ピン・グオ(Ping Guo、郭萍)(中国)

2023年3月30日掲載

ワンポイント:グオは春林職業訓練学校・校長。2020年、超心理エネルギーで「ゆで卵を再生し、ヒヨコに孵化させた」論文を出版した。1年後の2021年4月中下旬(59歳?)、メディアがデタラメ論文と騒ぎ、論文は撤回、掲載した学術誌「写真地理」は発行停止、春林職業訓練学校は業務停止、グオは校長を辞職した。この間は約10日間と迅速だった。国民の損害額(推定)は1億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

ピン・グオ(Ping Guo、*郭萍、*郭華平、*グオ・フアピン、*Guo Huaping、*郭花平、*郭平、写真出典)は、中国の河南省鄭州の春霖职业培训学校(春林職業訓練学校)・校長で、専門は超心理学だった。

登場人物が中国人なので、以下、本記事では、通常使う「名・姓」のカタカナではなく、*郭萍(グオ・ピン)など日本人になじみやすい「姓・名」順の漢字を使用する。その際、「姓・名」順を示す印である「*」印を省略した。

2020年(58歳?)、超心理エネルギーで「ゆで卵を再生し、ヒヨコに孵化させた」論文を出版した。

1年後の2021年4月中下旬(59歳?)、メディアがデタラメ論文と騒ぎ、論文は撤回、掲載した学術誌「写真地理」は発行停止、春林職業訓練学校は業務停止、グオは校長を辞職した。この間の調査処分は約10日間と迅速だった。

春霖职业培训学校(春林職業訓練学校)。写真出典

  • 国:中国
  • 成長国:中国
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:なし
  • 男女:女性
  • 生年月日:不明。仮に1962年1月1日生まれとする。見た目で2023年3月29日現在、61歳とした
  • 現在の年齢:62 歳?
  • 分野:超心理学
  • 不正論文発表:2020年(58歳?)
  • ネカト行為時の地位:春林職業訓練学校・校長
  • 発覚年:2021年(59歳?)
  • 発覚時地位:春林職業訓練学校・校長
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は不明
  • ステップ2(メディア):「Global Times」、中国の多数のメディア
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①鄭州市・調査委員会
  • 学校・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 学校の透明性:当該学校以外が詳細をウェブ公表(⦿)
  • 不正:ねつ造
  • 不正論文数:1報
  • 時期:研究キャリアの後期
  • 職:事件後に発覚時の地位をやめた・続けられなかった(Ⅹ)
  • 処分:
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は1億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

ほぼ不明:郭華平 – Alchetron, The Free Social Encyclopedia

  • 生年月日:不明。仮に1962年1月1日生まれとする。見た目で2023年3月29日現在、61歳とした
  • 19xx年(xx歳):xx大学(xx)で学士号取得(推定)
  • 2009年(47歳?):春霖职业培训学校(春林職業訓練学校)を設立し、校長
  • 2020年6月11日(58歳?):超心理エネルギーで「ゆで卵を再生し、ヒヨコに孵化させた」論文を出版
  • 2021年4月中下旬(59歳?):メディアがデタラメ論文と騒ぎ、論文は撤回、掲載した学術誌「写真地理」は発行停止、春林職業訓練学校は業務停止、グオは校長を辞職した

●3.【動画】

【動画1】
ニュース動画:「“熟蛋返生”作者演讲视频曝光,称用意念感知胎儿性别 – YouTube」(中国語)1分11秒。
咪咕-凤凰自制视频官方频道(チャンネル登録者数4.27万人)が2021/04/28に公開

【動画2】
ニュース動画:「“熟蛋返生孵小鸡” 伪科学蒙了谁?「央视财经评论」20210427 | CCTV财经 – YouTube」(中国語)20分08秒。
CCTV财经(チャンネル登録者数 22万人)が2021/04/27 に公開

●4.【日本語の解説】

★2021年04月30日:田中淳(クーリエ・ジャポン):#128 「ゆで卵からヒヨコが生まれた!」─中国でトンデモすぎる“学術論文”に批判の嵐

出典 → ココ、(保存版) 

論文には、「ゆで卵を生卵に変えるなど、古来、想像もできない、不可能なことと思われてきた。けれども郭花平校長指導のもと、特別な訓練を受けた生徒たちは、超心理意識能量伝播法(超心理意識エネルギー伝達法)を用いて実際に、ゆでたまごを再び生卵に変え、 “一度、ボイルされた生卵”からヒヨコを孵化させるという独特の実験を40回以上、成功させている」と記されていた。

続きは閲覧有料です。白楽未読です。

★2021年04月27日:著者名不記載(オーストラリアのニュースネットワーク):専門家は専門学校「ゆで卵と鶏」の論文の狂った広がりに応えます

出典 → ココ、(保存版) 

最近、河南省 鄭州 チュンリン 職業 トレーニング 学校 「写真」に掲載 地理学 「前回の記事のタイトルは「調理済み」 卵 生卵になる(卵を返す)—孵化したひよこの実験報告」この記事はインターネット上で話題になり、ネチズンの間で白熱した議論を引き起こした。

記事は、学校の家庭教師郭の指導の下で、学生「超心理意識エネルギー法」を用いて、調理した卵を生卵に変え、ひよこを孵化します。

続きは、原典をお読みください。

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★「学術研究者」ではない

春霖职业培训学校(春林職業訓練学校)は2009年に設立の新しい職業訓練学校である。

鄭州春林職業訓練学校は、鄭州市人力資源社会保障局の承認を得て、2009年に設立された。鄭州春林職業訓練学校は、主に結婚・家族カウンセラー、心理カウンセラー、企業人事管理者、公的栄養士、家族教育インストラクター、保育士、その他の国内の新興職業を養成する「科学的スキル応用」教師養成クラスなどの教育訓練を行っている。郭平は春林学校の創設者で、国家二級心理カウンセラー、全脳発達の主任教育研究責任者、家庭教育インストラクター、高速記憶講師です。(出典:郑州春霖职业培训学校 – 快懂百科

郭萍(グオ・ピン)は、中国の春霖职业培训学校(春林職業訓練学校)・校長で、専門は心理カウンセラーである。研究博士号(PhD)を取得していない。

白楽ブログで主対象とする「学術研究者」の枠外スレスレであるが、論文を出版し、その論文データがねつ造だったので、本記事で扱った。

★大発見

2020年6月11日(58歳?)、河南省鄭州の春林職業訓練学校・校長の郭萍(グオ・ピン)は、河南省の病院の医師である白卫云(白偉雲、Bai Weiyun)と共著で、自然科学・人文科学の政府系総合学術誌「写真地理」に「ゆで卵が孵化し、ひよこに生まれ変わる(熟鸡蛋变成生鸡蛋(鸡蛋返生)——孵化雏鸡的实验报告)」という中国語の論文を発表した。

論文では、ゆで卵から40羽以上、ひよこに孵化させた、とある。

驚異的な大発見である。ビックリした。

従来の科学的常識をひっくり返すノーベル賞クラスの大発見である。

白楽は、是非、その方法を知りたい。

その方法は、教員と学生が超心理エネルギーでゆで卵を生卵に変えた、と聞いて、白楽は、再び、ビッビッ、ビックリした。

そんなバカな!!

あり、エマ、セン!!

上記論文中の図の拡大

★迅速

2021年4月中下旬(59歳?)、論文発表の1年後、「ゆで卵の再生」論文がメディアに取り上げられ有名になった。

なお、この時点でも、郭萍(グオ・ピン)は、実際に「ゆで卵の再生ができた」と新聞記者に語っている。

新聞記者が実験過程を質問すると、郭萍(グオ・ピン)は、「私は原理を知りません。私は結果しか知りません」と答えていた。

方法は超心理エネルギーというだけで、具体的な手順を答えなかった。

2021年4月27日(59歳?)、メディアでの騒動に対応し、鄭州市は鄭州春林職業訓練学校の調査を始めた。問題が発見された場合、法令に従い厳重に対処すると発表した。

その日、吉林省報道出版局は、出版管理法規に基づき、「ゆで卵の再生」論文を掲載した「写真地理」誌の発行を停止した。

そして、その日の夜、郭萍(グオ・ピン、写真出典)は論文事件について、この実験結果は公に発表するほど厳密ではなかったと述べ、「皆様には心よりお詫び申し上げますとともに、国民の皆様にご迷惑をおかけいたしました」と泣きながら謝罪した。

ただ、謝罪の数時間前、郭萍(グオ・ピン)は新聞記者に、「皆さんは不可能だと思っているようですね。私も不可能だと思っていましたが、実際は、可能だったのです」と主張していた。

ただ、激しい批判・非難を浴び、傷つき、遺書を書いたそうだ。

翌日・2021年4月28日(59歳?)、鄭州市は調査の結果、虚偽の広告を発行したことで、「中華人民共和国私立教育促進法」第62 条に従って、春林職業訓練学校に是正を命じた。是正期間中は入学と教育活動が停止される。つまり、実質上、廃校になった(と思う)。

2日後の2021年4月29日(59歳?)、郭萍(グオ・ピン)は鄭州春林職業訓練学校の校長を辞任した。

3日後の 2021年4月30日(59歳?)、吉林省は予備調査の結果、「写真地理」誌は、その業務範囲を超えた学術論文を発表したと結論した。

★炎上

2021年7月、「ゆで卵の再生」論文がインターネット上で激しい議論を巻き起こした。

論文の著者である郭萍(グオ・ピン)は、「北京相対性理論研究協会」のメンバーで、超心理学のパワ―を持っていたと主張した。

ただ、調査の結果、「北京相対性理論研究協会」は違法な社会団体とされた。

北京・市民局は「北京相対性理論研究協会」の解散を命じた。

【ねつ造・改ざんの具体例】

超心理エネルギーで「ゆで卵を再生し、ヒヨコに孵化させた」中国語の論文である。

詳細は上記したので省略。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2023年3月29日現在、パブメド(PubMed)で、ピン・グオ(Ping Guo、*郭萍、*郭華平、*グオ・フアピン、*Guo Huaping、*郭花平、*郭平)の論文を「Ping Guo[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2023年の22 年間の469論文がヒットした。

ただ、全部、本記事で問題にしている人以外の論文だと思われる。

2023年3月29日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、2論文が撤回されていた。

ただ、全部、本記事で問題にしている人以外の論文だと思われる。

★撤回監視データベース

2023年3月29日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでピン・グオ(Ping Guo、*郭萍、*郭華平、*グオ・フアピン、*Guo Huaping、*郭花平、*郭平)を「Ping Guo」で検索すると、 9論文が撤回されていた。

ただ、全部、本記事で問題にしている人以外の論文だと思われる。

★パブピア(PubPeer)

2023年3月29日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ピン・グオ(Ping Guo、*郭萍、*郭華平、*グオ・フアピン、*Guo Huaping、*郭花平、*郭平)の論文のコメントを「”Ping Guo”」で検索すると、21論文にコメントがあった。

ただ、全部、本記事で問題にしている人以外の論文だと思われる。

●7.【白楽の感想】

《1》超心理エネルギー 

超心理エネルギーで「ゆで卵を再生し、ヒヨコに孵化させた」話は、1980年代に中国で隆盛だった「外気功(external Qi)」の流れだろうが、2023年現在ではとても通用しない。 → シン・ヤン(Xin Yan、严新)(中国) | 白楽の研究者倫理

まず、「ゆで卵を再生し、ヒヨコに孵化させた」話を論文として発表する郭萍(グオ・ピン)の科学観に驚いた。

その上、自然科学・人文科学の政府系総合学術誌「写真地理」がそんなデタラメ論文を掲載したことにも驚いた。

政府系総合学術誌なのだが、査読者はいなかったのか?

査読者はいないとしても、編集者がデタラメ論文だと気がつかなかったのか?

なお、「ゆで卵の再生」論文というバカバカしいデタラメ論文なので、白楽ブログの記事にするのに躊躇した。ただ、こういう破格のネカト事件は、実は結構ある。

郭萍(グオ・ピン)。写真出典

《2》対処が迅速

最初に新聞報道されたのは、2021年4月20日頃だと思うが、その後、10日間ほどで、鄭州市は調査結果をクロと発表し、春林職業訓練学校を業務停止処分に科した。一方、吉林省報道出版局は、「写真地理」誌の発行を停止した。郭萍(グオ・ピン)は公的に謝罪し校長を辞職した。

電光石火である。素晴らしい。

多くのネカト事件もこのように迅速に対処すべきですね。

《3》パーフェクトワールド

「ゆで卵の再生」成功は異常だと思うが、2023年現在の日本は中国を嘲笑えるほど良くはない。日本に、非科学的なことがいくつもまかり通っている。

研究不正だけでなく、政治的不正がまかり通っているし、金銭的不正もまかり通っている。日本の中にたくさんの不正があって、たくさんの不正と同居して生きるのが、人間社会のようだ。

白楽は高校生の時、社会は99・9%完成していて、あと0・1%改善できればパーフェクトワールドになると信じていた。その0・1%を改善するために科学者になろうと思った。

認識が間違っていましたね。

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。しかし、もっと大きな視点では、日本は国・社会を動かす人々が劣化している。どうすべきなのか?
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●9.【主要情報源】

① 百度百科:“熟蛋返生孵小鸡”事件_百度百科
② 快懂百科:郑州春霖职业培训学校 – 快懂百科
③ 2021年4月23日のフアン・ランラン(Huang Lanlan)記者の「Global Times」記事:Update: Chinese magazine investigated for essays ‘boiled chicken eggs can be turned into raw eggs and hatch into chickens through human superpowers’ – Global Times、(保存版
④ 2021年4月27日のフアン・ランラン(Huang Lanlan)記者の「Sputnik International」記事:Chinese Magazine Investigated For Essays About ‘Chicks Hatched From Boiled Eggs’ – Sputnik International
⑤ 2021年4月30日の記事:“熟蛋返生”论文作者郭萍已辞职,涉事培训学校被停业整改|写真地理_网易订阅、(保存版
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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