2019年9月27日掲載
ワンポイント:本ブログではここ数年内に起こったネカト事件記事を多く扱っている。それで、ネカト行為はごく最近の研究者の不正行為と誤解する読者がいるかもしれない。実際は、ネカト行為は昔からあるんです(多分、ネカト率は昔の方が高い)。それで、古い事件を時々紹介した方が良いと思った。ということで、今回は、150年以上前のネカト事件を紹介する(古すぎ?)。1839-1849年、モートンは、人間の頭蓋骨を測定し、白人のは大きく、黒人のは小さいとした。これが、モートンの死後127年後の1978年、データ改ざんと指摘された。その33年後の2011年、イヤ、モートンは改ざんしてないとされた。しかし、その3年後の2014年、イヤイヤ、ヤッパリ、改ざんしていました、となった。「人種と知能」に関する研究は思想が先行するので客観的データの「客観」がない。何を信じてよいのか? 国民の損害額(推定)は「推定不能」億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.白楽の手紙
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】
サミュエル・ジョージ・モートン(Samuel George Morton、サミュエル・モートン、Samuel Morton、写真:By Unknown – [1] (University of Pennslyvania Museum), Public Domain, Link)は、米国のペンシルベニア医科大学(Pennsylvania Medical College、現在のペンシルベニア大学:University of Pennsylvania)の創設者の1人で、その後、教授になった。専門は解剖学だった。
1839-1849年、モートンは、人間の頭蓋骨を測定し、白人のは大きく、黒人のは小さいとした論文を発表した。当時、頭の大きさが知能と関係する学説が支配的だったので、結果として、白人の知能は黒人の知能より優れている科学的証拠を示す研究結果だった。
168年前の1851年5月15日、モートンは亡くなった。
1978年、モートンの死後127年後、スティーブン・ジェイ・グールド(Stephen Jay Gould)が、モートンのデータは改ざんだったと指摘した。
2011年、グールド(2002年5月20日死去)の死後、データ改ざんしたのはグールドだと批判された。
2014年、その3年後、ところが、再度、グールドが正しい、つまり、モートンがデータ改ざんをしたとされた。
本記事では事件を端的に示すためにデータ「改ざん」と書いたが、ねつ造・バイアス・錯誤・ズサン・間違い、かもしれない。
本ブログではここ数年内に起こったネカト事件記事を多く扱っている。それで、ネカト行為はごく最近の研究者の不正行為と誤解する読者がいるかもしれない。実際は、ネカト行為は昔からあるんです(多分、ネカト率は昔の方が高い)。ネカト行為は昔からあるんです。古い事件も時々紹介した方がバランス的にいいかもしれない。
ということで、今回は、150年以上前のネカト事件を紹介した(古すぎ?)。 データはないが、ネカト率(1万報の論文当たりのネカト論文数)は昔の方が高いと思う。
1980年以降に米国の各界がネカト対策に乗り出し、それ以降、発覚する世界のネカト論文数は増加しているかもしれないが、ネカト率は低下していると思う(データはない)。
皆さんには、ネカト行為はごく最近の出来事と誤解しないでいただきたい。
ペンシルベニア医科大学(Pennsylvania Medical College)、1842年。写真:John Caspar Wild [Public domain], via Wikimedia Commons
- 国:米国
- 成長国:米国
- 医師免許(MD)取得:ペンシルベニア大学
- 研究博士号(PhD)取得:なし
- 男女:男性
- 生年月日:1799年1月26日
- 没年月日:1851年5月15日(52歳)
- 分野:解剖学
- 最初の不正論文発表:1839年(40歳)
- 不正論文発表:1839-1849年(40-50歳)
- 発覚年:1978年(死後127年後)
- 論文発表時地位:ペンシルベニア医科大学・教授
- ステップ1(発覚):第一次追及者はスティーブン・ジェイ・グールド(Stephen Jay Gould)で、モートンのデータ改ざんを論文と著書で指摘した
- ステップ2(メディア):
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①大学は調査していない
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。大学は調査していない
- 大学の透明性:大学は調査せず(ー)。
- 不正:改ざん
- 不正論文数:1桁(推定)
- 時期:研究キャリアの中期から
- 職:該当せず(ー)
- 処分:該当せず(ー)
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】 国民の損害額:総額(推定)は「推定不能」億円(大雑把)。知能が劣るとされた人種の損額は膨大である。
●2.【経歴と経過】
- 1799年1月26日:米国で生まれる
- 1820年(21歳):米国のペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)で学士号取得
- 1822年(23歳):英国のエディンバラ大学(University of Edinburgh)で学位取得
- 1824年(25歳):米国のペンシルベニアで臨床医として働く
- 1839-1843年(40-44歳):米国のペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)・教授
- 1851年5月15日(52歳):死去
- 1978年(没後127年後):スティーヴン・ジェイ・グールドが調査し、改ざんと指摘
- 2011年(没後160年後):スタンフォード大学のジェイソン・ルイスが再調査し、改ざんを否定
- 2014年(没後163年後):ペンシルベニア大学のマイケル・ワインズバーグが再々調査し、改ざんがあったとした
●4.【日本語の解説】
★出典:サミュエル・ジョージ・モートン – Wikipedia
サミュエル・ジョージ・モートン(Samuel George Morton、1799年 – 1851年)はアメリカ合衆国の医師、科学者。ペンシルベニア州・フィラデルフィア生まれ。1839年から1843年までペンシルベニア大学で解剖学の教授を務めた。 頭蓋と人種の関係の研究において、誤魔化しを行ったとされる。
2011年、ペンシルベニア大学(白楽注:スタンフォード大学の間違い?)はモートンの頭蓋の再測定を行った。その結果は、モートンが誤魔化しを行ったとするスティーヴン・ジェイ・グールドの主張を否定するものであった。2014年、ペンシルベニア大学の哲学教授マイケル・ワインズバーグは再調査を行い、「モートンの測定における人種的バイアスはある」と結論づけた。
★2014年10月23日:もっと! コリア (Motto! KOREA) :[科学の香り] 頭が大きいと、賢いのか?
19世紀のアメリカの自然人類学者であるサミュエル・ジョージ・モートン(Samuel George Morton)は、最初から「頭蓋骨が大きいほど知能がいい」という仮説を立てて研究した。彼は世界中から集められた人種別の頭蓋骨約1,000個を大きさで分類した。彼は小さなからしの種を頭蓋骨に詰め、それをシリンダーに注ぎ、体積を測定した。しかし、からしの大きさがすべて一定ではないことを知り、直径0.125インチの鉛で作られた弾丸で体積を記録した。
モートンの研究結果、頭蓋骨の大きさは、白人が最も大きく、黒人が最も小さかった。ネイティブアメリカンは、両方の人種の中間であった。モートンは、これを利用して「脳が大きい白色人種が知能が最も高い」という主張を展開した。もちろん、彼の研究結果は、科学的人種主義との批判を受け、科学者の主観が研究に関与した事例として残された。
しかし、2011年6月、科学雑誌「プロスバイオロジー(PLoS Biology)」に掲載された論文では、モートンの研究を擁護して出た。少なくともモートンが研究結果を操作しなかったという点だ。米国ペンシルバニア大学(白楽注:スタンフォード大学の間違い?)の研究チームがモートンが使用した頭蓋骨を再び測定した結果、モートンの測定がほとんど正確だったのだ。もちろんだからといって「頭蓋骨が大きいほど知能も高い」という主張まで正しいとすることはできない。
★2008年9月 4日:寄せては返す波の音:『人間の測りまちがい』(その2・頭を測る)
サミュエル・ジョージ・モートンは、膨大な頭蓋骨コレクターとしてその名を馳せていた。(ちとぞっとしない趣味ですが)
彼は自分のコレクションから人種別の頭蓋容量平均データをとり、もって人種の知能の差は必然的なものでありランク付けされえるものだと結論づけた。
これに対しては、グールドは彼のデータを全て洗い流し、彼が故意にか無意識にか自分の持論に反する頭蓋の持ち主のデータを削除したり、また持論に都合のよいようにデータの補正をしたりしなかったりといった操作を行っていたということを暴いている。 このような不正を外して今一度分析しなおしたところ、人種に拠る容量には有意の差は見出せなかったのだそうだ。
(ただ、グールドが上の結論を導くことができたことからも分かるように、モートンはデータの部分においては嘘偽りない「生の」データを提示していたらしい。このことをもって、グールドは彼には捏造・隠蔽の意識は特になかったのではないか、と論じている)
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★簡単な全体の流れ
1839-1849年、サミュエル・ジョージ・モートン(Samuel George Morton)は、人間の頭蓋骨を測定し、白人のは大きく、黒人のは小さいとした論文を発表した。当時、頭の大きさが知能と関係する学説が支配的だったので、結果として、白人の知能は黒人の知能より優れている科学的証拠を示す研究結果だった。
168年前の1851年5月15日、モートンは亡くなった。
1978年、モートンの死後127年後、スティーブン・ジェイ・グールド(Stephen Jay Gould)が、モートンのデータ改ざんを指摘した。
2011年、グールド(2002年5月20日死去)の死後、データ改ざんしたのはグールドだと批判された。
2014年、ところが、再度、グールドが正しい、つまり、モートンがデータ改ざんをしたとされた。
以下に、論文を示しながら流れを示すが、ネカトがあったのかどうかを、大学や研究公正局が結論を下したわけではない。モートンもグールドも亡くなっているので、もちろん、本人を呼んで査問することはできない。モートンの頭蓋骨コレクションが正確に保存されているかどうかわからないが、150年以上前の生データが完全に残っているとも思えない。ネカトかどうかを研究者が検証し論文・著書に発表しているだけである。
★発覚の経緯
1978年(モートンの死後127年後)、著名な進化生物学者・科学史家のスティーブン・ジェイ・グールド(Stephen Jay Gould、写真出典)が以下の「1978年のScience」論文を発表した。
- Morton’s ranking of races by cranial capacity. Unconscious manipulation of data may be a scientific norm.
Gould SJ.
Science. 1978 May 5;200(4341):503-9.
また、1981年、有名な著書・『The Mismeasure of Man』(邦訳あり※)を出版した。
※書誌:スティーヴン・J・グールド『人間の測りまちがい : 差別の科学史』(上/下)鈴木善次・森脇靖子訳、河出文庫、河出書房新社、2008年(The mismeasure of man / Stephen Jay Gould: pbk. – revised and expanded ed. – London : Penguin , 1997)。表紙出典:アマゾン
グールドは、「1978年のScience」論文と著書・『人間の測りまちがい 』で、「科学者は文化的文脈に根ざした人間である。そのため、データを無意識に操作するかもしれない」と主張した。
その例として、19世紀に人間の頭蓋骨を測定したことで有名な医師で人類学者のモートンの事例を示した。
つまり、モートンのデータを再分析すると、白人は黒人よりも人種的に優れているという先入観に合うように、モートンはデータを改ざんしたと主張した。
2011年9月の「ネイチャー」記事がこの部分を記述している。以下に引用しよう。
Morton は、1839 ~ 1849 年に発表した論文で、全世界の民族の数百点に及ぶ頭蓋骨に基づいて頭蓋容量を測定している。Gould は「Morton の測定には無意識にバイアスが入っており、それは、白人の知能のほうが高く、したがって頭蓋骨も大きいという Morton の偏見に基づいている」と主張した。科学の世界では、不正行為よりも無意識の偏見を告発したほうが心に突き刺さることを、Gould は知っていたのだ。(出典:生物学者グールドの偽善、(翻訳:菊川 要、要約:編集部))
★グールドのネカト
グールドは2002年5月20日に死亡した。 が、その9年後の2011年6月、今度は、データ改ざんしているのはグールドだと批判された。
批判したのは、スタンフォード大学・人類学の院生・ジェイソン・ルイス(Jason E. Lewis、写真出典)らの以下の「2011年6月のPLoS Biol」論文である。ルイスは2011年に博士号を取得したので、以下の論文は博士論文(の一部)と思われる。
- The mismeasure of science: Stephen Jay Gould versus Samuel George Morton on skulls and bias.
Lewis JE, Degusta D, Meyer MR, Monge JM, Mann AE, Holloway RL.
PLoS Biol. 2011 Jun;9(6):e1001071. doi: 10.1371/journal.pbio.1001071. Epub 2011 Jun 7. No abstract available. Erratum in: PLoS Biol. 2011 Jul;9(7). doi:10.1371/annotation/138c7c99-249f-432c-a4f7-2993b7b87c0a.
ルイスらは、モートンの頭蓋骨を再測定し、モートンとグールドの両方の分析を再検討した。その結果、モートンはデータ改ざんをしていなかったと結論した。つまり、グールドの指摘は間違っていた。
論文では、「データ改ざんをしたのはグールドだ」とは述べていない。しかし、言外には、そう批判したと受け取れるので、本記事では「データ改ざんをしたのはグールドだ」と記述した。
2011年9月の「ネイチャー」編集部はそれを「グールドの偽善」というタイトルで記事にした。以下に引用しよう。
→ 生物学者グールドの偽善、(翻訳:菊川 要、要約:編集部)
Lewis らは、ペンシルベニア大学考古学人類学博物館(米国フィラデルフィア州)に保管されている Morton のコレクションから、約300 点の頭蓋骨を取り出して容量を再測定した。その際、各頭蓋骨がどの民族のものかわからないようにして測定した。そして、測定結果を Morton の測定結果と比較したが、Morton の測定結果が偏見によって歪められていたとする証拠は見つからなかった。
Lewis らは、Morton のデータに関する Gould の記述の誤りも具体的に指摘している。そのうえで「Gould はアメリカ先住民の標本を誤って定義し、アメリカ先住民に関する平均値を誤って過大に計算し、それを根拠として、Mortonの示した平均値が異常に低いと主張した」とも述べている。
論文では、Gould が Morton の研究成果を意図的に歪めたという指摘はなされていない。
★二転三転
2014年5月(モートンの死後163年後)、ペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)のマイケル・ワインズバーグ哲学教授(Michael Weisberg 、写真出典)が、「2014年5月のEvol Dev」論文を発表した。その論文は、グールドの当初の告発を支持し、「モートンの測定値に人種的偏見の証拠があった」と結論した。
- Remeasuring man.
Weisberg M.
Evol Dev. 2014 May;16(3):166-78. doi: 10.1111/ede.12077. Epub 2014 Apr 25.
ワインズバーグ教授は上記論文の2年後の「2016年4月のPLoS Biol.」論文でも、「モートンの測定値に人種的偏見の証拠がある」ことをさらに補強している。ルイスらの再測定に問題はなかったが、その測定は結論を導く証拠になっていないとした。
- Morton, Gould, and Bias: A Comment on “The Mismeasure of Science”.
Weisberg M, Paul DB.
PLoS Biol. 2016 Apr 19;14(4):e1002444. doi: 10.1371/journal.pbio.1002444.
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
省略。
●7.【白楽の感想】
《1》昔のネカト
150年以上前のネカト事件を調べて、現代のネカト防止にどう役立つのか?
良い質問だ。
150年以上前の研究のあり方は、研究環境、研究者の評価、研究文化など基本的な部分を含め、現代の研究のあり方とは大きく異なる。
しかし、同じものがある。
それは、「ズルしてでも、自分の考えを支持する都合の良いデータを集める(改ざんする)」人間の欲求だ。この人間クサイ欲求は、150年以上前の研究者も現代の研究者も同じである。
そう理解すれば、ネカト行為は最近の研究者に特徴的な行為ではなく、昔から、あった。イヤ、「あった」程度ではなく、規制が緩かった昔は、現代より多かったと思われる。
つまり、ネカト率(1万報の論文当たりのネカト論文数)は昔の方が高かったと思う(データはない)。
また、「人間クサイ欲求は、150年以上前の研究者も現代の研究者も同じ」なら、その部分を変えることはほぼ不可能である。人間クサイ欲求は変えられないという前提で、現代のネカト対策を立てる必要がある。
《2》昔の論文にケチつける意味って?
この事件の発端は、1978年、スティーブン・ジェイ・グールド(Stephen Jay Gould)がモートンの死後127年後に、モートンのデータを検証し、モートンのデータに改ざんがあったと指摘したことに始まる。
それは、「科学者は文化的文脈に根ざした人間である。そのため、データを無意識に操作するかもしれない」というグールドの主張の1つの事例として挙げられたものだった。 そこまではいい。
その後、スタンフォード大学のジェイソン・ルイス(Jason E. Lewis)らが「2011年6月のPLoS Biol」論文で、グールドの主張にケチをつけた。無名な院生のルイスは研究上の野心で、著名なグールドにケチをつけ、注目を浴びたかったのかもしれない。あるいは、ルイスは白人優位主義者だったので(推定)、グールドの主張を覆したかったのかもしれない。
それにしても、ルイスがグールドの主張にケチをつける研究は、なんか、ヘンだ。本来の科学的命題は「人種によって頭蓋骨の容量は異なるか? 異ならないか?」である。その場合、150年以上前のケチのついた論文とケチをつけた論文を精査するのではなく、現代の方法で頭蓋骨の容量を測定すれば良いではないか?
そのような研究はできないのだろうか?
と思って、軽く探すと、2018年8月の論文が見つかった。そこには以下の記述があった。 → Cranial Capacity of Real and Imagined Races of Man – Policy Tensor
平均して、黒人男性の頭蓋骨は白人男性よりも15 cc大きく、白人男性の頭蓋骨はアジア人より平均で3 cc大きい。しかし、これらの違いは、実質的なばらつきを考慮するとまったく重要ではない。
なるほど。
研究できるじゃないの。
《3》文化的文脈
「科学者は文化的文脈に根ざした人間である。そのため、データを無意識に操作するかもしれない」というグールドの主張は正しいと思う。
となると、厄介なのは、「人種の優劣の科学的証拠」を示す研究成果の信頼度である。
どんな結果が示されようと、白人優位主義者は白人優位のデータにするだろうし、人種平等主義者は人種による差はないというデータを示す、と多くの人は受け止める。
つまり、誰がどう公正(この公正が難しい)にデータを集め、分析したとしても、データの公正とは別次元の思想によって、データが改ざんされた、イヤ、されていないと主張されるに違いない。
遺伝子組み換え生物の利益と害、ワクチンの利益と害などの研究成果も同様である。この場合、思想もあるが、金も絡む。遺伝子組み換え生物の場合は農業関係者が対立するが、ある意味、対等である。
ワクチンの場合は学術側・行政側(裏に製薬企業)に対してワクチン被害者の対立なので、後者は圧倒的に弱い。つまり、ワクチン推進は正しいというデータが圧倒的に出やすい状況がある。
《4》タブー
モートンは人種による知能差の研究を行なったが、「人種の優劣を研究」することは、現在の科学ではタブーである。
人種差別や優生思想と非難される。例えば、ワトソンだ。以下に修正引用しよう。
1962年にノーベル生理学・医学賞を受賞した二重らせん発見者のジェームズ・ワトソン(James Watson)は、2007年10月14日、「黒人は人種的・遺伝的に劣等である」という趣旨の発言が英紙サンデー・タイムズ一面に掲載された。結果として、コールド・スプリング・ハーバー研究所を辞職に追い込まれ、名声は地に堕ちた。2019年1月2日のPBSのドキュメンタリー番組でも同様の発言を行ない、同研究所の名誉職を剥奪された。(ジェームズ・ワトソン – Wikipedia)
科学にタブーがあってはならないと思うが、現実には「ある」。
白楽は10年以上前から、「禁じられた科学研究」を掘り下げてみたいと思っている。イヤ、それなりに調べたこともある。しかし、掘り下げた結果をブログに書くのに躊躇している。何せ「禁じられ」ているからだ。
と思っていたら、マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology)のベンジャミン・ニール・準教授(Benjamin Neale)が同性愛の遺伝子を研究しているとのことだ。大丈夫かいな?
→ 2019年8月29日の「New York Times」記事:Many Genes Influence Same-Sex Sexuality, Not a Single ‘Gay Gene’ – The New York Times、(保存版)
つまり、同性愛か異性愛かは遺伝的に決まっている、と言いたいのだろう。
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日本がもっと豊かに、そして研究界はもっと公正になって欲しい(富国公正)。正直者が得する社会に!
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●9.【主要情報源】
① ウィキペディア日本語版:サミュエル・ジョージ・モートン – Wikipedia
② 2016年4月19日のWeisberg, M. & Paul, Dianeの「PLoS Biology 14(4):e1002444」論文:(PDF) Morton, Gould, and Bias: A Comment on “The Mismeasure of Science”
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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