化学:チャド・マーキン(Chad Mirkin)(米)

2025年3月30日掲載 

ワンポイント:マーキン教授は、カヴリ賞(Kavli Prize)など数々の賞を受賞し、巨額の研究費を得、多数の室員を抱えるノースウェスタン大学のスーパースター科学者である。2024年(60歳)、17年間以上自分の論文を批判してきたフランスのラファエル・レヴィ教授(Raphaël Lévy)を名誉棄損で裁判に訴えると脅迫した。レヴィ教授は、長年、マーキンと犬猿の仲で、脅迫される数か月前、マーキンの「2024年2月のPNAS」論文でのデータ隠蔽などを指摘していた。2025年3月現在、「パブピア(PubPeer)」で、マーキンの17論文を批判している。2024年8月、「2024年2月のPNAS」論文は訂正された。国民の損害額(推定)は1千万円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
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●1.【概略】

チャド・マーキン(Chad Mirkin、Chad A. Mirkin、ORCID iD:?、写真出典)は、米国のノースウェスタン大学(Northwestern University)・教授で、専門はナノ化学である。

マーキンは、巨額の研究費を得、1000件以上の特許を持ち、多数の室員を抱え、ナノテクノロジー関係の企業をいくつも抱えるスーパースター科学者である。数々の賞を受賞し、2024年、カヴリ賞(Kavli Prize)を受賞した。

他方、フランスのラファエル・レヴィ教授(Raphaël Lévy)は、長年、マーキンと犬猿の仲で、マーキンの研究内容を17年間以上批判し続けている。2025年3月現在、「パブピア(PubPeer)」で、マーキンの17論文を批判している。

今回とりあげたのは、レヴィ教授がマーキンの「2024年2月のPNAS」論文でのデータ隠蔽などを批判したことで、マーキンがレヴィ教授を名誉棄損で裁判に訴えると脅迫した事件についてである。

2024年5月15日(60歳)、レヴィ教授がデータ隠蔽などを批判したのに怒ったマーキンは、レヴィ教授に「差し止め命令書(cease and desist letter)」を送付し、名誉棄損で訴える、と脅迫した。

2024年7月16日(60歳)、「撤回監視(Retraction Watch)」がこの脅迫事件を記事にした。

2024年8月(60歳)、「撤回監視(Retraction Watch)」の記事を読んだマーキンは、「2024年2月のPNAS」論文を訂正した。

2025年3月29日(61歳)現在、裁判に訴えると脅迫したが、実際は、レヴィ教授を訴えていない。

ノースウェスタン大学(Northwestern University)。写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:米国
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:ペンシルベニア州立大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:1963年11月23日
  • 現在の年齢:61歳
  • 分野:ナノ化学
  • 論争論文発表:201x~2025年(xx~61歳)の17年間以上、
  • 論争論文発表時の地位:ノースウェスタン大学・教授
  • 大きな論争年:2024年(60歳)
  • 大きな論争時地位:ノースウェスタン大学・教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者はフランスのラファエル・レヴィ教授(Raphaël Lévy)で学術誌に通報
  • ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、「撤回監視(Retraction Watch)」、「Scientist」、「Chemistry World」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌・編集部。②ノースウェスタン大学は調査していない
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。調査していない
  • 大学の透明性:調査していない(✖)
  • 問題点:ズサン
  • 問題論文数:複数論文あるが、今回の事件に限れば1論文
  • 時期:研究キャリアの中期・後期
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
  • 処分:なし
  • 対処問題:
  • 特徴:自分の研究内容を批判した研究者に「差し止め命令書(cease and desist letter)」を送付し裁判に訴えると脅した
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は1千万円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

主な出典:(1):ウィキペディア英語版:Chad Mirkin – Wikipedia、(2):チャド・マーキン Chad A. Mirkin | Chem-Station (ケムステ)

  • 1963年11月23日:米国のアリゾナ州フェニックスで生まれる
  • 1986年(22歳):ディキンソン大学(Dickinson College)で学士号取得:化学
  • 1989年(25歳):ペンシルベニア州立大学(Pennsylvania State University)で研究博士号(PhD)を取得:化学
  • 1989年(25歳):マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology)・ポスドク:化学
  • 1991年(27歳):ノースウェスタン大学・助教授
  • 1995年(31歳):同・準教授
  • 1997年(33歳):同・正教授
  • 201x~2025年(xx~61歳):17年間以上、ラファエル・レヴィ教授と研究上の論争
  • 2024年2月(60歳):後で訂正する「2024年2月のPNAS」論文を出版
  • 2024年4月(60歳)頃:ラファエル・レヴィ教授に「2024年2月のPNAS」論文が批判された
  • 2024年5月(60歳):ラファエル・レヴィ教授を裁判に訴えると脅迫
  • 2024年8月(60歳):「2024年2月のPNAS」論文を訂正

●3.【動画】

動画が多数ある
Chad A. Mirkin – YouTube

以下2例を示すが、事件の動画ではない。

【動画1】
「チャド・マーキン」と紹介。
インタビュー動画:「Exploring the “Matterverse” with Nanomaterial Megalibraries –2022 MRS Medal Winner Chad Mirkin – YouTube」(英語)4分09秒。
WebsEdge Science(チャンネル登録者数 2.21万人) が2022/11/29に公開

【動画2】
研究紹介動画:「[The 3rd KAIST Emerging Materials e-Symposium] Chad A. Mirkin (Northwestern) – YouTube」(英語)44分32秒。
카이저소재(チャンネル登録者数1620人) が2023/01/25に公開

●5.【問題発覚の経緯と内容】

★スーパースター

16年前の2009年1月7日の「チャド・マーキン Chad A. Mirkin | Chem-Station (ケムステ)」によれば、チャド・マーキン(Chad Mirkin)は、既に、スーパースター科学者だった。

  • トムソンISI社2007年度の調査によれば、化学分野における論文引用数世界第7位となっています。
  • 680以上の論文と1000以上の特許を有している
  • 5つのナノテクノロジー関係の企業(Nanosphere, NanoInk, AuraSense, Exicure, TERA-print)の創始者である。

2024年、カヴリ賞(Kavli Prize)を受賞した。 → Exoplanets, Biomedicine, and Recognizing Faces | The Kavli Prize

2024年11月11日保存の以下の写真に示すように、マーキン研究室にはウン十人の室員がいる。

写真出典

★獲得研究費

チャド・マーキン(Chad Mirkin、Chad A. Mirkin)は、巨額の研究費を獲得している。

科学庁(NSF)から34件、NIHから86件、合わせて、1990~2021年の32年間に120件の研究費を獲得していた。このサイトでは獲得研究費の総額を簡単に見つけられない。 → Grantome: Search

別のサイトだと、NIHから1997~2025年の29年間に43件、計52,615,134ドル(約53億円)の研究費を獲得していた。 → RePORT ⟩ Chad Mirkin

2024年にNIHから獲得したグラントを示すと以下の2件である(出典上記)。

★ラファエル・レヴィ(Raphaël Lévy)との論争

フランスのソルボンヌ・パリ・ノール大学(Université Sorbonne Paris Nord)のラファエル・レヴィ教授(Raphael Levy、Raphaël Lévy、写真出典)は、長年、マーキンと学問的に対立していた。

なお、レヴィ教授は2020年10月まで英国のリバプール大学(University of Liverpool)・上級講師(Senior Lecturer)だったが、単純化のため、ここでは、ソルボンヌ・パリ・ノール大学・教授で通す。

2人の対立の焦点は、生細胞のRNAを検出および視覚化するためのツール「スマートフレア(SmartFlares)」の有効性についてである。

2013年、ミリポア・シグマ社(MilliporeSigma)は、生細胞のRNAを検出および視覚化するためツールとして「スマートフレア(SmartFlares)」を市販した。 → SmartFlare Live Cell RNA Detection Probes | Life Science Research | Merck

マーキンは「スマートフレア(SmartFlares)」の開発側で、もちろん、有効性を支持している。

例えば、既に、2007年(43歳)の論文で、マーキンは「スマートフレア(SmartFlares)」支持している。 → Nano-Flares:  Probes for Transfection and mRNA Detection in Living Cells | Journal of the American Chemical Society

科学コミュニティは当初、この「スマートフレア(SmartFlares)」の有効性を認めていた。

しかし、レヴィ教授は、「スマートフレア(SmartFlares)」の有効性を否定した。

白楽が論文を検索すると、「スマートフレア(SmartFlares)」の有効性を否定する論文「SmartFlares fail to reflect their target transcripts levels | Scientific Reports」と肯定する論文「SmartFlareTM is a reliable method for assessing mRNA expression in single neural stem cells – PMC」が混在する。

2018年8月、米国のボストンで開催された米国化学会(American Chemical Society)で2人は対立し、乱暴な議論で衝突し、加熱した応報が続いた。

そして、レヴィ教授が、「どのくらいのフレアがエンドソームから実際に逃れるのか?」と質問した時、マーキンは動揺し、質問に答えられなかった。

頭にきたマーキンは、レヴィ教授を「科学テロリスト」と呼んだ。

★レヴィ教授のパブピアでの攻撃

レヴィ教授は、マーキンの論文の問題点を「パブピア(PubPeer)」で指摘した。

例えば、2020年6月(56歳)、マーキンの「2008年のPNAS」論文を批判した。 → PubPeer:「2008年のPNAS」論文

  • Peptide antisense nanoparticles.
    Patel PC, Giljohann DA, Seferos DS, Mirkin CA.
    Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Nov 11;105(45):17222-6. doi: 10.1073/pnas.0801609105.PMID: 19004812

「パブピア(PubPeer)」のそのページには、マーキンの以下の論文にも同じ問題があると指摘している。最初の2件と最後の1件だけ、指摘年月を白楽が加えた。

2025年3月29日現在、レヴィ教授は、「パブピア(PubPeer)」で、マーキンの17論文にコメントしている。 → PubPeer:Chad Mirkin AND Lévy

★「2024年2月のPNAS」論文

2011年(47歳)、球状核酸(SNA:Spherical nucleic acid)を病気の診断と治療に開発しようと、マーキンはバイオベンチャーのエクシキュア社(Exicure, Inc.)を共同設立した。 → Chad Mirkin, Nanoscale Drugs and Diagnostics: Innovation + New Ventures – Northwestern University

2024年2月(60歳)、マーキンは「2024年2月のPNAS」論文で、ナノテク免疫療法の有効性を強調し、エクシキュア社が行なった実験的癌治療薬としての球状核酸(SNA)の臨床試験について言及した。

2024年4月頃(60歳)、レヴィ教授はこの論文に噛みついた。

マーキンの論文によると、この球状核酸(SNA)の実験薬は「最高用量で33%の反応率」を示したとある。ただ、この33%は、その根拠も参考文献も示されていなかった。

それで、レヴィ教授はこの33%の根拠を探った。

すると、どうやら、エクシキュア社が発表した中間報告書(プレスリリースおよびカンファレンスでのプレゼンテーション)からのものと思われた。 → 423 Safety and preliminary efficacy of intratumoral cavrotolimod (AST-008), a spherical nucleic acid TLR9 agonist, in combination with pembrolizumab in patients with advanced solid tumors | Journal for ImmunoTherapy of Cancer

その中間報告書での33%は、6人の患者のうちの2人の患者の結果だった。

こんなわずかな症例で、33%という2桁の有効数字を示すのは、科学論文としては、かなりズサンである。

レヴィ教授は、症例が少ないのに、33%と述べ、「球状核酸(SNA)を強力なナノ治療薬の一群」と記述したのは誤解を招くと、学術誌「PNAS」編集部に問題点を伝えた。

以下はレヴィ教授が2024年7月15日に公開した学術誌「PNAS」編集部への手紙の冒頭部分(出典:同)。全文(2ページ)は → https://zenodo.org/records/12746734

なお、レヴィ教授は、同様の主張を「パブピア(PubPeer)」でも、リンク先を示した。→ PubPeer – 「2024年2月のPNAS」論文

★マーキンの脅迫

2024年5月15日(60歳)、マーキンは怒って、フィリップ・ジスーク弁護士(Phillip J. Zisook)を通して、レヴィ教授に「差し止め命令書(cease and desist letter)」を送付した。

その中で、レヴィ教授は上記の手紙で、マーキンの研究について「明らかに虚偽で中傷的な」発言をしたと非難し、名誉棄損で訴えると、と脅迫した。

「差し止め命令書(cease and desist letter)」の脅迫部分には、レヴィ教授が英国のリバプール大学在職中に、リバプール大学があなたの研究不正行為を調査したことを知っていますよ、とか、ソルボンヌ大学の同僚があなたの誹謗中傷発言を問題視していたのを知っていますよ、など、「弱みを握っているぞ」的な脅し文句を並べている。

そして、マーキンに関する批判を広め続けると、あなたを名誉棄損で訴え、かつ、あなたの所属するソルボンヌ・パリ・ノール大学を一緒に訴えますよ、と、しっかり、脅迫した。

以下は「撤回監視(Retraction Watch)」が公開した「差し止め命令書(cease and desist letter)」(2024年5月15日)の冒頭部分(出典:同)。全文(4ページ)は → https://retractionwatch.com/wp-content/uploads/2024/07/Cease-and-Desist-to-R.-Levy-5_15_20241348054-clean.pdf

★論文の訂正

数か月前にレヴィ教授に問題点を指摘され、2024年5月15日に「差し止め命令書(cease and desist letter)」で脅迫したが、2024年7月16日に「撤回監視(Retraction Watch)」が記事にしたため、2024年8月2日(60歳)、マーキンは、結局、「2024年2月のPNAS」論文を訂正した。 → 論文訂正

訂正は、この医薬とその臨床試験での成績に関する参考文献を4件追加するという訂正だった。

4件のうちの1件はレヴィ教授の手紙の参考文献10だった。他に追加した参考文献は、レヴィ教授が手紙の中で言及した臨床試験とその結果に関する企業のプレスリリース、およびこの薬の第1相試験に関する出版物だった。

なお、学術誌「PNAS」は、レヴィ教授の手紙の公開を拒否した。内容が脅迫だったので、学術誌「PNAS」は公開したくなかったのだろう。それで前節で示したようにレヴィ教授自身が手紙を公開した。

「撤回監視(Retraction Watch)」の質問にも、学術誌「PNAS」は、訂正記事に追加するものは何もないと、論文訂正に至ったことについてのコメントを拒否した。[白楽の感想:学術誌「PNAS」は尊大ですね。学術界の大御所になると「ズ(頭)が高い」]

また、マーキンも「撤回監視(Retraction Watch)」のコメント要請に応じていない。

しかし、レヴィ教授は、訂正は論文の主要な点を修正していないと批判した。つまり、依然として、「読者を誤解させるために、事実を厳選し(6人の患者のうちの2人の患者で33%の効果ありとした)、球状核酸を強力なナノ治療薬(powerful class of nanotherapeutics.)と記述している」と批判したのだ。

さらに、レヴィ教授は、マーキンはフラッシュポイント・セラピューティクス社(Flashpoint Therapeutics)との関係を論文では明らかにしていないと学術誌「PNAS」に伝えた。つまり、その会社との利益相反をまだ論文で公表していない、と指摘した。

実は、「2024年2月のPNAS」論文出版の2年前の2022年1月1日、マーキンは、球状核酸(SNA)薬を開発するための会社、フラッシュポイント・セラピューティクス社(Flashpoint Therapeutics)を新たに設立していたのである。 → Flashpoint Therapeutics 2025 Company Profile | PitchBook

【ネカト・クログレイの具体例】

明確なネカトは指摘されていない。

ズサンなデータ、利益相反などのクログレイ案件である。

撤回論文はないが、訂正論文はある。これらは上記したので、ここに再掲しない。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

データベースに直接リンクしているので、記事閲覧時、リンク先の数値は、記事執筆時の以下の数値より増えている(ことがある)。

★パブメド(PubMed)

2025年3月29日現在、パブメド(PubMed)で、チャド・マーキン(Chad Mirkin、Chad A. Mirkin)の論文を「Chad A. Mirkin[Author]」で検索した。1998~2025年の28年間の681論文がヒットした。

2025年3月29日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。

★撤回監視データベース

2025年3月29日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでチャド・マーキン(Chad Mirkin、Chad A. Mirkin)を「Mirkin」で検索すると、 0論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2025年3月29日現在、「パブピア(PubPeer)」では、チャド・マーキン(Chad Mirkin、Chad A. Mirkin)の論文のコメントを「Chad Mirkin」で検索すると、20論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》意見の相違 

研究者Aの「研究不正」を別の研究者Bが指摘した時の対処ルールは、おおむね確立されている。

しかし、ルール通りに対処しないことは珍しくない。

その上、研究不正を指摘した研究者Bが研究者Aに報復されることも珍しくない。

珍しくないどころか、2~3割の頻度で起こっている、イヤイヤ、2~3割ではなく、9割近いかもしれない(データはない)。

研究不正が曖昧な場合、対処ルールは確立されておらず、大きく振れる。

研究不正ではなく、「学問上の意見の相違」があった場合、研究界はどうするとよいのか?

研究者によるデータ検討とディスカッション、データの再現性の検討、さらなる研究などで、一定のコンセンサスを得て、科学が進歩してきた。

つまり、学問上の意見の相違の解決に、法廷は出てこなかったし、出てくるべきではない。真実は法律で決まらないからだ。

《2》脅迫 

チャド・マーキン(Chad Mirkin)はレヴィ教授の「学問上の意見の相違」を止めさせるために、法的手段に訴えると脅迫した。この行為は、基本的に間違っている。

マーキンは多額の研究費を得て、多数の院生・ポスドクを抱え、特許も取り、会社も設立しているスーパースター研究者である。

マーキンは元々傲慢なのか、有名になり権力・金力を得て傲慢になったのかわからないが、よろしくありませんね。

批判された「2024年2月のPNAS」論文を、マーキンは、結局、訂正したが、「差し止め命令書(cease and desist letter)」を送付し脅迫したことは、研究者道(研究者の道理)を外れ、研究規範を越えている。

日本でも、研究不正の事実を指摘した人を名誉棄損で訴える「スラップ訴訟」(説明は以下)をするぞ、と脅す研究者がいた(いる)。

法外な損害賠償により、スラップ訴訟を提起された者を不安な気持ちにさせ、これ以上の言論や運動、発言等が委縮されることになります。(2023年12月28日:スラップ訴訟とは?意味や判例の定義と問題点3つをわかりやすく解説|リーガレット

研究界は、研究公正活動を阻害する(脅す)研究者・組織に何らかの制裁を科す仕組みを設けた方が良い。小さなゴタゴタは許容の範囲内かもしれないけど、言論の自由が強く抑圧され、事実の隠蔽が大きいと、研究規範は低下する。

チャド・マーキン(Chad Mirkin)。写真出典

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日本の人口は、移民を受け入れなければ、試算では、2100年に現在の7~8割減の3000万人になるとの話だ。国・社会を動かす人間も7~8割減る。現状の日本は、科学技術が衰退し、かつ人間の質が劣化している。スポーツ、観光、娯楽を過度に追及する日本の現状は衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今、科学技術と教育を基幹にし、人口減少に見合う堅実・健全で成熟した良質の人間社会を再構築するよう転換すべきだ。公正・誠実(integrity)・透明・説明責任も徹底する。そういう人物を昇進させ、社会のリーダーに据える。また、人類福祉の観点から、人口過多の発展途上国から、適度な人数の移民を受け入れる
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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●9.【主要情報源】

① ウィキペディア日本語版:チャド・マーキン – Wikipedia
② ウィキペディア英語版:Chad Mirkin – Wikipedia
③ チャド・マーキン(Chad Mirkin)研究室の室員:Mirkin Research Group – People
④ 2018年9月5日、カタリーナ・ジマー記者(Katarina Zimmer)の「Scientist」記事: RNA Detection Tool Debate Flares Up at ACS Meeting
⑤ 2024年7月16日のエリー・キンケイド(Ellie Kincaid)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Exclusive: Kavli prize winner threatens to sue critic for defamation – Retraction Watch
⑥ 2024年8月6日のエリー・キンケイド(Ellie Kincaid)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:PNAS corrects article by Kavli prize winner who threatened to sue critic – Retraction Watch
⑦ 2024年8月14日のダルミート・チャウラ(Dalmeet Singh Chawla)記者の「Chemistry World」記事:Award-winning chemist threatens to sue critic | News | Chemistry World
⑧ 2024年8月20日のラファエル・レヴィ教授(Raphaël Lévy)のブログ記事:Legal threat against me: a correction at PNAS, a follow-up at Retraction Watch, and pieces in Chemistry World, Science, and at the In The Pipeline Blog | Rapha-z-lab