23日以降のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)の「撤回監視(Retraction Watch)」記事群:You searched for H. Rosie Xing – Retraction Watch at Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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