2019年10月15日掲載
ワンポイント:バース・スパ大学(Bath Spa University)・上級講師のルッジェロの2014年-2017年の3論文が盗用で2017年に訂正され、「2017年7月のComputers & Education」論文が盗用で2018年に撤回された。2017年5月(35歳?)、盗用が公表される1年半前、既に、バース・スパ大学・上級講師を辞職していた。国民の損害額(推定)は3億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】
デイナ・ルッジェロ(Dana Ruggiero、ORCID iD:、写真出典)は、米国のパデュー大学で博士号を取得し、英国のバース・スパ大学(Bath Spa University)・上級講師になった。専門は教育学(コンピューターゲーム)だった。
ネカト発覚の経緯は不明だが、盗用事件である。
2018年12月(36歳?)、ルッジェロの「2017年7月のComputers & Education」論文が盗用で撤回された。
2017年5月(35歳?)、撤回が告知される1年半前、既に、ルッジェロはバース・スパ大学・上級講師を辞職していた。
結局、2014年-2017年の3論文が盗用で2017年に訂正され、本記事で問題視した「2017年7月のComputers & Education」論文が盗用で2018年に撤回された。各論文の盗用率は不明である。
バース・スパ大学(Bath Spa University)。写真出典 https://www.bathspauae.info/bath-spa-university-uk
- 国:英国
- 成長国:米国
- 研究博士号(PhD)取得:米国のパデュー大学
- 男女:女性
- 生年月日:不明。仮に1982年1月1日生まれとする。2004年に大学を卒業した時を22歳とした
- 現在の年齢:42歳?
- 分野:教育学
- 最初の不正論文発表:2014年(32歳?)
- 不正論文発表:2014-2017年(32-35歳?)
- 発覚年:2017年(35歳?)?
- 発覚時地位:バース・スパ大学(Bath Spa University)・上級講師
- ステップ1(発覚):第一次追及者は不明
- ステップ2(メディア): 「撤回監視(Retraction Watch)」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌・編集部
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。バース・スパ大学は調査していない?
- 大学の透明性:発表なし(✖)
- 不正:盗用
- 不正論文数:4報。撤回1報
- 盗用ページ率:?
- 盗用文字率:?
- 時期:研究キャリアの初期から
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)をやめた・続けられなかった(Ⅹ)
- 処分:
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は3億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
主な出典:Profile – Dana Ruggiero 、(保存版)
- 生年月日:不明。仮に1982年1月1日生まれとする。2004年に大学を卒業した時を22歳とした
- 2004年(22歳?):米国のミネソタ大学(University of Minnesota)で学士号取得:児童心理学
- 2008年(26歳?):米国のオーグスバーグ大学(Augsburg College)で修士号取得:教育学
- 2013年(31歳?):米国のパデュー大学(Purdue University)で研究博士号(PhD)を取得:教育学
- 2012年(30歳?):英国のバース・スパ大学(Bath Spa University)・上級講師
- 2017年(35歳?)?:不正研究が発覚する
- 2017年5月(35歳?):バース・スパ大学・上級講師を辞職
●3.【動画】
ネカト事件の動画はみつからなかった。
【動画1】
研究解説動画:「デイナ・ルッジェロ博士(Dr. Dana Ruggiero) – YouTube」(英語)2分53秒。
CLICKSが2017/07/01に公開
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★ルッジェロ
2015-2016年(33-34歳?)、デイナ・ルッジェロ(Dana Ruggiero、写真出典)は「The Conversation」に記事を4回書いている。
→ Dana Ruggiero – The Conversation
2017年(35歳?)、「Times Higher Education」にも記事を2回書いている。
→ Dana Ruggiero | Times Higher Education (THE)
つまり、ルッジェロはメディアの注目を集める若い魅力的な研究者だった。
★ネカト
ネカト発覚の経緯は不明である。
2018年12月(36歳?)、ルッジェロの「2017年7月のComputers & Education」論文が盗用で撤回された。
→ 2018年12月の撤回告知:Retraction notice to “Project-based learning in a virtual internship programme: A study of the interrelated roles between intern, mentor and client” [10.1016/j.compedu.2017.03.011] – ScienceDirect
撤回された「2017年7月のComputers & Education」論文の書誌情報は以下の通り。
- Project-based learning in a virtual internship programme: A study of the interrelated roles between intern, mentor and client
DanaRuggiero&Jeffrey D.Boehm.
Computers & Education Volume 110, July 2017, Pages 116-126
被盗用論文は「2008年のTech Research Dev」論文で、書誌情報は以下の通り。
- Project-based learning in an internship program: A qualitative study of related roles and their motivational attributes
Johari, A. & Bradshaw, A.C.
Education Tech Research Dev (2008) 56: 329.
https://doi.org/10.1007/s11423-006-9009-2
ルッジェロは、Lavender(2008)の文章を逐語的にコピーしたメモを取った。その4年後に原稿を完成する時、論文を参考文献にリストしたが、逐語的コピーを書き直すのを忘れたと弁明している。忘れたことを後悔していると反省の弁も発している。
「撤回監視(Retraction Watch)」に次のように答えている(出典:【主要情報源】①)
訂正した2つの論文は、私が院生の時に発表した文章をそのまま流用してしまいました。撤回論文と後の方の訂正論文は、当時、複雑な流産してしまい、その後の心身が衰弱していた時に執筆・編集していた論文です。私はこの時、論文を執筆・編集すべきではなかったと思います。でも、執筆・編集したのです。これらの訂正と撤回は全部、私の責任です。
2017年5月(35歳?)、撤回告知が掲載される1年半前、既に、ルッジェロはバース・スパ大学・上級講師を辞職していた。
結局、2014年-2017年の3論文が盗用で2017年に訂正され、本記事で問題視した「2017年7月のComputers & Education」論文は2018年に撤回された。
●【盗用の具体例】
★盗用比較図
盗用は部分的(part of a paper)だとあるだけで、盗用比較図として示されていない。盗用ペ―ジ率、盗用文字率も示されていない。
でも、盗用論文と被盗用論文がわかっている。両論文を比べれば盗用比較図が作れ、盗用ペ―ジ率、盗用文字率もわかる。
でも、ゴメン、白楽はしていません。
興味のある方は、どうぞ。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
★撤回論文データベース
2019年10月14日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回論文データベースでデイナ・ルッジェロ(Dana Ruggiero)を「Ruggiero, Dana」で検索すると、4論文がヒットし、1論文が撤回されていた。Retraction Watch Databaseの上右「Nature of Notice」の右にチェックを入れ、「Retraction」にすると、撤回論文(数)が表示される。
2014年-2017年の3論文が盗用で2017年に訂正され、本記事で問題視した「2017年7月のComputers & Education」論文は盗用で2018年に撤回された。
★パブピア(PubPeer)
2019年10月14日現在、「パブピア(PubPeer)」では、デイナ・ルッジェロ(Dana Ruggiero)の論文にコメントはない:PubPeer – Search publications and join the conversation.
●7.【白楽の感想】
《1》どうして?
デイナ・ルッジェロ(Dana Ruggiero、写真出典)は盗用を認め、自分の責任なのでとバース・スパ大学・上級講師を辞職した。
ルッジェロがどうして盗用をしたのか、状況はわからない。
ただ、2014年-2017年の3論文が2017年に訂正されていて、その理由も盗用なのである。そして、「2017年7月のComputers & Education」論文も盗用で2018年に撤回された。
最初の3論文が訂正で済み、4論文目が撤回になった理由を把握していないが、前3論文は自己盗用または盗用率が低かったのかもしれない。
それにしても4論文も盗用とは、あきれてしまう。盗用を常習とする研究者になってしまったようだ。
最初の盗用論文は2014年(32歳?)発表で、その前年の2013年(31歳?)に博士号を取得した。博士論文にも盗用があると思うが、博士号を授与したパデュー大学(Purdue University)は調査した(している)様子はない。
ルッジェロは盗用まみれの倫理観の低い人と思える反面、「撤回監視(Retraction Watch)」のコメントにもあったが、発覚後、自分の責任を認め、辞職するなど、対応は潔く、誠実で倫理観の高い人でもある。つまり、人間の倫理観は局面ごとに異なるということだ。
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●8.【主要情報源】
① 2018年11月16日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Games researcher retracts one paper, corrects three others, for plagiarism – Retraction Watch、(保存版)
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
●9.【コメント】
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