7-47 米国の2019年採択ネカト研究

2020年2月15日掲載 

白楽の意図:米国のネカト研究の現状を知るために、研究公正局が2019年9月17日に発表した研究公正に関する2019年度の採択・研究課題8件を概観した。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.論文概要
2.書誌情報と著者
3.日本語の予備解説
4.論文内容
5.関連情報
6.白楽の感想
8.コメント
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【注意】「論文を読んで」は、全文翻訳ではありません。ポイントのみの紹介で、白楽の色に染め直してあります。

●1.【論文概要】

なし

●2.【書誌情報と著者】

★書誌情報

Home

★著者

各課題の内容は申請者が著者と思われる。

●3.【日本語の予備解説】

なし。

●4.【論文内容】

《1》序論 

2019年3月6日、米国・研究公正局(ORI)は研究公正に関する2019年度の研究を公募した。

研究の目的は、研究公正とネカト防止に関する革新的なアプローチの促進である。なお、ここでの研究公正の定義は、「規則、規制、ガイドライン、当該研究分野の一般的な規範に配慮しながら、研究の企画、提案、実行、評価、報告を、誠実かつ検証可能な方法で行なうこと」とする。

研究費額は10万ドル~15万ドル(約1000~1500万円)/年
採択予定数は9件

2019年9月17日、米国・研究公正局(ORI)は、研究公正に関する8件の研究課題を採択したと発表した。採択課題の各研究費を合計すると、1,135,316ドル(約1億1353万円)/年だった。単純に平均すると1件、141,915ドル(約1419万円)/年となる。

以下、研究代表者、所属大学、採択課題をリストした。

  1. Mary Walsh /Harvard University
    “Image Forensics: Quantitative Assessments of Image Duplication”
  2. Daniel Acuna /Syracuse University
    “Automatic Detection, Evaluation, and Tracing of Image and Data Tampering with Humans in the Loop”
  3. Allan Loup /University of Notre Dame
    “Deliberative Sessions on the Protection of Research Misconduct Whistleblowers”
  4. Jason Robert /Arizona State University
    “Integrity, Identity, and Pluralistic Ignorance: When Scientific Vocation Impedes the Reporting of Wrongdoing”
  5. Suzanne Rivera /Case Western Reserve University
    “Fostering Responsible Research Culture through Enhanced Mentoring and Leadership”
  6. Ben Vassar /Oklahoma State University
    “Evaluation of Twitter as a Post-Publication Peer Review Mechanism to Identify Responsible Conduct of Research Concerns”
  7. Karen Geren /University of Missouri
    “Evaluating Organizational Research Climate to Assess Research Integrity in a University System”
  8. Dennis Gorman /Texas A&M
    “Protocol-Publication Discrepancies and p-hacking in Public Health Research”

《1》メアリー・ウォルシュ(Mary Walsh) 

画像法科学:画像複製の定量的評価」。2018年にも採択。
メアリー・ウォルシュ(Mary C. Walsh, PhD.、写真出典
ハーバード大学医科大学院(Harvard Medical School)のネカト調査主任(Chief Scientific Investigator, Office for Academic Research and Integrity (ARI))

過去3年間の採択研究費:2018年にも採択
過去3年間の出版論文(パブメド(PubMed)検索):0報

データ類似性の評価を自動化する方法を開発し、問題画像を特定する法科学的な方法の開発に取り組む。

フェーズⅠは、画像を機械認識する「畳み込みニューラルネットワーク」モデル(deep convolutional neural network modeling、ConvNet、CNN)を利用し、画像を加工した場合を含め、論文の重複画像を識別する方法を開発する。

白楽注:「畳み込みニューラルネットワーク」(Convolutional neural network、ConvNet)とは? 

機械学習において、畳み込みニューラルネットワーク(たたみこみニューラルネットワーク、英: Convolutional neural network、略称: CNNまたはConvNet)は、順伝播型人工ディープニューラルネットワークの一種である。画像や動画認識に広く使われているモデルである。最小限のデータ前処理しか必要としないように設計された多層パーセプトロンのバリエーションを使用する。CNNは、その重み(行列の)共有構造と並進不変特性に基づいて、シフト不変(shift invariant)あるいは位置不変(space invariant)人工ニューラルネットワーク(SIANN)とも呼ばれている。(出典:畳み込みニューラルネットワーク – Wikipedia)。

白楽は、「畳み込みニューラルネットワーク」を十分理解できない。それで、メアリー・ウォルシュの研究計画をここで端折る。なお、論文中の画像が他の論文から再使用されたかどうかを検出する方法の研究だと理解した。

《2》ダニエル・アクーナ(Daniel Acuna) 

研究グループ内の画像・データ改ざんの自動検出、評価、追跡
ダニエル・アクーナ(Daniel E. Acuna PhD.、写真出典
シラキュース大学(Syracuse University)・情報学の助教授

過去3年間の採択研究費

  1. 2018年にも採択
  2. NSF 2019
    Standard SMA Social Dynamics of Knowledge Transfer Through Scientific Mentorship and Publication
    Acuna, Daniel / Syracuse University $176,475
  3. NSF 2018
    Standard SMA Optimizing Scientific Peer Review
    Acuna, Daniel; Kording, Konrad; Evans, James / Syracuse University $531,339

過去3年間の出版論文(パブメド(PubMed)検索):2報。内、ネカト研究論文は1報

  1. Intellectual synthesis in mentorship determines success in academic careers.
    Liénard JF, Achakulvisut T, Acuna DE, David SV.
    Nat Commun. 2018 Nov 27;9(1):4840. doi: 10.1038/s41467-018-07034-y.

  2. Limiting motor skill knowledge via incidental training protects against choking under pressure.
    Lee TG, Acuña DE, Kording KP, Grafton ST.
    Psychon Bull Rev. 2019 Feb;26(1):279-290. doi: 10.3758/s13423-018-1486-x.

画像処理技術の発展と高度な写真編集ソフトのおかげで、安価でしかも簡単に画像を高度に加工(つまり、改ざん)できるようになった。従って、改ざん画像の自動検出器は、研究コミュニティにとって緊急に必要なツールである。画像の再使用やコピペの検出法はあるが、つなぎ合わせた画像と部分削除した画像の検出法はまだ開発されていない。改ざん画像検出器は、この2種類の加工画像も検出できなければ完成度が低い。さらに、科学分野の画像は一般的な画像とは異なるため、画像加工を識別する基準が異なる。つまり、科学分野での画像改ざんを検出するには、科学画像に特化した検出器が必要である。

採択研究では、発表論文のデータファイル中の改ざん画像を検出するツールと技術を開発する。重要な点は、作業の中心に研究公正官を据えている点である。つまり、人間が加工画像をどう見抜くかという視点を導入して画像加工の検出基準を開発する。

《3》アラン・ループ(Allan Loup) 

ネカト行為の内部告発者の保護に関する討論と審議
アラン・ループ(Allan Loup、 PhD.なし、写真出典
ノートルダム大学(University of Notre Dame)の規範担当・プログラムディレクター補(Assistant Program Director, Ethics)

過去3年間の採択研究費:なし
過去3年間の出版論文(パブメド(PubMed)検索):0報

このプロジェクトは、ネカト行為の内部告発者の保護に関する研究で、2つの目標がある。

1つ目の目標は、ネカト行為の通報者を保護する最適な方法に関して、研修生(院生・ポスドクなど)の意見を、討論と審議を通して確立すること。2つ目の目標は、責任ある研究行為に関する最適なトレーニングに関して、研修生(院生・ポスドクなど)の意見を、討論と審議を通して確立すること、である。参加型の政策開発と研究公正トレーニングの実証プロジェクトである。

この研究では、研修生(院生・ポスドクなど)がネカト行為を目撃する最適な立場にいるとした点がポイントである。研修生(院生・ポスドクなど)の視点から有効な洞察を導き出し、政策と実践に取り入れ、具体策を提案しようという研究である。研修生(院生・ポスドクなど)がネカト行為の告発を困難に感じている要因や倫理的懸念も明らかにする。

《4》ジェイソン・ロバート(Jason Robert) 

公正、アイデンティティ、多元的無知。ネカトの告発を妨げる要因
ジェイソン・ロバート(Jason Robert PhD.、写真出典
アリゾナ州立大学(Arizona State University)・準教授:応用倫理学(Lincoln Center for Applied Ethics)

過去3年間の採択研究費:なし
過去3年間の出版論文(パブメド(PubMed)検索):2報。内、ネカト研究論文は0報

  1. Translational implications of the anatomical nonequivalence of functionally equivalent cholinergic circuit motifs.
    Disney AA, Robert JS.
    Proc Natl Acad Sci U S A. 2019 Dec 23. pii: 201902280. doi: 10.1073/pnas.1902280116. [Epub ahead of print]
  2. The Reflective Scribe: Encouraging Critical Self-Reflection and Professional Development in Pre-Health Education.
    Robert J, Piemonte N, Truten J.
    J Med Humanit. 2018 Dec;39(4):447-454. doi: 10.1007/s10912-018-9541-1.

外因的な利益がネカト行為の動機づけになっているという研究は多くあるが、内因的な動機づけを研究した例は少ない。さらに、倫理研究では、内発的動機づけを特定することは、不正行為に対する研究者の予防接種に役立つとされている。

研究計画は、言葉が難解で、白楽は、内容を把握できない部分があった。誤解しているかもしれない。

研究計画は、さらに、この後、

従来の社会科学調査方法(traditional social science survey methodologies)とQ方法調査方法(Q-method survey methodologies)の両方でこの仮説を実験的にテストし、研究者の明示的および暗黙的な動機付け、同僚の倫理的不正行為の可能性に対する認識、および遭遇したときに発言する可能性を研究する。

などとある。白楽は、「Q方法(Q methodology – Wikipedia)」を十分理解できない。

誤解して記述すると読者を間違った方向に導いてしまうので、ジェイソン・ロバートの研究計画をここで端折る。研究計画を、要するに、ネカトの告発をためらう心理的要因の解析だと理解した。

《5》スザンヌ・リベラ(Suzanne Rivera) 

指導の強化による責任ある研究文化の育成
スザンヌ・リベラ(Suzanne Rivera , PhD., MSW、写真出典
ケース・ウェスタン・リザーブ大学(Case Western Reserve University)・研究担当副学長(Vice President for Research)、生命倫理・準教授(Associate Professor, Department of Bioethics, School of Medicine)、小児科・準教授(Associate Professor, Department of Pediatrics, School of Medicine)

過去3年間の採択研究費:1件

  1. NSF 2018 Standard EEC
    Planning Grant: Engineering Research Center for Human, Machine, and Network Functional, Symbiotic Integration On Neural Systems (Human Fusions)
    Tyler, Dustin; Zorman, Christian; Griswold, Mark; Rivera, Suzanne / Case Western Reserve University
    $100,000

過去3年間の出版論文(パブメド(PubMed)検索):7報。内、ネカト研究論文は?報

  1. Academic Advocacy: Opportunities to Influence Health and Science Policy Under U.S. Lobbying Law.
    Fernandez Lynch H, Bateman-House A, Rivera SM.
    Acad Med. 2020 Jan;95(1):44-51. doi: 10.1097/ACM.0000000000003037.
  2. A Belmont Reboot: Building a Normative Foundation for Human Research in the 21st Century.
    Brothers KB, Rivera SM, Cadigan RJ, Sharp RR, Goldenberg AJ.
    J Law Med Ethics. 2019 Mar;47(1):165-172. doi: 10.1177/1073110519840497. No abstract available.
  3. Reviving Human Research in Costa Rica.
    Householder M, Solano-López AL, Muñóz-Rojas D, Rivera SM.
    Ethics Hum Res. 2019 Jan;41(1):32-40. doi: 10.1002/eahr.500004.
  4. Reasonable Research Oversight: A Work in Progress.
    Rivera SM.
    IRB. 2017 Sep-Oct;39(6):15-19.
  5. What do revised U.S. rules mean for human research?
    Nichols L, Brako L, Rivera SM, Tahmassian A, Jones MF, Pierce HH, Bierer BE.
    Science. 2017 Aug 18;357(6352):650-651. doi: 10.1126/science.aan5855. No abstract available.
  6. Modernizing Research Regulations Is Not Enough: It’s Time to Think Outside the Regulatory Box.
    Rivera SM, Brothers KB, Cadigan RJ, Harrell HL, Rothstein MA, Sharp RR, Goldenberg AJ.
    Am J Bioeth. 2017 Jul;17(7):1-3. doi: 10.1080/15265161.2017.1328899. No abstract available.
  7. CTSA Institution Responses to Proposed Common Rule Changes: Did They Get What They Wanted?
    Rivera SM, Nichols L, Brako L, Croft G, Russo T, Tran T.
    J Empir Res Hum Res Ethics. 2017 Apr;12(2):79-86. doi: 10.1177/1556264617698606. Epub 2017 Mar 21.

20年以上にわたって大学は、構成員に「責任ある研究行為(RCR:Responsible Conduct of Research)」を教育するプログラムとカリキュラムを開発するよう期待されてきた。大学は、教員や研修生(院生・ポスドクなど)に研究公正の原則を教えるために、多くのプログラムとカリキュラムを開発してきた。しかし、これらの努力にも関わらず、過去に比べて、ネカト行為率は増加し、研修生(院生・ポスドクなど)は研究倫理の舵をうまくとるスキルを持てていない。採択研究では、「責任ある研究行為(RCR)」の知識を豊かにし、メンタリングとリーダーシップのスキルを向上させ、メンタリングされた研究者が大学全体の公正を高めネカトを減らす環境を作ることを目的としている。

ゴールは、(1)上級教員と若手教員のメンタリング・ペアを育成すること、(2)研究公正と研究チームの管理に関する詳細なグループ・ディスカッションを促進すること、(3)リーダーシップとメンタリング・スキルに焦点を当てた教訓的指導を提供すること、 (4)1年間のコホート経験を養成すること、(5)「責任ある研究行為(RCR)」の知識、および介入前後のメンタリングとリーダーシップのスキルに関する定量的データを収集することにより、介入の有効性を測定すること、(6)私たちの大学で使用する持続可能なモデルを作成すること、である。

私たちの大学での持続可能なモデルは、「責任ある研究行為(RCR)」のモデルとなる20人の参加者(10人の上級研究者、10人の若手研究者)を認定し、トレーニングする。各参加者が各研究グループ内の個人に影響を与えるので、結果として、約100人の教員や研修生(院生・ポスドクなど)にネカト教育が伝わる。さらに、参加した研究者と研修生は、生涯の研究キャリアを通して「責任ある研究行為(RCR)」を継続して指導するようになると想定される。

《6》ベン・ヴァッサー(Ben Vassar) 

出版後査読でのネカト・クログレイ指摘として、Twitter使用の評価
ベン・ヴァッサー(Ben Vassar PhD.なし(推定)、顔写真は見つからなかった)

オクラホマ州立大学(Oklahoma State University)の臨床助教授:行動科学(clinical assistant professor, Behavioral Sciences)

過去3年間の採択研究費:なし
過去3年間の出版論文(パブメド(PubMed)検索):0報

査読は研究界の特徴である。少数のケーススタディでは、Twitterは「編集者への手紙(letters to the editor)」よりも早くネカト・クログレイを指摘している。しかし、学術論文の査読にTwitterが使用されている程度は不明である。採択研究では、Twitterによるネカト・クログレイの指摘の質と量を調査し、Twitterを出版後査読として組み込む戦略を研究する。

長期的な目標は、ネカト・クログレイを特定することで研究論文を修正する出版後査読の改善である。研究公正局は、実際のネカト・クログレイは行為数に比べ、告発数が少ないと報告している。ということは、ネカト・クログレイ行為を発見する新たなメカニズムが必要である。予備的研究では、Twitterがネカト・クログレイの早期発見の道具になることを示している。採択研究は、Twitterを出版後査読として使用するための研究で、長期的な目的を達成するために、以下のゴールを設定した。

ゴール1:出版後査読としてのTwitterの使用の特徴分析。a)撤回日より前に論文撤回の理由を指摘しているツイート数を定量化する。 b)出版後の最初の批判から論文撤回までの平均日数を計算する。 c)ネカト・クログレイ関連のツイートのハッシュタグ(hashtags)と文章(mentions)を解析・評価する。 d)Twitterが特定した論文撤回理由のカタログ化。

ゴール2:撤回論文に関するTwitter投稿内容を分析し、出版後査読システムとしてのTwitterの役割を深く理解する。

《7》カレン・ゲレン(Karen Geren) 

大学の研究公正を評価するための研究環境の評価
カレン・ゲレン(Karen Geren PhD.なし、顔写真は見つからなかった)

ミズーリ大学(University of Missouri)・研究開発事務局・研究費申請運営担当(Pre-Award Manager)

過去3年間の採択研究費:なし
過去3年間の出版論文(パブメド(PubMed)検索):0報

米国政府の科学庁(NSF)・監査総監室(Office of Inspector General )によると、全米の大学のほぼ4分の1は、「責任ある研究行為(RCR:responsible conduct of research)」を遵守していない。さらに、研究集約型大学の5割以上は、「責任ある研究行為(RCR)」教育において推奨善行(recommended best practices)を取り入れていない。採択研究では、各大学の研究公正を評価するための信頼性の高いデータを収集し、改善が必要な部分を見つける。このことで、研究公正を効果的に促進する活動を開発し、研究公正に影響する組織の構造と作業を識別する。

この横断的研究では、全米の大学の研究環境の違いを定量化し、キャンパス全体およびキャンパス内での研究公正の不均一性または均一性を測定することも行なう。組織研究環境調査(Survey of Organizational Research Climate :SOuRCe)で、規範リーダーシップ、社会化、コミュニケーション、規則、手順、構造、および研究公正に対するリスクを特定するプロセスなどの研究公正環境を評価する。参加者は18,400人で、大学院生全員、ポスドク、研究関連者全員を含んでいる。

《8》デニス・ゴーマン(Dennis Gorman) 

公衆衛生研究におけるプロトコルと論文内容の不一致とPハッキング
デニス・ゴーマン(Dennis Gorman, PhD、写真出典
テキサス・エー・アンド・エム大学(Texas A&M)・教授・疫学と生物統計学(Professor of Epidemiology & Biostatistics)

過去3年間の採択研究費:なし
過去3年間の出版論文(パブメド(PubMed)検索):5報。内、ネカト研究論文は3報

  1. Commentary on Vassar et al. (2019): Cautionary observations on the pre-registration revolution.
    Gorman DM.
    Addiction. 2020 Jan 17. doi: 10.1111/add.14945. [Epub ahead of print] No abstract available.
  2. Use of publication procedures to improve research integrity by addiction journals.
    Gorman DM.
    Addiction. 2019 Aug;114(8):1478-1486. doi: 10.1111/add.14604. Epub 2019 Apr 17.
  3. Violent crime redistribution in a city following a substantial increase in the number of off-sale alcohol outlets: A Bayesian analysis.
    Gorman DM, Ponicki WR, Zheng Q, Han D, Gruenewald PJ, Gaidus AJ.
    Drug Alcohol Rev. 2018 Mar;37(3):348-355. doi: 10.1111/dar.12636. Epub 2017 Nov 22.
  4. A Systems Approach to Understanding and Improving Research Integrity.
    Gorman DM, Elkins AD, Lawley M.
    Sci Eng Ethics. 2019 Feb;25(1):211-229. doi: 10.1007/s11948-017-9986-z. Epub 2017 Oct 25.
  5. Has the National Registry of Evidence-based Programs and Practices (NREPP) lost its way?
    Gorman DM.
    Int J Drug Policy. 2017 Jul;45:40-41. doi: 10.1016/j.drugpo.2017.05.010. Epub 2017 Jun 1. No abstract available.

採択研究に2つの目標がある。

目標の1つ目は、公衆衛生研究中の行動科学・社会科学の研究プロトコルに含まれる情報と、その後これらの研究プロジェクトが出版した論文内容に一貫性があるかどうかを研究する。研究対象のプロトコルはBMC Public Health Webページの検索で特定した2011年と2012年の論文が用いた51個である。

目標の2つ目は、、これらの論文に報告されたp値を使ってp曲線を生成する。このp曲線の相対的な歪度から、pハッキングと逆pハッキングの程度を評価する。

《9》全体解析 

白楽が、上記8件の採択課題の全体を以下に分類した。

  • 課題:ネカト画像解析2件、ネカト告発3件、公正文化2件、Pハッキング1件
  • 男女:男性5人、女性3人
  • 学位:「PhDなし」が3人、「PhD所持」が5人。なお、PhDなしは、MD、JDなども所持していない
  • 地位:助教授2人、準教授2人、教授1人。事務局3人
  • 過去3年間の採択研究費:「なし」が5人、「あり」が3人
  • 過去3年間の出版論文(パブメド(PubMed)検索):「なし」が4人、「あり」が4人

●5.【関連情報】

今回の研究費募集:①:Announcement of the Availability of Funds for Research on Research Integrity – Federal Grant、②:View Opportunity | GRANTS.GOV

今回の研究費審査員:白楽は調べていない。審査員情報も重要なので、そのうち、調べよう(忘れてなければ)。

2018年採択課題:Awards Data 2018 | ORI – The Office of Research Integrity
2017年採択課題:Awards Data 2017 | ORI – The Office of Research Integrity
2016年採択課題:Awards Data 2016 | ORI – The Office of Research Integrity
2001-2018年採択Award Data | ORI – The Office of Research Integrity

●6.【白楽の感想】

《1》ガッカリ 

米国の2019年ネカト研究の採択者8人の力量を「《9》全体解析 」し、正直、ガッカリした。米国の人材はとても貧弱だ。

学位所持者をみると、PhDなしが3人(38%)もいる。8人の採択者の中に、過去3年間の採択研究費がない人が5人、過去3年間の出版論文がない人が4人もいる。こんな人に研究費を配分したら無駄になる可能性が大?

もちろん、学位がなくても、過去の実績がなくても、今後、優れた研究成果をあげる可能性は否定できない。しかし、確率は低いだろう。

申請数は公表されていないので採択率はわからないし、不採択の人たちの素性もわからない。採択者から推察するしかないが、今回の採択者には、実力のある申請者が少なかった(いなかった)、ということだろう。

ケチつけるつもりはないのだが、正直、ガッカリである。

米国の2018年以前の採択ネカト研究を調べていないし(そのうち調べる?)、ケチつけるつもりはないのだが、これらの採択課題と人では、う~ん、研究成果が得られても、ネカト防止に有効な施策が打てるという印象は薄い。

そもそも、ネカト防止界で活躍している人たちは誰も出てこない。

最初のメアリー・ウォルシュ(Mary Walsh)の実力を知らないし、ケチつけるつもりはないのだが(ケチつけてんじゃん、はい)、「画像法科学:画像複製の定量的評価」なら、エリザベス・ビック(Elisabeth Bik)を支援した方が世のためである。

ネカト防止にもっと有効な人・組織に国民の金を配布すべきだ。

《2》ガッカリ:その2

学問を基礎と応用に分けて考える。研究公正の研究も基礎と応用がある。研究費はその両面を支援したい。

となると、基礎は、ネカトの理論、実態の解明、など、従来とは違う視点での解析や、ネカトのデータベース構築などだろう。

基礎研究の悪い面を強調すると、ネカトを飯のタネに論文を書くことを主眼にし、本気でネカトを防止する気がない研究者が紛れてしまうことだ。また、ネカト防止の視点では役に立たず、少しズレた領域を面白がって深く分析する場合もある。

基礎の場合はそれでも良い。面白がって解析しているうちに、なんか独特の、そして、かなり重大な発見をすることは十分にあり得る(得た)。何も発見しないことももちろんあるけど(というか、その方が多い)、研究だからそれは仕方ない。

応用は、ネカト防止の方法の開発、施策の研究、ネカト・データの蓄積・利用法などの研究開発となる。

応用研究はネカト防止に有効な具体策を提示しなければならない。この場合、本気でネカトを防止する気で研究開発しないと、ことは達成できない。

今回の2019年採択ネカト研究をみると、ベン・ヴァッサー(Ben Vassar )のTwitterの導入は面白いと思ったが、全体的に、「ナルヘソ、これはイイゾ!」という研究が少ない。

《3》採択額

採択額は単純に平均すると1件、141,915ドル(約1419万円)/年となる。募集時に1件は10万ドル~15万ドル(約1000~1500万円)/年とあるから、事務的には妥当な額である。

しかし、研究する側としては、少なすぎではないのか? 

各採択課題の支出計画は公表されていないが、人件費が9割程度ではないのだろうか? それに旅費、消耗品などでカツカツだろう。潤沢にはほど遠い。つまり、大きな研究はできない・やる気もおこらない。設備も購入できない。

とはいえ、すべての研究プロジェクトの予算は上限がある。

今回の予算総額を1億円としたら、どう配分するのが適切か? 

500万円を20人に配分するのと、5,000万円を2人に配分するのでは、トータルの研究成果はどっちが多いのか? 

研究公正の研究では、各プロジェクト当たりの額をいくらにするのが、効率的なのだろうか? そういう研究がなされているのだろうか?

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、日本に飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

●8.【コメント】

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