エリザベッタ・チャニ(Elisabetta Ciani)(イタリア)

2020年10月24日掲載 

ワンポイント:チャニはボローニャ大学(University of Bologna)・準教授で、現在治療法がない希少疾患・CDKL5遺伝子欠損症で9件の米国特許を取得(含・申請)している。2016年7月7日(48歳)、その発明を、9千万ドル(約90億円)で米国の製薬企業に売却した。2016年10月18日(48歳)、上記の3か月後、チャニ研究室の4人(チャニを含め研究室は全員で7人)が、チャニがデータねつ造・改ざんしていると、ボローニャ大学に内部告発した。2017年9月(49歳)、ボローニャ大学は調査の結果、シロと判定した。しかし、2020年2月(52歳)に画像の不正加工(ねつ造・改ざん)で、2報の論文が撤回された。国民の損害額(推定)は2億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

エリザベッタ・チャニ(Elisabetta Ciani、ORCID iD:https://orcid.org/0000-0003-3130-5168、写真出典)は、イタリアのボローニャ大学(Università di Bologna、英語:University of Bologna)・準教授で医師ではない。専門は神経生物学である。

ボローニャ大学は欧州最古の総合大学である。

チャニは、現在治療法がない希少疾患・CDKL5遺伝子欠損症の有力な研究者で、9件の米国特許を取得(含・申請)している。

2016年7月7日(48歳)、チャニの研究成果を商売にしているベンチャー企業のミアメド社(MiaMed)は、その製品を米国のアミカス・セラピューティクス社(Amicus Therapeutics)に9千万ドル(約90億円)で売却した。

2016年10月18日(48歳)、上記の3か月後、エリザベッタ・チャニ(Elisabetta Ciani)の研究室の4人(チャニを含め研究室は全員で7人)が、チャニがデータねつ造・改ざんしていると、ボローニャ大学に内部告発した。

2017年1月(49歳)、ボローニャ大学はネカト調査を開始した。

2017年9月(49歳)、ボローニャ大学は調査最終報告書を発表した。ところが、その結論は、チャニをシロと判定し、内部告発者を非難した報告書だった。

しかし、2020年2月(52歳)に画像の不正加工(ねつ造・改ざん)で、「2002年10月のJBC」論文と「2013年7月のJBC」論文が撤回された。チャニは、クロだったと思える。

ボローニャ大学がシロと判定したので、本記事は、本来、「無罪」とラベルすべきかもしれない。しかし、画像の不正加工(ねつ造・改ざん)で 2論文が撤回されているので、「無罪」のラベルをせずに記事にした。

エリザベッタ・チャニ(Elisabetta Ciani)の所属するボローニャ大学の生物医学・運動神経科学科(Department of Biomedical and Neuromotor Sciences, University of Bologna)、写真出典

エリザベッタ・チャニ(Elisabetta Ciani)の実験室(多分)。写真出典

  • 国:イタリア
  • 成長国:イタリア
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:ボローニャ大学
  • 男女:女性
  • 生年月日:1968年にボローニャで生まれた。仮に1968年1月1日生まれとする
  • 現在の年齢:53 歳?
  • 分野:神経生物学
  • 最初の不正論文発表:2002年(34歳)
  • 不正論文発表:2002-2018年(34-50歳)の17年間
  • 発覚年:2016年(48歳)
  • 発覚時地位:ボローニャ大学・準教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者はチャニ研究室・ポスドク(女性、氏名不明)で、ボローニャ大学へ公益通報
  • ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌・編集部。②ボローニャ大学・調査委員会
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:隠匿(Ⅹ)
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:2報撤回
  • 時期:研究キャリアの初期から
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
  • 処分:なし
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は2億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

主な出典:①:Elisabetta Ciani — Università di Bologna — Curriculum vitae、(保存版) 、②:Elisabetta Ciani

  • 生年月日:1968年にボローニャで生まれた。仮に1968年1月1日生まれとする
  • 1991年(23歳):ボローニャ大学(Università di Bologna)で学士号取得:生物科学
  • 1992-1995年(24-27歳):同大学で研究博士号(PhD)を取得:細胞生物学および生理学。博士論文のタイトル:「細胞調節、脳の発達の変化、興奮毒性における高速誘導遺伝子の発現(Espressione di geni ad induzione rapida nella regolazione cellulare, nelle alterazioni dello sviluppo cerebrale e nell’eccitotossicità)」
  • 1995-1999年(27-31歳):ドイツのマックス・プランク精神医学研究所・ポスドク
  • 1999-2001年(31-33歳):ボローニャ大学・研究員
  • 2001-2014年(33-46歳):同大学・教員
  • 2014年(46歳):同大学・準教授
  • 2016年7月7日(48歳):チャニの研究成果が9千万ドル(約90億円)で売れた
  • 2016年10月18日(48歳):研究室の女性ポスドクにネカトと告発された
  • 2017年1月(49歳):ボローニャ大学は調査を開始
  • 2017年9月(49歳):ボローニャ大学は調査結果を発表し、チャニをシロと判定し、ネカト告発を握りつぶした
  • 2020年2月(52歳):2論文が画像ネカトで撤回

●3.【動画】

以下は事件の動画ではない。

【動画1】
研究解説動画:「La sindrome CDKL5 – Prof.ssa Elisabetta Ciani – 5 per Mille – YouTube」(イタリア語)44秒。
Università di Bolognaが2015/04/02に公開

●5.【不正発覚の経緯と内容】

以下の解説と資料は、ほぼ全部、ここに依存している →  2020年3月4日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ:Bologna mice guilty of research misconduct – For Better Science

エリザベッタ・チャニ(Elisabetta Ciani)研究室の女性ポスドク(代表Aとした)が、ネカト告発から事件の終焉までを、レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログの場を借りて、資料を提示し、生々しく述べている。その記述は、なかなか、迫力がある。

★CDKL5遺伝子欠損症と金儲け

エリザベッタ・チャニ(Elisabetta Ciani)は、現在治療法がない希少疾患・CDKL5遺伝子欠損症(CDD)を、遺伝子治療で治療しようと研究をしている。 → 2019年7月15日記事:Malattie genetiche rare: due progetti Unibo finanziati dalla Fondazione Telethon — UniboMagazine

CDKL5は脳の発達に必要な酵素「cyclin-dependent kinase-like 5」の略である。 → CDKL5 – Wikipedia

CDKL5遺伝子欠損症(CDD)とは何か?

CDKL5という遺伝子は、2003年に乳児期発症の難治性てんかんの原因として報告されました。

CDKL5遺伝子に異常が生じることにより、新生児から乳児のきわめて早期にてんかん発作をし、また、低緊張や重度の発達遅滞が殆どの患者に認められるほか、視覚障害や消化器官異常、自閉症状など、個人差はありますがそれぞれに生活に支障をきたす症状を複数抱えています。(出典:CDKL5とは | cdkl5 japan らぶはんず

エリザベッタ・チャニ(Elisabetta Ciani)は、CDKL5遺伝子欠損症の治療に関する発明で9件の米国特許を申請または取得している。ボローニャ大学が申請者(つまり、特許権者)である。つまり、ボローニャ大学にとってチャニは金の卵を産んでいる研究者なのだ。 → Elisabetta Ciani Inventions, Patents and Patent Applications – Justia Patents Search

2016年7月7日(46歳)、チャニの研究開発を商売にしているベンチャー企業のミアメド社(MiaMed)は、その製品を米国のアミカス・セラピューティクス社(Amicus Therapeutics)に9千万ドル(約90億円)で売却した。 → 2016年7月7日記事:Amicus spends $90M on MiaMed; gains rare disease preclinical program | FierceBiotech

右の写真は、アミカス・セラピューティクス社との契約書を持つエリザベッタ・チャニ(Elisabetta Ciani)(左)。右の男性は不明。出典

★発覚の経緯

前項で述べたように、2016年7月7日(46歳)、ボローニャ大学のスピンオフ会社であるミアメド社(MiaMed)は、その製品を米国のアミカス・セラピューティクス社(Amicus Therapeutics)に9千万ドル(約90億円)で売却した。

その3か月後、以下に述べるネカト内部告発が起こり、CDKL5遺伝子欠損症(CDD)の治療法に関する研究論文にネカト疑惑が生じたのである。

以下、詳細に述べよう。

2016年10月18日(48歳)、エリザベッタ・チャニ(Elisabetta Ciani)の研究室の4人(研究室はチャニを含め全員で7人)が、チャニがデータねつ造・改ざんしていると、ボローニャ大学に内部告発した。

以下は2016年10月18日告発文書の冒頭部分(出典:同)。全文(5ページ)は → https://forbetterscience.files.wordpress.com/2020/03/reprint-01_report_original.pdf

2016年10月18日の告発文書が指摘したチャニのネカトとクログレイのいくつかを以下に示す。

  • コントロール実験のデータを数か月または数年後の他の実験で再使用している。1つの結果を、異なる学術誌の論文に、異なるコントロール実験データとして、少なくとも2回再使用した。数か月または数年離れて行なわれた実験なのに、同時に実施した実験で得たデータのように発表した。
  • 実験した動物群のデータを意図的に除外し、代わりに、コントロールの未処理動物群のデータを発表した。
  • データの「チェリーピッキング」をしている。そして、各グループに2匹の動物しかいない動物実験なのに、その実験結果を発表した。
  • 他の共著者に知らせず原稿を変更し論文投稿した。
  • 説明なしにエクセル・ファイル中の実験結果の数値を改ざんした。
  • 結果が「望ましい」ものではなかった他の実験結果に言及せず、研究仮説を支持するのに都合の良い結果だけを発表した。

上記は、白楽が問題指摘のほぼ半分を選んで記載した。それでも既に、ネカトとクログレイがたくさんある。

★学部長と学長

4人の告発者は、告発文書をラファエレ・ロディ学部長(Raffaele Lodi、左写真出典)とピエトロ・コルテッリ学長(Pietro Cortelli、右写真出典)に送付した。

ロディ学部長とコルテッリ学長は両方とも、内部告発者に会って話し合うことを提案してきた。4人の内部告発者の代表が1人(代表A)(女性)がその会合に参加した。

会合で、代表Aが驚いたことは、ボローニャ大学にはネカトの申し立てに対処する正式な規則がなかったことだった。

規則がないので、手順が不明確である。それで、代表Aは報告書に署名しないことにし、行動の延期を求めた。

2016年11月初旬(48歳)、告発の3週間後、ロディ学部長から、署名のない報告書が「事件の調査を担当する人々」に転送された。

告発してから4週間頃までの一連の出来事で、4人の内部告発者は不安になり、意見が衝突し、曖昧な状態に耐え切れず、チャニ研究室の雰囲気は耐え難いものになった。代表Aは大学当局にそれについて不満を伝えたが、大学側は事実上なにも対応しなかった。

★2番目の告発文書

そうこうしているうちに、代表Aはチャニの研究室の論文を2014年まで調べた。すると、他にもネカト疑惑点が見つかってきた。

2017年1月16日(49歳)、それで、代表Aはさらに多くのネカト疑惑の証拠を示す2番目の告発文書を大学に提出した。

以下は2017年1月16日告発文書の冒頭部分(出典:同)。全文(13ページ)は → https://forbetterscience.files.wordpress.com/2020/03/reprint-04_updated_report-1.pdf

例えば、「2016年9月のHum Mol Genet」論文で、研究室に保管されている生データ(左)は、改ざんされ出版されていた(右)のである(以下の図の出典は2017年1月16日告発文書のページ4)。

「2016年9月のHum Mol Genet」論文の書誌情報を以下に示す。

★仲間割れ

代表Aにとって悲しいことに、4人の内部告発者のうち3人が、2016年11月11日の学部長への手紙に署名し、告発から撤退した。

告発から撤退した3人は全員すぐにボローニャ大学を去った。

★事態は激化

その間、相互の非難と不信が広まるにつれ、事態は激化した。代表Aは大学当局に別のメールを送って支援と保護を求め、研究を続けられるようにした後、ようやく学部長との2回目の会合がセットされた。 会合は非公式だった。

なお、証拠をハッキリさせるため、チャニに生データの開示を求めてていたが、チャニは拒否し、開示しなかった。学部長と学長から指示されても、チャニは生データを開示しなかった。異常である。

★結局・・・。

本記事の情報源としているレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログには、イタリア語の資料がたくさん出てくる。白楽には状況がいまいち把握できない。以下、途中の詳細を端折り、結論へ。

ネカト騒動は、イタリア国立研究評議会(Italian National Research Council:CNR)の注意を引き、代表Aは研究倫理および生命倫理委員会の委員長とメールで数回話し合ったが、ネカト疑惑解消の動きは起きなかった。

2017年1月中旬(49歳)、ボローニャ大学は事件を調査するための内部委員会を設立し、公式な公聴会が行なった。

2017年3月17日(49歳)、調査中間報告書を発表した。

2017年9月(49歳)、調査最終報告書を発表した。

以下の文書はロディ学部長からの2017年6月12日付けの文書である。6月に調査が終了し、書類を整理・配布していた。

結局、ボローニャ大学は調査を行なった。しかし、学内の調査委員は内部告発者が無能、強制的、文書偽造、データ盗用があると、内部告発者を非難ばかりし、告発者の示した証拠を無視した。

ネカト調査報告書は機密扱いであり、ボローニャ大学の学長はネカト調査報告書の共有を禁じた。代わりに、学長と学部長は資金援助団体に手紙を書き、チャニが無罪であることと、チャニへの資金提供の継続を要求した。

つまり、告発は失敗し、大学はチャニを守り、ネカト隠ぺいへと動いたのだった。

【ねつ造・改ざんの具体例】

ボローニャ大学はネカト調査結果を公表していない。つまり、どの論文の何がどのようにねつ造・改ざんされたのか(されてないのか)、ボローニャ大学の公式発表を見ることはできない。

ただ、そもそも、ボローニャ大学はネカトを握り潰したので、公式発表されても、その内容を信頼できるかどうかは微妙である。

事実として、「2002年10月のJBC」論文と「2013年7月のJBC」論文が2020年2月に撤回された。

不正の状況をパブピアで探った。

★「2002年10月のJBC」論文

「2002年10月のJBC」論文の書誌情報を以下に示す。2020年2月に撤回された。

2019年12月19日、ビオラ・X(Viola X)は、図4Aの画像の重複使用を指摘した「Viola X (commented December 19th, 2019 5:53 AM and accepted December 19th, 2019 9:01 AM)」。

以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/C691DFAF6DF76BEFE391F5E197E280#1

★「2013年7月のJBC」論文

「2013年7月のJBC」論文の書誌情報を以下に示す。2020年2月に撤回された。

2019年12月24日、ポンティア・プロトダイス(Pontia Protodice)は、図2Cの画像の切り貼りを指摘した「Viola X (commented December 24th, 2019 2:32 PM and accepted December 25th, 2019 8:18 AM)」。

以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/3FE6ACBD0B015899AAB6E2F7D2120F#1

トーマファガス・ピレニイアス(Ptomaphagus Pyrenaeus) が、上記と同じ画像をコントラスと変えて、切り貼りを良く見えるようにした。以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/3FE6ACBD0B015899AAB6E2F7D2120F#2

画像の切り貼り、つまり、データねつ造ですね。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2020年10月23日現在、パブメド(PubMed)で、エリザベッタ・チャニ(Elisabetta Ciani)の論文を「Elisabetta Ciani [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2020年の19年間の62論文がヒットした。

「Ciani E[Author]」で検索すると、1993~2020年の38年間の143論文がヒットした。

2020年10月23日現在、「Ciani E[Author] AND Retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、2論文が撤回されていた。

★撤回論文データベース

2020年10月23日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回論文データベースでエリザベッタ・チャニ(Elisabetta Ciani)を「Ciani, Elisabetta」で検索すると、2論文が訂正、0論文が懸念表明、2論文が撤回されていた。

撤回論文は、具体的には、「2002年10月のJBC」論文と「2013年7月のJBC」論文で、2020年2月に撤回された。

★パブピア(PubPeer)

2020年10月23日現在、「パブピア(PubPeer)」では、エリザベッタ・チャニ(Elisabetta Ciani)の論文のコメントを「Elisabetta Ciani」で検索すると、7論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》「まねー・とーくす」 

「パブピア(PubPeer)」の指摘と学術誌「JBC」の2報の論文撤回で、画像のねつ造・改ざんは確実と思われる。ただ、ボローニャ大学がネカト調査報告書を公表せずネカト告発を握りつぶしているので、ネカト者がエリザベッタ・チャニ(Elisabetta Ciani)なのか、別人なのか、ハッキリしない。

ただ、チャニの研究成果が90億円で売れたので、特許権者のボローニャ大学はチャニの不正を隠蔽し、チャニを必死に守ったのだろう。

「まねー・とーくす」である。

《2》研究公正の壁

ボローニャ大学のように隠蔽体質の大学(学長)は日本に多いが、外国にも多い。十分調べていないが、印象ではイタリアは欧州の中でも研究公正を軽視する姿勢が強い。

現在のシステムでは、ネカト調査はほとんどの国では大学が行なうので、大学が「シロ」と言えば「シロ」になってしまう。こうなると、法的にも文化的にも、異論を唱える正攻法のルートがない。

今回のように衆人の目に「クロ」という事実がさらされていても、大学が「シロ」と言えば「シロ」になってしまう。

このシステムを変えないと、研究公正は前進できない。

《3》研究公正の風雲児

レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)はスゴイ。裁判で訴えられても、自分のブログでコトの詳細を公表し、公正に突っ走る。

鉄の結束を保つ学術界トップ連をも、シュナイダーは激しく批判する。この情熱、この下品さは「撤回監視(Retraction Watch)」に見られない。

本事件では、チャニ研究室の女性ポスドク(代表Aとした)が、チャニ研究室のネカトを告発し、追及した様子を、資料を提示、生々しく述べた。結局、ボローニャ大学がシロと強弁し、ネカトを隠蔽したので、対比が際立った。

このようなネカト告発の生々しい状況を、レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)は自分のブログの場を提供し、公表している。このような記述・記録は、なかなか、貴重である。

シュナイダーには、頑張ってもらいたいと思う。

《4》「撤回監視(Retraction Watch)」の偏向

「撤回監視(Retraction Watch)」は論文撤回を通して、研究公正に革命的な変化をもたらした。素晴らしいと思う。 → 1‐5‐5 撤回監視(リトラクション・ウオッチ:Retraction Watch) | 白楽の研究者倫理

しかし、「撤回監視(Retraction Watch)」は異常な面がある。その例がレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)に対する扱いである。

シュナイダーが記載した記事の内容を利用した記事を書いても、シュナイダーの記事を引用しない。頻度は不明だが、数回、ヘンだなと感じたことがある。

今回のエリザベッタ・チャニ(Elisabetta Ciani)事件では、「2002年10月のJBC」論文と「2013年7月のJBC」論文が2020年2月に撤回された。それでも、チャニの論文撤回を記事にしない。異常である。 → Search Results for “Elisabetta Ciani” – Retraction Watch、(保存版

(注:写真は本文とは関係ありません)。白楽は、ボローニャ大学を訪問したと思って写真を探したが、訪問していませんでした。代わりの写真は、イタリアの公園でインラインスケートを楽しむ少女。2006年。白楽撮影。
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●9.【主要情報源】

① 2020年3月4日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ:Bologna mice guilty of research misconduct – For Better Science
② 2020年3月10日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ:Bologna cover-up at Oxford University Press – For Better Science
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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