2020年9月3日掲載
ワンポイント:2020年8月7日(49歳?)、発覚から9年後(遅いですね)、研究公正局は、ウェイン州立大学(Wayne State University)・ポスドクだったワンの9件の研究費申請書、1篇の博士論文、14報の発表論文、の約100個の画像がねつ造・改ざんだったと発表した。2020年7月21日(49歳?)から10年間の締め出し処分を科した。ウェイン州立大学は2006年にワンに授与した博士号をはく奪した。なお、ワンは中国に育ち、修士号を取得後、渡米し、ウェイン州立大学で研究博士号(PhD)を取得し、その後、同大学のポスドクをした。指導教授はネカトで悪名高いフォジュルル・サルカール教授(Fazlul Sarkar)だった。2020年9月2日現在、ワンは36報の多数論文撤回者で、撤回論文ランキングにまだリストされていないが、世界第15位相当である。国民の損害額(推定)は20億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】
ジーウェイ・ワン、王志伟(Zhiwei Wang、ORCID iD:、写真出典)は、中国に育ち、修士号取得後、2002年(31歳?)で渡米し、ウェイン州立大学(Wayne State University)で研究博士号(PhD)を取得した。2007年1月 – 2011年5月(36 – 40歳?)、ウェイン州立大学のポスドクだった。その後、2011年5月(40歳?)、ハーバード大学医科大学院・インストラクター(助教より下の地位の大学教員)になった。現在は中国に帰国している。専門は病理学(前立腺がん)である。
ウェイン州立大学(Wayne State University)・ポスドク時代の研究がネカトとされた。ウェイン州立大学でのボスはネカトで悪名高いフォジュルル・サルカール教授(Fazlul Sarkar)である。
2011年6月(40歳?)の少し前に、ネカトが発覚したと思われる。ここでは発覚を2011年(40歳?)とする。
ネカト発覚の経緯は不明であるが、サルカールのネカト発覚の前である。だからサルカールのネカト調査でワンのネカト疑惑が浮上したという見方はできない。
2020年8月7日(49歳?)、発覚から9年後(遅いですね)、研究公正局はワンが9件の研究費申請書、1篇の博士論文、14報の発表論文、の約100個の画像をねつ造・改ざんしていたと発表した。
2020年7月21日(49歳?)から10年間の締め出し処分を科した。10年間の締め出し処分は非常に重い処分である。 → 「研究公正局の締め出し年数」ランキング | 研究者倫理 | 白楽の研究者倫理
2020年9月2日現在、ジーウェイ・ワン(Zhiwei Wang)は36報の多数論文撤回者で、撤回論文ランキングにまだリストされていないが、世界第15位相当である。
→ 2020年8月8日更新:「撤回論文数」世界ランキング | 白楽の研究者倫理 、(2020年9月1日保存版) → 2020年8月23日保存:The Retraction Watch Leaderboard – Retraction Watch
ウェイン州立大学(Wayne State University)。写真出典
- 国:米国
- 成長国:中国
- 医師免許(MD)取得:中国のベンブ医科大学(蚌埠医学院)
- 研究博士号(PhD)取得:ウェイン州立大学
- 男女:男性
- 生年月日:不明。仮に1971年1月1日生まれとする。1989年に大学入学した時を18歳とした
- 現在の年齢:53 歳?
- 分野:病理学
- 最初の不正論文発表:2006年(35歳?)
- 不正論文発表:2006~2013年(35-42歳?)の7年間
- 発覚年:2011年(40歳?)
- 発覚時地位:ウェイン州立大学・ポスドク
- ステップ1(発覚):第一次追及者は不明
- ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、「撤回監視(Retraction Watch)」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①ウェイン州立大学・調査委員会。②研究公正局
- 研究所・調査報告書のウェブ上での公表:なし
- 研究所の透明性:研究公正局でクロ判定(〇)
- ネカトの公表年:2020年(49歳?)研究公正局
- 不正:ねつ造・改ざん
- 不正論文数:研究公正局は9件の研究費申請書、1篇の博士論文(2006年)、2006~2013年(35-42歳?)の14報の出版論文。2019年11月22日現在、撤回論文は36論文
- 時期:研究キャリアの初期
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けられなかった(Ⅹ)
- 処分:NIHから 10年間の締め出し処分
- 日本人の弟子・友人:福島秀文(東北大学, 歯学研究科, 准教授)、 犬塚博之(東北大学, 歯学研究科, 准教授)は共著論文がある
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は20億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
主な出典:①:Zhiwei Wang | LinkedIn、②:苏州大学唐仲英血液学研究中心博导王志伟介绍 -华慧考博网
- 生年月日:不明。仮に1971年1月1日生まれとする。1989年に大学入学した時を18歳とした
- 1989 – 1994年(18 – 23歳?):中国のベンブ医科大学(蚌埠医学院、Bengbu Medical College)で学士号、医師免許を取得
- 1994年7月 – 1998年8月(23 – 27歳?):中国のベンブ医科大学・勤務
- 1998年 – 2001年(27 – 30歳?):中国の上海交通大学医科大学院(Shanghai jiaotong University School of Medicine)で修士号:細胞生物学
- 2002 – 2006年(31 – 35歳?):ウェイン州立大学(Wayne State University)で研究博士号(PhD)を取得:病理学
- 2007年1月 – 2011年5月(36 – 40歳?):ウェイン州立大学(Wayne State University)・ポスドク、その後、研究員
- 2011年(40歳?):不正研究が発覚(推定)
- 2011年6月– 2013年(40 – 42歳?):ハーバード大学医科大学院(Harvard Medical School)・インストラクター(助教より下の地位の大学教員)
- 2013年(42歳?):中国の蘇州大学・医科大学院(苏州大学唐仲英医学研究院)・血液センター(Cyrus Tang Hematology Center, Soochow University)・教授
- 20xx年(xx歳):ウェイン州立大学はワンに授与した研究博士号(PhD)を剥奪した
- 2020年8月7日(49歳?):研究公正局がネカトと発表
- 2020年9月2日(49歳?)現在:中国の蘇州大学・医科大学院(苏州大学唐仲英医学研究院)・血液センター(Cyrus Tang Hematology Center, Soochow University)の教員リストにない:唐仲英医学研究院 血液学研究中心、(2020年9月1日保存版)
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★研究キャリア
ジーウェイ・ワン、王志伟(Zhiwei Wang)は中国で生まれ、中国のベンブ医科大学(蚌埠医学院、Bengbu Medical College)で学士号、医師免許を取得し、同大学で医師として勤務していた。
しかし、研究者になろうと、1998年、27歳(?)で、中国の上海交通大学医科大学院(Shanghai jiaotong University School of Medicine)の大学院に入学し、細胞生物学の修士号を取得した。
2006年(35歳?)、渡米し、ミシガン州のウェイン州立大学(Wayne State University)で病理学の研究博士号(PhD)を取得した。この時の指導教授は、後に
ネカトで悪名高くなるフォジュルル・サルカール教授(Fazlul Sarkar、写真出典)だった。 → フォジュルル・サルカール(Fazlul Sarkar)(米) | 白楽の研究者倫理
研究公正局がネカトと指摘した論文は、ウェイン州立大学・ポスドク時代の研究である。
2011年6月(40歳?)、ウェイン州立大学・ポスドクからハーバード大学医科大学院(Harvard Medical School)・病理のインストラクター(助教より下の地位の大学教員)に移籍した。ボスは、ウェニー・ウェイ教授(Wenyi Wei、写真出典)である。
この移籍は、ネカトが発覚したため、ウェイン州立大学を解雇された、あるいは、居づらくなったための移籍と思われる。受け入れたウェニー・ウェイ教授はワンの裏事情を知らなかったと思う。
研究公正局はネカト調査が終わるまでネカト調査中と発表しないし、問い合わせてもノーコメントなので、ネカト調査が進行中なのかどうか、研究公正局と当該大学・調査員しかわからない。
2013年(42歳?)、そして、ワンは、中国の蘇州大学・医科大学院(苏州大学唐仲英医学研究院)・血液センター(Cyrus Tang Hematology Center, Soochow University)に教授として帰国した。
2020年9月2日(49歳?)現在、中国の蘇州大学・医科大学院(苏州大学唐仲英医学研究院)・血液センター(Cyrus Tang Hematology Center, Soochow University)の教員リストにない。ネカトがバレて、解雇されたのだろう。 → 唐仲英医学研究院 血液学研究中心、(2020年9月1日保存版)
★ネカト発覚
ジーウェイ・ワン(Zhiwei Wang)のネカト発覚の経緯は不明であるが、研究公正局はウェイン州立大学・ポスドク時代の研究と指摘している。
2006年にウェイン州立大学に提出した博士論文もネカトと指摘された。
2006~2011年に発表した13報、2013年の1報、の学術誌での発表論文がネカトとされた。
2011年6月(40歳?)、ワンはウェイン州立大学・ポスドクからハーバード大学医科大学院に移籍した。この移籍はネカトが発覚したためと思われる。白楽は、それで、2011年6月の少し前に、ネカトが発覚したと推定した。ここでは発覚を2011年(40歳?)とする。
ネカトがどのように発覚したのかは不明だが、ウェイン州立大学・ポスドク時代の指導教授が見つけて大学に報告したとは思えない。
指導教授のフォジュルル・サルカール(Fazlul Sarkar)自身がその後、悪名高いネカト者となるのである。サルカールはネカトをしていいた。研究室のポスドクのネカトを告発するのは「藪をつついて蛇を出す」ことになりかねない。
サルカールのネカト発覚は2014年春・夏である。
2014年春・夏、パブピア(PubPeer)で、サルカールの2003年から2014年の50論文以上の図がおかしいと指摘された(PubPeer – Results for Fazlul Sarkar)。(フォジュルル・サルカール(Fazlul Sarkar)(米) | 白楽の研究者倫理)
ワンのネカト発覚を2011年とすると、サルカール教授のネカト発覚の前である。
パブピア(PubPeer)は2012年10月に開始し、2013年に、ワンの論文の図の異常を指摘している。しかし、ワンのネカト発覚を2011年とすると、それより前に発覚していることになる。
発覚は2013年(42歳?)だったのだろうか? そうかもしれないが、ここでは発覚をハーバード大学医科大学院に移籍した2011年(40歳?)としておこう。
★研究公正局
2020年8月7日(49歳?)、発覚から9年後(遅いですね)、研究公正局はワンが9件の研究費申請書、1篇の博士論文、14報の発表論文、の画像をねつ造・改ざんしていたと発表した。
2020年7月21日から10年間の締め出し処分を科した。10年間の締め出し処分は非常に重い処分である。今まで6人しかいない。ワンは7人目である。 → 「研究公正局の締め出し年数」ランキング
ワンの研究が支援された9件の研究助成は以下の通り。NIH・NCI(国立がん研究所)のグラントである。サルカール教授が受領したグラントだと思うが調べていない。
P20 CA101936
P30 CA022453
R01 CA075059
R01 CA083695
R01 CA101870
R01 CA109389
R01CA131151
R01 CA132794
U19 CA113317
自分で申請した3件の研究助成は以下の通り。NIH・NCI(国立がん研究所)のグラントである。
R01 CA120008
R01 CA131151
R01 CA131456
2006年の博士論文もネカト。
14報の発表論文は以下の通り。2006~2011年に発表した13報と2013年の1報。14報の内13報は撤回されている。
- Activated K-Ras and INK4a/Arf deficiency promote aggressiveness of pancreatic cancer by induction of EMT consistent with cancer stem cell phenotype. J Cell Physiol. 2013 Mar;228(3):556-62 (hereafter referred to as “J Cell Physiol. 2013”). Erratum in: J Cell Physiol. 2014 Aug;229(8):1118. Retraction in: J Cell Physiol. 2016 Oct;231(10):2304.
- Activated K-ras and INK4a/Arf deficiency cooperate during the development of pancreatic cancer by activation of Notch and NF-κB signaling pathways. PLoS One 2011;6(6):e20537 (hereafter referred to as “PLoS One 2011”). Erratum in: PLoS One 2014;9(6):e101032. Retraction in: PLoS One. 2018 Oct 2;13(10):e0205289.
- Down-regulation of Notch-1 is associated with Akt and FoxM1 in inducing cell growth inhibition and apoptosis in prostate cancer cells. J Cell Biochem. 2011 Jan;112(1):78-88 (hereafter referred to as “J Cell Biochem. 2011”). Retraction in: J Cell Biochem. 2016 Aug;117(8):1962.
- Down-regulation of Notch-1 and Jagged-1 inhibits prostate cancer cell growth, migration and invasion, and induces apoptosis via inactivation of Akt, mTOR, and NF-ĸB signaling pathways. J Cell Biochem. 2010 Mar 1;109(4):726-36 (hereafter referred to as “J Cell Biochem. 2010”). Retraction in: J Cell Biochem. 2016 Aug;117(8):1960.
- TW-37, a small-molecule inhibitor of Bcl-2, inhibits cell growth and invasion in pancreatic cancer. Int J Cancer 2008 Aug 15;123(4):958-66 (hereafter referred to as “Int J Cancer 2008”). Retraction in: Int J Cancer. 2016 Nov1;139(9):2146.
- Induction of growth arrest and apoptosis in human breast cancer cells by 3,3-diindolylmethane is associated with induction and nuclear localization of p27kip. Mol Cancer Ther. 2008 Feb;7(2):341-9 (hereafter referred to as “Mol Cancer Ther. 2008”).
- Down-regulation of platelet-derived growth factor-D inhibits cell growth and angiogenesis through inactivation of Notch-1 and nuclear factor-ĸB signaling. Cancer Res. 2007 Dec 1; 67(23):11377-85 (hereafter referred to as “Cancer Res. 2007c”). Retraction in: Cancer Res. 2018 Sep 15;78(18):5469.
- Down-regulation of Forkhead Box M1 transcription factor leads to the inhibition of invasion and angiogenesis of pancreatic cancer cells. Cancer Res. 2007 Sep 1;67(17):8293-300 (hereafter referred to as “Cancer Res. 2007b”). Retraction in: Cancer Res. 2018 Sep 15; 78(18):5470.
- Inhibition of angiogenesis and invasion by 3,3′-diindolylmethane is mediated by the nuclear factor-ĸB downstream target genes MMP-9 and uPA that regulated bioavailability of vascular endothelial growth factor in prostate cancer. Cancer Res. 2007 Apr 1;67(7):3310-9 (hereafter referred to as “Cancer Res. 2007a”). Retraction in: Cancer Res. 2018 Sep 15; 78(18):5471.
- Notch-1 down-regulation by curcumin is associated with the inhibition of cell growth and the induction of apoptosis in pancreatic cancer cells. Cancer 2006 Jun 1;106(11):2503-13 (hereafter referred to as “Cancer 2006”). Retraction in: Cancer 2016 Oct 15;122(20):3247.
- Epidermal growth factor receptor-related protein inhibits cell growth and invasion in pancreatic cancer. Cancer Res. 2006 Aug 1;66(15):7653-60 (hereafter referred to as “Cancer Res. 2006b”). Retraction in: Cancer Res. 2018 Sep 15;78(18):5474.
- Inhibition of nuclear factor kappaβ activity by genistein is mediated via Notch-1 signaling pathway in pancreatic cancer cells. Int J Cancer 2006 Apr 15;118(8):1930-6 (hereafter referred to as “Int J Cancer 2006”). Erratum in: Int J Cancer 2014 Apr 15;134(8):E3. Retraction in: Int J Cancer 2016 Nov 1;139(9):2145.
- Down-regulation of Notch-1 inhibits invasion by inactivation of nuclear factor-kappaβ, vascular endothelial growth factor, and matrix metalloproteinase-9 in pancreatic cancer cells. Cancer Res. 2006 Mar 1;66(5):2778-84 (hereafter referred to as “Cancer Res. 2006a”). Retraction in: Cancer Res. 2018 Sep 15;78(18):5476.
- Down-regulation of Notch-1 contributes to cell growth inhibition and apoptosis in pancreatic cancer cells. Mol Cancer Ther. 2006 Mar;5(3):483-93 (hereafter referred to as “Mol Cancer Ther. 2006”). Retraction in: Mol Cancer Ther. 2018 Oct;17(10):2268.
★多数論文撤回者
2020年9月2日現在、ジーウェイ・ワン(Zhiwei Wang)は36報の多数論文撤回者で、撤回論文ランキングにまだリストされていないが、世界第15位相当である。
→ 2020年8月8日更新:「撤回論文数」世界ランキング | 白楽の研究者倫理 、(2020年9月1日保存版) → 2020年8月23日保存:The Retraction Watch Leaderboard – Retraction Watch
●【ねつ造・改ざんの具体例】
2020年8月7日(37歳?)の研究公正局の発表に、各研究費申請書・論文のネカト部分を指摘している。14報とネカト論文が多く、ネカト箇所は約100か所もある。
治療薬の効果が顕著になるように、癌の細胞増殖、分化、アポトーシスを制御する実験で、タンパク質の発現、侵入・移動アッセイ、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)を示す画像をねつ造・改ざんした。
しかし、言葉で説明されてもわかりにくい。上記発表論文の14番目の「2006年のMol Cancer Ther.」論文を選んで研究公正局の指摘箇所、モトイ、面倒なのでパブピア(PubPeer)の指摘箇所を以下に適当に見ていこう。
★「2006年のMol Cancer Ther.」論文
「2006年のMol Cancer Ther.」論文の書誌情報を以下に示す。2018年10月1日、撤回された。
- Down-regulation of Notch-1 contributes to cell growth inhibition and apoptosis in pancreatic cancer cells.
Wang Z, Zhang Y, Li Y, Banerjee S, Liao J, Sarkar FH.
Mol Cancer Ther. 2006 Mar;5(3):483-93. doi: 10.1158/1535-7163.MCT-05-0299.
パブピア(PubPeer)はこの論文に、ナント、78回もコメントしていて、論文中のタンパク質(ブロット)バンドの加工再利用があちこちの図にみられると指摘している。以下、2つだけ示すが、たくさんある。
図7B:タンパク質バンドが別の論文の異なる条件下の画像と同じ。つまり、データのねつ造・改ざん(図の出典はhttps://pubpeer.com/publications/8EB4592F23B61CC3EE7CF29A7522AF#15)。
図8A:タンパク質バンドが別の論文の異なる条件下の画像と同じ。つまり、データのねつ造・改ざん(図の出典はhttps://pubpeer.com/publications/8EB4592F23B61CC3EE7CF29A7522AF#7)。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
★パブメド(PubMed)
2020年9月2日現在、パブメド(PubMed)で、ジーウェイ・ワン(Zhiwei Wang)の論文を「Zhiwei Wang [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、1994~2020年の27年間の978論文がヒットした。
「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、2006~2013年に発表した29論文が撤回されていた。
ウェイン州立大学時代の論文を探るために、所属を限定した「Zhiwei Wang [Author] Wayne State University[Affiliation]」で検索すると、2005~2018年の10年間の96論文がヒットした。
ちなみに、ウェイン州立大学時代のボスのフォジュルル・サルカール教授(Fazlul Sarkar)との共著論文を「Zhiwei Wang [Author] Fazlul Sarkar [Author]」で検索すると、2005~2018年の10年間の125論文がヒットした。
なお、ハーバード大学医科大学院(Harvard Medical School)・病理時代の論文を探るために、ウェニー・ウェイ教授(Wenyi Wei)との共著論文を「Zhiwei Wang [Author] Wenyi Wei[Author]」で検索すると、2011~2020年の10年間の33論文がヒットした。
★撤回監視データベース
2020年9月2日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでジーウェイ・ワン(Zhiwei Wang)を「Wang, Zhiwei」で検索すると、6論文が訂正、1論文が懸念表明、36論文が撤回されていた。
36報の撤回論文の内29報はフォジュルル・サルカール教授(Fazlul Sarkar)との共著論文だった。
★パブピア(PubPeer)
2020年9月2日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ジーウェイ・ワン(Zhiwei Wang)の論文のコメントを「”Zhiwei Wang”」で検索すると、58論文にコメントがあった。
●7.【白楽の感想】
《1》疑問
「撤回監視(Retraction Watch)」記事のコメントにもあるが、研究公正局は、なぜサルカール教授をクロとせず、ポスドクのジーウェイ・ワン、王志伟(Zhiwei Wang、写真出典)をクロとしたのか?
普通に考えれば、主犯はサルカール教授で、ワンは従犯と思える。 → フォジュルル・サルカール(Fazlul Sarkar)(米) | 白楽の研究者倫理
ワンの撤回論文数は36報だが、サルカール教授は41報で、「撤回論文数」世界ランキングの第10位である。 → 2020年8月8日更新:「撤回論文数」世界ランキング | 白楽の研究者倫理 、(2020年9月1日保存版) → 2020年8月23日保存:The Retraction Watch Leaderboard – Retraction Watch
どうなっているのだろう?
ヒョットして、サルカール教授は無罪なのか? それで、研究公正局は、サルカール教授をクロとしないのか?
《2》早期発見すべきケース
ジーウェイ・ワン、王志伟(Zhiwei Wang)は、ウェイン州立大学(Wayne State University)・ポスドク時代の研究がネカトとされた。
ねつ造・改ざんの具体例をみると、画像の加工と再利用で、早く誰かが気がついて止めなければ、ずーとネカトし続けたと思える事件である。多分、ワン自身は、悪いと知りつつ、得だからしていたのだと思う。
《3》国際基準
米国でネカトし、研究公正局がクロと発表した研究者が本国に帰国した場合、本国は許容するのか?
ジーウェイ・ワン、王志伟(Zhiwei Wang)は中国に帰国し、中国の蘇州大学・血液センター・教授になった。しかし、2020年9月2日(49歳?)現在、その血液センター・教員にリストされていない。ネカトがバレて、解雇されたのだろう。 → 唐仲英医学研究院 血液学研究中心、(2020年9月1日保存版)
中国を含め多くの国はネカト者が研究職に在職するのを許容しない。しかし、日本は許容している。
→ 研究ネカト者が研究を続けた | 白楽の研究者倫理
日本のネカト感覚(結果として、ネカト処分)が国際基準から逸脱しているからだ。その異常さが表に出ている。白楽は長年、この点を指摘しているが、一向に改善されない。結局、日本国民と日本の研究者が世界から低く見られる(見られてきた)ことになる。責任者でてこ~い。こい。
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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、日本に飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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●9.【主要情報源】
① 研究公正局の報告:(1)2020年8月7日:Case Summary: Wang, Zhiwei | ORI – The Office of Research Integrity。(2)2020年8月12日の連邦官報:2020-17602.pdf。(3)2020年8月12日の連邦官報:Federal Register :: Findings of Research Misconduct。(4)2020年8月17日:NOT-OD-20-165: Findings of Research Misconduct
② 2020年8月7日のアダム・マーカス(Adam Marcus)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Cancer researcher hit with 10-year ban on federal US funding for nearly 100 faked images – Retraction Watch
③ ウェイン州立大学(Wayne State University)の「ジーウェイ・ワン(Zhiwei Wang)」記事:Zhiwei Wang, Ph.D. – School of Medicine News – Wayne State University
④ 苏州大学唐仲英血液学研究中心博导王志伟介绍 -华慧考博网
⑤ 2020年8月10日の「Medscape」記事: Cancer Researcher Hit With 10-Year Ban on Federal US Funding
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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