「白楽の感想」集:2017年5-8月

3022年5月13日掲載 

「白楽の研究者倫理」の2017年5-8月記事の「白楽の感想」部分を集めた。

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《1》動機

ミラーの3つの撤回論文の内、最古のは2007年出版である。この年、ミラーは55歳(?)で、既に10年以上も大学教授を務め、優秀という評判を得ていた。多額の研究費も受給していた。

このような研究者が、どうして、ネカトをしたのだろう?

一般的に言えば、ネカトは簡単にできるし、見返りが大きく、発覚率も1%なので、まず見つからない。

だから、してしまう? イヤイヤ、それなら、もっと若い時からしていたハズだ。55歳の大学教授では、失うものが大きすぎる。

「失うものが大きすぎる」のはブレーキにならないのか?

それとも、発覚しなかっただけで、若い時からしていたのだろうか?

白楽は「若い時からしていた」可能性が「あり」だと思う。ミラーは、若い時からネカトをし、多額の研究費を得、他人より早く出世したのだろう。

棒グラフの改ざんは、一緒に研究している人しかわからない。昔の論文でも生データが保存されていれば、わかるかもしれないが、まず、保存されていない。

もし保存されていたとしても、もっているのはミラー本人だけだろう。

さらに、その生データそのものが改ざんされていたら、証明は全くできない。

つまり、棒グラフの改ざんは、内部告発でしか見つけられないし、昔のネカト行為を証明できない。

《2》情報:その1

ミラー事件は2012年の事件で5年前である。ウェブ上の情報がすっかり削除されていて、ネカトに至った状況が断片的にしかつかめない。
→ 事件報道を集めたサイトもリンクが切れている:Michael W. Miller

「ウェブ上の情報がすっかり削除」なら、白楽は、気配を察して、ネカト発覚予定者の情報を事前に収集しておかなくてはならない。

ウウン? そんなのムリだあ。ネカト発覚予定者ナンて、わかりません。

《3》情報:その2

ネカト事件は、かつて、ニューヨーク・タイムズやロサンゼルス・タイムズなどの主要新聞、それに事件が起こった地元の新聞が詳細な記事を書いていた。

日本の新聞記事が電報文のようにネカト報道をするのと異なり、米国の新聞記事は、著書の1つの章のように詳しく報道する。日本の週刊文春や週刊新潮などの週刊誌のように詳細である。本ブログではそのような記事を多いに参考にさせてもらっている。

しかし、数年前から主要新聞・地元新聞のネカト記事は激減している。報道していても記事が低調である。

どうしてだろうか?

米国社会はネカト事件への興味を失っているのだろうか?

「撤回監視(Retraction Watch)」が活動し始め、主要新聞・地元新聞はネカト記事に関して「撤回監視(Retraction Watch)」には到底かなわないと思っているのだろうか? 

しかし、読者対象は違うのだけれど。

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《1》興味

このネカト・ブログでは、セントジェームスの殺人事件には興味はない。

興味の中心は以下の点だ。

  • 若い時(今回は15歳)に殺人事件を犯した人が、どうして、大学・教授になれたのか? 発覚しても、どうして、解雇されなかったのか?

大学(米国のテキサス大学)、大学院(米国・シカゴのイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校)は殺人事件を犯した人と知らなかったので入学拒否をしなかったし、通常の学生・院生と同じように卒業させた。研究博士号(PhD)を授与した。

大学(ミリキン大学)はセントジェームスが少年時代に殺人事件を犯したことを知らずに教員に採用した。

そして、46年後に知らされても、少年時代のトラウマを乗り越えて研究・教育の人生を構築したことは素晴らしいと、解雇しなかった。

《2》大学教員に許容できない行為・許容できる行為

セントジェームス事件では、殺人犯が大学教員に在職することが許容された。

では、大学教員に許容できない行為・許容できる行為とはどんな行為だろう?

このような仕分けは日本社会でコンセンサスが得られていないと思うが、2つの事件種を例に示す。

  • 「大学教授に許容できない行為」
    わいせつ・セクハラ・・・性犯罪は再犯度が高いと思われている。大学では被害対象となる若者(男女)が多くいる。教育・研究の支障になる。

  • 「大学教授に許容できる行為」
    自動車事故・・・事故は誰にも起こる。本人の不注意が原因というケースも多いが、許容されるだろう。ただ、飲酒運転は事故予見可能(ある意味、意図的)なので事故を起こした場合、微妙だ。しかし、自動車事故を起こしたこと自体は、教育・研究の支障にはならない。

つまり、根本は、「教育・研究の支障」になるか・ならないかである。

セントジェームス事件では、46年前の15歳の時の殺人事件は、61歳の教授の「教育・研究の支障」にならないと、ミリキン大学は判断した。

では、ネカトは「教育・研究の支障になるか・ならないか?」

「ネカト行為は学問研究の根本的な規範の侵害で、罪を償ったらリセットできるという種類の行為ではない。一度、崩れた信頼は取り戻せない。そして、学問、研究、教育では信頼は必須である」。

だから、ネカト行為は教育・研究の支障になる。それで、「ネカト者は学術界から追放!」が基本である。

《3》名前

セントジェームス事件の教訓の1つは、過去に殺人事件を犯しても「名前を変えれば別人になれる」ということだ。

現代では、犯罪記録や資格・免許登録は名前で行なっている。

だから、過去に殺人事件を犯しても名前を変えれば、他人にはわからない。大学教員になれる。

ネカトで言えば、過去にネカトで大事件を犯しても名前を変えれば、大学教員になれる。講義し、学生・院生の指導ができる。研究費を申請し、得られた研究成果を論文に出版できる。

実名で論文出版しにくい場合、実名を変えずに論文ネームを変えれば、論文出版できる。実例もある。
→ 気象学:ネッド・ニコロフ(Ned Nikolov)(米) | 研究倫理(ネカト)

一般的に、婚姻、離婚、養子縁組をすれば、正式に姓を変更できる。なお、それほど深刻な姓ではなかったのに、知り合いの米国人は姓を変えた。米国では日本より容易に姓の変更ができると思う。

セントジェームス事件では、無罪とはいえ殺人事件の犯人が姓を変えることができた。同じような事件を起こした場合、日本では姓を変えられるのか、白楽は調べていないが、難しいだろう。

ネカト事件で名前の問題を議論したいのだが、ネカト事件ではピンとこない人が多いだろう。

わいせつ教員で話を進めよう。

2013年に26歳の時、児童買春・児童ポルノ禁止法違反で停職6か月の懲戒処分を受けた埼玉県の小学校教諭が、教員免許状の「名前を変え」(簡単に変えられるとは思えないが・・・)、愛知県の臨時講師になった。最初の事件から4年後の2017年、今度は、強制わいせつ容疑で再び逮捕された。
→ 児童性愛者が学校勤務、知る権利か?忘れられる権利か?:朝日新聞デジタル

日本の小中高のわいせつ教員の一部が、他校に再雇用されていたため、15億円かけてシステムを作り、2020年度から教員免許失効を検索できるようにするそうだ。なお、このシステムができても上記の「名前を変えた」人の再雇用を防げない。

一般的に、わいせつ教員を匿名で報道するから、世間が認識できない。

わいせつ教員を匿名で報道するのは被害者を保護するためと建前は言うが、しかし、被害者の保護とは思えない場合でも匿名で報道する。学校・大学が騒がれたくないから、事件を隠したいから、場合によっては加害者をかばおうとして、匿名にしている。

大学・研究機関の教員・研究者の「セクハラ」犯もほとんどが匿名で報道される。従って、世間は「セクハラ」教員・研究者を認識できない。自分の娘がセクハラ教員の指導下にいても、娘本人も娘の親もわからない。

「セクハラ」で懲戒処分(例えば停職処分)を受けた教員・研究者とは知らずに、学生は指導教員として選んでしまう。

大学は「セクハラ」教員を解雇しないし、匿名で秘匿するから、かわいそうに、同じ大学の別の学生が犠牲になる(東京芸大セクハラ50代教授はE氏?2007年の再犯? | 楽天Social News)。

この場合、大学に責任があると思うが、大学の責任を追及した裁判はまだ起こっていない。

また、「セクハラ」で懲戒解雇の処分を受けた教員・研究者とは知らずに、他の大学・研究機関が教員・研究者として採用してしまう。

「ネカト」も同じである。

大学は「ネカト」教員を解雇しないし、時によると匿名で秘匿するから、かわいそうに、知らない学生はネカト教員を指導教員に選んでしまう。

つまり、人道的配慮をしつつも、基本的に、実名報道し、解雇することを徹底すべきである。

なおかつ、姓名を変えても追跡できるシステムを構築する。

そうでないと、「ネカト」者が学術界に居残ることになる。「ネカト」者が学術界に居残れば、ネカトは減らない。学術汚染は除けない。

《4》若い時の重大犯罪

セントジェームス事件のように、若い時に殺人事件を起こしたケースは、最近の日本にもある。

2014年、高校1年の女性が同級生を殺害した。佐世保女子高生殺害事件である。裕福な家庭に育ち、本人は頭が良い。セントジェームス事件を知った時、すぐ、似てるなあと思った事件である。

2014年、19歳の名古屋大学女子学生の殺人事件もある。名古屋大学に入学できるのだから、優秀な頭脳の持ち主に違いない。

名前を変えて、将来、大学教授になるのだろうか?

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《1》教授と院生がグル

チランジーヴィ事件では、教授と院生がグルになっていた。院生が盗用候補となる論文を探し、論文を盗用し、自分たちの出版論文を量産していた。

この場合、悪いのはどう見ても、教授の方だ。元々、院生は研究室に入るまで、盗用の意図はなかっただろう。しかし、教授から盗用を持ちかけられたら、院生は加担するか、研究室を出ていくかの2者択一になる。加担者になるのは何割か、白楽は、一般的なデータを知らないが、数割に及ぶと思う。

白楽は世界中のネカト事件をたくさん調べてきたが、大学当局が、教授と院生がグルだったと結論したケースはなかった(とても少ない)。

どうしてだろうか?

教授をクロと判定した場合、実際は院生が加担していたとしても、院生は被害者でもあるので、意図的に院生をシロと結論するのだろう。

一方、日本の加藤茂明事件では、研究室の院生や教員を6人も共犯として処分している。これはまっとうな処分なのだろうか? ある意味、院生は被害者ではないのか?

《2》大甘な処分

インドのネカトで、調査が適切で処分も適切と感じる事件もある。しかし、チランジーヴィ事件は全くヒドイ。大学はまともに調査した形跡がないし、処分は「管理職に就任できない処置」で、解雇どころか休職もない。

2017年8月27日現在、チランジーヴィは、同じ大学の化学科・教授である。一緒にネカトした当時の2人の元・院生のうち1人は、インドの大学の助教授になっている。

これでは、盗用はなくならない。盗用した方が得である。

ネカト者をクビにせよ!

と、白楽は主張する。

インドに正義はないのか?

ただ、お前の国はどうなんだと言われると、スンマセンと謝るしかない。
日本よ、もっとチャンとして欲しいぜ。

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《1》興味

このネカト・ブログでは、エスパルザが殺人事件にどうかかわっているのか、という点に興味はない。

興味の中心は以下の点だ。

  • 若い時(今回は20歳)に殺人事件を犯した人が、どうして、大学・助教授になれたのか?
  • 大学(米国のポモナ・カレッジ(Pomona College))は殺人事件を犯した学部生を除籍しなかったが、除籍できないのか?
  • 大学院(米国・シカゴのデポール大学(DePaul University))は殺人事件を犯した人を入学拒否しなかったが、拒否できないのか?
  • 大学(ウェブスター大学ジュネーブ校)はエスパルザが犯罪関与者だと知っていて採用したのか? 知らないで採用していたら、新聞で公表された事実から、解雇したのか? それとも、米国で6年間の刑務所刑が宣告され、教育・研究に支障があるから解雇(辞職?)したのか?

殺人事件をネカト事件と比べて(?)みる。

日本ではネカトを犯した大学教員が停職処分を受けるケースが多い。この場合、停職期間が過ぎたら、大学教員に復帰する。米国ではネカトを犯した大学教員は学術界から追放されるのが基本である。大学教員に復帰することはほぼない。

「ネカト行為は学問研究の根本的な規範の侵害で、罪を償ったらリセットできるという種類の行為ではない。一度、崩れた信頼は取り戻せない。そして、学問、研究、教育では信頼は必須である」と、白楽は思っている。だから、「ネカト者は学術界から追放!」が基本である。

しかし、エスパルザ事件では、殺人犯が学術研究者になっていた。

犯罪事件を起こした人を学術研究者として許容するのは、一般的に、どのような考え・哲学・法規なのだろう?

なお、パトリシア・エスパルザは心理学の助教授なので、自分の犯罪経験が学問的に役立つという視点は一般的な議論に合わないので、ここでは論じない。

白楽は「ネカト者は学術界から追放!」という考えだが、しかし、ネカト者を更生しようという動きもある(例①https://wired.jp/2017/08/16/scientist-screwed-up-try-researcher-rehab/、②https://archive.is/xxPzB)。

そして、最初の質問「若い時(今回は20歳)に殺人事件を犯した人が、どうして、大学・助教授になれたのか?」に戻る。

エスパルザ事件のいろいろな記事・資料にあたってみたが、答えが書いてない。

結論として、大学・大学院、そして助教授に採用した大学は、エスパルザの殺人事件を知らなかったというのが真相のようだ。

殺人事件をメディアが報道しない場合、日本でも外国でも、本人が願書や履歴書の賞罰欄に「殺人罪で逮捕」と書かなければ、大学院に入学でき、博士号を取得でき、大学の助教授に採用される。当然ながら、自分で「殺人罪で逮捕」と書く人はいない。

ネカト事件でも同じである。解雇された研究者をメディアが「実名」報道しない場合、日本でも外国でも、ネカト学者は別の大学・研究機関に再び採用され、知らぬ顔して大学教員・研究者を続けるだろう。当然ながら、履歴書に自分で「ネカトで解雇」と書く人はいない。

セクハラ教員も同じである。日本の小中高のわいせつ教員の一部が、黙って他校に再雇用されていたため、15億円かけてシステムを作り、2020年度から教員免許失効を検索できるようにするそうだ。履歴書に自分で「セクハラで解雇」と書く人はいない。

大学・研究機関の教員・研究者の「セクハラ」「ネカト」「犯罪」の検索システムも必要でしょう。

過去にどのような不正を犯したら学術研究者は追放されるのか、外国の考え・哲学・法規を具体的に知りたかった。しかし、エスパルザ事件からはこの答は得られなかった。

なお、日本の規則を十分調べていないが、神戸大学の職員就業規則はわかりやすい。

(懲戒)
第58条 大学は,職員が次の各号のいずれかに該当する場合においては,懲戒処分を行う。
(1) 業務上の命令,指示に従わない場合
(2) 正当な理由なく,しばしば欠勤,遅刻,早退するなど勤務を怠った場合
(3) 窃盗,横領,傷害等の刑法犯に該当する行為及び飲酒運転等の道路交通法に違反する行為があった場合
(4) 許可なく兼業を行った場合
(5) 大学の名誉又は信用を傷つけた場合
(6) 素行不良で学内の秩序又は風紀を乱した場合
(7) 経歴を詐称した場合
(8) 故意又は重大な過失によって大学に損害を与えた場合
(9) ハラスメントと認められる行為があった場合
(10) その他この規則に違反した場合,又は前各号に準じる不都合な行為があった場合

殺人罪は、「(3) 窃盗,横領,傷害等の刑法犯に該当する行為」なので、在職中に「殺人罪で逮捕」されたら、懲戒処分(解雇?)を受けるだろう。

神戸大学様、是非、この58条に、「研究ネカトと認められる行為があった場合」も加えてほしい。

なお、犯罪事件を犯した場合、医師国家試験に合格しても、行政処分として医師免許が保留されるおそれがある。というのは、医師法の第4条3に、(刑事事件で)罰金以上の刑に処せられた者に免許を与えないことがある、ためだ。(2004-09-24奥村徹(大阪弁護士会) 

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《1》大学院・研究初期

「研究上の不正行為」は、初めて不審に思った時、徹底的に調査することだ。

ミルチャンダニの場合、ヴァーツ教授が初期段階でデータの異常に気が付いて、対処した点は、とても称賛できる。

学会発表も論文発表もない分、損害は少ない。研究費の損害も少ない。研究室の他のメンバーの損害も少ない。パチパチ。

ただ、ミルチャンダニは院生である。この段階で指導教員がネカトを大学に報告し、大学が調査し、研究公正局も出動するのは、ヤリスギである。

ネカトをしてはいけないことを研究室で指導し、その後、様子を見ながらネカトしない人間にミルチャンダニを育てられなかったのだろうか?

と思うが、院生の性格・将来性は指導している教員しかわからない。

ミルチャンダニは院生ではあるが、学部生のころから、旅行業「Escapes In The Sun」で働いていて、社長補佐にもなっていた。本気で研究する気がないし、能力もないと、ヴァーツ教授は感じていたのだろう。

それで、ネカトをしおに研究界から放り出したに違いない。大学と研究公正局を巻き込むのはヤリスギだが、放り出したのは正解なのかもしれない。

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《1》不正する人、不正できるシステム

未承認の工業用シリコンを使用したのは、安いからである。つまり、ボロ儲けしようとしたのは明白だ。

こういう不正の防止策を練るとき、人間と社会システムの関係をどうとらえるべきなのか?

例えば、取られては困るが、1万円札を展示したい、としよう。

状況。1万円を取ってはいけない表示をし、机の上に無造作に1万円札を置いておく。誰も見ていなければ、多くの人は1万円を取っていく。

防ぐ方法1「システム」。1万円札がとられないように、上面を厚いガラス板で覆った金属の箱に入れ机に固定する。かなり悪い人が来ても持っていけない。

防ぐ方法2「厳罰」。机の上に無造作に1万円札を置いておく。しかし、1万円札を取ろうと手を伸ばしたら、警備員が射殺する。すでに2人ほど射殺されていて死体が転がっている。かなり悪い人が来ても持っていけない。

防ぐ方法3「教育」。1万円を取ってはいけない表示をし、机の上に無造作に1万円札を置いておく。ただし、警備員はいない。1万円を取らないよう、人々を教育する。

方法1と方法2は極端だが、通常は、その間のどこかが有効に思える。

PIP社事件では、PIP社の社長と幹部が10年間も不正を行なってきた。その状況は、方法1と方法2の両方がとても甘かったためだ。

事件の結末では、PIP社の社長と幹部を逮捕し罰を与えたが(方法2)、不正な製品を10年間も製造・販売できるシステム(方法1)にも大きな問題があった。

なお、研究ネカト対策で日本がよく行なうのは研究倫理教育とか研修である。これは、上記に当てはめると、方法3である。

机の上に無造作に置いてある1万円札を、「誰も見ていなくても、持っていくな」と教育していることになる。

白楽は大学教授だったので、教育が業務だった。研究ネカト防止の一環として教育・研修をしてきたし、今もしているが、教育・研修は決定打にならないと思う。特に「かなり悪い人」には全く無力である。

《2》防ぐ方法

https://www.theguardian.com/world/2013/apr/17/pip-breast-implant-victims-trial

ジャンクロード・マスは、逮捕され裁判中も一貫して、PIP社のシリコン豊胸バッグに危険はないと主張している。

しかし、使用が承認されていない工業用シリコンを使用していた。そのコストは医療用シリコンの10分の1である。検査員が来たときは工業用シリコンの使用を隠蔽している。

状況から判断して、健康被害よりも欲得を優先したのは明白だ。

このような不正を防ぐ1つ目の方法は、合法的な製品の製造だ。

PIP社の元・従業員のエリック・マリアッチャが指摘するように、「PIP社の化学者は危険なシリコン豊胸バッグを製造していることを知っていたハズだ。責任は会社の責任者、特に生産部門の品質管理を担う4人だ」。

全く同意見である。会社の幹部は、材料を医療用シリコンから工業用シリコンに切り替える件を話し合ったハズだ。この時、化学者や生産部門の品質管理を担う幹部は、製品が危険で、未承認は違法であることを知っていたハズだ。

その時、どうして誰も反対しなかったのか? 金銭的な得があっても、危険な製品、未承認の製造方法は会社の命取りでしょうに。

この段階で工業用シリコンから医療用シリコンに切り替えなければ、豊胸手術を受けた女性に健康被害もなく、PIP社も存続できた。しかし、金銭的な得を優先したことで、健康被害がで、PIP社も倒産した。

不正を防ぐ2つ目の方法は、製品の検査である。

PIP社事件では、品質保証企業・TÜV社が検査でヘマをして、粗悪製品を摘発できなかった。この段階で摘発できていれば、豊胸手術を受けた女性の健康被害は少なく、PIP社も存続できた。

しかし、検査でのヘマの責任を問われ、品質保証企業のTÜV社は、総額6千万ユーロ(約72億円)の賠償を命じられた。

不正を防ぐ3つ目の方法は、内部告発である。

PIP社の元・従業員のエリック・マリアッチャが指摘するように、「PIP社の化学者は危険なシリコン豊胸バッグを製造していることを知っていたハズだ」。

全く同意見である。会社の幹部が、材料を医療用シリコンから工業用シリコンに切り替えれば、現場の化学者は納入した材料の容器名や性状から、従来品とは違う粗悪品だと気が付いたハズだ。

その時、化学者や現場の従業員は、誰も異常を訴えなかったのだろうか?

白楽が思うに、異常に気が付き、内部告発した人はいたと思う。ただ、コクハラされ、会社につぶされたのだろう。

内部告発が早期に機能し、もっと早く、外部からのまともな査察が行なわれていれば、豊胸手術を受けた女性の健康被害は少なく、場合によれば、PIP社も存続できただろう。しかし、内部告発は機能せず、健康被害者がでて、PIP社は倒産してしまった。

内部告発が有効に機能するシステムを作ることが、とても重要だと思う。

PIP社事件では、これら3つの予防策がどれもうまく機能しなかった。

その結果、使用者の健康が損なわれる事態になった。その治療にあたって医師からの指摘を受け、PIP社のシリコン豊胸バッグの問題が発覚した。

PIP社事件はフランスの医療関係で最大規模の事件に発展し、PIP社は倒産し、社長は4年間の刑務所刑が科され、30~50万人の女性のシリコン豊胸バッグの摘出・交換という事件になってしまった。最悪のシナリオである。人間って、愚かなんですね。

《3》美容整形

PIP社事件は、産業製品の不正である。食品や家電品などの産業製品も未承認の製品は不正であり、粗悪品は不正でなくても人々に害を与える。

しかし、シリコン豊胸バッグは食品や家電品などとは違う微妙な問題を含んでいる。

消費者(使用者)はシリコン豊胸バッグで乳房を大きくしたことを隠しておきたい。

女性は自分の豊かな胸は、実はフェイクで、豊胸バッグを挿入したために豊かなのだと公言したくない。だから、豊胸バッグ会社を正面から訴える活動がしにくい。

それに、豊胸した自分の胸を見ても、使用した豊胸バッグがPIP社製のものかどうかわからない。使用者は、手術時にサイズと形状を選択するが、製造会社は医師が決めているので、さほど気にしない。

手術時に医師がくれる「豊胸バッグ識別カード」(以下の2つの写真の女性が手に持っているカード)を保存していれば、判別できる。しかし、保存先を忘れてしまうかもしれない。

2つの写真とも「豊胸バッグ識別カード」。写真出典

「豊胸バッグ識別カード」が不明なら、挿入した豊胸バッグを取り出して製品番号や製造社名を見ないとわからない。それには手術が必要だ。

また、破裂する可能性は5%とか1%、イヤ、7%だとか、かなりの幅がある。つまり、どこも正確なデータを持っていない。それなら、しばらくそのままにしておこうという気持ちになる。

また、豊胸バッグは、破裂してもシリコンが充填されているので、風船のようにパンクし、しぼむわけではない。バッグに穴が開いて、シリコンが徐々に漏れる。変形するか生理的な異常がなければ、豊胸バッグが破裂していてもわからない可能性が高い。

このように秘密にしておきたい・隠しておきたい製品やサービスの領域でねつ造・改ざんがあると、発覚しにくい。性に関連する製品やサービスではネカトが発生しやすい。

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《1》どうすべきか?

カーメン・プリアフィート(Carmen A. Puliafito、写真出典)の「買春と薬物」事件を、ネカト・ブログに取り上げたが、ネカト事件ではない。

ネカト事件ではないが、ネカト行為とその防止を考える上で参考になることが多い。

カーメン・プリアフィート学部長は、職場では「超優秀な研究者、パワフルな学部長」、家庭では「華麗な人生、華麗な家族」だった。カーメン・プリアフィート学部長に犯罪歴はない。

このように一見非の打ちどころのない、しかも学術的にも社会的にも偉い人が、「買春と薬物」事件を起こしたのである。

「買春と薬物」行為は、この事件の日に初めて行なった破廉恥行為とは思えない。ロサンゼルス・タイムズ紙によれば、サラ・ウォーレンとの付き合いは1年半に及んでいる。

30代・40代から「買春と薬物」行為をしていたのか、50代あるいは60代で始めたのかは定かではない。

プリアフィートの長年の友人の話を信じると、少なくとも「薬物」使用は、プリアフィートが2001年に50歳でマイアミ大学・教授に移籍してからである。

「買春と薬物」行為をネカト行為に当てはめてみよう。

著名な学者が、しなくてもいいと思えるネカトを50代(あるいは60代)で始めたとする。

一般的には、ネカトの動機はトク(学術的成功、昇進、研究費、メンツ)を得るためだ。

だから、「必見」と「必厳罰」でネカトを大きく防止できると白楽は考えている。
→ 1‐5‐4.研究ネカト飲酒運転説 | 研究倫理(ネカト)

しかし、プリアフィート学部長の「買春と薬物」の場合、トクと言っても刹那的な快楽という「トク」であって、地位や金銭のトクではない。

冷静に考えれば、「買春と薬物」は、地位・名声・財産・家族を失うとても危険な行為である。それなのに、どうして「買春と薬物」をするのだろう?

「必厳罰」をネカト対策の基本の1つに設定したが、プリアフィート学部長のような「買春と薬物」事件では抑制効果は少ない。もちろん、研修はもっと効果がない。「買春と薬物」が悪いことだと知らない人はいないからだ。

拙著・『科学研究者の事件と倫理』(講談社、2011年9月)で述べたように、プリアフィート学部長の「買春と薬物」行為の動機は以下の2つに当てはまる。

  • 「狂気」……「悪い」「割に合わない」ことだと知っていても不正をする人がいる。
  • 「研究者特殊観」……研究者だからといって「悪い」ことをしても許されることはないが、ゴールドシュタインやホッホハウザーが指摘したように、研究者は別格で特殊だという価値観をもつ研究者はかなり多い。
    (拙著・『科学研究者の事件と倫理』(講談社、2011年9月))

プリアフィート事件では、「買春」はまだしも、「薬物」使用はもっと早く見つけることができた。

プリアフィート学部長が講演している動画で、口の中に薬物が写っていて、プリアフィート学部長がそれを飲み込んでいるシーンがある。「薬物」の常習を周囲は気が付いていたのに違いない。

プリアフィート学部長の「薬物」使用をもっと早く見つけ対処すべきだった。 → 「必見」

そして、動機は「狂気」や「研究者特殊観」なので、学術界から排除すべきだった。

Carmen A. Puliafito, M.D., Dean of Keck School of Medicine at USC, speaks at the USC Norris Comprehensive Cancer Center Gala at the Beverly Wilshire Hotel on Saturday, October 10, 2015 in Beverly Hills, Calif. (Photo: Alex J. Berliner/ABImages) via AP Images

《2》倫理度

カーメン・プリアフィート学部長は、「超優秀な研究者、パワフルな学部長」だった。

現代の研究者は研究論文の質と量でしか評価されない。質の良い論文を多く出版していれば、結果として多額の研究費を獲得できる。優秀な院生・ポスドク・研究員も多数集まってくる。学術的成功、昇進、研究費、メンツが得られる。

つまり、質の良い論文を多く出版してさえいれば、人間的に問題があっても、教授になれる。学部長になれる。いろいろな賞を受賞できる。ノーベル賞ももらえる。

研究者としてのキャリア・アップに、人格や人間性は問われない。

研究者だけでなく、政治家も「このハゲ~」「違うだろ!」と部下を罵倒する人が国会議員になっていた。森友学園・加計学園で平然と嘘をつく政治家や官僚が、クビにならないどころか栄転する。

現代の日本では、偉くなるということは、カネと権力を握ることであって、品格や人徳とは無縁である。イヤ、むしろ邪魔である。ない方が出世している。

しかし、今も、これからも、日本がこういう社会でいいのだろうか? 白楽はとても許容できない。

どうするといいのか?

拙著・『科学研究者の事件と倫理』(講談社、2011年9月)で述べたように、社会で偉くなるには倫理度という尺度でも評価すべきだろう。

研究者の評価に、東洋思想の「徳」「善」を1つの指標に加えた「倫理度」を導入するのはどうだろう。論文数、研究費獲得額とは別に「倫理度」でも研究者を評価する。いかに優れた論文を多数発表していても、いかに多くの研究費を獲得していても、「倫理度」が低いと、研究者として採用されないし、昇進できない。大学運営、学会役員、政府委員などにも採用されない。では、倫理度をどう決めるか? 研究成果、学歴とは無縁にし、「徳」「善」を中心に、社会への発信度も入れる。(拙著・『科学研究者の事件と倫理』(講談社、2011年9月))

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《1》正義感、記録公開

白楽はインドの研究文化は杜撰でいい加減だと思っていた。だから、ネカトをする人はとても多いと思っていた。

しかし、調べていくうちに、不正に熱心に立ち向かう人々が多いことに、驚いた。
 → 法学:チャンドラ・クリシュナムーティ(Chandra Krishnamurthy)(インド) | 研究倫理(ネカト)
 → 物理学:バルワン・ラージプット(Balwant Singh Rajput)(インド) | 研究倫理(ネカト)

また、今回のクンドゥー事件もそうだが、その調査記録を丁寧に記載し誰もがアクセスできるようにウェブ上にアップしていることも素晴らしい。

インドの研究者の正義感と行動、それに、彼(女)らの賢さに敬服する。

ただ、クンドゥー事件で惜しむらくは、「ネカト者は解雇!」していないことだ。

そもそも、政府・バイオテクノロジー省が、名誉・名声だけのゴビンダラジャン・パドマナバンを委員長とする調査委員会を設けたのが、おかしい。

ネカト調査は政治マターではなく、調査・捜査・分析マターである。調査・捜査・分析に優れ公正な判断ができる委員で行なうべきだった。

とはいえ、日本は、インドからたくさん学ぶ点がある。

ただ、根本が異なる。「インドに正義がある」が「日本に正義はない」。日本の政治家と官僚は平然と事実を隠蔽し記録を秘匿・廃棄する。

「日本に正義はない」。日本のこの慣行を正す方法は、・・・、ムムム、・・・、白楽には思いつけない。

日本の法務省は、英語で「Ministry of Justice」である。しかし、基本的に、「justice」は、「正義、公正」であって、英語文化で考えれば、「正義、公正」を判定・実施するところである。

ところが、日本の法務省設置法3条に「法務省は、基本法制の維持及び整備、法秩序の維持、国民の権利擁護、国の利害に関係のある争訟の統一的かつ適正な処理並びに出入国の公正な管理を図ること」である。

「正義、公正」よりも法律が優先してしまう。というか、「正義、公正」の価値観は一言も書いてない。

ゴパル・クンドゥー

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《1》行政不服審査

研究公正局のクロと判定された研究者が「おそれいりやした」と素直にネカトを認めればいいが、そうでない場合が勿論ある。研究公正局の審査員も生身の人間だから、判定を間違えることはある。

この場合、クロと判定された研究者は、当然の権利として、審査が不当だと訴えることができる。研究公正局での判定での不服は、健康福祉省(HHS)の行政不服審査(Departmental Appeals Board)に上告することになる。

ここでは、健康福祉省(HHS)の行政法判事(Administrative Law Judge:ALJ)が判定することになる。

研究公正局がクロと判定した研究者の何%が上告するのか、白楽はデータを持っていない。

ただ、昔、白楽は、NIH・国立がん研究所のプログラムディレクターの研修員(正式名称は?)だったことがある。研究費配分審査に不服がある研究者も行政不服審査(Departmental Appeals Board)に上告でき、毎年、数人が訴えると聞いた。

つまり、頻繁ではないけど、珍しいことでもないようだ。

《2》米国の問題

米国の研究倫理システムは世界最高だと思うが、おかしな面も結構ある。
→ 1‐3‐3.米国の研究ネカト問題 | 研究倫理(ネカト)

ザウアー事件でも、問題を露呈している。

2014年、科学庁(NSF)はザウアーをクロと判定し、5年間の締め出し処分を科した。しかし、その調査を研究公正局と一緒に行なっていないばかりか、調査資料を共有していない。随分無駄なことをしている。

ジョン・ノーブル教授(John H Noble Jr)も上記の点を指摘している。ジョン・ノーブル教授は、締め出し処分が終身ではなくて5年間とは処分が軽すぎとも指摘している。公正な研究者で研究費が不足している人はたくさんいる。 → ココ

標語:「ネカト者は解雇!」

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《1》ネカトした方が得

社長のドン・クレイヴン(Don Craven)は研究博士号所持者である。記載はないが、多分、化学分析の専門家なのだろう。

となれば、測定値の改ざんは、他の会社が同じ分析をすれば、おかしいとわかるのを承知していたハズだ。

1975年にクレイヴン分析社を設立し、最初からデータ改ざんしていたとは思えない。1990年に発覚するまでには15年間あるが、新聞記事では「10年間以上データ改ざんしていた」とある。しかし、実際は、いつからデータ改ざんしたのかは、改ざんした本人しか、イヤ、本人もわからないだろう。

どの時点からデータ改ざんが始まったかを問わず、分析を依頼した会社は、結局、すべての分析をやり直すことになる。

しかし、ドン・クレイヴンがどうしてデータ改ざんをしたのか、記事からはわからない。

白楽が推察するに、分析すべき仕事量が増えてきて測定が間に合わなくなり、測定が間に合わなった分だけ改ざんをした。これなら、マー、被害は重大ではないかもしれない。

しかし、そうではなく、測定は正確に行なわれていたが、依頼農薬会社が望む測定値ではなかったとしよう。つまり、残留農薬量が基準値を超えていた。その量では、環境保護庁(EPA)から農薬使用の認可が下りない。認可が下りない測定値を依頼主の農薬会社に報告したら、もう分析の依頼が無くなる。

それで、ほぼすべての検体の残留農薬量が基準値以下になるよう数値を改ざんしたのだろう。しかし、チョコチョコ改ざんするのは面倒である。それで、システマチックに残留農薬量が低く出るように測定装置を加工したのだろう。そうなると、人々が口にした果物、野菜には、実際は、基準値以上の農薬が残っていたことになる。

死者や健康被害者の報告はなくても、膨大な人数の健康に悪い影響を与えたことは確実である。

現状のシステムでは、発覚しなければ、データをねつ造・改ざんした方が得である。100%発覚するシステムにしないと、なくならないだろう。

《2》専門家の測定

クレイヴン事件は、昔、米国で起こったインチキ安全性試験の事件である。

日本がこの事件から学ぶことは少ない。と切り捨ててよいだろうか?

現在、日本のあちこちで、同類の測定が行われている。さらに広げれば、権威のある国立・公立試験所が様々な科学的数値を提供している。国民はそれらの数値や判断を疑うことなく信じてよいのだろうか?

例えば、東京都が移転を進めた豊洲市場だが、豊洲市場の安全性試験で、有害物質が検出されなかったり、検出されたりした。人々は測定結果を正しいと想定して議論する。

しかし、ネカト専門家である白楽は、科学技術者が測定するその測定法にバイアスや杜撰さがあるかもしれない。発表した測定値にねつ造・改ざんがあるかもしれない。と思ってしまう。

というのは、データの公正性が保証できるシステムになっていないからだ。測定した人が、数値を少し変えた時、それを100%見つけるシステムになっていない。イヤイヤ、1%(100回の内1回)さえ、見つけるシステムになっていない。

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《1》保存よし

15年前の2002年の事件なのに、インターネット上の新聞記事がよく保存されている。カンシン、カンシン。

《2》学長の不正

ラージプット事件は学長の盗用事件である。解決に、インド大統領が動いた。

学長の事件は、所属教授が告発しても、学長は自分に都合の良い命令をし、コクハラ(告発教授をハラスメント)する。事件はドロヌマ化した政治抗争になり、長期化し、解決しないことが多い。日本の東北大学、岡山大学、琉球大学の学長のネカト事件ではいずれも同様である。

ラージプット事件から日本が学ぶ点は、日本の総理大臣あるいは文部科学大臣が解決に乗り出し、学長を罷免することだ。

《3》ノーベル賞受賞者

外国のネカト事件の対処で立派だと感じることは、上記のように大統領などが解決に動くことだ。

と同時に、ラージプット事件でみたようにノーベル賞受賞者も問題の解決に動いたことだ。ラージプット事件から日本が学ぶ点は、日本のノーベル賞受賞者も社会正義のために力を発揮すべきということだ。かつて湯川秀樹はそうだった。益川敏英もエライと思う。しかし、大多数は・・・。

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《1》関心・必見・必罰

ストレーベ論文は40件のネカト事件を分析し、ネカトを減らす方向を示した。

そして、「ネカト行為を減らすには、①ネカトで得られる報酬を減らし、②ネカトの罰を強化することだが、最も重要なのは、③発覚の可能性を高める」と結論した。

ウ~ン、白楽も「「関心」・「必見」・「必罰」がネカト防止策の3本柱」だと、ほぼ同じことを講演し執筆していた。
→ 『情報の科学と技術』66巻、 2016年3月号「研究倫理」特集号の「海外の新事例から学ぶ「ねつ造・改ざん・盗用」の動向と防止策」。
アクセスはココから→http://doi.org/10.18919/jkg.66.3_109

結局、ネカト事件を分析すれば、同じ結論になるということだ。しかし、日本の政府主導のネカト対策は、上記の②③を全く軽視している。

生命科学系の研究者も、依然として、研修が重要という的外れな提言をしている。例えば、日本医学会連合:研究不正防止へ、倫理習得​義務付け提言」とある。ナンてこった! マズイぞニッポン!

《2》7論文の量

ストレーベ論文は40件のネカト事件を分析し、1つの論文として出版した。

比べて悪いが、白楽は既に約300件のネカト事件を調べた。ストレーベ論文と同じように40件で1論文なら、7論文以上の量となる。

量的比較はあまり意味がないが、読者のみなさんには、白楽のブログの量がそのレベルにある、とご理解してくださいね。

ストレーベ論文に比べ、白楽のブログの質は、$B▽$=$&〇$M!とご理解、アレ、文字化けしてます?

なお、白楽は日本の研究倫理システムを大きく改善し、日本の研究環境を優れたものにしたいだけだ。主眼は日本人の役に立てばいいだけだから、日本語で書く。外国人の役に立ってもいいけど、英語論文や国際会議で外国人向けに発表する気はさほどない。

それに、学術的な職に就いていないので、研究費を獲得し、院生を育てる必要もない。英語の論文を出版する意味がほとんどない。

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《1》詳細不明

アニタ・リソウスキーは学術誌に論文を1報も発表していない。ドイツの博士号授与規定を知らないが、ドイツでは、それでも、博士号が授与される(推定)。

アニタ・リソウスキーの博士論文は、盗用ページ率が100%である。1ページを例示したが、見事に逐語盗用で、全体でみてもほぼ100%の盗用文字率である。

どうやら、アニタ・リソウスキーは論文を書く能力がないと思われる。

それなら、博士号を授与すべきではなかった。

この事件は、さほど古くない事件だが、盗博に至る状況が見えてこない。盗用ページ率・盗用文字率が100%の博士論文を認める(誰かが教唆した?)状況が見えてこない。従って、どうすると盗博を防止できるのかは、見えてこない。

標語:「盗博の博士号は当然はく奪!」

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《1》余罪

「2016年のPLoS One」論文は、ブランディ・ボーマンが31歳の時に出版した論文である。その若さでネカトをしているのだから、それ以前からネカトをしてきたと思われる。

大学院生時代あるいは研究初期に、研究規範を習得できていないということだ。

ブランディ・ボーマンの場合、NIH・NIEHS(国立環境健康科学研究所)から発表した「2016年のPLoS One」論文だけが調査され、ねつ造・改ざんがあったとされた。

それで十分だろうか?

院生として過ごしたテネシー健康科学大学での2論文と博士論文、NIH・NIEHSのポスドク以前にポスドクだったノースカロライナ大学チャペルヒル校での5論文でも、ねつ造・改ざんしている可能性がかなり高い。調査すべきだろう。

《2》研究公正局はまだ生きている?

米国の研究公正局は、2017年6月19日にブランディ・ボーマン事件を発表したが、それ以前の9か月間、事件の発表がなかった。それ以外にも「研究公正局が崩壊している」と思えるフシがあり、白楽は心配(白楽が心配しても意味ないんですけど)していた。
→ 1‐3‐3.米国の研究ネカト問題 | 研究倫理(ネカト)

ブランディ・ボーマン事件を発表した10日後、2017年6月29日、フランク・ザウアー(Frank Sauer)のネカトを発表した。この2つの事件発表で、研究公正局は再建しつつあると受け取っていいのだろうか?

イヤイヤ、かつて研究公正局で働いていた人「RetiredRIO」が、ブランディ・ボーマン事件のコメント欄に「研究公正局は死んでいる(ORI is dead now dead)」と2017年6月19日に書いている。

1つ2つ事件の発表で、研究公正局の再起を期待するのは甘いかもしれない。

ただ、ブランディ・ボーマン事件の調査と発表は迅速だった。

ブランディ・ボーマンがねつ造・改ざんした「2016年のPLoS One」論文は、2016年10月に出版されている。

ネカトの発表が2017年6月19日なので、論文出版から9か月で、ネカトを受理し、調査を終え、発表したことになる。ブランディ・ボーマンはNIHの研究者なので、調査は大学ではなく、研究公正局が直接行なった。

従来、研究公正局はグズ・ノロと批判されてきたが、今回の事件はソコソコ迅速だった。エライ!

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《1》問題点?

メディアトール事件は、服用した人の内、500~2000人(2,100人?)が死亡し、フランス最大の医薬品スキャンダルになった重大事件である。

セルヴィエ社は危険データを隠蔽し、長年市場で販売していたと非難された。危険データを隠蔽していたという点で、本ブログでは、データねつ造・改ざん事例として扱った。

しかし、その危険データがどういうものかハッキリしない。臨床試験データのねつ造・改ざんは指摘されていないし、誰がいつ危険性を見つけたのか、そしてそのデータを誰が隠したのか、ハッキリしない。

なお、フランスの医薬品監督当局(Agence Française de Sécurité Sanitaire des Produits de Santé (AFSSAPS))の医薬品認可委員に長年、製薬企業のコンサルタントや従業員が就任していた(このお粗末さに、ひどくガッカリ)。この、フランス医薬品監督当局の制度設計の杜撰さが、問題の背景にある。

そのために、調査がいい加減になったようだ。

《2》勲章と資産

ジャック・セルヴィエは政府要人と親しく、フランス国家から重要な勲章をもらっている。フランス国民に貢献したからである。

多数のフランス人の死亡と健康被害をもたらしたのだから、今度は、フランス国民に害を与えた。だから、授与した勲章をはく奪しましょう。

イレーヌ・フラッション医師(写真出典)こそ、勲章にふさわしい。

ジャック・セルヴィエは、世界の金持ちの174番目、フランスの金持ちの12番目で、総資産は76億ドル(約7600億円)になった。

この約7600億円の資産は、死亡した500~200人、そして、その他大勢(500万人)の健康被害者を犠牲にして築いた財産である。

2014年にジャック・セルヴィエは亡くなった。亡くなったので、全財産を没収しましょう。没収したお金は、薬害死亡者と健康被害者に回し、また、薬害防止の研究や制度改革に使いましょう。そういう法律を作ったらどうでしょう。

《3》日本のメディア

メディアトール事件は、フランスで大々的に報道された。米国でも主要メディアが報道したが、日本の主要メディアは報道していない。

外国のネカト事件を記事にしていると、外国で大事件なのに、日本の主要メディアが報道しないという事に何度も遭遇する。生命科学の専門誌も解説しない。日本の情報の貧困さに、日本は大丈夫だろうかとしばしば心配になる。

日本の主要メディアは報道してくださいね。

世界報道自由度ランキング(2017年4月26日の朝日新聞)英語サイト「2017 World Press Freedom Index」)は毎年下がって、2017年には、45位の台湾、48位のボツナワ、63位の韓国より悪い72位の日本なんですが、頑張って下さいね。

生命科学の専門誌も解説して下さいね。

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《1》怒りのエネルギー

クリシュナムーティ事件のニュース動画を見ると、学生や教職員が数百人規模の激しいデモを繰り広げ、学長の退陣を要求している。

http://www.ibtimes.co.in/photos/pondicherry-university-students-continue-protest-3332-slide-24645

https://www.thetimesofworld.com/protest-in-p-u/

インドはネカトがメチャクチャ多い国だが、ネカトに激しく抗議する多数の学生や教職員を見ると、正義のために激しく戦えるインドをうらやましく思う。

日本では東北大学・学長がネカト事件を起こしても、岡山大学・学長がネカト事件を起こしても、東京大学医学部の複数の著名教授のネカト行為が不問に付されても、学生や教職員が激しく抗議することはおろか、表立った抗議は何もない。無風である。

「日本に正義はなく、真実を最も尊いとする思想がない」

《2》学長選考審査

《1》で述べたように、インドはネカトへの怒りが激しい。

しかし、クリシュナムーティ学長は、論文の盗用、業績リスト25論文中の24論文がない、2著書も実在しない、博士号はウソ、教授経験記載もウソ、それなのに2つの大学長を歴任した。ネカトが発覚したのは2つ目の大学の学長在任中である。

いかに上手にふるまっても、これだけのウソ八百を履歴書に書いて学長になれるなんて、学長選考審査がオカシイ。審査はどうなってるんだ、ったく。

審査に不正はなかったのか? 不正がないなら、審査員がボンクラか?

《3》インド人気質・インド文化

クリシュナムーティ学長は盗用や経歴ねつ造が明白なのに、学長を簡単に辞任しない。

インド人材育成省の命令が出ても、辞任を拒否した。

これも奇異に感じた。

クリシュナムーティ学長の行動はインド人としては珍しいのか、それとも、インド人気質・インド文化としては普通のことなのか、白楽は、把握できていない。

なお、インドに旅行した時、驚くほどみごとにウソをつくインド人に何人も出くわした。「インド人、モチつかない」。

一方、米国では、インド出身の研究者にお世話になり、人生最大の恩人と思っている。誠実で、人間性、知識、頭脳明晰さなど最高の人物である。

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1》食品医薬品局(FDA)が管轄した事件

生命科学系のデータねつ造・改ざん事件だが、研究公正局の管轄外の事件である。

医薬品の臨床試験の結果のデータねつ造・改ざん事件なので、食品医薬品局(FDA)が対処した。

データねつ造・改ざん事件だが、犯罪とみなされ、裁判の結果、15か月の刑務所刑、80万ドル(約8,000万円)の賠償金が科された。

《2》防ぐ方法

フィデス事件は、臨床試験の結果のデータねつ造・改ざんで、組織的に行なった。こういうデータねつ造・改ざん行為は、単独犯なら周囲の人が気が付く。しかし、研究所が組織的に行なうと、発覚は難しい。周囲の人は不正を承知で協力しているので、かなり多量の隠蔽が長期間行なわれてしまう。

事態が表面化するのは、キッカケとなる何らかの破たんが必要だ。破たんが生じないと不正は続く。不正が続くと、健康被害、信用失墜、金銭的損害がとても大きくなる。

日本でも、企業が企業ぐるみで、官庁は省庁ぐるみで、政府は首相ぐるみで隠ぺいする不正がかなりある(印象。加計学園問題 – Wikipedia)。権力構造の上部で不正が組織ぐるみで行われると、問題は深刻である。「日本に正義はなく、真実を最も尊いとする思想がない」。

研究ネカトでも、日本のかなりの大学は、相変わらず大学ぐるみ、大学・調査委員会ぐるみでネカト行為を隠ぺいしている。

組織が隠蔽できないシステム、あるいは、隠蔽に大きな処分を科すシステムを構築できていない。

組織ぐるみのデータねつ造・改ざんで、不正が暴かれたケースの大半(全部?)は、組織内部の人の告発が発端である。どんな組織にもまともな人間がいて、善行をするのである。

というわけで、組織ぐるみのデータねつ造・改ざんを防ぐ方法は、内部告発できる環境・条件・システム・文化の育成である。というか、現在、それ以外の方法がない。

従って、内部告発を奨励し、内部告発者を厚遇・保護しましょう。このことは、白楽の発見ではなく、米国の犯罪捜査では常識だ。

しかし、米国でもそうだが、日本では依然と激しく、告発者をハラスメントするコクハラがまん延している。コクハラは社会を悪くする重大な違反行為なので、厳罰に処すべきだ。

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《1》罰する相手

大学は盗用した教員を罰せず、盗用と指摘した教員を罰した。

約40年前のオーストラリアの盗博事件だが、現在の日本でも、相変わらず、大学は不正者をかばい、正しい行ないをした人にひどい仕打ちをする。

こんなことをしていたら、日本はよくなりません。

この構図はどうすると改革できるのだろう?

少なくとも、ここを読んでいる日本の大学上層部のアナタ、大学事務局のアナタ、こういう馬鹿なことを二度としないでもらいたい。

標語:「ネカト者はクビ!」

《2》絶滅危惧事件

約40年前のオーストラリアの盗博事件である。このウィリアムズ事件を最初に記述したのがウーロンゴン大学(University of Wollongong)・名誉教授のブライアン・マーチン(Brian Martin、(保存版)、写真出典同)である。

白楽は、1995年秋から翌年の春までの5か月間、オーストラリアのウーロンゴン大学(University of Wollongong)・研究政策センターに滞在した。当時、ブライアン・マーチンの研究活動を知っていた。キャンパスの職員用レストランでマーチンを見たと思うが、話はしていない。

その後も、ブライアン・マーチンの研究活動に触れる機会があった。そのブライアン・マーチンがウィリアムズ事件を記述していた。

ブライアン・マーチンが書かなければ、オーストラリアでさえも、こういう事件があったことを忘れてしまう。誰かが記録に残さないと消えてしまう。

本ブログで白楽は、「日本のネカト事件」を記録していない。日本人なら日本語で情報を得られるからだ。しかし、日本のネカト事件も誰かが記録に残さないと消えてしまう。

どなたか・・・。

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《1》誇大なタイトル

無題ジェームス・デリングポール(James Delingpole、写真出典)が2015年10月2日に、「気候警告者の米国史上最大のスキャンダル(Climate Alarmist ‘Largest Science Scandal in U.S. History)」というタイトルの記事を書いたので、今回、記事にした。

しかし、事件を調べてみて、「米国史上最大のスキャンダル」とはとても思えない。

このタイトルこそ、むしろ、過剰で誇大で悪質なタイトルである。科学データになぞらえれば、この「誇張」はねつ造・改ざんである。

マスメディアの「誇張」は社会をゆがめる。読者を間違った方向に導き、不当な金銭的効果をもたらす。

ネカト学者からみると、マスメディアの「誇張」は罰則付きで取り締まるべきだ。

《2》派閥争い?

大きなカネ・権力・メンツが絡むと、研究行為は権力抗争・政治抗争になる。そこでは、学術的な事実・正確さ、研究公正はカヤの外になる。

どこの国でもあるのだろうが、醜い。

改善は、どうすればいいんだろう。ウ~ン、容易に思いつけない。

ジャガディシュ・シュクラ(左)、マンモハン・シン(インド首相、Manmohan Singh)(右)、2006年2月13日。http://cola.gmu.edu/shukla/photo_gallery.php#kinter

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《1》詳細不明

ジェニファー・ムーアは顔写真も見つからず、経歴も事件も不明点が多すぎる。

メイヌース大学は、ジェニファー・ムーアの盗用が明白なのに、研究データに虚偽はないという理由で、訂正博士論文を提出させ、博士号をはく奪しなかった。

これは、とてもマズイ。「盗んでも元に戻せば窃盗にならない?」論理と同じで、これではネカトを奨励しているようなものだ。こんなバカな理屈は世間で通用してもらいたくない(日本の政界で通用している現状を憂う)。

博士論文の盗用に対し、メイヌース大学の学内で大甘な判定をしたが、学外に出た「2007年のRev Neurosci. 」総説は、そうは問屋が卸さない。盗用で2015年に撤回されている。

つまり、出版した総説が盗用で撤回されたのだから、総説の元となった博士論文も撤回が筋である。つまり、博士号はく奪が筋である。

この事件は、さほど古くない事件だが、盗博に至る状況が見えてこない。従って、どうすると盗博を防止できるのか、見えてこない。

アイルランドでのネカト事件は少ない。アイルランドのネカト対処文化の貧困さがこの事件で印象づけられてしまう

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《1》論争テーマの論文の真偽

巨大なカネが絡む研究分野の論文の真偽は難しい。何を信じてよいのか、基準がない。

論文の結論が中立ということはない。必ず、どちらかに有利な結論になる。その場合、バイアスがかかっている可能性は、一般的には否定できない。

ただ、論文にネカトがあれば、直ぐに指摘されるので、イグナシオ・チャペラの「2001年のNature」論文にネカトがないのは確かだろう。

問題は、論文のバイアスである。巨大なカネが絡む研究分野の論文には、カネ絡みのバイアスがある。
→ 助成金バイアス – Wikipedia

これをどのように抑止できるのだろうか? 論文では、研究費の出所、利害関係の記載が求められる。しかし、それでは抑止できていない。

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《1》損害額

損害額は、当てずっぽうで、1兆円(推定)とした。

巨額な理由は、大統領の盗博が調査・糾弾されないためにロシアの博士号の権威・公正さ・信頼が崩壊し、学術界は腐敗し、学問はすたれる。世界的大国のリーダーなので、その影響は甚大で1兆円(当てずっぽう)とした。

《2》防ぐ方法

博士論文を提出した時、44歳で、ロシア大統領府監督総局長だった。その3年後の2000年3月(47歳)、ロシアの大統領に当選した。

ロシアの強大な権力者が、盗博してでも博士号を取得しようとしたとき、防ぐ方法はあるのだろうか?

政府機関や学術界は防げないだろう。

政治家が恐れるのは選挙、つまり国民の半数以上の意見である。このような強大な権力者の不正を防ぐには、国民の半数以上にネカト禁止意識を持たせることである。そうするのは並大抵ではない。少なくとも、メディアのパワーが必要だ。

《3》権力者のネカト

権力者のネカトが発覚した時、調査と処分はどうすべきか? 大統領や政治家は選挙があるので、大学が厳正に処分し、メディアが適正に伝え、国民がまともなら、落選させることで浄化できる。

日本の大学・学長のネカトは、厄介である。大学が厳正に処分しない(できない)。メディアが適正に伝えない。所属教員が学長を辞職させられない。なかなか浄化できない。

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《1》わからないこと多し

ドリス・フィアラ(Doris Fiala)は、すでに連邦議会議員になっている。53歳にもなって、どうして修士号を取得しようとしたのか、わからない。

本当のところは理解できないけど、ドイツでは、似たようなケースがいくつもある。学位をアクセサリーの1つとみなしているのだと白楽は受け止めておく。

すでに連邦議会議員になっている人が53歳で修士号を取得した。

このような人は、単純に考えれば、論文の書き方を知らない。その前提で、指導教授は研究指導の一環として修士論文の書き方も指導したハズだ。あるいは、院生全員に「論文の書き方のマニュアル」を配布していたハズだ。

しかし、指導していなかった、マニュアルを配布していなかったのだろうか?

それにしても、どうして盗用したのか、どこに原因があるのか、この事件の説明記事からは見えてこない。

ドリス・フィアラは「意図的にだますつもりはなかった」と弁解している。この発言は、多くのネカト者が発する弁解で、聞く側には「白々しく聞こえる」。素直に陳謝するネカト者はとても少ない。

なお、修士論文とはいえ、スイス連邦工科大学チューリッヒ校の修士論文は本文が192ページもあり、量的には博士論文と同等である。質は判断できないが、印象としては、博士論文に遜色ないと思われる。

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《1》悲惨

子供を亡くした母親は、それだけで人生に絶望するほど悲嘆に暮れるのに、追い打ちをかけるように、殺人罪で終身刑が宣告された。

英国では児童虐待の専門家として神様のようなメドウ教授が「1人目の赤ちゃんの突然死は悲劇だが、2人目の突然死は怪しいし、3人目なら殺人だ」と裁判で証言したからである。

サリー・クラークの終身刑は数年後、一転して無罪となり、3年余りの刑務所から解放された。しかし、自宅に戻っても、精神に異常をきたし、2度と正常な生活に戻ることはできなかった。

無罪と宣告されてから4年後の2007年3月15日、サリー・クラークは、夫の出張中に、自宅で死亡した。42歳だった。死因は急性アルコール中毒だが、白楽が思うに、自殺だろう。イヤ、誤解を恐れずに言えば、メドウ教授と裁判官が殺したようなものだ。

事件は悲惨である。悲しい。

《2》裁判での学説の責任

ロイ・メドウは65歳で大学を退職後、爵位(ナイト)の称号を授与されている。英国では、小児科医のスーパースターの名声を得ていた。金銭的には十分だっただろう。

裁判所で証言に立ったのは退職後で、自分の学問的成果を実際の社会に適用することが主眼で、カネや名誉をもっと得ようという欲得ではなかったと思われる。

しかし、誰かが指摘していたが、メドウ教授の証言はあまりにも傲慢である。それに、核心部分に学問的な間違いもあった。

そして、証言の科学的根拠がいい加減だったことから、今度は一転して、自分が罪に問われ、医師免許がはく奪され、名誉・名声は地に落ちた。

白楽は充分に調査・熟考したわけではないが、サリー・クラーク事件でメドウ教授の証言を裁判官が重視した時点で、危ない印象を持った。学者の学説よりも、もっと、科学的データに基づいた物証で判断すべきだろう。

研究者が学者としての学説を展開することと、それを裁判で証人として証言することの間には、もっと検討が必要だろう。専門家証人の証言を判決に適用するための条件や基準も設けるべきだ。

なお、日本の裁判では、メドウ事件よりもはるかに非科学的な判決が下されることがある。日本の裁判官は文系人間で理系が苦手だった人が多いと思われる。だから、日本の裁判でこそ、もっともっともっと、科学知識に基づいた裁定をしてもらいたいと感じる。
→ Law & Science
 → www.law-science.org/items/handbook.pdf

ロイ・メドウについて、生命科学系の学術誌に記事がある。ナナメに読んだだけ。以下に示す。
①:Roy Meadow – The Lancet
②:Roy Meadow: the GMC’s shame
③:Professor Roy Meadow struck off | The BMJ

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《1》わかりません:その1

検察は、「データねつ造・改ざんに基づいた論文は発表されていないが、キニオンの研究結果を追試した他の研究者の研究費と時間を無駄にした」と述べている。

発表していない研究結果を、他の研究者は、どうやって、追試したのだろうか?

不思議です。

《2》わかりません:その2

本文に書いたが、本事件の不正のポイントがハッキリしない。

1年半の刑務所刑と約3億3千万円の賠償金が科された大事件なのに、何をどうデータねつ造・改ざんしたのか、よくわからない。研究費の私的流用はないので横領事件ではない。

罪の論理は以下のようだ(推定もあり)。

キニオンは実験装置の製作を主体とする研究で研究費を得た。キニオンは実験装置を製作したと主張しているのに、検察は、製作していなかったと主張している。実験装置は物体だから、何らかのモノはあったのだろう。推察すると、キニオンはそのモノを実験装置と認め、検察は申請書に記載された実験装置ではないとした、のだろう。

実験装置の製作が研究計画の主体の場合、研究費申請書に記載通りに実験装置を製作できなかったら、詐欺になるのだろうか?

一般的な感覚では詐欺である。

5390万円で実験装置を作ります、というか、作れます、と申請書に書いたに違いない。作れるかどうかわかりませんが、できなくても、5390万円を助成してください、なんて書いた申請書が採択されるハズがない。

「コレをこうしてこうやると、5390万円で実験装置が確実に作れる。マッカセなさい」、と書いたのでしょう。イヤイヤ、「マッカセなさい」とは書いていないだろうが、確実に作成できる自信のほどは示したに違いない。だから、研究費申請書が採択された。

でも、実験装置ができなかった。

となれば、そう、一般的には詐欺である。

1億円で豪邸が建ちますと言われ、建設会社に1億円払った。1年後、建設会社はお金を全部使っていろいろ作ったが、豪邸ではなくバラックしか建てていなかった。そうなれば、詐欺でしょう。

しかし、生命科学者が5年間の研究費申請書で、「コレをこうしてこうすると、ア~ラ不思議、癌は確実に治ります。マッカセなさい」、と書いたとする。これで10億円の研究費を受領した。

5年後、しかし、癌の治癒率は全然変わらなかった。

この場合、研究者は詐欺罪で刑務所送りになり、研究費の返還を要求されるだろうか?

イエイエ、科学研究の場合、できるかどうかわからないから研究するのである。科学研究では計画を達成できなくても、詐欺ではない。

日本では、いままで、研究計画でホラや虚言を書いても、逮捕されたことはありませんでした。これからは、米国のキニオン事件にならって、研究計画でホラや虚言を書いた研究者をネカト罪で逮捕します?

そうしましょうか?

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《1》わからないこと多し

http://www.bouchon-partner.com/de/team/kooperationspartner/Prof-Dr-Ronald-Moeder

ロナルド・モエダー(Ronald Moeder)はドイツで生まれ、どうしてかわからないが、2002年(31歳)、オーストリアのインスブルック大学で研究博士号(PhD)を取得した。

260 ページの博士論文の177ページに盗用があり、260 盗用ページ率は68.1%である。盗用文字率は約41%と盗用が多い。

盗用率は高く、確実に盗博である。盗博は確実なので、博士号をはく奪すべきだろうが、はく奪されていない。白楽には理由がわからない。

それにしても、どうして盗博したのか、どこに原因があるのか、どうすれば今後の盗博を防げるのか、この事件からは見えてこない。

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《1》研究デザイン

モデル・女優のジェニー・マッカーシーは「ワクチン接種が自閉症を引き起こす」説を信じているアンチ・ワクチン信奉者である。人々は、どうして、インチキ説を信奉してしまうのだろうか?

「ワクチン接種が自閉症を引き起こす」説を広めたことで悪名が高いのはアンドリュー・ウェイクフィールド(Andrew Wakefield)である。ジェニー・マッカーシーはウェイクフィールドの信奉者である。
→ アンドリュー・ウェイクフィールド(Andrew Wakefield)(英)

「2016年のFrontiers in Public Health 」論文は本論文が掲載されず、要旨が一時的に掲載されただけなので、論文の中身を分析できない。だから白楽も要旨だけで判断したが、研究デザインが甘く、分析がズサンで、スロッピ―な研究だと感じた。この研究内容では学術界では通用しないだろう。

しかし、一般大衆はどうしてこのようなインチキ科学に踊らされるのだろうか? 一般大衆だけでなくインチキ科学を信じる科学者もいる。一般大衆や科学者はどうしてインチキ科学を信じるのだろうか?

国も学術界もインチキ科学を厳しく取り締まらない。だから、未だに血液型性格診断がはびこる。ことわざや言い伝えで天気予想をする天気予報官もNHKにいる。

国と学術界は常日頃、インチキ科学の排斥に励むべきだ。

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《1》大事件?

クリストファー・ワンジェク(Christopher Wanjek)が、2016年ランキングのLivescienceの「ナイストライ:2016年の5大撤回科学論文」:2016年12月28日の第4位にあげた。

そんなに大事件だろうか? ワンジェクが問題視するポイントはなんなのだろう?

シーミン・ルーは文章ではなくデータ(図)を盗用した。自己盗用もして、繰り返し再使用した、と指摘している。撤回論文数が10論文と多い点がポイントらしいが、白楽には、「2016年の5大撤回科学論文」の第4位にあげる大事件とは思えなかった。逆に言うと、2016年はこの程度の不正しかなかったということか。

盗用はねつ造・改ざんと異なり、論文が社会に与える影響は小さい。極論すれば、ネカト者本人がズルして得するだけである。それに、シーミン・ルーは台湾でも有名科学者ではないし、ネカト発覚と論文自身の影響力は小さい。

なんで大事件なのだろうか?

《2》台湾の大騒ぎ

シーミン・ルー事件は、台湾では、新聞・テレビが大騒ぎである。

撤回監視の英語記事を新聞・テレビでも取り上げた。

日本は、どうでしょう、今まで、撤回監視の英語記事を新聞・テレビで取り上げたことがあるだろうか?

また、この程度の研究倫理事件で、文部科学大臣や官僚がニュースに登場するだろうか? ウン? 小保方晴子事件では登場しましたね(してない?)。

《3》学ぶ点

この事件は、不明点多く、防ぐ方法を考える上でなにを学ぶべきか、参考にしにくい。

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《1》わからないこと多し

スサナ・ゴンザレス事件は、国立心臓血管研究センター(CNIC)が調査し、スサナ・ゴンザレスを解雇したが、調査結果を公表していない。しかし、論文は4報撤回された。

パブピアの指摘によると、電気泳動バンドを切り貼りし、異なるサンプルに同じ電気泳動バンドを使用した。データねつ造である。それも「間違い」とはとても思えないレベルの使いまわしで、ドウドウたる巧妙なデータねつ造である。

2003年(31歳?)の論文にデータねつ造があるのに、トットと対処しないものだから2015年(43歳?)の論文でも同じデータねつ造をしている。12年以上も放置、つまり、ネカトさせたままだったのだ。おまけに盗人に追い銭で、2014年(42歳?)に約2億4千万円の研究費を支給した。全く、無駄なことをしてきた。

スペインは、情報公開が遅れている。これは、ネカトを助長する。スペインは、大国ではないから、科学予算規模は小さい。小さいからこそ、きめ細かいネカト対策をし、ヒト・モノ・カネを有効に使うべきだ。

スサナ・ゴンザレス事件は、わからないことが多い。ウェブ上の情報は徹底的に削除されている。どの大学院で研究博士号(PhD)を取得したのか、指導教授は誰だったのか? わからない。

「ネカトを防ぐ方法」はわかりません。調査が公正だったのかどうかもわかりません。

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《1》有名人の論文指導

大学院・研究初期で、研究のあり方を習得するときに、研究規範を習得させるべきだった。

そういう意味では博士論文指導教授のリチャード・ベッツ(Richard K. Betts)にある程度の責任がある。

ただ、クローリーの場合、既に、1990年に22歳でリチャード・ニクソン元大統領の助手になり、その後、テレビのFOXニュースに就職。国際関係や政治を担当、1996年頃(27歳頃)にはニューヨーク・ポスト紙のレギュラー・コラムを執筆していた。

博士論文を提出した2000年には、既に、有名人でメディアや政治の世界で大活躍していた。

そういう人に、学術的な論文の「指導」をするのは、難しい。本人が素直に聞かない。

ここだけの話だが、白楽も元NHKテレビのアナウンサーで現職の参議院議員を大学院生として研究指導したことがある。しかし、相手は、こちらの指導を素直に聞かない。つまり、指導が成り立たなかった。

ベッツ教授に「ある程度」の責任があると書いたが、「ある程度」はほぼゼロに近いだろう。

というわけで、有名人の論文を分析すれば、いろいろな問題が見つかるだろうと思う。

《2》博士号はく奪

2017年6月10日現在、コロンビア大学はクローリーの博士号をはく奪していない。

しかし、学術的な公正さから判断して、博士号をはく奪すべきだろう。

大学は弱腰なので、現政権の有力者に厳格な処分が科せない。学長は報復が怖いってことだろう。ッタク!

《3》盗用の再犯率

盗用の再犯率はどのくらいなのだろうか? 研究データはないと思う。

クローリーの場合、1999年(31歳)に、ウォール・ストリート・ジャーナルに書いたリチャード・ニクソンに関するコラムで盗用が指摘された。2000年に博士論文を提出しているので、丁度その頃、博士論文を執筆していたと思われる。

この時、ほとんどペナルティが科されていない。

それにしても、この時、どうして、クローリーはもう2度と盗用をしないと、自分を律せられなかったのか? それとも、盗用は不治の病で、再犯してしまうのだろうか?

ペナルティが科されなかったので、盗用を甘く見るようになったのかもしれない。

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《1》わからないこと多し

ルーカス・ミステリス(Loukas Mistelis)はギリシャで生まれ、ドイツの大学で博士号を取得した。

どうして盗博したのか、どこに原因があるのか、どうすれば今後の盗博を防げるのか、この事件からは見えてこない。

盗博で博士号がはく奪されたにもかかわらず、英国のロンドン大学クイーン・メアリー・カレッジ(Queen Mary University of London)は、ミステリスを解雇しないばかりか、発覚の3年後に、教授に昇進させた。どうして?

正義と損得の天秤にかけたと推察する。ミステリスは仲裁法の国際的な権威である。盗博でも、有能な人物なのでロンドン大学(もっと大きく、世界?)にとって得だという損得勘定が働いたのだろう。

とはいえ、盗博という汚点を背負ったまま、学術界や国際政治の舞台で活躍させるのも、何か異常な気がする。

ハノーファー大学として博士号はく奪は当然だが、他のペナルティ(しょく罪?)として、学術界から排除しないなら、罰金2000万-1億円などが妥当かもしれない(罰金はネカト対策に使用)。ペナルティが曖昧なのは(例:社会的信用を失う)、社会ルールとしておかしいと思う。

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《1》連邦捜査局と監査総監室

本文に書いたが、一般的に、米国の多くのネカト事件は関係大学と研究公正局が調査し処分する。

グッドウィン事件は、しかし、ウィスコンシン大学マディソン校と研究公正局が調査し処分しただけではなかった。

連邦捜査局(FBI:Federal Bureau of Investigation)と米国・健康福祉省の監査総監室(Office of Inspector General)も共同で捜査したのである。

特別のネカト事件だったのだろうか?

しかし、どういう状況になると、連邦捜査局と監査総監室が捜査に乗り出すのか? 白楽はハッキリつかめていない。

《2》ネカト研究室の院生

指導教員がネカトでクロと判定された研究室の院生は悲惨である。

研究人生は大きく損なわれる。

何らかの救済システムが必要ではないのか?

そういう救済システムが不十分なために、内部告発ができない、ネカトを見て見ないふりする、つまり、ネカトを助長していることになる。

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《1》コクハラ

大量のミツバチが消滅する蜂群崩壊症候群(ほうぐんほうかいしょうこうぐん、Colony Collapse Disorder、CCD)の原因は、2017年6月1日現在、つかめていない。

農薬・ネオニコチノイドが原因だという説があり、欧州では、農薬・ネオニコチノイドの使用を禁止している。一方、米国では禁止していない。

写真出典:https://www.mprnews.org/story/2015/10/28/bee-expert

この状況で、米国の責任部局の本丸である農務省・農業研究局は、配下の統合作物システム研究所の研究員・ジョナサン・ラングレン (Jonathan Lundgren) が農薬・ネオニコチノイド原因説を発表したことでコクハラした。

同じく配下のベルツヴィル研究所(Beltsville)のミツバチ実験部長のジェフリー・ペティス(Jeffrey Pettis)が議会で農薬・ネオニコチノイド原因説に言及したことでコクハラした。

農業研究局の組織的なコクハラである。

研究組織の方針の間違いを告発する研究者の言動を組織はどうとらえるべきなのだろうか?

一般的に、組織はイエスマンばかりの部下では衰退する。組織にとってイヤな意見を述べる部下を、厚遇しなくてもいいけど、最低線、許容すべきだろう。それが、組織の健全性を保つ仕組みである。

特に、研究を業務とする組織では、組織にとってイヤな意見を述べる部下は貴重である。しかも、研究では反対意見を自由に議論できる雰囲気や文化風土が必須である。

告発者ではなく、むしろ、コクハラする人間を排除すべきである。彼(女)らこそ、健全な研究環境を破壊する害毒だ。研究の発展を本質的に阻害し研究組織の衰退を招く。コクハラをセクハラ、パワハラと同等に規則で禁止し、コクハラ人間を処分すべきだ。

《2》白楽の体験

白楽は、1996年に書籍『アメリカの研究費とNIH』を上梓し、日本の研究費配分の問題点を指摘した。当時、官僚が何人も白楽の研究室を訪れ、日本の研究費配分システムの改善のために米国のシステムを聞きに来た。何人もの官僚が「『アメリカの研究費とNIH』は霞が関のバイブルです」と言っていた。

そして、政治家から、自民党本部で講演するように依頼され、講演した。その講演の席で、元大臣の政治家が白楽の主張を盾に、文科省の研究費担当・官僚を叱責した。以来、白楽は文科省の官僚からコクハラを受け、文科省関連の研究グラントが採択されないという経験をしている。

それ以前に、ある学会が企画した研究費配分システムの講演会で講演をした。講演者は2人で、他の人は、文科省の科研費配分担当の官僚だった。彼が日本の研究費の実態について講演し、私が米国の研究費の実態について講演した。当時、日本は米国の研究費配分システムに無知だったし、研究費配分システムは、米国に大きく遅れていた。

文科省の科研費配分担当の官僚は、私の講演内容が衝撃的だったらしく、講演後、「そんな改革を公言して、あなた方研究者が困るんじゃないですか」と私を脅迫するような態度で威嚇した。細かいことは省くが、コクハラである。

白楽は日本のためと思って米国の研究費配分システムの調査をし本を出版したが、改善すべき当の文科省は感謝するどころか、嫌がらせをしたのである。とてもオドロイタ。

なお、日本はそれから数年かけて、『アメリカの研究費とNIH』に記述した改革案をかなり取り入れ、日本の研究費制度を大きく改善した。

《3》なぜ?

蜂群崩壊症候群の原因として農薬・ネオニコチノイドに言及すると、米国・農務省は、なぜ、コクハラするのか?

オランダ、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリアなど欧州各国はネオニコチノイド殺虫剤の使用を禁止している。一方、米国では禁止していない。

欧州の研究者が農薬・ネオニコチノイドの可能性を指摘しているのだから、当然、米国の研究者も検討する。

しかし、米国・農務省は、蜂群崩壊症候群の原因を主に「ミツバチの病気と寄生虫」だと主張している。その意向に沿わない言動の研究者を排除したい。

なぜか?

ネオニコチノド殺虫剤を製造販売している化学薬品会社が裏にいるからだろう。2008年と統計は古いが、化学薬品会社は、ネオニコチノド殺虫剤を25億ドル(約2500億円)、売上げた。

また、ネオニコチノド処理した種子を販売する企業・モンサント社も裏にいるだろう。

これらの企業は収入を失いたくない。それで、ロビー活動で蜂群崩壊症候群の原因を「ミツバチの病気と寄生虫」にしているのだろう。

もし、蜂群崩壊症候群の原因が「ミツバチの病気と寄生虫」でなく、農薬・ネオニコチノイドだとなれば、養蜂業者から多額の損害賠償が要求されるに違いない。会社が倒産するほどの賠償金を払うことになるだろう。

だから、原因はミツバチのせいであって農薬のせいにしたくない。このまま、ミツバチは全滅してしまえば、農薬・ネオニコチノイド原因説は霧散する。

会社が倒産するほどの賠償金は、大げさだろうか?

タバコの訴訟で、タバコ会社は総額42兆円の和解金を39州政府に払っている。
→ 2008年記事:最新たばこ情報|海外情報|米国におけるたばこ訴訟の和解について保存版

《4》研究論文を単純に信用するな

再掲するが、ウィキペディアによると、蜂群崩壊症候群の原因は以下のように解説されている。

以下の文章の出典:蜂群崩壊症候群 – Wikipedia

原因には疫病・ウイルス説(イスラエル急性麻痺ウイルス(IAPV)など)、栄養失調説、ネオニコチノイド(イミダクロプリドなど)の農薬・殺虫剤説、電磁波説、害虫予防のための遺伝子組み換え作物説、「ミツバチへの過労働・環境の変化によるストレス説」などが唱えられている。

これらのほかに飢餓、病原体や免疫不全、ダニや真菌、養蜂上の慣習(例えば抗生物質の使用や、養蜂箱の長距離輸送)なども指摘される。一つの要素が原因であるか、複数の要素の組み合わせが原因であるか、またCCDの影響を受けた異なる地域において独立におきるのか、関連して発生するのかは分かっていない。

これらの原因を評価する時、多くの人は、科学論文中のデータを事実として扱うだろう。ところが、ネカト研究者の白楽は、科学論文中のデータにねつ造・改ざんがあるかもしれないと思う。

とくに、企業が絡む場合は、助成金バイアス(Funding bias、sponsorship bias)があり、ねつ造・改ざんの可能性が高くなる。

今回だと、化学薬品会社や種子会社から助成を受けた研究者は、農薬が原因ではないとする研究論文を発表するだろう。そして、どこから研究助成を受けたか明記しない論文や、利益団体との関係を明示しない論文もある(多い?)だろう。

つまり、出版された科学論文は、ほぼすべて、助成金による研究偏向があるかもしれないと思って読むしかない。

そういう配慮なしに、科学論文のデータを「素直」に事実と受け取ると、悪者の思うつぼで、偏向した知識を助長してしまう。

蜂群崩壊症候群の論文では、化学薬品会社や種子会社の助成金が大きい。従って、「ミツバチの病気と寄生虫」原因説と「農薬・ネオニコチノイド」原因説を五分五分に比較しない方がいい。「農薬・ネオニコチノイド」原因説は大きく抑圧されているハズだ。

【動画】
ドキュメンタリー「Killing Bees: Are Government and Industry Responsible? 」(英語)27分18秒
Beyond Pesticides が2012/09/18 に公開

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《1》詳細不明

ギュンター・パブストの博士論文は、盗用ページ率は95.7%で、盗用文字率は約94%である。例示した盗用ページは、見事に逐語盗用である。

どうやら、ギュンター・パブストは論文を書く能力がないと思われる。それで、大規模な盗用をしたのだろう。

それなら、博士号を授与すべきではなかったのだ。

この事件は、どうすると盗博を防止できたのかが、見えてこない。

ハイデルベルク大学はギュンター・パブストの博士号をはく奪しなかったが、どういうことだろう? はく奪は当然だと思う。

標語:「盗博の博士号は当然はく奪!」

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《1》ネカト者の特定

https://revammad.blogs.lincoln.ac.uk/partners/charite-universitatsmedizin-berlin-ccm/antonia-m-joussen-md/

ユーセンの論文のいくつかで、明らかに画像が重複使用されている。従って、ユーセンがネカト者でないなら、著者の内の誰かがネカト者である。

大学もDFG-ドイツ研究振興協会も、その誰かを特定しないで、調査を終了した。

ヴァシリキ・ポウラキがネカトの主犯と思わせる状況だが、当局の公式発表はない。

パブピアでは、ユーセンの17論文にコメントがある。ユーセン研究室のネカトが既に広範な悪影響を及ぼしている。早くチャンと調査し、かつ適切な処分をし、今後の防止策を策定する必要がある。

ドイツは、建前ではネカトに厳しく対処すると述べているが(まあ、どの組織もそう言うだろうが)、大学もDFG-ドイツ研究振興協会も、実質的には、厳しく対処していない。ネカト調査の結果も十分には公表せず、透明性は悪い。

もう一度書くけど、この事件では、ネカト者を特定するまで調査し、処分し、公表すべきだろう。

そうでなければ、ネカトの防止にならないし、防止策も立案できない。

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《1》国家プロジェクトの間違い

一般的に、自分の所属組織のプロジェクトに深刻な問題点が見つかった時、どう批判できるのだろうか?

文部科学省に統合される前、日本の科学技術庁の官僚と話したことがある。「科学技術庁の官僚は原子力開発に否定的な意見を言うことができないんです。というか、そういう調査や検討することさえできません。だから、原子力の問題点を冷静に考えることはできないんです」。

一般的に、組織に致命的なマイナスになるかもしれないことを組織内で検討することは難しい。

科学者自身がそうである。

すべてのことに「初めがあり、終わりがある」。栄枯盛衰は世の習い。それで、何人かの科学者に「あなたの分野の研究はいつ衰退方向に向かいますか? その兆候は何だと思いますか?」と聞いたことがある。

ほぼすべての科学者(英国で研究主宰者になった日本人の1人を除く)は、まず、イヤな顔をして、「私の研究分野は衰退しません」と答えた。要するに、自分の研究分野が衰退することを考えたことがないのだ。

環境保護庁(EPA:Environmental Protection Agency)が進めている下水汚泥の肥料は、農務省(USDA)、地方自治体、市町村、シナグロ・テクノロジーズ社(Synagro Technologies)(廃棄物管理会社)、大学、科学アカデミーなど複数機関を調整して進めている米国の国家事業である。間違いではないかもしれないが、デイヴィッド・ルイス(David Lewis)が指摘するように、間違いかもしれない。

しかし、国策として進めているプロジェクトを批判、イヤイヤ、調査や検討することでさえ、コクハラを受け、難癖をつけられて解雇されてしまう。

白楽は、批判は改善への有益な道だと考える。批判を受けて、改善すればいいと思うのだが、世の大半は批判者を排除してしまう。

なお、本ブログは、ネカトが対象なので、環境保護庁の規則第503条のねつ造を、データもなく安全とした点に絞って、幾分、悪者扱い気味に記載した。

しかし、下水汚泥の肥料利用が間違いか・正しいかは、本当のところ、白楽自身は判断していない(本記事でも、公平に分析していない)。

《2》科学的実証

環境保護庁の化学者・アラン・ルービン(Alan Rubin)が第503条の条文を書いた時、環境保護庁の他の研究者は、”スラッジ・マジック(sludge magic)”の科学的実証をどうして求めなかったのだろうか?

すでに、批判や検討ができない状況だったのだろうか?

多分、批判や検討ができない状況だったから、ルービンは科学的証拠なしに、想像をベースに第503条を作ってしまうことができたのだろう。

政治的に、既に国家的事業になっていたので、科学者は批判しにくかった。

もしそうなら、常に、自由に批判できる状況が確保されないと科学は機能不全になる。

《3》逆のナルホド発想

下水汚泥に金属が含まれ、肥料に利用するには害毒が多い。

逆に考えると、下水汚泥の金属を集めて、金属を利用できないだろうか?

数百万ドル(数億円)の金属(メタル)があるという記事がある。逆のナルホド発想だ。
→ 2015年1月の「Science」記事:Sewage sludge could contain millions of dollars worth of gold | Science | AAAS

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《1》詳細不明

アレキザンダー・モシュコビッシュは、他の盗用ページ率100%のアニタ・リソウスキーとよく似ている。

ドイツの博士号授与規定を知らないが、ドイツでは、学術誌に論文を1報も発表していなくても、博士号が授与される(推定)。

アレキザンダー・モシュコビッシュの博士論文は、本体が24ページととても短い論文である。それなのに、盗用ページ率が100%で、盗用文字率が約70%である。例示した盗用ページは、見事に逐語盗用と加工盗用である。

どうやら、アレキザンダー・モシュコビッシュは論文を書く能力がないと思われる。それで、短い論文にし、さらに、大規模な盗用をしたのだろう。

それなら、博士号を授与すべきではなかったのだ。

この事件は、さほど古くない事件だが、盗博に至る状況が見えてこない。指導教授に大きな責任があるのだろうか? 誰が盗用を教唆したのだろうか?

どうすると盗博を防止できるのかが、見えてこない。

標語:「盗博の博士号は当然はく奪!」

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1》秋山晋吾・教授の指摘に共感

一橋大学の秋山晋吾・教授の日本語の事件解説を本文に引用したが、秋山晋吾・教授は、センメルヴァイス大学の対応の悪さに言及している。深く共感した。

出典 → 2012年3月31日:秋山晋吾のブログ:「剽窃・大学・大統領―その2」:剽窃・大学・大統領―その2 ハンガリー史・秋山晋吾のブログ/ウェブリブログ
出典 → 2012年4月3日:秋山晋吾のブログ:「剽窃・大学・大統領―その3」:剽窃・大学・大統領―その3:ハンガリー史・秋山晋吾のブログ

  • そもそも、引用注・参照注が付されていないような文章を学位請求論文として受理したこと。今回のように外国語かつ入手が容易でない文献からの論文剽窃を見抜くことは困難であるとしても、形式上あきらかに論文の体をなしていないと思われる。
  • こうした論文を受理し、さらにこれをもとに学位を授与するという決定が、学位請求者のステータス(オリンピック金メダリストで、ハンガリー・オリンピック委員会会長)の影響を受けていたと思われる(思われかねない)こと。
  • 調査委員会の報告書を、大学自ら検討するまえに教育相に判断を仰ぐために送付したこと(結局、未開封のまま送り返されてきたのだが)。大学の自治、学術の自立性の自己否定だ。
  • シュミット氏に理事会の前で反論する機会を与えることなく、学位剥奪を決定したこと。

そして、

  • センメルヴァイスのトゥラシャイ・ティヴァダル学長が辞任したことには納得がいかない。
  • トゥラシャイ氏は辞任せず、大学の自立性を徹底して擁護すべきだった。

《2》博士号はアクセサリー

パール・シュミットの経歴を探ると、大学・学部で経済学で学士号を取得している。その後、ホテルの管理スタッフの職に就いているので、博士論文の分野であるスポーツ科学の学術的な知識・経験はないと思われる。オリンピックで金メダルを取ることと、スポーツ科学の学術的な知識・経験とは全く別である。

研究の世界についての知識・経験はない。

論文を書く力量はない。

そういう人に、50歳になって、博士号を取らせた。

どうして、博士号を取ろうと思ったのか? 誰が、取らせようと思ったのか? 盗博すればいいと誰が教唆したのか?

50歳で博士号を取得してすぐ後の51歳で、在スペイン・ハンガリー大使になっている。大使になるのに博士号をアクセサリーと考えたようだ。

《3》盗博の教唆

誰かが、パール・シュミットに盗博すればいいと教唆したに違いない。多分、博士論文の指導教授だろう。いい加減な教授は、実は、かなりいる。

白楽の経験だが、学部からストレートに修士・博士と進学してくる院生でも、博士論文(日本語)を書くのは四苦八苦している。だから大学院教育が重要なのだが、修士論文(日本語)で練習させ、学術誌に日本語総説を書かせ練習させておく。そして、白楽が博士論文のサンプルを示し、書き方を教え、執筆過程を具体的に示す。ほとんどの院生は、そのヤリトリを数回行なうと、論文の書き方を習得し、自力で完成する。

ただ、少数だが、自力で完成できない院生もいる。そうなると、指導・指導・指導と指導が大きくなり、気が付くと、博士論文の半分くらいは白楽が書いていたということになる。

それなら、最初から、指導教授が書いて、院生本人に確認を取る方が、楽だし早い。しかし、コレではマズイ。院生を育てることにならない。

白楽は、現職の参議院議員、現職の弁理士、現職の高校教員などの社会人を大学院博士課程に入学させ、研究指導したことがある。彼女たちの何人かは、研究とは何か、そして、学術論文の書き方を、全く把握できていない。そういう人に博士号レベルの実力をつけさせようと指導しても、ついてこれず、挫折した。

希望した社会人を全部引き受けたわけではない。企業の女性社長から、博士号を取得したいと打診されたこともあるが、軟弱な印象を受け、断った。

今回の事件のパール・シュミットはオリンピックで金メダルを2回も受賞したハンガリーの国民的スターである。40代後半にハンガリー・オリンピック委員会(HOC)・会長という要職に就いていた。その国民的スターが、博士号を取得したいと考えた。

その状況なら、ほとんどの大学教授は断れない。そして、パール・シュミットが自力で博士論文を書けないと分かった時、ほとんどの大学教授は、パール・シュミットに「何とか穏便」に博士論文を提出させ、ソッと博士号を授与したいと考える。

博士号レベルの実力をつけさせようと厳しく指導する白楽のような人は、ごくわずかである。となれば、誰が教唆したかわからないが、パール・シュミットの指導教授かその周辺の誰かが、「何とか穏便」=盗博、を教唆したに違いない。

《4》日本の主要メディア

ハンガリー語のメディア、英語のメディアにたくさんのシュミット事件の記事がある。また、大統領だったから、当然、ネット上に、たくさんの写真がある。

しかし、日本の主要新聞はシュミット事件を記事にしていない(白楽の知る限り)。日本の主要メディアって、情報発信が偏っている、あるいは貧弱な気がする。

「大統領が盗博で辞任」は大した事件ではない? 記事にすると、日本の政治家の卒論や文章の盗用が詮索されるとマズイと感じてる?

イエイエ、発信が貧弱ではなく、それ以前の情報収集と分析が貧弱なのだろう。

原因が何であれ、かなり、マズいと感じている。

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《1》ネカト禁止意識

サザン・ユタ大学が盗用の規則を設けず、杜撰なESL教育をしていた。だから盗用がはびこっていた。禁止する規則がないアキレタ大学だった。

この事件の記事を分析すると、サザン・ユタ大学の怠慢は明確である。

一方、日本の教育界は大丈夫だろうか?

日本の大学・研究所のネカト規則は、それなりに改善されてきたとはいえ、充分とは思えないケースが大部分である。

まして、中学や高校でネカト禁止教育がされているのだろうか? とういか、大部分の中学や高校にネカト禁止規則がそもそもない。中学教員や高校教員に、そして、文部科学省・初等中等教育局に、ネカト禁止の「意識」も「知識」もないのが実情だろう。

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《1》詳細不明

ヨルゴ・トリアンタフィローは、他の盗用ページ率100%のアニタ・リソウスキーとよく似ている。

学術誌に論文を1報も発表していない。ドイツの博士号授与規定を知らないが、ドイツでは、それでも、博士号が授与されるということだ(推定)。日本の生命科学系では、学術誌への論文発表がないと、博士号はほぼ取得できない。

ヨルゴ・トリアンタフィローの博士論文は、盗用ページ率が100%で、盗用文字率は約78%である。例示した盗用ページは、見事に逐語盗用である。

どうやら、ヨルゴ・トリアンタフィローは論文を書く能力がないと思われる。それで、盗用ページ率100%の逐語盗用をしたのだろう。

それなら、博士号を授与すべきではなかったのだ。

この事件は、さほど古くない事件だが、盗博に至る状況が見えてこない。指導教授であるソロン・ターノス教授(Solon Thanos)の博士論文指導の実態がつかめない。ターノス教授に大きな責任があるのだろうか?

ターノス教授が盗用を示唆したとは思えないが(したなら指導した院生からたくさんの盗博者が出るハズだ)、誰が教唆したのだろうか?

どうすると盗博を防止できたかが、見えてこない。

標語:「盗博の博士号は当然はく奪!」

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《1》インド人のネカト

サダーサナレディ・ロキレディ(Sudarsanareddy Lokireddy)のネカトを防止するにはどうすべきだったのだろうか?

ロキレディはネカトを悪いと知っている。しかし、得だから、見つからないようにネカトした。

ロキレディは、ネカトするズル価値観をどこで身につけたのだろうか? 先輩や仲間から学んだのだろうか?

インド人はネカトが多い。インド人研究者の価値観、研究文化、生活哲学が深く関与していると思われる。一度、しっかり分析したいと思っている。

《2》指導教授の責任

「南洋(ナンヤン)理工大学は、研究において最高基準と最高行動を維持し、研究不正を100%許容しない。研究公正に違反する人には断固たる処分をする」

このポリシーは立派だ。

カンバドゥル教授。PHOTO: CHEW SENG KIM。出典:http://www.straitstimes.com/singapore/zero-tolerance-for-research-misconduct-here

ただ、カンバドゥル教授とシャルマ準教授の2人は、ネカトに関与していない。

カンバドゥル教授の解雇の理由は、研究室の動きに「故意に無頓着(wilfully negligent)」だったとある。ネカトに関与していなかったが、院生・ロキレディの指導教授としての責任を問われたのだ。

院生のネカトは、指導教員にかなりの責任があると、白楽は考えている。

しかし、欧米では指導教授の責任が問われることは滅多にない。日本でも同様に、大阪大学の事件では、院生に大きな処分をし、2人の指導教授の処分はひどく軽度だった。

しかし、ネカト事件を含め一般的に、日本では、上司というだけで、連帯責任の処分が科されることが多い。

職場での上司と部下の関係と、研究室での指導教員と院生の関係は大きく異なる。職場の部下は一人前の職業人だが、院生は未熟で教育を受ける半人前の訓練生である。

本事件は、指導教員と院生の関係であるが、ことのついでに、上司と部下の関係に言及する。

上司と部下の関係で上司に連帯責任を科すシステムは異常だと思う。個人の責任なのに、上司に連帯責任を負わせると、責任の所在も事件の本質もあいまいになる。対策もおかしくなる。もっと、個人に焦点を合わせるべきだ。

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《1》教授の執拗な嫌がらせ?

テキサス大学は、どうしてスヴィ・オーアの博士号はく奪にそんなに固執したのだろうか?

1度はく奪し、それを戻し、さらに、2回目にはく奪しようとした。しかも、2回とも裁判で訴えられている。2回とも裁判で負けている。

大学上層部と指導教授だったスティーブン・マーティン教授(Stephen F. Martin)がヘンで、舵を切り間違えたのだと思われる。

また、記事では、記者の質問に、スティーブン・マーティン教授はノーコメントである。事件を説明しようという誠意が感じられない。コマッタ人である。

この事件への読者コメントには、指導教授のスティーブン・マーティン(Stephen F. Martin)を非難する意見がとても多い。1例を以下にあげる。

彼女は絶対に正しい。 院生は指導教授の無能または過失の代価を支払うべきではありません。 さらに、院生は博士課程要件の部分を充足すれば、博士論文を提出できます。 その後、誠実な誤りが見つかっても、それが、博士号のはく奪を正当化するものではありません。(出典:http://retractionwatch.com/2016/02/09/chemist-sues-university-of-texas-again-to-keep-phd/#comment-963959

白楽も、マーティン教授がかなりおかしいと思う。ただ、どうしてマーティン教授がヘンなのか、報道された記事からはわからない。

《2》白楽はへそ曲がり

スヴィ・オーアの事件は、テキサス大学の対応と、マーティン教授の対応に異様な執拗さを感じる。また、オーアが、即、裁判に訴えたのも、なんかヘンである。

そして、メディアがオーアの味方になっていて、全体的な論調は、オーアに有利に進んだ。

白楽はへそ曲がりだから、メディア全体の一方向の動きが、なんかヘンだと感じる。頭のどこかで警告ランプが点灯している。

冷静に考えてみよう。

スヴィ・オーアの博士論文に、本当に、データ改ざんはなかったのだろうか? 「間違い」だったのだろうか?

伝えられる事件内容はスヴィ・オーアの主張だけである。大学の調査委員会がデータ改ざんと結論した報告書は公表されていない。大学側はほぼ黙秘している。

もっとも、調査委員会の報告書が公表されても、白楽自身が実験ノートを検証できないので、何とも言えない。

ただ、博士号はく奪で大騒ぎしていて、データ改ざんの調査内容の正否の検討がかすんでしまった。

オーアの弁護士・デイヴィッド・セルジが優秀で、メディアをオーアの味方にしてしまったようだ。

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《1》わからないこと多し

コーネリア・スコット(Cornelia E. Scott)は英国で生まれ、どこの大学を卒業したのか不明である。

活動はドイツでしているのに、どうしてかわからないが、2008年(38歳)に、ポーランドのクラクフ経済大学で研究博士号(PhD)を取得した。博士論文は英語で執筆している。

盗用ページ率は20.4%で、盗用文字率は約6%である。盗用率は低いが、確実に盗博である。

ただし、盗用箇所が博士論文の中核部分なのか末梢部分なのか、白楽は分析していない。それで、博士号をはく奪しない妥当性がどれほどなのかを、ネカト学者としては判断できない。その前提であるが、盗博は確実なので、博士号をはく奪すべきだったろう。

それにしても、どうして盗博したのか、どこに原因があるのか、どうすれば今後の盗博を防げるのか、この事件からは見えてこない。

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《1》80年前の論文の撤回

80年前の論文を撤回した。

アリエ・クェリド(Arie Querido)。出典不明

内容が正しいとしても、80年前の論文の内容がそのまま現代に通用すると考える研究者はほとんどいない。

こんなに古い論文の検証や撤回が必要だろうか?

論文には時効を設けるのが現実的だ。例えば、30年以上前の論文は、研究の歴史を語る以外、現在の研究論文の先行研究として引用しない。勿論、現代に通用する特定の論文は除く。例えば、過去5年以内に5回以上引用されているのを特定の論文とする。

《2》面白半分に投稿

22歳の学生たちが面白半分にデタラメ論文を仕上げ、面白半分に投稿した。それが論文として出版された事件だが、何をどうするのが健全なのだろうか?

なんか、元気があって、独創性を試す想像力の勝負でオモシロイ、という気もする。

しかし、ネカト学者としては、動機はどうであれ、データねつ造論文である。他のネカト論文と同じように対処する。それ以上でも以下でもない。

一般論として、科学の歴史では、過去にトンデモないデータねつ造事件があったことに感心する。「全期間ランキング」に記載したビジネス・インサイダーの「歴史的に最も有名な10大科学インチキ」:2016年9月11日、には驚いてしまう。

イグノーベル賞ならぬイグねつ造賞を設けて、素晴らしい発想の科学的インチキを毎年、募集したらどうだろう?

アリエ・クェリド(Arie Querido)。出典不明

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《1》ネカト問題の主題からズレる

ネカト問題の主題からズレるが、米国の薬物乱用・中毒は深刻である。

米国は麻薬で国力を衰退させていると、感じる。

麻薬の解禁を日本でも主張する人がいるが、麻薬を解禁すれば、麻薬絡みの健康被害や犯罪は減るのだろうか?

酒は生理的にきついので死ぬほど飲み過ぎるのは難しいが、麻薬は簡単に服用し過ぎるので、麻薬を解禁すれば、乱用・中毒者は急増し、危険だろう。

日本では、酒、たばこ、セックスの一部は年齢で制限され、銃、麻薬、セックス(売春)、安楽死、臓器売買などは違法行為で、全く禁止されている。

違法行為を合法に、あるいは逆に現在の合法行為を違法に、大きく変えれば、社会は不安定になる。

しかし、時代は確実に変化している。時代の変化に法律や社会システムを適応させないと社会は衰退する。

日本はオキシコンチンでまだ大きな社会問題が起こっていないようだが(知らないだけで起こっている?)、いろいろな面で、時代の変化をうまく取り入れてほしい。

ネカト対策は現在の日本はすでに破綻している。時代の変化に適応した改革を取り入れないと、悲惨度が拡大していく。白楽は、ネカトを違法とする新しい法律を制定することが賢明だと思う。

《2》ヒドイ、暗澹

過去20年間で、米国人の700万人以上がオキシコンチン中毒になり、20万人以上が死亡した。

ヒドイ、暗澹。

パーデュー・ファーマ社の「虚偽的な販売」(ミスブランド、“misbranding”)を「ねつ造」としたが、しかし、この「ねつ造」だけが、700万人以上のオキシコンチン中毒、20万人以上の薬物死の直接的な原因とは思えない。

社会的規制で、中毒(死)を防御するシステムを作れないのだろうか?

《3》日本

「長時間型の放出製剤であるので、短時間作用の薬剤よりも致命性や乱用性、依存性が低いと主張し」を虚偽的な販売をした(「 」内の出典は【主要情報源】②)。

それで、2007年、パーデュー・ファーマ社は有罪となり、6億ドル(約600億円)の示談金を米国政府に支払った。

一方、日本のバルサルタン事件は、裁判所がデータ改ざんと認定したので、本記事のパーデュー・ファーマ社のオキシコンチン事件より悪質である。それでも、2017年、「論文は広告に当たらない」として、ノバルティスファーマ社を無罪とした。ビックリした。日本の裁判官は全くおかしい。

撤回監視も批判している。世界は、日本の裁判所が異常だと認識する。
→ 2017年5月17日記事:Could bogus scientific results be considered false advertising? – Retraction Watch at Retraction Watch

右の女性が「Los Angeles Times」紙のハリエット・ライアン(Harriet Ryan)記者。左はCNNの編集者マット・レイト(Matt Lait)。写真:Annie Z. Yu / Los Angeles Times。出典。

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《1》詳細不明

アナ・キャラオは学部時代をポルトガルの大学で過ごしていると思われる。その後、ドイツの大学院に入学した。院生時代に、米国に出かけ、最初の論文が出版されている(第一著者ではない)。米国から戻って、半年後、ドイツの大学院で博士号を取得した。

ドイツの大学院も米国の研究室も研究倫理を躾けなかったようだ。

院生時代にフラフラと腰が据わらない印象を受けた。

不明点が多すぎる事件である。

ベルリン自由大学はアナ・キャラオの盗博を調査しているのか・していないのか? していないなら、なぜしないのか?

盗博と指摘されてから3年経過した2017年4月23日現在(39歳)、ベルリン自由大学は博士号をはく奪していない。なぜ?

アナ・キャラオが最後に論文を出版したのは2012年である。それから5年もたった。その間、2014年2月に盗博が発覚した。5年間も論文出版がないということは、もう、研究者を廃業したのだろう。

なお、女性の場合、結婚して姓を変えると、旧姓で検索しても論文がヒットしない。それで、白楽が追跡できないだけかもしれない。

この事件は、2009年に博士号取得と、さほど古くない事件だが、盗博に至る状況が見えてこない。従って、どうすると盗博を防止できるのか、見えてこない。

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《1》最初の疑問の答え

  • 【問】:スピーチでの盗用は、部分的? ほとんど全部? 今回だけ? 常習?
     【答】:ほとんど全部。しかし、スピーチで逐語盗用するケースは珍しい。
    常習か今回だけかの記載はない。そのことから、今回だけと思われる。
  • 【問】:そもそも、そんなに非難すべきこと? 論文での盗用と同じ? 違う?
    【答】:新聞記事、院生、大学教員は非難すべきと考えている。院生も大学教員もスピーチ盗用は倫理違反だという意識が強い。しかし、論文での盗用より処分は軽微なので、論文での盗用とは違うようだ。
  • 【問】:誰がどの規定で、どんな処分をしたの?
    【答】:院生が騒いだので、大学上層部が話し合い、学長の判断で、学部長の辞任と4か月の休職になった。大学の研究倫理規定にはスピーチでの盗用を禁止する規定はないと思われる。
    ベイカー医学部長は、結局、居心地悪くなり、翌年、他大学に移籍した。

《2》スピーチでの盗用

スピーチでの盗用を禁止する規則は必要だろうか? 2016年7月18日、ドナルド・トランプ氏のメラニア夫人の共和党全国大会での演説で、ミシェル・オバマ夫人のスピーチを盗用した件で大騒ぎになった。 → ドナルド・トランプ氏のメラニア夫人、ミシェル・オバマ夫人のスピーチを盗用? 検証してみた保存版) 上記のサイトの文章で盗用と指摘された部分を着色して以下に示す。

「両親は私に、子供の頃から、人生に望むものを手に入れるために一生懸命に働くことの尊さを教えてくれました。また、自分の言葉は自分に跳ね返ってくるのだから、言ったことは必ずやり遂げ、約束は守ること、そして人には敬意を持って接することを教え込まれたのです」

“From a young age, my parents impressed on me the values that you work hard for what you want in life; that your word is your bond and you do what you say and keep your promise; that you treat people with respect,

この場合、ほとんどの親は、同じようなことを子供に言うと思う。だから、内容は、オバマ夫人に独占権はない。メラニア夫人がその内容に賛同し、それを、同じ言葉で伝えた。メラニア夫人のスピーチでの盗用は、それほど批難されることだろうか? メラニア夫人のスピーチでの盗用は、ベイカー医学部長のスピーチでの盗用と、本質的に異なる。ベイカー医学部長は他人に成りすましたのである。

《3》防ぐ方法

ベイカー医学部長はどうして、スピーチで盗用したのだろう?
そして、どうすると防げるのだろうか?

ベイカー医学部長は急に要請されて、準備や原稿なしでスピーチしたのでない。卒業式でスピーチすることを前々から依頼されていた。内容を準備し、計画的にスピーチしたのである。

従って、盗用はアクシデントや間違いではない。意図的である。そして、本人は不正の認識があっただろう。

予防策は、厳しく処罰することで、盗用してはいけないことを例示するしかないだろう。そういう意味では「学部長の辞任と4か月の休職」は本人の損害が小さく、処分は甘すぎだ。

なお、日本の大学に学長・学部長が数千人いますけど、彼(女)らのスピーチは大丈夫ですよね。エッ? 信用できない。それなら、どなたか、日本のスピーチでの盗用を調査していただけませんでしょうかねえ。

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《1》データは全くの作り物

ノエル・チアは、論文の根拠となる生データの提出を拒んだために、データねつ造とされた。この判断に何も問題はない。結果として、21論文も撤回するハメになった。

ヘルミー・フェイバーの指摘では、生データを出したマレーシア・PPC共同体は架空の組織で、仲介者とされるエスター・ヤップ(Esther Yap)も架空の人物らしい。

つまり、論文のデータは全くの作り物ということになる。なんだか、「社会心理学:ディーデリク・スターペル(Diederik Stapel)(オランダ)」 とよく似ている。

《2》ネカトに至る経過が知りたい

ノエル・チアは2006年(41歳?)にオーストラリアの西オーストラリア大学(University of Western Australia)で教育学博士(Ed.D、Doctor of Education)を取得した。

しかし、それ以前の経歴が不明である。生まれも育ちも記載がない。新聞記事にシンガポール人とあるので、シンガポールで生まれ育ったのだろう。

なお、教育学博士(Ed.D、Doctor of Education)は専門職学位で、研究博士号(PhD)ではない。ノエル・チアが、どこで、研究ネカトのしつけを習得したのか、逆に言えば、データねつ造のクセを習得したのか、白楽には把握できなかった。

ノエル・チアは、ネカトが発覚する前、シンガポールの子供教育では著名な研究者だった。米国の「教育療法士協会」(Association of Educational Therapists; AET)の公認「教育セラピスト」を取得している。シンガポールでは最初の人である。それに、2010年に1冊、2011年に2冊の書籍を出版している。いくつかの賞も受賞している。

これらのライセンス・賞・著書はネカト論文がベースだと思われる。論文撤回を受けて、調査し、ライセンスや賞をはく奪すべきだろう。著書も廃刊を検討すべきだ。

2017年4月17日現在、チアの撤回論文数は21報で、世界「撤回論文数」ランキング」の第18位である。

長い年月ネカトが発覚しないと、多くの論文や著書を通して、多くの研究者は大きな悪影響を受ける。また、教育・指導される学生・院生の数が多くなる。

事件に関して発表された文書では、ネカトの過程や動機が見えてこない。このような大きな事件は、関係者はもっと詳細に分析し、分析結果を公表し、今後2度と起こらない方策も提示して欲しい。

《3》学術誌の説明が秀逸

【主要情報源】⑤の「JAASEP」の2016年春夏号は、論文撤回の通知だけでなく、事件の過程を説明している。

この説明がスバラシイ。

多くの学術誌は見習ってほしい。

http://news.asiaone.com/news/singapore/research-malpractice-unis-have-safeguards-place

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《1》女優と博士号

2011年1月25日(26歳)、サラ・コッホは、デュッセルドルフ大学で哲学・博士号取得を取得した時、テレビ・ドラマで主演を演じていた。

女優業に博士号は必要ないと思うが、ドイツでは女優業にも有利だったのだろうか?

必要かどうかではなく、学問の研鑽を積みたかったのなら、サラ・コッホは、まっとうな博士論文を書くべきだった。盗用しなければ博士論文を完成できなかったのなら、博士論文を放棄すべきだったでしょう。

それにしても、博士号取得という余計なことに手を出して、本業の女優業がアウトになってしまった。

なお、この事件は、2011年に博士号取得と、さほど古くない事件だが、盗博に至る状況が見えてこない。従って、どうすると盗博を防止できるのか、見えてこない。出典:http://antoniatoni.beepworld.de/apps/photoalbum?aid=39329450

http://www.ok-magazin.de/sarah-sophie-koch-die-super-nanny-fuer-alleinerziehende-32229.html

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《1》権力と科学的真実

アブデルハルデン事件は、エミール・アブデルハルデン(Emil Abderhalden、写真出典)が1909年に発表した研究論文の真偽である。100年以上前の事件は、現代のネカト価値観とは大きく異なり、研究倫理を学ぶケーススタディとして不適当な印象である。

アブデルハルデンが提唱した「防御酵素理論(Abwehrfermente (“defensive enzymes”) theory)」は、現代の生命科学の常識から大きく逸脱してる。大間違いなのは誰の目から見ても明らかである。しかし、酵素や免疫の100年前の概念・知識は、現代ではもう異質に近いほど貧弱で間違いだらけである。

一方、防御酵素に関する研究で、アブデルハルデン自身は数百の論文を発表し、1914年までにドイツで500報余りが、世界では数千報の論文が発表された。つまり、当時、防御酵素に関する研究は生理化学の王道の研究テーマだったのだ。

アブデルハルデン事件から、ネカトを防御するシステムを学ぶことは難しい。

《2》権力と科学的真実

科学界の権力者がまともでない学説を主張する時、科学者は、どう対処できるのか? 往々にして、ズルい学者、間違った学説の提唱者が出世し、権力を握ってしまう。

アブデルハルデン事件では、彼の報復に恐れて、多くの科学者は口をつぐんだ。

1930年代にソビエト連邦で強大な権力を握ったルイセンコの「獲得形質が遺伝するという」学説も、反対した学者は逮捕され、獄死している。

権力を持つ科学者の学説に異を唱える王道はない。異を唱えれば、不当な扱いを受ける。それでも、真実を訴え続ける人は尊敬する。せめての慰みは、それが、研究者としてマットウであるという矜持であろう。

現代の日本では、アブデルハルデン事件やルイセンコ事件とは無縁だと思う人が多いかもしれないが、白楽は、そうは思わない。

ネカトを公益通報した通報者(不正な事実を、事実と言葉に発した人)が、依然として、“堂々と”迫害されている。現代日本のアブデルハルデン、現代日本のルイセンコが、大手を振って、のうのうと、大学・学術界の要職についている。

なんとか、ならないものか?

ドイツのマルティン・ルター大学近くのエミール・アブデルハルデン(Emil Abderhalden)通り。http://www.mz-web.de/mitteldeutschland/streit-um-die-emil-abderhalden-strasse-in-halle-der-schweizer-patient-3040946

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《1》仮名の著者

論文発表における著者名の仮名・実名問題を整理しよう。

ここでは、名前を以下のように3分類する。

  • 匿名:人物が特定できない。論文の著者名としては認められない。
  • 仮名:人物が特定できるが、実名(戸籍上の名前)ではない。
  • 実名:戸籍上の名前

「2015年のAdvances in Space Research」論文の著者「Den Volokin」と「Lark ReLlez」は上記の分類で仮名である。

白楽は、自分がペンネームを使用していることもあるが、人物が特定できることが重要で、仮名は学術界で一般的に許容されていると考えている。

実際、研究論文の著者名が戸籍上の名前と異なるケースは珍しくない。特に結婚して戸籍名が変わった場合、著者名の統一性が欠けるので、旧姓のまま通す人もいる。旧姓と戸籍姓をハイフンでつなぐケースも多い。

研究論文では少ないかもしれないが、研究界ではニックネームも普通に使われている。本記事のネッド・ニコロフは、正式名は「Nedialko T. Nikolov」だが、ニックネームの「Ned Nikolov」が普通に使われている。

芸能界は芸名、文筆家はペンネーム、など仮名が普通の業界もいくつかある。インターネットの投稿では匿名が多いが、ハンドルネームなどの仮名(人物が特定できる)のケースも多い。

実名のまま有名になると、公的場所で困ることが予想される。

白楽が東大病院の会計受付で待っていた時、「〇〇〇子さん~ん。ご用意ができましたので、〇番受付までお越しください」と有名人が館内アナウンスされたことがある。〇〇〇子は誰もが知っている有名女優である。受付ロビーの椅子に座っていた数百人は、〇番受付に歩いていく派手な美女を一斉に見つめていた。

有名人は見られることに慣れているだろうが、偉い学者が、性病科で実名を呼ばれたくはないだろう。

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《1》わからないこと多し

フランク=ヴァルター・シュタインマイアー(Frank-Walter Steinmeier)の盗用率は低いが、ネカト学者の白楽の判断では、盗博である。

いままで、ドイツの盗博を何件も分析してきた。しかし、どうして盗博したのか、どこに原因があるのか、どうすれば今後の盗博を防げるのか、ドイツ人が分析している文章が見当たらない。ただ、英語の文章はなくても、ドイツ語ではあるのかもしれない。

《2》意図的な不正?

「研究善行基準委員会」の結論はおかしい。

「引用に関して技術的に弱い面があったが(”technical weaknesses” when it came to citations)、意図的な不正の証拠はない(no evidence of “fraudulent intent or academic misconduct” )」ので、シロとした。

この理由が通用するなら、大多数の盗用はシロである。

「引用に関して技術的に弱い」、つまり、盗用規範の知識・スキルがない博士論文でも合格とし、博士号を授与してしまうのはおかしい。

「引用に関して技術的に弱い」なら、博士論文でも学術論文でも基準以下の不良品で、不合格や不採択で、多くの場合、不正行為(盗用)と判定される。

また、「意図的な不正の証拠はない」のは理由になりません。

ネカトでクロと判定された事件の大半は「意図的な不正の証拠」はありません。本人が否定していれば、「意図的な不正の証拠」を示すことはほぼ不可能だからです。

意図的であろうがなかろうが、基準・規範に違反したら不正なんです。

《3》ドイツの精神がゆがむ

シュタインマイアーは、本日の18日前の2017年3月19日(61歳)、ドイツの大統領に就任した。

ドイツにおける大統領の機能は、ドイツ国民の精神的支柱だとある。

「ドイツ国民の精神的支柱」に盗博者を選ぶとは、ドイツはどうなっているんだろう? ドイツの精神はゆがまないのだろうか? もうゆがんでますって?

写真出典不明

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《1》大学は隠す

パブピアの指摘や「New York Times」の指摘で、画像のねつ造・改ざんは明白である。それなのに、カルロ・クローチェ(Carlo M. Croce)は「誠実な間違い」であると主張し、何も不正していないと強く否定している。

オハイオ州立大学のいままでのネカト調査は信頼できない。テリー・エルトン(Terry Elton)事件では、一度調査した時はシロと判定し、他からの批判を受け、再調査し、データねつ造・改ざんをしたと判定したのだ。
→ テリー・エルトン(Terry Elton)(米) | 研究倫理(ネカト)

オハイオ州立大学は、2014年の・デーヴィッド・サンダース・準教授の告発を受けてクローチェを調査をしたはずだが、調査結果を公表していない。研究公正局も公表していない。

だからこそ、「New York Times」、「パブピア(PubPeer)」、「撤回監視(Retraction Watch)」などのメディアが批判的な記事を書いたのだろう。

メディアの批判的な記事を受けて、オハイオ州立大学は、2017年3月に再調査を始めたようだが、なんかヘンである。

オハイオ州立大学自身の研究公正への姿勢が大いに疑問である。

《2》絵画コレクター

基本的には、個人生活での趣味と研究上のネカトは関係ない。白楽もとやかく言いたくない。

しかし、クローチェのネカト疑惑を報じている「New York Times」紙がクローチェの趣味も報道している。

カルロ・クローチェ(Carlo M. Croce)は個人生活で絵画収集の趣味があり、16- 18世紀のイタリアの絵画を400点も収集しているのだ。費やした金額はわからないが、1枚100万円とすれば、4億円になる。
→ 2009年の記事:High Hopes for a New Kind of Gene | Page 4 | Science | Smithsonian

この金はどこから得ているのだろうか?

クローチェは若い時にイタリアから米国に移住した研究者である。生家が大富豪とは思いにくい。子供が2人いる。1979年生まれ(現・43 歳)だから35歳の時の子供と、1997年生まれ(現・25 歳)だから52歳の時の子供である。離婚・再婚したのだろう。

クローチェは自分の発見を特許にし、3つの会社の共同設立者になった。ここから莫大な収入を得ているのかもしれない。

とはいえ、400枚ものイタリア絵画を収集したお金は莫大な額だろう(1枚100万円として、4億円)。

そのために、金儲けに熱心だったと思われる。本文に記載しなかったが、たばこ業界(Council for Tobacco Research)の顧問になっていたこともある。企業の顧問自体を不正とは思わないが、がんの分子生物学者がたばこ業界の顧問をするのは、一般的には異様に思える。

たばこ業界は著名ながん研究者のクローチェを顧問にすることで、業界に都合のよい宣伝材料に利用したハズだ。クローチェは利用されるのを承知で多額の顧問料を貰っていたに違いない。

研究者が金儲けにいそしんでもいいが、節度と限度がある。たばこ業界への協力は、節度を越えていると思う。400枚ものイタリア絵画の収集は、限度を越えていると思う。クリーンな研究者とは思いにくい。

カルロ・クローチェ(Carlo Croce)の自宅の絵画コレクション。写真出典:Years of Ethics Charges, but Star Cancer Researcher Gets a Pass – The New York Times

《3》予防法

クローチェはネカト者と結論されていない。現在調査中の件でもクロと判定されないかもしれない。しかし、ここ20年ほど、クローチェは金銭的不正疑惑とネカト疑惑にまみれている。

クローチェの不正疑惑を予防する方法はどこにあったのだろうか?

クローチェは研究を出世や金儲けの道具と考えていたとしても、その考え自体は違法でも規範違反でもない。考えただけで学術界から追放することはできないしすべきではない。

しかし、クローチェは、実際に何度も、不正だと指摘されてきた。その際に、大学は的確にかつ厳正にクローチェを処分してこなかった。それで、クローチェはだんだん、ズル賢く生きるスベに磨きをかけてきたように思う。

初期の段階で罰することが重要だ。

初期での処罰を逸したことで、やがて、スター研究者になってしまった。でも、スター研究者だからと言って特別扱いしないことだ。イヤイヤ、特別甘くしないということであって、有名人・権力者・高額研究費受給者を特別厳しくチェックし、平均より厳しく処分するという意味では、特別扱いしてもいい。イヤすべきである。

《4》2017年に受賞予定

ここで述べたようにクローチェは20年以上の金銭的不正疑惑とネカト疑惑まみれである。そして、2017年、「New York Times」紙をはじめ、いくつかのメディアがデータ改ざんと盗用を指摘している。

2017年4月2日現在、オハイオ州立大学はデータ改ざんと盗用を調査中である。

それなのに、本日(2017年4月2日)、米国癌学会(AACR)は、2017年4月1-5日に開催の年会で、クローチェに第11回マーガレット・フォティ賞(11th Margaret Foti Award for Leadership and Extraordinary Achievements in Cancer Research)を授与したという。
→ 2017年3月29日の記事:AACR Margaret Foti Award for Leadership and Extraordinary Achievements in Cancer Research

「撤回監視(Retraction Watch)」が米国癌学会に、オハイオ州立大学がクローチェのデータ改ざんと盗用を調査中であることを知っているのかと問い合わせた。返事は、「知っています。「New York Times」記事も知っています。しかし、授賞の決定を変えるほど重要な知見が提示されておりません。それで、委員会での選考結果を変更しないで進めております」との返事だった。

白楽が思うに、疑惑の研究者に急いで賞を授与する意味はない。疑惑が晴れるのを待って、来年でも再来年でもいいだろう。逆にクロと判定されたら、マーガレット・フォティ賞及び米国癌学会に汚点の歴史が残る。

クローチェは、現状では、米国癌学会が賞を授与して学会員の鑑にするような人物とは思えない。

米国癌学会に、まともな見識を持つ会員・役員はいないのか?

写真出典不明

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、日本に飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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