ラケッシュ・シュリヴァスタファ(Rakesh Srivastava)(米)

2018年12月31日掲載

ワンポイント:シュリヴァスタファはインド生まれ・育ちで、カナダのゲルフ大学(University of Guelph)で研究博士号(PhD)を取得し、米国のカンザス大学医療センター(Univ. of Kansas Medical Center)・教授になった。2018年11月13日、研究公正局は、シュリヴァスタファ(59歳?)の「2012年のNIH研究費申請書」に40-50%の文章の盗用があったと発表した。2年間の締め出し処分を科した。シュリヴァスタファが盗用を否定し、研究公正局の処分は不当であると、行政不服審査(Departmental Appeals Board)に訴えたことで、この事件は、研究公正局の調査終了後、3年間の審理を要した。なお、研究公正局と行政法審判官が次の方針を導入した点で画期的である。方針:研究主宰者(PI)は、自分でネカト(ねつ造・改ざん・盗用)をしていないし、知らなかったとしても、論文、ポスター、研究費申請書、研究報告などにネカトがあれば、ネカト行為で有罪となる。国民の損害額(推定)は1億4,600万円。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説

5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

ラケッシュ・シュリヴァスタファ(Rakesh Srivastava、写真)は、インド生まれ・育ちで(推定)、カナダのゲルフ大学(University of Guelph)で研究博士号(PhD)を取得した。2009 -2014年(50 ? 55歳?)、米国のカンザス大学医療センター(Univ. of Kansas Medical Center)・教授だった。専門は薬学である。

2012年6月5日(53歳?)、カンザス大学・教授のシュリヴァスタファはNIHに研究費申請書を提出した。

2012年10月(53歳?)、カンザス大学は、この研究費申請書に盗用があるとの通報を受け、調査を開始した。

2014年(55歳?)、カンザス大学の調査、その後の研究公正局の調査で盗用が確定し、研究公正局は、3年間の締め出し処分を科すとシュリヴァスタファに通知した。

2014年(55歳?)、カンザス大学はシュリヴァスタファを解雇した。

ところが、シュリヴァスタファは、盗用を否定し、研究公正局の処分は不当であると、健康福祉省(HHS)の行政不服審査(Departmental Appeals Board)に訴えた。

2018年9月5日(59歳?)、3年間の審理の後、行政法審判官のキース・シッケンディック(Keith W. Sickendick)が研究公正局の判断を支持すると判定したが、3年ではなく2年の締め出し期間を提案した。

2018年11月13日(59歳?)、研究公正局は、シッケンディック審判官の判定を受け、シュリヴァスタファの盗用を発表し、2018年10月22日から2年間の締め出し処分を科した。

このシュリヴァスタファ事件で重要な点は、従来の方針を2018年に修正をしたことだと、リチャード・ゴールドスタイン弁護士(Richard Goldstein)が指摘している。

つまり、研究主宰者(PI)は、自分でネカト(ねつ造・改ざん・盗用)をしていないし、知らなかったとしても、論文、ポスター、研究費申請書、研究報告にネカトがあれば、ネカト行為に対して責任を負う可能性がある。

この方針で、研究公正局は研究主宰者(PI)であるシュリヴァスタファを有罪と判定し、行政法審判官(Administrative Law Judge)は、その判定を支持した。

なお、研究公正局が盗用を摘発するのはとても珍しい。2013年のプラティマ・カーニック(Pratima Karnik)以来なので、5年ぶりである。

今回、研究公正局は、「2012年のNIH研究費申請書」についてだけクロと判定した。しかし、白楽が調べているうちに、ネカトは「2012年のNIH研究費申請書」だけではないことが判明してきた。

シュリヴァスタファの「2001年のJ Biol Chem」論文で盗用が指摘されていた。ただ、この盗用実行者は不明のままである。

また、パブピア(PubPeer)は、「2010年のPLoS One」論文や「2010年のClin Cancer Res」論文で画像のねつ造・改ざんを指摘している。

つまり、証拠があるだけで2001-2012年の12年間も、シュリヴァスタファは盗用とデータねつ造・改ざんをしてきたのである。

カンザス大学医療センター(Univ. of Kansas Medical Center)。写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:インド
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:カナダのゲルフ大学(University of Guelph)
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1959年1月1日生まれとする。1981年の大学卒業時を22歳とした
  • 現在の年齢:60 歳?
  • 分野:薬学
  • 最初の不正:2001年(42歳?)(推定)
  • 発覚年:2012年(53歳?)
  • 発覚時地位:米国のカンザス大学医療センター・教授
  • ステップ1(発覚):NIH研究費申請書の盗用なので、研究費の審査員(推定)。
  • ステップ2(メディア):
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①カンザス大学医療センター・調査委員会。②研究公正局
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:研究公正局でクロ判定(〇)
  • 不正:盗用。ねつ造・改ざん
  • 不正数:9件(推定)。1件のNIH研究費申請書が盗用。1論文は盗用で撤回。7論文にねつ造・改ざんの指摘
  • 時期:研究キャリアの中期
  • 職:事件後に解雇されたが、移籍し研究職を続けた(?)
  • 処分:NIHから2年間の締め出し処分
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は1億4,600万円。内訳 ↓

  • ①研究者になるまで5千万円。研究者を辞めていないので損害額は0円。
  • ②大学・研究機関が研究者にかけた経費(給与・学内研究費・施設費など)は年間4500万円。研究者を辞めていないので損害額は0円。
  • ③外部研究費。外部研究費はNIHだけで約3億4338万円あるが、研究費申請書の盗用なので、研究費の損額は0円。
  • ④調査経費。第一次追及者の調査費用は100万円。大学・研究機関の調査費用は1件1,200万円、研究公正局など公的機関は1件200万円。学術出版局は1つの学術誌あたり100万円で1つの学術誌なので100万円。小計で1,600万円
  • ⑤裁判経費は2千万円
  • ⑥論文撤回は1報当たり1,000万円、共著者がいなければ100万円。撤回論文は1報で共著者がいるので1,000万円。
  • ⑦アカハラ・セクハラではない。損害額は0円。
  • ⑧研究者の時間の無駄と意欲削減+国民の学術界への不信感の増大は1億円。
  • ⑨健康被害:損害額は0円とした。

●2.【経歴と経過】

主な出典:①:Srivastava, Rakesh K. – LSUHSC School of Medicine、②:Bio-Sketch: RK Srivastava, Dr. RK Srivastava, Rakesh Srivastava, Srivastava RK

  • 生年月日:不明。仮に1959年1月1日生まれとする。1981年の大学卒業時を22歳とした
  • 1981年(22歳?):大学卒業。インドの大学(推定)
  • 1981 – 1987年(22 – 28歳?):インドで研究し論文出版
  • 1987 – 1990年(28 – 31歳?):カナダのニューファンドランドメモリアル大学(Memorial University of Newfoundland)で修士号を取得:
  • 1991 – 1994年(32 – 35歳?):カナダのゲルフ大学(University of Guelph)で研究博士号(PhD)を取得:
  • 1994 – 1996年(35 ? 37歳?):米国のNIH・国立がん研究所(NCI)・ポスドク
  • 1996 – 1999年(37 ? 40歳?):国立科学アカデミー・国立研究評議会・フェロー(Fellow, National Research Council, National Academy of Sciences)
  • 1999 – 2005年(40 ? 46歳?):メリーランド大学・薬学部(Dept. of Pharmaceutical Sciences, University of Maryland)・助教授
  • 2005 – 2008年(46 ? 49歳?):テキサス大学タイラー医療センター(Univ. of Texas Health Science Center at Tyler)・準教授、後に教授
  • 2009年9月21日 -2014年(50 ? 55歳?):カンザス大学医療センター(Univ. of Kansas Medical Center)・教授
  • 2012年6月5日(53歳?):後に問題となる研究費申請書をNIHに提出した
  • 2012年10月(53歳?):カンザス大学は研究費申請書に盗用があるとの通報を受けた
  • 2014年7月3日(55歳?):ンザス大学は研究費申請書の盗用を確定し、シュリヴァスタファを解雇した
  • 2015年(56歳?):研究公正局の処分に不服だったので、健康福祉省(HHS)の行政不服審査(Departmental Appeals Board)に訴えた
  • 2015 – 2016年(56 ? 57歳?):ミズーリ大学カンザスシティ校(University of Missourie-Kansas City)・教授
  • 2016年(57歳?):ルイジアナ州立大学大学の健康科学センター(Louisiana State University Health Sciences Center)・教授
  • 2018年9月5日(59歳?):行政法審判官のキース・シッケンディック(Keith W. Sickendick)が研究公正局の判断を支持すると判定したが、3年ではなく2年の締め出し期間を提案した
  • 2018年11月13日(59歳?):研究公正局が盗用を発表した。締め出し期間は2018年10月22日から2年間

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★研究費

ラケッシュ・シュリヴァスタファ(Rakesh Srivastava)は1989-2018年に20件のNIH研究費を獲得している。その総額は、3,433,761ドル(約3億4338万円)で、研究費の獲得はとても上手である。以下に、最近の9件を示す。

2009年(50歳?)、ラケッシュ・シュリヴァスタファ(Rakesh Srivastava)はテキサス大学からカンザス大学への移籍に伴い、妻のシャルミラ・シャンカー(Sharmila Shankar、カンザス大学・準教授)と共に、カンザス大学に3百万ドル(約3億円)の研究費をカンザス大学にもたらした、と大学が報じている。
→ 2009年10月26日記事:Two new cancer researchers bring $3 million in NCI funding to The University of Kansas Cancer Center

★「2001年のJ Biol Chem」論文は盗用

シュリヴァスタファの以下の「2001年のJ Biol Chem」論文に盗用が指摘された。論文は翌年・2002年に撤回された。論文出版時、シュリヴァスタファはメリーランド大学・薬学部(Dept. of Pharmaceutical Sciences, University of Maryland)・助教授だった。妻のシャルミラ・シャンカー(Sharmila Shankar)は共著者になっていない。

この時の盗用実行者は特定されていない。メリーランド大学が調査をしたのかどうか不明である。研究公正局からは何も発表されなかった。

★「2012年のNIH研究費申請書」:研究公正局

ラケッシュ・シュリヴァスタファ(Rakesh Srivastava)はNIH研究費の審査員だった。

2012年6月5日(53歳?)、カンザス大学・教授のシュリヴァスタファはNIHに研究費申請書を提出した。

2012年10月(53歳?)、カンザス大学は上記の研究費申請書に盗用があるとの通報を受けた。なお、通報した人の名前は公表されていない。NIH研究費申請書の盗用なので、研究費の審査員だと思われる。

カンザス大学と研究公正局は調査の結果、シュリヴァスタファが提出したNIH・研究費申請書は、ハーバード大学のマルシア・ハイジス教授(Marcia Haigis、写真出典)が2011年10月に提出したNIH・研究費申請書から40-50%の文章を盗用したことを見つけた。

シュリヴァスタファはNIH研究費の審査員だったので、マルシア・ハイジス教授のNIH・研究費申請書を審査した。その時、マルシア・ハイジス教授のNIH・研究費申請書の文章を手に入れたのだ。

シュリヴァスタファは盗用を指摘された時、マルシア・ハイジス教授の研究費申請書の盗用を知らなかったと主張した。研究費申請書の作成を手伝った複数のポスドクや研究員の内の誰かが盗用したのであって、自分は知らなかったと主張した。

それにもかかわらず、研究公正局は、シュリヴァスタファが「故意」または「意図的に」盗用した資料を申請書に記載したとし、3年間の締め出し処分を科した。

2014年7月3日(55歳?)、カンザス大学は研究費申請書の盗用でシュリヴァスタファを解雇した。なお、同時に、妻で同じカンザス大学・準教授のシャルミラ・シャンカー(Sharmila Shankar)も解雇(辞職)した。以下の写真出典

★行政不服審査

2015年(56歳?)、研究公正局からのクロ内定の通知を受け、シュリヴァスタファは、研究公正局の処分は不当だと健康福祉省(HHS)の行政不服審査(Departmental Appeals Board)に訴えた。

2018年9月5日(59歳?)、3年間の審査の後、キース・シッケンディック(Employee Profile of Keith W. Sickendick ? Administrative Law Judge)・行政法審判官(Administrative Law Judge)は、シュリヴァスタファの訴えを棄却した(PDFを以下に貼り付けた)。

以下の文書(行政法審判官の審査結果)をクリックすると、PDFファイル(8.63 MB、25ページ)が別窓で開く。

判決までに3年近くかかったが、シッケンディック審判官は、重要な事実についての争点はないので審問(hearing)を不要とし、研究公正局の結論を支持した。

つまり、シュリヴァスタファがネカト行為を否定しているという主張をを含め、双方が提示した証拠を検討した後、シッケンディック審判官は、シュリヴァスタファが故意にそして意図的に研究の不正行為を犯したことに疑う余地はないと結論付けた。ただ、3年間の締め出し処分は過剰だとし、2年間にした。

なお、行政不服審査(Departmental Appeals Board)?とは何かに関して、2007年の佐藤雄一郎の論文「ミスコ ンダクトの調査における手続保障 ? J-Stage」が参考になるだろう。

2018年11月13日(59歳?)、行政法審判官の判決を受け、研究公正局は、シュリヴァスタファの盗用を発表し、2018年10月22日から2年間の締め出し処分を科した。

★新方式:主宰者(PI)はネカトを知らなくても有罪

研究主宰者(PI)であるシュリヴァスタファは研究費申請書の作成を手伝った複数のポスドクや研究員の内の誰かが盗用したのであって、彼自身は知らなかったと主張した。

自分が審査した他の研究者のNIH・研究費申請書から40-50%の文章を盗用する行為は、少し経験を積んだ研究者なら、バレることは予見できる。シュリヴァスタファ自身が盗用したとすれば、狂気の沙汰である。百歩譲っても、シュリヴァスタファが実行者とは思えない。

では誰が実行したのか?

研究公正局は実行者を特定していない。というか、特定できなかったのだろう。シュリヴァスタファは「研究費申請書の作成を手伝った複数のポスドクや研究員」と主張しているので、白楽が推定するに、妻のシャルミラ・シャンカー(Sharmila Shankar、カンザス大学・準教授)が実行者ではないだろうか。そうだとすると、シュリヴァスタファはなんとしても、実行者を隠蔽したいだろう。また、その隠ぺいの結果、自分が処分を受けても甘んじて受け入れるだろう。

このように、実行者を特定できない場合、ネカト調査は難航する。

それで、研究公正局は新方式を導入した。

研究主宰者(PI)は、ネカト(ねつ造・改ざん・盗用)を実行していないし、気付いていなかったとしても、研究公正局は研究費申請書を提出した研究主宰者(PI)を有罪と判定した。そして、行政法審判官(Administrative Law Judge)は、その判断を支持した。

つまり、この方式は、従来と異なる。この新方式は2018年の導入され、ネカト処分では重要だと弁護士のリチャード・ゴールドスタイン(Richard Goldstein、写真出典は以下の記事)が「撤回監視」記事で指摘している。
→ 2018年12月3日のリチャード・ゴールドスタイン(Richard Goldstein)の「撤回監視」記事:A colleague included plagiarized material in your grant proposal. Are you liable? ? Retraction Watch

上に述べた「知らなかった」けど有罪が、新方式の重要性の第一点である。

第二点は、シュリヴァスタファ事件では研究費申請書の盗用だったが、この新方式は研究費申請書での盗用に限らない。

論文、ポスター、研究費申請書、研究報告に、誤ったデータまたは加工されたデータが含まれていて、その誤ったデータまたは加工されたデータが含まれていることを著者が知らなかった場合でも、ネカト行為に対して責任を負う可能性がある。つまり、ネカトの「実行者」であることを証明するよう研究公正局に要求していない。

第三点は、研究公正局にとってネカトと断定することがかなり容易になったことである。シュリヴァスタファ事件では研究費申請書に盗用された証拠があり、その研究費申請書をシュリヴァスタファが提出しようとしていたことを証明しただけでネカトと判定できた。つまり、盗用が「意図的」だったことの証明を研究公正局に要求していない。

そして、ネカト被疑者が訴訟に持ち込んでも、行政法審判官は研究公正局の新方式を支持してくれる。

今後、ネカト行為で訴えられた研究者は、訴訟ではなく示談で解決することを選択するかもしれない。

シュリヴァスタファ事件での行政法審判官の判決は、NIHの研究助成を受けたすべての研究者に重要である。 シュリヴァスタファ事件は「盗用」の事例だが、研究の不正行為は「盗用」にとどまらない。データねつ造・改ざんも含まれる。

従って、シュリヴァスタファ事件の判決後、論文、ポスター、研究費申請書、研究報告に盗用やデータねつ造・改ざんがあれば、それらに名前を冠した人は誰でも研究不正行為の責任を負わされる危険性がある。特に、ポスドクや部下に研究を遂行させ、生データを自分で調べない教授・上司・研究主宰者(PI)は、自分でネカト(ねつ造・改ざん・盗用)をしていないし、知らなかったとしても、ネカト行為に対して責任を負わされる可能性が高い。

なお、シッケンディック審判官の判決が高等裁判所に支持されるかどうかは時が経てば分かる。

ただし、現時点で次のことをアドバイスしたい。研究主宰者(PI)、研究費申請者、論文著者、その他NIHの研究費受領者は、自分の名前を出版物に付けている場合、盗用文章やねつ造・改ざんデータがないかどうかをチェックし、見つかれば、排除べきである。

なお、研究公正局が新しい方針を導入し、行政法審判官がそれを支持したケースはシュリヴァスタファ事件が2件目である。1件目は、2018年5月31日、キース・シッケンディック・行政法審判官がクリスチャン・クレプキー(Christian Kreipke)に対して下した判決である。
→ クリスチャン・クレプキー(Christian Kreipke)(米) | 研究倫理(ネカト、研究規範)

★もう1つの裁判

2016年2月25日(57歳?)、シュリヴァスタファは上記の行政不服審査(Departmental Appeals Board)に訴えたのとは別に、妻のシャルミラ・シャンカー(Sharmila Shankar)と共に、カンザス大学を契約違反で訴える裁判をカンザス州のワイアンドット郡地方裁判所(Wyandotte County District Court)に起こした。

シュリヴァスタファの主張は、研究助成金の違法な活動を監督する権限を持つカンザス大学・幹部に、研究費の不適切な会計処理をしていると繰り返し懸念を表明したため、その報復として、カンザス大学から解雇された。これは契約違反であるとシュリヴァスタファと妻のシャルミラ・シャンカーは主張した。

2018年4月13日(59歳?)、しかし、2年間後、ワイアンドット郡地方裁判所はシュリヴァスタファと妻のシャルミラ・シャンカーの訴えを棄却した。2人は敗訴したのである。

以下の文書(裁判結果)をクリックすると、PDFファイル(152 KB、23ページ)が別窓で開く。

★盗用の具体的内容

シュリヴァスタファが提出した「2012年のNIH研究費申請書」は、ハーバード大学のマルシア・ハイジス教授(Marcia Haigis)のNIH・研究費申請書から40-50%の文章を盗用していた。

盗用比較表は公表されていない。また対象がNIH・研究費申請書なので、第三者はアクセスできない。

結局、盗用の具体的内容は不明である。

★パブピア(PubPeer)の指摘

研究公正局の発表ではネカトと指摘していないが、ラケッシュ・シュリヴァスタファ(Rakesh Srivastava)の7報の論文にパブピア(PubPeer)がデータ異常を指摘している。2論文を以下に示す。

【2010年のClin Cancer Res.論文】
出典:PubPeer – Sulforaphane enhances the therapeutic potential of TRAIL in…

テキサス大学タイラー医療センター(Univ. of Texas Health Science Center at Tyler)・教授の時の論文である。妻のシャルミラ・シャンカー(Sharmila Shankar)が第1著者である。

図6Cの組織図は異なるマウスまたは異なる染色なのに、赤枠で囲んだ2つの画像は同じである。青枠で囲んだ2つの画像も同じである。どちらか、あるいは両方とも、ねつ造である。

 

 

【2010年のPLoS One論文】
出典:PubPeer – Resveratrol enhances antitumor activity of TRAIL in prostate…

テキサス大学タイラー医療センター(Univ. of Texas Health Science Center at Tyler)・教授の時の論文である。妻のシャルミラ・シャンカー(Sharmila Shankar)が共著者になっている。

図4AはBaxで染色した組織図で異なる処理をしている異なる組織なのに、赤枠で囲んだ2つの画像は同じである。どちらか、あるいは両方とも、ねつ造である。

図5B(上段)はMMP 9で染色した組織図。図 6B(下段)は赤TRAILで染色した組織図である。茶色枠で囲んだ2つの画像は同じである。但し、水平に反転している。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

2018年12月30日現在、パブメド(PubMed)で、ラケッシュ・シュリヴァスタファ(Rakesh Srivastava)の論文を「Rakesh Srivastava [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2018年の17年間の125論文がヒットした。

「Srivastava RK[Author]」で検索すると、1956~2018年の23年間の409論文がヒットした。本記事で問題にしている研究者の論文も含まれていると思われる。

2018年12月30日現在、「Rajamani U[Author] AND Retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、以下の1論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2018年12月30日現在、「パブピア(PubPeer)」はラケッシュ・シュリヴァスタファ(Rakesh Srivastava)の8論文にコメントしている:PubPeer – Search publications and join the conversation.

8論文の内、本記事で問題にしている研究者の論文は7報で、1報は別人である。

●7.【白楽の感想】

《1》ネカトは常習性

シュリヴァスタファは「2001年のJ Biol Chem」論文で盗用が指摘された。この時、大学は調査に入らなかった。2002年に「2001年のJ Biol Chem」論文は撤回されたが、盗用実行者は不明のままである。

そして、2012年6月5日(53歳?)にNIHに提出した研究費申請書で盗用が指摘され、この件で、研究公正局から処分を受けた。

しかし、パブピア(PubPeer)は、「2010年のPLoS One」論文や「2010年のClin Cancer Res」論文で画像のねつ造・改ざんを指摘している。

つまり、明白な事実だけで、2001年、2010年、2012年とネカトをしている。12年間も盗用やデータねつ造・改ざんをしてきたのである。

法則:「強い衝撃がなければ、研究者はネカトを止めない」

研究公正局はシュリヴァスタファの「2012年のNIH・研究費申請書」しか問題視していないが、他のNIH・研究費申請書や論文にネカトがあることはほぼ確実だ。

大学も研究公正局もネカト追及の意欲がなさすぎである。

http://www.rksrivastava.com/bio_sketch.html

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●8.【主要情報源】

① 研究公正局の発表:(1)2018年11月13日:Case Summary: Srivastava, Rakesh | ORI – The Office of Research Integrity、(2)2018年11月16日:Federal Register:Federal Register :: Findings of Research Misconduct
② 2018年11月14日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Former University of Kansas researcher who plagiarized Harvard prof banned from Federal funding for two years ? Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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