ホセ・カルボ=ギラド(Jose Calvo-Guirado)(スペイン)

2021年2月6日掲載  

ワンポイント:撤回論文ランキングの世界第24位(リストで25番目、26撤回論文)に登場したので記事にした。カルボ=ギラドはカトリカ・サン・アントニオ・デ・ムルシア大学(Universidad Católica San Antonio de Murcia)・教授でスペインの著名な歯科医である。2010~2020年出版した26論文が画像の重複使用で2018~2020年に撤回された。多数論文撤回者である。西オーストラリア大学(University of Western Australia)のリサ・ハイツ=メイフィールド教授・編集長(Lisa J. A. Heitz-Mayfield)が、カルボ=ギラド論文の重複画像を見つけた。大学はネカト調査をしていない。従ってカルボ=ギラドを処分していない。国民の損害額(推定)は5億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

ホセ・カルボ=ギラド(Jose Calvo-Guirado、Jose Luis Calvo-Guirado 、ORCID iD:https://orcid.org/0000-0002-4067-2253、写真出典)は、スペインのカトリカ・サン・アントニオ・デ・ムルシア大学(Universidad Católica San Antonio de Murcia)・教授・歯科医師で、専門は歯科学(インプラント)である。

インプラントの研究で世界第15位、歯科移植治療では世界第19位のスペインの著名な歯科医である。

日本語に翻訳されていないが、著書に『歯科インプラント、マクロジオメトリ、バイオマテリアル(Dental Implant Macrogeometry and Biomaterials)』(2020年7月16日刊)がある(本の表紙出典はアマゾン)。

2018年5月2日(53歳?)、カルボ=ギラドは学術誌「Clinical Oral Implants Research」に約40論文を出版していたが、その内の2011年10月に出版した1論文が画像のねつ造・改ざんで撤回された。西オーストラリア大学(University of Western Australia)のリサ・ハイツ=メイフィールド教授(Lisa J. A. Heitz-Mayfield)が、その学術誌の編集長に就任し、カルボ=ギラド論文の重複画像を見つけた。

2020年12月17日(55歳?)、「2018年のAnnals of Anatomy」論文が画像重複で撤回された。この論文撤回は、カルボ=ギラドの26報目の撤回論文になり、撤回論文世界ランキングに入った。

カルボ=ギラドは論文撤回に不服で、謝罪しないし、悪びれた様子もない。実験動物の犠牲数を減らすために画像を再利用したと述べ、むしろ「善行」だと述べている。

カトリカ・サン・アントニオ・デ・ムルシア大学はネカト調査をしていない。従ってカルボ=ギラドを処分していない。

2021年2月5日現在、カルボ=ギラドは、撤回論文ランキングの世界第24位(リストで25番目、26撤回論文)にランクされている。つまり、カルボ=ギラドは多数論文撤回者である。
 → 2021年2月5日更新:「撤回論文数」世界ランキング | 白楽の研究者倫理 、(2021年2月5日保存版) → 2021年1月31日保存:The Retraction Watch Leaderboard – Retraction Watch

カトリカ・サン・アントニオ・デ・ムルシア大学(Universidad Católica San Antonio de Murcia)。写真出典

  • 国:スペイン
  • 成長国:スペイン
  • 歯科医師免許(DDS)取得:xx大学
  • 研究博士号(PhD)取得:ミゲル・エルナンデス・デ・エルチェ大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1965年1月1日生まれとする。2015年に教授に就任した時を50歳とした
  • 現在の年齢:56 歳?
  • 分野:歯学
  • 不正論文発表:2011~2020年(46~55歳?)
  • 発覚年:2018年(53歳?)
  • 発覚時地位:カトリカ・サン・アントニオ・デ・ムルシア大学・教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者(詳細不明)は西オーストラリア大学(University of Western Australia)のリサ・ハイツ=メイフィールド教授(Lisa J. A. Heitz-Mayfield)である。学術誌の編集長に就任し、カルボ=ギラド論文の重複画像を見つけた
  • ステップ2(メディア):「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌・編集部
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。大学はネカト調査をしていない
  • 大学の透明性:調査していない(✖)
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:2論文が訂正、0論文が懸念表明、26論文が撤回
  • 時期:研究キャリアの中期から
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
  • 処分:なし
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は5億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

出典:(1):Jose CALVO GUIRADO、(2):Curriculum vitae. JOSE LUIS CALVO GUIRADO

  • 生年月日:不明。仮に1965年1月1日生まれとする。2015年に教授に就任した時を50歳とした
  • 19xx年(xx歳):スペインのxx大学 (xx)・歯科医師免許(DDS)取得
  • 1998年9月 – 2015年6月(33 – 50歳?):スペインのムルシア大学 (Universidad de Murcia)・準教授、一般歯科/インプラント歯科主任
  • 2011年(46歳?):後で撤回される最初の論文を出版
  • 2014年12月22日(49歳?):スペインのミゲル・エルナンデス・デ・エルチェ大学 (Universidad Miguel Hernández)で研究博士号(PhD)を取得
  • 2015年6月1日(50歳?):カトリカ・サン・アントニオ・デ・ムルシア大学(Universidad Católica San Antonio de Murcia)・教授
  • 2020年(55歳?):撤回論文ランキングの世界第24位(リストで25番目、26撤回論文)に登場

●3.【動画】

以下は事件の動画ではない。

【動画1】
動画:「Prof.Dr.Dr. José Luis Calvo Guirado II Simposium Bioner Xperience – YouTube」(スペイン語)0分58秒。
Bioner Implantes dentalesが2017/09/20に公開

【動画2】
動画:「III SIMPOSIUM BIONER XPERIENCE 2019 – Prof.Dr.Dr. José Luis Calvo Guirado – YouTube」(スペイン語)2分49秒。
Bioner Implantes dentalesが2019/03/01に公開

【動画3】
大学紹介動画:「Master Oral Surgery and Implant Dentistry | UCAM Catholic University of Murcia – YouTube」(英語)2分16秒。
UCAM Universidad Católica de Murciaが2016/03/11に公開

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★発覚

ホセ・カルボ=ギラド(Jose Calvo-Guirado、写真出典)はスペインのカトリカ・サン・アントニオ・デ・ムルシア大学(Universidad Católica San Antonio de Murcia)・教授・歯科医師で、専門は歯科学(インプラント)である。

2018年5月2日(53歳?)、カルボ=ギラドは学術誌「Clinical Oral Implants Research」に約40論文を出版していたが、その内の2011年10月に出版した以下の1論文が画像のねつ造・改ざんで撤回された。続いて12論文、計12論文も撤回された。

撤回理由は、図2、3、4、7、8、11の画像の重複使用である。

カルボ=ギラドは撤回に同意していない。以下のように述べている。

西オーストラリア大学(University of Western Australia)のリサ・ハイツ=メイフィールド教授(Lisa J. A. Heitz-Mayfield、写真出典)が、2017年、学術誌「Clinical Oral Implants Research」の編集長なりました。ハイツ=メイフィールド教授は、長年、私(カルボ=ギラド)の研究に懐疑的でした。そして、彼女は、政治的に私をおとしめようと活動しはじめたのです。優れた研究者である私が研究公正に違反していると非難し、私が認めてもいないのに、私の10数報の論文を撤回したのです。

ということは、ネカトを見つけたのは、リサ・ハイツ=メイフィールド編集長ということだ。

カルボ=ギラドの撤回論文(上記ではない)の1報で共著者になっているニューヨーク州立大学ストーニーブルック校・歯科大学院(State University of New York Stony Brook School of Dental Medicine)のゲオルギオス・ロマノス教授(Georgios Romanos、写真出典)は、カルボ=ギラドが画像を再利用するのは、研究で犠牲にする実験動物の数を減らしていると推測している。つまり、カルボ=ギラドは、ある意味、研究倫理上正しい行為をしているとのことだ。

2020年12月17日(55歳?)、「2018年のAnnals of Anatomy」論文が画像重複で撤回された。
 → 撤回公告:RETRACTED: A new procedure for processing extracted teeth for immediate grafting in post-extraction sockets. An experimental study in American Fox Hound dogs – ScienceDirect

この論文撤回が、カルボ=ギラドの26報目の撤回論文になり、撤回論文世界ランキングに入った。

2021年2月5日現在、カルボ=ギラドは、撤回論文ランキングの世界第24位(リストで25番目、26撤回論文)にランクされている。つまり、カルボ=ギラドは多数論文撤回者である。 → 2021年2月5日更新:「撤回論文数」世界ランキング | 白楽の研究者倫理 、(2021年2月5日保存版) → 2021年1月31日保存:The Retraction Watch Leaderboard – Retraction Watch

【ねつ造・改ざんの具体例】

カトリカ・サン・アントニオ・デ・ムルシア大学はネカト調査をしていないので、公式なネカト箇所は不明である。パブピアでもネカト箇所の指摘はない。

カルボ=ギラドの26撤回論文の内25論文は閲覧有料なので、白楽は見ていない。

無料閲覧できる以下の「2019年5月のJ Clin Exp Dent.」論文でネカト箇所を探った。

★「2019年5月のJ Clin Exp Dent.」論文

「2019年5月のJ Clin Exp Dent.」論文の書誌情報を以下に示す。2020年6月17日、撤回された。

撤回公告は以下のようだ。

図5は「2016年のMaterials」論文の図5と同じである。しかし、本論文では「5か月」とあり、「2016年のMaterials」論文の図5では「6か月」となっていた。学術誌の編集長と編集部が調査し、画像の不一致について、著者に説明を求めたが、著者から適切な説明が得られなかったので、論文を撤回した。
 → 撤回公告:Retraction: Ñíguez Sevilla, B., et al. Nurse’s A-Phase–Silicocarnotite Ceramic–Bone Tissue Interaction in a Rabbit Tibia Defect Model. J. Clin. Med. 2019, 8, 1714

以下が図5である(出典:原著論文)。左から3つ目の画像(5M)の「5M」が「5か月」の意味である。この図は「2016年のMaterials」論文の図5を再使用し、標識を変えた図だった。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2021年2月5日現在、パブメド( PubMed ))で、ホセ・カルボ=ギラド(Jose Calvo-Guirado)の論文を「Jose Calvo-Guirado [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2021年の20年間の195論文がヒットした。

「Calvo-Guirado JL」で検索すると、2002~2021年の20年間の223論文がヒットした。

2021年2月5日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、19論文が撤回されていた。

撤回された19論文は2011~2019年に出版された論文である。

★撤回監視データベース

2021年2月5日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでホセ・カルボ=ギラド(Jose Calvo-Guirado)を「Calvo-Guirado」で検索すると、 2論文が訂正、0論文が懸念表明、26論文が撤回された。

2010~2020年出版した26論文が2018~2020年に撤回された。

★パブピア(PubPeer)

2021年2月5日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ホセ・カルボ=ギラド(Jose Calvo-Guirado)の論文のコメントを「Calvo-Guirado」で検索すると、5論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》別の価値観? 

ホセ・カルボ=ギラド(Jose Calvo-Guirado、写真出典)は論文撤回に不服で、謝罪してないし、悪びれた様子もない。実験動物の犠牲数を減らすための画像の再利用で、「善行」していると述べているらしい。

カトリカ・サン・アントニオ・デ・ムルシア大学はネカト調査をしていない。従ってカルボ=ギラドを処分していない。

スペインって、別の価値観で生きているの?

ウシの殺戮(闘牛)を長年娯楽としてきた国の風習にも驚くけど、ネカトにも寛容なのだろうか?

《2》有力学者

ホセ・カルボ=ギラド(Jose Calvo-Guirado)は、インプラントの研究で世界第15位、歯科移植治療では世界第19位のスペインの著名な歯科医である。

ネカト程度の理由では、大学は有力な学者を調査し、処罰できないのか?

スペインだけの話ではない。日本もそうだ。

でも、有力な学者がネカトをしたのではなく、ネカトをしたから有力な学者になれた(多分。ある程度は)。

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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●9.【主要情報源】

① 2018年5月31日のアダム・マーカス(Adam Marcus)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Dental journal pulls a dozen papers for recycled images and “unreliable data” – Retraction Watch
② 2018年11月26日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Dental researcher in Spain up to 18 retractions – Retraction Watch
③ 2019年10月17日のハビエル・サラス(Javier Salas)記者の「EL PAÍS」記事:José Luis Calvo-Guirado: Retiradas por irregularidades 19 investigaciones del mismo científico, el récord en España | Ciencia | EL PAÍS
④ 2020年12月24日のアダム・マーカス(Adam Marcus)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:‘Misconduct on a grand and terrible scale’: Dental scientist up to 26 retractions – Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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