3‐1‐1 性不正の分類・規則

2019年7月5日掲載

ワンポイント:【長文注意】。ワンポイント:高等教育界(含・学術界)のセクハラや性的暴行・レイプを中心とする性不正(sexual misconduct)問題が、2018年以降、米国発だが、世界の高等教育界(含・学術界)を席巻している。それで、問題は、どう分類され、どのような法律やガイドラインがあるのか? 加害者はどう処罰されるのか? 各大学はウェブサイトで学生・教職員にどのように説明しているのか? この性不正問題でも、日本の高等教育界(含・学術界)は旧態依然で世界の最貧国なのか? それとも、日本は世界のリーダーなのか? 現在進行中でもある米国の取り組みを中心に調査し、考えた。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.分類
《1》用語と行為
《2》他の性関連用語
2.米国:高等教育の性不正規則
《1》米国の大学の規則
《2》タイトル・ナイン(Title IX、1972年)
《3》キャンパス安全法(クラリー法、Clery Act、1990年)
3.他国:高等教育の性不正規則
4.セクハラ(Sexual Harassment)など
5.性的暴行(Sexual Assault)、含・レイプ(Rape)
《1》米国
《2》日本
6.学生と教授の性的関係
7.白楽の感想
8.コメント
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●1.【分類】

《1》用語と行為

英語の「sexual misconduct」を「性不正」と訳す。「research misconduct」が一般的に「研究不正」と訳されている。その類似である。

以下、米国のウェスト・チェスター大学(West Chester University)の「性不正」の分類に従った。
→ Sexual Misconduct : Home – West Chester University

図の出典:Policies and Definitions – West Chester University、(保存版

★性不正(sexual misconduct)の定義

学術界・教育界の性不正(sexual misconduct)の定義
学術・職場・教育の場で、力(権力、金力、知力、慣習など)の上下関係(支配関係)を利用し、同意なしに、または、同意があったとしても、力の関係で同意せざるを得ない状況で、不快に感じる性的言動を個人に対して行なうこと。また、性的な言動で学術・職場・教育の場にいる人を不快にする言動も含む。

力の上下関係(支配関係)と限らず、性不正(sexual misconduct)を次の5行為に分類する。

  1. セクハラ(Sexual Harassment)
    相手が不快に思う性的な言動、及び、性的な関係を強要し断られると相手を不利益にする言動である。
    日本:
    米国:教育改正法第9編(タイトル・ナイン、Title IX)
  2. 性的暴行(Sexual Assault)
    性的暴行(Sexual Assault)は、同意なしに性的に身体を触る、レイプ(Rape)、痴漢(groping)、児童性的虐待、性的拷問などの行為である。つまり、同意なしに「身体を触る」「キスをする」のはセクハラではなく、性的暴行である。ただ、同意なしに「身体を触る」場合だが、肩など性的ではない身体部分に軽く触れる場合、セクハラに分類しているケースが多い。白楽はそれに従う。
    レイプ(Rape)は性的暴行の一形態だが、突出しているので、本ブログでは、レイプ(Rape)と記述する。レイプ(Rape)は、被害者の同意なしに、身体の部分または物体を被害者の膣または肛門に挿入する行為、また、性器を被害者の口の中に入れる行為(2012年の米国FBIの定義)。
    日本:刑法第176条(強制わいせつ)、刑法第177条(強制性交等)、迷惑防止条例、児童虐待防止法
    米国:教育改正法第9編(タイトル・ナイン、Title IX)
  3. デート・バイオレンス、ドメスティック・バイオレンス(Dating Violence, Domestic Violence)
    ①恋愛関係のもつれで相手に暴力をふるう。②夫婦・同棲者(含・元)が相手に暴力をふるう。
    日本:配偶者等からの暴力禁止法。デート・バイオレンス禁止法はない。
    米国:教育改正法第9編(タイトル・ナイン、Title IX)
  4. 性搾取(Sexual Exploitation)
    同意なしにまたは不当に相手を性的に利用し、自分の利益を得る。
    具体的には、①同意なしに、性行為またはヌードの動画、写真、音声を記録・配布。②性交為は合意だが、それをクローゼットの中に隠れた友人に見せる。③のぞき見やわいせつな露出をする。④レイプ目的で多量のアルコールまたは薬物を摂取させる(実際にレイプしたかどうかは別問題)
    日本:
    米国:教育改正法第9編(タイトル・ナイン、Title IX)
  5. ストーキング(Stalking)
    ストーキングは、相手への望まれない一連のつきまとい行為。
    具体的には、①迷惑電話。②不要な手紙、電子メール、サイバートーク、他の形式の通信。③不要または脅迫的な贈り物。④同意なしに追跡、監視・観察。電子機器を使用した追跡、監視・観察。⑤居住地、学校、職場に現れる。⑥電子機器またはソフトで個人情報を追跡または取得
    日本:ストーカー規制法
    米国:教育改正法第9編(タイトル・ナイン、Title IX)

上記の5行為を「学術・職場・教育の場で、力(権力、金力、知力、慣習など)の上下関係(支配関係)を利用し、同意なしに、または、同意があったとしても、力の関係で同意せざるを得ない状況で、・・・」行なった場合を、学術界・教育界の性不正(sexual misconduct)として本ブログで扱う。本ブログで扱うので、「学術界・教育界の」を省略して、単に性不正と書くことが多い。

セクハラ(Sexual Harassment)は別記事で説明する。

なお、上記にはないが、次の用語も性不正(sexual misconduct)の言動に近い印象がある。後で説明しないので、ここで簡単に説明する。

《2》他の性関連用語

性不正(sexual misconduct)として分類した5行為以外に、関連用語がある(英語はABC順、日本語は会いう順)。理解しておこう。

Molestation:性的いたずら → 2.性的暴行(Sexual Assault)
Sextortion:セクストーション 恋愛関係にある相手から言葉巧みに性的な(sexual)画像、映像、メールを入手して、それをネタにして(「インターネット上に流出させるぞ」などと脅して)、相手に金を強要(extortion)する行為。(英辞郎 on the WEB
 Sexual Abuse:性的虐待
性的虐待(せいてきぎゃくたい)とは、上下の発生する関係性において、上位の者がその力を濫用もしくは悪用して、下位の者の権利・人権を無視して行う、性的な侵害行為のことである。(性的虐待 – Wikipedia
本ブログでは、性的暴行(Sexual Assault)とほぼ同じ行為とみなした。
なお、性的虐待は多くの場合、子供に対して用いられる(児童性的虐待Child Sexual Abuse)。
Sexual battery:性的暴行[殴打] → 2.性的暴行(Sexual Assault)
Sexual Bullying:性的いじめ
性的いじめ(せいてきいじめ)とは、学校や職場で児童・生徒・学生・勤労者が加害者から露出の強要を含む性的虐待を受けることである。(出典:性的いじめ – Wikipedia
Sexual coercion:性交の強制 → 2.レイプ(Rape)
Sexual Violence:性暴力 → 2.性的暴行(Sexual Assault)
男女の性差(ジェンダー)に基づくあらゆる暴力行為(出典:ブリタニカ国際大百科事典ブリタニカ国際大百科事典
Slut-shaming:スラット・シェイミング
性的に許容される範囲から逸脱した行動、服装、欲望の女性への非難。
例えば、性的に露骨な服装を着る、避妊の権利を求める、婚前交渉、行きずりのセックス、無差別なセックス、売春、強姦被害者への非難。(出典:スラット・シェイミング – Wikipedia
Unwanted sexual attention:望まない性的行動
承諾なしに身体を触り、恐怖、警戒心、苦痛を感じさせることから、性的な名前を呼ぶ、セクハラ、性的暴行、レイプまでの幅広い行動。(出典:Unwanted sexual attention | Health and social care | Hantsweb).
痴漢行為(molester)
下着の中に手を入れて体に触れれば強制わいせつ罪(刑法第176条)。
下着の上から体に触れた場合は迷惑防止条例違反。(出典:わいせつな行為・みだらな行為・淫行の違いは何? – シェアしたくなる法律相談所)
みだらな行為(=淫行)
みだらな行為(=淫行)は性交があったという意味である。刑法には規制がない。東京都青少年健全育成条例の18条の6では「何人も、青少年とみだらな性交または性交類似行為を行ってはならない」とある。「性交類似行為」は、性器を触らせるなどの行為である。
 わいせつ(猥褻)
わいせつな行為とは、体への接触、キス、衣服を脱がせること等の行為で性交はなかったという意味である。日本で、暴行又は脅迫して行なえば、強制わいせつ罪(刑法第176条)になる。

●2.【米国:高等教育の性不正規則】

《1》米国の大学の規則 

米国の大学の性不正(sexual misconduct)規則を適当に探った。東海岸のマサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology)と西海岸の女性大学(学部は女性のみ。大学院は共学)のミルズ大学(Mills College)を選んだ。ミルズ大学はかつて白楽が訪問し学内ツアーに参加した大学だ。

以下に概略を示すが、両校とも性不正のウェブサイトは充実している。そして、両校とも、基本ルールはタイトル・ナイン(Title IX)である。

★マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology)
→ II (23). Sexual Misconduct | MIT Mind and Hand Book

マサチューセッツ工科大学(写真出典)は、すべての性不正を容認しません。禁じます。タイトル・ナイン(Title IX)を含む州法および連邦法に対応し、かつ、追加の措置を講じることもします。
→ マサチューセッツ工科大学のタイトル・ナイン:Home Page | MIT Title IX

以下の4項目がある。AとDの部分を示す。学生が誤解しないよう具体例を示し、かなり丁寧に書いてある。

例えば、相手が「知らない(I don’t know.)」「多分(Maybe.)」「ああ、うう(“uh huh” or “mm hmm,”)」と答えた時、これらは「同意を得たことにならない」と書いてある。

【A.定義】

性不正(Sexual Misconduct)行為とは、セクハラ、同意なしの性的接触、同意なしの性的挿入、性搾取を含む一連の行動を網羅する広義の用語です。 性不正のこの定義には、クレリー法(Clery Act)で定義されている性的暴行(レイプ、愛撫、近親相姦、法定強姦)が含まれます。 クレリー法は、キャンパスの安全とセキュリティに関する連邦法です。

【B.報復】

省略

【C. 性不正の報告】

省略

【D. 処分】

教職員が性差別を犯したと申立てがあった場合、「本学の方針および手続(Institute Policies and Procedures)」の9.8条に記載されています。

学生が、同意なしの性的接触、同意なしの性的挿入、性搾取、報復のいずれかを犯したことが判明した場合、また悪質度の高いセクハラを犯した場合、停学処分または退学処分を科すことを強く考慮します。

★ミルズ大学(Mills College)
→ Title IX | Mills College

最初に「タイトル・ナイン(Title IX)」という文字がある。ミルズ大学(写真出典)は「タイトル・ナイン(Title IX)」で対応するということらしい。以下の説明がある。

ミルズ大学は、暴力のないキャンパスの構築に尽力しています。学生課は、人事課(タイトルIX担当官を含む)および公安部と協力して、性的暴力および性不正についての意識を高め、スタッフおよび学生を訓練、教育し、ガイドラインと法律を遵守します。

別ページで「タイトル・ナイン(Title IX)」を説明している。
→ Title IX Policy Text | Mills College

内容はマサチューセッツ工科大学と重複するので割愛する。また、タイトル・ナイン(Title IX)は次項で説明する。

《2》タイトル・ナイン(Title IX、1972年)

Title IX Still on the Brink

米国の教育界の性不正はタイトル・ナイン(Title IX)で規制されている。

タイトル・ナイン(Title IX)とは?

山口智美(モンタナ州立大学社会学・人類学部教員)の2017年2月23日の「ウェジー」記事がわかりやすい。以下、「加工」引用をする。
→ 「性暴力を禁止する法律を育てていく」/あらゆる性差別を禁じる“Title IX”のコーディネーターに聞く、アメリカの今 – wezzy|ウェジー

1972年、米国は教育改正法第9編(以下、Title IX)を制定した。連邦が財政支援をする教育での性差別を禁止した法律である。連邦の財政支援を受けていない大学はほとんどないので、ほぼ全部の大学にこの法律が適用される。

2011年4月、教育省公民権局が、「同僚への書簡」(Dear Colleague Letter)で、Title IXの「性差別」は、性差別のみならず、性暴力、セクシャル・ハラスメント、ストーキング、親密な関係間の暴力(デートレイプやDVなど)、その他のすべての性的な違法行為がTitle IXの範疇だとした。このことで、教育現場における性暴力対応が大きく変わった。

以下の文書をクリックすると、PDFファイル(19ページ)が別窓で開く。

大学の被雇用者は、学生から性差別や性暴力、セクハラなどの被害を聞いた場合、迅速に(24時間以内に)Title IX担当者に報告するのが義務と定められた。被害当事者が報告をためらったり、迷っている場合でも、事件を聞いた被雇用者には報告義務がある。

被雇用者とは、教員のみならず、学長、事務職員、寮の学生アシスタント、清掃担当者まで、フルタイム、パートタイム、客員などのステータスに関わらず、大学に雇われている人たちは全員が同じように報告義務を負う(例外は秘密保持義務が関わる医療関係者やカウンセラーなどのみ)。

そして、性暴力やハラスメントに関する全教職員向けのトレーニングも必修となった。

性暴力事件の報告を受けた大学は、迅速に調査しなくてはならないとも定められた(裁定には60日間の期限が推奨された)。このため大学は、性暴力の訴えがあった後、しばらく放置しておくとか、警察の捜査結果を待ってから調査するなどはできなくなった。

そして、「同僚への書簡」以降、刑事司法制度において使われる「疑わしきは罰せず」という基準ではなく、被疑者が罪を犯した疑いが強ければ、訴えられた側の責任を問える制度になった。レイプ犯が罪を逃れるケースを減らすため、軽い立証責任としたのだ(クラカワー『ミズーラ』p.255)。

2011年の「書簡」以降、全米の大学で多くのTitle IXコーディネーターが雇われた。

実際、学生が被害にあった場合、どういうプロセスを経るのか。モンタナ州立大学の場合について聞いてみた。

  1. 被害学生の話を聞き、正式に告発を希望された場合は書類を作成する。
  2. 訴えられた側に知らせがいき、Title IX担当のオフィスによる調査が行われる。訴えた側、訴えられた側双方や証人の話を聞き、セキュリティカメラの映像、ソーシャルメディアでの発信、写真やビデオがあるならその検証など、ありとあらゆる方向から調査を行い、記録する。
  3. Title IXオフィスが結論を出し、両側に知らせる。その後、訴えた側、訴えられた側双方に、再度回答の機会がある。
  4. Title IX担当オフィスがさらなるアセスメントを行い、最終的な結論を出す。その後で訴えた側、訴えられた側に決定とその理由を知らせる。結論への抗議(アピールは訴えられた側のみならず、訴えた側もすることができる(これは2011年の「書簡」で要求された点だ)。
  5. 結論が確定し、加害があったと認定されたら、被害者個人、及びコミュニティにとって二度と同様なことが起きないように、加害者に罰則を与える。裁定の最大の罰則は退学となる。

なお、一連の調査や決定は、警察の捜査とは独立してTitle IXオフィスにより行われる。適用される基準が異なることもあり、決定が司法刑事制度による判決と異なることもありうる。

《3》キャンパス安全法(クラリー法、Clery Act、1990年)

米国の大学の性不正(sexual misconduct)規制に関する連邦法は、1つが上記のタイトル・ナイン(Title IX)、もう1つがここで解説するキャンパス安全法(クラリー法、Clery Act)である。

タイトル・ナイン(Title IX)は大学所属の教職員、学部生・院生・ポスドクなど構成員の性的行為に対する規則である。一方、キャンパス安全法(クラリー法、Clery Act)は、犯罪のない安全なキャンパスを維持するために、大学に犯罪の報告・公表を課した規則である。

両者の相違点と類似点を述べた記事(Title IX and Clery: Key Differences and Similarities)があるが、白楽はチャンと読んでいない。

★クラリー事件:1986年

1986年4月5日、リハイ大学(Lehigh Univ)の1年生で19歳のジャンヌ・クラリー(Jeanne Clery、写真出典)は寄宿舎で寝ている間にレイプされ、殺害された。

犯人は同級生の男性学生・ジョソフ・ヘンリー(Josoph M. Henry、写真出典)で、クラリーをレイプしている間にクラリーは目覚めた。そのクラリーを殴り、切り付け、首を絞め、殺した。彼女の部屋のドアは自動施錠だったが、ルームメイトがつっかえ棒して施錠していなかった。

ジョソフ・ヘンリーは逮捕され、死刑を宣告された。しかし、2002年、ペンシルベニア州最高裁判所での控訴審で、上訴権を放棄し終身刑を受け入れた。

ジャンヌ・クラリーの両親コーニー・クラリーとハワード・クラリー(Connie and Howard Clery、写真出典)は、自分たちの娘が殺された状況を知るにつれ、娘が殺された原因は大学の「愚かな」セキュリティだと確信するに至った。

当時、リーハイ大学のジョン・スミートン副学長(John Smeaton)は、「安全対策は十分で、合理的かつ適切だった。それでも、犯罪を完全に防ぐことはできないのです」と大学の安全性に問題があったという主張を否定した。

ところが、実はリーハイ大学では3年間に38件の暴行事件が起こっていた。クラリー夫妻は、その件数が報告されていたら、娘をリーハイ大学に入学させなかったと、後で悔やんだ。当時、大学の犯罪数は大幅に過少報告されていたのである。

クラリー夫妻は、裁判で200万ドル(約2億円)の賠償金を得た。このお金をもとに、大学の犯罪を適正に報告されることを立法化しようと、非営利団体「キャンパスの安全(Security On Campus、Inc.)」を設立した。現在、この財団はクラリー・安全センター(Clery Center for Security)と呼ばれている。

そして、1990年、連邦法であるキャンパス安全法(クラリー法、Clery Ac)が制定されたのである。事件からわずか4年後である。早い。白楽が思うに、議員の娘さんも大学に行くからね。

★キャンパス安全法(クラリー法、クラーリー法、クレリー法、Clery Act、1990年)

クラリー事件をきっかけに成立したキャンパス安全法である。→ Clery Act – Wikipedia

1.毎年10月1日までに、大学はキャンパス安全年次報告書(Annual Campus Security Report)を発表し、現在および将来の学生および従業員に配布しなければならない。報告書は、過去3年間の犯罪統計、安全対策に関する施策、学内の犯罪防止プログラムの説明、性犯罪の調査・訴追の手順を示さなければならない。

2.大学は、キャンパス、大学の住居、非キャンパスの大学建物、または公共施設で発生した最新の犯罪統計を8年間保持する義務がある。この犯罪は司法省とFBIのUCRハンドブック(Uniform Crime Reporting Handbook、 164ページのPDF)が定義した犯罪で、もちろん、性犯罪も含まれる。

大きくは、以下に示す犯罪である。

  • 殺人:Murder (including nonnegligent and negligent manslaughter)
  • 性犯罪:Sex offenses (forcible/nonforcible, domestic violence, dating violence, and stalking) :つまり、「1. セクハラ(Sexual Harassment)」「2. 性的暴行(Sexual Assault)」「3. デート・バイオレンス、ドメスティック・バイオレンス(Dating Violence, Domestic Violence)」「5. ストーキング(Stalking)」
  • 強盗:Robbery
  • 加重暴行:Aggravated assault・・・女性と子どもに対する暴行など、刑を加重される重い暴行。
  • 住居侵入罪:Burglary
  • 自動車盗:Motor vehicle theft
  • 放火罪:Arson
  • 逮捕:Arrest

また、大学は以下の件で懲戒処分した人物の報告義務がある。

  • 酒類法違反:Liquor law violations
  • 薬物関連の違反:Drug-related violations
  • 武器所持:Weapons possession

さらに、ヘイト・クライム(Hate crimes)での身体傷害事件の報告義務がある。

★違反大学

キャンパス安全法(クラリー法、Clery Act)に違反した大学はいくつもあった。

2006年12月13日、イースタンミシガン大学(Eastern Michigan University)の22歳の女性学生・ローラ・ディキンソン(Laura Dickinson、写真出典)は学生寮の居室で殺された。彼女に足についていた精液から、同級生の男性学生・オレンジ・テイラー(Orange Taylor III)の殺人と断定された。(出典: → Murder of Laura Dickinson – Wikipedia

しかし、イースタンミシガン大学はこの事件を適切に報告せず、学内にも伝えなかったことで、2008年、キャンパス安全法(クラリー法、Clery Act)違反とされ、357,500ドル(約3570万円)の罰金がイースタンミシガン大学科された。また、ジョン・ファロン学長(John A. Fallon)は解任された。

もう1つ別の大学を挙げよう。

ペンシルバニア州立大学(Pennsylvania State University)・フットボールコーチのジェリー・サンダスキー(Jerry Sandusky)は、1994-2009年の15年間、多数(52人?)の指導していた男性学生をレイプしていた。レイプと児童性的虐待で逮捕された。

ペンシルバニア州立大学は15年間も放置していたことになる。つまり、キャンパスの安全を適切に保てなかったことで、2016年11月、キャンパス安全法(クラリー法、Clery Act)違反とされ、240万ドル(約2億4千万円)の罰金がペンシルバニア州立大学に科された。

《4》女性に対する暴力防止法(Violence Against Women Act、1994年)

解説省略。 → Violence Against Women Act – Wikipedia

《5》女性に対する暴力防止再認法(Violence Against Women Re-Authorization Act、2019年)

解説省略。 → Text – H.R.1585 – 116th Congress (2019-2020): Violence Against Women Reauthorization Act of 2019 | Congress.gov | Library of Congress

●3.【他国:高等教育の性不正規則】

★英国の高等教育

タイトル・ナイン(Title IX)が学術界・教育界の性不正(sexual misconduct)を禁止している米国とは異なり、英国の高等教育で性不正(sexual misconduct)を禁止する特定の法律はない。
→ 2019年4月1日、エミリーレイノルズ(Emily Reynolds)記者の「i-d.vice」記事:Sexual harassment and rape culture at UK universities

英国は、嫌がらせ(Harassment)・アカハラ(Bullying)の規定はあるが、その中に性的な嫌がらせ、つまり、セクハラについて項目を設けていない。

英国は平等法(Equality Act 2010)が基本である。

平等法(Equality Act 2010)

平等法は、人種、性別、障害、年齢、性的指向、宗教・思想信条、性別の再適正化(gender reassignment)、婚姻・シビルパートナーシップ、妊娠・母性の九つを保護特性として定義し、それぞれについて、直接差別、 間接差別(特定の特性の者に不利な基準や慣行)、ハラスメント、権利の行使に対する被害(victimisation) の禁止を規定している。(欧米諸国のLGBTの就労をめぐる状況(イギリス:2017年4月)|フォーカス|労働政策研究・研修機構(JILPT)

勿論、レイプは犯罪である。大学だろうがどこだろうが犯罪である。→ Rape in English law – Wikipedia

また、性犯罪法(Sexual Offences Act)で性犯罪を取り締まっている。 → Sexual Offences Act – Wikipedia

★英国の大学の規則:ケンブリッジ大学

ケンブリッジ大学のサイトに嫌がらせ(Harassment)と性不正(Sexual Misconduct)の規範ルールがある。→ code_of_conduct_for_students_in_respect_of_harassment_and_sexual_misconduct.pdf

定義の後に、網羅的ではないが大学が容認できないと考える行動例が具体的に示されている。

嫌がらせ(Harassment)
 服装や外観について性的に不快な発言をする。または性的嗜好を要求する。
 セクシュアリティに基づいた嫌がらせを行なう。軽蔑的な同性愛嫌悪、トランス・ジェンダー嫌悪、両性愛嫌悪を示す。特定の人を対象とした冗談。その人のセクシュアリティについての侮辱的なコメント。個人の性別やアイデンティティを認めない。
 その人の人種、民族、肌の色、宗教、国籍、服装、文化、背景または習慣について不快な言及をする。個人または特定の団体に対する個人的または助長的な憎悪・偏見の発言。
 自分自身についての誤った仮定のために、その人物を無視、侮辱、または嘲笑すること。
 特定の政治的または宗教的信念に同意せよとの圧力や統制的または強制的な行動。

性不正(Sexual Misconduct)
性的または恋愛関係にあるかどうかにかかわらず、性不正には以下が含まれます。また、性的行為の同意が与えられた後に撤回された場合、同意は過去には得られていたが現在は不明な場合も含まれます。
 同意なしに、性交、または性的な行為を行なうこと。
 同意なしに、性交、または性的な行為を試みること。
 同意なしに、他人の私的な性的情報を共有すること。
 同意なしに、キスをする。
 同意なしに、服の上から不適切に身体を触ること。
 不適切に、、性器を他人に見せること。
 正当な理由なしに、他の人を繰り返しつきまとうこと。
 性的性質についての望ましくない発言

★オーストラリアの大学の規則:ニューサウスウェールズ大学

ニューサウスウェールズ大学(University of New South Wales)はオーストラリアの有力大学で、白楽が訪問したことがあるので選んだ。「セクハラ・性的暴行・性不正・レイプ」という表題のウェブサイトを設けている。
→ UNSW Sexual Harassment, Sexual Assault, Sexual Misconduct & Rape | UNSW Current Students

そのサイトの「性不正(Sexual Misconduct)とは何か?」に、ニューサウスウェールズ大学は性不正を容認しないとある。

そして、性不正を、①セクハラ、②性的暴行、③わいせつ行為、④児童性的虐待、⑤性的に露骨な写真・ビデオの作成・配布、⑥ニューサウスウェールズ州の性犯罪、としている。

分類と定義は、米国のウェスト・チェスター大学(West Chester University)の「性不正」の分類と定義とよく似ている。

内容は省略するが、各項目をさらに具体的に詳しく説明している。

ニューサウスウェールズ大学(University of New South Wales)。By unsw.flickrUNSW Library Lawn, CC 表示 2.0, Link

★日本の高等教育

タイトル・ナイン(Title IX)が学術界・教育界の性不正(sexual misconduct)を禁止している米国とは異なり、日本の高等教育で性不正(sexual misconduct)を禁止する特定の法律がない。

国の法律「男女雇用機会均等法」「育児・介護休業法」の中のハラスメント関連規則に準じて、各大学が規則を設けている。

以下、東京大学の例を見てみよう。

★日本の大学の規則:東京大学

「東京大学におけるハラスメント防止のための倫理と体制の綱領」が基本ルールである。
→ Microsoft Word – 01 ハラスメント防止のための倫理と体制の綱領_2013.9版_

東京大学はまた、「東京大学ハラスメント相談所」という表題のウェブサイトを設けている。
→ 東京大学ハラスメント相談所

そのサイトでは「セクハラ」「アカハラ」「その他ハラスメント」の具体的行為が示されている。

規則・資料等 | 東京大学ハラスメント相談所

米国と大きく異なる点は、性不正(sexual misconduct)の5つに分類・行為の内、「1.セクハラ」しか記述しておらず、他の4行為(以下)は項目がない。

2.性的暴行(Sexual Assault)、含・レイプ(Rape)
3.デート・バイオレンス、ドメスティック・バイオレンス(Dating Violence, Domestic Violence)
4.性搾取(Sexual Exploitation)
5.ストーキング(Stalking)

日本の大学では、記述のない性不正(sexual misconduct)の4行為がほとんどないために削除しているのか、担当者の能力の欠如でそうなっているのか白楽はわからない。

後者だと問題は大きいが、前者だとしても、「日本の常識、世界の非常識」となる。

学部生・院生・ポスドク・教員は、日本の大学・研究機関で受けた性不正の教育・研修のまま、海外(米国・英国など)の大学・研究機関で振舞うと、とんでもないことになる。渡航先の性不正に関するルールを学び直すのが必須である。

●4.【セクハラ(Sexual Harassment)など】

本ブログでは、性不正(sexual misconduct)を5つに分類したが、以下のように解説する。

1.セクハラ(Sexual Harassment)は別記事の「3‐1‐2 セクハラ(Sexual Harassment)の規則・言動例」で解説した。

2.性的暴行(Sexual Assault)(含・レイプ(Rape))は次項に述べる。

下記の3行為は独立した説明の項目を設けない。

3.デート・バイオレンス、ドメスティック・バイオレンス(Dating Violence, Domestic Violence)
4.性搾取(Sexual Exploitation)
5.ストーキング(Stalking)

●5.【性的暴行(Sexual Assault)、含・レイプ(Rape)】

先に述べた「性的暴行(Sexual Assault)」の定義を再掲する。

性的暴行(Sexual Assault)は、同意なしに性的に身体を触る、レイプ(Rape)、痴漢(groping)、児童性的虐待、性的拷問などの行為である。つまり、同意なしに「身体を触る」「キスをする」のはセクハラではなく、性的暴行である。

レイプ(Rape)は性的暴行の一形態だが、突出しているので、本ブログでは、レイプ(Rape)と記述する。レイプ(Rape)は、被害者の同意なしに、身体の部分または物体を被害者の膣または肛門に挿入する行為、また、性器を被害者の口の中に入れる行為(2012年の米国FBIの定義)。

日本:刑法第176条(強制わいせつ)、刑法第177条(強制性交等)、迷惑防止条例、児童虐待防止法
米国:教育改正法第9編(タイトル・ナイン、Title IX)

《1》米国

参考:Sexual assault – Wikipedia

★司法省

米国・司法省は「性的暴行」(Sexual Assault)を次のように定義している。

被害者が同意する能力を欠いている場合を含め、連邦法、部族法、州法が禁じる同意なしのすべての性的行為。(Sexual Assault | OVW | Department of Justice

該当する行為は、強制的な性交、男性同士の強制的なアナルセックス、児童性的虐待、近親相姦、愛撫、強姦未遂などの性的行為としている。
→ Sexual assault – Wikipedia

米国の各州は州法で犯罪行為を定義している。「性的暴行」(Sexual Assault)も同じなので、州ごとにある程度異なる。一部の州では、性的暴行を「性的虐待(sexual battery)」または「犯罪的性行為(criminal sexual conduct)」と呼んでいる。

★FBI

1929年以来、レイプは「男性から女性に対する意思に反した性交」と定義されてきたため、強制的なオーラルセックスや男性に対するレイプ、器具を用いたレイプ、アルコールや薬物をもちいたレイプなど、他の形態の性暴力が含まれていませんでした。(出典:アジア女性資料センター – アメリカ:FBI「レイプ」定義を拡大

2012年、 FBIは強制性交(レイプ)を以下のように定義しなおした。

「被害者の同意なしに、身体の部分または物体を被害者の膣または肛門に挿入する行為、また、性器を被害者の口の中に入れる行為」。(出典:2012年1月6日:An Updated Definition of Rape | OPA | Department of Justice

★テキサス州

テキサス州の例を挙げる。米国の各州は州法で犯罪行為を定義している

テキサス刑法22.011
Texas Penal Code – PENAL § 22.011 | FindLaw

次の場合、性的暴行を犯したとする。

(1)意図的または故意:

(A)同意なしに、他人の肛門または性器に何らかの手段で侵入する。
(B)同意なしに、他人の口へ自分の性器を挿入する。
(C)同意なしに、自分または他人の性器を、その人の口、肛門、または性器に接触または挿入する。

その後にいくつもの行為が具体的に書いてある。省略する。

なお、「テキサス刑法22.011」では、児童性的虐待の「児童」を17歳以下と定義している。

★教育改正法第9編(タイトル・ナイン、Title IX)

米国の大学での「性的暴行(Sexual Assault)、含・レイプ(Rape)」は、前述した「教育改正法第9編(タイトル・ナイン、Title IX)」が規則の中心である。

★米国の大学での想定事件例1

女性学生のジェーンは金曜日の夜に友達とパーティーに出かけ、お酒をたくさん飲んだ。パーティーが終わった後、ルームメートと一緒に学生寮の居室に戻った。同じキャンパスの学生寮に住む彼女の男友人ジェイクが部屋に立ち寄った。彼女にキスをしようとしたが、ジェーンはその気がないので、拒絶した。彼は「冗談だよ」と言って帰った。

ところが、夜中、ジェイクはジェーンの部屋に戻ってきた。しかし、ジェーンは酔って熟睡していたので、ジェイクが部屋に入ってきたのが分からなかった。

ジェイクは彼女のベッドにもぐりこんできて、ジェーンと性交をした。セックスしている間、ジェーンは目を覚まさなかった。彼は15分後に彼女の部屋を出た。翌朝、ジェーンが目覚めた時、自分はなぜ真っ裸で寝ていたのかすぐには理解できなかった。出典:Sexual Misconduct : Home – West Chester University

《2》日本

米国とは異なり、日本の大学・研究機関には性的暴行(Sexual Assault)に関する規則がない。つまり、セクハラと同じような警告や注意がされていない。刑法に任せている。

それで、日本の刑法の関連部分「第22章 わいせつ、強制性交等及び重婚の罪(第174条~第184条)」を以下に示す。
→ 刑法

第176条(強制わいせつ)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

第177条(強制性交等)
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

●6.【学生と教授の性的関係】

大学教員が学部生・院生・ポスドクとデート、恋愛、性交するのは、同意の上なら、規則としてOKと認められているのか? いないのか?

★米国:大学は禁止し始めた

参考:Sexual harassment in education in the United States – Wikipedia

米国では、大学教員が学部生・院生と性交するのは、同意の上なら、合法である。ただ、中学校・高校の教員が中学生・高校生と性交するのは違法である。
→ Teachers and sexual relationships with students aged 16+ | The Sexual Offences Handbook

大学教員が学部生・院生と恋愛や性交をするのは、合意に基づく自由な人間関係だと主張することができる。大人として判断できる人間の当然の権利、つまり人権だと主張することもできる。

しかし、大学教育の場では、「学部生・院生は大学教員は対してある種の神聖な信頼を抱いている」。 「大学教員は学部生・院生の能力や将来を評価する立場にいて、偏見のない評価が必要である」。大学教員が学部生・院生と恋愛や性交をすると、これら信頼と偏見のない評価が崩れてしまう。

学生が信頼し尊敬していた大学教員の裏切りのせいで、学生に多くの害が生じる。さらに、学術的指導を装うことによって性的誘惑が行なわれると、学問を習得と性的許容の葛藤が生じ、学生にとっては特に有害になる。

大学教員と学部生・院生との恋愛・性交を認めると、別の結果として、セクハラの判定が困難になる可能性もある。例えば、教授が院生を口説いた時、院生は脅威に感じ恐怖を感じたかもしれない。しかし、大学教員と学部生・院生との恋愛・性交が一般的に認められている場合、院生は教授の口説きをセクハラと認識するのが難しくなるだろう。

また、両者間に権力の格差がある場合、客観的に判断してその関係に「相互の同意」は存在しないと考える方が妥当だ。両者が「同意している」主張しても、教育的な観点から判断して、大学教員と学部生・院生との恋愛や性交を禁じる規則を採用する大学は増えている。

近年、いくつかの大学は禁じる規則を設けている。以下適当にピックアップした。

2013年、スタンフォード大学が米国では最初に、大学教員が研究指導している学部生・院生と恋愛関係になるのを禁じた。

2015年、ハーバード大学は大学教員が同じ学部の学部生、指導中の院生と恋愛・性交するのを禁じた。同じ学部でも指導中でない院生とは禁止されない。
→ 2015年2月5日記事:Harvard bans sex between professors and undergraduates

2018年、ミシガン州立大学も禁止する。
→ 2018年12月10日記事:New policy to ban faculty from romantic relationships with undergraduates | The University Record

というのは、具体的な事件がいくつも起こっているからである。

例えば、ロチェスター大学のフロリアン・ジェイガー教授(Florian Jaeger)は、指導していた女性院生とセックスをし、後にセクハラで訴えられた。しかし、2014年以前、大学の規則に違反していなかったので、大学は「ジェイガー教授をシロ」とした。
→ フロリアン・ジェイガー(Florian Jaeger) | 研究倫理(ネカト、研究規範)

★米国:推奨する説

ウィスコンシン大学ミルウォーキー校(University of Wisconsin–Milwaukee)の文学教授・ジェーン・ギャロップ(Jane Gallop、1952年生まれ、写真出典)は、性的に過激な状況の中で学生はより効果的に学ぶと主張している。

ギャロップは、1997年の彼女の本の中で、彼女の博士論文審査委員会の2人の男性教授とセックスしたこと、そして彼女が助教授の時、彼女の学生とセックスしたことを書いている。2001年9月のエッセイで、大学教員と学部生・院生とのセックスが最高の作品の大部分の源泉になっていると述べている。

【白楽の感想】:ギャロップの主張は学問分野によっては、例えば、恋愛や性交が研究や作品と絡む文学・演劇・芸術・心理学・哲学では、正しい面があるかもしれない。しかし、一般論としてはどうだろう?

★英国の大学の規則:ケンブリッジ大学

大学教員が学部生・院生・ポスドクとデート、恋愛、性交するのを、ケンブリッジ大学は推奨していないが、禁止していない。親密な関係になったら大学に報告するようにとある。
→ guidance_personal_relationship_between_staff_and_students_10.01.18.pdf

★日本の大学の規則

大学教員が学部生・院生・ポスドクとデート、恋愛、性交するのは、同意の上なら、規則として禁止されていない。大学に報告する義務もない。

●7.【白楽の感想】

《1》性不正

米国の高等教育・学術界でここ1~2年急浮上してきた問題はセクハラや性的暴行・レイプを中心とする性不正(sexual misconduct)である。一方、日本は問題を矮小化して、「セクハラ」「アカハラ」を中心に扱っている。それで、日本の知識と感覚では米国の高等教育・学術界の性不正(sexual misconduct)事件を把握できないと感じていた。

今回、そのあたりを整理し、ようやく、米国の状況がつかめてきた。

本文に書いたが、性不正は「日本の常識、世界の非常識」である。

勿論、鵜浦裕が指摘するように、キャンパス事情は米国と日本では異なる。
→ 鵜浦裕:現代アメリカの大学の性的暴行―現状報告―

100歩譲って、日本の現状で良しとしよう。

しかし、日本の学部生・院生・ポスドク・教員が、日本の大学・研究機関で受けた性不正の教育・研修のまま、海外(米国・英国など)に留学や滞在し、日本流に振舞うと、とんでもないことになる。

文部科学省や学術会議が対応すべきだと、痛感します。

《2》禁止法

1986年、リハイ大学(Lehigh Univ)の19歳の女性学生・ジャンヌ・クラリー(Jeanne Clery)が大学でレイプされ殺された。その事件からわずか4年後、連邦法であるキャンパス安全法(クラリー法、Clery Ac)が制定された。

この素早さに、感心した。「白楽が思うに、議員の娘さんも大学に行くからね」と書いたが、日本の議員の息子さんも大学に行く。娘さんも大学に行く。

日本の議員の息子さんが学部性・院生になって女性に性的暴行を加える(こともあるだろう)。

どうして、日本の議員は大学での性不正防止法をさっさと作らないのだろう? なに、議員の息子さんは強姦してももみ消してもらえる? 困ったもんだ。

じゃ、議員の娘さんが学部性・院生になって大学教員からセクハラ・性的暴行を受ける(こともあるだろう)。セクハラ・性的暴行を受けたらどーすんの。トラウマになって一生引きずるという話もある。セクハラ防止法をさっさと作りなさい。

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日本がもっと豊かに、そして研究界はもっと公正になって欲しい(富国公正)。正直者が得する社会に!
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●【参考文献】

① 2018 年 10 月、国際人権 NGO ヒューマンライツ・ナウ(Human Rights Now):性犯罪に関する各国法制度調査報告書.pdf

★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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