2020年4月21日掲載
ワンポイント:【長文注意】。「3‐2 アカハラ」は「3‐2‐1 アカハラの規則・言動例」と本記事「3‐2‐2 アカハラのデータ・被害実態」の2部作である。本記事では、高等教育界(含・学術界)のアカハラ事件のデータと被害実態を示す。データと被害実態を知れば、アカハラ事件の深刻さが正確に把握できる。アカハラへの対処を設計する基本として、正確なデータが必要である。なお、日本のアカハラのデータと被害実態調査がはなはだ貧弱なことがわかった。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.データベース
2.アカハラ被害実態:日本
《1》アカハラ被害の数値:日本
《2》アカハラ被害事例:日本
3.アカハラ被害実態:米国
《1》アカハラ被害の数値:米国
《2》アカハラ被害事例:米国
4.アカハラ被害実態:英国
《1》アカハラ被害の数値:英国
《2》アカハラ被害事例:英国
5.アカハラ被害実態:ドイツ
《1》アカハラ被害の数値:ドイツ
《2》アカハラ被害事例:ドイツ
6.アカハラ被害実態:その他
《1》アカハラ被害の数値:世界
《2》アカハラ被害事例:その他の国
7.白楽の感想
8.白楽の手紙
9.コメント
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●1.【データベース】
★アカハラ事件のデータベース
2019年6月7日、ミシガン州立大学(Michigan State University)のジュリー・リバルキン教授(Julie Libarkin)が米国の研究者の性不正事件をデータベース化し、「学術界の性不正事件データベース(Incidents | Academic Sexual Misconduct Database)」を公開した。
似たようなアカハラ事件のデータベースを探したが、見つからない。
誰もアカハラ事件のデータベースを作っていない?
イヤイヤ、白楽が作っています。【日本の研究者の性不正・アカハラ事件一覧】が日本の、そして、【研究者の性不正・アカハラ事件一覧(除・日本)】が世界の、アカハラ事件データベースである。世界唯一のデータベースである。ただ、完成途上で、不完全である。 → 日本のネカト・性不正・アカハラ・クログレイ事件一覧
→ 研究者のセクハラ・アカハラ事件一覧
★アカハラ事件のブログ(除・日本)
アカハラ事件のブログは、日本以外にもいくつかある。以下に示す。
- 2006年5月14日開始-現在も継続:フランスのピエール・ジョゼフ・プルードン(Pierre-Joseph Proudhon) :Bullying of Academics in Higher Education
- 2008年12月開始-現在も継続:米国のサフォーク大学法科大学院(Suffolk University Law School)・法学教授の デイヴィッド・ヤマダ(David Yamada):Minding the Workplace
- 1996年開始-現在も継続:職場のイジメ一般:故・ティム・フィールド(Tim Field):Bullyonline – Bullying at Work
- オーストラリアのニューカッスル大学:Stop Bullying at University of Newcastle (Oz)
- 米国の職場のイジメ一般:Workplace Bullying Institute
- 2000年開始-2014年終了?:カナダのウォータールー大学(University of Waterloo)・社会学名誉教授のケネス・ヴェストフース(Kenneth Westhues):Workplace Mobbing in Academe
●2.【アカハラ被害実態:日本】
● 《1》アカハラ被害の数値:日本
日本のアカハラ被害の数値はすこししかない。
★文部科学省に問い合わせた
以下は、「3‐2‐1 アカハラの規則・言動例」の該当部分の再掲である。
文部科学省が日本のアカハラ調査をしているかもしれない。
念のため、文部科学省に「御質問」で問い合わせた。以下のように「御質問」は回答されるのが原則、と文部科学省が書いている。
「御質問」については、原則として入力いただいたメールアドレス宛に回答させていただきますが、回答に時間を要する場合があります。また、内容によっては回答できかねることがありますので御了承ください。(文部科学省に関する御意見・お問合せ窓口案内:文部科学省)
質問は以下の通り。ここでは2点目が該当の質問である。
約20日前に「御質問」したが、回答がなかった。それで、再度、10日前に「御質問」した。それでも回答がない。
文部科学省の対応は、どうなってんの? 信じられない怠慢さだ。
どうやら、文部科学省は日本のアカハラ調査をしたことが一度もないようだ。
★毎年250~300件、加害者は教授(46.6%)、准教授(21.8%)
菊地重秋(2015)「我が国におけるアカハラの傾向・特徴を探る(2015)―健全な環境のために ―」『白門』第 67 巻第 12 号、17-24、によると、
2000年以降、アカハラ加害者は教授(62人、46.6%)、准教授(29人、21.8%)が多く、被害者は院生や学部生が多い。(出典:2019年3月の土屋正臣(城西大学 現代政策学部)の「城西現代政策研究」論文「日本におけるアカデミック・ハラスメント研究の動向」)
これでは、ほとんどわからない。毎年何件のアカハラ事件があるのか不明である。
NPO「アカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク」の代表・御輿久美子(おごし・くみこ)によると、
新規のアカハラの相談件数は年間250~300件ある。(出典:2017年9月14日記事:「学校辞めるか死ぬか選べ」大学教授の“アカハラ”恐怖の実態 | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン)
相談件数はとても多い。
しかし、日本ではまともなアカハラの事件数、調査、データがない。正統的なアカハラ研究もとても少ない。
要するに、文部科学省も研究者もアカハラに関心がない。しかし、被害数は結構多い(白楽調べ)。一般的に、性不正の数倍の被害者がいると言われている。数倍と言ってもデータがないと、なんとも言えない。被害者は多くても、これでは、アカハラ問題は解決しない。
● 《2》アカハラ被害事例:日本
★国立大阪外国語大学事件
指導教授(男性)による院生(女性)へのアカハラ例である。
2002年4月13 日の朝日新聞記事「教授のアカハラ認定/大阪外大巡り地裁判決/国に賠償命じる」に、「大阪外国語大学の元大学院生の女性(31)が指導教授(54)からアカデミック・ハラスメント(アカハラ)」とあった。
以下は改変引用。出典:2019年1月3日更新の「あなたを救うかもしれない法律トリビア」記事:アカハラ事例|国立大学教授が加害者の場合、誰が責任を負うのか?
院生Xは教授Yの通勤の車に同乗していたが、デートに誘われ、嫌悪感を抱き、車への同乗を断った。すると、教授Yは指導を拒否し院生Xを中傷誹謗しはじめた。教授Yを嫌った院生Xは他大学の大学院に転学しようとしたが、教授Yに受験を妨害された。
院生Xは教授Yに精神的損害を受けたと、裁判所に損害賠償を請求した。また、国に対して国家賠償法に基づく損害賠償を請求した。
判決は、教授Yの指導拒否・中傷誹謗・受験妨害は、不法行為にあたると裁決された。国は損害賠償として慰謝料100万円と弁護士費用の10万円を支払うことと命じられた。教授Yは損害賠償責任がない。
- この事件は教授Yも院生Xも匿名で、実名は不明である。
- この事件は大阪外国語大学が調査したかどうか不明である。調査した場合、教授Yを処分したかどうか不明である。
★東北大学金属材料研究所事件
教授や所長による助教授へのアカハラ例である。
出典:2016年の原田英美子「金属」第 86 巻 12 号 91-102 ページ(2016):トップダウン型研究不正の手法解明―捏造・アカハラ研究室でいかに生き残るか? 東北大学金属材料研究所の例から学ぶ
私(Y 氏)は、2004 年に兵庫県立大学工学部から東北大学金属材料研究所(金研)に助教授として戻ってきました.その時に,金研所長となっておられたI 先生(私が所属する金研ガラス総合研究センター長を兼務)に挨拶をしたのですが,君は他の人に比べて論文が少ない,ときつく叱責されました.
かつて金研でも大学院生および助手であったころも,厳しいことをしばしば言われていたので,この時もその延長なのだろうと自分に言い聞かせて,新しい職場で研究を開始いたしました.
ところが,2006 年の秋頃だったと思いますが,いきなり所長室に呼び出されて“君の研究内容が理解できない” “君の業績はあまりに低い”ということを理由に,唐突に辞任を促されました.このままでは職を失ってしまうという焦りと不安から,かなり精神的に追い詰められてしまいました.失職となれば家族共々路頭に迷うことになるため大変深刻です.
I 先生の強い指示を受けて 07 年論文であるキャップ鋳造法による研究を本格的に始めたのはちょうどその頃でした.また,この時の経験から,I 先生の指示・意向には決して逆らえないと強く感じるようになっていきました.
原田英美子は次のように続けている。
ここで読み取れるのが,Y 氏が受けていた継続的かつ悪質なアカハラである.大学院生・助手のころから高圧的な態度をとられていたと記載されている.
- この事件は助教授Yも教授Iも匿名で、実名は不明である。
- この事件は東北大学が調査したかどうか不明である。調査した場合、教授を処分したかどうか不明である。
★マリさん事件
指導教授(男性)による院生(女性)へのアカハラ例である。
出典:2011年の湯川やよいの「教育社会学研究第88集(2011)」論文:アカデミック・ハラスメントの形成過程
マリさん(仮名)は、医療系の院生で、博士課程も後半に自分の研究成果を別の院生にあげるように指示された。マリさん(仮名)は、指導教授のアカハラと受け止めた。
推薦書を書いてもらう時に、指導教授から下書きの提出を求められ、マリさん(仮名)は、それを指導教授のアカハラと受け止めた。そして、強い口調で非難し、拒絶した。
話は微妙でかつ詳細なので、原典を読んでください。
- この事件は大学名、アカハラ年月が記載されておらず、不明である。
- この事件は指導教授もマリさん(仮名)も匿名で、実名は不明である。
- この事件ではマリさん(仮名)は、大学にアカハラを申し立てていない。それで、大学は調査していない。
★金沢大学のアカハラニュース動画
「3‐2‐1 アカハラの規則・言動例」に掲載したが、再掲載
【動画】
「学生に嫌がらせ”アカハラ” 金沢大学の男性教授に懲戒処分 2019.3.16放送? YouTube」(日本語)1分10秒。
北陸朝日放送公式ページが2019/03/17に公開
https://www.youtube.com/watch?v=44JHBYt0Uns
★他のアカハラ事例
- 2019年11月19日の「かつだむ」記者の記事:【大学・大学院】アカハラの実態と対策
- 2019年7月5日の「のぼたん」記者の記事:【アカハラとは】アカデミックハラスメント「38の事例」 | ミラとも転職、(保存版)
- 2018年7月6日の「池田園子」記者の記事:「モンスター教授」事例集、女子学生と合コン・ツイッターで暴言… | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン
- 2018年6月1日記事:他大学大学院への進学を許さない教授 – 日本の科学と技術日本の科学と技術
- 2017年5月23日記事:研究室の学生に対しアカハラをはたらいてくる教授がいるので告発したい!とある院生の一連の動きまとめ – Togetter
★アカハラ相談
本記事では、アカハラ事件のデータと被害実態を示すことが主眼だが、読者の中にはアカハラ被害で困っている人もいるだろう。それで、「どうしたらよいか?」のサイトや記事を、日本(語)に限って、以下に示す。
- NPOアカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク(NAAH)アカデミック・ハラスメントでお悩みの方はご連絡ください:アカデミック・ハラスメント相談活動|NAAH
- 2020年1月4日記事:【パワハラ裁判例から学ぶ】パワハラと指導の違いとは? | Senses
- 2019年11月19日の「かつだむ」記者の記事:【大学・大学院】アカハラの実態と対策
- 2019年7月7日の「水無月 Saxon Adler」記者の記事:アカデミック・ハラスメントとその周辺
- 2018年4月21日記事:大学教授によるハラスメント、「アカハラ」とその対処法 | 労働問題の窓口
●3.【アカハラ被害実態:米国】
【動画】
中高生のイジメに関する動画だが、ボイス・オブ・アメリカなので英語がクリアー。「米国の少女の自殺がイジメに新たな注意を喚起する(Girl’s Suicide in US Brings Fresh Attention to Bullying) – YouTube」(英語)4分00秒。
VOA Learning Englishが2010/05/18に公開
【動画】
中高生のイジメに関する動画だが、学部生・院生でも同じ部分があり参考になる。「学校が怖すぎる(ドキュメンタリー)| 実話(Too Scared For School (Bullying Documentary) | Real Stories) – YouTube」(英語)46分34秒。
Real Storiesが2016/11/16に公開
● 《1》アカハラ被害の数値:米国
米国の連邦政府系機関によるアカハラの事件数、調査、データは見つからなかった。
★全米科学アカデミー(NASEM):2018年
出典:Sexual Harassment of Women: Climate, Culture, and Consequences in Academic Sciences, Engineering, and Medicine
310頁 | 6 x 9 | PAPERBACK
ISBN 978-0-309-47087-2 | DOI 10.17226/24994
https://www.linguisticsociety.org/sites/default/files/24994.pdf
セクハラ問題の調査・提言書でセクハラのデータはあるが、アカハラのデータはない。161ページ目に、以下に示すように、アメリカ地球物理学連合(American Geophysical Union)がアカハラをネカト同等と見なしていると言及している。しかし、全米科学アカデミーとしては、アカハラの調査をしていない。
6万人の会員がいる巨大なアメリカ地球物理学連合(American Geophysical Union)の行動規範(code of conduct )は、研究環境・学習環境での差別、嫌がらせ(harassment、含・セクハラ)、イジメ(bullying )は容認できないものであり、研究不正(ネカト)である、としている。 → AGU-Scientific-Integrity-and-Professional-Ethics-Policy.pdf
★医師・医学生のアカハラ被害
【医学生の46.4%が虐待被害:1990年論文】
出典(要約閲覧は無料。白楽は本文未読):Silver HK. Medical student abuse: Incidence, severity, and significance. JAMA. 1990;26;263(4):527-532. :https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/380396
A医科大学の医学生へのアンケート調査を行なった。全回答者の46.4%が、そして、最終学年生の80.6%が虐待を受けたと回答した。 虐待を受けた医学生の3分の2以上(69.1%)は、虐待は深刻で、非常に動揺した、と回答した。医学生の半数(49.6%)は、深刻な虐待で1か月以上にわたって悩んだ。 16.2%は、常に悩まされた、と回答した。
【自殺率が高い:2004年】
男性医師は1.4倍、女性医師は2.3倍、自殺率が平均職業者より高い。(2004年の「American Journal of Psychiatry」論文)
【医学生の20%がうつ病:2013年】
出典:2013年:National Mental Health Survey of Doctors and Medical Students:https://www.beyondblue.org.au/docs/default-source/research-project-files/bl1132-report—nmhdmss-full-report_web.pdf?sfvrsn=845cb8e9_4
2013年に医師と医学生を対象に調査した報告書(156頁)。医学生の20%がうつ病と診断され、25%が自殺を真剣に考え、2%が自殺を試みた。
★カリフォルニア大学バークレー校・院生の44%がうつ病:2014年
アカハラとうつ病がどう関係しているのか明白ではないが、アカハラが原因でうつ病になっているケースが多いと思う。2014年、カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)の院生790人を対象に調査した結果、44%がうつ病の症状を示していた。
→ 報告書:Graduate Student Happiness & Well-Being Report | 2014
● 《2》アカハラ被害事例:米国
★本ブログで記載
本ブログで記載した米国のアカハラ事件は以下のとおりである。
- 「アカハラ」:電子工学:アクバル・サイード(Akbar Sayeed)(米)
- 「アカハラ」:哲学:ニコラス・メリウェザー(Nicholas Meriwether)(米)
- 「アカハラ」: ベッセル・ヴァン・デア・コーク(Bessel van der Kolk)(米)2020年4月3日掲載
- 「アカハラ」:英語学:バレット・ワッテン(Barrett Watten)(米)2020年3月25日掲載
- 「アカハラ」:マイケル・リー(Michael K. Lee)(米)2020年3月4日掲載
★バージニア工科大学のアカハラ事例
【事例1:教員が教員へ】
出典:Bully case study threats Faculty to Faculty Example.pdf
私(A)は女性で、バージニア工科大学に助教授として赴任した最初の数か月間、同じ学科の先輩女性教員Bが親しくしてくれた。所属学科は教員Bを私のメンター教員の1人に割り振った。しかし、数か月後、私は教員Bの言動を不快に感じ、付き合いを辞めた。すると、教員Bは私の研究・教育を脅かす言動をし始めた。
ただ、これらの言動は、明白なアカハラではなく、メンターとして私を“教育”したのだと言い逃れられるレベルの微妙な言動だった。
例えば、今学期が始まる前、私は複数の院生から個別指導を頼まれた。このことが他の教員の妬み・恨みを買い、結果として、別の教員から個別指導を辞めるよう指示された。私は指示に同意し、個別指導を辞めた。
ところが、教員Bは、その2週間後に彼女のオフィスに私を呼んで、この問題を蒸し返した。私はすでに院生の個別指導を辞めていたのに、教員Bは私を批判・非難し、完全に私を懲罰するような面談になった。教員Bはそして、彼女が私に言わせたかったことを、私が言うまで、40分以上も説教したのだ。
さらに、その面談の2週間後、教員Bは私のオフィスにきて、「あなたは私のアドバイスを嫌いなことは知っています。しかし、若手教員はアドバイスされることを望んでいます。もし私が昇進委員会の委員だったら…」と、脅迫するようなことを言った。彼女は何度も、「私が言うことに従わなければ、あなたはトラブルに巻き込まれます。私が指示するように行動することが、この学科で成功する唯一の方法です」と言った。
教員Bは私を支配し、コントロールしたいのだ。実際は、アカハラなのだが、教員Bの発言内容を記録してもアカハラと断定するには微妙である。というのは、教員Bの発言内容が重要な問題なのではない、その言い方が問題で、明確なハラスメントなのだ。
だから、アカハラと訴えるのは、とても難しい。教員Bはこれらすべての相互作用を「メンタリング」、つまり、若手の後輩教員の“教育”という枠内で処理し、彼女の権力と地位を盾に、私が彼女に反対できないようにしている。
【事例2:教員が院生へ】・・・これは事例研究としての例
事例研究がいくつかアップされている:Case Studies | Graduate School | Virginia Tech
以下は、その1つで、教員の院生へのアカハラ事件である。
出典:ABCS1 – Faculty bullies student.pdf
アレックスは修士課程に入学したばかりの院生(男性)で、アドバイザー(スミス博士)は終身在職権をもつ教員である。研究室を選ぶ際、アレックスが面接したとき、スミス博士はオープンで友好的で、院生のワーク・ライフ・バランスが重要だと語った。
アレックスはワーク・ライフ・バランスの話に感銘を受け、スミス博士の研究室を選び、研究を開始した。
しかし、実験を始めた最初の1か月で、アレックスはワーク・ライフ・バランスの話は全くのデタラメだったことに直面した。
具体的に書こう。
アレックスは要求された研究作業(研究助手の契約をしている)を1週間行なった。そして、木曜日に、週末は家族に会うために旅行したいとスミス博士に伝えた。
その木曜日の晩遅く、アレックスはスミス博士から「週末に家族に会うためにお金を払っているわけではない。週末にはさらなる研究作業をすることを期待している」というメールを受け取った。
アレックスはスミス博士が研究助手の契約に設定した条件を無視するだけでなく、叱責された。
アレックスは、研究室に入る前に語っていたワーク・ライフ・バランスの話が今や無効であることに腹を立て、屈辱を感じた。
それで、アレックスはスミス博士とワーク・ライフ・バランスについて話し合おうとスミス博士のオフィスに行った。話し合いはすぐに中断され、「私の研究室で研究助手をしたいという院生はたくさんいるんだよ」、とスミス博士に脅された。
スミス博士が不適切だと判断すれば、アレックスは解雇され、別の院生が雇われる可能性が高い。
- この話は事例研究用の話なので、実話ではない。アナタがアレックスだったら、どうするのが良いでしょうか?
★イェール大学公衆衛生大学院・準教授のアカハラ被害事例
大学教員が他大学の教員をイジメる。この手のアカハラ行為は多いが、被害が深刻ではないので、事件が表面化することはすくない。
出典: 2016年9月1日のマーニー・ホワイト(Marney A. White)準教授の記事: Mean girls with Ph.D.s 、(保存版)。この記事は、2016年6月13日に「Chronicle of Higher Education」に掲載された。
マーニー・ホワイト( Marney A. White )(実名、若い女性)は、イェール大学公衆衛生大学院・準教授である。
以下、本人の語り口風に記述した。
私は公衆衛生学の準教授なので、毎年何百人もの学生を教え、主に学術誌や本に論文を出版しています。私の論文は査読を受けるので、私は、知らない人の精査・批判に慣れています。論文の査読者から残酷に批判され、社交メディアの荒らしに攻撃され、授業評価で侮辱されました。もちろん、すべて匿名です。
決して楽しいことではありませんが、これらに対処する方法を見つけました。悪い評価について他の教授とグチを言い合い、授業評価での侮辱については、私が最も称賛する同僚でさえ、学生から時々非常に否定的な評価を受けるのを知り、現実はそういうものかと理解しています。
2016年春、ワシントンポスト紙に研究者と母性のバランスについてエッセイを発表しました。そのコラムでは、子供を持つ女性学者が母性についてもっと発言することを奨励しました。家族と学問の両方の目標を追求したい女性学生のロールモデルとして役立ちたいと思ったのです。
原稿を送付したとき、私はキャンパスで撮影された家族の写真を添付しました。大学図書館が背景に現れたので、私はそれが好きでした。写真では、夫が息子を肩に乗せて、私は息子の顔を見上げています。ワシントンポスト紙が私のエッセイで写真を撮りたいと言ってくれたとき、私はとても幸せでした。
ところが、ワシントンポスト紙に記事が掲載されるとすぐに、非常に優秀で賢いハズの準教授・教授たちが、記事に添付された私の家族の写真を社交メディア(Facebook)で批判し始めました。
家族に関する個人的なことを攻撃されたことに、私は、心の準備ができていませんでした。
有名州立大学の女性・準教授は、「この写真っておかしくない? 夫と子供はカメラを見ているのに、妻のマーニー・ホワイトは子供を崇拝するように見つめている」 (コラムは母性に関するものなので、どうして、自分の子供を崇拝するように見てはいけないの?)。別の教養大学の女性・準教授は、「私はこの写真に嫌悪を感じて、記事を読めない」と、アイビーリーグ大学の教授は、「この写真は私に吐き気を催させた」と書いたのです。博士号を持つ大学教授・・準教授が侮辱的なイジメ言葉でコメントしたのです。
私は、侮辱的なイジメ言葉のコメントを読んで、顔が紅潮し、心臓がドキドキしました。それでも、勇気を振り絞って、「ありがとう」と書きました。すると、スレッドは数時間沈黙し、やがて、一人が「写真は愛情があり、すてき」と書いたのです。
私は彼女に感謝し、私の家族の写真を掲載した流れを書き込みました。私は彼女らに、あなたたちが書いたコメントは、1人の生身の人間に面と向かって言っているのだということを知ってほしかったのです。
私の発言に応えて、人々は意地悪なコメントを削除し始めました。数人の女性は公に謝罪し、他の女性は直接私に謝罪の電子メールを送ってきました。
社交メディアは、攻撃側は攻撃の標的から十分な距離があり、実在の人を名ざしで呼び出し、キャリアの非難、家族のバッシングを容認できると見なされる可能性があります。しかし、人々は、生身の人間を直接侮辱しているという現実を認識すれば、不快になります。
私たち人間は残酷です。私たちは自分自身を素敵な人と思っていますが、私たちの最も素敵な人でさえ状況によっては、残酷さの兆候を示します。
私の場合、コメントが実在の人物を傷つけていることを理解すると、多くの人は引き返しました。人々が実在の人物を傷つけていることに気付くと、後悔する傾向があることも学びました。そして、人間は全体的には善であると思う信頼を私に与えてくれました。と言っても、彼らは時々本当に意地悪かもしれませんが・・・。
- この事件は被害者の大学名、アカハラ年月が記載されている。
- この事件は、加害者は匿名で、実名は不明である。
- この事件ではマーニー・ホワイト(Marney A. White)は、加害者の大学にアカハラを申し立てていない。
●4.【アカハラ被害実態:英国】
● 《1》アカハラ被害の数値:英国
★研究者の61%がアカハラ被害・目撃:2020年
ウェルカム・トラスト(Wellcome Trust)の調査。
出典: 2020年1月15日のウェルカム・トラスト(Wellcome Trust)の調査報告書: What Researchers Think About the Culture They Work In
劣悪な研究文化が、不健康な競争、いじめや嫌がらせ(bullying and harassment)、メンタルヘルスの問題を引き起こしている。
- 研究者の78%は、激しい競争が不親切で攻撃的な状況を作り出したと考えている。
- 研究者のほぼ3分の2(61%)がいじめや嫌がらせを目撃しており、43%がいじめや嫌がらせを経験している。
- 研究者の半数以上(53%)が、うつ病や不安に対する専門的な助けを求めている。
★ケンブリッジ大学・教職員(含・院生・ポスドク)の3人に1人がアカハラ被害:2020年
出典: 2020年1月7日のリチャード・アダムス(Richard Adams)記者の「Guardian」記事:Third of Cambridge University staff ‘have experienced bullying’ | Education | The Guardian
アカハラに関するアンケート調査の結果、ケンブリッジ大学・教職員(含・院生・ポスドク)の4分の1にあたる約3,000人の回答が得られた。
その結果、ケンブリッジ大学・教職員(含・院生・ポスドク)の3人に1人がアカハラ被害を受けていた。加害者の最大のグループは教員で、被害者の最大のグループは女性のアシスタント・スタッフだった。
調査を実施した労働組合・「ユナイト( Unite )」・ケンブリッジ支部長のウィル・スミス(Will Smith)は、「教員を規律することは非常に難しく、本当に悲惨な場合を除いて、彼らを解雇することは不可能です。私はここに30年いましたが、誰も、教員を解雇できるとは考えていません。一部の教員はアカハラで退職しましたが、解雇されたわけではありません」と指摘した。
★UK Research and Innovation(UKRI)の報告書:2018年?
内容省略。
出典: 2018年(?)のUK Research and Innovation(UKRI)の報告書(48頁)(含・以下の冒頭部分の出典):Bullying and Harassment in Research and Innovation Environments: An evidence review:https://www.ukri.org/files/about/policy/edi/ukri-bullying-and-harassment-evidence-review-pdf/
★過去5年間で約300人の教授らがアカハラ加害:2018年
出典: 2018年9月28日のハンナ・デヴリン(Hannah Devlin)記者とサラ・マーシュ(Sarah Marsh)記者の「Guardian」記事:Hundreds of academics at top UK universities accused of bullying | Education | The Guardian
「Guardian」紙は英国の135大学に情報開示の要求を送信し、55大学から294件の教員のアカハラ行為があったという回答を得た。
さらに30大学は、教員かどうかに問わず、大学スタッフに対して337件のアカハラ告発があったと回答してきた。
2013年からの5年間で、105大学の184人のスタッフが懲戒処分を受け、32人がアカハラで解雇された。
14大学は、情報非公開にする条件でアカハラ事件の示談をしたので、情報を公開できないと回答してきた。
アカハラを大学に通報するのは、それなりに敷居が高い。従って、実際のアカハラ被害数は、上記の数字よりずっと多いと思われる。
★大学教員の6.7%が「常に」または「頻繁に」被害:2008年
出典:Great Britain: Parliament: House of Commons: Innovation; Universities; Science and Skills Committee (2009). Students and universities: eleventh report of session 2008–09, Vol. 2: Oral and written evidence
2008年、英国の大学教員9,700人のアカハラのアンケート調査。
回答者の51%がアカハラ被害なし、16.7%がたまに経験、6.7%が「常に」または「頻繁に」アカハラを受けた、と回答した。表は上位大学を並べた。イーストロンドン大学では回答者の16.7%が「常に」または「頻繁に」アカハラを受けた、と回答した。
★40%以上がアカハラ被害:2005年
出典: 2005年9月16日「Times Higher Education」記事:Bullying rife across campus | Times Higher Education (THE)
2005年、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン (University College London)・心理学教授のペトラ・ボイントン(Petra Boynton、写真出典)がアンケート調査を行ない、843件の回答を受け取った。その結果、40%以上がアカハラ、33%が「望ましくない身体的接触」、10%が身体的暴力、4%(34人)が性的暴行を受けた、と回答した。約75%が、同僚がイジメられているのに気が付いた。
● 《2》アカハラ被害事例:英国
★本ブログで記載
本ブログで記載した英国のアカハラ事件は以下のとおりである。
- 「アカハラ」:マイケル・ストラットン(Michael Stratton)(英) 2020年4月9日掲載
- 「アカハラ」:建築学:ヒシャム・エルカディ(Hisham Elkadi)(豪、英) 2020年3月16日掲載
- 「アカハラ」:古生物学:ニコラス・ロングリッチ(Nicholas Longrich)(英) 2020年3月10日掲載
- 「アカハラ」:ナズニーン・ラーマン(Nazneen Rahman)(英) 2018年8月22日掲載
★シャーロットのアカハラ被害事例
出典: 2018年9月28日のハンナ・デヴリン(Hannah Devlin)記者とサラ・マーシュ(Sarah Marsh)記者の「Guardian」記事:Hundreds of academics at top UK universities accused of bullying | Education | The Guardian
シャーロット(Charlotte)(仮名、若い女性)は、一流大学の優れた研究室のテクニシャンとして就職した。上司の上級研究員(男性)は協力的だった。シャーロットは、テクニシャンとして働きながらパートタイムの博士院生コースを取る兼務プログラムに切り替えて、研究者になるよう勧められ、そうした。
しかし、しばらくすると、シャーロットはイジメの標的になった。 イジメは、「古典的な虐待」だった。シャーロットは日常的に中傷され、上司はシャーロットの研究作業に怒りで応え、屈辱的なコメントをした。
実行不可能な量の研究作業をこなすように命令され、できないというと怒鳴られ、何度も涙を流した。
数人の同僚が見かねて、上司のイジメを大学の人事課に通報してくれた。通報を受けて、人事課の係員が研究室の会議に同席したが、アカハラの解決に真剣ではなかった。それで、状況は改善しなかった。学科長はこの問題を知っていたが、「アカハラの逆境に耐え、何とかこなしていきなさい(just take it on the chin and get on with it)」という態度だった。
シャーロットの最初の論文が受理された時、同僚は「おめでとう」と言ってくれたが、上司は「あなたは博士号を取得できない」と言い、シャーロットは泣いてしまった。
シャーロットは職場で流産してしまった。上司は同情してくれたように見えた。しかし、6か月後、彼女が再び妊娠したとき、上司は、「ああ、信じられません。あなたのプロジェクトは妊娠・出産で本当にダメージにうけますよ。流産した時は、良かったなあと思いました」とシャーロットに言った。
博士号を取得した後、シャーロットは移動を切望した。それで、シャーロットは移動したい部門の責任者と面接した。面接後、上司はその責任者に連絡し、シャーロットの悪口を言って、その部門への移動を妨害した。
- この事件は大学名、アカハラ年月が記載されておらず、不明である。
- この事件は上司の上級研究員(男性)もシャーロット(Charlotte)(仮名、若い女性)も匿名で、実名は不明である。
- この事件ではシャーロット(Charlotte)は、大学にアカハラを申し立てたが、アカハラ状況は改善されなかった。
●5.【アカハラ被害実態:ドイツ】
● 《1》アカハラ被害の数値:ドイツ
★マックス・プランク研究所の3分の1がアカハラ被害者
出典: 2019年6月27日の「Mirage News」記事:Max-Planck-Gesellschaft publishes survey on work culture and work atmosphere | Mirage News、(保存版)。
2019年2月、マックス・プランク研究所(Max-Planck-Gesellschaft)は、マルティナ・シュローダー教授(Martina Schraudner、写真出典)を座長にアカハラのアンケート調査を行なった。
調査結果:https://www.mpg.de/13631521/work-culture-atmosphere-max-planck-society.pdf
アンケート調査対象者は、院生、ポスドク、非科学スタッフ、科学スタッフの9,000人以上の従業員だった。
調査結果は以下のようだ。
マックス・プランク研究所(Max-Planck-Gesellschaft)は、調査時点の過去1年間に、全従業員の10%がイジメを受けた。内訳は、非科学スタッフは11.8%、科学スタッフは7.5%だった。なお、全米科学アカデミー(NASEM)の同様な数値では、全従業員の約20%がイジメを受けたと報告しているので、米国より、状況が良いと書いている(白楽注:全米科学アカデミーのデータが見つからない)。
全従業員の3人に1人は、達成できない量の作業と達成できない期限設定を要求された。
全従業員の 28.1%が無視または排除された。この値はドイツ人科学者の数値で、他のEU諸国から来た科学者では約50%、非EU諸国から来た科学者では約33%だった。
● 《2》アカハラ被害事例:ドイツ
★本ブログで記載
本ブログで記載したドイツのアカハラ事件は以下のとおりである。
- 「アカハラ」:タニア・シンガー(Tania Singer)(ドイツ)2018年10月10日掲載
- 「アカハラ」:天文学:グィネヴィア・カウフマン(Guinevere Kauffmann)(ドイツ)2018年9月4日掲載
- 「アカハラ」:天文学:マルセラ・カロロ(Marcella Carollo)(スイス)2018年4月28日掲載・・・国はスイスだが、カロロはドイツのミュンヘン大学で研究博士号(PhD)取得しているので一緒にした
●6.【アカハラ被害実態:その他】
● 《1》アカハラ被害の数値:その他
世界各国を国別に比較したアカハラ被害の数値はない。
★世界中で約30%の人がアカハラ被害:2020年
2020年1月16日の「Science」スポンサー付き論文(Academic bullying: Desperate for data and solutions | Science | AAAS)によると以下の論文で、世界中で約30%の人がアカハラ被害を被っている、とある
- 有料記事なので白楽は未読:L. Keashly, in Special Topics and Particular Occupations, Professions and Sectors, P. D’Cruz, E. Noronha, L. Keashly, S. Tye-Williams (eds.), Handbooks of Workplace Bullying, Emotional Abuse and Harassment, vol. 4 (Springer, Singapore, 2019), pp. 1–77, https://doi.org/10.1007/978-981-10-5154-8_13-1.
★チェコでは13.6%が被害:2012年
出典:2012年11月15日の「Katerina Zabrodska(写真出典) & Petr Kveton」論文:有料記事なので白楽は要約のみ読み、全体は未読: Prevalence and Forms of Workplace Bullying Among University Employees | SpringerLink
チェコの大学生1,533人へのアカハラ被害を調査した。アカハラ定義(1つの否定的な行為を毎週受ける)に基づくと回答者の13.6%が、自己認識に基づくと回答者の7.9%がアカハラ被害を受けていた。この数値はスカンジナビアの諸大学での数値と同等だが、英米の大学よりもかなり低い。
★オーストラリアの救急医の3分の1以上がアカハラ被害:2018年
出典:2017年8月16日のソフィー・スコット(Sophie Scott)記者の「ABC」記事:More than one-third of emergency doctors face work bullying, harassment, survey reveals – ABC News (Australian Broadcasting Corporation)
2017年8月、オーストラリア救急医学大学(Australasian College for Emergency Medicine)がオーストラリアの救急医 2,100 人にアンケート調査を行なった(9頁の調査報告書の冒頭の画像を下に示す)。
その結果、救急医 の3分の1以上がアカハラ被害の経験があった、と回答した。
アカハラの内容は、口頭による虐待と個人攻撃が多かった。また、女性医師、研修生、外国人研修医がより多くのイジメの被害にあっていた。
● 《2》アカハラ被害事例:その他の国
★本ブログで記載
本ブログで記載した米国・英国・ドイツ以外のアカハラ事件は以下のとおりである。
- 「アカハラ」: ギャビン・スチュアート(Gavin Stuart)(カナダ) 2020年4月30日掲載
- 「アカハラ」:天文学:リチャード・ブーウェンズ(Rychard Bouwens)(オランダ) 2020年3月13日掲載
- 「アカハラ」:アラン・クーパー(Alan Cooper)(豪) 2020年2月27日掲載
- 「アカハラ」:天文学:マルセラ・カロロ(Marcella Carollo)(スイス) 2018年4月28日掲載・・・ドイツに加えたが、国はスイスなので。
★アカハラ相談サイトでの事例
アカハラ相談サイトに相談したアカハラ被害事例で、国は不明である。
指導教授(男性)による院生(女性)へのアカハラ例である。
出典:2018年7月18日:academic life – How to address in-group bullying without compromising PhD/career? – Academia Stack Exchange
「博士号/キャリアを損なうことなくグループ内のイジメに対処する方法は?」という相談
私は過去数年間、上司や研究グループの他のメンバーにイジメられてきました。
イジメは、グループ会議中の悪意に満ちた発言、研究グループから私を除外する行為、研究プロジェクトで私がしていた重要な作業を他の人に割り当てる、実現不可能な締め切りを設定した作業の要求、仲間の前で会議中に侮辱される、説明をさせてもらえない状況で私を非難する、ルール変更を土壇場まで私に教えてくれない、全体としてたくさんのダブル・スタンダードにさらされている、ということです。
また、研究プログラムから私を除外すると脅された。私の研究成果を私に言及せずに使用された。私の研究成果を私を著者から除外して発表した。
私はこれについて院生相談担当教員と他の教員に相談した。しかし、正式な苦情手続きを大学に出したくありません。というのは、指導教員がコクハラするからです。
指導教員は私のプロジェクトのすべてを他の誰かに再割り当てる。また、博士論文の作成に協力してくれず、私の博士号取得を妨害する。さらに、今後、私が研究界でキャリアを積むのを台無しにする可能性が高い(査読者として論文出版を妨害し、研究界に悪い噂を広める)。
簡単に言えば、私の博士号取得と研究界での将来のキャリアを犠牲にすることなく、この状況をきり抜ける方法を教えてください。
- この事件は国、大学、アカハラ年月が記載されておらず、不明である。
- この事件は指導教授も相談者も匿名で、実名は不明である。
- この事件では相談者は、大学にアカハラを申し立てていない。それで、大学は調査していない。
●7.【白楽の感想】
《1》データがない
英国がアカハラ問題に熱心に対応しているが、日本も米国もアカハラ被害のデータがほとんどない。
「3‐2‐1 アカハラの規則・言動例」で、英国のアカハラの規則を比較すると、英国が一番厳しく、法令で禁止している。研究助成財団もしっかり対応している。次が米国で、アカハラそのものではないが、禁止している。研究助成財団も対応しつつある。最もダメなのが日本である。
規則と同じで、アカハラのデータ・被害実態も、英国が一番よく調べていて、次が米国である。次いでドイツ、最もダメなのが日本である。
日本では小中高校のイジメが大きな問題となっているが、学術界のアカハラが重要だという認識がほとんどない。
問題を直視し、まずは、調査すべきです。
《2》白楽のアカハラ被害経験
アカハラ被害事例を書いていて、白楽自身もそういえば、アカハラ被害を受けたことを思い出した。
お茶の水女子大学・生物学科・助教授だった白楽は、同僚からのアカハラで、教授昇進を妨害された。このことを白楽が書くのは、客観性に欠ける面もあり、物的証拠がないので、実体を読者に伝えるのが難しい。以下は、「主観」的な記述と思いつつ読んでください。
数値で比べると、白楽は当時、生物学科の教授と助教授の中で、つまり、全教員の中で、パブメド(PubMed)で検索した論文数は一番多かった。ただ、生物学科は植物系教員が半数いる。学問領域は多様なので、医学系論文のデータベースであるパブメド(PubMed)論文の数だけで業績をウンヌンできない。ただ、外部研究費(科研費など)の獲得、育成した博士院生の数、学外講演数、なども多分、一番多かったと思う。
白楽の研究活動が生物学科の教員の中で突出していたので、生物学科の数人の教授が嫉妬し、意地悪(陰で悪口を言う)をしている印象を受けた。しかし、それが教授選に及ぶとはつゆにも思っていなかった。
しかし、教授選で落とされた。
白楽は不当だと当時の学科長に抗議した。理学部教授会でも、数学科の教授が異を唱えた(こういう発言はとても珍しい)。また後で、生活科学部・食品学科の2人の教授と個人的にあった時、「教授選考がオカシかったね。アナタが嫉妬されていたんだ」と言われた。
上のように自分の経験を書いてみて思うが、アカハラ被害状況を他人に伝えるのは難しい。加害者の発言を記録していないし、加害者が発言した時の表情の記載は難しい。委員会は部外秘だし、陰での悪口を言われているのは伝聞で、証拠はほとんどない。
本記事で他の人のアカハラ事例をいくつも書いたが、そこでの被害者たちが受けたアカハラの実態や心の傷を正確に伝えるのは難しいと、痛感した。
アナタも、ちなみに、自分のアカハラ被害を書いてみます? 難しいですよ。
《3》白楽のアカハラ加害?
アカハラ被害事例を書いていて、白楽自身もそういえば、アカハラ加害者になっていたかもしれない例がある、と今さな思い出した。
学会発表や論文発表で、学部生・院生の貢献度に比例して、著者在順を決めるが、学部生・院生当人の受け止め方と白楽の受け止め方にギャップが出てしまう。
ある論文で、自分が重要な貢献をしたのに、著者の2番目ではなく3番目になっていると不満を表明した院生がいた。アナタの見えないところで、2番目著者の方がアナタより貢献度は大きかったのだと説明しても、院生は納得しなかった。
また、研究室の論文セミナーでは、毎週、1人が論文を選んで解説するのだが、聞いている学部生・院生の全員に何らかの発言を求めた。質問でも感想でもいいから、聞いている側全員が発言する。そういう緊張感のある論文セミナーを運営した。だから、何も発言しない学部生・院生にはプレッシャーだったと思う。
この時、1人が質問すると、別の学部生・院生が付和雷同的に尻馬にのって、「私もそう思う」的な発言をする。これを禁止した。1人の質問者に対し1人の発表者が答える形にした。付和雷同が好きな人は面白くなかったかもしれない。
研究室の発表予行セミナーでは、学会発表や卒・修・博論発表の予行を行なった。この時も、聞いている学部生・院生の全員に、在籍年の少ない順に、発表に対する改善点を指摘するよう、何らかの発言を求めた。感想でもいいから発言を強制した。これも、学部生・院生にはプレッシャーだったと思う。
データ検討会では、毎週、1 対1で学部生・院生の研究の進展の報告を聞き、問題点の指摘、アドバイス、指示をした。これも、研究をほとんどしなかった学部生・院生にはプレッシャーだったと思う。その場合は、「ここ1週間は進展がありませんでした」というだけでも良いと伝えたが、学部生・院生当人の受け止め方と白楽の受け止め方にギャップはあっただろう。
他の人が書いているが、教員として「研究を深めるための深い質問、学生に良かれと思う改善点の指摘・アドバイス」などの“教育的指導”が、受ける側の学生はアカハラと受け止める可能性がある。
学生は、一度言われれば、次に改めてくる、というようなことは、マズない。学生と限らず、人間は一般的にそうだ。従って、何度も同じ“教育的指導”をする。あるいは、「もういいです。好きにしてください」となる。この両方ともアカハラである。難しいですね。
●8.【白楽の手紙】
「3‐2‐1 アカハラの規則・言動例」に書いたが、本記事でも該当するので、再掲する。
★文部科学省へ
文部科学省が日本のアカハラ調査をしているかもしれない。
念のため、文部科学省に「御質問」で問い合わせた。以下のように「御質問」は回答されるのが原則、と文部科学省が書いている。
「御質問」については、原則として入力いただいたメールアドレス宛に回答させていただきますが、回答に時間を要する場合があります。また、内容によっては回答できかねることがありますので御了承ください。(文部科学省に関する御意見・お問合せ窓口案内:文部科学省)
質問は以下の通り。本記事では2点目が該当の質問である。
約20日前に「御質問」したが、回答がなかった。それで、再度、10日前に「御質問」した。それでも回答がない。
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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、日本に飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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