ミレーナ・ペンコーワ(Milena Penkowa)(デンマーク)更新

2014年10月19日掲載、2018年3月26日更新。

ワンポイント:デンマークの「イケジョ(医系女子)の星」、真っ赤なスポーツカーに乗ったデンマークの国民的なアイドル教授。2010年(36歳)、そのコペンハーゲン大学教授のデータねつ造が発覚し、翌年辞職した。2012年(39歳)、コペンハーゲン大学・国際調査委員会がネカト疑惑があるとし、2013年(40歳)、デンマーク学術不正委員会(Danish Committees on Scientific Dishonesty)がデータねつ造と結論した。2015年9月30日(42歳)、デンマーク裁判所は、ペンコーワに「投獄9か月、執行猶予2年」の判決を下した。2017年9月12日(44歳)、コペンハーゲン大学はペンコーワの博士号をはく奪した。マスメディアは、事件の背景に、デンマークの国民的なアイドル教授であるペンコーワと科学技術大臣とのセックス・スキャンダルがあったと過熱報道した。デンマークの小保方晴子事件である。損害額の総額(推定)は8億7300万円。
この事件は、白楽指定の重要ネカト事件である:アイドル研究者から犯罪者へ、セックス絡み、事件の紆余曲折、大学のシロ判定が覆った。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

ミレーナ・ペンコーワ(Milena Penkowa 、写真出典)は、2009年に35歳でデンマークのコペンハーゲン大学(Copenhagen University)の正教授に就任した。専門は神経科学で医師ではない。

約100報の査読論文を発表し、デンマーク科学技術イノベーション大臣から称賛され、巨額の研究費を得ていた。真っ赤なスポーツカーに乗り、テレビ、大衆向け雑誌、ラジオにたびたび登場する若い美人のデンマークの「イケジョ(医系女子)の星」、国民的なアイドル教授だった。
141007 Milenas-nye-dyt[1]
ナンバープレートを見てね。(写真出典:Milena Penkowa: Helge Sander er min far

2010年(36歳)、データねつ造が発覚した。本人は否定しつつも、翌年、大学を辞職した(37歳)。科学技術大臣とのセックス・スキャンダルが噂され、デンマークのマスメディアは過熱報道した。

2012年7月23日(39歳)、コペンハーゲン大学・国際調査委員会は、ペンコーワの15論文にネカト疑惑があると発表した

2013年(40歳)、デンマーク学術不正委員会(Danish Committees on Scientific Dishonesty)はペンコーワがデータをねつ造したと結論した。

2015年9月30日(42歳)、デンマーク裁判所は、ペンコーワに「投獄9か月、執行猶予2年」の判決を下した。

2017年9月12日(44歳)、コペンハーゲン大学は、2005年(31歳)にペンコーワに授与した博士号をはく奪した。

コペンハーゲン大学(Copenhagen University)医学部の本部棟: Panum Institute。 写真出典。By Bob Collowan – Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=27132645

  • 国:デンマーク
  • 成長国:デンマーク
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:コペンハーゲン大学
  • 男女:女性
  • 生年月日:1973年4月15日
  • 現在の年齢:50 歳
  • 分野:神経科学
  • 最初の不正論文発表:2001年(27歳)
  • 発覚年:2010年(36歳)
  • 発覚時地位:コペンハーゲン大学・教授
  • ステップ1(発覚):①2002年、博士論文委員会は博士論文のデータ改ざんで博士論文を却下(リジェクト)したが、学部長は別の委員会を設け、博士号を授与した。②2007年、ペンコーワの同僚・エリザベス・ボック 教授(Elisabeth Bock)は、ボックの研究室の院生たちがペンコーワの結果を追試できないと学内委員会に訴えた。しかし、大学はこれをシロと判定した。③2010年、ペンコーワ研究室の2人の院生が、ペンコーワのデータねつ造を、神経科学・薬物学科長のアルバート・ギェデ(Albert Gjedde)に訴え、大学は、ようやく、まともな調査を始めた。
  • ステップ2(メディア): 週刊誌「Weekendavisen」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①コペンハーゲン大学の学内調査委員会。②コペンハーゲン大学の国際調査委員会(5人)。2011年夏~2012年7月23日。1年間。③デンマーク学術不正委員会(Danish Committees on Scientific Dishonesty)。④デンマーク裁判所
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:あり
  • 大学の透明性:大学の事件への透明性。実名報道で調査報告書(委員名付き)がウェブ閲覧可(◎)
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:6報(撤回)、他に10報(疑惑)
  • 時期:研究キャリアの初期から
  • 損害額:総額(推定)は8億7300万円。内訳 → ①研究者になるまで5千万円。②研究者の給与・研究費など年間2000万円が10年間=2億円。③院生の損害は不明で、②に含めた。④外部研究費はデンマーク政府から多額の研究費をもらっている。例えば、デンマーク・エリート研究賞と副賞で約1900万円。また、研究助成金を約9900万円受領などとある。ただ、総額は不明である。総額を5億円とした(当てずっぽう)。⑤調査経費(大学とデンマーク学術不正委員会と学術誌出版局)が5千万円。⑥裁判経費が2千万円。⑦論文出版・撤回作業が1報につき100万円、撤回論文の共著者の損害が1報につき100万円。6報撤回=1200万円。⑧研究者の時間の無駄と意欲削減が4千万円
  • 職:辞職(Ⅹ)。
  • 処分:停職処分を受け 辞職(37歳)。「投獄9か月、執行猶予2年」。博士号はく奪。

141007 penkowa写真出典:http://retractionwatch.com/2013/10/15/danish-neuroscientist-penkowa-found-guilty-of-misconduct-reappears-as-scientology-group-headliner/#more-16036

●2.【経歴と経過】

ブルガリア系デンマーク人である。

  • 生年月日:1973年4月15日
  • 1989年(15歳):馬術競技の一種である障害飛越競技(しょうがいひえつきょうぎ)の欧州チャンピオンシップに参加した
  • 1991年(17歳):デンマークのカロンボー・ギムナジウム(Kalundborg Gymnasium)卒業
  • 1991年(17歳):コペンハーゲン大学(Copenhagen University)入学
  • 1993年(19歳):コペンハーゲン大学の年報に研究活動が掲載された
  • 1995年(21歳):最初の論文発表。最後著者はトーベン・ムース教授(Torben Moos)
  • 2000年(26歳):コペンハーゲン大学・助教授
  • 2001年(27歳):コペンハーゲン大学に研究博士号(PhD)申請
  • 2002年(28歳):コペンハーゲン大学・準教授
  • 2005年(31歳):コペンハーゲン大学で研究博士号(PhD)取得
  • 2009年(35歳):コペンハーゲン大学・教授
  • 2009年(35歳):デンマーク・エリート研究賞受賞
  • 2010年(36歳):データねつ造と研究費横領が週刊誌で報道された
  • 2010年(37歳):コペンハーゲン大学は、ペンコーワを停職処分にした。これを受け、ペンコーワは辞職した
  • 2012年(39歳):コペンハーゲン大学・国際調査委員会は、データねつ造が濃厚であるとの最終調査結果を発表した
  • 2013年(39歳):デンマーク学術不正委員会(Danish Committees on Scientific Dishonesty)はペンコーワがデータをねつ造したと結論した
  • 2015年9月30日(42歳):デンマーク裁判所は、ペンコーワに「投獄9か月、執行猶予2年」を科した
  • 2017年9月12日(44歳):コペンハーゲン大学はペンコーワの博士号をはく奪した

★2009年(35歳):デンマーク・エリート研究賞の授賞式

メアリー (デンマーク王太子妃)(左)から、デンマーク・エリート研究賞と副賞・110万クローネ(約1900万円)を手渡されるペンコーワ(右)。それにしても、2人とも服装がラフですね。
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写真出典:http://www.bt.dk/politik/penkowa-og-co.-kan-aande-lettet-op

●3.【動画】

【動画1】
上の授賞式の動画「Forskere i eliten」、(デンマーク語?)1分29秒。
デンマーク科学技術イノベーション大臣・ヘルゲ・サンダー(Helge Sander)も登場(11秒頃)。
Nature Science Productionsが2009/01/30 にアップロード

【動画2】
「ペンコーワ事件を2分で理解する(Forsta Milena Penkowas sag pa to minutter )」、(デンマーク語?)1分43秒
DR Nyhederが2015/10/01 に公開

【動画3】
ペンコーワが大衆に雑誌の記事「処方箋の犬」の話している動画(不正研究に触れていない?)
デンマークの心理学の出版物:ミレーナ・ペンコーワの「処方箋の犬」(PenkowaDansk Psykologisk Forlag prasenterer: Milena Penkowa om ‘Hund pa? recept’)」、(デンマーク語?)12分51秒
Dansk Psykologisk Forlagが2012/11/21 に公開

●4.【日本語の解説】

以下は白楽が最初に記述した文章である。他の日本語解説は見当たらなかった。

●5.【不正発覚の経緯と内容】

【研究】

ペンコーワは脳のメタロチオネイン (metallothionein) の機能を研究していた。

メタロチオネインは徳島文理大学・公衆衛生学講座のサイトによると以下のようだ。

ハーバード大のVallee教授のもとでKagiおよびMargoshes博士が1975年に馬の腎臓からカドミウムと亜鉛を多量に含有するたんぱく質として単離し、さらに詳細な解析データを1960年に報告した。1976年にアミノ酸配列決定、1980年には遺伝子クローニングが行われている。

メタロチオネイン(Metallothionein)は分子量が約6500と低分子量の金属結合たんぱく質である。metallo-は金属、thio-は多く含まれるシステインのthol-(SH)基、teinは蛋白(protein)から由来している。

構成アミノ酸は生物種により異なるが約61個のアミノ酸残基から構成され、その1/3をシステインが占めるという珍しいタンパク質であり、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファンなどの芳香族アミノ酸を含まない。そのためカドミウム、亜鉛をあわせて7個の金属がSH基と結合をしている。銅や銀は12個結合する。(徳島文理大学 公衆衛生学講座

また、インターロイキン6も研究していた。インターロイキン6は、いろいろな細胞で合成される。ヒト骨格筋も多量に合成し分泌するが。骨格筋内のどの細胞が合成するのか不明だった。ペンコーワは研究の結果、運動した後の骨格筋の筋細胞が合成し分泌することを明らかにした。・・・・2003年の論文。後で撤回。

【不正発覚の経緯】

★2002年:博士論文疑惑

2000年(26歳)、ペンコーワはコペンハーゲン大学・助教授に就任した。

2001年(27歳)、ペンコーワはコペンハーゲン大学(Copenhagen University)に博士論文を提出した。

2002年(28歳)、コペンハーゲン大学・博士論文審査会は、ペンコーワの博士論文に疑惑を抱いた。博士論文でペンコーワは1,700匹のラットを使って実験したと記述していた。しかし、この数値は異常に多い。ラットの頭数を改ざんしたと判断した博士論文審査会は博士論文を却下(リジェクト)した。

ペンコーワと(性的にも?)親密と噂されていたコペンハーゲン大学・健康医学部長ラルフ・ヘミングセン(Ralf Hemmingsen)が仲裁に入り、大学外部の2人の審査委員(ノルウェー人とスウェーデン人)の意見を求めた。外部審査員は博士論文審査会の結論に批判的で(白楽注:御用委員だから当然)、ペンコーワの研究に明確な不正の証拠はないとした。

ペンコーワは、「私はこれらの実験動物に関係した必要な情報、研究事実、研究記録を提供しました。そこには非難されるような事実は全くありませんでしたし、今でもありません」と述べている。

2004年(30歳)、ペンコーワは、別の博士論文審査会に博士論文を提出した。今度は、前回提出した博士論文に記載したラットの実験のことを書かなかった。なお、この時、提出期限を過ぎていたが、母と姉が自動車事故で亡くなり、その対応に忙殺され遅れたと、ウソの言い訳をしている。

2005年(31歳)、別の博士論文審査会は全委員一致で、ペンコーワに博士号を授与すべきと判定した。

★2007年:追試不能

エリザベス・ボック 教授(Elisabeth Bock) http://gade.psy.ku.dk/18-2004neurodag.htm

2007年(33歳)、デンマークの週刊誌「Weekendavisen」によれば、ペンコーワの同僚・エリザベス・ボック 教授(Elisabeth Bock)は、ボックの研究室の院生たちがペンコーワの実験結果を追試できないとボック 教授に訴えた。ボック 教授は、ペンコーワの実験データに疑念(つまり、ねつ造・改ざん)がある、と学内委員会に訴えた。

2008年(34歳)、学内委員会は、両者の矛盾点を調査し、ペンコーワは潔白だと結論した。

ペンコーワは、「ボックの院生は、ボックの実験室で異なる手法で実験しているので、私たちの結果と全く同じでなくても不思議ではありません。追試が必要なら、私の実験室を利用してもよいとボックの院生たちに伝えました」と述べている。

★2010年:実験データに合わない

2010年(36歳)、この年の7月にペンコーワが「Journal of Clinical Oncology」に投稿した論文原稿に問題が発生した。週刊誌「Weekendavisen」によれば、ペンコーワ研究室の2人の院生が、投稿論文中のリンパ腫患者の組織タンパク質の記載データが自分たちの実験データに合わないと、神経科学・薬物学科長のアルバート・ギェデ(Albert Gjedde)に訴えた。

ミレーナ・ペンコーワ(Milena Penkowa)http://vidadk.blogspot.jp/2011/02/hvis-penkowa-var-klimaforsker.html

ペンコーワは、「論文中の結果はそれらの院生が行なった実験の後に、私が自分で行なった実験の結果です」と述べている。なお、その投稿論文は、いまだに「Journal of Clinical Oncology」に印刷・公表されていない。

また、560万クローネ(約9900万円)の研究助成金の一部を不正流用したことも発覚した。

2010年(36歳)、デンマーク神経科学会(Danish Society of Neuroscience)は、ペンコーワをネカトと研究費横領で有罪と結論した。

2010年(36歳)、コペンハーゲン大学は、ペンコーワを停職処分にした。

2010年12月(37歳)、ペンコーワは、ネカトと研究費不正を否定しつつも、教授職を辞職した。コペンハーゲン大学は200万クローネ(約3500万円)を助成機関に返還した。

2011年(37歳)、デンマーク高等教育相のシャーロット・サール=マドセン(Charlotte Sahl-Madsen)は、ペンコーワのデンマーク・エリート研究賞をはく奪した。

2011年夏(38歳)、5人の研究者からなるコペンハーゲン大学の国際調査委員会が調査を開始した。

2012年7月23日(39歳)、コペンハーゲン大学・国際調査委員会は、「綿密に仕組んだネカト(慎重な研究過誤)の疑念がペンコーワの15論文に見つかった」という最終調査結果を発表した (2012年 最終調査結果、50ページ。「Investigation into the research of Milena Penkowa」)。

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コペンハーゲン大学は、この15論文の評価をデンマーク学術不正委員会(Danish Committees on Scientific Dishonesty)に依頼した。

ペンコーワは、「人間は誰も完ぺきではありません。私も例外ではありません。私が1993年に研究を始めてから、予見できない間違いはしていたかもしれません。それについては、私は深く謝罪します。しかし、「綿密に仕組んだネカト」は別です。私は決して「綿密に仕組んだネカト」を行なっておりません。私の研究が詐欺だと、最近、マスコミが報道していますが、詐欺だと報道するのは非合理的で、妥当とは思えません」と述べている。

2013年(39歳)、デンマーク学術不正委員会(Danish Committees on Scientific Dishonesty)はペンコーワがデータをねつ造したと結論した。

Bente_Klarlund_Pede_806462a[1]同時にペンコーワと共著で論文をいくつも発表していたコペンハーゲン大学のベンテ・ペダーセン教授(Bente Klarlund Pedersen、写真出典)もデータねつ造で有罪とした。共著者なのにペンコーワのデータねつ造を感知できず、従って、ねつ造に対処しなかったのが有罪の理由である。

しかし、これは少し酷である。普通に研究していれば、多くの研究者は、共著者のデータねつ造・改ざんを感知できないだろう。

2015年2月18日(41歳)、デンマーク裁判所は、ペダーセン教授が有罪という結論をひっくり返し、無罪とした(Danish high court clears Pedersen in misconduct case – Retraction Watch at Retraction Watch)。
→  コペンハーゲン大学の発表: Klarlund cleared of scientific dishonesty charges | University Post

★刑事事件

警察がペンコーワの調査に入り、虚偽・文書偽造の罪でペンコーワを告訴した。

2015年9月30日(42歳)、デンマーク裁判所は、ペンコーワに「投獄9か月、執行猶予2年」の判決を下した。
→ ①2015年9月30日、マイク・ヤング(Mike Young)の「University Post」記事:Penkowa found guilty in city court for 2003 forgery | University Post保存版)、②2015年10月1日、シャノン・パルス(Shannon Palus)の「論文撤回監視」記事:Danish neuroscientist sentenced by court for lying about faked experiments – Retraction Watch at Retraction Watch

★博士号はく奪

2017年9月12日(44歳)、コペンハーゲン大学はペンコーワの博士号をはく奪した
→ 2017年9月12日の記事:The University of Copenhagen revokes doctoral degree ? University of Copenhagen(保存版)

【事件の深堀】

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写真:2005年11月1日~2017年2月28日、コペンハーゲン大学学長・ラルフ・ヘミングセン(Ralf Hemmingsen)(事件当時はコペンハーゲン大学・健康医学部長):写真出典

ヨハン・セヴェリンセン(Johanne Severinsen)の2014年8月15日の記事(Milena Penkowa ? from famous to infamous | ScienceNordic)によると、ペンコーワは、当時のコペンハーゲン大学・健康医学部長ラルフ・ヘミングセン(Ralf Hemmingsen)と親密だったとある。若い美女がもっているものを使って地位と名声を得たとされている。

また、前・デンマーク科学技術イノベーション大臣・ヘルゲ・サンダー(Helge Sander、在任期間2001年11月27日- 2010年2月23日)とも性的関係があったと噂されている(2013年5月6日 Ekstra Bladet – Helge Sander nagter central rolle i Penkowa-sag)。

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写真:デンマーク科学技術イノベーション大臣・ヘルゲ・サンダー(Helge Sander) (写真出典:Milena Penkowa: Helge Sander er min far

表の顔は、真っ赤なスポーツカーに乗ったデンマークの国民的なアイドル教授である。しかし、裏の顔は、色仕掛けで教授になり、賞を受賞し、巨額の研究費を得た美女というわけだ。だから、ネカト論文さえ発表しなければ、色仕掛けで、さらに学長や大臣になれたのかもしれない。

ヘルゲ・サンダー大臣はペンコーワの実父という説もある。真偽のほどは定かではないが、ヘルゲ・サンダー大臣が若い頃、ブルガリアの海辺の避暑地で一夜を共にしたブルガリア女性の子供がミレーナ・ペンコーワだというのだ(2011年2月、Milena Penkowa: Helge Sander er min far)。
141007 MilenaPenkowaHelgeSander[1]
写真:ペンコーワ(左)、デンマーク科学技術イノベーション大臣・ヘルゲ・サンダー(Helge Sander)(右)
写真出典:Helge Sander, fhv. medlem af Folketinget for Venstre, fhv. minister for videnskab, teknologi og udvikling

いずれにせよ、ペンコーワそのような権力者と親密になる処世術の女性だった為、ペンコーワのネカトが指摘され、告発されても、御用委員が忖度して、ペンコーワを擁護する調査結果になったり、調査そのものを遅れせたと言われている。

★ヘルゲ・サンダーとの性的関係をおちょくる【動画】がいくつかある。

【動画1】
ペンコーワの性的処世術をおちょくった演劇の動画「Milena Penkowa. Revy 2011」、(デンマーク語?)2分57秒、DrRaptusが2012/01/05 にアップロード

【動画2】
ペンコーワをストリッパーにした動画「Milena Penkowas strip show」、(言語なし)2分57秒
STOP Bla Blokが2011/02/14 にアップロード

【動画3】
ペンコーワとヘルゲ・サンダー大臣との性的関係を暗示した動画「Milena Penkowa: Helge Sanders elskerinde」、(言語なし)1分43秒
STOP Bla Blokが2011/02/14 にアップロード

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

2018年3月25日現在、パブメド(PubMed)で、ミレーナ・ペンコーワ(Milena Penkowa)の論文を「Milena Penkowa [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2017年の16年間の66論文がヒットした。

「Penkowa M[Author] 」で検索すると、1995~2017年の23年間の102論文がヒットした。

一度、有罪とされ、その後無罪になった共著者のベンテ・ペダーセン教授(Bente Klarlund Pedersen)との共著論文数はどのくらいの数あるのだろうか? 「Penkowa M[Author] AND Pedersen BK[Author] 」で検索すると、2003~2009年の7年間の12論文がヒットした。2015年にも1論文がヒットするが、論文訂正の告知である。

2018年3月25日現在、「Penkowa M[Author] AND retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、以下の6論文が撤回されていた。内4論文はペダーセン教授と共著の論文だった。

  1. M-CSF deficiency leads to reduced metallothioneins I and II expression and increased tissue damage in the brain stem after 6-aminonicotinamide treatment.
    Penkowa M, Poulsen C, Carrasco J, Hidalgo J.
    Exp Neurol. 2002 Aug;176(2):308-21. Retraction in: Exp Neurol. 2013 Sep;247:755.
    PMID:12359172
  2. Immunohistochemical detection of interleukin-6 in human skeletal muscle fibers following exercise.
    Penkowa M, Keller C, Keller P, Jauffred S, Pedersen BK.
    FASEB J. 2003 Nov;17(14):2166-8. Epub 2003 Sep 4. Retraction in: FASEB J. 2014 Mar;28(3):1526.
    PMID:12958150
  3. Exercise induces interleukin-8 expression in human skeletal muscle.
    Akerstrom T, Steensberg A, Keller P, Keller C, Penkowa M, Pedersen BK.
    J Physiol. 2005 Mar 1;563(Pt 2):507-16. Epub 2004 Dec 23. Retraction in: J Physiol. 2011 Jul 1;589(Pt 13):3407.
    PMID:15618276
  4. Interleukin-6 receptor expression in contracting human skeletal muscle: regulating role of IL-6.
    Keller P, Penkowa M, Keller C, Steensberg A, Fischer CP, Giralt M, Hidalgo J, Pedersen BK.
    FASEB J. 2005 Jul;19(9):1181-3. Epub 2005 Apr 18. Retraction in: FASEB J. 2014 Mar;28(3):1526.
    PMID:15837717
  5. Exercise-induced metallothionein expression in human skeletal muscle fibres.
    Penkowa M, Keller P, Keller C, Hidalgo J, Giralt M, Pedersen BK.
    Exp Physiol. 2005 Jul;90(4):477-86. Epub 2005 Jan 7. Retraction in: Exp Physiol. 2011 Aug;96(8):816.
    PMID:15640275
  6. Metallothionein-mediated antioxidant defense system and its response to exercise training are impaired in human type 2 diabetes.
    Scheede-Bergdahl C, Penkowa M, Hidalgo J, Olsen DB, Schjerling P, Prats C, Boushel R, Dela F.
    Diabetes. 2005 Nov;54(11):3089-94. Retraction in: Diabetes. 2012 Oct;61(10):2652.
    PMID:16249430

★パブピア(PubPeer)

2018年3月25日現在、「パブピア(PubPeer)」はミレーナ・ペンコーワ(Milena Penkowa)の4論文にコメントしている:PubPeer – Search publications and join the conversation.

●7.【白楽の感想】

《1》事件から何を学ぶ? 

以下は、 旧版:2014年10月19日の文章である。今回少し改訂した。

ペンコーワ事件から何を学べるだろう? 若い美女が色仕掛けで出世しようと野心的に振る舞うと、研究界は防御できないということか? それなら、美女は研究界から追放する? イヤイヤ、美醜や思想信条で研究界から追放するのは、望ましくない。

ペンコーワは人生で最初の論文を1995年に21歳で出版している。2報目は1997年に23歳で出版している。2つともフルペーパーで第一著者である。21歳でフルペーパーの論文を第一著者で出版したのだから、とても優秀だったに違いない。論文の最終著者はトーベン・ムース教授(Torben Moos)である。

この時、トーベン・ムース教授が、ペンコーワに研究規範を躾けるべきだった。思うに、それを、ヘマったのだろう。

また、初期の論文のいくつかにはスペイン人パートナー(恋人?)のフアン・イダルゴ (Juan Hidalgo)が共著者になっている。フアン・イダルゴがペンコーワの研究規範を注意すべきだったと思えるが、恋は盲目?

そして、コペンハーゲン大学は、決定的な大ミスを2回もしている。1回目は、2001年(27歳)にペンコーワが提出した博士論文への対処である。博士論文に不正疑惑が発生し、翌年却下されている。そのままにしておけばいいのに、それを、コペンハーゲン大学・健康医学部長ラルフ・ヘミングセン(Ralf Hemmingsen)がゴチャゴチャと取り繕ってしまった。これはアホだった。性的に親密だったと噂されても致し方ない、というか、性的に親密だったのは事実、なの?

そしてもう一度、2007年(33歳)、ボックの研究室の院生たちがペンコーワの実験結果に疑義を唱えた。この時、まともに調査すればいいのに、翌年、コペンハーゲン大学・学内委員会が潔白としてしまった。これも、その時にはコペンハーゲン大学・学長になっていたラルフ・ヘミングセン(Ralf Hemmingsen)の威光を学内委員が忖度したのだろう。おまけに、デンマーク科学技術イノベーション大臣・ヘルゲ・サンダーの愛人だと噂されていれば、虎の威を借りるペンコーワだ。

日本も、美女が提出した博士論文の不正を見抜けずに、博士号を授与したため、その後、とんでもない大事件に発展した事件が2014年にありましたね。博士号を授与してなければ、その後の事件は起こらなかったハズだ。理研の小保方晴子事件ですね。

人間の能力や成果で仕事を判断するのではなく、女性だから、美女だからと優遇する風潮は、今さら始まったわけではなく、人類の歴史とともにある。ただ、日本は最近ますます加速している。マズイですよ。女性だからという理由で、小渕優子を経済産業大臣にするのはマズイって、言ってたでしょう・・・、言ってない?

ーーー
小渕優子の経済産業大臣のたとえは、 旧版(2014年10月19日)の文章である。2018年3月25日現在では、小渕優子は印象が薄いでしょう。

では、稲田朋美・防衛大臣はどうでしょう。2017年7月28日に辞任したけど、ファッションと美容にかまけて、国防を任せられるような人ではありませんでした。
→ 2017年8月12日の産経新聞記事(写真出典も):【政界徒然草】「細い足が魅力的」稲田朋美氏 ファッションPLAYBACKでわかったオシャレ番長と防衛相辞任の必然性(9) – 産経ニュース

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ミレーナ・ペンコーワ(Milena Penkowa)。ナンバープレートを見てね https://forum.five-speed.dk/viewtopic.php?f=1&t=2076[/caption]

注:写真は本事件と関係ありません。白楽がコペンハーゲン大学を訪問した時、学生食堂は休みだった。大学の近くで白楽が食べたフィッシュ・アンド・チップス。2006年。白楽撮影。

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●8.【主要情報源】

① ウィキペディア英語版: Milena Penkowa – Wikipedia, the free encyclopedia
② 2011年1月7日のエウェン・キャロウェイ(Ewen Callaway)記者の「Nature」記事:Fraud investigation rocks Danish university : Nature News(保存版)
③ 2011年4月5日のマイク・ヤング(Mike Young)記者の「University Post」記事:Penkowa for dummies | University Post、(保存済)
④ 2011年6月22日以降の「撤回監視(Retraction Watch)」記事群:Search Results for “Milena Penkowa” ? Retraction Watch
⑤ 2012年7月23日 コペンハーゲン大学の国際調査委員会の最終調査結果、50ページ。「Investigation into the research of Milena Penkowa
⑥ 2014 年8月15日のヨハン・セヴェリンセン(Johanne Severinsen)記者の「ScienceNordic」記事:Milena Penkowa ? from famous to infamous | ScienceNordic(保存版)
⑦  旧版:2014年10月19日
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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