2019年2月8日掲載
ワンポイント:ラクイラ大学(University of L’Aquila)のオルランディ教授(55歳)が2017年と2018年に学術誌「IEEE Transactions on Electromagnetic Compatibility」に出版した26論文が、2018年11月20日に撤回された。論文が撤回される少し前まで、オルランディ教授はその学術誌の編集長だった。撤回理由は査読の問題とあるだけで、それ以上は不明である。2019年2月6日現在、トータル26論文が撤回され、「撤回論文数」世界ランキング、(保存版)の第21位(22・23位と同数)である(The Retraction Watch Leaderboard ? Retraction Watch、(保存版))。国民の損害額(推定)は2億9,200万円。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】
アントニオ・オルランディ(Antonio Orlandi、写真出典)は、イタリアのラクイラ大学(Università degli Studi dell’Aquila、英語: University of L’Aquila)・教授で、専門は電気工学(雷保護システムと電力供給システムの電磁両立性)である。
2018年11月20日(55歳)、オルランディ教授の2017年と2018年の26論文が1つの学術誌「IEEE Transactions on Electromagnetic Compatibility」から撤回された。
撤回理由は査読の問題とあるだけで、それ以上の内容は不明である。
編集長で自分の論文出版の査読プロセスに問題があったということなので、白楽の推定では、査読書類をねつ造し、実質上、査読しないで論文を掲載した、と思われる。
不正発覚の経緯は不明である。
2019年2月6日現在、トータル26論文が撤回され、「撤回論文数」世界ランキング、(保存版)の第21位(22・23位と同数)である(The Retraction Watch Leaderboard ? Retraction Watch、(保存版))。
ラクイラ大学(Università degli Studi dell’Aquila、英語: University of L’Aquila)・工学部。写真出典LIAP [CC BY 3.0], from Wikimedia Commons
- 国:イタリア
- 成長国:イタリア
- 研究博士号(PhD)取得:ローマバイオ医療大学
- 男女:男性
- 生年月日:1963年、イタリアのミラノで生まれる。仮に、1963年1月1日生まれとする
- 現在の年齢:61歳?
- 分野:電気工学
- 最初の不正論文発表:2017年(54歳)
- 発覚年:2018年(55歳)
- 発覚時地位:ラクイラ大学・教授
- ステップ1(発覚):第一次追及者は不明
- ステップ2(メディア): 「撤回監視(Retraction Watch)」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌・編集部。②ラクイラ大学は調査していない。
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。というか、調査していない
- 大学の透明性:調査なし・隠蔽(✖)
- 不正:査読プロセス
- 不正論文数:26報撤回
- 時期:研究キャリアの後期
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
- 処分:大学の処分なし。学術誌は編集長解任
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は2億9,200万円。内訳 ↓
- ①研究者になるまで5千万円。研究者を辞めていないので損害額は0円。
- ②大学・研究機関が研究者にかけた経費(給与・学内研究費・施設費など)は年間4500万円。撤回した論文は2017年・2018年の2年間い発表した。2年分として、損害額は9,000万円。
- ③外部研究費。外部研究費の助成を受けた研究でネカトをした場合、その研究費が無駄になる。外部研究費の額が不明。額は、②に含めるとした。
- ④調査経費。第一次追及者の調査費用は100万円。大学・研究機関の調査費用は1件1,200万円だが大学は調査していない。学術出版局は1件の学術誌あたり100万円とし、1件だった。小計で200万円
- ⑤裁判経費は2千万円。裁判はなかったので損害額は0円。
- ⑥論文撤回は1報当たり1,000万円、共著者がいなければ100万円。撤回論文は26報で、3報は単著、23報は共著。共著者数を数えていないが10人として、ここはまとめて損害額は1億円。
- ⑦アカハラ・セクハラ。アカハラ・セクハラではないので損害額は0円。
- ⑧研究者の時間の無駄と意欲削減+国民の学術界への不信感の増大は1億円。
- ⑨健康被害:健康被害はないので損害額は0円。
●2.【経歴と経過】
- 生年月日:1963年、イタリアのミラノで生まれる。仮に、1963年1月1日生まれとする
- 1988年(25歳):ローマ大学(University of Rome)で学士号取得:化学
- 1990年9月-1998年10月(27-35歳):ラクイラ大学(University of L’Aquila)・助教授
- 1998年11月-2001年8月(35-38歳):ラクイラ大学(University of L’Aquila)・準教授
- 2001年9月(38歳):ラクイラ大学(University of L’Aquila)・教授
- 2012年(49歳):ローマバイオ医療大学(Università Campus Bio-Medico di Roma)で研究博士号(PhD)を取得
- 2018年11月20日(55歳):26論文が撤回
●3.【動画】
ネカト事件の動画はみつからなかった。
【動画1】
ニュース動画:「アントニオ・オルランディ教授がGoogle Faculty Research Awardを受賞した(Il prof. Antonio Orlandi riceve il Google Faculty Research Award) – YouTube」(イタリア語)1分30秒。
Università degli Studi dell’Aquilaが2018/03/02 に公開
●5.【不正発覚の経緯と内容】
2018年11月20日(55歳)、アントニオ・オルランディ(Antonio Orlandi、写真出典)の2017年と2018年の26論文が1つの学術誌「IEEE Transactions on Electromagnetic Compatibility」から撤回された。
なお、オルランディ教授は、論文撤回される少し前まで、その学術誌の編集長だった。
論文撤回の理由は、「慎重に検討した結果、査読プロセスに問題があり、論文撤回した」と学術誌が述べているが、それ以上、どんな問題だったのか説明していない。
「撤回監視(Retraction Watch)」はオルランディ教授に問いわせたが、返事は得られていない。
白楽の推定では、編集長で自分の論文出版の査読プロセスに問題がったということなら、査読書類をねつ造し、実質上、査読しないで論文を掲載した、と思う。
ネカトを見つけた人は誰なのかも不明である。
2019年2月6日現在、トータル26論文が撤回され、「撤回論文数」世界ランキング、(保存版)の第21位(22・23位と同数)である(The Retraction Watch Leaderboard ? Retraction Watch、(保存版))。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
論文数は300論文以上出版している。パブピアは省略。
撤回論文について、「撤回監視(Retraction Watch)」のデータベースで「Antonio Orlandi」を検索すると、2017年-2018年の26論文が撤回されていた。3報は、アントニオ・オルランディ(Antonio Orlandi)の単著論文である。他の23報は他の共著が2~7人いて、共著者名が異なる論文もあった。
●7.【白楽の感想】
《1》編集長
今回のように、学術誌の編集長が査読プロセスで不正を働いた場合、不正を見つけるのは難しい。
《2》イタリア
正確に調べたわけではないが、イタリアの大学はネカト調査をしないことが多い。どうしてなんだろう?
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●8.【主要情報源】
① 本人のウェブサイト:Antonio Orlandi Homepage
② 2018年11月22日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Engineering prof in Italy earns 26 retractions in one fell swoop – Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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