クリシュナ・マースィー(H.M.Krishna Murthy)(米)

2018年5月7日掲載。

ワンポイント: 2018年4月10日(64歳?)、研究公正局は、アラバマ大学バーミンガム校(University of Alabama at Birmingham)・準教授だったマースィーにねつ造・改ざんがあったと発表した。締め出し期間を10年間とした。どんな事情があったのか不明だが、事件の調査に11年もかかっていて、異常である。発端は、2006年(52歳?)、マースィーの「2006年のNature」論文に、オランダのユトレヒト大学(Utrecht University)の院生・バート・ジャンセン(Bert Janssen)が、疑念を抱き、追及し、学術誌「Nature」とアラバマ大学にデータ異常の懸念があることを伝えた。アラバマ大学バーミンガム校は、2007年1月(53歳?)に調査を始め、2009年11月月(55歳?)にクロと発表した。マースィーは、2009年2月(55歳?)にアラバマ大学バーミンガム校を実質解雇されている。マースィーはインドで生まれ育ちインドで研究博士号(PhD)を取得した(推定)。この事件は、タンパク質結晶学で最大のネカト事件とされている。損害額の総額(推定)は7億7600万円。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

クリシュナ・マースィー(H.M.Krishna Murthy、、顔写真見つからない)は、インドで生まれ育ちインドで研究博士号(PhD)を取得し(推定)、米国のアラバマ大学バーミンガム校(University of Alabama at Birmingham)・準教授になった男性である。医師ではない。専門は構造生物学(タンパク質結晶解析)だった。

2006年(52歳?)、「2006年のNature」論文を発表した。同様な研究結果を得ていたオランダのユトレヒト大学(Utrecht University)の院生・バート・ジャンセン(Bert Janssen)が、マースィーのデータに疑念を抱き、追及し、学術誌「Nature」とアラバマ大学にデータ異常の懸念があることを伝えた。

2007年1月(53歳?)にアラバマ大学バーミンガム校が調査を始め、2009年11月にクロと発表した。

それから、9年が経過した。この間、何があったのか? マーいいけど。

2018年4月10日(64歳?)、研究公正局は、マースィーにねつ造・改ざんがあったと発表した。締め出し期間を10年間とした。10年間の処分はとても重い処分である。

マースィーのねつ造・改ざんはタンパク質結晶学で最大のネカト事件とされている。ねつ造・改ざんは計449論文の結論に影響したと言われている。また、蛋白質構造データバンクに登録されたデータを削除した最初の例である。

アラバマ大学バーミンガム校(University of Alabama at Birmingham)。写真出典https://uab.financialaidtv.com/

  • 国:米国
  • 成長国:インド?
  • 医師免許(MD)取得:?
  • 研究博士号(PhD)取得:?
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1954年1月1日生まれとする。1981年にイェール大学・ポスドクになった時を27歳とした
  • 現在の年齢:70 歳?
  • 分野:構造生物学
  • 最初の不正論文発表:1999年(45歳?)
  • 発覚年:2006年(52歳?)
  • 発覚時地位:アラバマ大学バーミンガム校・準教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者はオランダのユトレヒト大学(Utrecht University)の院生・バート・ジャンセン(Bert Janssen)で、学術誌「Nature」とアラバマ大学に公益通報した
  • ステップ2(メディア): 「Nature」、「Scientist Magazine」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①アラバマ大学バーミンガム校・調査委員会。②学術誌「Nature」。③研究公正局。④健康福祉省(HHS)の行政不服審査(Departmental Appeals Board)
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:研究公正局でクロ判定(〇)
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:3報の撤回論文。いずれ計8報が撤回される予定。蛋白質構造データバンクに登録されたデータの12登録データも撤回(予定)
  • 時期:研究キャリアの中期から
  • 損害額:総額(推定)は7億7600万円。内訳 → ①研究者になるまで5千万円。②研究者の給与・研究費など年間2000万円が26年間=5億2千万円。③院生の損害が1人1000万円だが、院生数は不明なので、額は②に含めた。④外部研究費:NIHから2001年-2007年の7年間の受給総額は約1億5千万円)。⑤調査経費(大学と学術誌出版局と研究公正局)が5千万円。⑥行政不服審査経費が2千万円。⑦論文出版・撤回作業が1報につき100万円、撤回論文の共著者の損害が1報につき100万円。8報撤回=1600万円。⑧研究者の時間の無駄と意欲削減が4千万円。
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けられなかった(Ⅹ)。
  • 処分:大学は実質的に解雇。 NIHから 10年間の締め出し処分

●2.【経歴と経過】

不明点多し。

  • 生年月日:不明。仮に1954年1月1日生まれとする。1981年にイェール大学・ポスドクになった時を27歳とした
  • 19xx年(xx歳):インド(推定)のxx大学で学士号取得
  • 19xx年(xx歳):インド(推定)のxx大学で研究博士号(PhD)を取得
  • 1981年(27歳?):イェール大学(Yale University)・ポスドク。2009年ノーベル化学賞を受賞したトーマス・スタイツ(Thomas Steitz)研究室
  • 1985年(31歳?):コロンビア大学(Columbia University)・上級研究員。ウェイン・ヘンドリクソン(Wayne Hendrickson)研究室
  • 1998年7月(44歳?):アラバマ大学バーミンガム校(University of Alabama at Birmingham)・助教授。その後、準教授
  • 2006年(52歳?):「2006年のNature」論文を発表し、直ぐに、ねつ造・改ざんが発覚
  • 2009年2月(55歳?):アラバマ大学バーミンガム校は雇用契約の終了時に、再契約しなかった。つまり実質的・解雇
  • 2009年12月8日(55歳?):アラバマ大学バーミンガム校がクロと発表
  • 2018年1月19日(64歳?):行政不服審査(Departmental Appeals Board)で敗訴
  • 2018年4月10日(64歳?):研究公正局はマースィーにねつ造・改ざんがあったと発表した。

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★発端

2006年(52歳?)、クリシュナ・マースィー(H.M.Krishna Murthy)は、「2006年のNature」論文で補体タンパク質・「ヒトC3b」(図出典 )の結晶構造を発表した。

多数の研究グループが「ヒトC3b」の結晶構造の決定を競っていた。

オランダのユトレヒト大学(Utrecht University)の院生・バート・ジャンセン(Bert Janssen、現在は主宰研究者。写真出典)の研究グループと米国のジェネンテック社(Genentech)の研究グループも「ヒトC3b」の結晶構造で同様な研究結果を得ていて、「2006年のNature」論文に前後して論文が出版された。

「ヒトC3b」構造が蛋白質構造データバンク(PDB; Protein Data Bank)に登録されるとユトレヒト大学の院生・ジャンセンはすぐに検証を始めた。その結果、自分のデータとマースィーのデータが違っていることに気が付いた。

院生・ジャンセンは彼の指導教授・ピエット・グロス(Piet Gros)に相談した。

院生・ジャンセンとグロス教授は、有名な結晶学者である英国ケンブリッジ大学のランディ・リード(Randy Read)と米国スタンフォード大学のアクセル・ブリンガー(Axel Brünger)に矛盾したデータの正否の検証を依頼した。

検証を依頼されたリードとブリンガーの2人は、マースィーのデータにねつ造・改ざんがあると判定した。

2006年12月(52歳?)、院生・ジャンセンとグロス教授は、学術誌「Nature」とアラバマ大学にマースィーの「2006年のNature」論文にデータ異常の懸念があることを伝えた。

2007年1月(53歳?)、アラバマ大学バーミンガム校(University of Alabama at Birmingham)は調査を始めた。

2009年11月(55歳?)、アラバマ大学バーミンガム校(University of Alabama at Birmingham)は調査の結果、蛋白質構造データバンク(RCSB Protein Data Bank )に登録してある12個のタンパク質「1BEF, 1CMW, 1DF9/2QID, 1G40, 1G44, 1L6L, 2OU1, 1RID, 1Y8E, 2A01, 2HR0」の結晶構造データはねつ造・改ざんされたもので、ネカトはクリシュナ・マースィー(H.M.Krishna Murthy)の単独行為だったと発表した。調査報告書は現在、ウェブで公開されていないので白楽は閲覧できなかった。
→ 2009 年12月8日記事:UAB – Reporter Archive – UAB Statement on Protein Data Bank Issues

マースィーは大学の調査結果に「自分は不正をしていない」と反論している。

しかし、リチャード・マカセ研究担当副学長(Richard Marchase)は、「マースィーは、その結晶構造を得た過程に関して、説得力のある証拠を示せなかった」と指摘した。

2009年11月(55歳?)にアラバマ大学バーミンガム校が調査の結果、クロと発表したが、その後、動きは水面下に入ってしまい、その後の進展は表に現れなかった。

白楽は、この事件は、ここで終わりだと思っていた。

ところが、9年後の2018年(64歳?)になって、事件は急浮上した。

2018年1月19日(64歳?)、マースィーは、研究公正局の処分は不当だと健康福祉省(HHS)の行政不服審査(Departmental Appeals Board)に上告していたが、この日、スティーブン・ケッセル(Steven Kessel )・行政法審判官(Administrative Law Judge)は上告を棄却した(PDFを以下に貼り付けた)。・・・なお、行政不服審査(Departmental Appeals Board)‎とは何かに関して、2007年の佐藤雄一郎の論文「ミスコ ンダクトの調査における手続保障 – J-Stage」が参考になるだろう。

以下の文書をクリックすると、PDFファイル(391 KB、12ページ)が別窓で開きます。

2018年4月10日(64歳?)、研究公正局は、マースィーにねつ造・改ざんがあったと発表した。締め出し期間を10年間とした。10年間は処分としてはかなり重い処分である。

マースィーのねつ造・改ざんは計449論文の結論に影響したと言われている。

【ねつ造・改ざんの具体例】

★NIH研究費受給

マースィーのNIH研究費受給状況を調べた。以下が全部ではないと思うが、表の2001年-2007年の7年間の受給総額は1,499,139ドル(約1億5千万円)である。かなり優秀である。表をクリックすると表は大きくなります。2段階です。

★研究公正局の指摘

2018年4月10日(64歳?)、研究公正局は、マースィーの6つのNIH研究費申請書、9報の論文、12種のタンパク質の登録データにねつ造・改ざんがあったと発表した。

【6つのNIH研究費申請書】
R01 AI051615
R01 AI032078
R01 AI045623
P01 HL034343
R01 HL064272
R01 DK046900

研究費申請書のねつ造・改ざんは、どのみち、具体的データにアクセスできない。解説は止めて、論文に移行しよう。

【9報の論文】

以下の1999年-2006年の9論文にねつ造・改ざんがあった。

  1. Nature 444:221-225, 2006 (hereafter referred to as “Nature 2006”); retracted in: Nature 532:268, 2016 April 14
  2. J. Biol. Chem. 274:5573-5580, 1999 (hereafter referred to as “J. Biol. Chem. 1999”); retracted in: J. Biol. Chem. 284:34468, 2009
  3. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101:8924-8929, 2004 (hereafter referred to as “PNAS 2004”); Editorial Expression of Concern in: PNAS 107:6551, 2010 April 6
  4. Biochem. 44:10757-10765, 2005 (hereafter referred to as “Biochem. 2005”)
  5. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103:2126-2131, 2006 (hereafter referred to as “PNAS 2006”); Editorial Expression of Concern in: PNAS 107:6551, 2010 April 6
  6. Acta Cryst. D55:1971-1977, 1999 (hereafter referred to as “Acta Cryst. 1999”); retracted in: Acta Cryst. D66:222, 2010
  7. J. Mol. Biol. 301:759-767, 2000 (hereafter referred to as “J. Mol. Biol. 2000”); retracted in: J. Mol. Biol. 397:1119, 2010
  8. Cell 104:301-311, 2001 (hereafter referred to as “Cell 2001”)
  9. Biochem. 41:11681-11691, 2002 (hereafter referred to as “Biochem. 2002”)

【蛋白質構造データバンクの登録】

蛋白質構造データバンクの登録した以下の12種のタンパク質の登録データにねつ造・改ざんがあった。
Protein Data Bank (PDB) identification codes 2HR0, 1BEF, 1RID, 1Y8E, 2A01, 1CMW, 2QID, 1DF9, 1G40, 1G44, 2OU1, and 1L6L (the PDB is funded in part by NIH)

★ねつ造・改ざん内容

6つのNIH研究費申請書、9報の論文、12種のタンパク質の登録データのどれも、タンパク質のX線結晶解析データをねつ造・改ざんしたのである。

2009年11月(55歳?)にアラバマ大学バーミンガム校が調査では、多量のデータ改ざんを見つけていた。

どの部分をどのようにねつ造・改ざんしたのか?

複数の結晶解析で、不可能な電子密度とあり得ない配置が見つかった。また、コンピュータで計算した数値に矛盾が見つかった。また、新しいオリジナルな結晶構造と発表していたが、実は、新しいオリジナルな結晶構造ではなく、別のタンパク質の構造を使用していた解析例もあった。

調査委員会は、調査の過程で、結晶解析の実験データを提出するようマースィーに求めたが、マースィーは実験データを提出しなかった(できなかった)。

そして、最も重要なことに、研究者の誰もマースィーが結論した結晶構造を実験的にサポートできなかったのである。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

2018年5月6日現在、パブメド(PubMed)で、クリシュナ・マースィー(H.M.Krishna Murthy)の論文を「H.M.Krishna Murthy [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002年に1報、2006年の2報の3論文がヒットした。

「Murthy HM[Author]」で検索すると、1979~2007年の29年間の22論文がヒットした。

2018年5月6日現在、「Murthy HM[Author] AND retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、3論文が撤回されていた。

  1. The structure of complement C3b provides insights into complement activation and regulation.
    Abdul Ajees A, Gunasekaran K, Volanakis JE, Narayana SV, Kotwal GJ, Murthy HM.
    Nature. 2006 Nov 9;444(7116):221-5. Epub 2006 Oct 15. Retraction in: Abdul Ajees A, Volanakis JE, Narayana SV. Nature. 2016 Apr 14;532(7598):268. PMID:17051152
  2. Crystal structure of Dengue virus NS3 protease in complex with a Bowman-Birk inhibitor: implications for flaviviral polyprotein processing and drug design.
    Murthy HM, Judge K, DeLucas L, Padmanabhan R.
    J Mol Biol. 2000 Aug 25;301(4):759-67. Retraction in: J Mol Biol. 2010 Apr 9;397(4):1119.
    PMID:10966782
  3. Dengue virus NS3 serine protease. Crystal structure and insights into interaction of the active site with substrates by molecular modeling and structural analysis of mutational effects.
    Murthy HM, Clum S, Padmanabhan R.
    J Biol Chem. 1999 Feb 26;274(9):5573-80. Retraction in: J Biol Chem. 2009 Dec 4;284(49):34468.
    PMID:10026173

2018年4月10日(64歳?)、研究公正局は、以下の5論文とデータベースの撤回を要請した。上記の3撤回論文との重複はないので、いずれ、撤回論文数は8論文になるだろう。

5論文
• Cell 104:301-311, 2001
• Biochem. 41:11681-11691, 2002
• Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101:8924-8929, 2004
• Biochem. 44:10757-10765, 2005
• Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103:2126-2131, 2006

データベース
• PDB entries 1RID, 1Y8E, 2A01, 1G40, 1G44, 2OU1, and 1L6L

★パブピア(PubPeer)

2018年5月6日現在、「パブピア(PubPeer)」では、クリシュナ・マースィー(H.M.Krishna Murthy)の論文のコメントはない。
→ PubPeer – Search publications and join the conversation.

●7.【白楽の感想】

《1》異例:研究公正局・所長の声明付き事件発表

クリシュナ・マースィー(H.M.Krishna Murthy)の事件は、2007年1月にアラバマ大学バーミンガム校が調査を始め、2009年11月にクロと発表した。この間、約3年もかかっている。遅い!

その上、研究公正局がクロと発表したのは、2018年4月10日(64歳?)である。アラバマ大学バーミンガム校の調査から11年もかかっている。異常に遅い!!

マースィーが行政不服審査(Departmental Appeals Board)に上告したことで、研究公正局はその結果を待って、調査を進めたのだろうが、それに要する年月は1年程度だろう。どんな言い訳をするのか知らないが、全体に遅過ぎである。

ネカトの調査から結論まで11年間もかかったのでは、被疑者がシロなら、取り返しがつかない不当なダメージを与えることになる。また、この間に関係者の人生上・キャリア上の変化もあるだろう。効率的な調査を進めるのにいろいろな支障が出るに違いない。

マースィー事件の研究公正局の発表では、そのためかどうか知らないが、研究公正局・所長の声明(内容は、言い訳、資金不足の訴え)が貼付されていた。こんな声明は前代未聞である。
→ The Murthy Case: Recognizing the Dedication of ORI Staff | ORI – The Office of Research Integrity

白楽は研究公正局がグズ(クズではありません)だと思う。もちろん、局員が怠けているとは思わない。扱う調査量に比べ組織が追い付かないのである。原因は、人員が足りないか、やり方がおかしいか、とにかく、システムを改革しなければならない。ところが、このシステムはパスカル所長時代から30年近く変わっていない。

事件が多すぎるのに人員が足りなければ、日本なら過労死で数人亡くなっていても不思議ではないのだろう(推定です)。

《2》詳細は不明

この事件の詳細は不明です。

クリシュナ・マースィー(H.M.Krishna Murthy)の顔写真は見つからない。インド出身だと思うが、経歴もほとんどわからない。

どうしてネカトをする状況になったのか不明である。

ネカト防止策は、この事件からは学べない。

なお、マースィー事件はタンパク結晶学で最大のネカト事件とされているが、健康被害者がいるわけではない。研究公正局は、締め出し期間を10年間とした。

マースィーのねつ造・改ざんは計449論文の結論に影響したと言われている。また、蛋白質構造データバンクに登録されたデータを削除した最初の例である。10年間を科した理由は、449論文の結論に影響した影響の大きさだと白楽は推察したが、違うかもしれない。

それにしても、タンパク質の結晶解析で、データねつ造・改ざんをしても、結晶構造なので、他の研究者が解析すれば、データが間違っていること、あるいは、ねつ造・改ざんはは確実に判明する。

結晶構造研究者なら、自明である。

その状況下で、なんで、ネカトをしたのだろう?

《3》ネカトの因縁?

fac_pic_WAYNE_HENDRICKSONマースィーはコロンビア大学(Columbia University)のウェイン・ヘンドリクソン(Wayne Hendrickson、2015年の写真出典)研究室で上級研究員として過ごした。

その、ウェイン・ヘンドリクソンは1983年、アメリカ海軍研究所のジェローム・カールのポスドクだった時、ハスコ・パラディースのエックッス線解析像は、他のタンパク質の解析像を流用していると見破った人である。
→ ハスコ・パラディース(Hasko Paradies)(ドイツ)

ネカトの因縁? 関係ない?

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●8.【主要情報源】

① ウィキペディア英語版: H.M. Krishna Murthy – Wikipedia, the free encyclopedia
② 研究公正局の報告:(1)2018年4月10日:Case Summary: Murthy, Krishna H.M. | ORI – The Office of Research Integrity、(2)2018年4月16日:Federal Register :: Findings of Research Misconduct
③ 2009年12月18日のボブ・グラント(Bob Grant)記者の「Scientist Magazine」記事:Crystallographer faked data | The Scientist Magazine®、(保存版)
④ 2018年4月10日のアリソン・マクック(Alison McCook)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Infamous case of fraud by protein crystallographer ends in 10-year funding ban – Retraction Watch、(保存版)
⑤ 2018年4月16日のレベッカ・トレイガー(Rebecca Trager)記者の「Chemistry World」記事:Protein chemist barred from US government funding for a decade | News | Chemistry World
⑥ 2009年12月22日のブレンダン・ボレル(Brendan Borrell)記者の「Nature」記事:Fraud rocks protein community : Nature News
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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