白楽の卓見・浅見(1):2021年7月~

2021年7月24日掲載(210813追記)

いくつかの事件に共通な「白楽の卓見・浅見(たっけん・せんけん)」をここに集め、修正した。あるいは書き下ろした。

2021年7月24日~現在までの「白楽の卓見・浅見」(1)にxx項目記述し、これまでの「白楽の卓見・浅見」をxx項目にする。

すべての人の認識・主張は、その人の窓から見た景色に規定される。景色は自分の窓からしか見えない。それで、「白楽の卓見・浅見」は白楽の窓から見た景色だと、自戒を込めて窓の画像を載せた。

コメントは「8‐1.議論・情報・意見・提言・質問など」の「コメント」欄に、「卓見・浅見2について」など「卓見・浅見」に番号を付して記入して下さい。

【目次】

4.無関心なので日本の不正はなくならない
3.ノーベル賞受賞者の不祥事は多いと思うべし
2.ネカト事件の告発率を上げよ
1.悪行の2要素は「苗(なえ)」と「たんぼ」

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●卓見・浅見4【無関心なので日本の不正はなくならない】 2021年9月6日

白楽ブログでは、「ネカト・クログレイ・性不正・アカハラ」を研究者倫理として扱っている。

タイトルに「日本の不正」と書いたが、ここでの「不正」は、研究者倫理の不正を対象とする。

「日本の不正」はどうしてなくならないか? イヤイヤ、無くすのは無理だ。どうして減らないかだ。

根本的な原因は、日本の研究者がこれらの問題に「無関心」だからだ。

「無関心」、つまり、自分としては「不正」など、どうでもいい。しかるべき部署が適切に処理してくれているので、関心はない。

日本の研究者のほぼ99%(99.99%?)がそう思っているに違いない(データはないけど)。

研究者は、自分の周辺の不正を見つけようとしない。もし、不正を見聞きしても、通報しない。不正者を糾弾しない。

実際は、通報しても、当該大学が調査しないことがあり、調査しても甘い処罰しかしないと指摘されている。

これらも問題だが、多くの日本人研究者が「無関心」なら、根本的な問題として、不正の発覚はない。従って、当然、処罰はない。

ネカト防止の基本は、「必ず見つけ」、「必ず厳罰」することだ。しかし、「関心」が無ければ、最初の「発覚」に至らない。

「天網恢恢疎にして漏らさず」という「天網」はそもそも日本に存在しない。

文部科学省などを「天網」とみなすなら、「恢恢で疎なので」、ダダ漏れしている。なお、誤解するといけない。不正を「発見」するのは文部科学省の業務ではない。

不正に遭遇した各研究者が通報しなければ、不正は全く発覚しない。不正を見つける「しかるべき部署」は、日本には存在しない。現在の法的制度では、警察・検察・日本学術会議は動かない。

不正防止での「関心」の重要性は、既に、『情報の科学と技術』66巻、 2016年3月号「研究倫理」特集の「海外の新事例から学ぶ「ねつ造・改ざん・盗用」の動向と防止策」に書いた。

しかし、2021年現在も、つくづく、研究者倫理の不正を改善するのを阻む日本の最大の障壁は、研究者の「無関心」だと思う。

★ネカト

例としてネカトを取り上げる。

日本の大半の研究者は、日本のネカト対策の現状に無関心である。

ネカトに対して怒らない。撲滅するよう発言・行動しない。ネカト取り締まりを強化すべきだと思っていない。思っているかもしれないが、主張しない。大きな不満がない。改革の熱気はない。

これらは、調査データがないので正確にはわからないが、調査データないという現実も「無関心」の証拠である。ネカト問題を研究する専門の研究者はいない。学術研究者の関心がないということだ。

つまり、自分の大学の同僚教員が論文盗用の疑惑を受けても、調査を強く要求しない。結果として盗用と判定されても、盗用者を糾弾しないし排除もしない。

ネカト者への処分は停職程度(解雇もある)なので、処分を受けても、停職期間が終わると大学の職場に復帰する。このことに、何も不満・不快を表明しないし、異常だとも言わない。

論文データをねつ造した研究者が同じ学会で研究発表していても、ねつ造者を糾弾しないし排除もしない。何も不満・不快を表明しないし、異常だとも言わない。

日本の学術研究者は不正に寛容なのか? 

そうも言えるが、そもそも、自分は関係ない。自分の責任下・管理下にない。つまり、「無関心」である。

米国では、基本的に、ネカト者は研究界から排除される。その圧力は、研究者が不満・不快を表明し、異常だとも言い、ネカト者を排除する意向があるからだ。

なお、他の先進国も米国と同等の場合と、そうでない場合が混在していて、国際的には統一的されていない。

ただ、欧州はネカトに関する会議をそこそこ開催し、しっかりしたガイドライン・論文を発行・出版し、ネカトに対する関心は高い。

つまり、米国、欧州は研究者のネカトへの関心はかなり高い。

日本は、毎年、数十件のネカト事件が起こっているが、研究者がそれに対して強い発言をしない。強いどころか、ほとんど発言しない。「無関心」だからだ。

大騒動になった例外はある。

2014年の小保方晴子事件である。

この場合の発言は、ネカト事件に対する研究者の関心ではない。

小保方晴子はアイドルで、アイドルのスキャンダルという芸能ニュースとして騒がれた。研究絡みのスキャンダルだったから、研究者もテレビや新聞・雑誌でコメントした。ブログで発言した。理研に抗議の電話をし、メールを送った。

しかし、アイドルの芸能ニュースなので、あれほど大きく騒いでも、データねつ造・改ざんや盗用に対する中身や制度の議論はほとんど実らなかった。言い方に語弊があるかもしれないが、お祭りのように騒いで、興奮し、楽しかった、で終ってしまった。

事件が沈静化してみると、事件から学ばず、ネカト対策で何の改善も見られなかった。お祭り騒ぎが終わって、人々は次のエンターテイメントに移っていっただけである。

★性不正・アカハラ

例として性不正・アカハラを取り上げる。

これも、自分の大学の同僚教員が性不正・アカハラの疑惑を受けても、調査を強く要求しない。結果として性不正・アカハラと判定されても、性不正・アカハラ者を糾弾しないし排除しない。

処分は停職程度(解雇もある)なので、処分を受けても、停職期間が終わり大学の職場に復帰することに、何も不満・不快を表明しないし、異常だとも言わない。

性不正・アカハラした男性研究者が同じ学会の懇親会でワイン片手に若い女性院生に話しかけてきても、拒絶しない。何も不満・不快を表明しないし、異常だとも言わない。

自分の最愛の娘が旧帝大に入学し、研究者を目指していたのに、研究室のスケベ教授にレイプされ、自殺した。それで、両親は激怒しスケベ教授を刺殺した、などという話しは日本では聞かない。

自分の自慢の息子が旧帝大に入学し、研究者を目指していたのに、研究室の極悪教授にアカハラされ、自殺した。それで、両親は激怒し極悪教授を裁判に訴えた、などという話しも日本では聞かない。

一方、中高生だと、どういうわけか、イジメられて自殺した場合、両親は激怒し、適正な調査を要求し、裁判に訴える。マスメディアも騒いで事件を煽る。

中高生と大学生の違いは何なんだろう? 大学生だと、両親やマスメディアは、なぜ激怒しないのだろうか?

インドだと、不正に対峙する学生たちが反対デモをするケースがいくつもあった。マスメディアはそれを記事に取り上げる。

例えば、以下は2018年にジャワハーラール・ネイルー大学のアトゥル・ジョリ教授(Atul Johri、微生物学)の性不正に対する学生たちの反対運動の動画である。

学生自治会のアディティ・チャテジー(Aditi Chatterjee)の叫び声に合わせたシュプレヒコールが、音楽イベントのようで、見ていて(聞いていて)見事である。 

2021年9月6日に見たら、動画は削除されていた → https://www.youtube.com/watch?v=0Y3Ni_apkTc

2021年9月6日、代わりに学生たちの反対動画を以下に示す(2018/03/23動画掲載)。

米国だと、不正に対峙する学生たちが不正教授の大学への復職に反対する抗議活動を繰り広げるケースがいくつもある。マスメディアはそれを記事に取り上げる。

日本は皆無である。

日本の場合、性不正・アカハラの被害を受けた学生の両親は不正に寛容なのか? 

いやいや、両親は「無関心」とは思えない。では、なぜ抗議しないのだろう?

日本の場合、性不正・アカハラの被害を受けた学生の所属する大学生は、加害教授の授業を受けたり、卒論・修論・博論指導を受けるのに不安を感じないのだろうか? 不快に思わないのだろうか? 教授の学識と人格は別としても、そのような加害教授の学識を尊敬して学べるのだろうか? 

いやいや、大学生は自分が次の犠牲者になるかもしれない不安があるハズだ。性不正・アカハラの加害教授の指導を受けるのに生理的に拒否反応が出てもおかしくない。では、なぜ抗議しないのだろう?

被害学生自身が損害賠償を求め、裁判を起こした例はあるが、大多数ではない。

両親やマスメディアや学生が表立って抗議しない「無関心」は、研究者の「無関心」へとつながる。

そして、日本の研究者も同僚研究者の性不正・アカハラに寛容なのだ。自分とは関係ない、自分の責任下・管理下にないとして、「無関心」だ。

★どうするか?

日本の「ネカト・クログレイ・性不正・アカハラ」を減らすには、この問題に対する研究者の「無関心」を、「関心」の方向に変えていくことが重要だと思う。

では、どうすれば「関心」の方向に変えていけるのか?

この問いに、ナサケナイケド、白楽、まともな答えをもっていない。

まともな答えではないと知りつつ、答えると、以下のようだ。

日本の研究者がこれらの問題に「無関心」であることが、問題改善への根本的な障害である。この「無関心」であることを、日本の研究者自身に認識してもらう。それが第一歩だ。

それで、ここに、この文章をしたためた。

 

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●卓見・浅見3【ノーベル賞受賞者の不祥事は多いと思うべし】 2021年8月3日(210906追記)

小野薬品工業を訴えているノーベル賞受賞者の本庶佑(ほんじょ たすく)の主張は常軌を逸している。「はした金だ」と一蹴しておいて、後になって、文句を付ける。傲慢。ただ、世間はノーベル賞受賞者だからと本庶佑の味方になっているようだ。 → 2021年9月2日記事:オプジーボ訴訟詳報① ノーベル賞受賞者・本庶氏「私がいなければ米製薬会社との訴訟勝てなかった」(産経新聞) – Yahoo!ニュース

しかし、以下が正論だと思う。

1%のライセンス料率を合意した契約の成立自体は争わないが、特許料の一般相場等の情報を知らないまま、不当に安いライセンス料率を認めさせられたのだという主張をしています。

立派な成人が契約書を締結しながら、後で「こんなはずではなかった」と契約を無かったことにしようというのは、客観的に見て無理筋です。(2019/04/12記事:オプジーボ特許料問題 交渉戦術の選択に残る2つの疑問 – サインのリ・デザイン

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以下は、「卓見・浅見3」は「グレッグ・セメンザ(Gregg Semenza)(米) | 白楽の研究者倫理」をベースにしている。

日本社会はノーベル賞受賞者を人格高潔で万能な超人扱いをする。

ノーベル賞受賞者だけでなく、文化勲章など著名な賞を受賞した非常に優れた人は人格高潔で万能である。悪人はいない、というわけだ。[なお、ここでは顕著な研究成果をあげた例を、代表格のノーベル賞で通すが、他の著名な賞、顕著な研究成果も同じである]。

だから、ノーベル賞受賞者がデータねつ造・改ざんや論文盗用などするわけがない。セクハラも全くしないし、アカハラなどはあり得ない。と、日本人と日本社会(メディア・行政)は思っているようだ。

そこまで断言しなくても、ノーベル賞受賞者の不祥事は極めてまれと思っているようだ。

ノーベル賞受賞者が 厚顔無恥で傍若無人な言動 をしても、日本社会は、好意的、あるいは大目に見るように白楽は感じる。

単に有機化学の専門家だけなのに、国の教育再生会議の座長をしてしまう野依良治というノーベル賞受賞者がいた。

有機化学の専門家であって教育は素人でしょうに、その人に、国の教育方針を任せる官僚の見識を疑うし、引き受ける野依の見識も疑う。

いちいち挙げないが、しかし、超人扱いの例はたくさんある。

では、ノーベル賞受賞者は研究成果だけでなく研究公正も優れているのだろうか?

白楽は否定的である。

科学的業績と規範的言動は、基本的に、全く別である。

あえて言えば、科学的業績を上げるためにアクドイことをし、その業績を他人に認めさせるためにエゲツナイことをしないと、大きな賞をはもらえない。

「あえて言えば」と、多く人の尊敬を集めている受賞者の、「あえて」、負の側面を強調誇張した。強く言わないと人々は今までの自分の価値観を変えないからだ。

普通に考えてわかると思うが、激しい研究競争を勝ち抜くのに、謙譲は美徳にならない。マイナスである。温厚な性格では無理だ。

結果として、ノーベル賞受賞者は自己主張とズル賢さが人一倍強く、ネカト・クログレイはギリギリという研究者が多い、と思う。この表現も負の側面を述べたが、誇張はしていないつもりだ。

何度も言うが、ノーベル賞は研究者の研究規範行動や人格・教養・人間性が優れていると評価されたわけではない。

人間は、周囲が特別扱いをすると、自分は特別だと思い、社会ルールからはずれても許容されると思うようになる。

もちろん、ノーベル賞受賞者には規範に優れた人もいる。しかし、全体的には、研究界全体の平均と比較すれば平均以下だろう(データはないと思うが)。

誤解しないでもらいたい。ノーベル賞受賞者の研究成果は素晴らしい。これは間違いない。いくら強調しても、し過ぎない。

ネガティブに聞こえる人には、申しわけないが、ただ、ネカト研究者の白楽としては、その上で、それと人間性・規範行動は別に考えて欲しいと言いたいのだ。

今まで白楽ブログではノーベル賞受賞者の不祥事絡みの記事を6件取り上げた。

  1. 盗博:宗教学:キング牧師(Martin Luther King Jr.)(米)
  2. 「間違い」:ジャック・ショスタク(Jack W. Szostak)(米)
  3. 「性的暴行」:カールトン・ガジュセック(Carleton Gajdusek)(米)
  4. 化学:フランシス・アーノルド(Frances Arnold)(米)
  5. グレッグ・セメンザ(Gregg Semenza)(米)
  6. 「性不正」:文学:デレック・ウォルコット(Derek Walcott)(米)

しかし、他にも問題者(含・研究公正以外)は以下のようにたくさんいる(網羅していない。順不同)。

研究者平均でカウントすると、データはないのだが、ノーベル賞受賞者の不祥事は多いと思う。

  1. ウィリアム・ショックレー – Wikipedia
  2. アレクシス・カレル – Wikipedia
  3. ロバート・ミリカン – Wikipedia
  4. ジェームズ・ワトソン – Wikipedia
  5. リンダ・バック – Wikipedia 
  6. マイケル・ロスバッシュ – Wikipedia
  7. ブルース・ボイトラー – Wikipedia
  8. ダニエル・カーネマン – Wikipedia
  9. ポール・ナース – Wikipedia
  10. ルイ・イグナロ – Wikipedia
  11. マーティン・エヴァンズ – Wikipedia
  12. フレイザー・ストッダート – Wikipedia
  13. ジョン・マザー – Wikipedia → 言いがかり?:blackbody.pdf
  14. ハラルド・ツア・ハウゼン – Wikipedia → Nobelist Harald zur Hausen and the Scamferences – For Better Science

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●卓見・浅見2【ネカト事件の告発率を上げよ】 2021年7月23日

「卓見・浅見2」は「アール・ロバートソン(Erle Robertson)(米) | 白楽の研究者倫理」をベースにしている

まさか、読者の中に、日本の文部科学省や大学がネカト(ねつ造・改ざん・盗用)を独自に摘発していると思っている人はいないと思うけど、大丈夫ですよね。

米国だって、研究公正局が自発的にネカトを摘発・調査しているわけではないのも、OKですよね。

第三者機関の調査は望ましいけど、日本には第三者機関の調査はない。米国の研究公正局も第三者機関としてネカト調査してはいない。わかってますよね。

現在、米国では、ネカトの発覚・対処の平均的な進み方は以下のようだ。[ ]は特殊なケースである。

  1. 発見:ネカトハンター、または、ネカト遭遇者がネカトを見つける。
     ネカト遭遇者は、たまたま自分または自分の周囲(研究室の同僚・指導者・室員、共同研究者、読んだ論文など)でネカトを見つけた人である。
     大学の研究公正官(各大学に1人必須)やネカト調査員がネカトを見つけるわけではない。ネカトの発見は非常に重要だが、個人の趣味というか、ボランティアというか、とっても脆弱なシステムに依存している。
     → 公的システムをつくるべし
  2. 告発:第一次追及者は、パブピア(PubPeer)でネカト箇所を指摘し、同時に、論文を掲載した学術誌とネカト疑惑者の所属する大学に通報する。
     [①自分でウェブ上に公表、②自分でツイッターなどの社交メディアで公表、③情報提供しネカトハンターのブログ記事に掲載してもらう、などのケースもある]
     被盗用者の告発率はもっと高いと思われるが、ネカト遭遇者の内の2~10%(?)しか告発しない。告発したネカト遭遇者とネカトハンターを第一次追及者と呼ぶ。
     → 2~10%と言われているので、大半は見逃されているのが現実
  3. 調査:所属大学が調査する。クロなら、①ネカト者を解雇(辞職)などの処分をする。②学術誌に論文撤回の要請をする。③研究助成機関に報告する。④調査結果を発表する(しない場合もある)。
     [FBIなどが調査し、その後、裁判、となることもある]
  4. 研究助成機関:生命科学系なら研究公正局が大学調査の認定作業をし、クロなら連邦政府の官報にネカト内容とネカト者を実名で公表する。助成金申請禁止の処分を科す。
     なお、研究公正局はほとんどの盗用を調査対象外としている。
  5. 論文撤回:大学または著者からの要請を受け、学術誌は論文を撤回する。
     学術誌に論文撤回の告知を掲載し、撤回理由も記載する。論文はウェブ上から削除せずRETRACTED」と赤字の印をつける。
     [編集部・編集長が独自に判断し、著者の反対を押し切って撤回する場合もある]。
  6. メディア:「撤回監視(Retraction Watch)」が論文撤回をウェブ記事にする。「Scientist」誌、「Science」誌などの研究メディア、ニューヨーク・タイムズ紙、地元の新聞、当該大学の大学新聞など産業メディアも記事にすることがある。
     白楽ブログなど個人がウェブで取り上げる。
     [まれにテレビ・ニュースで放映される]。
  7. 裁判:極端な場合、裁判となる

ここで、大きな問題は2つある。

1つは、上述したように「1」「2」のネカト発見・告発は、「個人的趣味というか、ボランティアというか、とっても脆弱なシステムに依存している」点である。

米国でもこの点は大きな問題だが、日本にはネカトハンターがいない。また、ネカト遭遇者の日本の告発率のデータないので推測になるがかなり低いと思われる。

日本政府はこの点を改善すべきだ。つまり、ネカトハンターの活動を育成する。そして、ネカト遭遇者の告発率を上げる。

もう1つの問題は、「3」の調査である。大学は公正にネカトを調査し、正確な調査結果を公表している、と多くの米国人は信じている気がする。

公正に調査し正確な結果を公表するのは、当然のことながら、国民への説明責任である。

しかし、米国の大学は日本ほどではないが、そこそこ隠蔽する。

★ 日本の事情

以下、日本の実態になるが、日本には大学のネカト調査(とその報告書)をチェックする人・システムがない。

思うに、日本の大学はネカト調査で隠蔽し放題である。

だから、非常に低劣な調査(とその報告書)からまともな調査まで混在している。誠実に熱心に調査し、まともな調査報告書を公表しても何も褒めてもらえない。

調査にはかなり能力の高いヒト・カネ・エネルギーがかかるので、それで、バカバカしくなる。

バカバカしくなれば、「悪貨は良貨を駆逐する」ので、大学の調査(とその報告書)は悪くなる。調査(とその報告書)を研究したデータがないので、ここは印象だが、悪くなる一方の気がする。

米国の話から日本の話に流れてしまった。日本の実態は、別途「白楽の卓見・浅見」で述べた方がいいですね。

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●卓見・浅見1【悪行の2要素は「苗(なえ)」と「たんぼ」】2021年7月23日

★はじめに

2014年、ネカト・クログレイを対象に白楽ブログを始めた。

ネカト・クログレイは、研究規範の問題なので、「研究規範」として扱った。研究上のエシックス(ethics)だからだ。エシックス(ethics)は、研究という業界の中で研究をする場合の掟、基準、ルール、善悪、約束だ。

しかし、日本全体は「研究倫理」という言葉が使われていた。「研究倫理」だと、研究上のモラル(moral)で、そのニュアンスは、 道徳、品格、エチケット、マナーである。

上記の分類でいえば、欧米が問題にしているのはエシックス(ethics)であってモラル(moral)ではない。

それで、白楽は、「研究規範」でしばらく通したが、日本での受けが良くない。仕方なしに、「研究倫理」を使った。

2018年頃から、米国で性不正・アカハラも研究者の規範に取り入れる動きが始まった。

それで、白楽ブログも、性不正・アカハラを扱うことにした。

性不正・アカハラは研究上の不正行為ではない。研究者という人間の不正行為である。

この場合もエシックスと扱うべきだが、言葉はモラルである。

それで「ネカト・クログレイ・性不正・アカハラ」を合わせて研究者倫理とした。

★悪行の2要素

研究者倫理違反に対処するには、これら悪行を起こす状況の把握が重要である。

悪行の2要素を稲の生長に例えて「苗(なえ)」と「たんぼ」としよう。「タネ」と「土壌」、あるいは、「遺伝子」と「環境」でもいいが、「タネ」や「遺伝子」という遺伝的素因に初期の発育も加えた苗木の方が適切である。

苗(なえ)」は、籾(もみ)をまき、育苗箱で育て、田植えするまでで、研究者の人生では、子供が育ち、研究界に触れる・入る前、つまり、大学学部2年生くらいまで、約20歳までだ。この時期に受けた家庭の教育・しつけ、そして、人格形成期の教育・友人・社会情勢などで形成される生来の性格(personality traits)が重要である。この生来の性格(personality traits)がベースとなって、研究者個人の人間性・性格・気質・価値観などその人特有の性情が決まってくる。生来の性格(personality traits)は、一度形成されると、変えるのが難しい。

たんぼ」は、「苗(なえ)」が田植えされて稲に育つ土地である。植えられた稲(「苗(なえ)」)はその「たんぼ」の栄養・日照・水利・風光などの影響を受けて育つ。肥料や雑草取りなど育成者の手間暇でも育ちは異なる。師が、情熱を注ぎ、研究資金・時間・手間をかけて、学生・院生を育てる。師が研究の規範を示すことで伝える研究倫理教育もここに含まれる。しかし、研究を実施する研究室や大学、もっと大きくは、その国の研究システム、さらには社会システムなど、制度的な枠がガッチリと研究活動を規定する。その時代の学術システムの中でしか研究者は研究できない。研究者個人としては、ほぼ、変えがたい。

だから、

院生(「苗(なえ)」)によって性情が異なるので、同じ研究室の中にいてもネカトをする院生としない院生がでてくる。

国によって「たんぼ」が異なるので、ネカトが多い国と少ない国がある。

★対処

「苗(なえ)」が主原因で悪行をした研究者は、「たんぼ」を変えても、研究者倫理の再教育をしても、うまく育たない可能性が高い。

本人も自分の性情と合わない世界、研究者倫理違反の前科者として同僚・仲間から白い目で見続けられる世界で生きることは不幸だと思う。

研究界から排除すべきである。

正確なデータはないが、研究者倫理違反者の再発頻度は高い。

白楽がこの白楽ブログで伝え・考えたいことは、「苗(なえ)」にも言及するが、基本的には日本の研究者倫理(研究者規範の方がしっくり)の「たんぼ」(「土壌」「環境」)を改善したいということだ。

日本の研究者規範の「たんぼ」(「土壌」「環境」)を改善したい。

日本の皆さんの力をお借りして、一歩でも(イヤイヤ、大規模に、徹底的に、トコトン)改善したい。

日本はかつて、「嘘をつかない」「悪いことはしない」「約束は守る」「義理人情に厚い」「親切で」、精神世界で優れた国だった。それが今はカネまみれ、ウソまみれ。

国のトップである首相が平然と国民をダマし、嘘をつく。国を動かす官僚も保身に走り、国民をダマし、嘘をつく。

そして、あろうことか、学者まで、データねつ造・改ざんをし、他人の文章を盗用して論文を書く。また、それを指摘されてもとがめない。 → 5C 名古屋大学・博士論文の盗用疑惑事件:③ 疑惑の証明 | 白楽の研究者倫理

さらには、自分を慕って研究室にきた女性院生の胸を揉み、男性院生を奴隷のようにこき使い・罵倒する。

こういう現実を変えたいんです。

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、日本に飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。