「セクハラ」:哲学:アヴィタル・ロネル(Avital Ronell)(米)

2019年2月2日掲載

ワンポイント:2017年、ニューヨーク大学(New York University)のロネル教授(65歳)は、物理的なセクハラと言葉によるセクハラを3年間もしていたと、その2年前まで指導していた33歳の元院生(男性)・ニムロッド・ライトマン(Nimrod Reitman)に訴えられた。訴えた被害者は1人である。ロネル教授はセクハラ行為を否定しているが、2年間の停職処分を受けた。なお、加害者のロネル教授は女性でレズビアン(クイア)、そして、被害者の元院生は男性でゲイである。また、ロネル教授はこの分野では世界的に著名な女性研究者ということもあり、一流の学者たちがロネル教授の免責を請う手紙をニューヨーク大学に提出し、物議をかもしている。事件は、現在、裁判中である。国民の損害額(推定)は10億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

アヴィタル・ロネル(Avital Ronell、写真出典)は、ユダヤ人で米国のニューヨーク大学(New York University)・教授で、専門は哲学(ドイツ文学)である。優れた著書をたくさん出版している世界的に著名な学者である。

アヴィタル・ロネルは結婚しておらず、性的嗜好はレズビアン(クイア)である。

2017年9月(65歳)、アヴィタル・ロネルが指導していた元院生(男性)・ニムロッド・ライトマン(Nimrod Reitman)は、3年間にわたり、アヴィタル・ロネルにセクハラ、性的暴行、ストーカー、報復をされていたとニューヨーク大学(New York University)に訴えた。ライトマン元院生は33歳のゲイで、ロネル教授の指導で2015年に、ニューヨーク大学の研究博士号(PhD)を取得し、その後、ハーバード大学の客員研究員になっている。

2018年5月(66歳)、ニューヨーク大学はロネル教授がセクハラをしたと判定し、2018年学年度と2019学年度を停職処分にした。

多くのセクハラ事件は中高年の男性(教授)が若い女性(院生・研究者)をターゲットにしているが、ロネル事件では、男女が逆になっている。珍しいというほどではないが、少ない事件である。

また、ロネル教授はレズビアン(クイア)で被害者の元院生はゲイである。レズビアン(クイア)なのにゲイの異性にセクハラした点も特異である。

なお、ロネル教授はこの分野では世界的に著名な女性研究者のため、加えて、男女が逆になっているためか、加害者のロネル教授を擁護し、被害者の元院生(男性)を非難する言動がたくさんあった。このことも、この事件の特徴である。

つまり、フェミニズム、哲学、文学、歴史で有名な学者であるジュディス・バトラー(Judith Butler)、スラヴォイ・ジジェク(Slavoj Žižek)らが、ロネル教授の学術的貢献の重要性に基づいて、今回のロネル教授の行為は免責されるべきで、かつ、ライトマン元院生が”悪意のある意図”的行動に出たのだと、被害者を批判する手紙を、ニューヨーク大学に送付した。ところが、この加害者擁護の言動が大きく批判されている。

2018年8月16日(66歳)、ライトマン元院生はロネル教授と大学を相手に、数百万ドル(数億円)の訴訟を起こした。

2019年2月1日(66歳)現在、ニューヨーク大学は調査中である。裁判の決着もついていない。ロネル教授は休職中である。

セクハラは犯罪なので、本ブログでは「研究者の犯罪事件」に記述したが、「人文・社会科学・他」の一覧表にもリストした。

ニューヨーク大学(New York University)。写真

  • 国:米国
  • 成長国:米国
  • 研究博士号(PhD)取得:プリンストン大学
  • 男女:女性
  • 生年月日:1952年4月15日
  • 現在の年齢:72歳
  • 分野:哲学(ドイツ文学)
  • 報告された最初のセクハラ:2012年(60歳)
  • 発覚年:2017年(65歳)
  • 発覚時地位:ニューヨーク大学(New York University)・教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は被害者で指導を受けた元院生・ニムロッド・ライトマン(Nimrod Reitman)で、ニューヨーク大学に訴えた
  • ステップ2(メディア):「New York Times」のゾーイ・グリーンバーグ(Zoe Greenberg)記者。追随記事は多数
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①ニューヨーク大学・調査委員会.。②裁判所
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:実名報道だが機関のウェブ公表なし(△)
  • 不正:セクハラ
  • 被害者数:1人の男性
  • 時期:研究キャリアの後期から
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を2年間停職(▽)
  • 処分:2年間の停職
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は10億円(大雑把)。内訳 ↓

  • ④調査経費。第一次追及者の調査費用は100万円。大学・研究機関の調査費用は1件1,200万円。小計で1,300万円
  • ⑤裁判経費は2千万円。
  • ⑦アカハラ・セクハラは、被害者1人当たり1,000万円。1,000万円。
  • ⑧研究者の時間の無駄と意欲削減+国民の学術界への不信感の増大は1億円。
  • ⑩損害額(大雑把):著名な研究者だが研究成果での損害はない。発覚時65歳で大学教授を辞職していないが2年間の停職なので実質上は辞職だろう。データねつ造・改ざんではないので、研究成果上の損害はほとんどない。ただ、研究者の権威・公正・信頼を失墜させ、学術界を腐敗させた。④⑤⑦⑧を含め損害は10億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

主に:HUC-JIR | Faculty & Administration › Faculty

  • 1952年4月15日:外交官の娘として、チェコのプラハで生まれる
  • 1956年(4歳):米国に移住
  • 19xx年(20歳):米国のミドルべリー大学(Middlebury College)で学士号取得
  • 1979年(27歳):プリンストン大学(Princeton University)で研究博士号(PhD)を取得:哲学(ドイツ文学)。博士論文「The Figure of Poetry: Self-reflection in Goethe, Hölderlin, and Kafka」
  • 19xx年(xx歳):フランスのパリで研究
  • 19xx年(44歳):米国のいくつかの大学・教員
  • 1996年(44歳):ニューヨーク大学(New York University)・教授
  • 2012年(60歳):セクハラを始めた
  • 2017年9月(65歳):セクハラが発覚
  • 2018年5月(66歳):ニューヨーク大学から2年間の休職命令
  • 2018年8月16日(66歳):セクハラ裁判

●3.【動画】

【動画1】
事件動画ではない。講演の動画:「アヴィタル・ロネルとジュディス・バトラー:哲学の同時性:2006年1/3(Avital Ronell and Judith Butler. Contemporaneity of Philosophy. 2006 1/3) – YouTube」(英語)7分18秒。
European Graduate School Video Lecturesが2007/04/03 に公開

【動画2】
事件ニュース。但し、画像と音声で動画はない。「世界的に有名な女性教授(ニューヨーク大学)が#MeToo問題に直面している(World renounced female NYU professor is facing her own #MeToo moment) – YouTube」(英語)6分50秒。
807 Newsが2018/08/13 に公開

●4.【日本語の解説】

★2009年5月14日:西山雄二:孤独の雑錯―Intersections of/at Paris

出典 → ココ (保存版)

日本ではまだ知られていないが、アヴィタル・ロネルAvital Ronell(ニューヨーク大学比較文学学科)の人気がフランスの人文業界を席捲している。ロネルはプラハに生まれ、べルリンの解釈学研究所でヤーコプ・タウベスのもとで研鑽を積み、ニューヨーク大学でデリダのゼミを主宰した気鋭の思想家である。フランス語に翻訳されて早くも一年でStupidity〔愚鈍〕がPoints Essaisから文庫化された

★2018年6月12日:ツイート

★2018年8月21日:はてな匿名ダイアリー :フェミニスト哲学者 アヴィタル・ロネルのセクハラ問題について

出典 → ココ、(保存版)

ざっと見た感じなので間違ってるかも。

人物

アヴィダル・ロネルはニューヨーク大学の有名な哲学者で、専門にはフェミニスト哲学や倫理などもある。

事件当時、ロネル60歳、被害者28歳の学生。

この件と関係ないかもだが被害者はゲイでロネルはレズビアン。ロネルは相手と自分のことを “gay man and a queer woman” と言っている。

出来事

2012年の春から、性的接触やキス、ベッドでねる、性的な内容のメールを送る、メールの返事をくれないと一緒に仕事をするのを拒むなど。

被害者は2017年9月にセクハラ、性暴力、ストーキング、報復行為に関する訴状を提出。

訴えに対しロネルは否定。

大学は調査を行いロネルに責任があるとし1年間授業停止とした。

現在もまだ解決してるわけでなく調査途中である。

以下略

★2018年9月5日:The Reverberator:「これはセクハラではなく、ネオリベラリズムだ」 ~ アヴィタル・ロネルのセクシュアルハラスメント問題をめぐる外道どものクィア・ポリティクス

出典 → ココ、(保存版

この文章に事件と加害者アヴィタル・ロネルを擁護した学者たちを詳しく記述している。事件部分だけ引用するが、サイトへのアクセスをオススメする。

ニューヨーク大学のアヴィタル・ロネル教授が学生に対してセクシュアルハラスメントを行ったとして告発された。ロネル教授を訴えたのはNimrod Reitman。当時、Reitmanはロネル教授の下で指導を受けていた大学院生だった。

Reitman側は次のように主張した。ロネル教授は彼にキスをし、頻繁に彼の体に触り、彼に彼女の体に触らせ、彼に自分と同じベッドに寝るよう命じた。彼女は“cock-er spaniel”といった性的な言葉を彼に浴びせ、同様の内容のメールを大量に彼に送った。また、メールの返信がなかった場合、彼女は仕事上の罰を彼に与えた。

これらは大学教授の地位を利用したセクシュアルハラスメント、及び、性的暴行、ストーカー行為等であるとしてNimrod Reitmanは大学とアヴィタル・ロネルを訴えた。

一方、ロネル教授はReitmanのセクハラ告発を否定した。「これはセクハラではない」。自分とReitmanの間にあったことは、ゲイ男性とクィア女性の間のコミュニケーションだった──ロネル教授は、そう主張した。

調査の結果、大学当局はロネル教授の学生に対する身体的及び言葉によるセクシュアルハラスメント行為を認めた。Reitmanが学問研究のための環境(スペース)の変更を余儀なくされた責任はロネル教授にある、と。

以下略

●5.【不正発覚の経緯と内容】

アヴィタル・ロネル(Avital Ronell)http://www.homenfood4u.info/avital-wastafelkraan.html

★アヴィタル・ロネルの人生

アヴィタル・ロネル(Avital Ronell)は、専門の哲学(ドイツ文学)で、優れた著書をたくさん出版している世界的に著名な学者である。

イスラエル外交官の娘として、チェコのプラハで生まれたユダヤ人で、4歳の時、両親と共に米国に移住した。

生涯未婚である(推定)。セクハラ事件を起こしたときは、レズビアン(クイア)だった。

★セクハラ事件の概略

2017年9月、ロネル教授がかつて指導した33歳の元院生(男性)・ニムロッド・ライトマン(Nimrod Reitman、右下写真出典)が、ニューヨーク大学(New York University)で、3年間にわたり、ロネル教授のセクハラ、性的暴行、ストーカー、報復をされていたと訴えた。

ライトマンはイスラエル出身である。

テルアビブ大学(Tel Aviv University)で2004年、20歳の時、生命科学の学士号を取得し(20歳で学士号とは超優秀)、同大学で2008年、24歳の時、哲学の修士号を取得した。((1) Nimrod Reitman | LinkedIn

2012年、28歳の時、米国に渡り、ニューヨーク大学のロネル教授の院生になった。

2015年、31歳の時、ニューヨーク大学で研究博士号(PhD)を取得し(3年間で博士号取得とは超優秀。ロネル教授がエコヒイキした?)、ロネル教授のもとを去り、ハーバード大学の客員研究員になった。

2017年、33歳の時、セクハラ、性的暴行、ストーカー、報復を受けたと、かつての指導教授であるロネル教授(65歳)を、ニューヨーク大学に告発した。

2018年5月(66歳)、ニューヨーク大学はロネル教授がセクハラをしたと判定し、2018年学年度と2019学年度を停職処分にした。

ロネル教授はライトマン元院生の主張を認めていない。

2018年5月11日(66歳)、フェミニズムでは当代一流の学者であるジュディス・バトラー(Judith Butler、写真出典同じ)、スラヴォイ・ジジェク(Slavoj Žižek)、ジョアン・スコット(Joan Scott)らは、彼女の学術的貢献の重要性に基づいてロネル教授は免責されるべきで、悪いのは、”悪意のある意図”的行動をしたライトマン元院生だ、と批判する手紙を、ニューヨーク大学に送付した(Download BUTLER letter for Avital Ronell.)。なお、ジュディス・バトラー(Judith Butler)は、後に、手紙の表現に後悔していると述べている。
→ 2018年6月13日のオリビア・ゴールドヒル(Olivia Goldhill•)記者の「Quartz」記事:Judith Butler and Slavoj Žižek wrote a letter saying Avital Ronell’s Title IX investigation is unfair — Quartz
→ 2018年8月15日のアダム・ハリス(Adam Harris)記者とアリア・ウォン(Alia Wong)記者の「Atlantic」記事:Fellow Academics Defend Avital Ronell After Harassment Claims – The Atlantic

2018年8月16日(66歳)、ニューヨーク大学ではラチが明かないと見たライトマン元院生は、ロネル教授とニューヨーク大学を相手に、セクハラ、性的暴行、ストーキングを受けたと数百万ドル(数億円)の訴訟を起こした。

以下の文書をクリックすると、PDFファイル(724 KB、56ページ)が別窓で開く。

2019年2月1日(66歳)現在、ニューヨーク大学は調査中である。裁判の決着もついていない。ロネル教授は休職中である。

【セクハラの経過】

セクハラの経過は、以下の記事が主な出典である。
→ 2018年8月13日のゾーイ・グリーンバーグ(Zoe Greenberg)記者の「New York Times」記事:What Happens to #MeToo When a Feminist Is the Accused? – The New York Times、(保存版

★セクハラの具体例

ライトマン元院生は当時、ロネル教授の指導下にあった独身の院生だが、2019年2月1日現在は34歳でハーバード大学の客員研究員である。同性愛者で、2019年2月1日現在は男性と結婚している。 ロネル教授は独身でレズビアン(クイア)である。

ロネル教授のセクハラ行為は物理的な行為と言葉による行為で3年間にわたり行なわれていた、とライトマン元院生は主張している。

言葉による行為では、ロネル教授は、ライトマン院生を「かわいい赤ちゃん(Sweet cuddly Baby)」「コッカースパニエル(cock-er spaniel)」「驚くべき美しい私のニムロッド(my astounding and beautiful Nimrod.)」と呼んだ多数の電子メールが残されている。

言葉のセクハラ度は、英語だと、日本人にはわかりにくい。そして、英語を日本語に訳すと、さらにわからなくなる。

例えば上記の「コッカースパニエル」は犬のコッカースパニエル(写真出典)で、そのまま聞けば、なんでこの言葉がセクハラなのかと思う。理解できない。

英語をよく見ると、本来の犬を指す「コッカースパニエル」の綴りはハイフンのない「cocker spaniel」である。それを、ロネル教授はハイフンを入れた「cock-er spaniel」と書いた。「cock」は男性器のペニスの意味があり、「er」は「人」、「spaniel」は「スパニエル犬」と「へつらう人」の意味がある。それで、日本語に無理に訳すと、「ペニスを持つへつらう人」となるでしょうか。明らかに卑猥な言葉のようです。日本語に訳して伝えるのは、難しいですね。

物理的な行為では、ロネル教授は、ライトマン院生に何度もキスをし、身体を何度もさわり、一緒にベッドで眠り(slept in his bed with him:セックスしたという意味?)、ベッドに横たわるように要求し、彼の手を握ったとある。そして、「これらの私の行為に対応しなければ研究指導をしません」と言った、そうだ。

アヴィタル・ロネル(Avital Ronell)https://www.welt.de/kultur/plus181196128/Avital-Ronell-Hat-sie-ihren-Doktoranden-sexuell-belaestigt.html

しかし、ロネル教授(66歳)はライトマン元院生のセクハラ申し立てを否定している。そして、「ライトマン元院生が現在セクハラと主張している行為は、イスラエルの文化を共通に持つゲイの男性とクイアの女性の大人のコミュニケーションでした。これらのコミュニケーションは、3年間にわたって繰り返し、彼に喚起され、返され、励まされました」とニューヨークタイムズ紙で述べている。つまり、ライトマン元院生の同意のもとに行なわれ、2人とも納得ずくの行為だと主張したいようだ。

ライトマン元院生はニューヨーク大学・大学院を2015年に終了と同時に博士号を取得し、ハーバード大学に移籍した。その2年後の2017年に、元指導教授のセクハラ、性的暴行、ストーキングおよび報復の被害を申し立てた。

ライトマン元院生とロネル教授の説明は、両者とも他の「#MeToo」物語とよく似ている。ライトマンはロネル教授の権力と報復を恐れ、セクハラ行為だと思いながらもロネル教授の要求にイヤイヤながら従っていた、と主張している。一方、ロネル教授は、ライトマン院生の研究発展のためを思って、熱心に指導した。その過程での2人の親密な関係は、彼の同意があり、彼の納得ずくの行為だ、と述べている。

★最初の行為

問題は、2012年春に始まっていた。ライトマンは28歳で、ロネル教授は60歳だった。

ライトマンが、ニューヨーク大学・大学院に正式に入学する前、ロネル教授は数日間、パリで彼と一緒に過ごそうと、ライトマンを誘った。ライトマンがロネル教授の滞在していたホテルに到着した日、午後の昼寝をしている間、彼女の寝室で彼女に詩を読んでくれないか、とライトマンに頼んだ。

ライトマンは、「これは既に私にとっては大きな問題でした。しかし、変な事態にならないだろう。私はなんとか対処できると思いました」と後に述べている。 ところが、ロネル教授はライトマンを彼女のベッドに引きずり込んだのだった。

アヴィタル・ロネル(Avital Ronell)https://twitter.com/thenews_intl/status/1029965667850706944

「ロネル教授は私の手を取って彼女の胸に当て、そして彼女の身体、彼女のお尻を私の股間に押し付けてきました。彼女は、私の手に、そして、私の身体にキスをしてきました。その夜、同じような行為を再びされました」と彼は言った。

彼は翌朝彼女に直面した時、「あのですね、昨日したことはよくありません。 あなたは私の指導教授です」と、とライトマンはロネル教授に抗議したと、新聞記者に伝えている。

★入学後

しかし、ライトマンが大学院に入学するため、ニューヨークに着いた後も、ロネル教授の性的誘いは続いたのである。

ニューヨーク大学・大学院に入学後、ライトマン院生は、週末、しばしば彼女のアパートで研究していた。ロネル教授は彼に対して愛の言葉を頻繁にメールした。

「私はわずかな熱と喉の痛みで目が覚めました。喉が安全だと医師に保証されるまで、私はあなたにキスをしないように一生懸命に努力しています。でも、我慢するのは簡単ではありません」と、ロネル教授はパリ旅行の後、2012年6月16日にライトマン院生に電子メールしている。

2012年7月、ロネル教授(60歳)は彼に短いメールを書いた。 「瞑想中の私のイメージです。私たちはソファの上で、私の膝の上にあなたの頭があって、あなたの額をなでている。あなたの髪で優しく遊ぶ。あなたを和らげると、頭痛が消える。どう、消えた?」

2012年10月、ハリケーン「サンディ」が去った後、ロネル教授(60歳)は教授の家が停電になったので、ライトマン院生のアパートに現れた。彼は、ダメだと言ったにもかかわらず、ロネル教授は彼のベッドで一緒に寝ると言い張り、強引に部屋に入ってきた。ライトマン院生はシブシブ認めたが、彼女はその週のほぼ毎晩、彼の身体をまさぐりキスをした。

ロネル教授の弁護士であるメアリー・ドーマン(Mary Dorman)は、「ロネル教授はライトマン院生との性的接触をすべて否定しています」と述べている。 ロネル教授は、ハリケーン「サンディ」の後、ライトマン院生に招待されたので訪問しているが、2泊しか滞在しなかったと述べている。

ドーマン弁護士の報告書は、ロネル教授の性的暴行を証明する十分な証拠がないと結論付けていた。

★不可解

ロネル教授は、実は、ライトマン元院生がセクハラを申し立てるまで、ライトマンが、彼女の言葉や行為を不快の感じていたとは知らなかったと述べている。

ライトマン元院生は、また、ロネル教授に彼女の「性的な言葉や行為」についてイヤだと言ったので、ロネル教授から、誠意のないおざなりの推薦状を書かれたという報復を受けたと主張している。その誠意のないおざなりの推薦状のために、自分の研究キャリアが妨害されたと主張している。

ただ、調査報告書では、彼女の推薦状は「彼女の他の元・院生への推薦状とほぼ同等のレベルだった」と判定している。つまり、おざなりの推薦状ではなかった。そして、結局、ライトマンは2つの大学院フェローシップを得ていた。つまり、推薦状で報復を受けたという主張はライトマン元院生の思い込みだったようだ。

ニューヨーク大学はロネル教授を停職処分に科したことに加えて、教授の推薦書に関連した報復をさらに調査中だそうだ。

ロネル教授本人とロネル教授の支援者たちの何人かは、なぜライトマン元院生はセクハラを訴えるのにそれほど時間がかかったのか、疑問だと指摘している。2015年に博士号を取得し、ロネル教授の元を離れてから2年後の2017年になって、ライトマン元院生はセクハラを告発したのだ。

そして、当時、ライトマン院生が本当にイヤだったのなら、他人から見て、彼がロネル教授ととても親密に見えるように振舞っていた理由はなんだったのか、という疑問も発している。

ニューヨーク大学のスポークスマンであるジョン・ベックマン(John Beckman)は、ライトマン元院生がこれまで経験してきたことに「同情的」だった。「私たちが彼の告訴に対して迅速に、真面目に、そして徹底的に対応した」、とニューヨーク・タイムズ紙で述べている。

しかし、ベックマンは、「ライトマン元院生がニューヨーク大学に対して数百万ドル(数億円)の訴訟を起こしたのを正当とは思えません」と付け加えた

アヴィタル・ロネル(Avital Ronell)https://theoryilluminati.com/texts-and-contexts/f/an-eleven-month-denial-of-all-nimrod-reitman-allegations

●6.【論文数と撤回論文】

論文数と撤回論文は調べていない。

●7.【白楽の感想】

《1》処罰されない

多くのセクハラ事件は中高年の男性(教授)が若い女性(院生・研究者)をターゲットにしている。ロネル事件では、男女が逆になっている。珍しいというほどではないが、少ない事件である。

セクハラは犯罪である(sexual harassment is illegal:Sexual harassment – Wikipedia)。

アヴィタル・ロネル(Avital Ronell)は、刑事事件としては処罰されていない。ナンカ、おかしくないか? 2年間の休職処分だけである。

と思う反面、ロネル教授とライトマンとの間のやり取りをあからさまにしたニューヨーク・タイムズの記事を読むと、男女間の恋愛のもつれではないのか? という印象を強く受ける。恋愛関係の破綻の結果、一方が、セクハラと訴えた、ということではないんだろうか?

《2》イヤです

セクハラであれ恋愛行為であれ、ロネル教授はライトマン以外にも同様なセクハラ行為または恋愛行為をしていたに違いない。ただ、いつからこのようなことを行なっていたのか新聞には書かれていない。

アヴィタル・ロネル(Avital Ronell)https://www.mediamatic.net/nl/page/1403/avital-ronell

それで推測になる。

ロネル教授は美人なので、多分、20代・30代の若い時から男性と頻繁に性的関係を持っていたに違いない。

中高年になっても、同じように、若い男性と頻繁に性的関係を持っていた。相手に院生や研究者が多かったろう。それでも、相手が嫌がらなければ問題にならない。恋の火遊びである。セクハラではなく、ロマンスである。「据え膳食わぬは・・・」なので、ほとんどの男性の院生・研究者はウェルカムだったろう。

ニムロッド・ライトマンも、本人が嫌がらない限り、師弟で性的関係をもっても、違法ではないし、両方とも独身なので、悪いことではない。

ところが、問題は、ニムロッド・ライトマンは嫌だった(と後で訴えている)。ゲイだったためかもしれない。ゲイとは知らずに、ロネル教授はちょっかいを出してしまった。

だから、ポイントは、ライトマンがいつどのように、ロネル教授に「イヤです」と伝えたかである。そう思って記事を読むと、2012年春、最初に性的行為があった時の翌朝、ライトマンはロネル教授に「イヤです」と伝えたと主張している。

これはライトマンの言い分である。

一方、ライトマンがセクハラ被害を大学に申し立てるまで、ロネル教授はライトマンがイヤがっていたことを知らなかったと述べている。この認識は単なる言い訳かもしれないが、どうだろう?

それにしても、2012年春の最初の1回限りで止めておけば、事件は大きくならなかった気もする(白楽は1回なら許されると主張しているわけではない)。

「イヤです」と伝えた「つもり」と、実際に相手に「伝わった」、この差が、どうもはっきりしない。

もう一つよくわからないのは、ロネル教授はレズビアン(クイア)だとある。レズビアンは男性に性的興味がないと思うのだが、白楽の誤解だろうか? レズビアンとはいえ、クイアなら性的嗜好が特殊で、男性もOKということなのだろうか? 白楽は、性的嗜好の用語と実態をうまく把握できていない。どうなっているのだろう? と思う。

《3》「セクハラ」加害者の匿名・顕名:日米差

著名な生命科学者のセクハラ事件でも同じ趣旨のことを書いた。再掲する。
→ 犯罪「セクハラ」:インダー・ヴェルマ(Inder Verma)(米) | 研究倫理(ネカト)

日本と比べると、米国のセクハラ事件は、事件を本気で解決しようとする気合が感じられる。

日本では、セクハラをした大学教員は匿名だから、それと知らずに、他大学が採用してしまう。採用し、解雇し、裁判で負け・・・。最初から採用すべきではないでしょう。教授1人の年間給与が1000万円として、裁判費用、大学のダメージなどが計1000万円、合計2000万円ほどの損害でしょうか?

前任校で「セクハラ行為があった」などと認定されたために、新たな勤務先の都留文科大(山梨県都留市)から解雇されたのは不当だとして、同大元教授の40歳代男性が同大に解雇無効などを求めた訴訟で、東京地裁立川支部(太田武聖裁判官)は21日、男性の主張を認め、同大に解雇期間中の賃金の支払いを命じる判決を言い渡した。

判決などによると、男性は宮崎大(宮崎市)を2012年3月に退職、同年4月から都留文科大に勤務していた。男性が宮崎大を退職後、同大は「在職中にセクハラ行為などがあり、懲戒解雇に相当する」と公表。男性は事実関係を争っていたが、都留文科大は宮崎大の公表内容を理由に、男性を解雇した。
(「「前任校でセクハラ」教授解雇、大学に無効判決」、2014年04月22日 Yomiuri Shimbun)

日本の大学では、被害者を守るためという口実でセクハラ加害者を匿名にする。

そのことで、実際は、加害者を守り、セクハラ者を支援し、再犯を促進している。セクハラ事件を本気で解決し、再発を防ごうとしているようには思えない。

米国でも中国でも実名報道をしているのに、日本は匿名である。日本は実質上、被害者を守らないことが多いのに、セクハラ事件では害者を守るという口実でセクハラ加害者を匿名にし、害者を守っている。世界でまれにみる隠蔽国のように思える。
→ 日本のネカト・クログレイ事件一覧 | 研究倫理(ネカト)の【日本の研究者のセクハラ・アカハラ・パワハラ事件一覧】

《4》日本の「レイプ」加害者が、現在、医師。そして

「レイプ」はセクハラより悪質である。

匿名報道だった「レイプ」加害者が、現在、医師になっている。いいんだろうか?

1999年5月、慶大医学部の学生5人が20歳の女子大生を集団でレイプした(逮捕は7月)。主犯の男は23歳だったが、実名は報じられなかった。被害女性との間に示談が成立し、最終的に不起訴処分となった。この学生は慶大を退学したものの、他の国立大学医学部に再入学し、現在は医師として働いている。(2019年1月18日記事:名門医学部「純血主義」が生む「不正」「性犯罪」「医療事故」–上昌広 | ハフポスト

そして、2019年1月25日の産経ニュースに以下の記事があった。とても驚いた。日本は、おかしくなってしまった。

酩酊(めいてい)状態だった女子大生に乱暴したなどとして、準強制性交容疑などで計5回にわたって逮捕された慶応大2年の男子学生(22)について、横浜地検は25日、不起訴処分にしたと明らかにした。また、共犯として逮捕されていた犯行当時少年で同大1年の男子学生(20)ら3人についても不起訴処分とした。(性的乱暴で5度逮捕の慶応大生ら全員不起訴 横浜地検

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https://www.thenewsnigeria.com.ng/2018/08/sexual-harassment-against-male-new-york-university-female-professor-suspended/

●8.【主要情報源】

① ウィキペディア英語版:Avital Ronell – Wikipedia
② ◎2018年8月13日のゾーイ・グリーンバーグ(Zoe Greenberg)記者の「New York Times」記事:What Happens to #MeToo When a Feminist Is the Accused? – The New York Times、(保存版
③ 2018年8月21日のジョセフィン・リビングストーン(Josephine Livingstone)記者の「T New Republic」記事:Asia Argento, Avital Ronell, and the Integrity of #MeToo | The New Republic、(保存版)
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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