白楽の卓見・浅見(1):2021年7月~2022年3月

2021年7月24日掲載(2022年5月18日更新)

いくつかの事件に共通な「白楽の卓見・浅見(たっけん・せんけん)」をここに集め、修正した。あるいは書き下ろした。

2021年7月24日~2022年3月5日までの「白楽の卓見・浅見」(1)に10項目記述し、これまでの「白楽の卓見・浅見」を10項目にした。

すべての人の認識・主張は、その人の窓から見た景色に規定される。景色は自分の窓からしか見えない。それで、「白楽の卓見・浅見」は白楽の窓から見た景色だと、自戒を込めて窓の画像を載せた。

コメントは「8‐1.議論・情報・意見・提言・質問など」の「コメント」欄に、「卓見・浅見2について」など「卓見・浅見」に番号を付して記入して下さい。

【目次】

10.研究費制度の改革を振り返った。〇〇さんを国会議員に
9.日本の大学教授は研究不正をただす気があるのだろうか?
8.タクシー・ドライバー理論
7.国別ランキングで見る日本の研究者倫理
6.大学の隠蔽体質を変えないと日本の研究者倫理事件は減らない
5.日本語破壊:ノーベル生理学・医学賞? 医学生理学賞?
4.無関心なので日本の不正はなくならない
3.ノーベル賞受賞者の不祥事は多いと思うべし
2.ネカト事件の告発率を上げよ
1.悪行の2要素は「苗(なえ)」と「たんぼ」

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●白楽の卓見・浅見10【研究費制度の改革を振り返った。〇〇さんを国会議員に】 2022年3月5日

日本のネカト対策を大きく前進させるにはどうすべきなのか、何年も考えているが、なかなか決定打が浮かばない。

どうしたらよいのか?

今回、参考になるかもと思って、かつて、白楽が日本の研究費配分の改革に絡んだ時のことを振り返ってみた。

社会が21世紀に変る少し前、今から、27年前のことだ。

1995年、白楽は、文部科学省・在外研究員制度で、米国・NIHで、米国の研究費配分の実態を学んだ。

ポスドク時代の友人(米国人研究者)に紹介してもらい、米国・NIH・国立がん研究所(NCI)の研究費配分局にプログラム・ディレクター相当として、5か月滞在した。

帰国後、この経験を本『アメリカの研究費とNIH』にまとめ、2016年に出版した(表紙出典はアマゾン)。

米国の研究費配分の実態を解説した文章・論文・著書は、それまで、日本に全くなかったこともあって、大きな反響を呼んだらしい。

白楽本人は、反響をよくわかっていなかったが、まず、講演の依頼がたくさん来た。

学会や大学の研究者向けの講演だけでなく、大企業の社長・会長みたい偉い人が8人ほどの会(経団連ではないと思うが、把握していない。製薬企業?)、経済産業省での講演など、特殊な講演もした。

ただ、文部科学省からの講演依頼はなかった。とはいえ、ある講演会で研究費問題の講演をした時、講演終了後、文部科学省の研究費担当の課長(?)から「余計なことをするな!」と恫喝された。「官僚の仕事をするな!」ということらしい。

そういう恫喝もあったが、この本が契機となって、日本はその後、数年かけて、科研費制度を改革した。

★政治家と官僚

白楽は、当時・参議院議員だった林芳正さん(現・外務大臣)に呼ばれ、自民党議員・閣僚・省庁の局長を相手に自民党本部で2度、演説をした。

その時、尾身幸次・大臣(当時・科学技術政策担当大臣。現在の尾身朝子・議員の父親)にそそのかされ、文部科学省の局長をやり込めてしまった(反省してます)。

内閣府と経済産業省の偉い官僚が部下を連れて、何人も何回も、お茶の水女子大学の白楽研究室にやってきて、日本の制度設計へのアドバイスを求めた。

白楽の著書『アメリカの研究費とNIH』は霞が関のバイブルと呼ばれていた(来室した官僚がそう言っていた)。

白楽は、あまりにも来訪者が多いので、応対するのはイヤだった。メディア記者や民間企業の偉いさんは何回か断った。断ると激怒する人もいた。

内閣府の偉い官僚は、「多額の研究費を配分するから」と言って、部下を連れてきたが、その後、研究費は配分されなかった。マーいいけど。

ただ、自民党本部で文部科学省の局長をやり込めたためか、それまで適当に配分されていた文部科学省系列の研究費はプツリと配分されなくなった。報復されたのだと、今でも思っている。

エピソードも聞いた。

日本の多数の官僚が何回も渡米し、研究費配分の担当者(白楽の知人)にインタビューした。何度も来て、同じ質問をする。その内の何回かは、米国側担当者が次のように対応したとの話だ。

米国の担当者は日本人官僚たちと握手して、席に就く。紹介が終わり、日本の官僚が研究費配分について質問をする。すると、米国の担当者はニコッと微笑んで、「君ね、とても優れた資料があるんだよ」と言った。そして、机の引き出しから取り出したのは、ナント、白楽の『アメリカの研究費とNIH』だったとさ。

このエピソードは数人の官僚から数回聞かされた。

★メディア

新聞記者からの取材も数回受けた。以下に読売新聞の記事を2つ示す

1本目の記事は小泉成史記者の記事である。

2本目の記事は館林牧子記者の記事の一部である。該当部分を切り取った。

★学術研究者

その後、白楽は、当時・参議院議員だった林芳正さん(現・外務大臣)と文部科学省・ライフサイエンス課長だった戸谷一夫さん(後に、文部科学事務次官)に生化学会で講演していただいた。

その講演は、日本生化学会・研究体制検討委員長の山村 博平・神戸大学医学部・教授と神戸大学医学部の榎木 英介さんと一緒に企画したものだが、白楽は、ワクワクしながら準備した。

以下はその様子を2004年の学会誌「生化学」に掲載した時のゲラ校正の3部分である(最終版のコピーを取り忘れた)。

そして、その時配布した宣伝用チラシである。こっちの方が内容がよくわかる。

山村 博平委員長と榎木 英介さんと共に、結構気合を入れて、林芳正・議員と文部科学省・戸谷課長を生化学会に引っ張り出した。

しかし、山村 博平委員長以外の生化学会の多くの役員は、林芳正・議員にも文部科学省・戸谷課長にも、そして、日本の国家レベルのバイオ研究政策にも関心がなかった。

だからなのか、会場にも来ないし、林芳正・議員にも冷たかった。

例えば、白楽が「林芳正・議員への講演謝礼をどうしますか?」と会計担当役員(山村 博平委員長とは別人)に聞いたら、「政治家は受け取らないから」と1円も払ってくれなかった。

仕方がないので、招聘した白楽は自腹で〇〇万円の寄付をした。

白楽が、生化学会と政治家のパイプを作っても、生化学会はそのパイプを生かすつもりも、度量もなかったのだ。

数年後、再度、別の話題の研究政策シンポジウムを生化学会で企画した。最初、返事は良かったので、進めたが、途中で横やりが入り、中止となった。

★まとめ

話しが長くなるので、端折るが、

この時、数年で、日本の研究費制度は大きく変わった。

研究費制度の改革で動いたのは、白楽視点では、①共立出版社(『アメリカの研究費とNIH』の出版)、②自民党の議員、③内閣府・経済産業省・文部科学省の官僚、④新聞記者(読売新聞に記事掲載)、⑤研究者(講演会を開催)、だった。

日本学術会議からは何も打診がなかった。

生化学会を含め、学術研究者は重要な貢献をしていない。むしろ、制度改革に冷たい人が多かった。

偉い学術研究者に打診しても、偉い学術研究者の多くは、自分がもっと多くの研究費を得られるかどうかしか関心がなかった。

ただ、ある官僚が、当時、内閣府・総合科学技術会議・議員だった井村裕夫(いむら ひろお、京都大学・元総長)さんから指示を受けて白楽に会いに来たと言った。井村裕夫さんが重要な役割を果たしたのかもしれない。

白楽は『アメリカの研究費とNIH』で、余り意識せず、日本の研究費配分制度の基本構想を示したことになったようだ。でも、自分では、流れに流されただけで、自分が研究費制度を動かしたとは思っていない。

では、この研究費制度の改革は、誰がどう動かしたのか?

わからない。

白楽が仕掛けた、あるいは、作曲したらしいが、総指揮者は誰だったのか、わからない。

研究費制度の改革での総指揮者はわからないが、科学政策に詳しく官僚・メディアを動かせる人が、1つのポイントだったと感じている。

話しは急に2022年3月の現在になるが、というわけで、科学政策に詳しい〇〇さん、国会議員になりませんかね。

なお、林芳正・議員は当時も岸田文雄・議員(現・首相)と仲良しだったので、白楽は、パーティで岸田文雄・議員(現・首相)とも会って、お話ししました(写真は・・・?)

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●白楽の卓見・浅見9【日本の大学教授は研究不正をただす気があるのだろうか?】 2022年2月12日

白楽は長いこと確信しているのに、大多数の人は「まさか、そんなことはあり得ない!」というのが、この質問への答えだ。

白楽の答えは、「ただす気はない」。

大多数の人の答えは、「ただす気があるに決まっている。ないなんてあり得ない!」。

もちろん、研究不正をただす気がある大学教授はいる。しかし、かなり少数派である。データはないけど、多分、1%以下である。

白楽は、「ただす気はない」ではなく、多くの大学教授は、もっと悪い方向の「ネカトを積極的に隠蔽し、告発者を抑圧する」と理解している。

最初にお断りするが、本記事は、多くの大学教授は「ネカトを積極的に隠蔽し、告発者を抑圧する」点を理解してもらうために、この主張を強調して書いている。

最終的には、ご自分で適当に中和して頭の中に収めてください。

[本記事では、教授、准教授・講師など大学教員全部を含めて、教授とした]

★人間は観念に縛られる

「大学教授は清く正しい」
「大学教授は知識・教養があり人格も人間性も優れている」

と、多くの日本人は思っているようだ。

多くの人は上記の観念に縛られ、「大学教授は研究不正をしない」と思っているらしい。

その延長で、「大学教授が研究不正をただすのは、当たり前」と思うようだ。

人々が思い込んでいる価値観をはがすのは、とても難しい。

でも、言うしかない。

大学教授は「自分の専門分野について詳しい」だけである。

大学教授も八百屋さんもタクシー・ドライバーも「自分の専門分野について詳しい」だけということは、タクシー・ドライバー理論で説明した。 → ●白楽の卓見・浅見8【タクシー・ドライバー理論】

★目の鱗

「日本の大学教授は研究不正をただす気がない」のを、どう説明すると、「なるほど、そうですね」と、大多数の人に腑に落ちてもらえるのか、目の鱗を取ってもらえるのか?

これは極めて難しい。

白楽が思いつくもっとも有効な方法は、自分で実感してもらうことだ。

是非、「研究不正を見つけたので告発します」と大学に告発してみよう。

[白楽註:よい子のみんなは、面白半分ではしないように。ここは、説明のための例示です]

ほぼ全ての大学にネカト告発受理窓口がある。匿名でも受け付ける。無料である。

告発の材料は、「日本のネカト・クログレイ・性不正・アカハラ事件一覧」の【日本の研究者のネカト・クログレイ事件一覧】を「パブピア」で検索すると、日本人研究者の不正疑惑が幾つもヒットする。最近の疑惑は、まだ大学がネカト調査をしていない。

告発の準備をすると、まず第1点、告発しにくいシステムにぶつかる。つまり、「研究不正をただす気がない」からなるべく告発しにくいシステムにしている。

あなたが時間とエネルギーを使って、大学教授の研究論文に間違いや不正があると、好意的に、大学に教えてあげたとしましょう。

大学は、「好意的に、教えてくれた」自大学の研究者の不正疑惑について、教えてくれたあなたに感謝することは、マズ、ない。

むしろ、あなたが「好意的に、教える」行為を脅す文言がある。これは、文部科学省が各大学に次の文言を示すように指示しているからだ。

調査の結果、悪意に基づく告発であったことが判明した場合は、氏名の公表や懲戒処分、刑事告発があり得る(出典:研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン(平成26年8月26日文部科学大臣決定)の13頁の④)

研究不正者は調査の結果、クロと判定されても刑事告発されないのに、「好意的に、教えた」人は、まかり間違えば、懲戒処分や刑事告発される。尋常じゃない脅しぶりである。

不正「疑惑」ぐらいでは通報できない。不正を「確信」できるレベルではないと、「好意的に、教える」ことはできないだろう。

ここで、言葉の変更をする。文部科学省や大学は、「好意的に、教える」行為を「告発」と呼んでいるので、以下、「告発」に言い換える。

第2点、あなたの告発が大学に受け付けられたとしても、予備審査で「不正ではない」と返事してくる。誰が審査したのか、どのような審査だったのか、教えてくれない。情報開示請求をしても、重要なところはスミで黒塗りされる。[・・・可能性が高い]

第3点、予備審査で「不正がありそうだ」となると、大学は本調査の段階に進める。しかし、本調査の結果、「不正ではない」と返事してくる。調査報告書は送られてくるが、いい加減な調査である。[・・・可能性が高い]

第4点、本調査の結果に不満があれば、あなたは「不服申し立て」ができる。しかし、多くの大学は「不服申し立て」を却下する。[・・・可能性が高い]

そのすべてのステップで、大学は隠蔽する。 → ●白楽の卓見・浅見6【大学の隠蔽体質を変えないと日本の研究者倫理事件は減らない】

大学は隠蔽すると書いたが、隠蔽を指示するのは調査委員長である副学長レベルの教授である。このことはあとの節でもう一度取りあげよう。

ここでは、実際に自分で告発しないと、「ネカトを積極的に隠蔽し、告発者を抑圧する」日本の大学教授の実態がつかめない、ことを強調しておきたい。

★大学の調査不正が横行する制度設計

世間も官僚も「大学教授が研究不正をただすのは、当たり前」という観念に縛られているために、文部科学省の研究不正に関する規則・ガイドラインの基本方針や実施要領は、大学教授の意見をベースに作成している。

文部科学省に意見を述べる大学教授は、もちろん多数派の大学教授である。つまり、「ネカトを積極的に隠蔽し、告発者を抑圧する」体質の強い大学教授である。

従って、現在の日本の研究不正の規則・ガイドラインは、一見それなりによくできているけど、基本的に「研究不正を黙認・隠蔽・不問にできる」抜け道だらけなのである。

大学教授がネカト(ねつ造・改ざん・盗用)をした疑いがもたれた時、文部科学省の規則では、現在、その教授の所属する大学が調査する。そして、驚くことに、調査する権限はその大学以外にはない。

長崎大学のネカト調査が異常だったので、他に機関に調査を依頼できないか、白楽が文部科学省に問い合わせたら、2021年9月30日(木)、次のように答えてきた。

「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン(平成26年8月26日)」では、第3節4-1「調査を行う機関」において、研究機関の所属する研究者に係る特定不正行為の告発があった場合は、原則として、当該機関が告発された事案の調査を行うとなっております。(出典:5C 異常な調査:長崎大学の盗用事件 | 白楽の研究者倫理

つまり、大学がどんな異常な調査をしても、その大学の調査をとがめる機関・システムが日本にはない。

大学が調査すると書いたが、実際に調査する人は、その大学の学長・副学長に指名された教授である。

学長・副学長は「多数派の大学教授」の優等生だから、「研究不正を黙認・隠蔽・不問にする」思考の強い持ち主である。調査委員の教授は当然ながら、そのイエス(ウー)マン御用委員である。

この仕組だと、大学は容易に「研究不正を黙認・隠蔽・不問にできる」。

既に述べたが、再度、書くと、①告発を無視する。②告発を受けても予備調査でシロとする。予備調査報告書は公表不要。③ 予備調査から本調査に進んでも、本調査でクロをシロと結論する。シロの場合、公表不要である。

上記の①②③は、告発があったことや報告書の公表が不要なので、調査は当該大学の委員(大学教授)しかわからず、調査の実態は闇の中である。

ネカト調査の結果、どう見てもクロと思える盗用なのに、大学は強引に「盗用はなかった」とシロの結論をしても、文部科学省を含め、日本学術会議も、関係学会も、異論を唱えることができないし、実際に、誰も唱えない(なお、外国では異論が噴出する)。

大学としてはやりたい放題の隠蔽が日本では可能である。

なお、本記事は、大学教授を非難しているのではない。

「大学教授が研究不正をただすのは、当たり前」という観念に縛られて、制度設計している点に大きな間違いがある。

前にも書いたが、正義感・法令順守に関して大学教授は一般社会人と同じである。特に悪いわけではない。

だから、大学教授も仲間の不正を「黙認・隠蔽・不問にする」傾向はとても強い。このこと自体は一般社会人の普通の思考行動様式である。

ましてや、隠蔽してもバレない・非難されないならなおさら、仲間の不正を「黙認・隠蔽・不問にする」。

★研究不正をただせない制度設計

知識と行動とは別次元である。

多くの人は、オレオレ詐欺という犯罪とその手口を知っているのに被害にあう。

また、多くの人は「総論賛成、各論反対」という行動をとる。別の見方をすると、一般論での言動と、当事者になった時の言動が異なる。多くの大学教授も同じである。

多くの大学教授は、総論や一般論として、研究不正はいけない、防止しなくてはという知識・意識をもっている。

しかし、実際の言動では、多くの大学教授は自分の研究室や自大学の教授の「ネカトを積極的に隠蔽し、告発者を抑圧する」。

このように理解すると、大学のネカト調査結果、及び、日本のネカト事情の全体がストンと腑に落ちる。

例えば、「ネカトがありますよ」と教えてくれた人(告発者)に感謝しないで、大学教授は怒り、攻撃し、報復する。

また、ネカト調査委員会(大学教授)は自大学の教員のクロを「シロと強弁する」。白楽自身が告発側で関与した2件のネカト事件ではこの傾向は明白だった。

明白な盗用なのに、長崎大学は盗用ではないと判定した。 → 5C 異常な調査:長崎大学の盗用事件

名古屋大学でも同様な判定をした。 → 5C 名古屋大学・博士論文の盗用疑惑事件:③ 疑惑の証明

基本的な問題はハッキリしている。

研究不正をただせない制度設計になっているのだ。

大学の調査と言っても、「大学」という組織は無機的な組織名で、「大学」が調査・判定しているのではない。調査・判定しているのは「大学」の中の人間で、その人間は大学教授である。

大学教授に正面から質問すれば、ほぼ全部の大学教授は「研究不正はいけない。悪いことだ。排除すべきだ」という。

ところが、その同じ大学教授が、ネカト調査をする側になれば、調査を捻じ曲げ、結果を捻じ曲げ、不都合な真実を隠蔽する。

ノーベル賞を受賞した野依良治は、自分の傘下でネカト調査が始まる1年前、研究不正行為を強く非難していた。ところが、自分の研究所内でデータねつ造が発覚すると、全く逆向きの発言をした。

野依良治・理研理事長はその後もSTAP細胞問題で、問題を指摘する所内の指摘について隠蔽を疑われるような行動もとっており、本当「不正を憎む野依良治」はどこへやら?といった感じでした。(2020年10月6日:STAP問題渦中の野依良治理研理事長、1年前は論文捏造不正を批判していた – 知識連鎖

もちろん、誠実に対応する姿勢と見識を示す大学教授と大学もあるが、とても少ない。

このように見ていくと、日本のネカト・クログレイを改善する1つの穏当な方法は、世間の大学教授に対する思い込み、そして、大学教授自身の研究不正に対する意識を徐々に変えていくことだ。

しかし、日本の学術界・高等教育界は研究不正に対する問題意識がきわめて希薄である。欧米に比べる意味があるかどうかわからないが、比べると雲泥である。

穏当な方法では数十年かかっても問題を解決できない。

問題意識を高めつつ、将来のどこかで、ドラスティックな改革が必要だと思っている。

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●白楽の卓見・浅見8【タクシー・ドライバー理論】 2022年2月9日掲載

日本のネカト・クログレイを、誰が通報・追及するか? 誰が規則を設計し、誰が調査すべきなのか?

大学教授は研究者である。「自分の専門分野について詳しい」。

「自分の専門分野について詳しい」のは、八百屋さんでも、タクシー・ドライバーでも同じである。タクシー・ドライバーは交通法規と道路事情に詳しい。

どんな職種でも同様だが、タクシー・ドライバーをピックアップして話を進めよう。

「自分の専門分野について詳しい」ことと、正義感・法令順守・人格・人間性は無関係である。

タクシー・ドライバーも大学教授も同じで、両方とも、正義感・法令順守・人格・人間性に優れた人はいるが、標準的な人が多数で、中にはヒドイ人もいる。

大学教員の交通違反率を調べたことがあるが、一般社会人と同率だった。他の犯罪に関しても、大学教員の犯罪率は、一般社会人とおおむね同率だと思う。

ノーベル賞受賞者も交通違反をする → ノーベル賞・本庶佑氏運転の車がバスと衝突 本庶氏とバス乗客が軽傷 | 毎日新聞

★タクシー・ドライバーは他人の交通違反を通報・追及するか?

タクシー・ドライバーはお客さんを目的地まで運ぶのが仕事である。その職業上、通常の人より「交通違反をしない」。

しかし、自分は交通違反を「しない」けれども、他のタクシー・ドライバーが交通違反を「した」時、「交通違反を通報・追及する」だろうか?

ごく少数のタクシー・ドライバーは「通報・追及する」かもしれないが、大半は、通報・追及しない。もし同じタクシー会社のドライバーが交通違犯を通報されたら、かなりの人は、むしろ、仲間をかばい、違犯を隠蔽するだろう。

大学教授も同じである。

つまり、ほとんどの大学教授は自分としては「研究不正をしない」。しかし、ほとんどの大学教授は他の研究者の「研究不正を通報・追及する」ことはしない。「研究不正をしない」ということと「研究不正を通報・追及する」のは、全く次元が異なる。

研究不正を通報・追及する研究者はごく少数である。

2022年2月7日現在、白楽の【日本の研究者のネカト・クログレイ事件一覧】にネカト・クログレイ者が 726人いる。 → 日本のネカト・クログレイ・性不正・アカハラ事件一覧 | 白楽の研究者倫理

この表にリストした事件は、誰かが通報・追及したから事件になっている。

1人で複数人通報・追及したケース、外国人が通報・追及したケースもあるので、通報・追及した日本人研究者数を7割とすると、 726人x0.7=508人である。つまり、研究不正を通報・追及した日本人研究者は 508人程度だろう。

文部科学省の統計では、現在の日本の大学教員は19万人である。総務省統計局のデータ(改ざんされていないと思うが)では、2016年の日本の研究者数は84万7100人だった。

10人に1人の研究者(総務省データの8万4710人)が研究不正を見たと想定すると、508人はその0.6%である。100人に1人の研究者とすると6%である。

つまり、概算だが、研究不正を見た研究者が研究不正を通報・追及する割合はとても低い(0.6% ~6%程度)。

なお、誤解しないと思うが、「研究倫理学者=研究不正を通報・追及する研究者」ではない。

通報・追及する研究者は、現実には、A群B群 の2グループである。

A群は、問題の論文に関係した共著者や被盗用者などのネカト被災者である。
B群は、問題の論文に無関係ないネカトハンターたちである。

上記した、ごく少数(0.6% ~6%程度)の研究者は日本ではほぼA群である。なぜなら、日本にはネカトハンター がほぼいないからである。現役は「世界変動展望 著者」くらいしかいない。サイトは → ココ

従って、研究不正を監視するには、たまたま問題の論文に関係した共著者や被盗用者 のA群の研究者が、「必ず」研究不正を通報・追及するシステムの構築が大事である。0.6% ~6%程度を99%以上にする。それには、コクハラされない仕組みを作ることも必要だ。

また、B群のネカトハンティング活動を組織的に育成し、支援する仕組みも必要である。経済的な支援もすべきである。

ネカトハンティング活動は攻撃されるので、保護も必要である。

★交通ルールの設計者としてタクシー・ドライバーは最適か?

タクシー・ドライバーは職業上、交通ルールをよく知っているし、実際に、交通違反をしない人が大多数である。

では、タクシー・ドライバーは交通ルールを設計するのに最適だろうか?

イヤイヤ、交通ルールの設計は、交通ルールを職業上知っているだけでは、全く不十分である。日本の法律と諸外国の交通ルールを熟知し、交通事故の原因・結果・道路事情を良く知っていなければ設計できない。

研究者倫理ルールの設計も、研究を職業上知っているだけの大学教授では、全く不十分である。

研究者倫理を専門とする大学教授で、かつ、日本の法律と諸外国の研究者倫理ルールを熟知し、研究不正の原因・結果・研究事情を良く知っていなければ設計できない。

しかし、日本はそういう大学教授が研究者倫理ルールの設計をしていない。

そういう大学教授を育て、日本国の研究者倫理ルールの制度設計をしてもらう。

この改善を誰に頼んでいいかわからないが、文部科学省はそれなりの権限がある。

★調査

繰り返すけど、タクシー・ドライバーは車を運転する職業である。交通ルールをよく知っている。

では、タクシー・ドライバーの交通違反を、別のタクシー・ドライバーが調査するのは妥当だろうか?

タクシー・ドライバーが他社のタクシー・ドライバーの不正調査をするのは、妥当とは思えない。

ましてや、同じ会社の仲間のタクシー・ドライバーの不正調査をするのは、トンデモナイ!。

ところが、研究不正の場合、現在、同じ大学の教員が同僚教員の研究不正を調査するのである。「トンデモナイ!」と思うが、日本国のルールなんである。

文部科学省に問い合わせたら、2021年9月30日(木)、次のように答えてきた。
 → 出典:5C 異常な調査:長崎大学の盗用事件 | 白楽の研究者倫理

文部科学省科学技術・学術政策局人材政策課研究公正推進室です。

ご質問いただいた件、「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン(平成26年8月26日)」では、第3節4-1「調査を行う機関」において、研究機関の所属する研究者に係る特定不正行為の告発があった場合は、原則として、当該機関が告発された事案の調査を行うとなっております。

この「トンデモナイ!」調査方式は、驚くことに、米国も同じである。

米国も病んでいる面はあるが、米国は日本と大きく異なる状況がある。

米国では、同じ大学の教員が仲間の教員のネカト調査をしても、それを監視する政府組織(研究公正局など)が設置されている。

さらに、「研究不正をしてはいけない」文化が根付いている。そのことで、産業メディア(新聞など)が研究不正者の実名を挙げて事件を詳細に報道してきた。

さらに、ここ10年ほどは、撤回監視(Retraction Watch)、パブピア(PubPeer)などの民間組織がそれぞれ独自のシステムを構築し、「研究不正をしてはいけない」文化を強く推し進めている。

日本には、大学教員の調査を監視する政府組織も民間組織もないので、大学教員は同じ大学の教員のネカト行為の隠蔽に励み、平気で調査を歪めている。

そして、それを咎める人はごく少数だし、まともなシステムはない。

なんとかしないと・・・。

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●白楽の卓見・浅見7【国別ランキングで見る日本の研究者倫理】 2021年12月10日(220304更新)

テレビ・ラジオ・雑誌などの大衆メディアは、何かというと、「日本の素晴らしい科学技術」と日本の科学技術が世界のトップクラスで、世界の科学技術を牽引しているかのように伝え、いまだに、日本国民をダマし続けている。

そして、政府・学術界・大学・大衆メディアは「わが国は、いつの間にか、研究不正大国になってしまった」(出典:黒木登志夫の著書『研究不正』289頁目)、という現実を直視しない。

研究不正大国の事実を「臭いものに蓋」状態にして、無視している。別の見方をすれば、研究不正大国である事実を「隠蔽している」。

だから、政府・学術界・大学は研究不正にまともに向き合わない。原因を見極め、対策を立てようとしない。

しかし、事実として、2021年12月9日現在も「撤回論文数」世界ランキングの上位に日本人研究者が「3位以内に2人、10位以内に4人、20位以内に在日日本人が6人」いる。 → 「撤回論文数」世界ランキング | 白楽の研究者倫理 

では、「撤回論文数」以外の指標でも、日本が研究不正大国なのだろうか?

「ねつ造・改ざん・盗用」そして「クログレイ・性不正・アカハラ」を含めた研究者倫理(ネカト・クログレイ・性不正・アカハラ)の国別ランキングはあるのだろうか?

世界ランキングがあれば、どのような施策・改革・活動が、ランキングの上下にどの程度影響するのかが一目瞭然で、施策・改革・活動の成果が測れる。良い方向に変える指標になる。

●1.【研究公正】

★研究公正ランキング

調べたが、研究公正の国別ランキングは作成・公表されていない。

それで、白楽が自分で研究公正の国別ランキングを作ろうと考えた。しかし、少し考えただけで、なかなか大変なことがわかる。

つまり、そもそもどういう指標が適切なのか、十分な基準もない。

  1. ネカト行為数、ネカト事件数
    何度も言うように、ネカト行為数をつかむのはどの国もできていない。各国のネカト事件数を正確に掴むのさえ難しい。かろうじてネカト事件数を掴んだとする。
    ①研究者が多ければ事件数は多い。それで、研究者1000人当たりの割合にする? ②出版論文数当たりの割合にする? その場合、英語出版物のみでよいか、全言語にすべきか? 生命科学論文なら(パブメド(PubMed)の索引付け論文)などの基準値以上にするか? ③分野別にする?
  2. ネカト行為に関する各国の法律・規則・ガイドラインの存在と内容
    規則・ガイドラインがあるかどうかはチェックできる。しかし、ほとんどの先進国は規則・ガイドラインを持っている。となると、問題は内容である。しかし、その内容の何をどう数値化すればランキングにふさわしいのか?
  3. ネカト行為に対処する各国の体制・組織の存在と内容
    米国・研究公正局のような政府機関、日本の文部科学省の研究公正推進室、など各国の組織を見つけることはできる。しかし、その権限・役割・効果、また予算・人員など内容を調べるのは大変だし、それをまた、ランキングするのも容易ではない。
  4. 大学・研究所のネカト行為対処(調査・公表)の透明性・説明責任
    大半の国では、ネカト疑惑者の所属する大学・研究所がネカト行為の調査・処罰をしている。しかし、そのレベルは非常に多様である。また、対処の透明性・説明責任も非常に多様である。この度合いを調べ数値化するのは、とても大変だ。国別ランキングは難しい。
  5. 各国の研究公正教育の体制・頻度・内容
    日本の文部科学省が委託して、数か国の研究倫理教育を調べた。ただ、先進国だけの調査なので、世界の国別ランキングにするのは、情報が足りない。さらに作業が必要。 → 令和元年度委託報告書(諸外国における研究倫理教育内容の水準に関する調査・分析業務):文部科学省
  6. 各国の研究者の研究公正への関心度
    これは数値化しにくい
  7. 各国メディアの研究公正報道
    これは数値化できる気もするが、各国の言語の知識が必要なので、国際チームを作らないと、実施困難。後述するが、「報道自由度の国別ランキング」は既に作成されている

つまり、研究公正の国別ランキングはない。

それで、白楽が、4段階の国別グループ化をした。ネカト事件が少ない国は対象外にした。

「研究公正の厳格さ国別グループ化」

  1. 甘い・・・日本、韓国、イラン、中国、イタリア、他
    ネカト報道は匿名報道が主である。大学はネカト者を無処分~軽い処分にすることが多い(強い処分もあるがとても少数)。大学はネカトを隠蔽する傾向が強い。ネカト行為が報道されない場合もある(報道されないので全貌を把握するのは非常に難しい)。ほとんどの大学教員や研究者はネカトに抗議しない
  2. 少し甘い・・・インド、ドイツ、英国、フランス、カナダ、他
    上記の各項目の甘さが少しなくなる。例えば、大学教員や研究者がネカトに抗議する
  3. 少し厳格・・・米国、シンガポール
    ネカト報道は実名報道が主体。ネカト者は基本、解雇(学術界から排除)される。
  4. 厳格・・・ない
    実名報道。ゼロトレランス。捜査権を持つ第三者機関がネカト調査をする。刑事事件とする。

白楽の4段階の国別グループ化は、かなりお粗末である。

どなたか、研究公正の国別ランキングを作って、(論文)発表して、白楽に教えて下さい。

★研究ネカト事件数

研究ネカト事件数の国別ランキングも作成・公表されていない。

ないよりまし、なので、とても粗い集計になるが、白楽の表を集計した。

0‐6.すべての一覧表 | 白楽の研究者倫理」の各表の数値を全部足して、各国のランキングを作成した。

表:研究ネカト・クログレイ事件数ランキング(白楽調べ。2021年12月8日現在)

研究ネカト・クログレイ事件数の第1位は米国の885件、第2位は日本の709件、第3位はドイツの262件となった。

日本の709件は小さな事件も集計しているために件数が多くなっていると思われる。他国と比較する表にしたが、他国と「単純には」比較できない数値である。

インドや中国は「自然科学・工学」にネカト・クログレイ事件数が多く、韓国は「人文・社会科学・他」に多い。これは各国の主要な研究分野の違いを反映していると思われる。

撤回論文数

前述したように「わが国は、いつの間にか、研究不正大国になってしまった」(出典:黒木登志夫の著書『研究不正』289頁目)。

この指摘は「撤回論文数」世界ランキングの上位に日本人研究者がいたという事実からの発想である。

2021年12月9日現在も「撤回論文数」世界ランキングの「3位以内に2人、10位以内に4人、20位以内に在日日本人が6人」いる。 → 「撤回論文数」世界ランキング | 白楽の研究者倫理 

以下に「撤回論文数」世界ランキング の10位までを再掲した。

  1. ヨシタカ・フジイ(Yoshitaka Fujii)、藤井善隆(東邦大学) (日本)(撤回論文数:183)
  2. ヨアヒム・ボルト (Joachim Boldt)(独)(160)
  3. ヨシヒロ・サトー(Yoshihiro Sato )、佐藤能啓(弘前大学)(日本)(106)
  4. アリ・ナザリ(Ali Nazari)(イラン)・・・材料工学(85)
  5. ジュン・イワモト(Jun Iwamoto)岩本潤(慶應義塾大学)(日本)(82)
  6. ディーデリック・スターペル(Diederik Stapel) (オランダ)・・・社会心理学(58)
  7. ユウジ・サイトー(Yuhji Saitoh)、斎藤祐司(東京女子医科大学)(日本) (53)
  8. エイドリアン・マキシムAdrian Maxim)(米)・・・電子工学(48)
  9. ピーター・チェンPeter Chen)(台湾) ・・・工学(43)
  10. フォジュルル・サルカール(Fazlul Sarkar)(米)(41)

しかし、上記は個人ランキングであって国別ランキングではない。

それで、撤回論文数の国別ランキングを探った。

ありました。

撤回論文数の国別ランキングを以下に示す。 → この項の流用元の記事は → 7-53 撤回監視データベースから学ぶ | 白楽の研究者倫理

1万報あたりに撤回論文数の国別のランキングである。

第1位がイランで第2位はルーマニアだった。 → 2018年10月26日「Science」記事:Volunteer watchdogs pushed a small country up the rankings

日本は何位かはわからない。第11位以下であるのは確かだだが・・・。

しかし、撤回論文数の国別ランキングは単純に「研究公正」の指標と受け取ってはいけない。数値の裏事情を理解しておかないと誤解する。数値を読むときの注意点は4点ある。他の項目での国別ランキングを読むときにも同じ注意が必要なので、詳しく書いておこう。

その1:撤回論文の絶対数ではなく、割合

撤回論文の絶対数は米国が第1位、中国が第2位である。

とはいえ、米国と中国は論文総数も多い。

論文の間違いやネカトがランダムに起こっても、論文数が多ければ撤回論文数が多くなるのは当然である。米国と中国は出版論文数でも第1位・第2位なのだ。

それで、ここでは、出版論文数当たりの撤回論文数の国別ランキングにした。この指標では、図に示すように、イランが第1位でルーマニアが第2位だ。

その2:特定のネカト・ハンター

ルーマニアの1万報あたりに撤回論文数が多いのは、ルーマニアに強力なネカト・ハンターがいたためと思われる。

2013年、ルーマニアのトゥルグムレシュにある医学薬学大学(University of Medicine and Pharmacy in Târgu Mureş)の遺伝学教授のステファン・ホバイ(Stefan Hobai、写真出典)は、プロジェクト名をパンドラ(PANDORA:Project dedicated to arrest of the name decline of the Romanian achievement)と名付けたネカト・ハンティングを開始した。

それで、ルーマニアの撤回論文の絶対数が多い。必然的に「1万報あたりに撤回論文数」も多くなった。

2021年12月7日現在、パンドラ(PANDORA)は活動を停止している。

その3:研究公正レベルがよいと撤回論文数は多くなる?

「その2」とすこし関連するが、撤回論文数が多いということは、「その国の研究公正の程度が悪い」という解釈がある一方、真逆の解釈だが、「その国の研究公正の程度が良い」という解釈もある。

「研究公正の程度が良い」ので、ネカト論文を見つけ、撤回させているということになる。

つまり、撤回論文数の多少だけで、研究公正の程度を判定できない。

その4:英語論文

最後は、このリストでは、英語論文だけを対象にしている点である。

日本で言えば、日本語で出版した論文が撤回されても、この「1万報あたりに撤回論文数の国別の論文撤回ランキング」にカウントされない。

●2.【性不正・アカハラ】

「性不正・アカハラ」の国別ランキングは見つからなかった。

「研究者の性不正」事件の国別事件数を無理やり並べると、2021年12月9日現在、

米国 1,157件 出典:Incidents | Academic Sexual Misconduct Database
日本    318件  出典:日本のネカト・クログレイ・性不正・アカハラ事件一覧 

と、米国が日本の3倍も多い。

しかし、人口は米国が329,065,000人で日本は126,167 ,000人と、米国は日本の3倍多い(出典:人口の多い国|外務省)。

人口比で割ると、「研究者の性不正」事件数はほぼ同じになる。

米国と日本以外の各国の「研究者の性不正」事件数は、把握できない。

それで、とりあえず、似たような事件数の国別ランキングを調べた。

★レイプ事件

「研究者の性不正」事件は一般レイプ事件が蔓延している国に多いだろう。一般レイプ事件の国別ランキングは見つかった。

その1:2008年データ

出典:Countries Compared by Crime > Rapes > Per capita. International Statistics at NationMaster.com

一般レイプ事件が多い国の第2位がレソト、第2位がニュージーランド、第3位がベルギーなど、かなり意外なデータだ。

レソトは知らない国だった。日本語版ウィキペディアによると、「アフリカ南部に位置する周囲を南アフリカ共和国に囲まれた」国だ。

レソト、ニュージーランド、ベルギーなどに「研究者の性不正」事件が多いと思えないので、一般レイプ事件と「研究者の性不正」事件に相関はないと思われる。

その2:別のデータ

別の情報元で「国全体のレイプ事件数の国別ランキング」(事件数/ 10万人)があった。データは2009年とか2010年である。 → 出典:Rape Statistics by Country 2021

上の「その1:2008年データ」と事件数を比較する場合、0.01倍する。

  1. Botswana (92.93)
  2. Australia (91.92)
  3. Lesotho (82.68)
  4. South Africa (72.10)
  5. Bermuda (67.29)
  6. Sweden (63.54)
  7. Suriname (45.21)
  8. Costa Rica (36.70)
  9. Nicaragua (31.60)
  10. Grenada (30.63)

このデータは「その1:2008年データ」と大きく異なる。ニュージーランドやベルギーは第10位以内に入ってこない。

代わりに、第2位がオーストラリア、第6位がスウェーデンなど、意外なデータだ。

「研究者の性不正」事件は一般レイプ事件とは相関しないと思える。

★セクハラ事件

では、一般レイプ事件と似たようで異なる一般セクハラ事件は「研究者の性不正」と相関しているのか?

一般セクハラ事件の国別ランキングは見つかった。

「18~34歳の女性が2017年の1年間にセクハラを受けた割合」(調査国数は40か国):出典:WIN_2018_Gender-Equality.pdf

第1位はメキシコは43%、第2位はアイルランドで32%、第3位はオーストラリアで29%だった。

日本は14%、つまり、2017年の1年間に、7人の女性の内1人がセクハラ被害に会っていて、世界第19位だった。

メキシコ、アイルランド、オーストラリアで一般セクハラ事件数が多いが、これらの国で「研究者の性不正」事件が多いとは思えない。

一般セクハラ事件と「研究者の性不正」事件は相関しないだろう。

以上のことから、「研究者の性不正」事件は「世間一般の性不正」事件とは無関係のようだ。

「研究者の性不正」事件を独自に調べ国別ランキングを作ることが望ましい。しかし、これは大変だ。

●3.【科学技術】

科学技術の量と質の国別ランキングは、研究者倫理事件(ネカト・クログレイ・性不正・アカハラ事件)の国別ランキングとは次元が異なる。

しかし、相関する面もある気がする。

科学技術の国別ランキングを少し見ておこう。

★論文の質

日本の論文の質は2001年に世界4位だったのが、2018年には世界10位と大転落である。日本は衰退していく。

注目度が高い科学論文の数で、中国が米国を抜いて初めて首位となる一方、日本はインドに抜かれ、2桁台の世界10位に転落した。文部科学省が10日発表した「科学技術指標2021」などでわかった。日本は国内での研究力の低下に加え、国際共著の論文も欧米に比べて伸び悩んでいる。(出典(右図も):桜井林太郎・記者の注目度高い論文数、中国が初の首位 日本は10位に転落:朝日新聞デジタル

★論文の量

論文の量、つまり論文数で測ると、20年前、日本は世界第2位だった。しかし、今や、世界第5位だ。

下の図を見ると、フランスや韓国に抜かれるのは時間の問題に思える。衰退していく日本である。

日本は、1980年代から2000年代初めまで論文数シェアを伸ばし、英国やドイツを抜かし、一時は世界第2位となっていた。しかし、1990年代後半より、中国が急速に論文数シェアを増加させており、日本のみならず米国、英国、ドイツ、フランスの論文数シェアは低下傾向である。2018年(2017-2019年(PY)の平均)時点において、上位5か国は中、米、英、独、日となっており、中国が米国を抜き、世界第1位となった。(科学技術指標2021・html版 | 科学技術・学術政策研究所 (NISTEP)

科学技術指標2021・html版 | 科学技術・学術政策研究所 (NISTEP)

★医薬敗戦

★博士号取得者数

米国科学庁の「博士号取得者数の国別ランキング」では、日本は大差で、欧州6か国、米国、中国に負けている。 → 出典:The State of U.S. Science and Engineering 2020 | NSF – National Science Foundation

2015年の数値では、欧州6か国56.7、米国39.9、中国34.4、インド13.8、日本7.5 、韓国6.1、台湾2.4(x千人)だった。

上記は2016年までのデータだ。その時点では日本は韓国よりかろうじて多い。しかし、2021年現在、抜かれているかもしれない。

韓国は若干とはいえ増えているのに、日本は、むしろ減っている。2006年に8.1人だったのが、2016年に7.4人と10年で約1割減った。衰退していく日本です。

★教員の院卒比率

教員の院卒比率も世界で最低レベルだとある、 → 2021年7月7日、舞田敏彦:世界で最低レベルの、日本の教員の院卒比率|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

★学問の自由度

世界177か国の学問の自由度で、日本は第94位でチモールの下、ザンビアの上。惨憺たるレベルである。

 

あちこちのデータで、日本の衰退は現在進行中である。

●4.【社会】

★人口減

日本の人口は現在、減っているし、将来、大きく減っていく。

こんな重大なことを、日本政府は何十年も改善できない。まったくナサケナイ。

白楽は、人口減を食い止められない日本は、確実に衰退する、と思っている。だから、その方向で研究者倫理問題を考えるしかない。

国連人口部は(2019年6月)17日、世界人口について、2057年に100億人を突破する一方で、日本の人口は58年に1億人を下回り、2100年には7500万人になるとする推計を発表した。国連人口部が2年ごとに発表するもので、前回の17年は日本の人口が1億人を下回るのは65年としていたが、今回は7年早くなった。(出典(上図も):2019年6月18日の藤原学思・記者の記事:日本の人口、2100年に7500万人 減少見通し加速:朝日新聞デジタル

次は別の記事。

2020年から50年までの人口変動率は仮に移民がなければ二桁%減の日本、イタリア、ドイツのみならず、カナダ、英国、フランスもマイナス圏、アメリカもかろうじてプラス圏という水準です。2020年のアメリカは人口増加率がわずか0.4%です。韓国、台湾、中国、ポルトガルあたりも今後30年で2桁減になるはずで更に欧州の旧社会主義国の地帯も軒並み大幅な人口減の脅威と戦うことになります。(2021年12月27日の「fromvancouver」記事:なぜ移民をするのか? : 外から見る日本、見られる日本人

多くの国が大幅な人口減になる。それなのに、移民受け入れしかない? 他に方法があるハズだ。なんかヘンだ。

ーーーーーー

日本の特殊出生率は2019年に1.360で、世界173位 → 世界の合計特殊出生率ランキング – 世界経済のネタ帳

長期的な推移は以下のようだ。出典 → 図録▽人口の超長期推移(縄文時代から2100年まで)

★報道

報道自由度の国別ランキングを以下に示すが。 → 元データ:2020 World Press Freedom Index | RSF

国際ジャーナリストNGOの国境なき記者団(RSF)は4月20日、「世界報道自由度ランキング」の2021年版を発表した。首位はノルウェー、日本は71位だった。RSFは2002年から毎年発表。今回は180ヶ国が対象となった。(出典:2021年4月25日記事:【国際】世界報道自由度ランキング2021年版、首位ノルウェー。日本は67位で1つ後退 | Sustainable Japan

日本は世界71位だった。韓国は世界42位、米国は44位だった。日本より韓国の方がいい。米国も思ったほど良くなかった。

研究者倫理事件(ネカト・クログレイ・性不正・アカハラ事件)の改善には、メディアの力が大きく影響する。

白楽は外国メディアの記事を毎日のように読んでいるが、「ネイチャー」「サイエンス」「サイエンティスト」などの科学誌、さらに、ニューヨークタイムズ紙などの主要新聞紙、多くの米国の地元紙は、研究者倫理事件を丁寧に取材し、事件の内容だけでなく、問題点や改善点を議論し、示している。

日本の大手メディアは米国の大手メディアに比べると比較にならないほど貧弱である。研究者倫理の報道に関しては、天と地の開きがある。

例えば、外国の新聞記者は大学や研究者の抵抗にあいながら、ネカトを解明・暴露する。そういう外国の新聞記者はたくさんいるが、日本ではほぼ皆無である。

日本の新聞記者は、政府や大学が発表した内容をそのまま報道する。政府や大学が発表しなければ、報道しない。白楽が事件を伝えても、政府や大学が発表しなければ、報道しない。

米国の研究者倫理事件の報道は優れている。それでも、米国の報道自由度は第44位である。

報道自由度第1位のノルウェーが研究者倫理事件の報道で特段優れているという印象はないが、ノルウェー語の報道に接していないからかもしれない。

★公徳心

研究者倫理事件(ネカト・クログレイ・性不正・アカハラ事件)は人々の道徳と関係している。

道徳の国別ランキングはあるのか?

人助け国別ランキングでは、日本は世界で最下位だそうだ。

「人助けランキング、日本は世界最下位」英機関 日本は冷たい国なのか ホームレス受け入れ拒否問題 (飯塚真紀子) – 個人 – Yahoo!ニュース

元データはココ → World Giving Index 2021| CAF

人間の徳育の面でも、日本の衰退は現在進行中である。

日本国民はスポーツ、観光、娯楽に夢中で、カネがすべての世の中である。

★労働生産性

日本生産性本部が(2021年12月)17日発表した2020年の労働生産性の国際比較によると、日本は経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国のうち23位だった。前年から二つ順位を落とし、比較可能な1970年以降で最も低かった。(出典、2021年12月17日記事:日本の労働生産性23位、過去最低 コロナで雇用維持重視が影響 | 毎日新聞

日本はいろいろ所で「手作り」を良いものとしている。これは、機械化、自動化、無人化はよくないという文化価値観を育成している。科学技術の導入を嫌う価値観を助長している。これでは、労働生産性はあがらない。

さらに、何かというと「汗をかく」を推奨する。労働生産性はますますあがらない。

★GDP

先進国のGDPは全般的に停滞気味なのに対して新興国で人口過多の国はこれから20年で急成長が見込まれています。PwCの予想ではインド、インドネシア、ブラジル、メキシコは2050年には日本を追い抜き日本はトップ10にかろうじて引っかかる水準とされます。(2021年12月29日の「fromvancouver」記事:凋落する日本経済は再び立ち上がれるのか? : 外から見る日本、見られる日本人

以下の表では、2050年に日本は8位。出典は2017年2月13日の「PwC Japanグループ」記事:PwC、調査レポート「2050年の世界」を発表 先進国から新興国への経済力シフトは長期にわたり継続‐インド、インドネシア、ベトナムが著しく成長 | PwC Japanグループ

★英語能力

日本人の英語能力は112カ国・地域中第78位。→ 2021年版「EF EPI英語能力指数

台湾、中国、ベトナム、韓国より下位です。ヒドイもんです。

日本、何とかしないと。

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●白楽の卓見・浅見6【大学の隠蔽体質を変えないと日本の研究者倫理事件は減らない】 2021年10月27日掲載、2021年11月23日更新

日本の研究者倫理事件(ネカト・クログレイ・性不正・アカハラ事件)の公開情報を外国と比べると、日本は圧倒的に隠蔽している。大学が隠蔽している。中国、韓国よりも隠蔽率は高く、先進国の中では多分、世界一である(当社比)。

日本は、「個人情報の保護」を勘案しつつも、「透明性」「説明責任」の基準を明確にし、隠蔽を禁止する法律を作る(または文部科学省ガイドラインを改訂す)べきだ。

★事実を知る

白楽ブログでは、全世界の「ネカト・クログレイ・性不正・アカハラ」事件を収集し、その実態を分析・解説している。

米国人に対する日本人のイメージは、「金髪、白人」だと思う。

それで、米国の研究者がネカト事件を起こした時、米国で生まれ育った「金髪、白人」がネカト事件を起こしたと、日本の多くの人は思うだろう。

常連の読者はわかっていると思うが、大外れである。

米国のネカト犯の多くは、インドや中国などの出身者、つまり、米国外で育った研究者が米国でネカト事件を起こすのである。

ただ、米国ではネカト行為の原因を人種的要因(育った国の文化)だと明言すると、社会的、そして法律的に、問題視される可能性が高いので、ハッキリとは言わないし、示さない。

だから、米国でのネカト対策は、ハッキリと示せないのだが、実は、海外で生まれ育ち・教育を受け、米国で研究している研究者をどうするかである。

では、米国のネカト犯なのに、米国外で育った研究者が多いと、どうしてわかるのか?

それは、米国では、ネカト犯の名前や所属を公表しているからだ。全部公表しているわけではないが、少なくとも連邦政府機関である研究公正局(生命科学系のネカトを扱う)では公表している。

そして、「ネイチャー」「サイイエンス」「サイエンティスト」などの科学誌、さらに、ニューヨークタイムズ紙などの主要新聞紙、多くの地元紙などのメディアも丁寧に取材し、ネカト犯の名前や所属を、時には顔写真付きで、公表し、ネカトの問題点や改善点を議論し示している。

しかし、次節に述べるように日本は名前や所属だけでなく、色々なことを隠蔽している。顔写真の公表は全くと言っていいほど、ない。

★原因を知らないで対策は立てられない

さて、白楽は世界中の「ネカト・クログレイ・性不正・アカハラ」事件を調べていると書いたが、この問題で、日本が抜本的に確実に改善するのは、正直なところ、絶望的だと思っている。

何故か?

以下、主にネカト事件を対象に記述するが、「ネカト・クログレイ・性不正・アカハラ」事件全部に共通する。

日本では、ネカトの実態を隠蔽するので、ネカトの原因・状況・頻度、ネカト者の素性・ネカト行為に至る過程などがわからない。「わからない」のは白楽が怠慢・能力不足で「わからない」のではなく、当事者である大学が「わからにようにしている」からである。

「ネカトの原因・状況・頻度、ネカト者の素性・ネカト行為に至る過程などがわからない」ままでは、的を得たネカト対策は立てられない。

それで、憶測でネカト対策を立てる。文部科学省はそうしている。しかし、憶測が成り立つのは「ある程度」であって、「抜本的に確実に」は、無理である。

一般論として、すべて、事件や事故が起こった時、その原因を探り、対策を立てる。

そのためには、その事件・事故はどのような状況で起こったのか、可能な限りたくさんの情報を集め、事実を正確に知る必要がある。

事実を正確に把握し、理論に経験を加えて、原因を推察し、対策を立てる。

その対策が有効だっかどうかは、事件・事故の再発頻度などでチェックする。再発頻度が減少すれば、それなりに効果があったと判定し、なければ、対策は失敗だったと判定する。

以上、きわめて基本的な改善ステップである。

ところが、日本の「ネカト・クログレイ・性不正・アカハラ」事件では、この基本的な改善ステップが根本的な個所から機能しない。

大きな欠陥は調査を担当する大学が事実を隠蔽しているからである。

性不正事件では、ほぼ100%の大学が事実を隠蔽している。

ネカト・クログレイ事件ではそこそこの情報を公表するが、隠蔽が基本体質になっているので、不都合な真実は隠蔽されている。

大学が隠蔽という意味は、大学の中の人間が隠蔽しているのである。その人間はだれかと言えば、大学教授である。大学教授は、つまり、学術研究者なので、学術研究者の大部分が隠蔽に加担・隠蔽を推進していることになる。

言わなくてもわかっていると思うが、もちろん、文部科学省は大学の隠蔽に加担している。

具体的に例示すると、文部科学省はネカト事例を公表している・・・が、ネカト犯の名前をワザワザ隠蔽して公表している。 → 文部科学省の予算の配分又は措置により行われる研究活動において不正行為が認定された事案(一覧):文部科学省

ネカト犯の名前を隠蔽するから、名前を割りだせる情報も隠蔽することになる。

論文のデータねつ造・改ざん事件や盗用事件の報告なのに、該当する論文名を隠蔽せざるを得ない。

その結果、さらに、どのデータをどのようにねつ造・改ざんしたのか、あるいはどの部分をどれだけ盗用したのかの説明ができない。

こんな状況で、事件・事故調査報告書は成り立たないと思うが、2015年度から始めたので、その方式でもう7年間も行なっている。

基本中の基本だが、事実が隠蔽されていては、事件・事故の原因はわからないし、まともな対策は立てられない。

わが国は、いつの間にか、研究不正大国になってしまった」のである(出典:黒木登志夫の著書『研究不正』289頁目)。

日本の処分は甘いと言われているが、その処分が研究者倫理の防止に有効なのかどうかの検証は、事実がこれほど隠蔽されていれば、ほぼできないし、誰も、していない。

研究倫理トレーニングは、米国および他の国での長い歴史があるにもかかわらず、このトレーニングは効果がないと繰り返し批判されてきた(Anderson et al.、2007 ; Antes et al.、2009 ; Kalichman、2014 ; Kornfeld、2012 ; Phillips et al.、2018)。(7-80 どうして研究不正するのか? | 白楽の研究者倫理

外国では、研究倫理トレーニングは役に立たないと言われている。日本は、あてずっぽに研究倫理トレーニングを行なっているが、日本のどのようなトレーニングがどのように有効なのか無効なのか、その検証もできない(していない)。

★プライバシーと公益 

以下は、「7-72 大学が守るプライバシーは誰のため? | 白楽の研究者倫理」から修正引用した。

「ネカト・クログレイ・性不正・アカハラ」事件の中でも、氏名公表で最も敏感な性不正事件で、加害者・被害者の氏名公表をどのように扱うか、考えた。

事件での氏名公表は「プライバシー」と「公益」の相反する価値をどう扱うかである。

現在の氏名公表は以下に示す3段階がある。

結論から言えば、「2.加害者を公表・被害者は非公表」が最適と思われる。なお、被害者名の公表は被害者が了承するなら、した方がいい。

比較は以下である。

  1. 強い隠蔽
    加害者・被害者の氏名非公表
    加害者の氏名がメディア報道されなくても、密室関係者(10~20人)は被害者の氏名を知ることができる。具体的には、加害者、被害者(と相談した友人や親)、大学・上層部、大学の調査員である。
    欠点:①不適切な調査の過程・内容・結論が改訂・改善されない。②大学・上層部などが情報を握ることで、加害教員をコントロールするなど権力の道具にする。
    公益:ない?
  2. 加害者を公表・被害者は非公表
    「1」の密室関係者(10~20人)以外に次の人たちが被害者の氏名を知る。
    加害者の氏名がメディア報道されれば、被害者の氏名を知ることができる人たちは、具体的には、加害者・被害者の研究室員の関係者で、友人、親、同級生、同じ学科の教員、同じ研究分野の他大学の研究者である。
    欠点:被害者の氏名が特定される可能性は「1」よりは高くなる。
    公益:①加害者の氏名がメディアで報道されれば、学生・教職員・同分野の研究者は自分が被害者にならないよう対処しやすい。②大勢の人が、その大学・学科への学部・大学院受験、教員応募、共同研究、寄付などを考慮できる。③他の大学・研究機関はその加害教員の採用を控えるなどの考慮ができる。④研究助成機関は研究助成で助成を控えるなどの考慮ができる。⑤賞授与機関は賞の選考で考慮できる。⑥ 事件がより鮮明に見え、発生状況が把握しやすくなり、事件の防止策を立てやすくなる
  3. 加害者・被害者の両者を公表
    ここでは、被害者の公表は被害者の了承の下での公表とする。
    欠点:被害者を異常なほど誹謗中傷する可能性がでてくる。何らかの対処が必要である。
    公益:①「2の①~⑥」が満たされる。②「1の⑥」に書いたが、さらに、事件が鮮明に見え、発生状況が把握しやすくなり、事件の防止策を立てやすくなる。

なお、日本の大学は「1」である。つまり、セクハラ加害者・被害者の両方の名前を秘匿する。

一方、米国を始め世界の大学は「2」または「3」である。つまり、加害者名を公表し、被害者名も多くは公表している。被害者名の公表は、被害者が了承する場合だが、かなりの事件で、被害者が名前の公表を了承している。

★研究ネカトの公益通報

以下は、「「間違い」:ルイ・クーリ(Rui Curi)(ブラジル) | 白楽の研究者倫理」から修正引用した。

研究ネカトの指摘は、行き過ぎることもあるだろう。

指摘された研究者は、大きなショックを受ける。

身に覚えがない場合、指摘が不当だと反論しても、報道刑は科され、悪い評判が学術界と世間を走る。

身に覚えがある場合、認めるにしろ、弁解するにしろ、窮地に立たされる。自業自得とはいえ、やはり、悪い評判が学術界と世間を走る。

研究ネカトの指摘・公益通報をどうするか、難しい。

どのようにすべきかという基準はない。従って、過不足の基準もない。

現在、社会実験を通して、学術界の国際的コンセンサスを作っているところだろう。日本の政府・学術界は、このことにあまりコミットしない態度をとっているように思える。

自分(白楽)のためにも、注意点を書いてみよう。

まず、研究ネカトをした人は人間である。生活があり、家族がある。幸せに生きる権利があることを忘れない。

  1. 事件の事実だけを記載する。そのために出典を引用する。記載に間違いがあれば(または、間違いとの指摘が正しいと確認できれば)、訂正する。
  2. 研究ネカト防止・システムの改善のために、事件を分析し、自分の解釈・考えを述べる。言論は自由でも、発言の責任はある。感情的な表現は避ける。ネカト者に問題があることは多いと思うが、誹謗中傷・脅迫はしない。
  3. 事実の記載(客観)と自分の解釈・考え(主観)が、読む人にわかるように、区別して書く。

ただ、研究者は、研究ネカトを悪いと知っていて行なうことが多い。追及された時の言動、調査報告、処分が公表されても、その記事には、表裏、秘匿、利害得失、メンツ、政治的配慮があり、公表された“事実”を鵜呑みにするのは危険である。

実態を理解するには多角的な推論が必要である。また、一般に公表されていない情報や、得にくい情報が、真実を語ることも多い。

結局、ギリギリである。研究ネカトの指摘・公益通報する人、分析・解説する人は、ギリギリの状況になる。

白楽自身、事件の理解に何度も過不足を感じている。また、数度、脅迫(のような行為)を受けている。匿名も致し方ない。

★大学の隠蔽

白楽が関与した日本のネカト事件で大学の隠蔽に遭遇した。 → 5C 名古屋大学・博士論文の盗用疑惑事件:② 隠蔽工作? | 白楽の研究者倫理

以下は、白楽が関与していない事件である。

2021年7月1日、川村学園女子大学は「非常勤講師の解雇について」という表題のお知らせを、大学のサイトに公表した。以下同サイトから。

文章は13行ある。「いつ」という情報はあるが、5W1Hをほぼ何も伝えていない。

ネカトではなく性不正・アカハラの事例だと思うが、この公表で、事件の事実を正確に把握し、その原因を推察し、対策を立てることは、この大学の教職員・学生でも、ほぼ不可能である。大学はメチャクチャ隠蔽している。

この「お知らせ」は誰に何を伝えたいのか?

大学のウェブサイトにアップされ、読むのにパスワード不要なので、学内の教職員や学生向けではなく、国民に伝えるためだろう。

では、これで、国民に何が伝わるのか?

白楽には、川村学園女子大学で教員が不祥事を起こしたこと、大学はその実態を隠蔽していることの2点が伝わった。

本来、川村学園女子大学はこの不祥事をきっかけに、さらに改善し、再発防止に取り組み、より良い大学にしていきます。だから皆さん、川村学園女子大学に入学してください。卒業生を雇用してください。大学を愛してください。というのが「お知らせ」の裏にあるメッセージだと思うが、まるで、反対のメッセージを伝えている。

川村学園女子大学のお知らせは、いささか度が過ぎているが、隠蔽がもっと徹底している大学もある。

例えば、以下に示した北海道大学だが、北海道大学は隠蔽がバレて新聞報道された。しかし、隠蔽がバレていない大学がどれだけあるのか、外部は知る手段がないので、当該大学関係者以外、文部科学省を含め日本の誰もわからない。

北海道大がセクハラやアカデミックハラスメントに当たる言動があったとして2010~12年、教授ら5人を停職や戒告の懲戒処分にしていたことが15日、情報公開請求や大学への取材で分かった。いずれも被害者保護を理由に公表していなかった。

北大はハラスメントが刑事事件になった場合は、学内での処分を明らかにすることもあるが、原則公表しないとしている。識者からは「再発防止のため広く開示するべきだ」との声が出ている。(2013年7年15日記事:セクハラやアカハラ続々、教授ら5人の処分未公表 北大 – MSN産経ニュース

日本のほとんどの大学は、川村学園女子大学と似たようなレベルから、もう少し情報を足すレベルで、「事件のお詫び」を公表していると思われているが、実際は、北海道大学のような完全隠蔽をする大学はかなりあるだろう(ココは想像)。

いずれにせよ、情報を十分伝えるケースは少数である。

基本的にあの手この手の隠蔽体質なのである。

★ 当該大学が調査する異常な制度

「ネカト・クログレイ・性不正・アカハラ」事件の調査は、欧米先進国も日本も該当大学・研究所が調査している。

話しを単純化するためにネカト調査に絞って考えていこう。

他の研究者も指摘しているし、白楽も前から指摘しているが、ネカト調査を当該大学に任せるのは原理的にオカシイ。

データねつ造・改ざんや盗用は、研究発表での不正行為である。つまり、研究の中身の不正行為だ。研究者集団の掟破りなので、これは、本来、研究者集団が対処すべき問題だ。

具体的には、学会だろう。

最近の例を挙げれば、昭和大学・麻酔科の上嶋浩順・講師(うえしま ひろのぶ)のデータねつ造事件がある。2020年6月に論文が撤回され、何か大きな事件が起こっている気配を感じたが、日本麻酔科学会は調査特別委員会を設置して、調査し、その結果を公表した。

学会として、まともな対応だと、最初は思った。しかし、調査報告書を読むと、関係⼤学に調査依頼を⾏なっていて、自分たちで主要点を調査していない。

結局、ネカト調査を当該大学に任せている。

そもそも、ネカト調査をする部署をもつ学会はほとんどない。

もう1つの側面は、論文は出版社が大学・研究所に売っている商品である。しかも、その値段はとても高額である。

その商品である論文にデータねつ造・改ざんや盗用があるなら、不良品を売っていることになる。商品が不良品だとわかった時点で、企業は、一般的に、商品の回収、謝罪、弁償などをする。また同時に、どうして不良品を売ることになったか調査し、2度と不良品を売らないようにするのが商道徳だと思う。

しかし、学術出版社はこの一部しかしない。自分たちで本格的な調査はしない。読者からの指摘や大学の調査結果を受けて処理する程度だが、数割の学術誌はその対応もしない。

ネカト調査に絞って説明してきたが、「クログレイ・性不正・アカハラ」事件の調査も同じで、欧米先進国も日本も該当大学・研究所が調査している。

以下は、「ロナルド・プラスターク(Ronald Plasterk)(オランダ) | 白楽の研究者倫理」から修正引用した。

前から指摘しているし、他の研究倫理学者も指摘しているが、ネカト調査を当該大学・研究所に任せるのは原理的にオカシイ。

  1. 利益相反がある。大学はクロの判定をすれば自分で自分の首を絞めることになる。
  2. ネカト調査委員は教授でネカト調査の素人である。素人が調査している。
  3. 捜査権がないのでまともな調査ができない。
  4. 調査委員は教授で調査は本務ではないので「余計な負担」がかかり、本務である研究・教育が阻害される。
  5. 大学・研究所にとってネカト調査は予定外の「余計な負担」である。
  6. 大学・研究所に所属していない研究者のネカトは誰も調査しない。結果、処分されない
  7. どのような大事件でも、大学・研究所の処罰は解雇(含・博士号取消など)・退職金なしまでである。つまり、刑務所刑や罰金刑は科されない
  8. 調査結果が出た時点で、大学・研究所を辞めていれば、ほぼ何も処罰できない(博士号取消などはできる)

などなど、最初からオカシイ設計である。

その上、日本の場合、クロと判定すると、研究室の教授や所属の学部長に監督責任などの連帯責任を負わせるから、研究室も大学も極力隠蔽する。

さらには、ネカト事件が表沙汰になると、文部科学省から補助金交付を減額される。だから、研究室も大学も極力隠蔽する。

ネカト疑惑と相談された教員や告発を受けた大学は、正義を通したい、公正にことを進めたいと思う気持ちもあるだろうが、それよりも全力で隠蔽したいと強く思う方がズッとまさる仕組みなのだ。

自大学の教員・院生の不正を隠蔽することで自分たちの組織・大学を守ろうとする。

★ 大学はどこでも隠蔽できる

そして、実に様々な段階・方法で、ネカトを隠蔽できるし、実際、隠蔽しているのである。

以下に、ネカトに関する調査のどの段階で大学は隠蔽しているか、見ていこう。各段階のすべてで隠蔽例が見つかっている。

  1. 指摘無視:研究者のネカト行為はウェブ上で指摘されている。しかし、ウェブ上での指摘に対応する大学はほぼゼロである。例えば、パブピア(PubPeer)で自大学の教員のネカト疑惑が指摘されても、対応した日本の大学はゼロだった(当社比)。白楽のブログで指摘した場合もゼロだった。つまり、ここの非対応率(1種の隠蔽率) は100%(推測)である。
  2. 通報無視:隠蔽の次の手段はネカト通報の無視である。つまり、大学は告発を受けても無視し、告発者に返事せず、予備調査をしない。
    なお、この段階をチェックするシステムはないので、隠蔽し放題である。
    隠蔽率(通報無視率)は大学によって異なると思うが、調査データはない。印象としてはかなり高い気もするが。隠蔽率 50%(推測)としよう
  3. 予備調査:通報を無視せず、通報に対応し、予備調査をしても、予備調査でシロと結論し、本調査をしない。予備調査委員は大学が選ぶので、ほぼ全員、大学側の御用委員である。
    なお、予備調査の内容をチェックするシステムはないので、隠蔽し放題である。
    「本調査数/予備調査数」の割合は大学によって異なると思うが、調査データはない。隠蔽率  50%(推測)くらいだろうか?
    なお、ロバート・バウフヴィッツ(Robert Bauchwitz)によれば、米国のネカト告発のほぼ90%は本調査されない(7-67 ネカト予備調査記録の欠落 | 白楽の研究者倫理)。つまり、米国では、「2+3」の隠蔽率は90%。
  4. 本調査:予備調査でクロと結論し、本調査に入っても、本調査で隠蔽する。つまり、本調査でシロと結論する。
    本調査でシロと結論した場合、基本的に、調査報告書公表しない。従って、調査委員以外、調査内容を知ることができない。隠蔽し放題である。隠蔽率は高いと思う。隠蔽率  80%(推測)くらいだろうか?
  5. 調査結果の非公表:本調査でクロになっても、調査結果を公表しないという方法で隠蔽する。公表しないので、この隠蔽率は推定になる。 80%(推測)くらいだろうか?
  6. 調査内容:調査結果を公表したとしても、その内容を隠蔽する。多く見られるのは、ネカト者の所属や名前を隠蔽する。調査委員名を隠蔽する。この隠蔽率は調査書を分析すれば正確なデータが得られる。白楽の推察だと隠蔽率は 90%くらい。性不正事件だと、隠蔽率は ほぼ100%である。
  7. 公表方法:調査結果を公表したとしても、人目につかないように発表する。学内の掲示板に1週間発表したと述べた国立大学もあった(学外者は知る由もなし)。ウェブサイト上に短日間掲載し削除する。メディアに伝えない(新聞記事にならない)。ウェブサイトに掲載した事件を大学は削除するので、このケースを含めると、隠蔽率は90%(推測)である。
  8. その他:調査過程ではないが、ネカトと指摘された論文・報告書を大学のウェブサイトから隠蔽する(例:名古屋大学、長崎大学)。

要するに、いつでも、どこでも、大学は隠蔽するのである。

公益よりも自大学が大事、学部生・院生が困ろうが、社会正義に背こうが、自大学の教員を守るという理屈で、大学管理職に就いている自分を守ろうとする。

ネカト事件の事実を正確に把握し、その原因を推察し、対策を立てたいと、白楽は思う。

しかし。こうやって隠蔽の実態を見ると、大学人にとって、保身が第一で、公益などどうでもいいことなのだ、という本音がわかる。

それで、国民の膨大なお金が無駄に使われ、まっとうな研究者の就職・昇進が奪われ、国民の健康被害・文化被害が起こる。正義は駆逐される。

これに対抗するには、どうしたらよいか? 

1‐3‐2.研究ネカトは警察が捜査せよ! 」だと思う。ただ、そこに至るまで、年月がかかる。

★隠蔽体質を変える

最後になるが、隠蔽体質をどうするか?

隠蔽を禁止する法律を作る(または文部科学省ガイドラインを改訂す)べきだ。

大学の公式な主張は「個人情報の保護」である。本音は「大学管理職に就いている自分を守りたい」のだと思うがそれは置いておこう。

一方、社会通念として、「透明性」「説明責任」が求められる。この「透明性」「説明責任」は民主主義の基本で、社会をよい方向に向ける手段の1つだと捉えられている。

つまり、大学は、「個人情報の保護」という理由で、「透明性」「説明責任」を拒否している。その結果、民主主義の基本をないがしろにし、社会をよい方向に向かうのを拒んでいるともいえる。

となると、「個人情報の保護」を勘案しつつも、「透明性」「説明責任」の基準を明確にし、隠蔽を禁止する法律を作る(または文部科学省ガイドラインを改訂す)べきだ。

ネカトで言えば、結果がシロであろうがクロであろうが、大学のネカト予備調査報告書とネカト本調査報告書のウェブ上への公表を義務化する。審査委員名を明記する。クロの場合、米国の研究公正局のようにネカト者を実名で公表する。

日本の現在の隠蔽体質のママでは、研究者倫理事件は減らない。

なお、米国でも、大学による隠蔽はある。そして、批判されている。

エイミー・ベンセネヘイヴァー(Amye Bensenhaver)は大学が性不正事件での隠蔽を疑問視している → 7-72 大学が守るプライバシーは誰のため? | 白楽の研究者倫理

ハーバード大学のクリムゾン編集委員会も性不正事件でのハーバード大学の隠蔽を疑問視している → 7-81 セクハラは文化習慣の問題で制度の問題ではない | 白楽の研究者倫理

 

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●白楽の卓見・浅見5【日本語破壊:ノーベル生理学・医学賞? 医学生理学賞?】 2021年10月3日

2021年10月4日からノーベル賞受賞者の発表が始まる。

日本は日本語を大事にしない。それどころか、破壊し、混乱させている。メディアもいい加減である。

皆さん、

スウェーデン語: Nobelpriset i fysiologi eller medicin
英語:Nobel Prize in Physiology or Medicine

の日本語はどうあるべきだと思いますか?

ちなみに、以下のようにバラバラです。

  • ノーベル生理学・医学賞:内閣府、文部科学省、ウィキペディア、読売新聞、日本経済新聞、科学新聞、スポニチ
  • ノーベル生理学医学賞:スポニチ
  • ノーベル医学生理学賞:毎日新聞、朝日新聞
  • ノーベル医学・生理学賞:NHK

日本政府が記者会見やプレスリリースで「ノーベル生理学・医学賞」と伝えても、NHKはいちいち「ノーベル医学・生理学賞」と書き換えて報道しているわけです。

それなりの哲学、考え方があると思いますよね。

9年前、質問しました。

どうして「ノーベル医学・生理学賞」と報道するのかと。

2012年10月9日のNHKからの回答が以下です。

白楽ロックビル 様

いつもNHKの番組やニュースをご視聴いただき、ありがとうございます。
お問い合わせの件についてご連絡いたします。

ノーベル医学生理学につきましては
日本では、なじみやすさなどから
医学生理学とする表記と
英語の語順に忠実にすることなどから
生理学医学とする表記と2通りの表記があります。
NHKは、なじみやすさなどから
現時点では、医学生理学という表記にしています。
ご理解の程をよろしくお願いします。

今後とも、NHKをご支援いただきますようお願いいたします。
お便りありがとうございました。

報道・取材センター 科学・文化部
NHKふれあいセンター(放送)

つまり、「生理学・医学賞」では「なじみやすくない」ので「医学・生理学賞」と。

皆さん、納得できます?

NHKの回答、漫才の「ボケ」かと思いました。

白楽は、当時、毎日新聞、朝日新聞にも質問しようとしたのですが、NHKのバカバカしい回答に唖然として、質問しませんでした。

NHKの科学・文化部って、こんな見識なんですね。

白楽は、「ノーベル生理学・医学賞」の名称に哲学を感じています。120数年前に「生理学・医学賞」を設定したノーベル財団の賢人の哲学です。

「生理学」は、現在、日本でも英語圏でもあまり使われなくなった言葉ですが、生命の基本原理を解明する学問です。幅広い意味の基礎医学です。日本の理学部、農学部、薬学部、工学部、そして医学部・歯学部・獣医学部の基礎で行なっている生物系の学問です。

ノーベル賞の「医学」は、幅広い意味の臨床医学です。病気の予防・診断・治療の方法開発です。

「ノーベル生理学・医学賞」は、つまり、基礎医学・臨床医学とも言えます。その両方に貢献する発見・発明でもいいし、片方に偏った発見・発明でもいい。でも「生理学」での発見・発明があって「医学」が発展する。つまり、ノーベル賞的「生理学」での発見・発明はノーベル賞的「医学」を視野に入れた発見・発明が望ましい。そうでなければ、「化学賞」の授与となる。

ノーベル賞的「医学」がほとんど視野に入っていない「ノーベル生理学・医学賞」の受賞は、1973年のコンラート・ローレンツの動物行動学くらいではないだろうか。動物行動学に「化学賞」は無理があり過ぎた。

「ノーベル生理学・医学賞」を受賞した5人の日本人受賞者の所属学部を示すと、利根川進は理学部、大村智は薬学部、大隅良典は理学部で、3人共、医学部ではない。山中伸弥、本庶佑は医学部だが、研究内容は「生理学」で、「医学」を視野に入れた発見である。

「生理学」はそれほど重要な学問なんです。

「生理学」→「医学」であって、「医学」→「生理学」という流れはない。

だから、「医学」を先に「生理学」を後にした「医学・生理学賞」はノーベル賞の哲学としてはオカシイ。天下のNHKがそのオカシイ「医学・生理学賞」を使っている理由が「なじみやすさ」では、唖然としてしまう。

「ノーベル生理学・医学賞」を使用する内閣府、文部科学省、ウィキペディア、読売新聞、日本経済新聞、科学新聞、スポニチは「なじみやすくない」用語を使っていると、喧嘩を売る気なのか。

しかし、NHKの例で見るように、日本のかなりの人たちは、「生理学」あっての「医学」という哲学に欠けている。

だから、欧米と異なり、「理学部、農学部、薬学部、工学部などの生物系学問」と「医学部」を隔離し、組織、給料、思想で差別している。それで、両者の人材の交流が少ない。結果的に、学問的な交流も少ない。

この断絶が、「物理学賞」「化学賞」の受賞者数に比べ、「ノーベル生理学・医学賞」に日本人受賞者は少なかった大きな理由である。2011年まで、利根川進1人しかいなかった。その後、増えてきたけど、今後はどうだろう?

NHKの科学・文化部の見識に、9年以上ガッカリしています。

メディアが日本語破壊の、そして日本文化破壊のお先棒を担いでいて、ガッカリです。

早いもので、このガッカリを1人で、9年間も抱えてきてしまった。今回オープンにし、皆さんとガッカリを共有、というか、皆さんに押しつけてしまった。

「押しつけ」ついでです。どなたか、毎日新聞、朝日新聞に質問してください。「どうして、ノーベル医学生理学賞と呼ぶのか?」と。

そして、回答を送ってください。意味ある回答なら、以下に貼り付けます。

 

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●白楽の卓見・浅見4【無関心なので日本の不正はなくならない】 2021年9月6日

白楽ブログでは、「ネカト・クログレイ・性不正・アカハラ」を研究者倫理として扱っている。

タイトルに「日本の不正」と書いたが、ここでの「不正」は、研究者倫理の不正を対象とする。

「日本の不正」はどうしてなくならないか? イヤイヤ、無くすのは無理だ。どうして減らないかだ。

根本的な原因は、日本の研究者がこれらの問題に「無関心」だからだ。

「無関心」、つまり、自分としては「不正」など、どうでもいい。しかるべき部署が適切に処理してくれているので、関心はない。

日本の研究者のほぼ99%(99.99%?)がそう思っているに違いない(データはないけど)。

研究者は、自分の周辺の不正を見つけようとしない。もし、不正を見聞きしても、通報しない。不正者を糾弾しない。

実際は、通報しても、当該大学が調査しないことがあり、調査しても甘い処罰しかしないと指摘されている。

これらも問題だが、多くの日本人研究者が「無関心」なら、根本的な問題として、不正の発覚はない。従って、当然、処罰はない。

ネカト防止の基本は、「必ず見つけ」、「必ず厳罰」することだ。しかし、「関心」が無ければ、最初の「発覚」に至らない。

「天網恢恢疎にして漏らさず」という「天網」はそもそも日本に存在しない。

文部科学省などを「天網」とみなすなら、「恢恢で疎なので」、ダダ漏れしている。なお、誤解するといけない。不正を「発見」するのは文部科学省の業務ではない。

不正に遭遇した各研究者が通報しなければ、不正は全く発覚しない。不正を見つける「しかるべき部署」は、日本には存在しない。現在の法的制度では、警察・検察・日本学術会議は動かない。

不正防止での「関心」の重要性は、既に、『情報の科学と技術』66巻、 2016年3月号「研究倫理」特集の「海外の新事例から学ぶ「ねつ造・改ざん・盗用」の動向と防止策」に書いた。

しかし、2021年現在も、つくづく、研究者倫理の不正を改善するのを阻む日本の最大の障壁は、研究者の「無関心」だと思う。

★ネカト

例としてネカトを取り上げる。

日本の大半の研究者は、日本のネカト対策の現状に無関心である。

ネカトに対して怒らない。撲滅するよう発言・行動しない。ネカト取り締まりを強化すべきだと思っていない。思っているかもしれないが、主張しない。大きな不満がない。改革の熱気はない。

これらは、調査データがないので正確にはわからないが、調査データないというその事自体、「無関心」の証拠である。

ネカト問題を研究する専門の研究者がいない。学術研究者の関心はとても低いということだ。

つまり、自分の大学の同僚教員が論文盗用の疑惑を受けても、調査を強く要求しない。同僚教員が結果として盗用と判定されても、盗用者を糾弾しないし、排除もしない。

ネカト者への処分は停職程度(解雇もある)なので、処分を受けても、停職期間が終わると大学の職場に復帰する。このことに、何も不満・不快を表明しないし、異常だとも言わない。

論文データをねつ造した研究者が同じ学会で研究発表していても、ねつ造者を糾弾しないし排除もしない。何も不満・不快を表明しないし、異常だとも言わない。

日本の学術研究者は不正に寛容なのか? 

そうも言えるが、そもそも、自分には関係がないと切り捨て、「無関心」なのである。

自分の責任下・管理下にないので、「無関心」なのである。

米国では、基本的に、ネカト者は研究界から排除される。その圧力は、研究者が不満・不快を表明し、異常だとも言い、ネカト者を排除する意向があるからだ。

なお、他の先進国も米国と同等の場合と、そうでない場合が混在している。国際的には統一されていない。

ただ、欧州はネカトに関する会議をそこそこ開催し、しっかりしたガイドライン・論文を発行・出版し、ネカトに対する関心は高い。

つまり、米国、欧州は研究者のネカトへの関心はかなり高い。

日本は、毎年、数十件のネカト事件が起こっているが、研究者がそれに対して強い発言をしない。強いどころか、ほとんど発言しない。「無関心」だからだ。

大騒動になった例外はある。

2014年の小保方晴子事件である。

この場合の発言は、ネカト事件に対する研究者の関心ではない。

小保方晴子はアイドルで、アイドルのスキャンダルという芸能ニュースとして騒がれた。研究絡みのスキャンダルだったから、研究者もテレビや新聞・雑誌でコメントした。ブログで発言した。理研に抗議の電話をし、メールを送った。

しかし、アイドルの芸能ニュースなので、あれほど大きく騒いでも、データねつ造・改ざんや盗用に対する中身や制度の議論はほとんど実らなかった。

言い方に語弊があるかもしれないが、お祭りのように騒いで、興奮し、楽しかった、で終ってしまった。

事件が沈静化してみると、事件から学ばず、ネカト対策で何の改善も見られなかった。お祭り騒ぎが終わって、人々は次のエンターテイメントに移っていっただけである。

★性不正・アカハラ

例として性不正・アカハラを取り上げる。

これも、自分の大学の同僚教員が性不正・アカハラの疑惑を受けても、調査を強く要求しない。結果として性不正・アカハラと判定されても、性不正・アカハラ者を糾弾しないし排除しない。

処分は停職程度(解雇もある)なので、処分を受けても、停職期間が終わり大学の職場に復帰することに、何も不満・不快を表明しないし、異常だとも言わない。

性不正・アカハラした男性研究者が同じ学会の懇親会でワイン片手に若い女性院生に話しかけてきても、拒絶しない。何も不満・不快を表明しないし、異常だとも言わない。

自分の最愛の娘が旧帝大に入学し、研究者を目指していたのに、研究室のスケベ教授にレイプされ、自殺した。それで、両親は激怒しスケベ教授を刺殺した、などという話しは日本では聞かない。

自分の自慢の息子が旧帝大に入学し、研究者を目指していたのに、研究室の極悪教授にアカハラされ、自殺した。それで、両親は激怒し極悪教授を裁判に訴えた、などという話しも日本では聞かない。

一方、中高生だと、どういうわけか、イジメられて自殺した場合、両親は激怒し、適正な調査を要求し、裁判に訴える。マスメディアも騒いで事件を煽る。

中高生と大学生の違いは何なんだろう? 大学生だと、両親やマスメディアは、なぜ激怒しないのだろうか?

インドだと、不正に対峙する学生たちが反対デモをするケースがいくつもあった。マスメディアはそれを記事に取り上げる。

例えば、以下は2018年にジャワハーラール・ネイルー大学のアトゥル・ジョリ教授(Atul Johri、微生物学)の性不正に対する学生たちの反対運動の動画である。

学生自治会のアディティ・チャテジー(Aditi Chatterjee)の叫び声に合わせたシュプレヒコールが、音楽イベントのようで、見ていて(聞いていて)見事である。 

2021年9月6日に見たら、動画は削除されていた → https://www.youtube.com/watch?v=0Y3Ni_apkTc

2021年9月6日、代わりに学生たちの反対動画を以下に示す(2018/03/23動画掲載)。

米国だと、不正に対峙する学生たちが不正教授の大学への復職に反対する抗議活動を繰り広げるケースがいくつもある。マスメディアはそれを記事に取り上げる。

日本は皆無である。

日本の場合、性不正・アカハラの被害を受けた学生の両親は不正に寛容なのか? 

いやいや、両親は「無関心」とは思えない。では、なぜ抗議しないのだろう?

日本の場合、性不正・アカハラの被害を受けた学生の所属する大学生は、加害教授の授業を受けたり、卒論・修論・博論指導を受けるのに不安を感じないのだろうか? 不快に思わないのだろうか? 教授の学識と人格は別としても、そのような加害教授の学識を尊敬して学べるのだろうか? 

いやいや、大学生は自分が次の犠牲者になるかもしれない不安があるハズだ。性不正・アカハラの加害教授の指導を受けるのに生理的に拒否反応が出てもおかしくない。では、なぜ抗議しないのだろう?

被害学生自身が損害賠償を求め、裁判を起こした例はあるが、大多数ではない。

両親やマスメディアや学生が表立って抗議しない「無関心」は、研究者の「無関心」へとつながる。

そして、日本の研究者も同僚研究者の性不正・アカハラに寛容なのだ。自分とは関係ない、自分の責任下・管理下にないとして、「無関心」だ。

★どうするか?

日本の「ネカト・クログレイ・性不正・アカハラ」を減らすには、この問題に対する研究者の「無関心」を、「関心」の方向に変えていくことが重要だと思う。

では、どうすれば「関心」の方向に変えていけるのか?

この問いに、ナサケナイケド、白楽、まともな答えをもっていない。

まともな答えではないと知りつつ、答えると、以下のようだ。

日本の研究者がこれらの問題に「無関心」であることが、問題改善への根本的な障害である。この「無関心」であることを、日本の研究者自身に認識してもらう。それが第一歩だ。

それで、ここに、この文章をしたためた。

 

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●白楽の卓見・浅見3【ノーベル賞受賞者の不祥事は多いと思うべし】 2021年8月3日(211113追記)

小野薬品工業を訴えているノーベル賞受賞者の本庶佑(ほんじょ たすく)の主張は常軌を逸している。「はした金だ」と一蹴しておいて、後になって、文句を付ける。傲慢。ただ、世間はノーベル賞受賞者だからと本庶佑の味方になっているようだ。 → 2021年9月2日記事:オプジーボ訴訟詳報① ノーベル賞受賞者・本庶氏「私がいなければ米製薬会社との訴訟勝てなかった」(産経新聞) – Yahoo!ニュース

しかし、以下が正論だと思う。

1%のライセンス料率を合意した契約の成立自体は争わないが、特許料の一般相場等の情報を知らないまま、不当に安いライセンス料率を認めさせられたのだという主張をしています。

立派な成人が契約書を締結しながら、後で「こんなはずではなかった」と契約を無かったことにしようというのは、客観的に見て無理筋です。(2019/04/12記事:オプジーボ特許料問題 交渉戦術の選択に残る2つの疑問 – サインのリ・デザイン

ところが、日本の司法はノーベル賞の権威に負けて、法律を曲げてしまった。以下の記事がそれを示している。

2021年11月12日、小野薬品が本庶氏に解決金50億円を支払うほか、大学に230億円を寄付して「小野薬品・本庶 記念研究基金」を設立することで合意した。(本庶佑氏に解決金50億円、京大に230億円寄付 オプジーボ和解 | 毎日新聞

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以下の「卓見・浅見3」は「グレッグ・セメンザ(Gregg Semenza)(米) | 白楽の研究者倫理」をベースにしている。

日本社会はノーベル賞受賞者を人格高潔で万能な超人扱いをする。

ノーベル賞受賞者だけでなく、文化勲章など著名な賞を受賞した非常に優れた人は人格高潔で万能である。悪人はいない、というわけだ。[なお、ここでは顕著な研究成果をあげた例を、代表格のノーベル賞で通すが、他の著名な賞、顕著な研究成果も同じである]。

だから、ノーベル賞受賞者がデータねつ造・改ざんや論文盗用などするわけがない。セクハラも全くしないし、アカハラなどはあり得ない。と、日本人と日本社会(メディア・行政)は思っているようだ。

そこまで断言しなくても、ノーベル賞受賞者の不祥事は極めてまれと思っているようだ。

ノーベル賞受賞者が 厚顔無恥で傍若無人な言動 をしても、日本社会は、好意的、あるいは大目に見るように白楽は感じる。

単に有機化学の専門家だけなのに、国の教育再生会議の座長をしてしまう野依良治というノーベル賞受賞者がいた。

有機化学の専門家であって教育は素人でしょうに、その人に、国の教育方針を任せる官僚の見識を疑うし、引き受ける野依の見識も疑う。

いちいち挙げないが、しかし、超人扱いの例はたくさんある。

では、ノーベル賞受賞者は研究成果だけでなく研究公正も優れているのだろうか?

白楽は否定的である。

科学的業績と規範的言動は、基本的に、全く別である。

あえて言えば、科学的業績を上げるためにアクドイことをし、その業績を他人に認めさせるためにエゲツナイことをしないと、大きな賞をはもらえない。

「あえて言えば」と、多く人の尊敬を集めている受賞者の、「あえて」、負の側面を強調誇張した。強く言わないと人々は今までの自分の価値観を変えないからだ。

普通に考えてわかると思うが、激しい研究競争を勝ち抜くのに、謙譲は美徳にならない。マイナスである。温厚な性格では無理だ。

結果として、ノーベル賞受賞者は自己主張とズル賢さが人一倍強く、ネカト・クログレイはギリギリという研究者が多い、と思う。この表現も負の側面を述べたが、誇張はしていないつもりだ。

何度も言うが、ノーベル賞は研究者の研究規範行動や人格・教養・人間性が優れていると評価されたわけではない。

人間は、周囲が特別扱いをすると、自分は特別だと思い、社会ルールからはずれても許容されると思うようになる。

もちろん、ノーベル賞受賞者には規範に優れた人もいる。しかし、全体的には、研究界全体の平均と比較すれば平均以下だろう(データはないと思うが)。

誤解しないでもらいたい。ノーベル賞受賞者の研究成果は素晴らしい。これは間違いない。いくら強調しても、し過ぎない。

ネガティブに聞こえる人には、申しわけないが、ただ、ネカト研究者の白楽としては、その上で、それと人間性・規範行動は別に考えて欲しいと言いたいのだ。

今まで白楽ブログではノーベル賞受賞者の不祥事絡みの記事を8件取り上げた。

  1. 盗博:宗教学:キング牧師(Martin Luther King Jr.)(米)
  2. 「間違い」:ジャック・ショスタク(Jack W. Szostak)(米)
  3. 「性的暴行」:カールトン・ガジュセック(Carleton Gajdusek)(米)
  4. 化学:フランシス・アーノルド(Frances Arnold)(米) 2021年1月19日
  5. グレッグ・セメンザ(Gregg Semenza)(米) 2021年7月18日
  6. マイケル・ロスバッシュ(Michael Rosbash)(米)2021年10月4日掲載
  7. 「性不正」:文学:デレック・ウォルコット(Derek Walcott)(米)2021年10月7日掲載
  8. ルイ・イグナロ(Louis Ignarro)(米)2021年10月10日掲載

しかし、他にも問題者(含・研究公正以外)は以下のようにたくさんいる(網羅していない。順不同)。

研究者平均でカウントすると、データはないのだが、ノーベル賞受賞者の不祥事は多いと思う。

  1. ウィリアム・ショックレー – Wikipedia
  2. アレクシス・カレル – Wikipedia
  3. ロバート・ミリカン – Wikipedia
  4. ジェームズ・ワトソン – Wikipedia
  5. リンダ・バック – Wikipedia 
  6. ブルース・ボイトラー – Wikipedia
  7. ダニエル・カーネマン – Wikipedia:間違い
  8. ポール・ナース – Wikipedia
  9. マーティン・エヴァンズ – Wikipedia
  10. フレイザー・ストッダート – Wikipedia
  11. ジョン・マザー – Wikipedia → 言いがかり?:blackbody.pdf
  12. ハラルド・ツア・ハウゼン – Wikipedia → Nobelist Harald zur Hausen and the Scamferences – For Better Science

 

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●白楽の卓見・浅見2【ネカト事件の告発率を上げよ】 2021年7月23日

「卓見・浅見2」は「アール・ロバートソン(Erle Robertson)(米) | 白楽の研究者倫理」をベースにしている

まさか、読者の中に、日本の文部科学省や大学がネカト(ねつ造・改ざん・盗用)を独自に摘発していると思っている人はいないと思うけど、大丈夫ですよね。

米国だって、研究公正局が自発的にネカトを摘発・調査しているわけではないのも、OKですよね。

第三者機関の調査は望ましいけど、日本には第三者機関の調査はない。米国の研究公正局も第三者機関としてネカト調査してはいない。わかってますよね。

現在、米国では、ネカトの発覚・対処の平均的な進み方は以下のようだ。[ ]は特殊なケースである。

  1. 発見:ネカトハンター、または、ネカト遭遇者がネカトを見つける。
     ネカト遭遇者は、たまたま自分または自分の周囲(研究室の同僚・指導者・室員、共同研究者、読んだ論文など)でネカトを見つけた人である。
     大学の研究公正官(各大学に1人必須)やネカト調査員がネカトを見つけるわけではない。ネカトの発見は非常に重要だが、個人の趣味というか、ボランティアというか、とっても脆弱なシステムに依存している。
     → 公的システムをつくるべし
  2. 告発:第一次追及者は、パブピア(PubPeer)でネカト箇所を指摘し、同時に、論文を掲載した学術誌とネカト疑惑者の所属する大学に通報する。
     [①自分でウェブ上に公表、②自分でツイッターなどの社交メディアで公表、③情報提供しネカトハンターのブログ記事に掲載してもらう、などのケースもある]
     被盗用者の告発率はもっと高いと思われるが、ネカト遭遇者の内の2~10%(?)しか告発しない。告発したネカト遭遇者とネカトハンターを第一次追及者と呼ぶ。
     → 2~10%と言われているので、大半は見逃されているのが現実
  3. 調査:所属大学が調査する。クロなら、①ネカト者を解雇(辞職)などの処分をする。②学術誌に論文撤回の要請をする。③研究助成機関に報告する。④調査結果を発表する(しない場合もある)。
     [FBIなどが調査し、その後、裁判、となることもある]
  4. 研究助成機関:生命科学系なら研究公正局が大学調査の認定作業をし、クロなら連邦政府の官報にネカト内容とネカト者を実名で公表する。助成金申請禁止の処分を科す。
     なお、研究公正局はほとんどの盗用を調査対象外としている。
  5. 論文撤回:大学または著者からの要請を受け、学術誌は論文を撤回する。
     学術誌に論文撤回の告知を掲載し、撤回理由も記載する。論文はウェブ上から削除せずRETRACTED」と赤字の印をつける。
     [編集部・編集長が独自に判断し、著者の反対を押し切って撤回する場合もある]。
  6. メディア:「撤回監視(Retraction Watch)」が論文撤回をウェブ記事にする。「Scientist」誌、「Science」誌などの研究メディア、ニューヨーク・タイムズ紙、地元の新聞、当該大学の大学新聞など産業メディアも記事にすることがある。
     白楽ブログなど個人がウェブで取り上げる。
     [まれにテレビ・ニュースで放映される]。
  7. 裁判:極端な場合、裁判となる

ここで、大きな問題は2つある。

1つは、上述したように「1」「2」のネカト発見・告発は、「個人的趣味というか、ボランティアというか、とっても脆弱なシステムに依存している」点である。

米国でもこの点は大きな問題だが、日本にはネカトハンターがいない。また、ネカト遭遇者の日本の告発率のデータないので推測になるがかなり低いと思われる。

日本政府はこの点を改善すべきだ。つまり、ネカトハンターの活動を育成する。そして、ネカト遭遇者の告発率を上げる。

もう1つの問題は、「3」の調査である。大学は公正にネカトを調査し、正確な調査結果を公表している、と多くの米国人は信じている気がする。

公正に調査し正確な結果を公表するのは、当然のことながら、国民への説明責任である。

しかし、米国の大学は日本ほどではないが、そこそこ隠蔽する。

★ 日本の事情

以下、日本の実態になるが、日本には大学のネカト調査(とその報告書)をチェックする人・システムがない。

思うに、日本の大学はネカト調査で隠蔽し放題である。

だから、非常に低劣な調査(とその報告書)からまともな調査まで混在している。誠実に熱心に調査し、まともな調査報告書を公表しても何も褒めてもらえない。

調査にはかなり能力の高いヒト・カネ・エネルギーがかかるので、それで、バカバカしくなる。

バカバカしくなれば、「悪貨は良貨を駆逐する」ので、大学の調査(とその報告書)は悪くなる。調査(とその報告書)を研究したデータがないので、ここは印象だが、悪くなる一方の気がする。

米国の話から日本の話に流れてしまった。日本の実態は、別途「白楽の卓見・浅見」で述べた方がいいですね。

 

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●白楽の卓見・浅見1【悪行の2要素は「苗(なえ)」と「たんぼ」】2021年7月23日

★はじめに

2014年、ネカト・クログレイを対象に白楽ブログを始めた。

ネカト・クログレイは、研究規範の問題なので、「研究規範」として扱った。研究上のエシックス(ethics)だからだ。エシックス(ethics)は、研究という業界の中で研究をする場合の掟、基準、ルール、善悪、約束だ。

しかし、日本全体は「研究倫理」という言葉が使われていた。「研究倫理」だと、研究上のモラル(moral)で、そのニュアンスは、 道徳、品格、エチケット、マナーである。

上記の分類でいえば、欧米が問題にしているのはエシックス(ethics)であってモラル(moral)ではない。

それで、白楽は、「研究規範」でしばらく通したが、日本での受けが良くない。仕方なしに、「研究倫理」を使った。

2018年頃から、米国で性不正・アカハラも研究者の規範に取り入れる動きが始まった。

それで、白楽ブログも、性不正・アカハラを扱うことにした。

性不正・アカハラは研究上の不正行為ではない。研究者という人間の不正行為である。

この場合もエシックスと扱うべきだが、言葉はモラルである。

それで「ネカト・クログレイ・性不正・アカハラ」を合わせて研究者倫理とした。

★悪行の2要素

研究者倫理違反に対処するには、これら悪行を起こす状況の把握が重要である。

悪行の2要素を稲の生長に例えて「苗(なえ)」と「たんぼ」としよう。「タネ」と「土壌」、あるいは、「遺伝子」と「環境」でもいいが、「タネ」や「遺伝子」という遺伝的素因に初期の発育も加えた苗木の方が適切である。

苗(なえ)」は、籾(もみ)をまき、育苗箱で育て、田植えするまでで、研究者の人生では、子供が育ち、研究界に触れる・入る前、つまり、大学学部2年生くらいまで、約20歳までだ。この時期に受けた家庭の教育・しつけ、そして、人格形成期の教育・友人・社会情勢などで形成される生来の性格(personality traits)が重要である。この生来の性格(personality traits)がベースとなって、研究者個人の人間性・性格・気質・価値観などその人特有の性情が決まってくる。生来の性格(personality traits)は、一度形成されると、変えるのが難しい。

たんぼ」は、「苗(なえ)」が田植えされて稲に育つ土地である。植えられた稲(「苗(なえ)」)はその「たんぼ」の栄養・日照・水利・風光などの影響を受けて育つ。肥料や雑草取りなど育成者の手間暇でも育ちは異なる。師が、情熱を注ぎ、研究資金・時間・手間をかけて、学生・院生を育てる。師が研究の規範を示すことで伝える研究倫理教育もここに含まれる。しかし、研究を実施する研究室や大学、もっと大きくは、その国の研究システム、さらには社会システムなど、制度的な枠がガッチリと研究活動を規定する。その時代の学術システムの中でしか研究者は研究できない。研究者個人としては、ほぼ、変えがたい。

だから、

院生(「苗(なえ)」)によって性情が異なるので、同じ研究室の中にいてもネカトをする院生としない院生がでてくる。

国によって「たんぼ」が異なるので、ネカトが多い国と少ない国がある。

★対処

「苗(なえ)」が主原因で悪行をした研究者は、「たんぼ」を変えても、研究者倫理の再教育をしても、うまく育たない可能性が高い。

本人も自分の性情と合わない世界、研究者倫理違反の前科者として同僚・仲間から白い目で見続けられる世界で生きることは不幸だと思う。

研究界から排除すべきである。

正確なデータはないが、研究者倫理違反者の再発頻度は高い。

白楽がこの白楽ブログで伝え・考えたいことは、「苗(なえ)」にも言及するが、基本的には日本の研究者倫理(研究者規範の方がしっくり)の「たんぼ」(「土壌」「環境」)を改善したいということだ。

日本の研究者規範の「たんぼ」(「土壌」「環境」)を改善したい。

日本の皆さんの力をお借りして、一歩でも(イヤイヤ、大規模に、徹底的に、トコトン)改善したい。

日本はかつて、「嘘をつかない」「悪いことはしない」「約束は守る」「義理人情に厚い」「親切で」、精神世界で優れた国だった。それが今はカネまみれ、ウソまみれ。

国のトップである首相が平然と国民をダマし、嘘をつく。国を動かす官僚も保身に走り、国民をダマし、嘘をつく。

そして、あろうことか、学者まで、データねつ造・改ざんをし、他人の文章を盗用して論文を書く。また、それを指摘されてもとがめない。 → 5C 名古屋大学・博士論文の盗用疑惑事件:③ 疑惑の証明 | 白楽の研究者倫理

さらには、自分を慕って研究室にきた女性院生の胸を揉み、男性院生を奴隷のようにこき使い・罵倒する。

こういう現実を変えたいんです。

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、日本に飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。