アデボラ・アデディメジ(Adebola Adedimeji)(アイルランド)

2018年3月29日掲載。

ワンポイント: ナイジェリアで生まれ、 アイルランドのダブリン大学トリニティ・カレッジ(Trinity College Dublin)・講師になった。2017年(42歳?)、教え子の看護師・アネット・ロッフォフォード(Annette Rochford)に「2010年のSAHARA J」論文はロッフォフォード看護師の研究成果の盗用だと裁判で訴えられた。なお、アデディメジは2010年に米国のアルバート・アインシュタイン医科大学(Albert Einstein College of Medicine)の研究準教授に移籍している。損害額の総額(推定)は6千万円。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

アデボラ・アデディメジ(Adebola Adedimeji、写真出典http://www.einstein.yu.edu/faculty/12079/adebola-adedimeji/)は、ナイジェリアで生まれ、 アイルランドのダブリン大学トリニティ・カレッジ(Trinity College Dublin)・講師になった。2018年3月28日現在、米国のアルバート・アインシュタイン医科大学(Albert Einstein College of Medicine)の研究準教授に移籍している。専門は疫学である。

2017年(42歳?)、ダブリン大学トリニティ・カレッジでの教え子の看護師・アネット・ロッフォフォード(Annette Rochford)に「2010年のSAHARA J」論文はロッフォフォードの修士論文の研究成果の盗用だと裁判で訴えられ、新聞記事になった。

2018年3月28日現在、裁判は進行中。

ダブリン大学トリニティ・カレッジ(Trinity College Dublin)。写真出典

  • 国:アイルランド
  • 成長国:ナイジェリア?
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:イバダン大学、ロンドン大学、ハーバード大学のどれか
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。仮に1975年1月1日生まれとする。2004年9月にハーバード大学公衆衛生科大学院・研究員に就任した時を29歳とした
  • 現在の年齢:49 歳?
  • 分野:疫学
  • 最初の不正疑惑論文発表:2010年(35歳?)
  • 発覚年:2010年(35歳?)
  • 発覚時地位:米国のアルバート・アインシュタイン医科大学・研究準教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は教え子の看護師・アネット・ロッフォフォード(Annette Rochford)で、ダブリン大学トリニティ・カレッジに通報した。ダブリン大学トリニティ・カレッジが対処しないので裁判所に訴えた
  • ステップ2(メディア): 「撤回監視(Retraction Watch)」、「パブピア(PubPeer)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①ダブリン大学トリニティ・カレッジ。調査委員会を設置しなかった。②裁判所
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:発表なし(✖)
  • 不正:盗用
  • 不正疑惑論文数:1報
  • 盗用:研究内容
  • 時期:研究キャリアの中期から
  • 損害額:総額(推定)は6千万円。内訳 → ①研究者になるまで5千万円だが、研究者をやめていないので損害額はゼロ円。②研究者の給与・研究費など年間2000万円だが、研究者をやめていないので損害額はゼロ円。③院生の損害は不明。④外部研究費の額は不明で、額は②に含めた。⑤調査経費(大学と学術誌出版局)なし。⑥裁判経費が2千万円。⑦論文出版・撤回作業が1報につき100万円、撤回論文の共著者の損害が1報につき100万円。撤回なしなので損害額はゼロ円。⑧研究者の時間の無駄と意欲削減が4千万円
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
  • 処分:なし

●2.【経歴と経過】

出典:Adebola Adedimeji | LinkedIn

  • 生年月日:不明。仮に1975年1月1日生まれとする。2004年9月にハーバード大学公衆衛生科大学院・研究員に就任した時を29歳とした、ナイジェリアで生まれた
  • xxxx年(xx歳):米国のイェシーバー大学(Yeshiva University)を卒業:経営学
  • xxxx年(xx歳): ナイジェリアのイバダン大学(University of Ibadan)、ロンドン大学、ハーバード大学。これら3つの大学のどこかの大学で研究博士号(PhD)を取得した。また、公衆衛生学修士号(MPH、Master of Public Health)も取得した。さらに、ポスドクをした
  • 2003年(28歳?): ナイジェリアのイバダン大学(University of Ibadan)から人生最初の論文を出版した
  • 2004年9月 – 2005年10月(29 – 30歳?):米国のハーバード大学公衆衛生科大学院(Christian Medical College & Hospital)・研究員
  • 2006年4月 – 2010年8月(31 – 35歳?):アイルランドのダブリン大学トリニティ・カレッジ(Trinity College Dublin)・講師
  • 2010年9月(35歳?):米国のアルバート・アインシュタイン医科大学(Albert Einstein College of Medicine)の研究準教授
  • 2017年(42歳?):盗用と裁判で訴えられ、新聞記事になる

●5.【不正発覚の経緯と内容】

2007年(32歳?)、HIV治療を専門とする看護師・アネット・ロッフォフォード(Annette Rochford、写真出典)は、ダブリン大学トリニティ・カレッジ(Trinity College Dublin)の修士課程でアデディメジの指導下に修士号を取得した。研究内容は、「HIV患者が性的パートナーにどのようにHIVの開示をするか」だった。

この調査では、大学に倫理的な認可を得た後、HIV患者との6回の機密面談とサービス提供者と6回のインタビューを行なった。

2008年9月(33歳?)、院生・ロッフォフォード看護師の指導教員であるアデボラ・アデディメジは、ロッフォフォード看護師の研究成果をアメリカ人口学会(Population Association of America conference)で発表したいと承認を求めたが、ロッフォフォード看護師は断った。

ところが、アデボラ・アデディメジは、2009年、その学会で「実質的に」彼女の研究成果を発表したと、ロッフォフォード看護師主張している。

つまり、アデディメジは、ロッフォフォード看護師を第2著者とし、演題「感染率の低い状況でHIV / AIDを伝えるべきか伝えないべきかの開示管理(To Tell or Not to Tell: Managing HIV/Aids Disclosure in a Low Prevalence Context)」として発表した。

ただ、ロッフォフォード看護師は、この発表の基礎となる研究データにアクセスしていないので、どれだけ自分のデータが使われたのかを把握できていない。

そして、2010年7月(35歳?)、アデディメジは、2009年の学会講演と同じタイトルの論文を、今度はロッフォフォード看護師を著者に加えず、単著で「2010年のSAHARA J」論文として、以下のように発表した。

ロッフォフォード看護師は、「この論文は自分の修士論文の構造にとてもよく似ていて、結論も同じで、自分の修士論文のアンケート参加者からの回答を6回も引用している。ところが、ロッフォフォード看護師のことを全く言及していない」と非難している。

ロッフォフォード看護師は、ダブリン大学トリニティ・カレッジにデータ盗用の調査を依頼したが、ダブリン大学トリニティ・カレッジは適切な調査をしなかった。

それで、ロッフォフォード看護師は、彼女の修士課程での指導教員だったアデボラ・アデディメジ(Adebola Adedimeji)に、研究内容を盗用されたと、トリニティカレッジダブリン大学と元指導教員のアデボラ・アデディメジを裁判所に訴えた。この盗用は著作権法違反に該当するとし損害賠償を求めた。同時に、アデディメジとダブリン大学トリニティ・カレッジが彼女の論文の著作権を侵害しないようにと訴えた。

ロッフォフォード看護師は、彼女の研究成果を許可なく複製・改造したのは、著作権関連権利法(2000 Copyright and Related Rights Act)に違反している。彼女自身が著者になり、自分の研究成果であることを提示する権利を奪われたと主張している。

ロッフォフォード看護師は、指導教員だったアデボラ・アデディメジは、「最小の学術指導」しかしてくれなかったという不満も述べている。

アデディメジは、ロッフォフォード看護師の盗用を否定している。

アデディメジは、研究はロッフォフォード看護師と共同で行なったものだが、彼が使用した研究成果は、ダブリン大学トリニティ・カレッジの倫理規約の許容範囲内だと主張している。

ダブリン大学トリニティ・カレッジはロッフォフォード看護師の著作権を侵害していないし、また研究倫理上の違反もしていないと述べている。

なお、アデディメジは、現在、ニューヨークのアルバート・アインシュタイン医科大学(Albert Einstein College of Medicine)の研究準教授に移籍している。ただ、彼は裁判で自分を守るための弁護士をアイルランドではまだ雇っていない。

【盗用の具体例】

他人の論文の文章や図表を盗用した場合、被盗用論文と盗用論文を比べれば盗用の内容がわかるので、盗用の判定は簡単である。

ところが、今回のように、院生と指導教員の関係で、院生が出した未発表の研究成果を指導教員が盗用したと院生が訴えた場合、判断は難しい。一般的に、院生の研究成果は指導教員の指導下で得られる。その時、研究成果が出るように、指導教員がどれだけ事前にセットしたのか、院生にはわからないし、他人にもわからない。

また、ロッフォフォード看護師の研究成果のどの部分をどれだけ指導教員のアデディメジが「2010年のSAHARA J」論文に使用したのか、記事に記載されていない。

そうなると、研究成果の盗用なのかどうか、情報不足で、第三者は判断できない。

ここでは、盗用としておくが、いづれ、裁判所が証拠を調べて、判断するだろう。

左がアデボラ・アデディメジ(Adebola Adedimeji)。アルバート・アインシュタイン医科大学で。https://www.thetimes.co.uk/article/tcd-lecturer-plagiarised-nurses-thesis-bs6dnrlgk

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

2018年3月28日現在、パブメド(PubMed)で、アネット・ロッフォフォード(Annette Rochford)の論文を「Annette Rochford [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2015年の1論文がヒットした。アデディメジは共著者に入っていない。

アデボラ・アデディメジ(Adebola Adedimeji)の論文を「Adebola Adedimeji [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2003~2018年の16年間の30論文がヒットした。

「Adedimeji A[Author]」で検索すると、2000~2018年の19年間の32論文がヒットした。

2018年3月28日現在、「Adedimeji A[Author] AND retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2018年3月28日現在、「パブピア(PubPeer)」はアデボラ・アデディメジ(Adebola Adedimeji)の0論文にコメントしている: PubPeer – Search publications and join the conversation.

●7.【白楽の感想】

《1》院生と指導教員

米国のアデボラ・アデディメジ(Adebola Adedimeji)と息子。http://www.newbritainherald.com/title/photos+of+the+day+052917/78614#ad-image-0

2010年(33歳?)の盗用騒ぎが、7年後の2017年に新聞記事になっている。ロッフォフォード看護師が裁判所にいつ訴えたのか不明だが、えらく年数が経っている。

しかも, アデボラ・アデディメジ(Adebola Adedimeji)は2010年(33歳?)にアイルランドを離れ米国に渡っている。

なんか、へんです。

《2》院生と指導教員:その1

2009年(32歳?)、アデディメジは、ロッフォフォード看護師を第2著者とし、アメリカ人口学会で研究発表をした。そして、2010年7月、アデディメジは、2009年の学会講演と同じタイトルの論文を「2010年のSAHARA J」論文として発表した。

不思議に思うのは、この論文でどうして、ロッフォフォード看護師を第2著者としなかったのか、である。

単著で発表しても大きな得があるわけでもない。この時、ロッフォフォード看護師を第2著者としておけば、今回の騒動は起きなかったろうに。

《3》院生と指導教員:その2

アデディメジ事件での真相は白楽にはわからないが、一般的に、院生が指導教員の研究盗用を訴えた場合、院生が誤解している場合がある。というのは、院生の立場では指導教員の研究全体を俯瞰できないからだ。

だから、院生はこんな事件も起こす → 工学:シャヒド・アザム(Shahid Azam)(カナダ) | 研究倫理(ネカト)

白楽は教員としての現役時代、研究成果が出るようにお膳立てし、あとは院生が実行すればよいだけにしたことが何度もあった。そして、院生に実行させて、成功体験を積ませながら、研究技術や研究の進め方を院生に学ばせた。ところが、こちらがあらかじめセッティングしておいたのに、自分一人ですべての実験を行なったと勘違いする院生もときどきいた。

まあ。そういう院生がいてもいいけど、そういう院生に限って、白楽への反発が強いことが多かった。トホホ。

また、白楽もそうだが、人間というものは、「受けた恩を水に流し、かけた恩を石に刻んでしまう」。反省!

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●8.【主要情報源】

① 2017年12月10日のマーク・タイゲ(Mark Tighe)記者の「Sunday Times」記事:TCD lecturer ‘plagiarised nurse’s thesis’ | Ireland | The Sunday Times
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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