ミンリャン・クオ、郭明良(Min-liang Kuo) 、チェンチ・チャン、張正琪(Cheng-chi Chang)、シーティン・チャ、查詩婷(Shih-ting Cha)(台湾)

2019年12月11日掲載 

ワンポイント:【長文注意】。シーティン・チャ(Shih-ting Cha)の記事(旧版)の改訂に伴いタイトルも変更した。2016-17年、国立台湾大学のポスドクだったシーティン・チャの「2016年のNat Cell Biol.」論文の画像がねつ造・改ざんと指摘された。シーティン・チャがネカト主犯だが、ボスのミンリャン・クオ教授・学部長(Min-liang Kuo、郭明良)、次いで、チェンチ・チャン教授(Cheng-chi Chang、張正琪)が関与と責任、さらに、他の5人(計8人)も関与したと実名報道された。また、ネカト無罪だがパンチー・ヤン学長(楊泮池)が共著者になった論文もあり台湾の大事件に発展した。シーティン・チャは若い女性、クオ教授は男性教授、そしてネイチャー論文だったことから小保方晴子事件と似ていた。また、チャン教授は「美女」教授と報道され、クオ教授の愛人説も飛び出した。国民の損害額(推定)は20億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文
7.白楽の感想
8.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

国立台湾大学(National Taiwan University)・生物化学研究所のミンリャン・クオ教授(Min-liang Kuo、郭明良)の研究室が組織ぐるみでねつ造・改ざんした事件。研究グループの一員でチェンチ・チャン教授(Cheng-chi Chang、張正琪)とポスドクのシーティン・チャ(Shih-ting Cha、查詩婷)はクオ教授の院生時代からの弟子である。

ミンリャン・クオ、郭明良(Min-liang Kuo、ORCID iD:?、写真出典)は、国立台湾大学(National Taiwan University)・生物化学研究所・教授、生命科学部・学部長で医師ではない。専門は生化学だった。

チェンチ・チャン(Cheng-chi Chang、張正琪、ORCID iD:?、写真出典)は、国立台湾大学(National Taiwan University)・歯科生物科学研究所の教授で医師ではない。大学院時代の指導教授はクオ教授だった。専門は毒性学。

citationsシーティン・チャ(Shih-ting Cha、查詩婷、写真出典)は、国立台湾大学(National Taiwan University (NTU))・クオ教授研究室のポスドクで、医師ではない。大学院時代の指導教授はクオ教授だった。専門は生化学。

シーティン・チャがネカト主犯だが、ボスのミンリャン・クオ教授・学部長(Min-liang Kuo、郭明良)、次いで、チェンチ・チャン教授(Cheng-chi Chang、張正琪)が関与または責任があったとされ、他に5人(計8人)が関与した。

また、クオ教授は、国立台湾大学のパンチー・ヤン学長(楊泮池、Pan-Chyr Yang)との共著論文があり、学長のネカトへの関与も疑われ、学内だけでなく台湾政府の政治抗争の要素が含まれる事件となった。

2016年9月、シーティン・チャ(Shih-ting Cha)が第1著者、チェンチ・チャン(Cheng-chi Chang)が第3著者、ミンリャン・クオ教授(Min-liang Kuo、郭明良)が最後著者の「2016年のNat Cell Biol.」論文が出版された。

2016年11月2日、出版から2か月後、「パブピア(PubPeer)」が「2016年のNat Cell Biol.」論文に、たくさんのネカト画像があると指摘した。

シーティン・チャは若い女性、クオ教授は男性教授、そしてネイチャー論文だったことから事件発覚の2年半前に日本で大騒動になった小保方晴子事件を想起させ、単純なネカト事件にもかかわらず、台湾の大事件に発展した。

また、クオ研究室が組織ぐるみのネカトという点は,加藤茂明・研究室(東京大学分子細胞生物学研究所)の事件と似ている。

結局、ネカト主犯でポスドクのシーティン・チャは辞職、ボスのミンリャン・クオ教授・学部長(Min-liang Kuo、郭明良)は解雇処分、チェンチ・チャン教授(Cheng-chi Chang、張正琪)も解雇処分された。

230639_medium国立台湾大学(National Taiwan University (NTU))正門。(陳柏州/攝影)。写真出典

  • 国:台湾
  • 分野:生化学
  • 最初の不正論文発表:2016年
  • 発覚年:2016年
  • 発覚時地位:国立台湾大学・教授とポスドク
  • ステップ1(発覚):第一次追及者(詳細不明)の「パブピア(PubPeer)」での指摘
  • ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、台湾の多数のメディア
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①国立台湾大学・第1次調査委員会。②国立台湾大学・第2次調査委員会。③教育省。④科学技術省
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:あり:https://www.ntu.edu.tw/highlights/2017/he20170225.pdf
  • 大学の透明性:実名報道で機関もウェブ公表(委員名が匿名)(〇)
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正関与者数:8人
  • 不正論文数:8論文が不正。2論文が撤回
  • 研究費:?
  • 結末:主要な3人は辞職または解雇

【国民の損害額】 国民の損害額:総額(推定)は10億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

★ミンリャン・クオ(Min-liang Kuo、郭明良)

主な出典:Kuominliang_CVnew.rtf

  • 生年月日:不明。仮に1962年1月1日生まれとする。1980年に大学に入学した時を18歳とした
  • 1980-1984年(18-22歳?):台湾の輔仁大学(ほじんだいがく、Catholic Fu-Jen University)で学士号取得:食品化学
  • 1984-1985年(22-23歳?):国立台湾大学(National Taiwan University)で修士号取得:生化学
  • 1985-1989年(23-27歳?):同大学で研究博士号(PhD)を取得:生化学
  • 1989-1990年(27-28歳?):台湾の中央研究院(Academia Sinica)・ポスドク
  • 1991年(29歳?):国立台湾大学(National Taiwan University)・医学部・講師
  • 1993年(31歳?):同大学・準教授
  • 1999年(37歳?):同大学・教授
  • 2006-2007年(44-45歳?):米国のテキサス州立大学エム・ディー・アンダーソンがんセンター(The University of Texas MD Anderson Cancer Center)・留学?
  • 2012年(50歳?):同大学・生命科学部・学部長
  • 2016年9月(54歳?):「2016年のNat Cell Biol.」論文を出版
  • 2016年11月(54歳?):「2016年のNat Cell Biol.」論文の画像不正が発覚する
  • 2017年(55歳?):国立台湾大学・教授を辞職

★チェンチ・チャン(Cheng-chi Chang、張正琪)

https://www.ettoday.net/news/20170303/876851.htm
  • 生年月日:不明。仮に1976年1月1日生まれとする。2017年03月03日年の記事に約41歳とあった
  • xxxx年(xx歳):台湾の陽明大学(National Yang Ming University)で学士号取得:理学療法学士
  • xxxx年(xx歳):台湾の陽明大学(National Yang Ming University)・解剖学研究所で修士号取得
  • xxxx年(xx歳):台湾の国立台湾大学・医学部・毒性理学研究所(Graduate Institute of Toxicology)で研究博士号(PhD)を取得:指導教授はクオ教授
  • xxxx年(xx歳):???
  • 20xx年(xx歳):国立台湾大学(National Taiwan University)・歯科生物科学研究所・教授
  • 2009年(34歳):世界理学療法士・大学競技会の中毒毒性学会・事務局長
  • 2014年(39歳):台湾の優秀な若者トップ10人である「中华民国十大杰出青年」に選出された
  • 2016年9月(41歳):「2016年のNat Cell Biol.」論文を出版
  • 2016年11月(41歳):「2016年のNat Cell Biol.」論文の画像不正が発覚する
  • 2017年(42歳):国立台湾大学・教授を解雇

★シーティン・チャ(Shih-ting Cha、查詩婷)

photo
出典:https://plus.google.com/117631982948770238164/videos?pid=5877653948311085634&oid=117631982948770238164
  • 生年月日:不明。仮に1983年1月1日生まれとする。2007年の最初の論文発表時を24歳と仮定した
  • 20xx年(xx歳):台湾の国立台湾大学(National Taiwan University (NTU))を卒業
  • 20xx年(xx歳):台湾の国立台湾大学・生命科学部(College of Life Science)・生物化学研究所(Institute of Biochemical Sciences)で研究博士号(PhD)を取得:指導教授はクオ教授
  • 20xx年(xx歳):台湾の国立台湾大学・生命科学部・生物化学研究所・ポスドク:ボスはクオ教授
  • 2016年9月(33歳?):「2016年のNat Cell Biol.」論文を出版
  • 2016年11月(33歳?):「2016年のNat Cell Biol.」論文の画像不正が発覚する
  • 2016年11月(33歳?):国立台湾大学・ポスドクを辞職

●3.【動画】

【動画1】ニュース動画:「国立台湾大学生化学研究所が不正な臨床データ画像で告発された(台大生化所研究 被控臨床數據圖像造假) – YouTube」(中国語)1分46秒。
公視新聞網 が2016/11/11 に公開

●4.【日本語の解説】

★2016年11月21日:中央通訊社:台湾大教授に不正論文疑惑…最高学府に衝撃 出典 → ココ、(保存版) 

台湾大学の楊ハン池学長(ハン=さんずいに半)

(台北 21日 中央社)台湾の最高学府、台湾大学の教授が執筆した論文に不正疑惑が持ち上がった。同氏の過去の論文には一部で共同研究者として同大の楊ハン池学長の名も連ねており、これまでにも不正がなかったどうか調査が進められている。

不正の疑いがあるのは、生物化学研究所(大学院)の郭明良教授。英科学誌「ネイチャーセルバイオロジー」に投稿したがん関連研究の論文で、捏造の可能性があるとされている。

郭教授によると、問題の論文については11月6日に撤回したという。同11日には同大に辞意を表明し、調査には協力する考えを示している。

最高学府の名声を損なう事態に、教育部(教育省)や立法院(国会)も動きを注視。同大では外部の専門家を招いた特別委員会を設置して同教授の論文について詳しい調査を行う方針を決めた。

楊学長は21日、共同執筆者として加わった過去の論文4本について「捏造に関与していない」との立場を示した一方で、調査には協力するとし、仮に問題があれば責任を負うとコメントしている。

(陳至中/編集:齊藤啓介)

★2016年11月21日:エキサイトニュース:台湾大教授に不正論文疑惑…最高学府に衝撃

出典 → ココ、(保存版

上記と同じ記事が掲載された。

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★研究室ぐるみ

ミンリャン・クオ教授(Min-liang Kuo、郭明良)の研究室が組織ぐるみで行なったねつ造・改ざん事件である。

ポスドクのシーティン・チャがネカト主犯だが、ボスのミンリャン・クオ教授・学部長(Min-liang Kuo、郭明良)、次いで、チェンチ・チャン教授(Cheng-chi Chang、張正琪)が関与または責任があったとされ、他に5人(計8人)が関与した。なお、チェンチ・チャン教授(Cheng-chi Chang、張正琪)とポスドクのシーティン・チャ(Shih-ting Cha、查詩婷)はクオ教授の院生時代からの弟子である。

クオ研究室が組織ぐるみのネカトという点は,加藤茂明・研究室(東京大学分子細胞生物学研究所)の事件と似ている。

クオ教授の4報の論文に国立台湾大学のパンチー・ヤン学長(楊泮池、Pan-Chyr Yang)が共著者になっていて、ヤン学長のネカトへの関与も疑われた。学長のネカト疑惑ということで、学内だけでなく台湾政府の政治抗争の要素が含まれる事件となった。

単純なネカト事件なのに、チェンチ・チャン教授はメディアで「美女」教授と報道され、スキャンダル度が増し、世間の注目を集めた。一部の報道では、すらりと露出した長い脚の写真(出典、元写真はチェンチ・チャン教授のFacebookから)も記事にアップされた。また、クオ教授の愛人とも指摘された。

チェンチ・チャン教授は「美女」教授だが、シーティン・チャも若いカワイイ女性で、クオ教授は男性教授、そしてネイチャー論文だったことから事件発覚の2年半前に日本で大騒動になった小保方晴子事件を想起させた。このことも、単純なネカト事件にもかかわらず、台湾の大事件に発展した要因の1つだろう。

新聞の一面トップに載る大事件となった(出典)。

結局、ネカト主犯でポスドクのシーティン・チャは辞職、ボスのミンリャン・クオ教授・学部長(Min-liang Kuo、郭明良)は解雇処分、チェンチ・チャン教授(Cheng-chi Chang、張正琪)も解雇処分された。

★出版2か月後パブピアが指摘

2016年9月付け(実際は8月15日)、シーティン・チャ(Shih-ting Cha)が第1著者、チェンチ・チャン(Cheng-chi Chang)が第3著者、ミンリャン・クオ教授(Min-liang Kuo、郭明良)が最後著者の「2016年のNat Cell Biol.」論文が出版された。

2016年11月2日、出版から2か月後、「パブピア(PubPeer)」が「2016年のNat Cell Biol.」論文にたくさんのネカト画像があると指摘した。これは「間違え」たレベルではない。

p14249223798862016年11月15日、国立台湾大学のパンチー・ヤン(楊泮池、Pan-Chyr Yang)・学長(写真出典)が陳謝した。国立台湾大学はクオ教授と連絡が取れないと述べている。
→ 【道歉片】郭明良論文?造假 台大校長楊泮池道歉 | 即時新聞 | 20161115 | 蘋果日報保存版

そして、なんと、以下に示す「2011年のJ Clin Invest.」論文では、パンチー・ヤン学長(楊泮池、Pan-Chyr Yang)がシーティン・チャ(Shih-ting Cha)とクオ教授の出版した論文の共著者なのである。

2016年12月20日、クオ教授はネカトが指摘されて以来、1か月以上身を隠していたが、民進黨議員のイーイン・チウ(Yi-ying Chiu、邱議瑩、邱议莹、写真出典)に付き添われて記者会見を開き、「ネカト、秘密、論文の売買はありません」と述べたが、学術界を困惑させ、社会的資源を浪費したことを国民に謝罪した。

【動画2】ニュース動画:「ねつ造論文の大批判! 郭明良は「身を隠していた」ことを謝罪した(假論文風波! 郭明良”駁神隱”鞠躬歉) – YouTube」(中国語)1分38秒。
年代新聞CH50が2016/12/20 に公開

問題視された「2016年のNat Cell Biol.」論文は、第1著者のシーティン・チャ(Shih-ting Cha)が画像を繰り返し使用したことが原因だと説明した。

「パブピア(PubPeer)」が2016年11月2日に最初に指摘する前の2 016年1 0月19日、シーティン・チャ(Shih-ting Cha)は、画像の間違いを見つけ、学術誌「Nat Cell Biol.」に撤回を伝えたことも付け加えた。論文は実際に2016年12月23日付けで撤回されている。

なお、2016年11月11日、ミンリャン・クオ教授(Min-liang Kuo、郭明良)は、国立台湾大学を辞職していた。
→ ?論文造假 台大發聲明 郭明良教授辭職 – 生活 – 自由時報電子報保存版

2016年12月21日の記事:https://www.chinatimes.com/newspapers/20161221000450-260106?chdtv

なお、2016年12月20日の記者会見で、クオ教授は「論文の売買はありません」とネカトと関係ないことを弁明している。これは、ネカト事件発覚に伴ってクオ教授が怪しげなカネを受け取っていることが露見した。その釈明である。

国立台湾大学病院の産婦人科の主治医・メンゲル・ヤン(严孟禄 )が、過去12年間に700万台湾ドル(約2515万円)近くのお金をクオ教授に送金していたと、新聞が報道したのだ。新聞は、証拠の小切手(以下。出典も同紙)も掲載した。なお、話が複雑になるので、金の話はここで止める。 → 2016年12月16日の記事:台湾大学教授涉嫌论文造假:挂名12年收150万-教育频道-手机搜狐

★シーティン・チャ(Shih-ting Cha)の対応

2016年11月2日、「パブピア(PubPeer)」が「2016年のNat Cell Biol.」論文の画像のネカトを最初に指摘した。

再度述べるが、「パブピア(PubPeer)」が指摘する前の 2016年10月19日、シーティン・チャ(Shih-ting Cha)は、「2016年のNat Cell Biol.」論文に画像の間違いを見つけ、学術誌「Nat Cell Biol.」に伝えていた。

2016年11月4日、「パブピア(PubPeer)」の指摘の2日後、シーティン・チャはパブピアで次のように弁明した。「生データを注意深く検討し、オリジナル・ファイルを見つけました。たくさんの画像があったために、私たちの不注意で、標識を間違えました。画像の標識を間違えましたが、論文の結論には影響しません。今回の間違いに陳謝します」と。

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2016年11月6日、シーティン・チャは、「2016年のNat Cell Biol.」論文の撤回の手紙を学術誌「Nat Cell Biol.」に送付した。論文は実際に2016年12月23日付けで撤回されている。

★調査と結果:国立台湾大学

国立台湾大学は調査委員会を設け調査を開始した。

国立台湾大学は生命科学部と医学部の委員からなる調査委員会を設置した。学外からの有識者からなる第2次調査委員会も設置した。第2次調査委員会の調査結果(2017年2月23日付け)を2017年2月25日に発表した。

[白楽注:第1次調査委員会の報告書が見つからない。それで、主要なネカト者8人の違反行為の具体的な内容がハッキリしない。どこかに公表されていると思うが、わかりませんでした。スミマセン]

国立台湾大学は、調査した17論文のうち、多数のネカト写真を掲載した2つの論文が撤回されたことに加え、別の6つの論文が学術倫理に違反している疑いがあると指摘した。

2006年に最初のネカトが発覚していたのに、クオ教授は無視し、院生・ポスドクを適切に指導せず、その後、多くのネカト結果を発表させてきた。研究室ぐるみのネカトで、最大で最終的な責任はクオ教授にあると、国立台湾大学は結論した。

そして、「2008年のJ Biol Chem」論文と「2016年のNat Cell Biol.」論文を含む6論文にネカトがあったとし、ミンリャン・クオ教授(Min-liang Kuo、郭明良)とチェンチ・チャン教授(Cheng-chi Chang、張正琪)を解雇した。

「2008年のJ Biol Chem」論文が2016年12月、「2016年のNat Cell Biol.」論文が2016年12月に撤回されている。それ以外の「学術倫理に違反している疑いがある別の6つの論文」はどの論文を指しているか具体的記述がない。

「パブピア(PubPeer)」では、ミンリャン・クオ(Min-liang Kuo)の25論文にコメントが、チェンチ・チャン(Cheng-chi Chang)の14論文にコメントが、シーティン・チャ(Shih-ting Cha)の4論文にコメントがあった。別の6つの論文はここに含まれていると思うが、白楽は、特定できませんでした。

なお、初期の調査では名前が挙がらなかったチェンチ・チャン教授(Cheng-chi Chang、張正琪)は、「2008年のJ Biol Chem」論文を含め4論文で画像を再使用し、不適切に加工したと、国立台湾大学は結論した。 チェンチ・チャン教授は、解雇され、教授資格を失い、5年間大学教員に応募すること、5年間研究助成金に申請することを禁じらた。

なお、チェンチ・チャンは台湾の優秀な若者トップ10人である「中华民国十大杰出青年」に2014年に選出された有名人である。 → 第52屆十大傑出青年 名單揭曉 – 生活 – 自由時報電子報

その上、「美女」教授と、メディアがセンセーショナルに報道した。

【動画3】ニュース動画:「美女教授・張正旗が解雇された(中天新聞 美女教授張正琪遭解聘 台大同儕不捨) – YouTube」(中国語)1分47秒。
中天新聞CH52が2017/02/26 に公開

ここで、国立台湾大学の調査結果をまとめると以下のようだ。

ミンリャン・クオ(Min-liang Kuo、郭明良)、チェンチ・チャン(Cheng-chi Chang、張正琪)、シーティン・チャ(Shih-ting Cha、查詩婷)、林明燦、谭庆鼎、郭亦炘、苏振良、陈百昇の8人に研究公正違反があったとした。また、パンチー・ヤン学長(楊泮池、Pan-Chyr Yang)には研究公正違反がなかったとした(次項に記載)。

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出典:https://www.ptt.cc/bbs/Gossiping/M.1478838154.A.CD1.html

★ヤン学長の疑惑の調査

2017年2月25日、国立台湾大学(National Taiwan University)は第2次調査委員会のネカト調査を終え19ページの報告書(2017年2月23日付け)を発表した。第2次調査委員会はパンチー・ヤン学長(楊泮池、Pan-Chyr Yang)のネカト関与、そして辞職勧告を検討する委員会だった。第2次調査委員会は6人の委員からなり、その性質上、全員、国立台湾大学以外の有識者である。委員名は公表されなかった。 → 2017年2月26日の「Taipei Times」記事:NTU to fire two professors accused of academic fraud – Taipei Times

以下の写真で示すように、国立台湾大学・副学長のテイウェイ・クオ(Tei-wei Kuo、郭大維)(写真出典上記、Photo: Hsiao Yu-hsin, Taipei Times)が調査結果を発表した。[白楽注:本旨とズレる。どうでもいいんですけど、どうして取り巻き記者は若い女性記者ばかりなの? しかも、左の子のスカート、短すぎない? コート着ている寒い日なのに]

調査報告書(中国語版)は21頁 → https://www.ntu.edu.tw/highlights/2017/he20170226chv.pdf

23ページの英語版も発表されていた。最初のページの導入部分を以下に示す(全文 → https://www.ntu.edu.tw/highlights/2017/he20170225.pdf

多数の誤った写真を含む2つの論文が撤回されたことに加えて、別の6つの論文が学術倫理に違反している疑いがあると指摘した。

以下の2論文は、画像の大量複製使用があり、撤回が望ましい。

  1. The VEGF-C/Flt-4 axis promotes invasion and metastasis of cancer cells
    Cancer Cell, 2006
    Jen-Liang Su, Pan-Chyr Yang, Jin-Yuan Shih, Ching-Yao Yang, Lin-Hung Wei, Chang-Yao Hsieh, Chia-Hung Chou, Yung-Ming Jeng, Ming-Yang Wang, King-Jen Chang, Mien-Chie Hung, Min-Liang Kuo*, [ID 06-02]
    パブピア指摘:https://pubpeer.com/publications/FA2209426FC5F07DAFA90A5B726FC7
  2. Knockdown of Contactin-1 Expression Suppresses Invasion and Metastasis of Lung Adenocarcinoma
    Cancer Research 2006
    Jen-Liang Su, Ching-Yao Yang, Jin-Yuan Shih, Lin-Hung Wei, Chang-Yao Hsieh, Yung-Ming Jeng, Ming-Yang Wang, Pan-Chyr Yang and Min-Liang Kuo*, [ID 06-01]
    パブピア指摘:https://pubpeer.com/publications/022D597A8C72CE8661D19B2FE17468

以下の2論文は、訂正が望ましい。

  1. Effect of connective tissue growth factor on hypoxia-inducible factor 1alpha degradation and tumor angiogenesis 
    J. Natl. Cancer Inst., 2006
    Cheng-Chi Chang, MingTsai Lin, Been-Ren Lin, Yung-Ming Jeng, Szu-Ta Chen, Chia-Yu Chu, Robert J Chen, KingJen Chang, Pan-Chyr Yang, Min-Liang Kuo
    パブピア指摘D 06-03] https://pubpeer.com/publications/16849681
  2. CCN2 inhibits lung cancer metastasis through promoting DAPK-dependent anoikis and inducing EGFR degradation
    Cell Death and Differentiation (2013) 20, 443–455
    C-C Chang, M-H Yang, B-R Lin, S-T Chen, S-H Pan, M Hsiao, T-C Lai, S-K Lin, Y-M Jeng, C-Y Chu, R-H Chen, P-C Yang, Y Eugene Chin and M-L Kuo [ID 13-01]

国立台湾大学のパンチー・ヤン学長(楊泮池、Pan-Chyr Yang)は、4つの問題のある論文の共著者になっていたが、研究の方向性に関するアドバイスと彼の臨床上の洞察を提供しただけである。調査委員会の委員の投票結果は「6対0」で、ヤン学長はデータのねつ造・改ざんには関与していない、また、ネカトの責任はないと結論した。

国立台湾大学のテイウェイ・クオ副学長は、調査委員会の結論に従って、ヤン学長が「辞任する理由はない」と述べた。

2017年3月19日(55歳?)、しかし、ネカト者の論文共著者だったので、6月の任期終了で学長選に出馬せず、辞任すると、ヤン学長は発表した。
 → 2017年2月26日の「Taipei Times」記事:NTU president to resign amid scandal – Taipei Times

★調査と結果:文部科学省と科学技術省

文部科学省と科学技術省は、国立台湾大学とは独立にの調査した。ということになっているが、国立台湾大学の調査結果に基づき、官僚が判断したのだと思う。

文部科学省と科学技術省は、意見交換を行ない、調査の範囲、事実の決定および関連する疑問を完全に議論するために合同会議を開催した。調査結果は2017年3月30日に発表した。

文部科学省の処分 → 2017年3月30日、文部科学省の記事:教育部公布國立臺灣大學郭明良團隊學術倫理案審議結果

国立台湾大学の8人の研究公正違反を追認した。さらに、重要な著者であり研究管理者だったミンリャン・クオ教授(Min-liang Kuo、郭明良)にはネカトの監督責任があるとした。パンチー・ヤン学長(楊泮池、Pan-Chyr Yang)は不注意という責任があるとした。

処分として、1997年にクオ教授に授与した第52回学術賞を取り消し、賞金 60万台湾ドル(約216万円)の返還、国立台湾大学に研究助成金 5,400万台湾ドル(約1億9千万円)を2017年度に返還するようにと決定した。

科学技術省の処分 → 2017年3月30日、科学技術省の記事:科技部新聞稿公布臺大學術倫理案審議結果

11論文が研究公正違反に相当した。これらの11論文で8人の研究者が科学技術研究費の申請をしていた。8人はミンリャン・クオ教授(Min-liang Kuo、郭明良)、ミンツァイン・リン(Ming-Tsain Lin、林明燦)、チェンチ・チャン(Cheng-chi Chang、張正琪)、Su Zhenliang、Tan Qingding、Lin Benren、Yang Qingyao、およびYan Menglu(ラテン文字のままでスミマセン)であり、それぞれ関与の程度に応じて研究費申請の一時停止または警告、支給した研究費の回収を命じた。

8人にシーティン・チャ(Shih-ting Cha、查詩婷)は入っていませんね。ポスドクだから研究費申請していなかったのでしょう。

★処分のまとめ:主要な3人と他の5人(計8人)

主要な3人だけを述べてきたが、ここで他の5人を含めた写真(出典、シーティン・チャは入っていない)と表(パンチー・ヤン学長は無罪なので入っていない)を以下に示す。 → 出典:2017年2月25日の記事:論文涉造假 台大解聘郭明良 張正琪|蘋果新聞網|蘋果日報

上記の表に示されているが、主要な3人+ミンツァイン・リン(Ming-Tsain Lin、林明燦)の処分は以下のようだ。

  • ミンリャン・クオ、郭明良(Min-liang Kuo)は、国立台湾大学・生物化学研究所・教授。 ネカトの関与は8論文
    意図的ネカト者
    国立台湾大学は解雇
    教育省は学術賞資格を取り消し、RMB 600,000の返還
    科学技術省は10年間の締め出し処分と、研究費とボーナス154万元の返還
  • チェンチ・チャン(Cheng-chi Chang、張正琪)は、国立台湾大学・生物化学研究所の教授。大学院時代の指導教授はクオ教授。
    ネカトの関与は第1著者として3論文、第2著者として1論文、第3著者として1論文
    研究公正の厳重違反者。
    国立台湾大学:教授資格を取り消し、5年以内に教師資格の申請を受け入れず、5年以内に研究プロジェクト補助金を申請せず、
    科学技術省を解散します:8年間中断し、760,000のプロジェクト研究ホスティング料金を回収します
  • citationsシーティン・チャ(Shih-ting Cha、查詩婷)はポスドク。ボスはクオ教授。大学院時代の指導教授はクオ教授。
    ネカトの関与は2論文
    自主的に辞職
    博士論文のネカト調査が必要
  • ミンツァイン・リン(Ming-Tsain Lin、林明燦、写真出典)は、国立台湾大学・教授で病院副院長。日本の東京大学で医学博士号取得
    ネカトの関与は4論文
    研究公正の違反者。
    国立台湾大学:5年間は研究指導不可
    科学技術省:2年間研究費申請不可
  • 他の4人(蘇振良ら)は省略

★裁判:チェンチ・チャン

チェンチ・チャン(Cheng-chi Chang、張正琪)は解雇が不当だと裁判所に訴えた。

台湾大学の処罰に関して、チェンチ・チャンは「2013年のCell Death Differ」論文は教授昇格と関係がない。また、「2008年のJBC」論文は第3著者で、ネカト実行者でもないし、責任者でもないと主張し、行政訴訟が行なわれた。

2019年6月27日、台北高等行政裁判所はしかし、国立台湾大学の主張を認め、チェンチ・チャンの訴えを棄却した。
 → 2019年6月27日:美女教授張正琪涉論文造假 台大降等解聘無不當 – 社會 – 中時

また、彼女は、2016年11月以来、インターネットで 138,000件以上という膨大な数の虚偽の申し立てと誹謗中傷にさらされ、彼女の私生活についての噂が広まった、と2017年6月28日の新聞記事でネチズンを起訴すると述べている。

実際にネチズンを起訴したかどうか、白楽は把握できていない。

【ねつ造・改ざんの具体例】

★パブピアの指摘

「2016年のNat Cell Biol.」論文には、画像の重複使用がたくさんある。マウス、電気泳動バンド、組織像と操作した画像の種類が多く、「間違え」たレベルではない。

出典 → PubPeer – G9a/RelB regulates self-renewal and function of colon-cancer-initiating cells by silencing Let-7b and activating the K-RAS/?-catenin pathway

以下の図3gと図5fは、赤枠で囲ったマウスの画像が全く同じ。重複使用、つまり、ねつ造である。
0ux3q5g

以下の図5aは、赤枠で囲った17、72、95の中央の黄矢印でしめした3つの電気泳動バンドが、切り貼りである。つまり、ねつ造である。6fvrd5m

以下の図8fは、黄枠で囲った組織像が、全く同じ。重複使用、つまり、ねつ造である。
ryjlqxi

以下の図7fのバンドは「Cell Death Differ.20(3):443-55(2013)」論文の図3 Cのバンドを再使用しラベルを変えている。重複使用、つまり、ねつ造である。hcqkfei

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

【ミンリャン・クオ(Min-liang Kuo、郭明良)】

★パブメド(PubMed)

2019年12月10日現在、パブメド(PubMed)で、ミンリャン・クオ(Min-liang Kuo)の論文を「Min-liang Kuo [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2019年の18年間の127論文がヒットした。

「Kuo ML[Author]」で検索すると、1988~2019年の32年間の362論文がヒットした。

2019年12月10日現在、「Retracted Publication」のフィルターをかけ、パブメドの論文撤回リストを検索すると、3論文が撤回されていた。「2006年のCancer Res」論文が2019年7月、「2008年のJ Biol Chem」論文が2016年12月、「2016年のNat Cell Biol.」論文が2016年12月に撤回されていた。

  1. Cha ST, Tan CT, Chang CC, Chu CY, Lee WJ, Lin BZ, Lin MT, Kuo ML. G9a/RelB regulates self-renewal and function of colon-cancer-initiating cells by silencing Let-7b and activating the K-RAS/β-catenin pathway. Nat Cell Biol. 2016 Sep;18(9):993-1005. doi: 10.1038/ncb3395. Epub 2016 Aug 15. Retraction in: Nat Cell Biol. 2016 Dec 23;19(1):76. PMID: 27525719.
  2. Lin MT, Kuo IH, Chang CC, Chu CY, Chen HY, Lin BR, Sureshbabu M, Shih HJ, Kuo ML. Involvement of hypoxia-inducing factor-1alpha-dependent plasminogen activator inhibitor-1 up-regulation in Cyr61/CCN1-induced gastric cancer cell invasion. J Biol Chem. 2008 Jun 6;283(23):15807-15. doi: 10.1074/jbc.M708933200. Epub 2008 Apr 1. Retraction in: J Biol Chem. 2016 Dec 30;291(53):27433. PMID: 18381294; PMCID: PMC3259638.
  3. Su JL, Yang CY, Shih JY, Wei LH, Hsieh CY, Jeng YM, Wang MY, Yang PC, Kuo ML. Knockdown of contactin-1 expression suppresses invasion and metastasis of lung adenocarcinoma. Cancer Res. 2006 Mar 1;66(5):2553-61. doi: 10.1158/0008-5472.CAN-05-2645. Retraction in: Cancer Res. 2019 Jul 15;79(14):3793. PMID: 16510572.

★撤回論文データベース

2019年12月10日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回論文データベースでミンリャン・クオ(Min-liang Kuo)を「Kuo, Min Liang」で検索すると、パブメドの撤回論文と同じ3論文がヒットし、3論文が撤回されていた。Retraction Watch Databaseの上右「Nature of Notice」の右にチェックを入れ、「Retraction」にすると、撤回論文(数)が表示される。

★パブピア(PubPeer)

2019年12月10日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ミンリャン・クオ(Min-liang Kuo)の論文のコメントを「”Min-liang Kuo”」で検索すると25論文にコメントがあった。

【チェンチ・チャン(Cheng-chi Chang、張正琪)】

★パブメド(PubMed)

2019年12月10日現在、パブメド(PubMed)で、チェンチ・チャン(Cheng-chi Chang)の論文を「Cheng-chi Chang [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2004~2017年の14年間の59論文がヒットした。

59論文中の39論文がミンリャン・クオ教授(Min-liang Kuo、郭明良)と共著である。

2019年12月10日現在、「Retracted Publication」のフィルターをかけ、パブメドの論文撤回リストを検索すると、2論文が撤回されていた。本記事で問題視した 「2016年のNat Cell Biol.」論文が2016年12月に、「2008年のJ Biol Chem」論文が2016年12月に撤回されていた。

★撤回論文データベース

2019年12月10日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回論文データベースでチェンチ・チャン(Cheng-chi Chang)を「Chang, Cheng-Chi」で検索すると、パブメドの撤回論文と同じ2論文がヒットし、2論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer) 2019年12月10日現在、「パブピア(PubPeer)」では、チェンチ・チャン(Cheng-chi Chang)の論文のコメントを「”Cheng-chi Chang”」で検索すると14論文にコメントがあった。

【シーティン・チャ(Shih-ting Cha)】

★パブメド(PubMed)

2019年12月10日現在、パブメド(PubMed)で、シーティン・チャ(Shih-ting Cha)の論文を「Shih-ting Cha [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2007~2016年の10年間の12論文がヒットした。

12論文中の11論文がミンリャン・クオ教授(Min-liang Kuo、郭明良)と共著である。

2019年12月10日現在、「Retracted Publication」のフィルターをかけ、パブメドの論文撤回リストを検索すると、1論文が撤回されていた。本記事で問題視した 「2016年のNat Cell Biol.」論文が2016年12月に撤回されていた。

★撤回論文データベース

2019年12月10日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回論文データベースでシーティン・チャ(Shih-ting Cha)を「Cha, Shih-Ting」で検索すると、パブメドの撤回論文と同じ1論文がヒットし、1論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2019年12月10日現在、「パブピア(PubPeer)」では、シーティン・チャ(Shih-ting Cha)の論文のコメントを「”Shih-ting Cha”」で検索すると4論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》台湾の小保方晴子事件

12039344_1093205737357613_8599177154809394286_nチェンチ・チャン教授は「美女」教授、シーティン・チャは若いカワイイ女性で、クオ教授は男性教授、そしてネイチャー論文だったことから本事件の2年半前に日本で大騒動になった小保方晴子事件を想起させた。事実、台湾の新聞も「台湾の小保方晴子事件」と書いている。その事もあってか、新聞やテレビでたくさん取り上げられている。→ 台大生化所論文圖片不當引用,引發學術圈關注 – PanSci 泛科學(保存版)

本事件で解説したが、後に解雇されたチェンチ・チャン教授(Cheng-chi Chang、張正琪)は、台湾では「美女」教授と報道されていて、クオ教授の愛人という報道もある。

また、台湾大学のパンチー・ヤン学長(楊泮池、Pan-Chyr Yang)がシーティン・チャ(Shih-ting Cha)とクオ教授の出版した論文の共著者になっていた。

このような舞台設定のため、ネカト事件としては単純なネカト行為・調査・処分だったにもかかわらず、台湾の大事件に発展した。

シーティン・チャは2007年に最初の論文を書いた。この時、24歳と仮定したが、院生だったろう。その最初の論文は、当然ながら指導教授のミンリャン・クオ教授(Min-liang Kuo、郭明良) が共著者である。そして、10年後の「2016年のNat Cell Biol.」論文でもクオ教授は共著者になっている。

クオ教授の立場に立てば、卒論学生として入ってきた可愛いシーティン・チャが、気に入り、12~13年間も抱え込んで、甘やかした。甘やかされたシーティン・チャは、「2016年のNat Cell Biol.」論文で研究ネカトに走ったと思われる。

シーティン・チャは、2007~2016年の10年間に11論文を出版している。11論文中の10論文がクオ教授と共著である。「2016年のNat Cell Biol.」論文を除く他の9論文に研究ネカトはないのだろうか? 2016年になって突然、研究ネカトをしたとは思えない。

この事件で、シーティン・チャは退職し、指導教授のミンリャン・クオ教授も国立台湾大学を退職した。

《2》不明点

シーティン・チャは2007~2016年の9論文の最初からネカトをしていたのなら、納得できるが、2016年になって突然、ネカトをしたとすれば、状況や動機は何だろう?

台湾で最も著名な国立台湾大学を卒業し、研究博士号(PhD)も取得し、論文もそれなりに発表している。順風満帆の研究キャリアと思える若い女性(シーティン・チャ)が、簡単に発覚するネカトをした。なぜ?

この事件では、主犯はシーティン・チャなのに、メディアの攻撃対象はクオ教授の方が大きい。そして、チェンチ・チャン「美女」教授も大きく攻撃されている。これはどういうことだろう? パンチー・ヤン学長に焦点が当たるのは理解できるが、なんかヘンである。

主犯はシーティン・チャではなく、クオ教授なのだろうか?

わかりません。

また、本当に、チェンチ・チャン「美女」教授はクオ教授の愛人なのか? 例え、そうだとしても、それがネカトとどんな関係があるのか?

クオ教授はシーティン・チャと不倫関係にあったのか?  例え、そうだとしても、それがネカトとどんな関係があるのか?

わかりません。

そして、クオ教授はネカト発覚後どうして1か月も雲隠れしていたのだろう? 

シーティン・チャはパブピアで、私たち(We)は画像を間違えたと述べている。この場合の私たち(We)は、「私」と白楽は受け取った。つまり、シーティン・チャがネカトした、と白楽は受け取った。しかし、それなら、クオ教授が雲隠れする必要は全くない。日本の感覚だと管理責任はあるにしても、欧米の感覚だと管理責任という概念自体がナンセンスである。ネカト行為はネカト者の責任であって、指導教授の責任は問われない。

それなのに雲隠れしたのだ。雲隠れした本当の理由は何だったのだろうか? 本当はクオ教授がネカトを指示し、シーティン・チャは指示に従っただけなのだろうか? また、雲隠れしている間、どんな隠蔽工作をしたのだろう?

わかりません。 

《3》博士号

この事件でのネカト者は、本記事で主要に記載した3人の他に5人(6人?)、計8人(9人?)、が挙げられている。

シーティン・チャを含めた3人は、事件の少し前に博士号を取得している。

その博士論文はネカト論文ではないのか?

確か、3人の博士論文を調査をするとメディアは報道していたが、その後、博士号を剥奪したという報道を見ていない。どうなっているのだろう?

わかりません。

事件の約28年前のクオ教授の博士論文、約10年前のチェンチ・チャン「美女」教授の博士論文、は大丈夫なのだろうか?

わかりません。

●8.【主要情報源】

① 2016年11月10日のKuan-lin Liu記者の「Asia News Network」記事:Manufactured data found in NTU academic article | Asia News Network保存版
② 2016年11月12日のSean Lin記者の「Taipei Times」記事:NTU paper pulled from journal after claims of forgery – Taipei Times保存版
③ 2016年11月14日のSean Lin記者の「台灣大紀元」記事:教授論文?造假 台大:有疑問論文一併? | 台大 | 論文 | 造假 | 台灣大紀元保存版
④ 2016年11月11日のKuan-lin Liu記者の「China Post」記事:NTU professor, team under investigation for fabricating data in article – The China Post保存版
⑤ 2016年11月16日のアリソン・マクック(Alison McCook)の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Nature Cell Bio paper may be headed for retraction – Retraction Watch at Retraction Watch
⑥ ウィキペディア中国語版:台大医学论文造假案 – 维基百科,自由的百科全书
⑦ 旧版:2016年11月17日

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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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