「白楽の感想」集:2018年1-4月

2023年4月13日掲載 

白楽の研究者倫理」の2018年1-4月記事の「白楽の感想」部分を集めた。

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《1》アカハラ

外国の研究室でのアカハラ事件は珍しい。

2018年4月27日(53歳?)現在、スイス連邦工科大学チューリヒ校はカロロ教授のアカハラ事件を調査中である。どのような、結論になるのか興味深い。最終報告書も是非公表して欲しい。

《2》壊滅的な打撃

マルセラ・カロロ(Marcella Carollo) http://www.academia-net.org/news/giant-galaxies-die-from-the-inside-out/1343836

この事件で、スイス連邦工科大学チューリヒ校は天文学研究所を閉鎖してしまった。カロロ教授とリリー教授はサバティカルという名の休職になっている。

まだ本調査に着手する前なのに、スタッフと院生を他の研究室に移籍させ、アカハラでカロロ教授の研究室を閉鎖した。日本でのアカハラは停職2か月程度の処分である。ネカトの処分例から判断して、スイスがことさら厳しい国とは思えないが、日本では考えられないほど、アカハラに対する厳しい処分である。

これで、カロロ教授(52歳?)とリリー教授の天文学研究は壊滅的な打撃を受けたに違いない。それは当然の報いなのだろうか? 他に、対処法はなかったのだろうか?

アカラハは10年に及んだとあるので、アカラハ初期にイエローカードで警告するなどの方法が有効だった気がする。そうしてこなかったのはスイス連邦工科大学チューリヒ校の失態ではないだろうか。

《3》研究室いろいろ

白楽は厳しい教育に賛成である。

厳しくなければ若者は育たないのに、日本では、「ほめて育てる」が大流行である。なぜか? 教員と若者の両方が楽だからだ。楽だから人々に受けいれやすい。

しかし、最先端の科学界では「ほめるだけでは育たない」。「ほめるだけではダメになる」。

小学校・中学校の義務教育なら「ほめて育てる」でよい。大学でも普通は「ほめて育てる」でよい。

でも、10万人の中の1人か2人の頭脳の持ち主を集め、世界最高の研究をしようとする最先端の科学界では、「ほめて育てる」には限界がある。「ほめてしか育たない」院生は、世界最高の研究ができるとはとても思えない。

スポーツに例えよう。

世界最高の研究をしようとする最先端の科学界は、趣味のスポーツではなく、オリンピック強化選手なのである。好きなものを食べて、楽しくスポーツしましょうでは、金メダルはとても無理だ。死ぬ気で、自分の持ってる時間、能力、金銭のすべてを注ぎ込んで、ようやく、オリンピック選手の入口に立てる程度である。

100メートルを13秒台でしか走れない男子高校生に、10秒台で走るよう訓練したら、訓練がキツ過ぎて、ハラスメントになる。

カロロ教授は、世界の超一流大学のスイス連邦工科大学チューリヒ校で、世界最高峰の天文学研究を目指していた。そんな研究室なら、深夜まで研究し、週末も研究し、院生の3割が脱落しても、白楽は、そんなもんだろうと思う。

もともと10秒台で走れない院生が、自分の能力と努力を棚に上げて、カロロ教授をアカハラと訴えた印象だ。

「楽しく研究」したい13秒台でしか走れない院生は、最初から、世界3流の研究室で、「楽しく研究」することを選択すべきだったと思う。カロロ教授の研究室を選んではいけない。

白楽が院生の頃は(古い話です)、土日は研究室にいたし(当時、土曜日は半ドン)、平日は毎晩深夜まで研究していた。除夜の鐘も研究室で聞いたことがある。

と熱心さを強調しても仕方ないが、実際は、土日に下宿にいてもすることがない。土日でも研究室に行けば、友達の院生が研究室にいたので研究室に行ったのである。

そして、研究室にいけば、遊んでばかりではなく、ついでに研究もした。研究の合間に、漫画を読んだり(漫画は、当時、必須文献)、将棋を指したり、卓球したり、インスタントラーメンを食したりした。

筑波大学の講師時代もそうだったが、不思議なことに、土日に筑波大学に行くと、閑散としていて、いつも会うのは海洋微生物の関文威(せき ふみたけ)先生くらいだった。研究室の院生に土日はどうしているのときくと、「部屋でステレオ聞いてます」と答えられ、とても驚いたことを思い出す。

マルセラ・カロロ(Marcella Carollo) https://www.cscs.ch/publications/news/2012/open-day/

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《1》ネカト軽視の社会

レッドフィールド事件からネカトの実態と防止策を学ぶ、というより、どうして、トランプ大統領は過去にネカト疑惑がある人物を要職に就けたのだろうか?

過去のネカト疑惑を知らなかった? そんなことはないだろう。

となれば、過去のネカト疑惑は大した問題ではないと考えたということだ。困ったもんである。

なお、白楽のブログはネカトブログなので、レッドフィールドについて、ネカトを中心に記述した。それで結果的に、疾病管理予防センター・長官に指名したトランプ政権を批判的に記述した。

しかし、賢い読者はもちろん気が付いていると思うが、レッドフィールドが優秀で疾病管理予防センター・長官にふさわしいという意見はたくさんある。

ロバート・レッドフィールド(Robert Redfield)https://www.wsj.com/articles/robert-redfield-named-to-head-centers-for-disease-control-and-prevention-1521668552

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《1》ネカト取締法

https://archive.is/C2ya8

インドのネカト事件は実に多様である。対処プロセスの標準がないし、処分の標準もない。つまり、混沌としている。

盗用と指摘されても、放置から懲戒解雇までさまざまである。

インド政府はネカト取締法を制定すべきである。そして、政府機関の1つに、取締機関を設けた方がいいと、つくづく思う。

(注:写真は本文とは関係ありません)。デリー大学の購買部の入口で本を読む女子学生。2008年。白楽撮影。

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《1》犯罪として取り締る

日本では、大学教員はなぜ論文代行を放置しているのか? 文部科学省はなぜ、禁止し、取り締まらないのか?

ニュージーランドでは犯罪である。2013年に警察の捜査が入り、2014年に裁判所が有罪とした。
→ Commissioner of Police v Li [2014] NZHC 479 (14 March 2014)

英国でも、2017年、犯罪とする方向である。英国で2万人の学生・院生が論文代行業を利用している。博士論文は6,750ポンド(約95万円)で作ってくれるそうだ。
→ 2017年2月21日のハリー・ヨーク(Harry Yorke)記者の「Telegraph」記事:University students could be fined or handed criminal records for plagiarised essays, new proposals suggest

英国の大学教員は、2017年、論文代行サイトを妨害するとある。
→ 2017年10月9日のサラ・マーシュ(Sarah Marsh)記者の「Guardian」記事:Universities urged to block essay-mill sites in plagiarism crackdown | Education | The Guardian

英国では論文代行業は、年商1億ポンド(約140億円)の市場で成長産業だそうだ。
→ 2017年10月12日のガイ・ケリー(Guy Kelly)記者の「Telegraph」記事:Inside the ‘essay mills’ offering to do students’ work for them

英国やオーストラリアなどの大学は、海外からの多数の学生・院生を受け入れている。留学した学生・院生の仕上がりの質が低下すれば、お客さん(留学生)は別の国に行ってしまう。だから、卒業生の質の確保はかなり重要である。

では、実際、英国やオーストラリアの留学生数はどれほどだろうか?

調べてみよう。

英国では44万人の留学生がいる。生活費と授業料と友人・家族の訪問で、1人の留学生あたり年間500万円を使用するとすれば、毎年2兆2千億円のお金が英国に落ちる。巨大ビジネスである。
→ 2018年3月22日の英国留学生会議(UKCISA: The UK Council for International Student Affairs)の報告:UKCISA – international student advice and guidance – International student statistics: UK higher education

オーストラリアでも英国とほとんど同じ42万人の留学生がいる。同じように試算すれば、毎年2兆1千億円のお金がオーストラリアに落ちる。巨大ビジネスである。
→ 2018年1月のオーストラリア教育省の報告:https://internationaleducation.gov.au/research/International-Student-Data/Documents/MONTHLY%20SUMMARIES/2018/Jan%202018%20MonthlyInfographic.pdf

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【事件の深堀】

★マスコミの過激報道

2018年4月15日現在、ウェイクフィールドは負けずに戦っている。しかし、「1998年のランセット」論文のデータねつ造、利益相反は明確だろう。当時、40歳、病院の医師という身分からすれば、病院内の政治抗争は絡んでいないだろう。

「予防接種と自閉症の関係」なら、問題の根本は学問上の論争であるが、現実の騒動はそうなってこなかった。マスコミがウェイクフィールドを攻撃して大衆が騒ぐ。ウェイクフィールドの多くのサポーターが活発に活動した。トニー・ブレア首相を巻き込んで狂喜した。

研究者ではないが、1980年代にマスコミが追い回した三浦和義(2008年10月自殺)を思い出す。2014年にマスコミが追い回した理研の小保方晴子と笹井芳樹(2014年8月5日自殺)を思い出す。笹井芳樹は、きわめて優秀な現役の生物医学研究者でまだ52歳だった。

再度書くが、問題の根本は学問上な論争に思える。マスコミの「報道刑」をなんとかする術はないのだろうか?

大衆は、マスコミを信じ、自分も正義の一翼を担う心意気で、熱心に(面白がって?)バッシングする。

2014年9月19日、ウェイクフィールドはテキサス州の裁判所に英国の雑誌と新聞記者を名誉棄損で訴えた。しかし、裁判所はそのこととテキサス州は何も関係がないとして、訴えを却下した。(Court: Andrew Wakefield, autism researcher, cannot sue in Texas | www.statesman.com

裏で医薬品企業が動いている?

「予防接種と自閉症の関係」を否定する論文がたくさん出ている。それでも、ウェイクフィールドは、まだ、負けずに戦っている。事件の裏に何があるのだろう?

逆に、ウェイクフィールドの失脚を望む勢力はどこだろう? 「新三種混合ワクチン・予防接種で自閉症になる。三種混合ではなく,単独型のワクチンに切り替えたほうが安全」と主張したのだから、新三種混合ワクチンの開発した医薬品企業(メルク社)がウェイクフィールドの失脚を望むだろう。メルク(Merck)社が不当なことをしているのだろうか?

一般的にワクチン製造販売は「おいしい」商売なのだろうか?

今回、そういう話は表面化していない。

世界のワクチン市場はどんな規模なのだろうか?

2017年に343億ドル(3兆4300億円)だった世界のワクチン市場は、2022年に493億ドル(4兆9300億円)に成長すると試算されている。5年間で44%も増えるのである。かなり、「おいしい」商売だ。
→ Vaccines Market worth 49.27 Billion USD by 2022

そして、この「おいしい」商売は、以下のグラフに示すように、4つの製薬会社が握っている(Vaccine Conferences | USA | Global Events | Europe | Middle East | Asia Pacific | 2016 | 2017 | Conference Series LLC LTD)。

メルク社、グラクソスミスクライン社、サノフィ社、ファイザー社である。縦軸の単位は百万米ドル(億円)だから、2014年時点で、各社約5000億円の売り上げがあり、2020年には約7000億円規模と想定されている。

以下に示す2011年のデータでは、日本のワクチン市場で、生産額は2068億円だ。

1995年に医療用医薬品生産額の0.6%しか占めていなかったのが、8年後の2003年に1.1%と約2倍に増え、その8年後の2011年に3.3%と約3倍に増えた(出典:2013年6月25日、厚生科学審議会)。2018年現在、さらに数倍増えているのだろう。

2011年に2068億円規模の商売だった。年収1人1000万円とすれば、約2万人がワクチン製造販売で生活していることになる。

2013年6月25日、厚生科学審議会http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000035gut-att/2r98520000035gxh.pdf

これだけ巨額の市場だと、メルク社、グラクソスミスクライン社、サノフィ社、ファイザー社などのワクチン会社は、医師・大学教授・官庁を抱き込んで、反ワクチン運動に圧力をかけ、ワクチン賛成キャンペーンを強力に推し進めているに違いない。

【事件の感想】

《1》科学界に自浄力がない

『サンデー・タイムズ』紙のブライアン・ディーア記者がウェイクフィールドの不正を暴いたのだが、ナンカおかしい。研究上の不正行為をチェックするのは新聞記者の仕事ではない。科学者の仕事だ。

一般的に、新聞記者は新聞を売るためにセンセーショナルに書く。それで、事実を脚色してしまう傾向がある。どうして、科学界が解明できなかったの?

《2》学術界からの袋叩き

ウェイクフィールドは「予防接種すると自閉症になる」と発表し、学術界から袋叩きに合っている。アンソニー・モーソン(Anthony R. Mawson)も「予防接種すると自閉症になる」と発表し、同じように袋叩きにあった。
→ 「錯誤」:アンソニー・モーソン(Anthony R. Mawson)(米) | 研究倫理(ネカト)

袋叩きが異常に強い。

一般的に、科学者は、自分と異なる学説が提示されれば、学会や論文で相手の間違いを指摘し、自説の正当性を主張する。

「予防接種すると自閉症になる」説は、それを信じると、人々の健康が損なう可能性があるので、学会や論文で相手の間違いを指摘するよりも、早く強く指摘する必要はあるだろう。

しかし、異常である。

ワクチン製造販売する医薬品企業が反ワクチン運動を撲滅しようとしているのだろうか?

《3》反ワクチン運動はなぜ強い?

反ワクチン運動がなぜ強いのか、白楽にはわかりませんが、強いです。メディアが否定的な報道をすることが影響しているかもしれない。

https://blog.goo.ne.jp/nobuokohama/e/f679d7864c103f9af3678eba1f886851

学術界が「予防接種すると自閉症になる」説を否定しているのに、「予防接種すると自閉症になる」と信じる大衆が無視できないほど多くいる。大衆はどうして似非科学を信じるのか、白楽にはわかりません。

  • 注射嫌いな人は多い。反ワクチンというより反注射の感情だろうか。
  • 医師・医療界への不信感だろうか。
  • 宗教的な理由はあるだろう。
  • 事故や副作用はごくまれとしても、重大な健康被害を受けたくはない。宝くじは買わなければ当たらないが、ワクチン接種しなければ、事故や副作用に当たらない。

2018年1月12日 の「駒崎弘樹」記者(病児・障害児・小規模保育のNPOフローレンス代表)の記事も反ワクチン運動を批判している。
→ 都民ファーストが反ワクチン脳になりかけている件について

《4》どうして?:データねつ造

ウェイクフィールドはどうして利益相反をしたのか? それは、金銭的に得だからだ。では、どうしてデータねつ造をしたのか? この場合、医学上のデータねつ造は、多数の人に危険だということを、容易に理解できたハズだ。

どうしてデータねつ造したのだろう。

多分、40歳の彼は、半分過ぎた自分の人生でホームラン級の脚光を浴びたかった。人生の刺激が欲しかった。自分のパワー(社会的影響力)を確認したかったに違いない。

なお、「ネカト癖は研究キャリアー初期に形成されることが多い」。40歳で発表した「1998年のランセット」論文と42歳で発表した「2000年のAm J Gastroenterol.」論文の2報だけが撤回されているが、もっと若い時の論文にデータねつ造や利益相反はないのだろうか?

これだけ注目を集めた人だから、これらの論文以外にデータねつ造や利益相反があれば指摘されていると思われるが、調査委員会を設けて調査していないので、疑念が残る。

《5》どうして?:社会的大騒動

データねつ造とはいえ、ねつ造部分そのものは重大事項に思えない。それに、1つの論文の結論(たった12人の患者の結論)に、英国社会が呼応し、世界が呼応したのも異常に思える。反論する論文は多数出版され、多数の患者を対象に「新三種混合ワクチン・予防接種で自閉症になる」のを否定した。それなのに、ウェイクフィールドの論文がどうしてそんなに大きな影響力を持ち続けたのか?

結論が間違っている論文は学術界ではゴマンとある。学者の主張が無視されることもゴマンとある。どうして、ウェイクフィールドの論文が、社会的大騒動を引き起こしたのか?

学問的正否とは別次元の問題が充満しているということか。

《6》どうして?:ウェイクフィールドの人間性

それにしても、データねつ造を指摘されても、ウェイクフィールドは悪びれるところがない。自分の信念に胸を張って生きている。前向きな人柄なのだろう。もちろん、こういう逆風の中でも、妻と4人の子供とともに生きていくしかない。それはとても大変だろう。そういう意味では、良い父親なのかもしれない。

妻・カーメルと一緒の写真
STN28WAKEFIELD_340834k[1]
(28 April 2013 Wakefield’s wife goes viral on the internet | The Sunday Times

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《1》運輸省・助成金でのデータねつ造・改ざん

米国運輸省(U.S. Department of Transportation)から430万ドル(約4億3千万円)の研究助成金が支給されたが、その受給でデータねつ造・改ざんがあった。

運輸省・助成金でのデータねつ造・改ざんは、珍しい。白楽のブログで解説したのはハイファン・ウェン事件だけだ。ただ、ハイファン・ウェン事件では科学庁(NSF)を含め他4省庁からの助成金を受給していたので、運輸省の事件の特徴は見つけにくかった。
→ 土木工学:ハイファン・ウェン(Haifang Wen)(米) | 研究倫理(ネカト)

ウィルソン事件は運輸省でのネカト事件の典型例かどうかわからないが、生命科学系のネカト事件とは以下の点で大きく異なる。

  1. 本人であるクリストファー・ウィルソン(Christopher D. Willson)の写真、経歴が見つからない。
  2. メディア(新聞、テレビ)が事件を報道しない。
  3. FBIが捜査し刑事告訴し、裁判で有罪。

3番目の「FBIが捜査・・・」は、生命科学系のネカト事件でも、少数だが、ある。運輸省のネカト事件では、必ず「FBIが捜査・・・」するのだろうか?

また、事件を知る方法としてFBIの記録や裁判の記録を頼ったことによるのかもしれないが、ウィルソン事件を調べても、ネカトを防止する方法を学べない。当然かもしれないが、FBIの記録や裁判の記録には、ネカトを防止するにはどうしたらよいのかという視点はない。

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《1》詳細は不明

この事件の詳細は不明です。

バガヴァティ・ナラヤナン(Bhagavathi Narayanan)がどうしてネカトをする状況になったのか不明である。

ネカト防止策は、この事件からは学べない。

《2》研究公正局はズサン?

研究公正局は、「2003年のClin. Cancer Res」論文、「2011年のAnticancer Res」論文、「2012年のInt. J. Oncol」論文にねつ造・改ざんがあったと発表した。

しかし、「2006年のInt. J. Oncol」論文は研究公正局がネカトだと指摘していないのに、撤回されている。以下に示すようにウェスターン・ブロット像のねつ造は明白である。

パブピアが、図 4のウェスターン・ブロット像がねつ造だと指摘している。
以下の出典:https://pubpeer.com/publications/774642804EA97C2E2621FEDE2A7BFC#2

「2006年のInt. J. Oncol」論文は夫のナラヤナン・ナラヤナン(Narayanan K Narayanan)が第一著者である。

夫のナラヤナン・ナラヤナンがネカト実行者なので、バガヴァティ・ナラヤナン(Bhagavathi Narayanan)のネカト行為からはずしたのか? それなら、妻のネカト発表(2018年3月16日)と同時に夫のネカトも発表するか、遅くとも1週間以内に発表すべきだろう。3週間以上経過した2018年4月9日現在、夫のネカトは発表されていない。

それとも、ヒョットして、研究公正局が見落としたのか?

他の論文でも、今回、研究公正局がネカトだと指摘しなかったが、パブピアでデータ異常が指摘されている論文がいくつもある。

夫のナラヤナン・ナラヤナンがネカト実行者なのか? それとも、研究公正局が見落としたのか?

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《1》人さまざま

ポティはインドで生まれ育ち、米国に渡った。インドで医師になったから、インドでは裕福な家庭で育ったのだろう。しかし、米国では人種差別されたに違いない。

友人の言葉を思い出す。「優秀な米国白人は週70時間も実験室にこもるような生物医学研究者にならない。医師免許を取って、弁護士資格も取り、30歳前後で、大きな医薬品会社のオフィスで高給を取る」。平日の夜間も休日も実験室にいるのは、〇×人くらいだよ」。

なお、昔は、〇×人=日本人だったが、インド人も含めていいだろう。なお、今は、〇×人≠日本人で、〇×人=中国人だ。日本の若手研究者は、今も昔も日本では育たないが、昔は米国で育った。それが、今は、米国でも育たない。

ポティはそういう研究奴隷社会で、なんとしても、上にあがりたかったのだろう。インドの行動価値観を十分理解していないが、旅行でインドを訪れた白楽は、「平然と人をだます」インド人に何度も遭遇した。その平然さはアッパレなほどだった。ポティはそういう処世術文化を、米国・研究界に持ち込んだのだろう。これはマズイ。アウトである。

一方、バイオ政治学を米国で指導してくれた白楽の先生もインド人だった。彼は、インドで生まれ、英国の大学(ケンブリッジ?)をでて、米国の大学教授になった人だ。この人は、米国の白人研究者の平均よりは、ズット紳士的、知的で、高い行動規範を実践している人だ。今も尊敬している。つまり、人さまざまだ。

《2》調査の時間とコスト

NIH・国立がん研究所(NCI) の生物統計学者・リサ・マクシェイン(Lisa McShane)はポティ事件で300~400時間費やしたと述べている。1日5時間費やしたとして、60~80日である。1か月20日として、3~4か月費やしている。膨大な時間だ。(2011年9月10日の記事:Misconduct in science: An array of errors | The Economist

MDアンダーソン癌センターの生物統計学者・キース・バッガリーとケビン・クームズは、2,000時間も費やしたとある。同じ計算で、1年8か月費やしている。膨大な時間だ。

論文の査読者は、そんな時間を費やさない。そもそも、簡単に見つかる不正はない上、不正研究と疑って査読しないから査読者が不正を見つけることはマレだ。

また、本腰を入れない大学調査委員も、そんな時間を費やさない。入念に仕組まれたネカト、できるだけ証拠が消されたネカト、高度な専門知識、曖昧な科学領域だから、ネカトの全貌はなかなかつかめない。

しかし、3~4か月や1年8か月、生命科学者がこんなに長期間、他人のネカトを調査していては、生命科学のキャリアが崩壊する。とはいえ調査に生命科学の高度な専門的知識・勘・経験は必須だ。

日本はネカト調査で給料をもらえる専門職がない。だから、事態は一層曖昧なままの状況になるだろう。大学に関連の研究室と日本の警察庁にネカト取締部を設置した方が良いと思うけど。

提案:「警察庁にネカト取締部を設置し、学術ポリスとして、日本全体のネカトを捜査せよ」

そういえば、白楽はこのサイトの執筆に膨大な時間を使って調査している。ヒマつぶしだから、マー、時間がかかるのはかまわないけど、現役の生命科学者でそれなりの覚悟がない人には、オススメしない。

《3》大学がシロと結論したのをひっくり返す

ポティ事件では、デューク大学・調査委員会は一度、「問題なし」と結論した。

この大学の結論に疑念を呈し、再調査させるきっかけを与えたのは、「Cancer Letter」編集長・ポール・ゴールドバーグ(Paul Goldberg)の指摘である。つまり、メディアの勝利である。

このように、大学当局がシロと結論したのをひっくり返した例は、多くはないが、他にもある。
→ ウプサラ大学がシロと結論したのをメディアの「Science」記事とスウェーデン政府の中央規範審査委員会がひっくり返した:ウウナ・ロンステット(Oona M. Lonnstedt)(スウェーデン)改訂 | 研究倫理(ネカト)
→ 米国糖尿病学会は、カンピーナス州立大学・調査委員会が「基本的に正しい」とした結論に納得せず、独自の制裁を科した。:マリオ・サード(Mario Saad)(ブラジル) | 研究倫理(ネカト)

大学が調査と言っても、人間が調査するのである。しかも、御用委員で、おおむねネカトの素人である。間違えるし、忖度があるし、バイアスがかかる。

しかし、日本では大学の調査結果がひっくり返った例はない。

東京大学医学部教授のネカトは明白だとメディアがいくら伝えても、東京大学は知らんぷりである。
→ 2018年3月18日記事:東大医学部 異常な論文図表作成でも不正なし | 日本の科学と技術

事件を起こした教授が所属する大学が調査すれば、日本は御用委員会になる。だから、大学はシロと結論したくなる。大学が調査するシステム設計がそもそも矛盾だ。

提案:「警察庁にネカト取締部を設置し、学術ポリスとして、日本全体のネカトを捜査せよ」

アニル・ポティ(Anil Potti)http://www.sciencemag.org/news/2015/11/potti-found-guilty-research-misconduct

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《1》晩節を汚す

75歳以降に出版した論文で、共著者で弟子のチタラ院生が盗用をしたとはいえ不名誉なことである。インドの著名な科学者が、弟子の盗用で晩節を汚している。

チンターマニー・ラーオ(Chintamani N. R. Rao)は、何を望んで75歳以降にも論文を出版するのだろうか? 既に、富と名声は手に入れている。研究費も称賛も必要ないだろうに。「サソリとカエルの寓話」のように、論文出版するのがラーオの性(サガ)なのだろう。
→ サソリとカエルの寓話 – アニヲタWiki(仮) – アットウィキ

とはいえ、高齢なので、大発見どころか中発見もできない。著名な科学者だから、投稿すれば、論文は出版してくれる。だから、虎の威を借るキツネがたくさん寄ってくる。そして、それを管理できなかった。

《2》シロクロつけない?

新聞記事や英語版ウィキペディアの見出しは、「ラーオの盗用」とある。しかし、文章を読んでいくと、実際は第一著者の院生・バサント・チタラ(Basant Chitara)が盗用した。

その事をインド理科大学院も新聞記者も知っているのに、どうして「ラーオの盗用」という扱いを続けるのだろうか?

1つ目。ラーオが著名な科学者だから見出しにインパクトがある。

2つ目。インド理科大学院が正式な調査委員会を設けなかったために、チタラ院生を正式にクロと判定しなかった。

バサント・チタラ(Basant Chitara)

そう、インドではネカト実行犯を特定しないことがソコソコある。

驚いたことに、院生・バサント・チタラ(Basant Chitara)はラーオ名誉教授の指導の下に2012年に研究博士号(PhD)を取得した。2012年に盗用が発覚したので、インド理科大学院はその前後に研究博士号(PhD)を授与したのである。つまり、インド理科大学院は盗用の告発を受けつつも、正式な調査をせず、チタラを処分しなかった。結局、盗用を許容した形になった。
→ Basant Chitara | LinkedIn(含・写真)

バサント・チタラは、研究博士号(PhD)を取得後、2013年に渡米し、米国のオハイオ州立大学でポスドクをし、数年後、インドに帰国した。

2018年4月3日現在、イスラエルのネゲヴ・ベン=グリオン大学(Ben Gurion University of the Negev)のポスドクである。

バサント・チタラは、盗用したのに学術界から排除されなかった。盗用癖とうまみを知り、今も盗用しているのでは無いだろうか?

(注:写真は本文とは関係ありません)。ニューデリーの町。2008年。白楽撮影。

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《1》教科書著者の中立性

『ハリソン内科学』の著者が1億円近くの報酬を製薬企業から得ていても不思議に思わないが、この論文は教科書だけが著者の利益相反の非開示を許している点を問題視している。一般の論文では著者の利益相反の非開示は許されていない。

しかし、開示すれば報酬をくれた製薬企業に対して中立的な内容になるかと言えば、そう期待するのは期待のしすぎた。

今までの多くの研究で、研究成果は報酬をくれた製薬企業に対して有利になるようなデータが発表されていることが示されている(つまり、助成金バイアスである)。だから、中立的な内容になることは、期待できない。

そういう前提だが、利益相反が開示してあれば、読者はバイアスを勘案して理解することが可能である。また、著者も製薬企業に対して有利になるようなあからさまな文章表現・データ選択をしなくなるという抑制機能が働く。

とはいえ、問題は微妙であり、難しい。

《2》代筆?

米国では、臨床試験レポートは製薬企業のライターが代筆するの通例らしい。
→ 7-12.製薬企業が臨床試験を腐敗させた | 研究倫理(ネカト)

では、教科書も製薬企業のライターが代筆しているのだろうか? そうなると、どうなるのだ?

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《1》院生と指導教員

米国のアデボラ・アデディメジ(Adebola Adedimeji)と息子。http://www.newbritainherald.com/title/photos+of+the+day+052917/78614#ad-image-0

2010年(33歳?)の盗用騒ぎが、7年後の2017年に新聞記事になっている。ロッフォフォード看護師が裁判所にいつ訴えたのか不明だが、えらく年数が経っている。

しかも, アデボラ・アデディメジ(Adebola Adedimeji)は2010年(33歳?)にアイルランドを離れ米国に渡っている。

なんか、へんです。

《2》院生と指導教員:その1

2009年(32歳?)、アデディメジは、ロッフォフォード看護師を第2著者とし、アメリカ人口学会で研究発表をした。そして、2010年7月、アデディメジは、2009年の学会講演と同じタイトルの論文を「2010年のSAHARA J」論文として発表した。

不思議に思うのは、この論文でどうして、ロッフォフォード看護師を第2著者としなかったのか、である。

単著で発表しても大きな得があるわけでもない。この時、ロッフォフォード看護師を第2著者としておけば、今回の騒動は起きなかったろうに。

《3》院生と指導教員:その2

アデディメジ事件での真相は白楽にはわからないが、一般的に、院生が指導教員の研究盗用を訴えた場合、院生が誤解している場合がある。というのは、院生の立場では指導教員の研究全体を俯瞰できないからだ。

だから、院生はこんな事件も起こす → 工学:シャヒド・アザム(Shahid Azam)(カナダ) | 研究倫理(ネカト)

白楽は教員としての現役時代、研究成果が出るようにお膳立てし、あとは院生が実行すればよいだけにしたことが何度もあった。そして、院生に実行させて、成功体験を積ませながら、研究技術や研究の進め方を院生に学ばせた。ところが、こちらがあらかじめセッティングしておいたのに、自分一人ですべての実験を行なったと勘違いする院生もときどきいた。

まあ。そういう院生がいてもいいけど、そういう院生に限って、白楽への反発が強いことが多かった。トホホ。

また、白楽もそうだが、人間というものは、「受けた恩を水に流し、かけた恩を石に刻んでしまう」。反省!

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《1》事件から何を学ぶ? 

以下は、 旧版:2014年10月19日の文章である。今回少し改訂した。

ペンコーワ事件から何を学べるだろう? 若い美女が色仕掛けで出世しようと野心的に振る舞うと、研究界は防御できないということか? それなら、美女は研究界から追放する? イヤイヤ、美醜や思想信条で研究界から追放するのは、望ましくない。

ペンコーワは人生で最初の論文を1995年に21歳で出版している。2報目は1997年に23歳で出版している。2つともフルペーパーで第一著者である。21歳でフルペーパーの論文を第一著者で出版したのだから、とても優秀だったに違いない。論文の最終著者はトーベン・ムース教授(Torben Moos)である。

この時、トーベン・ムース教授が、ペンコーワに研究規範を躾けるべきだった。思うに、それを、ヘマったのだろう。

また、初期の論文のいくつかにはスペイン人パートナー(恋人?)のフアン・イダルゴ (Juan Hidalgo)が共著者になっている。フアン・イダルゴがペンコーワの研究規範を注意すべきだったと思えるが、恋は盲目?

そして、コペンハーゲン大学は、決定的な大ミスを2回もしている。1回目は、2001年(27歳)にペンコーワが提出した博士論文への対処である。博士論文に不正疑惑が発生し、翌年却下されている。そのままにしておけばいいのに、それを、コペンハーゲン大学・健康医学部長ラルフ・ヘミングセン(Ralf Hemmingsen)がゴチャゴチャと取り繕ってしまった。これはアホだった。性的に親密だったと噂されても致し方ない、というか、性的に親密だったのは事実、なの?

そしてもう一度、2007年(33歳)、ボックの研究室の院生たちがペンコーワの実験結果に疑義を唱えた。この時、まともに調査すればいいのに、翌年、コペンハーゲン大学・学内委員会が潔白としてしまった。これも、その時にはコペンハーゲン大学・学長になっていたラルフ・ヘミングセン(Ralf Hemmingsen)の威光を学内委員が忖度したのだろう。おまけに、デンマーク科学技術イノベーション大臣・ヘルゲ・サンダーの愛人だと噂されていれば、虎の威を借りるペンコーワだ。

日本も、美女が提出した博士論文の不正を見抜けずに、博士号を授与したため、その後、とんでもない大事件に発展した事件が2014年にありましたね。博士号を授与してなければ、その後の事件は起こらなかったハズだ。理研の小保方晴子事件ですね。

人間の能力や成果で仕事を判断するのではなく、女性だから、美女だからと優遇する風潮は、今さら始まったわけではなく、人類の歴史とともにある。ただ、日本は最近ますます加速している。マズイですよ。女性だからという理由で、小渕優子を経済産業大臣にするのはマズイって、言ってたでしょう・・・、言ってない?

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小渕優子の経済産業大臣のたとえは、 旧版(2014年10月19日)の文章である。2018年3月25日現在では、小渕優子は印象が薄いでしょう。

では、稲田朋美・防衛大臣はどうでしょう。2017年7月28日に辞任したけど、ファッションと美容にかまけて、国防を任せられるような人ではありませんでした。
→ 2017年8月12日の産経新聞記事(写真出典も):【政界徒然草】「細い足が魅力的」稲田朋美氏 ファッションPLAYBACKでわかったオシャレ番長と防衛相辞任の必然性(9) – 産経ニュース

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ミレーナ・ペンコーワ(Milena Penkowa)。ナンバープレートを見てね https://forum.five-speed.dk/viewtopic.php?f=1&t=2076[/caption]

注:写真は本事件と関係ありません。白楽がコペンハーゲン大学を訪問した時、学生食堂は休みだった。大学の近くで白楽が食べたフィッシュ・アンド・チップス。2006年。白楽撮影。

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《1》父親は20年の刑務所刑

ホルヘ・グラス(Jorge Glas)の盗博事件から4年後の2017年12月(48歳)、オデブレヒト社(Odebrecht)から1350万ドル(約13億5千万円)の収賄で逮捕され、6年間の刑務所刑が確定した。

これらの事件とは無関係だが、父親のホルヘ・グラス・ビエホ(Jorge Glass Viejó)は親戚の13歳の女の子をレイプした罪で、2014年9月19日、20年の刑務所刑が科されている。
→ 2014年9月19日記事:Jorge Glas Viejó fue sentenciado a 20 años de reclusión | El Comercio

父親のレイプ犯行時の年齢はわからないが、息子のホルヘ・グラスが43歳頃だから、息子は25歳の時に生まれた子供とすれば、68歳である。68歳のジイさんが、13歳の女の子をレイプって、なんか狂気ですね。

親子ともども、なんということだ。

《2》防ぐ方法

ホルヘ・グラス(Jorge Glas)は、2008年9月22日(39歳)、既に政治家としての地位を確立してから博士号を取得している。

政治家としてそれなりの地位を得てからの博士号取得は、本人が真面目に学問研究をした結果の称号ではなく、政治家としての飾りとして取得する面が強い。

しかし、博士論文は簡単に書き上げることはできない。それで、盗用して仕上げることになる。

このような政治家の盗博をどのように防いだらよいか、なかなか名案はないが、必見と厳罰化は有効だろう。

ホルヘ・グラス(Jorge Glas)https://www.telesurtv.net/english/news/Ecuador-Commission-Receives-Evidence-Against-Jorge-Glas-20180105-0023.html

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《1》研究ネカト者を研究職から排除し刑事処分

欧米先進国の研究ネカト者の大半(約99%)は、大学・研究所を辞職し(解雇され?)、その後、教授職・研究職に就けない。研究界から研究ネカト前科者を排除している。

標語:「ネカト者は学術界から追放!」

一方、日本では、大学・研究所を辞職・解雇されることもあるが、研究ネカト者の約8割は、休職などの軽微な処分で、処分期間が終われば、教授職・研究職に復職している。なんか変だ。

研究ネカト者は、研究界の研究職に就けないようにすべきだろう。また、今後、研究ネカトを刑事処分すべきだろう。

標語:「ネカト者に刑事罰と罰金を!」

《2》治療ミス?

スコット・ルーベン(Scott S. Reuben)は21報の論文でデータねつ造をした。論文のねつ造ならまだいいが、イヤ、いいわけないけど、ルーベンは麻酔科医である。

外科手術で何人もの患者が死んでいませんか?

ルーベンのマズさの本命は治療ミスによる多数の患者の死亡ということはないんでしょうね。治療ミスは賠償金も高額だし、麻酔だと多くの外科手術に関与するので、病院にとって致命的である。

それでネカト論文で責任取らせて解雇した、ということはないんでしょうね。

スコット・ルーベン(Scott S. Reuben)。https://www.cbsnews.com/news/doc-who-faked-pfizer-studies-gets-6-months-in-prison-showing-why-gift-bans-are-a-good-idea/

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《1》詳細は不明

http://kovarlab.bsd.uchicago.edu/people/index.html

この事件の詳細は不明です。

コリーン・スカウ(Colleen T. Skau)がどうしてネカトをする状況になったのか不明である。

ネカト防止策は、この事件からは学べない。

ただ、ボスのNIH・国立心肺血液研究所 (NHLBI; National Heart, Lung, and Blood Institute)のクレア・ウォーターマン部長(Clare Waterman)は、とても鋭い人だと思う。

「10個の細胞を解析したとあるが、実験記録には9個しかない」、なんて、普通の研究者は見抜けない。どうやって怪しいと感じたのだろうか?

コリーン・スカウは日常会話でも「話を盛る」人だったのだろうか? 一般的に、日常会話で研究者のネカト危険度を判定できるのだろうか? 白楽の経験からすると、判定できる気がする。誰か、しっかり研究して欲しい。

《2》研究初期のネカト

コリーン・スカウのデータねつ造・改ざんは、どれも、解析した細胞の数を実際より多く記載した行為である。

この種のねつ造・改ざんは第三者が論文を見ても決してわからない。生データを見せてもらうか、共同研究者しか発見できない。

そして、シカゴ大学の大学院時代にボスのデビッド・コバール準教授(David R Kovar)と共著で2008- 2011年に7論文も出版している。

法則:「ネカト癖は院生時代に形成されることが多い」。

大学院時代の7論文もねつ造・改ざんの可能性が高い。シカゴ大学はこれらの論文を調査すべきか? 「すべき」かと問われれば、「すべき」でしょうが、しかし、金もかかるし、シロクロつけても見返りは少ない。シカゴ大学は7年以上も昔の院生の論文を調査しないでしょうね。

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《1》ヒドイ、暗澹

ランバクシー・ラボラトリーズ社の幹部たちは、ゲーム感覚で、米国の医薬品規制をだましていた。誰が最も巧みに規制当局を欺いたかを自慢していた。

こう明確に書いてあると、インドはヒドイ。インドの研究文化にあきれる。

この事件が描いているインド企業の研究公正の感覚は、米国のネカト事件を分析することでネカトを抑止する方法を学ぶという感覚ではやっていけない。ネカト者や製薬業界にネカトを指摘し改善しようと相談するレベルには程遠い。

防ぐ方法は、ネカトを犯罪とみなし処罰していくことしかない。

標語:「ネカト者に刑事罰と罰金を!」。

実際、ランバクシー・ラボラトリーズ社に巨額の罰金が科された。

しかし、インドの出来事と笑って居られるだろうか?

最近の日本の政治家、高級官僚、財界人の偉い人たちは、高潔、公正、誠実などの精神性が大きく劣化している。日本はいつからこうなってしまったのか? 昔からだったのか? 立場として、日本国民が快適で豊かな人生を送れるよう尽力すべき人たちが、自分の目先の金銭的利益を最優先にし、日本という国をダメにしている。

国は平気でねつ造・改ざんをする。

  • 2018年3月:森友学園書類改ざん。財務省
  • 2018年2月:裁量労働制データねつ造。厚生労働省
  • 2017年7月:南スーダンの「国連平和活動(PKO)」の報告の隠蔽。稲田朋美防衛相

《2》対処は4ステップ

白楽は、研究ネカトの対処は4ステップだと考えている。
→ 1‐5‐3.研究ネカト事件対処の4ステップ説 | 研究倫理(ネカト)

  1. ステップ1「第一次追及者」・・・最初の追及者が必要だ。 → 今回:開発部員のディネッシュ・タクール(Dinesh Thakur、博士号も医師免許もない男性)
  2. ステップ2「マスメディア」・・・第一次追及者の声を社会全体に知らせるのは新聞、テレビ、雑誌のマスメディア → 今回:「Fortune」誌のキャサリン・エバン(Katherine Eban)記者
  3. ステップ3「当局(オーソリティ)」・・・大学・研究所、編集局(論文撤回)、研究公正局、検察、裁判所 → 今回:①米国・食品医薬品局(FDA)、②米国・裁判所
  4. ステップ4「後始末」・・・事件の分析・解説、研究ネカトの教育・研修、法律の制定・改正、制度の見直し → 今回:

研究ネカトは、一次追及者がいないとまるで動かない。そして、メディアもとても重要である。

日本は上記4ステップのどれをとっても弱体だが、特に、第一次追及者の重要性がまるで理解されていない。そして、メディアの機能もとても弱い。

何とかならないだろうか?

《3》告発奨励策

タクールの告発は命がけだった。

そして、連邦告発法(federal whistleblower law)に基づき、タクールに4800万ドル(約48億円)以上の報酬が与えられた。

この額もすごいね。日本もこのような告発奨励制度を導入したらどうなんでしょう。

《4》日本のお粗末な海外戦略

事件が起こった時、ランバクシー・ラボラトリーズ社は日本の第一三共の子会社だった。

2008年6月11日にインド大手の製薬会社ランバクシー・ラボラトリーズ社の買収を発表。同年10月20日に連結子会社としたが、2015年3月24日にサン・ファーマ社がランバクシー・ラボラトリーズ社を吸収合併[2]。合併後もサン・ファーマ社の株式を保有していたが、同年4月21日に保有していた全株式を売却した[3]。これにより、連結子会社ではなくなったものの、今後も業務提携は継続される予定である。(第一三共 – Wikipedia

第一三共はランバクシー・ラボラトリーズ社を買収して、事件を引き寄せた。ろくな目に合っていない。どうしてこんなインチキ会社を買収したんだろう。インドの文化風土を理解していないのか。

東芝も海外戦略で失敗している。

高校の先輩である大前研一が2017年4月3日に東芝の失敗について書いている。

これは経営能力もないのにキャッシュだけは持っている日本企業が陥りやすい世界化の罠の典型的なパターンである。「ウェスチングハウス(WH)」のような海外の名門企業を買って子会社化したのはいいが、自分たちで経営し切れず、子会社幹部にいいように振り回されて最後には不正会計やパワハラが発覚、突如として巨額損失が表面化するのだ(東芝を沈めた原発事業「大誤算」の責任 | プレジデントオンライン | PRESIDENT Online)。

日本の企業はどこもかしこも、どうしてこんな無能な海外戦略をするのだろう。簡単に騙されている。

(注:写真は本文とは関係ありません)。サリーを着て実験している。2008年。白楽撮影。

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《1》詳細は不明

この事件の詳細は不明です。

ヴェンカタ・レディ(Venkata J. Reddy)はインドで修士号を取得後、米国の大学院に進学したインド系・院生である。

一般的に、米国のインド系・院生・研究者にネカト事件が多い。インドの研究文化・価値観がしみ込んでいているためだろう。

しかし、事件は百人百様である。一般論で済ますのは事実誤認する可能性がある。だから、ヴェンカタ・レディ事件もヴェンカタ・レディの事情を探りたい。しかし、ヴェンカタ・レディがどうしてネカトをする状況になったのか不明である。

ネカト防止策は次の《2》で述べる一般論以外、この事件からは学べない。

《2》大学院・研究初期のネカト

白楽は、院生の論文を研究公正局レベルの事件にしてしまうのは、指導教員がおかしいと思う。ヘレン・フリーマン(Helen C. Freeman)(米)の記事の【白楽の感想】にその思いを具体的に書いた。そちらを読んでほしい。

一方、院生の時にネカト行為を見つけて、早々と研究界から排除するシステムは優れていると思う。グズグズしていると、知識・スキル・経験が積まれ、なかなか発覚しにくくなるし、ネカト行為の影響が大きくなる。被害が大きくなる。

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《1》大学院・研究初期のネカト

白楽は、院生の論文を研究公正局レベルの事件にしてしまうのは、指導教員がおかしいと思う。ヘレン・フリーマン(Helen C. Freeman)(米)の記事の【白楽の感想】にその思いを具体的に書いた。そちらを読んでほしい。

一方、院生の時にネカト行為を見つけて、早々と研究界から排除する米国のシステムは優れていると思う。グズグズしていると、知識・スキル・経験が積まれ、なかなか発覚しにくくなるし、ネカト行為の影響が大きくなる。被害が大きくなる。

《2》その後の人生

2015年(28歳?)、ネカト事件発覚後、リトルフィールドはカリフォルニア大学サンフランシスコ校を退学し、「AJ Tutoring」という学生教育支援企業に勤めた。
→ Bay Area SAT Tutoring | 1 on 1 Academic Tutoring | AJ Tutoring

2018年3月7日(31歳?)現在、チームリーダになっている。

成功を祈る。

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《1》暗澹たる気持ち

製薬企業のこのような大規模な陰謀、組織ぐるみの悪事を知ると、暗澹たる気持ちになる。

製薬企業の組織的な研究ネカトは、大学の研究者がささいな欲得からネカトを始めるのとは根本的に異なる。組織犯罪で、弁護士も加担している。巨大な金銭が絡む。

大学の研究者を対象にしたネカト対策とは次元の異なる方法が必要だろう。とりあえず、以下の2冊の本を読んで勉強しよう。

  1. デイヴィッド・ヒーリー著(田島治・監訳、中里京子・訳)『ファルマゲドン 背信の医薬』 (2015年)みすず書房
  2. ベン・ゴールドエイカー著(忠平美幸、増子久美・訳)『悪の製薬 製薬業界と新薬開発がわたしたちにしていること』(2015年)青土社

(注:写真は本文とは関係ありません)。暗澹たる気持ちを、美しい自然で上書きしてください。白楽が大好きな場所。米国のグランドティートン国立公園(Grand Teton National Park)。ティートン山脈と手前のスネーク・リバー。2012年6月。白楽撮影。写真をクリックすると写真は大きくなります。2段階です。

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《1》元論文

本ブログの基本方針は引用先の記事が無料で閲覧できることだ。そのことで、読者が白楽の記事の検証ができる。英文論文を書くときに原典を引用できる。

なので、無料論文(今回は論文というより記事であるが、一括して「論文」で進める)を記事のネタ論文にした。

しかし、記事をまとめてから思うのだが、やはり、本来の元論文を読む必要があると感じた。

というわけで、ネカト研究者は本来の元論文を読んでくださいね。

《2》アンケート調査

白楽は基本的にアンケート調査を信用していない。

お茶の水女子大学の教員だった時、研究室の4年生(女性学生)がアンケートに答えていた。

質問:あなたは将来、結婚した時、「働く女性(賃金労働者)」と「専業主婦」のどちらを希望しますか?

4年生(女性学生)の回答:「働く女性(賃金労働者)」

4年生(女性学生)に、「結婚しても働き続けるんだね」と軽い気持ちで聞いたら、彼女は、「お茶大生なんだから、将来の計画は実際にはどうあれ、働く女性(賃金労働者)と答えるべきなんです」と、断固として答えた。

つまり、アンケートの質問に「本当はどうする」と答えていない。観念に縛られた理想的(?)な答えを書いたのである。

他の例をだすと、研究者に「現在の研究費で十分足りていますか?」と質問すれば、9割以上の研究者は「足りていません」と答えるだろう。

それに、今回の回答率は大学研究者が43%(767/1766)で企業研究者は48%(123/255)である。答えなかった人達は、母集団の平均値ではないだろう。答えなかった人達の状況を知る由もないが、アンケート結果は、母集団の状態を反映していないだろう。

今回の論文では、アンケートの質問に主観的に答える項目もある。これでは、ますます、恣意的な回答になってしまう。

白楽は基本的にアンケート調査を信用していない。アンケート調査以外の客観的な指標・方法で大学と企業の研究ネカトを比較できないだろうか?

サイモン・ゴデチャル(Simon Godecharle)。2014 COPE European Seminar https://publicationethics.org/cope-newsletter/2014/apr/cope-digest-publication-ethics-practice-april-2014-vol-2-issue-4

(注:写真は本文とは関係ありません)。白楽がルーヴェン・カトリック大学の職員食堂で食べたランチ。これにスープが付いて、4.05ユーロ(約480円)。2006年。白楽撮影。

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《1》似非科学

人々はどうして似非科学を信じるのだろうか?

バブ・カライルの与太話を、なぜメディアが取り上げたのか? ここでも取り上げていて何ですが、ここでは、ねつ造だと問題視して取り上げている。

メディアは基本的に、世間が騒いでいる事柄を記事・ニュースにする。それがビジネスだからだ。特に、人々がその記事・ニュースを買ってくれる公算が高ければ、つまり、記事・ニュースに商業的価値が高ければ、なおさら掲載する。しかし、似非科学を信じる、あるいは、信じさせる記事・ニュースは間違っている。メディアは取り上げるべきではない。さらに、そのようなメディアと似非科学の発信源を処罰すべきだ。

過去に以下のようなバカ騒ぎがあった。

  • 2000年問題 – Wikipedia・・・「西暦(グレゴリオ暦)2000年になるとコンピュータが誤作動する可能性があるとされた年問題である。結果としては直前にマスメディアで騒がれていたような生活に直結するほどの大きな混乱は一切起きずに終わった
  • 環境ホルモン – Wikipedia・・・「環境中に存在する化学物質のうち、生体にホルモン作用をおこしたり、逆にホルモン作用を阻害するもの。環境中の化学物質は当初考えられたような危険性を持っているとは考えにくい。極端な論者によれば、環境ホルモンは「人心を攪乱しただけだ」という主張もなされるようになっている

太陽黒点の経済活動への影響説・・・白楽は懐疑的です。

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《1》大学院・研究初期のネカト

白楽は、院生の論文原稿でのネカトを研究公正局レベルの事件にしてしまうのは、指導教員がおかしいと思う。ヘレン・フリーマン(Helen C. Freeman)(米)の記事の【白楽の感想】にその思いを具体的に書いた。そちらを読んでほしい。

一方、院生の時にネカト行為を見つけて、早々と研究界から排除するシステムは優れていると思う。グズグズしていると、知識・スキル・経験が積まれ、なかなか発覚しにくくなるし、ネカト行為の影響が大きくなり、被害が大きくなる。

《2》投稿論文のネカト

出版前の投稿論文のネカトが事件報道されるケースは珍しい。しかしいくつか見つかってきた。

  1. 2014年5月29日、研究公正局が発表したヘレン・フリーマン(Helen C. Freeman)(米) | 研究倫理(ネカト)
  2. 2017年11月27日、研究公正局が発表したマハンドゥーナウト・チェットラム(Mahandranauth Chetram)(米) | 研究倫理(ネカト)
  3. 2017年12月8日、研究公正局が発表したマシュー・エンド(Matthew M. Endo)(米) | 研究倫理(ネカト)

そして今回、2015年7月、研究公正局が発表したジュリー・マス(Julie Massè)事件である。

《3》特許はどうなる?

2015年3月13日、ジュリー・マス(Julie Massè)とダグラス・ステアーズ助教授(Douglas Stairs)が発明者で、特許「バレット食道の段階を診断する組成と方法(Compositions and Methods for Diagnosing Barrett’s Esophagus Stages)」が申請された。
→ Compositions and Methods for Diagnosing Barrett’s Esophagus Stages — Research at Penn State
→ ココ

ジュリー・マス(Julie Massè)はデータねつ造・改ざんで、2014年10月に研究室を去っている。特許申請日(2015年3月13日)は、事件発覚後である。事件発覚後に特許申請するのもどうかと思うが、ねつ造・改ざんデータが特許に記載されているに違いない。どうするのだろうか?

invention

 

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《1》別機関に所属していた時の論文

ファイザー社は、ミン=ジーン・インが2010年 ~ 2014年の5年間に発表した6論文をクロと判定した。

ミン=ジーン・インは2003年にファイザー社の研究員になっている。クロと判定した以前にファイザー社から出版した2003年~2009年 の論文は大丈夫だろうか? これらの論文をファイザー社が調査したかどうか、ハッキリしない。

そして、ミン=ジーン・インは、ファイザー社の研究員になる前、1995~2000年にテキサス大学サウスウェスタンメディカルセンター(University of Texas Southwestern Medical Center) の院生だった。この院生時代に、10論文を出版した。これらの論文にネカトはないのだろうか? テキサス大学はネカト調査していない。基本的には、すべきだろう。

法則:「ネカト癖は院生時代に形成されることが多い」。

しかし、大学や研究機関は、他者から疑惑を指摘された論文は調査しても、指摘されていない論文を調査する文化も仕組みも(予算も人員も)ない。現状のように所属機関が調査していては、まだら調査しかできない。

疑念は残ったままになる。

どうするといいんだろうか? 研究者は、ネカト者の論文は調査されようがされまいが、全部信用しないので大して困らない、ということか。マー、研究者としては当然の姿勢でしょう。

それに、生命科学の研究者は、古い研究論文(5年以上とか、10年以上古いとか)を単純に信用しない。最近の5~10年間に何らかの発展があると考えるのが普通だ。5~10年以上古い研究論文は、自分が信用しているか、他人が何度も引用している論文以外は、通常、引用しない。

だから、ネカト者の古い論文(5年以上とか、10年以上古いとか)の真偽はどうでもいいという面がある。

でも、シロクロつけるべきだという意見も一方で強固にある。そして、それは正論でもある。

現状では、所属機関をまたがってネカトを調査する組織は、日本にも米国にもほぼ存在しない。米国では研究公正局が大学に依存せずに調査する場合、また、FBIなどの連邦捜査機関が調査に入れば、所属機関をまたがって当該個人のネカトを調査することもある。

つまり、国家機関なら一貫して調査することもある。しかし、例外的だ。

日本なら以下の解決策なら、現状のいろいろなネカト問題を解決できる。

提案:「警察庁にネカト取締部を設置し、ネカトを捜査せよ」

《2》企業での研究公正

企業でのネカト事件の報告は、大学に比べとびぬけて少ない。どうしてだろうか?

「理論上」、ネカト事件の報告が少ない組織は、次の2つが考えられる。

  1. ネカト行為はほとんどないからネカト事件にならず、報告もない。
  2. ネカト行為は普通の頻度あるが、事件になる前に各部署または上層部が隠蔽し(握りつぶし)てしまう。ネカト行為者を解雇・転属させて再発を防ぐ。また、事件が明かるみに出ない処置をする。

もし「1」なら、その組織の研究公正管理に優れた点があるので、その点を学べないだろうか?

もし「2」なら、これはマズい。

製薬企業で医薬品のデータねつ造・改ざんがあれば、薬効がない医薬品を販売するとか、健康被害をもたらす医薬品を販売することになる。このことは必ず発覚し、製薬企業に大きな損害を与える。

ファイザー社は、研究員のアントニオ・グアルベルトを「間違い」ということで解雇したこともある。
→ アントニオ・グアルベルト(Antonio Gualberto)(米):Pfizer retracts another experimental cancer drug study – Retraction Watch at Retraction Watch

グアルベルト事件は、ネカト行為があったのに、その発覚を製薬企業が握りつぶした可能性が高い。ネカト行為者を解雇・転属させて再発を防ぐという方法だ。

しかし、現在、パブピアなどのネカト告発サイトでは、製薬企業が発表した論文のデータ異常を公然と指摘することができる。その指摘に対して、企業が何らかの納得できる対応を研究界に示さないと、疑惑が大きくなり、論文の信頼度はもちろん、その企業の研究論文全体の信頼度が低下し、企業のイメージダウンになる。

それで、今回のミン=ジーン・イン事件では、ファイザー社は対応した。

《3》企業での研究にネカトが少ない

白楽の事件データベースでは、事実として、日本でも海外でも、大学に比べ、企業研究者のネカト・クログレイ事件はとても少ない。

ベルギーの生命科学分野のアンケートだが、大学と企業のネカトを比較をした2017年の論文がある。それを「7-11.大学と企業のネカト比較」で解説した(2018年2月21日現在、まだ、アップしていません)。
→ 7-11.大学と企業のネカト比較 | 研究倫理(ネカト)

一部を引用しよう。

「告白」では、大学研究者の71%が、企業研究者の61%が少なくとも1回、ネカト・クログレイ行為を行なったと「告白」した。「観察」では、大学研究者の93%が、企業研究者の84%が少なくとも1回、同僚がネカト・クログレイ行為を行なっているのを「観察」した。

大学研究者に比べ、企業研究者のネカト・クログレイ行為は9‐10ポイント少ないが、3年間に少なくとも1回ネカト・クログレイをしたという企業研究者は61%(「告白」)もいた。同僚のネカト・クログレイを見た企業研究者は84%(「観察」)もいたのである。

実態として、企業(生命科学)研究者は、驚くほど多くネカト・クログレイ行為をしている。これほどネカト・クログレイ「行為」をしている研究者が多いのに、どうして、企業研究者のネカト・クログレイ事件はとても少ないにだろうか?

単純に考えれば、企業研究者は通報・告発しないからである。

ただ、ネカト・クログレイ「行為」をしないようにする仕組みが、大学に比べ、企業ではかなり発達しているというコメントがあった。これが、大学研究者に比べ、企業研究者のネカト・クログレイ行為が9‐10ポイント少ない理由だろう。

同じ「7-11.大学と企業のネカト比較」から、2つ引用しよう。

1.DTX
http://retractionwatch.com/2018/01/30/reports-misconduct-scientists-industry-academia/#comment-1546681

企業の研究は、通常、優良試験所規範(GLP、グッド・ラボラトリー・プラクティス、Good Laboratory Practice)、そしてヒトを対象にした研究は優良臨床試験規範(グッド・クリニカル・プラクティス、Good Clinical Practice )を満たす必要があります。どちらの場合も、データ公正性は不可欠です。 優良試験所規範では、すべての計測器の動作が検証され、較正され、完全な実験記録を残しておく必要があります。データを変更する場合、古いデータも残し、変更の理由を記述します。GLP研究室といえども完璧ではありませんが、非GLP研究室でしばしば生じるネカト・クログレイの多くを防げると思います。

優良試験所規範のもう一つの重要な点は組織図です。組織図は一見重要ではないようですが、QA(Quality Assurance 信頼性保証)担当者は研究者に報告してはならないとされています。つまり、QA担当者は研究者と独立している必要があります。

さらに、企業では、データのねつ造・改ざんをすると、企業に損害を与えるので、ねつ造・改ざんをする動機は少ない。大学では、データのねつ造・改ざんをすると、自分自身や共著者が損害をこうむるのに対し、企業では、価値のない標的化合物に無駄な金と時間を使うことになる。例えば、アイビーリーグなどの名門大学の研究者がネカトを犯しても、大学自体にはほとんど損害を被らないと言われています。

これらに加えて、企業では、データのねつ造・改ざんをし、それが見つかった場合、すぐに仕事を失う可能性があります。大学と違って企業は、従業員に「あなたは仕事を続けることができますが、3年間は研究をさせません」とは言いません。

企業の実験室でもネカト・クログレイが発生する可能性はありますが、このように、ネカト・クログレイを抑制する仕組みが多数あります。その結果、大学に比べ企業ではネカト・クログレイを犯すのはずっと難しくなります。

2.JadedInGradSchool
http://retractionwatch.com/2018/01/30/reports-misconduct-scientists-industry-academia/#comment-1546764

設備のメンテナンスと更生が不十分だったことが、私が大学を離れて企業に戻った理由の1つです。 測定の質を確保できない大学の研究結果を信頼できますか?

《4》防止策

ミン=ジーン・イン事件は、製薬企業・ファイザー社の研究者が起こしたネカト事件である。

ファイザー社は、外部から指摘された疑惑論文を自社内で調査し、ミン=ジーン・イン単独のネカトと結論した。その結果だけを、指摘した外部の人(レオニッド・シュナイダー)に回答した。もちろん、論文撤回の要請のために、学術誌・編集部にもネカトだったことを伝えた。

この対処は研究界に誠実な印象を与える。

しかし、「《3》企業での研究にネカトが少ない」に記載したDTXの意見ように、ファイザー社では、優良試験所規範(GLP、グッド・ラボラトリー・プラクティス、Good Laboratory Practice)を実施していたはずだ。さらに、ネカトをする動機が企業研究者には希薄だとも指摘している。

では、ミン=ジーン・インはどうしてねつ造データを論文に発表したのだろうか? 動機は、得だからだと思うが、では、7論文にねつ造データを発表するのを、どうして社内で防止できなかったのか? ミン=ジーン・インの社内での人間関係や置かれた状況はネカトが発生しやすい状況だったのか? ミン=ジーン・インのネカトに気が付くべき立場の社内の人間は、ミン=ジーン・インとの関係に問題があったのか? そして、外部から指摘されるまで、2010~2015年の6年間も、どうして気が付かなかったのだろうか?

今回のミン=ジーン・イン事件は、企業研究者がネカトを犯したときの処置や再発防止策のスキル・情報を企業が考え、改善する格好のチャンスだった気がする。

推定するに、社内で再発防止策を議論し何らかの対処をしたはずだ。

製薬企業として、情報公開は難しいかもしれない。それでも、ネカト行為の発生状況を分析し、企業研究者がネカトを犯したときの処置や再発防止策のスキル・情報を、多くの企業研究者とネカト研究者にもオープンにし、議論し、共有した方が、これからのことを考えると、全体の製薬企業にとってズット役立ったに違いない。

残念だが、現実には、そのような配慮はカケラもなかった。

つまり、現状では、どのような状況で、ミン=ジーン・インはネカトをしたのか皆目わからない。優良試験所規範のどの部分にどのような欠陥があったのか皆目わからない。従って、誰がどの段階でどうすると、ミン=ジーン・インのネカトを未然に防げたのか、皆目わからない。

企業の研究者のネカト事件が公表されることは珍しい。だからこそ、「誰がどの段階でどうすると、ネカトを未然に防げたのだろうか?」という問題意識も加えて、ネカト調査をし、再発防止策のスキル・情報をオープンにしてほしい。そうすれば、事件からもっと多くのことが学べるだろう。

《5》後日談:エリザベス・ビック(Elisabeth Bik)とビックの「アリエン!」写真コレクション

2016年2月、ネカトハンターのレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)は、ミン=ジーン・イン論文の図に異常があると知人に伝えられた。

この時、知人は匿名を希望した。しかし、2017年5月23日、知人は実名を公表しても良いと、レオニッド・シュナイダーに伝えた。知人はエリザベス・ビック(Elisabeth M. Bik、写真出典)だった。

エリザベス・ビック(Elisabeth Bik)は、

ファイザー社には学術機関にあるような研究公正委員会がない。ネカトをどこに通報すべきなのか外部からはわからない。それに、ネカトの申し立てにファイザー社がどのように対応するのかも分からなかった。それで、レオニッド・シュナイダーに伝えた。

と述べている。

2015年にパブピア(PubPeer)で、ミン=ジーン・イン論文の図のねつ造・改ざんを最初に指摘したのもエリザベス・ビックである。

エリザベス・ビック(Elisabeth Bik)は、オランダで育ち、オランダで研究活動していた微生物学者で、2001年に米国のスタンフォード大学に移籍した。2016年11月に退職し、uBiomeの科学ライタ―になった。また、有能なネカトハンターでもある。
→ 2016 年11月8日記事:Stanford Microbiome Pioneer Elisabeth Bik Becomes New Science Editor at uBiome、(保存版

研究公正に関心が高く、以下の研究公正論文を発表した。

エリザベス・ビック(Elisabeth Bik)のサイト(Microbiome Digest – Bik’s Picks | A daily digest of scientific microbiome papers, by your Microbe Manager Elisabeth Bik, Science Editor at uBiome.com. Twitter: @microbiomdigest、(保存版))を覗くと、ビックの独特の才能を感じる。

ネカトとは少しズレるが、エリザベス・ビックは、ストック写真の異常を指摘している。このような指摘をする人は世界的に珍しいので以下に3例示す(写真出典は上記のエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)のサイト)。

1.電気ハンダで作業している写真だが、モデルが発熱部分を握っている!!(保存版) アリエン!

2.パスツール・ピペットを逆に持ってる!保存版) キャップもつけていない! モデルはどうやって液体を取るのだ。アリエン!

3.同時に12試料を分注できる12連マイクロ・ピペットだけど、最左の1個、量が足りませんぜ。それに液の色が途中でピンクから無色に変わっている2層構造? こんな12チャンネルピペット買う人いません!! アリエン!

 

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《1》処分

更新前文章で、「ロンステットはウプサラ大学のポスドクから助教授に昇格していたので、ウプサラ大学はネカト者をどうして処分しないのだろう?」と疑問に思った。

ただ、この時、ウプサラ大学は予備調査でヘマって、シロと結論し、「本調査は必要なし」としていたので、処分できなかった。

このシロ判定は後に「Science」誌とスウェーデン政府の中央規範審査委員会(Swedish Ethical Review Board、Central Ethical Review Board )から強く批判され、慌てたウプサラ大学は、2017年5月29日、再調査を始めた。そしてようやく、2017年12月6日、ウプサラ大学はロンステットをネカトと結論し、ロンステットと指導教授のピーター・エクロフ教授を処分する予定だと発表した。

ロンステットは、事件後1年半(2017年11月2日)以内に助教授に採用されていたが、しかし、2018年2月12日時点では、ロンステットはウプサラ大学職員録から削除されていた。解雇または辞職したのだろう。
→ Oona Lönnstedt – Uppsala University, Sweden(2017年11月1日にサイトはあったが、2018年2月12日にチェックするとサイトは削除されていた)。

2018年2月16日現在、一方、ピーター・エクロフ教授(Peter Eklöv)は、ウプサラ大学の教授に在籍している。処分を科された形跡はない。
→ Peter Eklöv – Uppsala University, Sweden

《2》過去の所属機関の調査

パブメドで検索すると、ウウナ・ロンステット(Oona M. Lönnstedt)は、2012~2017年の6年間に14論文を発表している。

「2016年のScience」論文でのネカト状況から推察すると、他の論文でもネカトをしている公算が高い。

ウプサラ大学は他の論文をどうして調査しないのだろう? ああそうでした。ウプサラ大学は腐っているので、調査しないんですね。

こういう場合、日本もだけど、お手上げです。

さらに、少し考えれば気になるのだが、プサラ大学に来る前のウウナ・ロンステットの論文は大丈夫なんでしょうか?

ロンステットは、ウプサラ大学にポスドクに来る前は、オーストラリアのジェームズクック大学(James Cook University)の院生だった。

今から3年前の2014年7月(29歳)にジェームズクック大学で研究博士号(PhD)を取得した。その時の指導教員は、マーク・マコーミック準教授(Mark McCormick、写真出典)である。

マコーミック準教授は、ウウナ・ロンステットと共著の論文が15報以上ある。「ウウナ・ロンステットは研究に生きているタイプの人で、研究に献身的で倫理的な研究者です」と評している。これじゃ、調査しないでしょうね。

多くの国ではネカト調査の実施主体は所属大学・研究機関である。このシステムはどう考えたっておかしい。どう考えたって、自分の大学に所属する研究者をかばうのが組織の論理であり倫理でもある。

実施主体の所属大学・研究機関は「そもそも調査しない、調査してもおざなりにする、結論はシロとする、クロの場合も甘い処分にする」のは当然でしょう。

だから、ネカト調査は第三者機関に依頼しなければなりません。

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と改訂前に書いたが、正義は見捨てられていなかった。

2017年12月13日。ジェームズクック大学も調査を開始した。
→ 2017年12月13日の「Australian」記事:Research fraud scandal forces James Cook Uni to review graduate(保存版)

2018年2月16日現在、ジェームズクック大学の調査が終了したのかどうか、白楽は把握できていない。

それにしても、所属大学が調査する現行システムは根本的に欠陥システムである。ネカトは警察のような第三者機関が調査すべきである。

日本での提案:「警察庁にネカト取締部を設置し、ネカトを捜査せよ」

《3》微小プラスチックの禁止令と実害

微小プラスチックごみが稚魚の成長に悪影響を及ぼし、環境に悪影響を与えると信じられている。だから、米国、カナダ、英国は、化粧品やパーソナルケア製品(石鹸、歯磨き粉)に微小プラスチックの使用を禁止した。

米国は 「Microbead-Free Waters Act 2015」を制定し、2017年7月以降は製造禁止、2018年1月以降は販売禁止にした。
→ US to ban soaps and other products containing microbeads | Environment | The Guardian

英国は2017年12月31日以降、販売禁止である。
→ 2016年9月2日の「Guardian」記事:UK government to ban microbeads from cosmetics by end of 2017 | Environment | The Guardian
→ 2018年1月9日の「Guardian」記事:Plastic microbeads ban enters force in UK | Environment | The Guardian

カナダは2018年7月1日以降、販売禁止である。
→ 2018年1月3日のシムラン・シン(Simran Singh)記者の「Daily Hive Calgary」記事:Canada’s ban on toiletries containing microbeads comes into effect this year | Daily Hive Calgary

そして、使用禁止の有力な科学的根拠は「2016年のScience」論文だった。

「2016年のScience」論文がデータねつ造・改ざんで撤回された現在、微小プラスチックの使用禁止令はどうなってしまうのだろう?

2018年2月16日現在、微小プラスチックや海洋生物や人間に害になるという確かな科学的証拠がないのである。
→ 2018年1月16日のイヴォ・ヴェグター(Ivo Vegter)記者の「Daily Maverick」記事: Microbead bans: Throwing out science with the seawater | Daily Maverick(保存版)

マイクロプラスチック(microplastics)は、環境中に存在する微小なプラスチック粒子であり、特に海洋環境においてきわめて大きな問題になっている。一部の海洋研究者は1mmよりも小さい顕微鏡サイズのすべてのプラスチック粒子と定義しているが、現場での採取に一般に使用されるニューストンネットのメッシュサイズが333μm (0.333mm) であることを認識していながら、5mmよりも小さい粒子と定義している研究者もいる。しかし、マイクロプラスチックが野生生物と人間の健康に及ぼす影響は、科学的に十分に検証されていない。(マイクロプラスチック – Wikipedia)。

《4》防止策

ロンステット事件は、メディア(「Science」誌のマーティン・エンサリンク(Martin Enserink)記者)が、事件の経過を詳細に記述し、かなり深い分析をした。記事は誰もが無料で閲覧できる。

さらに、①中央規範審査委員会も②ウプサラ大学も調査報告書を英文で発表し、ウェブ上に公開した。

このように、ネカト事件の対処として、透明性はとても高い。白楽は、数百に及ぶ事件を調べてきたが、ロンステット事件での情報公開の質と量はトップクラスである。

しかし、どうして、ロンステットはネカトをしたのだろう? 誰がどの段階でどうすると、ロンステットのネカトを未然に防げたのだろうか? よくわからない。

ロンステットは、パソコンが盗難にあったという理由をつけて、意図的にパソコンを始末し生データを隠滅した。ねつ造は実験開始前から用意周到に計画したとは思えないが、論文を準備した時点では、明確にねつ造をはじめていた。その後、ずるずるとネカト地獄にはまり、同僚から指摘された時には強く否定し、証拠隠滅を図った。この時点では、積極的にねつ造を隠蔽していた。

このような、意図的にネカトする若いポスドク女性に対して、誰がどの段階でどうすると、ネカトを未然に防げるのだろうか? まず、さんざん言われていることだが、ネカト教育やネカト研修をしても、効果はないだろう。悪いと知っていてネカトをしている。

指導教授のピーター・エクロフ教授がロンステットのデータを精査すれば、ネカトを未然に防げたかもしれない。

エクロフ教授がロンステットのデータを疑っていれば、精査するだろうが、しかし、師弟関係では、師は弟子のデータを疑わない。弟子のデータを疑っていては師弟の信頼関係が成り立たない。

エクロフ教授はロンステットのデータを疑っていなかった。だから、精査しない。通常、ほとんどの師は弟子のデータを疑わない。

では、他に、誰がどの段階でどうすると、ネカトを未然に防げたのだろうか?

ロンステット事件での情報公開の質と量はトップクラスの事件なのに、事件を理解し、分析しても、白楽には、ネカト防止策を導き出せない。

調査委員会は、「誰がどの段階でどうすると、ネカトを未然に防げるのだろうか?」という問題意識も加えて、ネカト調査をしてほしい。そうすれば、事件からもっと多くのことが学べるだろう。

《5》名前の発音

ネカトとは関係ないが、ウプサラ大学のウェブサイトは優れている。文章を音読してくれる。

それで、「Oona M. Lönnstedt」を「ウウナ・ロンステット」と発音することがわかった。

他のサイトも、こういう配慮が欲しい。

本ネカト・ブログでも取り入れようかとチョット思ったけど、外国人が読むことはほとんどないと思うのでやめた。なお、難しい漢字や日本人名は平仮名を併記する方針である。外国人名もすべてカタカナ表記する方針でもある。

 

ウウナ・ロンステット(Oona M. Lönnstedt)

注:写真は本事件と関係ありません。白楽がウプサラで宿泊したホテル。2006年。白楽撮影。

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《1》なんかヘン

アキュニャは大富豪とあるが、学歴はなんかヘンである。

1995年(43歳)で、ペルーのトルヒーリョ国立大学で化学工学の学士号を取得したとある。中年になってから化学工学の学士号を取得してどうすんの?

2007年1月 – 2014年4月(54 –61歳)は、トルヒーリョ市(Trujillo)・市長である。ところが、この市長在任中の2009年(57歳)にスペインのマドリード・コンプルテンセ大学で研究博士号(PhD)を取得した。

常識的に、市長の仕事と他国での院生生活は無理である。論文提出して博士号を取得できる博士号(論文博士)は日本にしかない制度だ。スペインにはない。

市長在任中に他国で研究博士号(PhD)を取得するって、どうなってるの?

2017年10月18日の「El Comercio Perú」記事によると、盗博がスペインで裁判になっている。これも不思議だ。盗博が裁判になったケースは他にもあるが、珍しい。
→ 化学:「博士号はく奪?」:スヴィ・オーア(Suvi Orr)(米) | 研究倫理(ネカト)

白楽はペルーに滞在したことがない。ペルーの文化を知らない。白楽がこの事件のどこかを読み間違えているのだろうか?

《2》人気者

【動画3】

アキュニャのモノマネ芸人がいる。盗博までネタにしている。アキュニャは人気者? 単にバカにされているだけ?
Al Estilo Julianaが2016/02/10 に公開

【動画4】
PERÚ HOY 2 が2016/04/11 に公開だが、後に削除された → https://www.youtube.com/watch?v=TBycBrSkxM4

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《1》インドはバラバラ

インドのネカト事件を調べていると、インドではネカト事件の対処に大幅なバラツキがあることに驚く。米国に比べると日本もバラツキが大きいが、インドはもっと大きい。

サンジーブ・サフー事件では、7論文がねつ造・改ざんで撤回され、17論文が疑念視されている。ネカトは誰の目から見てもハッキリしている。つまり、質量ともに申し分のないネカトである。決定的である。

ところが、サフーの所属する生命科学研究所はサフーのネカトを調査しない。従って、サフーの処分はなく、現在も在職している。

では、第3者機関で、研究ネカトを監視する科学価値会(SSV, Society of Scientific Values)は、サフーを調査したかというと、その気配はない。

インド科学アカデミー(Indian Academy of Sciences)の研究倫理委員会も動かない。

サフー事件の数年前のゴパル・クンドゥー(Gopal Kundu)事件では、それらは全部稼働した。
→ ゴパル・クンドゥー(Gopal Kundu)(インド) | 研究倫理(ネカト)

どういう違いなのだろう? 違いが判らない。

注:写真はサンジーブ・サフー事件と関係ありません。ニューデリーの町。2008年。白楽撮影。

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【人間以外の共著者】

人間であっても、研究に貢献していない人を共著者にするのは著者在順に違反する。

ましてや、人間以外の動物や物品を共著者にするのは著者在順に違反する。固いことを言えばだが・・・。

共著者になった人間はそのことで不当な得をする。一方、共著者になった動物や物品はそのことで不当な得をしない。というか、不当も正当も、とにかく得はない。だから、ジョークですと受容され、糾弾されない。通常は。

具体例を示そう。

★処分を科されなかった例。

【ヘザーリントン教授】

1975年、ミシガン州立大学のヘザーリントン教授(Jack H. Hetherington、男性)とウィラード(Felix Domesticus Chester Willard)は物理学でトップクラスの学術誌・フィジカル・レビュー・レターズ(Physical Review Letters)に論文を発表した。しかし、驚いたことに、実は、ウィラードはヘザーリントン教授のペットのシャム猫の名前だった。

ヘザーリントン教授はこの論文の別刷りを配るとき、彼のサインの隣に猫の肉球印を押していた。ミシガン州立大学・物理学科の教授たちはこのジョークを楽しんで、ウィラード(シャム猫)を優良客員教授に任命するが、その要請をウィラード博士に打診して欲しいと、ヘザーリントン教授に依頼した。

返事は、どうだったのか、ニャア?

【ゼイルバーガー教授】

1993-2014年、ラトガース大学の数学者・ドロン・ゼイルバーガー教授(Doron Zeilberger、男性)は、32報の査読論文を「Shalosh B. Ekhad」と共著で発表した。実は、「Shalosh B. Ekhad」は、彼のパソコンの型式のヘブライ語名で、「コンピュータは非常にたくさん私の研究の発展に協力してくれた」と説明している。
→ http://sites.math.rutgers.edu/~zeilberg/ekhad/papers.html

アンドレ・ガイム(Andre Geim )。By Holger Motzkau 2010, Wikipedia/Wikimedia Commons (cc-by-sa-3.0), CC BY-SA 3.0, Link

【アンドレ・ガイム】

2001年、2010年のノーベル物理学賞受賞者のアンドレ・ガイム(Andre Geim 、男性)は、2001年の論文で、ペットのハムスター「H.A.M.S. ter Tisha」を共著者にした。そう言われ、共著者名の綴りを素直に読めば、共著者名は「ハムスターのティシャ」と書いてある。
→ 2009年10月記事:This Month in Physics History: October 2009

★一方、小さい処分だけど処分された例もある。

【ポリー・マッチンガー】

1978年、ポリー・マッチンガー(Polly Matzinger、女性)は免疫学(生命科学)の研究者で、「1978年のJ. Exp. Med.」論文で愛犬「ガラドリエル・ミルクウッド(Galadriel Mirkwood)」を共著者にした。

共著者「ガラドリエル・ミルクウッド(Galadriel Mirkwood)」が愛犬だと知った編集長は、自分が死ぬまで「J. Exp. Med.」誌はポリー・マッチンガーの論文を受理しないと宣告した。

マッチンガーは当時、カリフォルニア大学サンディエゴ校の院生だったが、その後、博士号を取得し、NIH・NIAIDの室長になったので、学術界から追放されていない。研究キャリアーは阻害されなかったと思える。

【ネッド・ニコロフ】

2016年、米国・森林局の研究員である気象学者のネッド・ニコロフ(Ned Nikolov)は、ユニークな仮名で論文発表した。仮名がバレ、論文は撤回された。公式にはネカトではないとされ、解雇されなかったが、研究上の制約を幾分受けた。
→ 気象学:ネッド・ニコロフ(Ned Nikolov)(米) | 研究倫理(ネカト)

以下が通常の【白楽の感想】

《1》ユーモア(遊び心)

サンドラ・トロイアン(Sandra Troian)https://www.princeton.edu/pr/pwb/99/0419/tenure.htm

百歩譲って、人間以外の名前を共著者にすることが不正だというなら、サンドラ・トロイアン教授(Sandra Troian)が、猫の名前を共著者にしたことで、一体、どんな困ったことが起こったのか? 被害者がいるなら誰がどんな被害を受けたのか?

その是非は置いておいて、少なくとも、実害がほとんどないなら、ユーモアの精神・行為を学術界に強く温存したいと、白楽は思う。

新発見や研究行為にユーモア(遊び心)の精神は必要でしょう。

昔の学者は、生物の和名や解剖学名に「面白い」「なるほど」と思える名前を付けた。タツノオトシゴ、カブトガニ、リュウゼツラン、人差し指、親知らず、・・・。

そして、科学の法則名にも独特の名称をつけた。

《2》御用委員

カリフォルニア工科大学の調査委員会の教授/弁護士は、トロイアン教授が猫を共著者にした行為を、カリフォルニア工科大学の優れた評判を大きく損なったと結論した。

各メディアが指摘しているが、この調査委員会は任命者である教務局長(プロヴォ-スト)のエドワード・ストルパー(Edward Stolper)と副・教務局長のモルテザ・ガリブ(Morteza Gharib)の意向に沿って、結論を出したのである。つまり、調査委員は典型的な御用委員だった。

日本はほとんどすべてが典型的な御用委員だし、米国でもどこの国でも、専門家の委員会や識者からなる第三者機関のほとんどは当局に都合がいい御用委員がたくさんいる。

日本では当局(官僚)が委員会の委員を人選するので、委員が御用委員になるのは当然である。当局(官僚)が決まった段階で、当局の意向に沿う意見を持つ委員を選び、委員に委嘱する。委員会の結論は最初から決まっている。

ただ不思議なことに、世間の一部(大半?)は、専門家の委員会や識者からなる第三者機関というと、当局とは独立して客観的な正義を下す機関だと誤解している節がある。「ちがうだろー」と叫んでおく。

マスメディアはチャンと報道して欲しいが、マスメディアも大口収入源は大事なので、配慮しながらしか、記事にできない。

それで、御用意見でない意見は、骨のある記者が書くか、小規模なマスメディアが発信するか、個人がブログで書くしかない。困った。

困ってばかりいないで、解決法を考えよう。

大学や研究機関の委員会や第三者機関が審議結果を発表する時、少なくとも、誰が委員なのかウェブに公表させる。できれば、誰がどんな意見を述べたのかという記録をウェブに公表させる。このルールを日本の文化慣習に固定させる。

そうすれば誰がどんな意見を述べたか、国民は知ることができる。自分の意見が国民に知られ、批判されると、御用委員といえども、プライドを気にする。この方策は、日本を少し良くできると思う。

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《1》事件の深堀

若い女性研究者と男性教授のネカト事件は世界中にあるが、若い女性研究者のグレンツは、同じドイツ人で風貌がマリオン・ブラッハ(Marion Brach)と似ていることから(よく見れば似てませんが)、ドイツの有名なヘルマン/ブラッハ事件と重なってしまう。
→ フリードヘルム・ヘルマン(Friedhelm Herrmann)、マリオン・ブラッハ(Marion Brach)(独) | 研究倫理(ネカト)

ヘルマン/ブラッハ事件では、ブラッハは私生活上でもヘルマンのパートナーだった。しかし、最後は、ヘルマンが自己保身に走り、女性のブラッハは見捨てられた。

グレンツも同じように、若い時(30歳頃)から10年以上もエルツィヒ教授(Holger Eltzchig)に尽くした。

グレンツは「研究を愛していて、研究以上に愛する対象は何もない(I love nothing else more than doing research)」と2013年(39歳?)に語ったその年、容色が衰えた39歳はグレンツは、ボスのエルツィヒ教授にネカト行為を個人的に注意されず、大学に通報され、捨てられた(推定)

勝手な推測です。

Dr. Holger Eltzschig and Shelly Eltzschig http://www.chron.com/life/society/article/UTHealth-s-record-breaking-5-6-million-10598674.php#photo-11767538

エルツィヒ教授は、2016年11月4日のパーティでは東洋系の奥様のシェリー(Shelly Eltzschig)と写真に納まっている(上図)。シェリーは長年の妻なのか、1~2年前に結婚したのか白楽は知らない。

ただ、たまたま写真の日付がネカトを大学に通報した2013年12月から3年後なので、その頃、グレンツからシェリーに乗り換えたのかと、3流週刊誌的に邪推してしまった。

というのは、長年尽くしてくれた部下にネカト疑惑が生じたとき、部下を愛していれば、いきなり大学の研究公正官に訴えるだろうか?

白楽は女子大学だったので、長年、女子学生・院生を育ててきたが、自分の学生・院生が何とかよく伸びて欲しいと全身全霊で強く思ってきた。もちろん、うまくいかない(女子学生・院生から嫌われた)こともある。それでも、もし、学生・院生にネカト行為を見つけたら、研究室外に単純に訴えることは決してしないだろう。教師として、本人に何とか修正してもらう方策を取るだろう。

一般的に、どの国の研究者も、人間関係(愛)が崩れていなければ、部下を何とか良い方向にもっていこうとすると思うのだが。

《2》研究公正局

アルムット・グレンツ(Almut Grenz)はコロラド大学デンバー校の準教授で、NIHからも研究費を受領しているはずだ。少なくとも、ボスのエルツィヒ教授は、多額の研究費を受領していた。公開されたコロラド大学デンバー校の調査報告書にNIHからの研究費が記載されている。

なのに、研究公正局が調査し、結果を発表しないのはヘンだ。

コロラド大学デンバー校は2016年4月8日に調査を終了し調査結果を発表している。

2018年2月2日現在、それから1年10か月が過ぎようとしてる。研究公正局がゴタゴタしているのはわかる。しかし、だからと言って、怠慢は許されない。それでなくても「グズ」と叱責されているのに。

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《1》研究ネカト者を研究職から排除し刑事処分

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http://archive.boston.com/news/nation/articles/2005/03/18/researcher_admits_fraud_in_grant_data?pg=full

研究ネカトで収監された世界で最初の大学教員だが、刑期1年1日も収監されるほど突出して悪いだろうか?

本ブログで扱っている事件は、全部、研究者の事件だが、その大半(約98%)は、刑事事件化していない。

同程度の研究ネカトを犯している人がそこそこいるように思えるが、期間の長さ、研究申請額・受領額の多さ、研究成果の社会への影響度、カナダへの逃亡、捜査への非協力、証拠隠滅などで悪質度が高いとされ、研究公正局の締め出し年数(debarment)を生涯とされた。さらに、刑事事件化した。

なお、米国の研究ネカト者の大半(約99%)は、大学・研究所を辞職し(解雇ではない)、その後、教授職・研究職に就けていない。米国は研究ネカト者を研究界から排除する方針だからだ。

一方、日本では、大学・研究所を辞職・解雇されることもあるが、研究ネカト者のかなりの割合の人が、休職などの軽微な処分が科され、処分期間が終われば、教授職・研究職に復職している。なんか変だ。

日本には研究ネカト者を研究界から排除する方針がないからだ。ネカトは研究界の不正の中でも、研究の根本にかかわる不正である。研究ネカト者は、研究界の研究職に就けないようにすべきだろう。

標語:「ネカト者は学術界から追放!」

また、今後、研究ネカトを刑事処分すべきだろう。

標語:「ネカト者に刑事罰と罰金を!」

とはいえ、大学教授まで務めた人には知識・スキル・才能があり、国・社会もそこまで育てるのに巨額の投資をしている。研究界から排除するにしても、持っている知識・スキル・才能を国・社会に還元していただきたい。

ポールマンは、医師免許がないが、科学や大学教育には優れた才能があり、知識・スキル・経験も豊富である。刑務所から出所後、大学教育にたずわさっている。研究ネカト者の1つの生きる道だろう。

《2》調査不十分?

ポールマンは、1985~~2005年に200報以上の論文を発表し、1985~2002年の10論文が研究ネカト(6論文が撤回)されている。200報以上のうち10論文だけが研究ネカトとは、とても考えにくい。

調査が不十分ではないのか?

ただ、数値のねつ造・改ざんは画像の重複使用や改ざんとは異なり、生データと突き合わせないとネカトを証明できない。古い生データの保存の義務はない。もし、保存してあっても、生データ自身がねつ造・改ざんされていたら、お手上げである。

ネカト疑念があっても証明できないのが現実だろう。

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《1》江戸の仇をネカトで討つ

パブメド検索で52論文を出版した教授が、学長になる2年前の2014年に、さほど重要でもない2つの総説で盗用をした。その7年前の原著論文でも盗用したが、3行ほどの文章だけである。

2016年1月(55歳)、ハイデラバード大学が身分差別をしたために学生(男性)が自死した。この自死を招いたポディル学長の政策と対応がまずかった。学生たちは学長の辞任を要求した。

2016年4月(56歳)、学内が騒然としてた時、ポディル学長の3論文(2報が総説、1報が原著論文)に盗用があると新聞が指摘した。

盗用事件の前に、身分差別による学生の自死事件が大騒動になっていた。

「Wire」新聞のヴァスデヴァン・ムンクス(Vasudevan Mukunth)記者が、ポディル学長の問題点を洗い出して、学長を辞任させようとして盗用を見つけた。ある意味、「叩けばほこりが出る」ので、あちこち叩いたら盗用が見つかった。

とはいえ、もちろん、盗用は盗用である。

しかし、学長を辞任に追い込むための便法としてネカト事件を利用しようとした印象がある。

このように別件の事件が背景に潜むネカト事件はかなり多いと思う。ただし、ネカト事件を調べても、背景がわからないことが多い。「かなり多いと思う」のを数値で示すのは難しいが、多分、1~3割だろう。ネカト事件の1~3割は他の金銭・権力・人間関係の摩擦や事件で、相手をおとしめようとネカト事件を持ち出したと思われる。以下は例。
→ 航空・機械工学:サンドラ・トロイアン(Sandra Troian)(米)
→ 盗学:法学:エンリケ・ペーニャ・ニエト(Enrique Pena Nieto)(メキシコ)

《2》盗用の程度とペナルティ

もちろん、盗用は盗用である。

しかし、どの部分をどのくらい盗用したら、どのような処分をするのが適切かという国際基準がない。

分野によって、基準は違ってよい。しかし、国際的に統一すべきである。

生命科学系の原著論文なら、新しい研究結果を示せば、文章はそこそこ盗用でもいいと、白楽は思う(少数意見です)。

総説なら、もともと他の原著論文のまとめと自分の考えの表明なので、他論文の文章を流用する場合、引用は必須でしょう。

ただ、ポディル学長の場合、ペナルティではなく。その後、インド科学界から2回も栄誉が与えられている。

例え盗用がわずかだとしても、盗用は盗用である。盗用研究者に、その後、科学界が栄誉を与えるのは、たとえ研究業績が優れていたとしても、いかがなものかと思う。

これでは、盗用を奨励しているようなものだ。

マズイことをした人に栄誉を与えたり昇進させたら、正義がかすみ、人心が荒廃する。

安倍政権は、佐川宣寿を理財局長から国税庁長官に栄転させたが、国民の信頼を失い、人心を荒廃させている。

(写真は本文と関係ありません)。ニューデリー:ホーリー祭。2008年。白楽撮影。

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《1》盗学

大統領などの政治家が若い頃、学論・修論・博論で盗用したことが、偉くなってから発覚し事件となることがドイツやロシアではたくさん見つかっている。学論=学士論文。

今回は、メキシコの現職大統領の25年前の学士論文での盗用事件である。修論・博論での盗用と、研究者の研究論文での盗用は、状況や意味が異なるので、前者を盗用とくくらずに、それぞれ、盗修、盗博と命名してきた。

今まで、学士論文での盗用の例がなかったが、盗修、盗博の名称を合わせ、今回、学士論文での盗用を盗学と命名する。

https://kami.com.ph/46538-photoalice-dixson-shows-no-trace-age-new-york-escapade.html#46538

《2》大統領の盗用事件

大統領などの政治家の若い頃の盗学・盗修・盗博をどう扱うか? 難しい問題である。

学術論文としての価値はほぼないので、学問的な弊害はないと考えてよいだろう。

しかし、盗学・盗修・盗博は「ズルして地位・権力・名声を得た」ことが明白である。どんな人にも許されないが、組織や国を代表する人間には特にあってはならないことである。

まず、どう処分するか? 難しい。今まではイロイロである。

  1. ハンガリーのシュミット大統領は盗博が発覚し、博士号がはく奪され、辞任した。
    パール・シュミット(Pál Schmitt)(ハンガリー)
  2. ドミニカのメディーナ大統領は盗博と指摘されたが、ウヤムヤになり、博士号ははく奪されず、辞任しなかった。
    盗博:経済学:ダニーロ・メディーナ(Danilo Medina)(ドミニカ)
  3. ロシアのプーチン大統領は盗博が発覚したが、博士号ははく奪されず、辞任しなかった。
    盗博:経済学:ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)(ロシア)

しかし、盗学・盗修・盗博が発覚したら、何らかのペナルティを科すべきだろう。例えば、10億円または全財産の2割の額の少ない方を罰金として没収するとかはどうだろう。罰金はネカト対策費に充てる。

ペナルティを科さなければ、社会通念として、ネカト得になってしまい、結果として、ネカト促進になる。

そして、どう再発を防ぐか? 大統領など要職に就く前の学生・院生時代なら、普通に以下の法則を適用する。

法則:「ネカトでは早期発見・適切処分が重要である」。

しかし、かなり偉くなってから盗用(この場合、盗博だろう)の再発防止策は、難しい。

《3》ネカトハンター

こういう事件を調べると、ネカトハンターの重要性をつくづくと感じる。

メキシコのトップ・ジャーナリストのカルメン・アリステギ(Carmen Aristegui)が盗学を指摘したが、彼女の指摘がなければ埋もれたままだった。

Mexican journalist Carmen Aristegui https://ijnet.org/es/blog/carmen-aristegui-comparte-consejos-para-periodistas-que-enfrentan-situaciones-de-acoso-legal

アリステギは盗学を指摘した2016年の2年前にペーニャ・ニエト大統領のカサブランカ・スキャンダルを指摘した。それで、MVS放送局がアリステギの率いる番組制作のチーム・メキシコリークス(Mexicoleaks)を解雇した。その解雇に反発してアリステギがMVS放送局を辞めてしまった。

生活をかけて、つまり、ある意味、命がけで、メキシコ社会に木鐸を鳴らしている。

すごい女性である。

ただ、アリステギ本人がペーニャ・ニエト大統領の25年前の論文盗用を最初に見つけたとは思えない。学術研究者の誰かが見つけ、情報をアリステギに持ち込んだのだろう。その誰かは、報道からは推察できない。

https://www.youtube.com/watch?v=m_viIfpdZqg https://www.sopitas.com/630202-a-cuatro-anos-de-las-urnas-pena-nieto-y-su-sexenio/

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《1》昔と今のルール

https://www.eduskunta.fi/EN/kansanedustajat/Pages/1333.aspx

約14年前に執筆した修士論文が、2018年に盗修だと指摘された。

この14年間で、盗用のルールが確実に変わったと思えないが、百歩譲って、変わったと仮定しよう。その場合、昔の行為を今のルールで裁く是非を考えたい。

日本では数十年前、既に、小説や文学では、盗用は非難されていた。しかし、学術論文での盗用は、引用ルールが厳格ではなかったこともあり、文献を示さずに他人の文章を「少し」流用する程度なら、許容されていた、と白楽は思う。なお、「少し」の程度は曖昧だった。

昭和人間である白楽は、大学・大学院で盗用ルールを習った覚えがない。ねつ造・改ざんは禁止と、大学・大学院の正規科目で習った覚えがない。そもそも、論文の書き方を体系的に教えてくれる科目はなかった(今でも日本の多くの大学・大学院でネカト規範を体系的に教えていないと思う)。

学部の時、必修科目である生化学実験実習の最初のオリエンテーションで、生化学の前田先生が学術文献のイロハを説明してくれたが、ネカト規範は教えてはくれなかった。

院生の時、「英語科学論文の書き方」本を独学で読み、見よう見まねで書き上げた英語論文原稿を指導教官に見せたら、その英語の下手さ加減にあきれられた。

気を取り直して修正し、勇敢にも米国の学術誌に投稿したら、今度は、外国人査読者から罵倒された。研究成果は掲載の価値があるが、「論文の書き方」がなっていない、「英語が下手すぎ」とひどく叱られた。しかし、今では考えられないほど何回も、査読者が修正してくれた。原稿改訂作業のやり取りを日米間の航空便でしてもらったのである。そして、何とか出版できた。修士2年の24歳の時だった。

つまり、ニガく苦しい経験を通して、「論文の書き方」を習得した。ヒドイもんである。オン・ザ・ジョブ・トレーニングである。

当時は、論文原稿の盗用はチェックされなかった。しかし、盗用するなど思いもよらなかった。

学術論文での盗用がチェックされ糾弾されるようになったのは、日本では、ここ10数年である。

話は変わる。

ここ数年、米国の映画界・スポーツ界・音楽界、そして学術界でも、有名人の過去のセクハラ行為が糾弾されている。この場合、20~40年前でも犯罪的とされた行為があるだろう。しかし、それとは異なり、軽度で当時許容されていた行為でも、現在、糾弾されている。

では、当時許容されていた行為を、現行のルール・価値観で裁くのは異常だろうか? 正義だろうか?

ウ~ン。難しいが、正義だろう。

昔の行為でも常に現行のルール・価値観で裁く。これが正義だ。

ナチスの残虐行為は当時、その組織で許容されていたとしても、現行のルール・価値観で裁かれる。

ネカトも、当時その組織で許容されていても、現行のルール・価値観で裁くのが正義だろう。

ユヴァスキュラ大学のティモ・サロビータ教授(Timo Saloviita)が、ウッタサリの修士論文は当時のルール・価値観では盗用ではないと主張しているが、現在は、現在のルール・価値観で判断するのが妥当だ。

ウッタサリの修士論文は盗用で、その責任はウッタサリと指導教員にあると思う。

https://www.satakunnankansa.fi/satakunta/haluan-lauran-tyttoystavakseni-huhtasaaren-ehdotus-hapearangaistuksista-kuohuttaa-verkossa/

《2》ネカトの政治利用

大統領選候補者の昔の悪行(今回は盗修)を指摘し、選挙で有利になる。

政治家は政策上の言動の不始末ではなく、他の行為の不始末でも失脚する。不倫(日本だけ?)や金銭でも失脚する。

ネカトブログで書いてきたように、世界中の多くの政治家が、政策上の言動の不始末ではなく、盗修・盗博事件で失脚してきた。

もちろん、ズルして出世したツケだと言われればそれまでだが、ウッタサリ事件では大統領選投票日の12日前に盗修が指摘された。

ネカトの政治利用は明らかだ。

こういう利用はネカト問題をゆがめてしまう、と白楽は危惧する。

https://www.uusisuomi.fi/kotimaa/230411-laura-huhtasaari-galluptuloksesta-en-ole-viela-edes-ehdolla-sauli-niinisto-ollut-hyva https://www.laurahuhtasaari.fi/medialle

http://www.groteski-magazine.fi/2016/kategoria/ihmiset/page/3/

上の写真を参考にしたと思えるウッタサリのアニメ画がウェブにある(下記)。もう、アイドルである。

ローラ・ウッタサリ(Laura Huhtasaari)のアニメ画。Anonyymi Nro. 75517691 14.12.2017 https://ylilauta.org/anime/75517691

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《1》ネカトの共犯者

スワランジット・シン(Dr. Swaranjit Singh) https://sscbiosurfactant.weebly.com/

微生物技術研究所は、最終的に、ファズラーラーマン・カーンがネカト実行者であると判断した。

一方、研究室主宰者のスワランジット・シンは無実を訴えていた。

この構図なら、スワランジット・シンは無罪と思える。しかし、微生物技術研究所はスワランジット・シンがネカトの共犯者であるという結論を変えなかった。

白楽にはスワランジット・シンが共犯者なのか、カーンの単独犯なのかわからない。

撤回した5論文は、全部、カーンが第一著者の2013年の論文である。

化学という分野は論文が多く出版されるが、カーンは、1年間(実際は1月―7月の半年間)に5論文も第一著者で投稿した。半年間で5論文投稿とはかなり多い。

投稿原稿を作成前でも作成中でも、ボスで共著者のスワランジット・シンが部下のカーンに、少し疑う方が自然だろう。「少し疑う」気持ちから、一言、「生データを見せてよ」と言えば、ねつ造・改ざんは把握できたと思える。

そうしなかったのは、共犯だからなのか、単に気が付かなかったからなのか、白楽にはわからない。

事実は、スワランジット・シンはズサンだっただけで、カーンの単独犯かもしれない。

スワランジット・シンを共犯とした結論を変えなかった微生物技術研究所の事情を把握できないが、別の要素があったのかもしれない。

スワランジット・シンがデータねつ造をしたと結論した2016年7月23日は、スワランジット・シンが60歳になったころである。

インドの公務員の定年退職は60歳である。定年退職の時期に重なった。それで、十分な調査をしなかったのだろうか?

(写真は本文と関係ありません)。ニューデリーの街角。2008年。白楽撮影。

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《1》なんでダマされる?

白楽は現役の時、血液中のたんぱく質を研究していた。それで、1滴の血液の数分の1の量で特殊な血液型を測定する方法を開発し、その特許を取ったことがある(全く収入はありませんでした)。

だから、1滴の血液でいろいろな病気の診断ができる安価な検査法を開発するのは、ありえる。しかし、200種類でしかも安価となると、眉唾だと思う。

いずれにせよ、画期的な検査法は、科学論文として発表されるか特許申請されるハズだ。科学論文と特許は誰でも閲覧できるし、専門家はその閲覧法を知っている。

論文や特許にする前なら、検査法の説明と実際の技術を見せてくれなければ、少なくとも白楽は信用しない。

つまり、巨額の投資をする前に、投資家はその検査法が成功した(成功する見込みが高い)裏付けや証明が必要なハズだ。ところが、この事件を追うと、多くの投資家はその検査法の真偽を確かめていなかった。なぜ確かめないのだろうか?

グーグル・ヴェンチャーズなどの賢い投資家はセラノス社の秘密主義に疑念を感じて投資しなかったとのことだ。正解である。

https://i.pinimg.com/originals/96/3b/14/963b142e7745d0cca10f8878b9898449.jpg

《2》日本の診断法開発、ホンマかいな?

日本の血液検査でもホンマかいな? という記事がある。

血液検査をするだけで、胃がんや乳がんといった患者数の多いがんはもちろん、希少ながんも含めた13種類ものがん(大腸がん、胃がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、食道がん、肝臓がん、胆道がん、すい臓がん、卵巣がん、ぼうこうがん、肉腫、神経膠腫)を、ごく初期の段階で診断できるという、夢のような検査手法が実現しようとしています。最新報告によれば、がんを正しく判定できる精度は95%以上という結果が出ています。(2017年9月30日の「NHK健康ch」記事:がん検診に大革命!血液一滴で13種のがんを早期発見)、(保存版) 

2015年6月30日(火)放送「NHK クローズアップ現代+」:あなたのがん 見つけます ~超早期治療への挑戦~ – NHK クローズアップ現代+、(保存版

2015年4月10日のオムロン社の記事:少量の血液で「がん」「アルツハイマー病」を診断できる最新の技術 | はじめよう!ヘルシーライフ | オムロン ヘルスケア、(保存版

これらの記述は国民をあざむいていませんよね?

2015年6月30日(火)放送「NHK クローズアップ現代+」では、「4年後までに」とあるから、2018年1月13日現在、あと1年半で完成するってことですね。

2015年4月10日のオムロン社の記事では、記事から3年弱経過してますが、「アルツハイマー病」を診断できていませんが・・・。

本ブログの読者は、医学研究者が国民をだましてきたことをさんざん見てきた。だから、国民をだます日本の医学研究者がゴロゴロいるのは、残念ですが、現実だと認識しているでしょう。

さて、ここで、2018年1月4日に膵臓がんで70歳で亡くなったプロ野球選手・監督の星野仙一の膵臓がんを取り上げてみよう。

膵臓がんの5年生存率は9.2%です。つまり、膵臓がんと宣告された人の9割強は5年生存できない。→ 国立がん研究センター https://ganjoho.jp/public/cancer/pancreas/treatment.html、(保存版

なぜ、これほど死亡率が高いかというと、その理由は膵臓がんを早期発見できないからです。

そして、それを裏付けるように、日本消化器病学会は、血液検査は「早期膵がんの検出にはあまり役立ちません」とある。

 膵がんを疑えば,[血液中の]腫瘍マーカーを測定します.膵がん検出のための腫瘍マーカーには,CA19-9,Span-1,Dupan-2,SLXなどがあります.膵がんでのこれらの腫瘍マーカーの陽性率は進行がんを除けば一般的に低く,2cm以下の膵がんにおけるCA19-9の陽性率は50%程度に過ぎず,早期の膵がんでは異常値を示さないことが多いので,早期膵がんの検出にはあまり役立ちません.出典:一般のみなさまへ | 日本消化器病学会、(保存版

ところが、2017年9月30日の「NHK健康ch」記事の一部分を再掲すると、「すい臓がんをごく初期の段階で診断でき、精度は95%以上」と書いてある。

NHKが医学研究者のお先棒をかついで、国民に間違った期待を抱かせていないでしょうね!

NHKが放映してくれれば、医学研究者にガバ~ッと研究費が入る。

NHKディレクターは、医学研究者に騙されていないか? 国民をだましていないか? 十分な知識と慎重な分析に基づいた科学的判断ができているのか?

セラノス社の血液検査に騙されたベンチャー投資家は、自分のお金を損するだけだから、大多数の国民は被害者にならない。投資家の自己責任である。

しかし、NHKだと、大多数の国民が被害者になる。わかってますよね、NHK。

クリントン元大統領とエリザベス・ホームズ(Elizabeth Holmes)。http://www.breitbart.com/california/2016/04/19/theranos-feds-launch-criminal-investigation/

シンガポールの初代首相・リー・クアンユー(Lee Kuan Yew)(右)とエリザベス・ホームズ(Elizabeth Holmes)。https://www.quora.com/Who-invested-in-Theranos

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《1》博士号はく奪

政治家の盗用や盗博は、政治生命にかかわる。それは当然だと思うが、問題なのは、政治的に利用される点である。

1回目の大統領選の予備選挙で最大の得票率を獲得したのに、盗用と盗博で、国民の信頼を失い、大統領選から脱落した。党首も辞任した。

ただ、大学は博士号をはく奪しなかった。「盗博の博士号は当然はく奪!」なのに、大学の振舞はとても政治的だった。忖度は日本だけではありません。

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《1》事件は未決着

http://www.weighthacker.com/tag/brian-wansink/

ブライアン・ワンシンク(Brian Wansink)の事件は、2018年1月9日現在、自己盗用、データ重複使用、データ操作、不適切な統計処理などのクログレイが指摘され、6論文が撤回され、13論文が訂正された。

2017年4月5日(56歳)にコーネル大学はワンシンク教授にネカトはなかったと発表したが、その後、クログレイがさらに指摘され、コーネル大学は2回目の調査をしている。

2018年1月9日現在、コーネル大学は2回目の調査結果を発表していない。

今後、コーネル大学はワンシンク教授をネカトでクロと結論し、解雇するかもしれない。

《2》早期発見・適切処分

ワンシンク教授のようにメディア出演が多い有名人は、ネカトやクログレイにかなり注意しなければならないのに、脇が甘い。

自己盗用、データ重複使用、データ操作、不適切な統計処理などの論文を発表すれば、そこにネカトやクログレイの証拠が示されている。多くの人が自由に不正を検証できる。証拠は隠滅できない。弁解もできない。

ただ、最初の不正論文は1994年(34歳)に発表されている。ワンシンク教授の少なくとも50論文に疑念があると2017年に指摘されたが、24年間もの長期間、指摘してこなかった状況も問題である。この責任はどこの誰にあるのか?

ワンシンク教授の提唱してきた食品消費の行動心理学での「食べ方の教訓」は、教訓の基礎となる科学データにねつ造・改ざんがあったとしても、すでに社会に根付いてしまった。つまり、根付いてしまった「食べ方の教訓」は、間違っている可能性がある(高い?)ということだ。

もっと早く、つまり、1994年(34歳)にワンシンク教授のネカト・クログレイを指摘していれば、悪影響はこんな広範にならなかったハズだ。

法則:「ネカトでは早期発見・適切処分が重要である」。

http://www.washington.edu/news/2013/10/08/profile-brian-wansink-slim-by-design-author-and-2013-hogness-lecturer/

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《1》証拠品分析値の信頼性

証拠品分析値がねつ造・改ざんされたら、科学捜査は成り立たない。

今回の事件は英国だけど、米国では、証拠品分析値のねつ造・改ざんは珍しくない。
例えば → フレッド・ザイン(Fred Zain)(米)

証拠品分析値でのねつ造・改ざん事件「科学捜査:アニー・ドゥーカン(Annie Dookhan)(米)」での文章を以下に自己引用しよう。

研究ネカトの研究をしていると、今回の事件のように犯罪捜査での科学分析値のねつ造・改ざんをどうチェックすることができるのか、とても気になる。

一般的には、監視・批判されない安全圏にいる研究者が研究ネカトをする頻度は高い。つまり、「人間は善悪両方を内在し、監視・批判されなければ悪がでて、監視・称賛されれば善がでる」。

科学捜査研究所の研究員の分析対象は、試料が少なく、分析は1回しかできないこともあるだろう。その場合、他人ばかりか本人でも追試はできない。分析に失敗し数値をねつ造、あるいは、分析に自信がなく、得られた数値を改ざんしたら、どうチェックするのだろう?

日本の鑑定書は大丈夫だろうか? どのようなメカニズムで信頼性が保証されているか?

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《1》盗用の修正

研究論文で盗用すると、米国の研究者は解雇されるなど、厳罰が下される。日本では解雇されないが、何らかの懲戒的な処分をされることが多い。

では、今回のブロットマン事件のように調査報告書に盗用があっても、訂正すればペナルティなしでよいのか?

盗用は知的財産を侵害するという違反行為だから、研究論文であろうと調査報告書であろうと同じ違反行為である。だから、訂正版を提出したからよいというブロットマン教授の主張はおかしい。

ブロットマン教授の考え方で学生を教育してはならない。コミュニケーション & インフォメーション大学は調査し、ブロットマン教授を解雇すべきだ。

一方、少し次元は異なるが、日本の政治家で、海外視察の報告書に盗用が見つかった例は多い。その場合、日本社会は修正しておとがめなしという対応をしている。これはかなりマズイ。

福岡市議会の民主党会派「民主・市民クラブ」の議員4人が欧州を行政視察した際の報告書に、書籍やインターネット上の百科事典「ウィキペディア」からの盗用があったことが[2012年5月]12日、分かった。執筆を担当した田中慎介議員は「注釈に参考文献を記すことを失念していた。結果的に盗用ととられても仕方ない」として、近く報告書を修正する考えを示した。(欧州視察報告書に書籍やネット上の「ウィキペディア」から盗用 民主・市民クラブ – ななみん

盗んだ商品を返して済むなら警察いらない。

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《1》詳細は不明

この事件の詳細は不明です。

マシュー・エンド(Matthew M. Endo)がどうしてネカトをする状況になったのか不明である。

不明だが、推察してみよう。

マシュー・エンドは、学部時代に2論文、院生になって3論文を出版していた。ただ、第一著者ではないので、研究の進め方や論文の書き方は十分習得できていなかった。

しかし、大学院に入学してから7年も経ち、29歳(?)なのに、博士号が取得できていない。論文にまとめる研究の仕方がわかっていなかったが、何とか第一著者で論文を出版し、博士号を取得したい。研究室の院生の中での焦り、家族や先生から早くしろというプレッシャーを感じていた。

それで、研究遂行に苦悶する中、魔がさして、ネカトに手を染めた。

推察です。

《2》投稿論文のネカト

出版前の投稿論文のネカトが事件報道されるケースは珍しい。2014年5月29日(34歳?)、研究公正局が発表したヘレン・フリーマン事件(Helen C. Freeman)の時に「珍しい」と書いた。マシュー・エンド事件も「出版前の投稿論文のデータ改ざんが指摘された珍しいケース」である。
→ ヘレン・フリーマン(Helen C. Freeman)(米) | 研究倫理(ネカト)

しかし、マシュー・エンド事件の少し前の2017年11月27日に研究公正局が発表したマハンドゥーナウト・チェットラム事件も「出版前の投稿論文のネカト事件」である。
→ マハンドゥーナウト・チェットラム(Mahandranauth Chetram)(米) | 研究倫理(ネカト)

研究公正局が2回連続して「投稿論文のネカト事件」をクロとしたのは、研究公正局の方針に変更があったからだろうか?

多分、偶然だろう。

2017年12月31日現在、研究公正局は2人の部長が辞職し、所長が解雇され、ゴタゴタしている。方針変更できる状況ではない。

なお、白楽は、院生の「投稿論文のネカト」を研究公正局レベルの事件にしてしまうのは、指導教員がおかしいと思う。ヘレン・フリーマン(Helen C. Freeman)(米)の記事の【白楽の感想】にその思いを具体的に書いた。そちらを読んでほしい。

《3》ネカト者のその後の人生

標語:「ネカト者は解雇!」
標語:「ネカト者は学術界から追放!」
標語:「ネカト者に刑事罰と罰金を!」

白楽は、上記の標語のように主張している。

マシュー・エンド(Matthew M. Endo)の場合、損害の総額(推定)は1億3千万円である。

ネカト行為に対する刑事罰や罰金がなく、単に、院生を退学して済ませては、社会システムとしてマズい。これでは、見つからなければネカトした方が得だし、見つかっても処分が軽いのでネカトした方が得だ。社会システムでは、ネカト行為が後を絶たない。

米国・研究公正局は、ネカト者の処罰に大きな欠陥を抱えていると指摘されている。権限上、大学も研究公正局も刑事罰や罰金を科すことができない。一部の識者は、刑事罰を科せるシステムが必要だと主張している。白楽も同感だ。

とはいえ、人間は誰でも十分幸福に生きる権利があるし、十分幸福であるべきだ。学術界から追放されたネカト者のその後の人生は、できるだけ豊かであってほしいと願う。白楽が示した標語は、ネカト者を学術界に残さないこととネカト抑止効果を高める意図だ。

マシュー・エンド(Matthew M. Endo)の場合、どうしてネカトをしたのか、《1》で推察したが、事実は不明だ。ただ、そのゴタゴタを乗り越えているように思える。

アリソン・オンドラス(Alison Ondrus) http://www.ondruslab.caltech.edu/members/

2016年12月(29歳?)から、コレステロール研究のつながりで、カリフォルニア工科大学(California Institute of Technology)・化学/化学工学科のアリソン・オンドラス研究室(Alison Ondrus)の実験室マネージャー(laboratory manager/operations specialist)に採用され、生計を立てている。

そして、2017年(30歳?)から、マシュー・エンドは、法科大学院のロヨラ・ロー・スクール(Loyola Law School)に入学している。法務博士(Juris Doctor)の取得を目指している(取得済?)。

生化学者から弁護士への転身である。

素晴らしいと思う。

法曹界で今度はネカトをしないよう心掛け、豊かな人生を過ごしてほしい。

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、日本に飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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