7-122 ネカト防止戦略

2023年4月3日掲載 

白楽の意図:学術界の外の人はどんなネカト防止策を考えるだろうか? 経営学をベースにしたホワイトカラー詐欺対処の専門家で、学術研究者ではないバーナード・フォード(Bernard Ford)がネカト防止戦略を述べた「2022年9月のJDSupra」論文を読んだので、紹介しよう。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.日本語の予備解説
2.フォードの「2022年9月のJDSupra」論文
9.白楽の感想
10.コメント
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【注意】

学術論文ではなくウェブ記事なども、本ブログでは統一的な名称にするために、「論文」と書いている。

「論文を読んで」は、全文翻訳ではありません。

記事では、「論文」のポイントのみを紹介し、白楽の色に染め直し、さらに、理解しやすいように白楽が写真・解説を加えるなど、色々と加工している。

研究者レベルの人が本記事に興味を持ち、研究論文で引用するなら、元論文を読んで元論文を引用した方が良いと思います。ただ、白楽が加えた部分を引用するなら、本記事を引用するしかないですね。

●1.【日本語の予備解説】

省略。

●2.【フォードの「2022年9月のJDSupra」論文】

★書誌情報と著者情報

  • 論文名: Strategies for Preventing Research Misconduct
    日本語訳:ネカトを防止する戦略
  • 著者:Bernard Ford
  • 掲載誌:JDSupra
  • 発行年月日:2022年9月29日
  • ウェブ:https://www.jdsupra.com/legalnews/strategies-for-preventing-research-6034074/
  • 著者の紹介:バーナード・フォード(Bernard Ford)は、1982年に米国のイリノイ大学シカゴ校(University of Illinois Chicago)で学士号(経営学)、1994年にシカゴ大学・ブース経営科大学院(University of Chicago Booth School of Business)で修士号(経営学)を取得した。論文出版時の所属・地位は、世界有数のエキスパートサービスおよびアドバイザリー企業であるアンクラ社(Ankura、ロゴ出典同)の専務取締役(Senior Managing Director)で、フォードの専門は、プロバイダー、支払者、製薬、医療機器、診断メーカーなどの医療機関を対象とした、ホワイトカラーの詐欺対処である。出典(含・写真): Bernard J. Ford | LinkedIn

●【論文内容】

本論文は学術論文ではなくウェブ記事である。本ブログでは統一的な名称にするため論文と書いた。

ーーー論文の本文は以下から開始

★284人以上

スター研究者が、政府から多額の研究費をもらった研究で、実験データをねつ造した。そして、ねつ造の事実が明らかになり、大学は政府に数百万ドル(数億円)の研究費を返済する羽目になった。 → 2017年2月記事:U.S. researchers guilty of misconduct later won more than $100 million in NIH grants, study finds | Science | AAAS

この事件で、大学は評判を大きく落とした。

1992年以来、米国の研究公正局 (ORI)は、「ねつ造、改ざん、盗用を行なった」284人以上の研究不正者を摘発している。

一般的な見方をすれば、非常に才能のある人たちが研究界で活動している。

しかし、その非常に才能のある人たちが「ねつ造、改ざん、盗用」行為を意図的に行なったので、研究不正とみなされたのだ。

政府/民間の研究助成機関は学術界と臨床医学の研究を支援している。

米国連邦政府はこれらの研究者に毎年数億ドル(数百憶円)を投資している。

しかし、学術界と臨床医学の研究現場では、プレッシャーが高く、研究者/研究助手は手抜きをしたくなり、研究公正が危険にさらされる。

そこで、大学・研究所の運営者は研究不正に対処する必要がある。

★研究不正はなぜ起こるのか

学術研究や臨床研究に情熱と知力を捧げるほとんどの専門家は、彼らの研究を支える資金を慎重かつ責任を持って使用している。

しかし、悲しいことに、一部の研究者は、公益よりも自分自身の名声と報酬を優先する。

たとえば、若い研修生(院生、ポスドク、研究助手など)は、研究室のボスから注目される研究結果を発見するよう強いられていると感じるかもしれない。

一方、定評のある研究者は、高額の助成金を獲得しなければならないというメンツと、所属大学・研究所からのプレッシャーに屈するかもしれない。

このプレッシャーによって、家族と過ごす時間を削って研究を優先し続け、ついには、精神的に異常になる場合もある。 → 2014年4月記事:The personal cost of applying for research grants | Universities | The Guardian

年齢、性別、仲間からの圧力、研究不正規則の欠如などが、研究公正に影響を与える要因だと、今まで考えられてきた。

これらの要因は、研究者または研修生(院生、ポスドク、研究助手など)が、研究データをねつ造・改ざんしたり、他の科学者のアイデアやアプローチを盗用する誘惑に屈するかどうかに影響している。

「2015年のPLOS ONE」論文は、研究不正行為に対する最善の防御策は、研究室文化(研究環境)を改善することだと結論している。 → 「2015年のPLOS ONE」論文:Misconduct Policies, Academic Culture and Career Stage, Not Gender or Pressures to Publish, Affect Scientific Integrity | PLOS ONE

研究室文化(研究環境)で、

  • 同僚間の相互批判は奨励されているか?
  • 若い研修生(院生、ポスドク、研究助手など)向けの指導プログラムはどの程度強力か?
  • 研究チームメンバーは、研究の質に対してどのように責任を負っているのか?

研究室文化(研究環境)が、透明で倫理的な研究を肯定することで、不正行為が減少し、大学・研究所は評判だけでなく、収益も守られる。

★研究公正を支援するための戦略

大学・研究所のリーダーは、学術研究の不正行為を未然に防ぐために、どうすべきか?

以下に6項目の策を示す。

  1. 学術研究を管理する規則を整備するだけでなく、遵守されていることを確認する
    研修生(院生、ポスドク、研究助手など)から、研究室の番頭、研究室主宰者まで、研究室の全員に、研究公正を守る役割を担っていることを認識させる。
    ネカト警告ポスターは、全研究者にわかるように目立つように配置し、疑念があれば匿名で通報できる電話番号を明示する。
    さらに、研究の不正行為とは何か、それを防止する方法については、学生から教授、理事会のメンバーまで、あらゆるレベルで周知させる。
    また、大学・研究所の運営者は、ネカト通報を真剣に受け止めネカト通報しても報復されないよう研修生・スタッフ・研究員に保証する。
  2.  実験研究の監督基準を設定する
    研究室主宰者は、研究チームのメンバー間の透明性の基準を設定する。
    研修生(院生、ポスドク、研究助手など)が実験した場合、経験豊富なメンバーはいつでも相談できるようにしておく。
    以下省略
  3. プロセスの厳密さに対する期待を高める
    内容省略
  4. 研究活動に費やされた時間を正確に計算する
    内容省略
  5. 研究助成金を適切に管理する
    内容省略
  6. 大学・研究所内に研究公正室を設立する
    内容省略

★適切な環境を作る

あらゆるレベルの研究者と研修生(院生、ポスドク、研究助手など)が、研究公正を守る役割と、各研究で従わなければならない基準を理解すると、より高いレベルの透明性が達成され、協力と信頼の環境が促進される。

●9.【白楽の感想】

《1》がっかり 

バーナード・フォード(Bernard Ford)がネカト防止戦略を述べた「2022年9月のJDSupra」論文は、読んで直ぐに気がついたが、引用している文献が2014~2017年と少し古い。2022年9月出版の論文としては、チョッと残念だ。

少し古くても、論文の主張に問題はないと思い、読み進めたが、バーナード・フォードの研究不正行為を防ぐ6項目には、「がっかり」した。

最初の2項目までは、「ウンウンそうだ、そうだ」と思って読んだが、2項目目の後半から、3項目目以降は、ピントがずれている、と感じ、本記事では解説を省略した。

ハズレ論文なので、ブログ記事にするのを止めようかと思ったほどだ。

しかし、読者にも、論文はピンキリだということを経験してもらおうと思って、記事にした。

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少する。科学技術は衰退し、国・社会を動かす人間の質が劣化してしまった。回帰するには、科学技術と教育を基幹にし、堅実・健全で成熟した人間社会を再構築すべきだ。公正・誠実(integrity)・透明・説明責任も徹底する。そういう人物を昇進させる。
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

●10.【コメント】

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