ウィリアム・アームステッド(William Armstead)(米)

2023年9月5日掲載 

ワンポイント:2023年7月3日(61歳?)、発覚から3年後(遅いですね)、研究公正局は、ペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)・教授だったアームステッドの5報の発表論文、1報の未発表原稿、1報の総説、3件のポスター発表、3件の研究費申請書、3件の研究助成金の進捗報告、の51件の図、方法、データ、結果にねつ造・改ざんがあったと発表した。2023年6月19日から7年間の締め出し処分を科した。記事執筆時点では、撤回論文は7論文あった。国民の損害額(推定)は8億円(大雑把)。

【追記】
・2024年3月4日記事:Penn Scientist’s Fraudulent Research Leads to $1.7M Repayment, 7-Y… → 公表:2021年10月5日付け調査報告書

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

ウィリアム・アームステッド(William Armstead、William M Armstead、ORCID iD:、写真出典)は、米国のペンシルベニア大学医科大学院(Perelman School of Medicine University of Pennsylvania)・教授だった。専門は薬理学である。

ネカト発覚の経緯は不明である。ネカト発覚時期は、2020年11月(?)(58歳?)と思われる。

202x年x月(5x歳)ペンシルベニア大学がネカト調査を終え、クロと判定し、研究公正局に報告した。

2021年12月(59歳?)、アームステッドはペンシルベニア大学医科大学院・教授を退職(retired)した(させられた?)。

2023年7月3日(61歳?)、発覚から3年後(遅いですね)、研究公正局(ORIロゴ出典)は、ペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)・教授だったアームステッドの5報の発表論文、1報の未発表原稿、1報の総説、3件のポスター発表、3件の研究費申請書、3件の研究助成金の進捗報告、の51件の図、方法、データ、結果にねつ造・改ざんがあったと発表した。

2023年6月19日(61歳?)から7年間の締め出し処分を科した。7年間の締め出し処分はかなり重い処分である。
ペンシルベニア大学医科大学院(Perelman School of Medicine University of Pennsylvania)。写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:米国
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:ペンシルベニア大学医科大学院?
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1962年1月1日生まれとする。1980年にテュレーン大学・学部に入学した時を18歳とした
  • 現在の年齢:62 歳?
  • 分野:薬理学
  • 不正論文発表:2016~2019年(54~57歳?)の4年間
  • ネカト行為時の地位:ペンシルベニア大学医科大学院・教授
  • 発覚年:2020年(?)(58歳?)
  • 発覚時地位:ペンシルベニア大学医科大学院・教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は不明
  • ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、「Philadelphia Inquirer」など
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①ペンシルベニア大学・調査委員会。②研究公正局
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:研究公正局でクロ判定(〇)
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正数:5報の発表論文、1報の未発表原稿、1報の総説、3件のポスター発表、3件の研究費申請書、3件の研究助成金の進捗報告、の51件の図、方法、データ、結果にねつ造・改ざんがあった。撤回論文は7論文
  • 時期:研究キャリアの後期
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けられなかった(Ⅹ)
  • 処分:NIHから 7年間の締め出し処分
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は8億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

主な出典: William Armstead linkedin

  • 生年月日:不明。仮に1962年1月1日生まれとする。1980年にテュレーン大学・学部に入学した時を18歳とした
  • 1980~1985年(18~23歳?):テュレーン大学(Tulane University)で学士号を取得
  • 1989年(27歳?)?:ペンシルベニア大学医科大学院(Perelman School of Medicine University of Pennsylvania)で研究博士号(PhD)を取得(?)
  • 1989年(27歳?)?:テネシー大学(University of Tennessee)・ポスドク?
  • 1992年8月~1999年7月(30~37歳?):ペンシルベニア大学医科大学院(Perelman School of Medicine University of Pennsylvania)・助教授
  • 1999年7月~2009年7月(37~47歳?):同大学・準教授
  • 2009年7月~2021年12月(47~59歳?):同大学・教授
  • 2016~2019年(54~57歳?):この4年間に後に撤回されるネカト論文を5報発表
  • 2020年11月(?)(58歳?):不正研究が発覚(推定)
  • 2021年12月(59歳?):ペンシルベニア大学医科大学院・教授を退職(retired)
  • 2023年7月3日(61歳?):研究公正局がネカトと発表

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★研究と動物搾取

ウィリアム・アームステッド(William Armstead、写真出典)は、米国のペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)・教授だった。

アームステッドの研究室では、人間が脳損傷した時の治療法を研究するために、ブタを実験動物に使っていた。生まれたばかりの仔ブタの頭蓋骨にドリルで穴を開け、露出した脳の外層に液体の入ったシリンダーを置き、シリンダーのもう一方の端を重りのある振り子で叩いて脳に「圧力パルス」を与えていた。

この実験そのものは不正ではないが、実験から得た発表論文などの図、方法、データ、結果にねつ造・改ざんがあり、結果的に多数のブタは無駄死にとなった。

それで、動物愛護団体の「動物搾取を今すぐ止めよう!(Stop Animal Exploitation NOW! (SAEN))」がネカトを問題視し、研究公正局にアームステッドの厳罰を要求している。 → 2022年9月7日の著者名不記載の「SAEN」記事:Scientist Leaves UPenn In Disgrace Over Claims He Faked Animal Experimentation Results

★獲得研究費

ウィリアム・アームステッド(William Armstead、William M Armstead)は、NIHから1898~2019年に32件、計7,681,520ドル(約7億6815万円)の研究費を獲得していた。 → RePORT ⟩ William M Armstead

以下に最新の4件を示す(出典は上記)

★ネカト発覚

ネカト発覚の経緯は不明である。

最新のネカト文書は2020年6月に提出した研究費申請書(R01 NS121149-01)で、アームステッドは2021年12月(59歳?)に退職している。それで、ネカト発覚時期は、2020年6月~2021年12月の間となる。本記事では、2020年11月(?)(58歳?)とした。

★研究公正局

2023年7月3日(61歳?)、発覚から3年後(遅いですね)、研究公正局はアームステッドの5報の発表論文、1報の未発表原稿、1報の総説、3件のポスター発表、3件の研究費申請書、3件の研究助成金の進捗報告、の51件の図、方法、データ、結果にねつ造・改ざんがあったと発表した。

2023年6月19日(61歳?)から7年間の締め出し処分を科した。7年間の締め出し処分はかなり重い処分である。

「研究公正局の締め出し年数」ランキング

研究公正局の英文発表のまま(ほぼ)、以下、貼り付けた。

5報の発表論文は以下の通り。2016~2017年(54~55歳?)の2年間の5論文である。

  1. Dopamine protects cerebral autoregulation and prevents hippocampal necrosis after traumatic brain injury via block of ERK MAP in juvenile pigs. Brain Res. 2017 Sep 1;1670:118-24. Epub 2017 Jun 15. doi: 10.1016/j.brainres.2017.06.010 (hereafter referred to as “Brain Res. 2017”).
  2. Sex and Age Differences in Epinephrine Mechanisms and Outcomes after Brain Injury. J Neurotrauma 2017 Apr 15;34(8):1666-75. Epub 2017 Jan 13. doi: 10.1089/neu.2016/4770 (hereafter referred to as “J Neurotrauma 2017”). Retraction in: J Neurotrauma 2022 Jun;39(11-12):894. doi: 10.1089/neu.2016.4770.retract.
  3. Sex and age differences in phenylephrine mechanisms and outcomes after piglet brain injury. Pediatr Res. 2017 Jul;82(1):108-13. Epub 2017 Apr 26. doi:10.1038/pr.2017.83 (hereafter referred to as “Pediatr Res. 2017”). Retraction in Pediatr Res. 2022 Oct:92 (4):1200. doi:10.1038/s41390-022-02248-9.
  4. Norepinephrine Protects Cerebral Autoregulation and Reduces Hippocampal Necrosis after Traumatic Brain Injury via Blockade of ERK MAPK and IL-6 in Juvenile Pigs. J Neurotrauma. 2016 Oct 1;33(19):1761-67. Epub 2016 Mar 22. doi: 10.1089/neu.2015.4290 (hereafter referred to as “J Neurotrauma 2016”). Retraction in: J Neurotrauma. 2022 Jun;39(11-12):893. doi:neu.2015.4290.retract.
  5. Preferential Protection of Cerebral Autoregulation and Reduction of Hippocampal Necrosis with Norepinephrine After Traumatic Brain Injury in Female Piglets. Ped Crit Care Med. 2016 Mar;17(3):e 130-7. doi:10.1097/PCC.0000000000000603 (hereafter referred to as “Ped Crit Care Med. 2016”). Retraction in: Ped Crit Care Med. 2022 Jul 1; 23(7):e371.doi: 10.1097/PCC.0000000000003014.

1報の未発表原稿、1報の総説、2019年(57歳?)。

  • Manuscript: Phenylephrine modulates CSF IL-6 in a sex-dependent manner to protect cerebral autoregulation and reduce neuronal death after traumatic brain injury in newborn pigs. Submitted to Pediatric Critical Care Medicine in 2019. Withdrawn (hereafter referred to as the “Ped Crit Care Med 2019 manuscript”).
  • Review article: Translational approach towards determining the role of cerebral autoregulation in outcome after traumatic brain injury. Exp Neurol. 2019 Jul;317:291-7. doi: 10.1016/j.expneurol.2019.03.015 (hereafter referred to as “Exp Neurol. 2019”).

3件のポスター発表、2015~2016年(53~54歳?)の2年間の3件である。

  1. Poster: Normalization of CPP after TBI protects autoregulation and hippocampal neuronal cell necrosis in female but not male piglets via block of ERK MAPK and IL-6 upregulation. 43rd Society for Neuroscience in Anesthesiology and Critical Care (SNACC) Annual Meeting, San Diego, CA, October 22-23, 2015 (hereafter referred to as the “SNACC 2015 poster”).
  2. Poster: Norepinephrine protects cerebral autoregulation and reduces hippocampal necrosis after traumatic brain injury via block of ERK MAPK and IL-6 in juvenile pigs. Experimental Biology Annual Meeting, San Diego, CA, April 2-6, 2016 (hereafter referred to as the “Experimental Biology 2016 poster).
  3. Poster: Epinephrine blocks JNK MAPK, protects autoregulation and reduces histopathology after brain injury by age and sex. Neurotrauma 2016 — The 34th Annual Symposium of the National Neurotrauma Society, Lexington, KY, June 26-29, 2016 (hereafter referred to as the “Neurotrauma Society 2016 poster”).

3件の研究費申請書、3件の研究助成金の進捗報告は以下の通り。2019年7月~2020年6月(57~58歳?)の2年間の3件である。

  • R35 NS116805-01, “Brain-heart relationships in outcomes after traumatic brain injury,” submitted to NINDS, NIH, on July 26, 2019, administratively withdrawn on March 3, 2020
  • R01 NS121149-01, “Brain Heart Interactions and Vascular Contribution to Cognitive Outcome After TBI,” submitted to NINDS, NIH, on June 5, 2020, administratively withdrawn on November 1, 2022
  • R01 HL139506-01, “tPA, NMDA receptor excitotoxicity, and outcome after stroke,” submitted to NIHLBI, NIH, on February 6, 2017, administratively withdrawn on July 2, 2019
  • 3件の研究助成金の進捗報告:NINDS, NIH, R01 NS090998-02, -03, -04, and -05 grant progress reports, “Pressor Choice Influences Protection of Autoregulation in Brain Injury,” Funding Period: September 1,2015-August 31, 2020

【ねつ造・改ざんの具体例】

2023年7月3日(61歳?)の研究公正局の発表に、各研究費申請書・論文のネカト部分を指摘している。

アームステッドのネカトは、同じ図をいくつかの研究費申請書・論文で別のラベルをつけて使うというデータねつ造である。

しかし、言葉で説明されてもわかりにくい。

2論文を適当に選んで研究公正局の指摘箇所を以下に詳しく見よう。

★「2017年9月のBrain Res.」論文

研究公正局がネカト論文と指摘した1つ目の論文・「2017年9月のBrain Res.」論文の書誌情報を以下に示す。研究公正局がネカト論文と指摘したが、2023年9月4日現在、撤回されていない。

研究公正局の指摘箇所を以下に見ていこう。

―――図5A, 5B, 5C, 5D, 5E

これらの図は、組織病理標本の写真なのだが、別の論文の図をラベルを変えて再利用している。異なる実験なので、ねつ造である。画像出典は原著論文。

―――図3

この図も、別の論文の図をラベルを変えて再利用した。異なる実験なので、ねつ造である。画像出典は原著論文。

―――図5I

この図も、別の論文の図をラベルを変えて再利用した。異なる実験なので、ねつ造である。画像出典は原著論文。

★「2017年4月のJ Neurotrauma」論文

研究公正局がネカト論文と指摘した2つ目の論文・「2017年4月のJ Neurotrauma」論文の書誌情報を以下に示す。2022年6月1日に撤回された。

研究公正局の指摘箇所を以下に見てみよう。上記した1つ目の論文・「2017年9月のBrain Res.」論文の再利用画像とよく似ている。

―――図 6A, 6B, 6C, 6G, 6H

これらの図は、組織病理標本の写真なのだが、別の論文の図をラベルを変えて再利用している。異なる実験なので、ねつ造である。画像出典は原著論文。

―――図 7G

この図も、別の論文の図をラベルを変えて再利用した。異なる実験なので、ねつ造である。画像出典は原著論文。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

データベースに直接リンクしているので、記事を閲覧した時、リンク先の数値は、記事執筆時の以下の数値より増えている(ことがある)。

★パブメド(PubMed)

2023年9月4日現在、パブメド(PubMed)で、ウィリアム・アームステッド(William Armstead、William M Armstead)の論文を「William Armstead [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2023年の22年間の104論文がヒットした。

「Armstead WM[Author]」で検索すると、1984~2023年の40年間の215論文がヒットした。

2023年9月4日現在、「Retracted Publication」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、6論文が撤回されていた。

  1. 「2011年3月のNeurol Res」論文が2017年2月23日に撤回されているが、この論文は第一著者がクリスチャン・クレプキー(Christian W. Kreipke)で、クレプキーは2018年7月31日、研究公正局にクロと判定されている。アームステッドがネカト犯ではない。 → クリスチャン・クレプキー(Christian Kreipke)(米) | 白楽の研究者倫理
  2. 「2016年3月のPediatr Crit Care」論文は2022年7月1日に撤回
  3. 「2016年10月のJ Neurotrauma」論文は2022年6月1日に撤回
  4. 「2017年4月のJ Neurotrauma」論文は2022年6月1日に撤回
  5. 「2017年7月のPediatr Re」論文は2022年10月24日に撤回
  6. 「2019年4月のNeurocrit Care」論文は2022年11月23日に撤回

つまり、ネカト論文は「1」を除いて、2016~2019年(54~57歳?)に発表していた。

★撤回監視データベース

2023年9月4日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでウィリアム・アームステッド(William Armstead、William M Armstead)を「William M Armstead」で検索すると、7論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2023年9月4日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ウィリアム・アームステッド(William Armstead、William M Armstead)の論文のコメントを「William M Armstead」で検索すると、6論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》調査は一部? 

研究公正局はアームステッドが5報の発表論文、1報の未発表原稿、1報の総説、3件のポスター発表、3件の研究費申請書、3件の研究助成金の進捗報告、の51件の図、方法、データ、結果をねつ造・改ざんしていたと発表した。

以下に示すように、ネカト調査は一部しかしていない印象を受けた。

研究公正局がネカトとした 発表論文は2016~2017年(54~55歳?)の5論文である。

白楽の推定で、ネカト発覚は、2020年11月(?)(58歳?)である。

研究公正局がネカトとした 2016~2017年の発表論文以降、ネカト発覚の2020年11月までに、アームステッドは15論文を出版している。この15論文にネカトはないのか?

ネカト調査報告書を公表していないので、はっきりつかめないが、研究公正局、つまり、ペンシルベニア大学医科大学院は調査していない?

「2019年4月のNeurocrit Care」論文は2022年11月23日に撤回されているが、研究公正局は、言及していない。「撤回公告」では、ペンシルベニア大学医科大学院 がネカト調査したとある。研究公正局は、どうなっている?

2018~2020年11月の、アームステッドの15論文は上記1報「2019年4月のNeurocrit Care」の撤回論文を除いて、データの信頼できるのだろうか?

ネカトの法則:「ネカトはその人の研究スタイルなので、他論文でもネカトしている」。

2015年以前の75論文もチャントネカト調査したのだろうか? 不信感が募る。

ペンシルベニア大学医科大学院が調査したのを、研究公正局が見落としたのか? それもヘンだ。

《2》不明 

アームステッド事件では、ウィリアム・アームステッド(William Armstead)が「どのような状況で、どうして」ネカトをしたのか、見えてこない。これでは、ネカト対策に役立つ点は少ない。

不正論文は2016~2019年(54~57歳?)の4年間の発表論文である。アームステッドは既に教授になっていて、研究費は毎年獲得していたし、総額で7億円も獲得していた。

そのような研究者が、50歳を過ぎてから突然、ネカトをするだろうか?

したのなら、どういう状況だったのだろうか?

なんかヘンである。

それに、研究公正局が7年間の締め出し処分を科したのも、少し過剰だ。

公表されていない重要な要素があるのだろうか?

《3》スルメ調査 

以下は「ジョニー・ヒー(Johnny He、何江林)(米) | 白楽の研究者倫理」から内容を引用した

ジョニー・ヒー(Johnny He、何江林)(米)

ウィリアム・アームステッド(William Armstead)を調べていて、ジョニー・ヒーの時と同じように、アームステッドの経歴や写真や研究状況など、大部分がウェブから削除されていると感じた。

ペンシルベニア大学医科大学院がネカト調査し、研究公正局がさらに調査するので、実態を知らないと、ネカト調査は完璧だと思う人が多いだろう。

イヤイヤ、大学と研究公正局は調査前に被疑者に調査することを伝え、その後「たっぷり時間をかけて」調査する。それで、まず、被疑者は調査前にできる限りの証拠隠滅を図り、ウェブ情報をドンドン削除する。現実は以下のようだ。

「白楽の卓見・浅見16.ネカト調査の現状は大掃除後のゴミさがし:根本的改善を」から再掲。

捜査権のある捜査機関が、疑惑研究者に証拠隠滅・画策をする時間・機会を与えずに、ネカト捜査通知とほぼ同時に、一気に証拠を集め、不正事実の保全をすべきなのだが、ネカト事件ではそうなっていない。

疑惑研究者が証拠を徹底的に隠滅し、かつ、関係者間でしっかり画策を済ませた後、疑惑研究者に提出させた疑惑研究者に都合のいい資料と関係者の証言、を大学・研究所のネカト調査委員が調べている。これが実態である。

スルメ調査なので、生きたイカの動きはわからない。

だから、アームステッドが「どのような状況で、どうして」ネカトをしたのか、見えてこない。これでは、ネカト対策に役立つ点は少ない。

米国を批判したが、日本はさらに悪い。米国ではそれでも、結果として、ある程度の情報を公表する。しかし、日本は隠蔽する。ますます、見えてこない。

日本は、ネカト防止より、ネカト者を守る、大学を守る目先意識がずっと強い。

ーーーーーー
日本の人口は、移民を受け入れなければ、試算では、2100年に現在の7~8割減の3000万人になるとの話だ。国・社会を動かす人間も7~8割減る。現状の日本は、科学技術が衰退し、かつ人間の質が劣化している。スポーツ、観光、娯楽を過度に追及する日本の現状は衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今、科学技術と教育を基幹にし、人口減少に見合う堅実・健全で成熟した良質の人間社会を再構築するよう転換すべきだ。公正・誠実(integrity)・透明・説明責任も徹底する。そういう人物を昇進させ、社会のリーダーに据える。また、人類福祉の観点から、人口過多の発展途上国から、適度な人数の移民を受け入れる。
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●9.【主要情報源】

① 研究公正局の報告:(1)2023年7月3日:Case Summary: Armstead, William M. | ORI – The Office of Research Integrity。(2)2023年7月7日の連邦官報: William Armstead, Ph.D. FRN 2023-14426.pdf 。(3)2023年7月7日の連邦官報:Federal Register :: Findings of Research Misconduct。(4)2023年7月7日のNIH:Findings of Research Misconduct – PMC
② 2022年6月22日のエリー・キンケイド(Ellie Kincaid)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:UPenn prof with four retractions “may no longer be affiliated” with school – Retraction Watch
③ 2022年8月25日のアダム・マーカス(Adam Marcus)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Penn maintains wall of silence over now-retired prof as retractions mount – Retraction Watch
④ 2022年8月29日のエド・ピルキントン(Ed Pilkington)記者の「Guardian」記事:Federal investigation follows retraction of five animal experimentation papers | US news | The Guardian
⑤ 閲覧有料。2022年9月6日のトム・アヴリル(Tom Avril)記者の「Philadelphia Inquirer」記事:Penn scientist departs amid investigation, retracted journal articles
⑥ 2022年9月7日のキース・グリフィス(Keith Griffith)記者の「Daily Mail」記事:Scientist leaves UPenn in disgrace over claims he faked animal experimentation results | Daily Mail Online
⑦ 2023年7月3日のエリー・キンケイド(Ellie Kincaid)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Former UPenn prof faked more than 50 figures, says government watchdog – Retraction Watch
⑧ 閲覧有料。2023年7月5日のトム・アヴリル(Tom Avril)記者の「Philadelphia Inquirer」記事:Research misconduct found by former Penn brain-injury scientist, feds say保存版
⑨ 2022年9月7日の著者名不記載の「SAEN」記事:Scientist Leaves UPenn In Disgrace Over Claims He Faked Animal Experimentation Results
⑩ 2023年7月13日のジェイミー・キム(Jamie Kim)記者の「Daily Pennsylvanian」記事:Federal investigation finds that former Penn professor engaged in research misconduct | The Daily Pennsylvanian
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

●コメント

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