サラ・マーティン(Sarah Martin)(米)

2024年2月5日掲載 

ワンポイント:2023年11月15日(29歳?)、研究公正局は、オーバーン大学(Auburn University)・院生だったマーティンの1件の研究費申請書、1報の発表論文、1本の投稿原稿、6件の研究会発表、研究室の4件の研究記録、にねつ造・改ざんがあったと発表した。2023年11月3日から3年間の締め出し+その後2年間の監督期間(Supervision Period)処分を科した。計5年間の処分は少し重い処分である。国民の損害額(推定)は1億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

サラ・マーティン(Sarah Martin、Sarah Elizabeth Martin、ORCID iD:、写真出典)は、米国のオーバーン大学(Auburn University)・院生だった。専門は分子生物学である。

ネカト発覚の経緯は記載がないが、投稿原稿や研究室の研究記録のネカトも指摘されている。従って、告発した人は、研究室の上司、つまり、ジョアンナ・シュトゥーバ=ソリンスカ助教授(Joanna Sztuba-Solińska)と思われる。本記事では、シュトゥーバ=ソリンスカ助教授とする。

「2021年9月のRNA」論文のネカトが指摘されているので、発覚時期はそれ以降である。2021年後半(27歳?)と推定した。

オーバーン大学がネカト調査を終え、クロと判定し、研究公正局に報告した。

2023年11月15日(29歳?)、研究公正局(ORIロゴ出典)は、オーバーン大学(Auburn University)・院生だったマーティンの1件の研究費申請書、1報の発表論文、1本の投稿原稿、6件の研究会発表、研究室の4件の研究記録、にねつ造・改ざんがあったと発表した。

2023年11月3日(29歳?)から3年間の締め出し+その後2年間の監督期間(Supervision Period)処分を科した。計5年間の処分は少し重い処分である。

オーバーン大学(Auburn University)。写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:米国
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:なし
  • 男女:女性
  • 生年月日:不明。仮に1994年1月1日生まれとする。2018年9月にオーバーン大学所属で第2著者の論文を出版している。この時を24歳とした
  • 現在の年齢:30歳?
  • 分野:分子生物学
  • 不正論文発表:2021年(27歳?)
  • ネカト行為時の地位:オーバーン大学・院生
  • 発覚年:2021年(27歳?)
  • 発覚時地位:オーバーン大学・院生
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は研究室の上司、つまり、ジョアンナ・シュトゥーバ=ソリンスカ助教授(Joanna Sztuba-Solińska)と思われる
  • ステップ2(メディア):「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①オーバーン大学・調査委員会。②研究公正局
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:研究公正局でクロ判定(〇)
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:研究公正局は1件の研究費申請書、1報の発表論文、1本の投稿原稿、6件の研究会発表、研究室の4件の研究記録。2024年1月4日現在、撤回論文は1報
  • 時期:研究キャリアの初期
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けられなかった(Ⅹ)
  • 処分: NIHから 3年間の締め出し+その後2年間の監督期間
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は3億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

Sarah Martin | LinkedInに2023~2027年、オーバーン大学(Auburn University)とあるが、ヘンなので採用しない。

  • 生年月日:不明。仮に1994年1月1日生まれとする。2018年9月にオーバーン大学所属で第2著者の論文を出版している。この時を24歳とした
  • 20xx年(xx歳):xx大学で学士号を取得
  • 20xx年(xx歳):オーバーン大学(Auburn University)・院生:分子生物学
  • 2021年9月(27歳?):後で撤回される「2021年9月のRNA」論文を出版
  • 2021年後半(27歳?):不正が発覚(推定)
  • 2022年2月(28歳?):「2021年9月のRNA」論文が撤回
  • 20xx年(xx歳):オーバーン大学(Auburn University)・大学院を退学
  • 2023年11月15日(29歳?):研究公正局がネカトと発表

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★研究人生

サラ・マーティン(Sarah Martin)の大学・学部はどの大学か不明だが、米国のオーバーン大学(Auburn University)の院生になった。

指導教員はジョアンナ・シュトゥーバ=ソリンスカ助教授(Joanna Sztuba-Solińska、写真出典)である。

データねつ造・改ざんで撤回された「2021年9月のRNA」論文を含め、2018~2022年の5年間にマーティンが出版した4論文は全部、シュトゥーバ=ソリンスカ助教授が最後著者である。

2022年9月、シュトゥーバ=ソリンスカ助教授はオーバーン大学を退職し、ファイザー製薬社(Pfizer)の主任研究者(Principal Scientist)になった。

本記事のマーティン事件の関係で移籍したと思われる。

ネカト発覚の経緯は記載がないが、投稿原稿や研究室の研究記録のネカトも指摘されている。告発した人は、研究室の上司、つまり、シュトゥーバ=ソリンスカ助教授と思われる。本記事では、シュトゥーバ=ソリンスカ助教授とした。

「2021年9月のRNA」論文のネカトが指摘されているので、発覚時期はそれ以降である。2021年後半(27歳?)と推定した。

マーティンはネカト発覚を受けて、オーバーン大学・大学院を博士号取得前に退学した(させられた)と思われる。

★獲得研究費

サラ・マーティン(Sarah Martin、Sarah Elizabeth Martin)は院生ということもあり、NIHからの研究費を獲得していない。

★研究公正局

2023年11月15日(29歳?)、研究公正局はマーティンが1件の研究費申請書、1報の発表論文、1本の投稿原稿、6件の研究会発表、のデータをねつ造・改ざんしていたと発表した。

2023年11月3日から3年間の締め出し+その後2年間の監督期間(Supervision Period)処分を科した。計5年間の処分は少し重い処分である。

1件の研究費申請書は以下の通り。研究公正局の発表を貼り付けた。

  • R21 AI159361-01, “The interplay between m6A and viral lncRNA during KSHV replication,” submitted to NIAID, NIH, on July 15, 2020, Funded Period: March 4, 2021-February 28, 2023

1報の発表論文は以下の通り。「2021年9月のRNA」論文。

  • The m6A landscape of polyadenylated nuclear (PAN) RNA and its related methylome in the context of KSHV replication. RNA. 2021 Sep;27(9):1102-1125. doi: 10.1261/rna.078777.121 (hereafter referred to as “RNA 2021”). Retraction in RNA. 2022 Feb;28(2):274. doi: 10.1261/rna.079042.121.

1本の投稿原稿に関しては、研究公正局の発表に具体的な記載がなかった。

6件の研究会発表は以下の通り。研究公正局の発表を貼り付けた。

  1. Determination of m6A frequency utilizing 4SedTTP-RT Ligation Assisted PCR (SLAP) in viral and cellular long non-coding RNAs. Manuscript submitted to RNA in 2021 (hereafter referred to as “RNA ms”). • The dynamic status of N6-methyladenosine modifications of polyadenylated nuclear (PAN) RNA lncRNA and its methylome throughout KSHV replication. Presented at The RNA Institute Mini Symposium, Albany, NY, March 3, 2021 (hereafter referred to as “RNA Mini 2021”).
  2. Elucidating the N6-Methyladenosine Landscape of Viral LncRNA in the Context of Kaposi’s Sarcoma-Associated Herpesvirus Replication. Poster presented at the NIH/NCI 2021 RNA Biology Symposium, Frederick, MD, April 14, 2021 (hereafter referred to as “NCI Poster 2021”).
  3. The m6A epitranscriptomic landscape of polyadenylated nuclear (PAN) RNA.” Presented at The KSHV 2021 Virtual Meeting, June 21, 2021 (hereafter referred to as “KSHV Virtual 2021”).
  4. The epitranscriptomic landscape of viral long non-coding RNA. Presented at the Noncoding RNA World: From Mechanism to Therapy, Virtual, July 21, 2021 (hereafter referred to as “RNA World 2021”).
  5. The m6A landscape of polyadenylated nuclear RNA and its related methylome in the context of KSHV replication. Presented at the American Society for Virology Annual Meeting, Virtual, July 19, 2021 (hereafter referred to as “Virology Virtual 2021”).
  6. The Dynamics of N6-methladenosine Landscape of PAN RNA during the KSHV Replication. Presented at the 45th Annual International Herpesviruses Workshop, Virtual, August 2, 2021 (hereafter referred to as “IHW Virtual 2021”).

研究室の4件の研究記録。研究室の4件のファイル、研究公正局の発表を貼り付けた。

  1. A_response.pptx
  2. B_response.pptx
  3. Response_B_clarified.pptx
  4. Intermediate.pptx

【ねつ造・改ざんの具体例】

2023年11月15日(37歳?)の研究公正局の発表に、各研究費申請書・論文のネカト部分を指摘している。

今回は詳細を省略。

★「2021年9月のRNA」論文

「2021年9月のRNA」論文の書誌情報を以下に示す。2022年2月22日現在、撤回されていない。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

データベースに直接リンクしているので、記事を閲覧した時、リンク先の数値は、記事執筆時の以下の数値より増えていると思います。

★パブメド(PubMed)

2024年2月4日現在、パブメド(PubMed)で、サラ・マーティン(Sarah Martin)の論文を「Sarah Martin[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2024年の23年間の369論文がヒットした。ほとんどが本記事の研究者の論文ではないと思われる。

「Sarah Martin[Author] AND Sztuba-Solińska」で検索すると、2018~2022年の5年間の4論文がヒットした。内、1論文は撤回公告なので、実質は2018~2021年の4年間の3論文である。

2024年2月4日現在、「Retracted Publication」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、本記事で問題にした「2021年9月のRNA」論文・1論文が2017年9月に撤回されていた。

★撤回監視データベース

2024年2月4日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでサラ・マーティン(Sarah Martin、Sarah Elizabeth Martin)を「Sarah Elizabeth Martin」で検索すると、本記事で問題にした「2021年9月のRNA」論文・1論文が2022年1月1日に撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2024年2月4日現在、「パブピア(PubPeer)」では、サラ・マーティン(Sarah Martin、Sarah Elizabeth Martin)の論文のコメントを「”Sarah Elizabeth Martin”」で検索すると、本記事で問題にした「2021年9月のRNA」論文・1論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》不明 

サラ・マーティン(Sarah Martin、Sarah Elizabeth Martin)のデータねつ造・改ざん事件は、研究公正局がクロと判定した公式記録だが、情報がとても少ない。

マーティンが「どのような状況で、どうして」ネカトをしたのか、見えてこない。これでは、ネカト対策に役立つ点は少ない。

引っかかるのは、指導教員のジョアンナ・シュトゥーバ=ソリンスカ助教授(Joanna Sztuba-Solińska)が、ネカト騒動の最中の2022年9月に、オーバーン大学を退職して、ファイザー製薬社(Pfizer)の主任研究者(Principal Scientist)に移籍したことだ。

シュトゥーバ=ソリンスカ助教授がマーティンのネカトを告発したためにオーバーン大学の居心地が悪くなったのか?

それとも、シュトゥーバ=ソリンスカ助教授はマーティンのネカト共犯者だった(に近かった)ので、大学から処罰を受けることを恐れて移籍したのか?

マーティンのネカトは投稿原稿や研究室の研究記録にもあることから、シュトゥーバ=ソリンスカ助教授が証拠を揃え通報したと思われるので、多分、前者だろう。

サラ・マーティン(Sarah Martin)、写真出典

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日本の人口は、移民を受け入れなければ、試算では、2100年に現在の7~8割減の3000万人になるとの話だ。国・社会を動かす人間も7~8割減る。現状の日本は、科学技術が衰退し、かつ人間の質が劣化している。スポーツ、観光、娯楽を過度に追及する日本の現状は衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今、科学技術と教育を基幹にし、人口減少に見合う堅実・健全で成熟した良質の人間社会を再構築するよう転換すべきだ。公正・誠実(integrity)・透明・説明責任も徹底する。そういう人物を昇進させ、社会のリーダーに据える。また、人類福祉の観点から、人口過多の発展途上国から、適度な人数の移民を受け入れる。
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●9.【主要情報源】

①  研究公正局の報告:(1)2023年11月15日:Case Summary: Martin, Sarah Elizabeth | ORI – The Office of Research Integrity。(2)2023年11月20日の連邦官報:2023-25603.pdf 。(3)2023年11月20日の連邦官報:Federal Register :: Findings of Research Misconduct。(4)2023年11月20日?:NOT-OD-24-041: Findings of Research Misconduct
② 2023年11月15日のエリー・キンケイド(Ellie Kincaid)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Auburn PhD student faked data in grant application and published paper, feds say – Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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