ラーフル・アグラワル(Rahul Agrawal)(米)

2019年9月24日掲載 

ワンポイント:2019年8月22日(29歳?)、研究公正局はアグラワルの59個の未発表データ・画像にネカトがあったと発表し、1年間の締め出し処分を科した。アグラワルは2017年8月(27歳?)にインドで博士号を取得後、NIHの国立がん研究所(NCI)のポスドクになっていた。推定だが、ボスのフレデリック・バー(Frederic G. Barr)が、データねつ造・改ざんに気が付いて研究公正局に通報したと思われる。国民の損害額(推定)は2億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.白楽の手紙
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

ラーフル・アグラワル(Rahul Agrawal、ORCID iD:、写真出典)は、2017年8月(27歳?)にインドで博士号を取得後、米国・NIHの国立がん研究所(NCI)のポスドクになった。専門はがん学だった。

2018年(28歳?)、推定だが、ボスのフレデリック・バー(Frederic G. Barr)が、データねつ造・改ざんに気が付いて研究公正局に通報したと思われる。

2019年8月22日(29歳?)、研究公正局はアグラワルが59個の未発表データ・画像でねつ造・改ざんをしたと発表した。締め出し期間は2019年8月8日から1年間を科した。

NIH・ベセスダ・キャンパス。小雨。2015年。白楽撮影。

  • 国:米国
  • 成長国:インド
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:インド工科大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1990年1月1日生まれとする。2017年8月に研究博士号(PhD)を取得した時を27歳とした
  • 現在の年齢:31 歳?
  • 分野:がん学
  • 最初の不正:未発表データ・画像で、2018年(28歳?)?
  • 発覚年:2018年(28歳?)?
  • 発覚時地位:米国・NIHの国立がん研究所(NCI)のポスドク
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は、推定だが、ボスのフレデリック・バー(Frederic G. Barr,)で、データねつ造・改ざんに気が付いて研究公正局に通報した
  • ステップ2(メディア):「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①研究公正局
  • 調査報告書のウェブ上での公表:あり
  • 透明性:研究公正局でクロ判定(〇)
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:0論文。未発表データ・画像
  • 時期:研究キャリアの初期から
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)をやめた・続けられなかった(Ⅹ)
  • 処分: NIHから 1年間の締め出し処分

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は2億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

  • 生年月日:不明。仮に1990年1月1日生まれとする。2017年8月に研究博士号(PhD)を取得した時を27歳とした
  • 2017年8月(27歳?):インドのインド工科大学(Indian Institute of Technology in Delhi)で研究博士号(PhD)を取得:指導者はリトゥ・クルシュレシュタ準教授(Ritu Kulshreshtha)
  • 2017年(27歳?)?:米国・NIHの国立がん研究所(NCI)・ポスドク
  • 2018年(28歳?)?:ネカト行為が発覚
  • 2019年(29歳?)?:米国・NIHの国立がん研究所(NCI)・ポスドクを辞職(解雇?)
  • 2019年8月22日(29歳?):研究公正局はアグラワルがネカトをしたと発表した

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★キャリア

2017年8月(27歳?)、ラーフル・アグラワル(Rahul Agrawal)はインドのインド工科大学(Indian Institute of Technology in Delhi)で研究博士号(PhD)を取得した。指導者はリトゥ・クルシュレシュタ準教授(Ritu Kulshreshtha、写真出典)だった。

2017年(27歳?)?、米国・NIHの国立がん研究所(NCI)のポスドクになった。所属は病理学部の癌分子病理室(Laboratory of Pathology, Cancer Molecular Pathology Section, National Cancer Institute)で、ボスはフレデリック・バー(Dr. Frederic G. Barr, M.D., Ph.D.、写真出典)である:Staff Directory – CCR Laboratory of Pathology – CCR Wiki

★発覚の経緯とネカトの内容

発覚の経緯の記載はないが、未発表のデータ・画像のねつ造・改ざんである。となれば、ボスのフレデリック・バー(Frederic G. Barr)が、データねつ造・改ざんに気が付いて研究公正局に通報したと思われる。

研究公正局は、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR )のデータと実験していないコロニー形成細胞(CFC)およびフォーカス形成(FF)アッセイの画像をねつ造・改ざんしたと結論した。

ネカト数が59個というからかなり多い。

【ねつ造・改ざんの具体例】

研究公正局は、文章でコレコレをねつ造・改ざんしたと説明している。しかし、データ・画像のねつ造・改ざんを、文字で説明されてもピンとこない。しかも、未発表のデータ・画像である。

発表論文のデータ・画像でないと、第三者は、データ・画像を入手できない。

それで、あきらめた。

本記事では、どのようなデータ・画像がどのようにねつ造・改ざんされたかを具体的に示せない。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2019年9月23日現在、パブメド(PubMed)で、ラーフル・アグラワル(Rahul Agrawal)の論文を「Rahul Agrawal [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2003~2019年の17年間の60論文がヒットした。

「Agrawal R[Author]」で検索すると、1967~2019年の53年間の1,091論文がヒットした。本記事で問題にしている研究者以外の論文が多いと思われる。

2019年9月23日現在、「Agrawal R[Author] AND Retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、1論文が撤回されていた。但し、この「Agrawal R」は、本記事のラーフル・アグラワル(Rahul Agrawal)ではなく、「Rupesh Agrawal」なので、別人である。

★撤回論文データベース

2019年9月23日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回論文データベースでラーフル・アグラワル(Rahul Agrawal)を検索すると、0論文がヒットし、0論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2019年9月23日現在、「パブピア(PubPeer)」は、ラーフル・アグラワル(Rahul Agrawal)の9論文にコメントしている:PubPeer – Search publications and join the conversation.

ただ、このラーフル・アグラワル(Rahul Agrawal)は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)に所属していて、ボスはフェルナンド・ゴメス・ピニラ教授(Fernando Gomez-Pinillaa)である。本記事で問題にしている研究者とは別人である。

●7.【白楽の感想】

《1》所属機関がネカト調査 

ラーフル・アグラワル(Rahul Agrawal)は、国立がん研究所(NCI)のポスドクになる前、インド工科大学で研究博士号(PhD)を取得した。指導者はリトゥ・クルシュレシュタ準教授(Ritu Kulshreshtha)だった。クルシュレシュタ準教授との共著論文が3報ある。1報は博士論文だろう。

  1. p53 and miR-210 regulated NeuroD2, a neuronal basic helix-loop-helix transcription factor, is downregulated in glioblastoma patients and functions as a tumor suppressor under hypoxic microenvironment.
    Agrawal R, Garg A, Benny Malgulwar P, Sharma V, Sarkar C, Kulshreshtha R.
    Int J Cancer. 2018 May 1;142(9):1817-1828. doi: 10.1002/ijc.31209. Epub 2017 Dec 23.
  2. Genome-wide ChIP-seq analysis of EZH2-mediated H3K27me3 target gene profile highlights differences between low- and high-grade astrocytic tumors.
    Sharma V, Malgulwar PB, Purkait S, Patil V, Pathak P, Agrawal R, Kulshreshtha R, Mallick S, Julka PK, Suri A, Sharma BS, Suri V, Sharma MC, Sarkar C.
    Carcinogenesis. 2017 Feb 1;38(2):152-161. doi: 10.1093/carcin/bgw126.
  3. Pluripotent and Multipotent Stem Cells Display Distinct Hypoxic miRNA Expression Profiles.
    Agrawal R, Dale TP, Al-Zubaidi MA, Benny Malgulwar P, Forsyth NR, Kulshreshtha R.
    PLoS One. 2016 Oct 26;11(10):e0164976. doi: 10.1371/journal.pone.0164976. eCollection 2016.

国立がん研究所(NCI)でネカト行為をしていたら、その直前に所属していたインド工科大学からの発表論文にもネカトがあると思うのが普通だ。

しかし、インド工科大学は調査しない。

毎度のことながら、所属機関がネカト調査する現在のシステムの欠点だ。

《2》日本ではネカトではない 

アグラワルが日本の大学でポスドクをしていたと仮定しよう。日本はアグラワルをネカト有罪としただろうか?

2014年8月26日の「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン(平成26年8月26日文部科学大臣決定)」では以下のようにある。下線は白楽。

10頁:
(3)対象とする不正行為(特定不正行為)
本節で対象とする不正行為は、故意又は研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことによる、投稿論文など発表された研究成果の中に示されたデータや調査結果等の捏造、改ざん及び盗用である(以下「特定不正行為」という。)

また、「「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」に係る質問と回答(FAQ):文部科学省」には以下の質問と回答がある。

Q3-9
 研究活動における不正行為は、「公表前」の研究成果に関する行為も含まれうるのでしょうか。
A3-9
 本ガイドラインの対象となる特定不正行為は、投稿論文など発表された研究成果に関する行為に限ります。投稿論文については、論文が掲載された時点を発表とみなします。したがって、論文を投稿したものの出版社によって掲載を拒否された研究成果など、公表されていないものについては、本ガイドラインの対象外となります。

つまり、アグラワル事件のような未発表データ・画像のねつ造・改ざんは、日本ではネカトにならない。

日本のルールは米国のルールを母体にして制定しているので、なんかヘンである。誰が制定したのか知らないが、米国のルールを理解しないで制定したのだろうか?

《3》処分が軽過ぎ? 

【主要情報源】②の「撤回監視(Retraction Watch)」記事のコメント欄に、1年間の締め出し処分では、処分が軽過ぎだという意見がいくつもあった。

事件後のアグラワルの人生状況はわからないが、米国での処分はインドでは痛くもかゆくもないでしょう。

インド工科大学の博士号を持っているので、推定だが、インドに帰国し、それなりに裕福な暮らしをするでしょう。ただ、研究者としてのキャリアを積めるかどうか、白楽にはわかりません。

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日本がもっと豊かに、そして研究界はもっと公正になって欲しい(富国公正)。正直者が得する社会に!
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●9.【主要情報源】

①  2019年8月22日、研究公正局の報告:(1)Case Summary: Agrawal, Rahul | ORI – The Office of Research Integrity、(2) Federal Register August 26, 2019-18305.pdf、(3)Findings of Research Misconduct
② 2019年8月26日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Former NCI postdoc faked data from nearly 60 experiments – Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

●コメント

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