シュオ・チェン(陳碩、Shuo Chen)(米)

2022年3月25日掲載 

ワンポイント:2022年3月11日(43歳?)、研究公正局は、カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)・ポスドクだったチェンの1件の研究費申請書の画像にねつ造・改ざんがあったと発表した。2022年2月28日から1年間の監督期間処分を科した。なお、チェンは中国の清華大学で修士号、日本の東京大学・工学研究科で2015年(36歳?)に研究博士号(PhD、化学)を取得し、日本の理化学研究所・基礎科学特別研究員を経て、カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)・ポスドクになった。ネカト発覚後、ポスドクを辞職(解雇?)。国民の損害額(推定)は3億円(大雑把)。

【追記】
・2022年6月24日記事:NYU postdoc with federal research misconduct settlement awarded NIH grant – Retraction Watch
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

シュオ・チェン(陳碩、Shuo Chen、ORCID iD:https://orcid.org/0000-0003-3581-0997、写真出典)は、中国で育ち、東京大学(University of Tokyo)・工学研究科で2015年(36歳?)に研究博士号(PhD、化学)を取得し、日本の理化学研究所・基礎科学特別研究員を経て、2017年(38歳?)、カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)・物理学科・ポスドクになった。専門は神経科学である。

ネカト発覚の経緯は不明であるが、2019年6月の研究費申請書のネカトなので、研究費審査員が見つけたと思われる。発覚時期は、2019年(40歳?)と推定される。

2022年3月11日(43歳?)、研究公正局はチェンが1件の研究費申請書で、マウス海馬ニューロンの画像を表す2光子顕微鏡および電気生理学的データを改ざんし、ラベルを付けかえて意図的に再利用したと発表した。

2022年2月28日(43歳?)から1年間の監督期間処分を科した。1年間の監督期間処分はかなり軽い処分である。

カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)。写真 by Kent Kanouse、(CC BY-NC 2.0)出典

  • 国:米国
  • 成長国:中国、日本
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:日本の東京大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1979年1月1日生まれとする。中国の淮南市(わいなんし)。2001年に学士号を取得した時を22歳とした
  • 現在の年齢:43 歳?
  • 分野:神経科学
  • 不正文書発表:2019年6月(40歳?)の研究費申請書
  • 発覚年:2019年(40歳?)(推定)
  • 発覚時地位:カリフォルニア大学バークレー校・ポスドク
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は不明
  • ステップ2(メディア):「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①カリフォルニア大学バークレー校・調査委員会。②研究公正局
  • 研究所・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 研究所の透明性:研究公正局でクロ判定(〇)
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:1件の研究費申請書。2022年3月24日現在、撤回論文はない
  • 時期:研究キャリアの初期
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けられなかった(Ⅹ)
  • 処分:NIHから 1年間の監督期間処分
  • 日本人の師・弟子・友人:①相田卓三(東京大学・工学部・教授。院生時代の指導教授)。②トーマス・マックヒュ―(Thomas J. McHugh)(理化学研究所・ 脳神経科学研究センター・チームリーダー、理研時代のボス、201001記事

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は3億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

主な出典: | CBP

  • 生年月日:不明。仮に1979年1月1日生まれとする。中国の淮南市(わいなんし)。2001年に学士号を取得した時を22歳とした
  • 2001年(22歳?):中国の清華大学(Tsinghua University)で学士号を取得
  • 2005年(26歳?):同大学で修士号を取得
  • 2015年4月16日(36歳?):日本の東京大学(University of Tokyo)で研究博士号(PhD)を取得:化学。工学部の相田卓三教授 → CiNii 博士論文
  • 2015~2016年(36~37歳?):日本の理化学研究所・基礎科学特別研究員
  • 2017年(38歳?):カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)・ポスドク
  • 2019年(40歳?):「2019 Science & PINS Prize for Neuromodulation」受賞:Shuo Chen Awarded Science & PINS Prize for Neuromodulation | American Association for the Advancement of Science
  • 2019年(40歳?)(推定):ネカト発覚
  • 20xx年(xx歳):カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)・ポスドクを辞職(解雇?)
  • 2021年5月19日(42歳?):ニューヨーク大学・ポスドク(ジェ・チェン準教授(Zhe  Chen)研究室のMembers)に在籍していた。その後、行方不明?
  • 2022年3月11日(43歳?):研究公正局がネカトと発表

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★ネカト

シュオ・チェン(Shuo Chen)は中国で生まれ、日本の東京大学(University of Tokyo)で2015年(36歳?)に研究博士号(PhD、化学)を取得し、日本の理化学研究所・基礎科学特別研究員を経て、2017年(38歳?)、カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)・物理学科・ポスドクになった。

ボスは心理学科のデイヴィッド・フォスター準教授(David Foster、右の写真出典)である。理由は不明だが、チェンは物理学科のポスドクなのにボスは心理学科という変則的な組み合わせである。

2019年夏のフォスター研究室集合写真にチェンがいた(左の写真出典、前がチェン、後ろがフォスター準教授)。

ネカト発覚の経緯は不明だが、2019年6月の研究費申請書でのネカトなので、研究費審査員が見つけたと思われる。

発覚時期は、2019年(40歳?)と推定される。

2022年3月11日(43歳?)、研究公正局はチェンが1件の研究費申請書で、マウス海馬ニューロンの画像を表す2光子顕微鏡および電気生理学的データを改ざんし、ラベルを付けかえて意図的に再利用したと発表した。

2022年2月28日から1年間の監督期間を科した。1年間の監督期間処分はかなり軽い処分である。

1件の研究費申請書は以下の通りで、2019年6月(40歳?)の申請書である。英語のママでゴメン、

  • K99 NS116562-01, “Investigation into network dynamics of hippocampal replay sequences by ultrafast voltage imaging,” submitted to NINDS, NIH, on June 25, 2019

チェンはネカト行為を否定していないが肯定もしていない。

20xx年(xx歳)、チェンはカリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)・ポスドクを辞職(解雇?)。

2021年5月19日(42歳?)、ニューヨーク大学のジェ・チェン準教授(Zhe  Chen)研究室のポスドクとして在籍していたことが確認されている(Members)。

2022年3月11日(43歳?)、研究公正局がシュオ・チェンのネカトを発表した。

この発表のためだと思われるが、ニューヨーク大学のジェ・チェン準教授は研究室員のサイトは閉鎖した。シュオ・チェンを解雇したかもしれない。

その後、シュオ・チェンは行方不明? 中国に帰国? 

【ねつ造・改ざんの具体例】

2022年3月11日の研究公正局の発表に、研究費申請書で、マウス海馬ニューロンの画像を表す2光子励起顕微鏡および電気生理学的データを改ざんし、ラベルを付けかえて意図的に再利用したと発表した。

しかし、研究費申請書なので、白楽は、ねつ造・改ざんの画像を具体的に見ることができない。

利用した元図は「Nat Neurosci. 2018 Jul;21(7):996-1003 (doi: 10.1038/s41593-018-0163-8)」論文の補足図1bとあるが、この論文の閲覧は有料なので、ココに提示しない。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2022年3月24日現在、パブメド(PubMed)で、シュオ・チェン(Shuo Chen)の論文を「Shuo Chen [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2022年の21年間の870論文がヒットした。

本記事のシュオ・チェン(Shuo Chen)とは別のシュオ・チェン(Shuo Chen)の論文が多数含まれていると思われる。

2022年3月24日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、「2018年5月のOncol Lett」論文・1論文が撤回されていた。

本記事のシュオ・チェン(Shuo Chen)とは別人のシュオ・チェン(Shuo Chen)の撤回論文と思われる。

★撤回監視データベース

2022年3月24日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでシュオ・チェン(Shuo Chen)を「Shuo Chen」で検索すると、3論文が撤回されていた。

本記事のシュオ・チェン(Shuo Chen)とは別人のシュオ・チェン(Shuo Chen)の撤回論文と思われる。

★パブピア(PubPeer)

2022年3月24日現在、「パブピア(PubPeer)」では、シュオ・チェン(Shuo Chen)の論文のコメントを「Shuo Chen」で検索すると、43論文にコメントがあった。

本記事のシュオ・チェン(Shuo Chen)とは別人のシュオ・チェン(Shuo Chen)の論文とに対するコメントと思われる。

●7.【白楽の感想】

《1》東京大学で博士号、理研の研究員 

シュオ・チェン(陳碩、Shuo Chen、写真出典)は、日本の東京大学・工学研究科で2015年(36歳?)に研究博士号(PhD、化学)を取得し、日本の理化学研究所・基礎科学特別研究員を経て、渡米した。

中国人とはいえ、日本で研究者としての教育を受けた。

日本の研究倫理教育は貧弱なので、そのことが原因で、米国でネカトし、そして捕まった、ということか?

あるいは、中国の清華大学(Tsinghua University)で修士号を取得しているので、中国のネカト文化に染まっていた。

日本・中国の両方のネカト文化を受け継いだと思う。

ネカトの法則:「強い衝撃がなければ、研究者はネカトを止めない」

シュオ・チェンのネカトは研究費申請書1件だけとは思えない。

チェンの東京大学の博士論文を含め、全論文のネカトを調べるべきだ。

それにしても、中国のメディア(「科学网」は中国政府系の科学メディア)はチェンのネカト事件を報道したのに、日本のメディアは報道していない。日本のメディア、どこかオカシイよ。

日本の政府系の科学メディアもそうだが、 NHKや新聞社の科学部が自力で海外情報を探る力量が無ければ、無いで、そういう情報を 専門家から得る仕組みを作らないと。

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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●9.【主要情報源】

①  研究公正局の報告:(1)2022年3月11日:Case Summary: Chen, Shuo | ORI – The Office of Research Integrity。(2)2022年3月17日の連邦官報:2022-05612.pdf。(3)2022年3月17日の連邦官報:Federal Register :: Findings of Research Misconduct。(4)2022年3月18日:NOT-OD-22-098: Findings of Research Misconduct
② 2022年3月14日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Award-winning Berkeley postdoc faked data, says federal watchdog – Retraction Watch
③  2022年3月19日のリンシャオ・メン(孟凌霄)の「新闻—科学网」記事:华人科研新星伪造数据,遭公开通报科研不端—新闻—科学网

★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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