クシシュトフ・ワブゼク(Krzysztof Łabuzek)(ポーランド)

2023年6月10日掲載 

ワンポイント:ワブゼクはシレジア医科大学(Medical University of Silesia)・教員(非常勤教授?)・医師でテレビ科学医療番組「36,6°」のホストだった。2016年(43歳)、エヴァ・スタットマン(Ewa Stutman、仮名)がワブゼクの論文のウエスタンブロット画像がねつ造だと指摘した。結局、ワブゼクが2009~2016年(36~43歳)に出版した10論文に問題があり、1論文が撤回、9論文が訂正された。1撤回論文+9訂正論文は全部「間違い」で通しているので、シレジア医科大学はネカト調査をしていない。ネカト者(間違えた人?)はワブゼクなのか共著者なのか、不明。ワブゼクも共著者も無処分。本件は「大学のネカト対応怠慢・不作為」事件でもある。国民の損害額(推定)は1億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

クシシュトフ・ワブゼク(Krzysztof Łabuzek、Krzysztof Labuzek、ORCID iD:?、写真出典)は、ポーランドのシレジア医科大学(Medical University of Silesia、ポ語:Śląskiej Akademii Medycznej)・教員(非常勤教授?)・医師で、街の開業医でもある。専門は臨床薬理学(糖尿病)である。

名前「Krzysztof」は「クシシュトフ」と読むそうだ。 → 出典:①ポーランド人の名前:男性編。②クシシュトフ – Wikipedia

2016~2020年、人気のテレビ科学医療番組「36,6°」をエワ・ドゥジズガ(Ewa Drzyzga)と一緒にホストを務めた(写真出典)。

2016年、エヴァ・スタットマン(Ewa Stutman、仮名)がワブゼクの論文のウエスタンブロット画像がねつ造だと指摘した。

ワブゼクが第二著者の「2016年1月のExp Ther Med」論文が、2016年12月に撤回された。

また、ワブゼクの9論文が訂正された。内訳は、2009~2016年(36~43歳)の7論文が2017年2月・3月に訂正、1論文が2017年7月に訂正、1論文が2018年6月に訂正された。

ウエスタンブロット画像のねつ造だと思われるのに、撤回論文を含め全部「間違い」で通している。

それで、シレジア医科大学はネカト調査をしなかった。

「大学のネカト対応怠慢・不作為」事件でもある。

従って、ネカト者(間違えた人?)はワブゼクなのか共著者なのか、不明。当然、ワブゼクは無処分である。

ワブゼク事件では不明点が多いが、ワブゼクを中心に状況を読み解く努力をしてみた。

シレジア医科大学(Medical University of Silesia、ポ語:Śląskiej Akademii Medycznej)。写真出典

  • 国:ポーランド
  • 成長国:ポーランド
  • 医師免許(MD)取得:シレジア医科大学
  • 研究博士号(PhD)取得:シレジア医科大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:1973年生まれだが月日は不明。仮に1973年1月1日生まれとする
  • 現在の年齢:51 歳?
  • 分野:臨床薬理学
  • 不正論文発表:2009~2016年(36~43歳)の7年間
  • ネカト行為時の地位:シレジア医科大学・教員(非常勤教授?)・医師
  • 発覚年:2016年(43歳)
  • 発覚時地位:シレジア医科大学・教員(非常勤教授?)・医師
  • ステップ1(発覚):第一次追及者はエヴァ・スタットマン(Ewa Stutman、仮名)で、学術誌とレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)に公益通報
  • ステップ2(メディア):レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①シレジア医科大学は調査していない
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。調査していない
  • 大学の透明性:調査していない、あるいは、隠蔽の意図あり(✖)
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:1報撤回、9報訂正
  • 時期:研究キャリアの中期から
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
  • 処分:処分なし
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は1億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

主な出典:Prof. dr hab. n. med. Krzysztof Łabuzek – internista, diabetolog, endokrynolog – Mój profil – Umów wizytę

  • 生年月日:1973年生まれだが月日は不明。仮に1973年1月1日生まれとする
  • 1999年(26歳):ポーランドのシレジア医科大学(Medical University of Silesia、ポ語:Śląskiej Akademii Medycznej)で医師免許取得
  • 2002年(29歳):同大学で研究博士号(PhD)を取得
  • 20xx年(xx歳):同大学・教員(?)
  • 2009~2016年(36~43歳):この7年間に出版した10論文が後に訂正・撤回
  • 2011年(38歳):同大学・ハビリテーション取得
  • 2016~2020年(43~47歳):テレビ番組・ホスト
  • 2016年(43歳):不正研究が発覚
  • 2017年(44歳):同大学・教授(教員?)(非常勤教授?)
  • 2023年6月10日(50歳):従来の教授(教員?)職を維持

●3.【動画】

以下は事件の動画ではない。

【動画1】
研究内容の動画?:「Krzysztof Łabuzek – YouTube」(ポーランド語?)0分34秒。
Liceum Ogólnokształcąceが2020/05/13に公開

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★有名人

クシシュトフ・ワブゼク(Krzysztof Łabuzek)はポーランドのシレジア医科大学(Medical University of Silesia、ポ語:Śląskiej Akademii Medycznej)・教員(非常勤教授?)・医師である。

2016~2020年、TVN局の人気のテレビ科学医療番組「36,6°」をエワ・ドゥジズガ(Ewa Drzyzga)と一緒にホストを務めた(写真出典)。

つまり、ポーランドでは有名人である。

以下はテレビ科学医療番組「36,6°」の数例。

https://www.youtube.com/watch?v=fRUwUKFwV3E

https://www.youtube.com/watch?v=rEsYbXZbIGQ

https://www.youtube.com/watch?v=HZ1NJmX2glc

★発覚の経緯

2017年1月12日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事では、シュナイダーにネカト情報を伝えた最初の人はエヴァ・スタットマン(Ewa Stutman、仮名)だとある。

現在まで、「パブピア(PubPeer)」には、クシシュトフ・ワブゼク(Krzysztof Łabuzek)の論文のコメントがないので、エヴァ・スタットマンがネカトを見つけ、シュナイダーに伝えたのが最初だと思われる。

2016年12月15日(43歳)、エヴァ・スタットマンが学術誌にネカトを通報したことで、この年の1月に出版したクシシュトフ・ワブゼク(Krzysztof Łabuzek)が第二著者の「2016年1月のExp Ther Med」論文が、細胞株の間違い(error)、データの間違い(error)、図の間違い(error)、で撤回された。

連絡著者でかつ第一著者は、ルカシュ・ブルダック(Łukasz Bułdak、写真出典)である。

後述するボゼナ・ガブリエル(Bożena Gabryel)は、この論文の共著者に入っていない。

撤回告知によると、ウエスタンブロット画像がおかしいと指摘があったので著者たちが調べると、図2~図5の元データが見つからなかった。ただ、実験試料は少量しか残っておらず、再実験するには足りないので著者たちは実験を繰り返さなかった。となると、論文結果の信頼性が欠けるので、論文撤回を依頼した。

辛辣なネカトハンターのレオニッド・シュナイダーは「元データが見つからなかった」じゃなくて、もともと「元データはなかった」のではないかと指摘している。

白楽もそう思う。論文出版1年未満なのに、「元データが見つからなかった」ってかなりヘンである。

以下に図2を示すが、他の図3~図5も似たような図で、棒グラフの下にウエスタンブロット画像がセットになっている(図2の出典は原著論文)。このウエスタンブロット画像がねつ造ということだ。

★ボゼナ・ガブリエル(Bożena Gabryel)

クシシュトフ・ワブゼク(Krzysztof Łabuzek)が2009~2015年に出版した9論文は、2017年2~3月に7報、2017年7月に1報、2018年6月に1報、が訂正された。

これら9報の訂正の多くは、2016年12月に「2016年1月のExp Ther Med」論文が撤回された時期の直後だった。

白楽が推察すると、ネカト指摘を受けたワブゼクは、自分の出版論文を見直し、似たようなねつ造・改ざん画像を、「間違い」として、自発的に訂正したのだと思われる。

これら「 1撤回論文+9訂正論文」の内、「 1撤回論文+5訂正論文」は前出のルカシュ・ブルダック(Łukasz Bułdak)が共著者である。3報はガブリエルが第一著者である。

だから、ブルダックがネカト者なのかもしれない。

また、「 1撤回論文+9訂正論文」の内、「 5訂正論文」はボゼナ・ガブリエル(Bożena Gabryel、Bozena Gabryel、「この人?」)が共著者である。2報はガブリエルが第一著者である。

この「 5訂正論文」では、ガブリエルがネカト者なのかもしれない。

ガブリエルが第一著者の以下の1報は、ウエスタンブロット画像がねつ造だと指摘されている。この論文では、ルカシュ・ブルダック(Łukasz Bułdak)は共著者になっていない

疑念の図を以下に4枚示す。

――1枚目ーー

――2枚目ーー

――3枚目ーー

――4枚目ーー

どう見ても、単純ミスの「間違い」ではなく、意図的な「間違い」(?)、つまり、データねつ造・改ざんである。1つ2つなら単純ミスかもしれないが、こんなに多ければ、「単純」とは言えない。「意図的」である。

★調査委員会

レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)が通報したので、シレジア医科大学は本件を知っている。

しかし、シレジア医科大学はワブゼクに対するネカト調査をしていないようだ。

ワブゼクは「間違い」と弁解しているが、どう見てもデータねつ造・改ざんである。

本件は「大学のネカト対応怠慢・不作為」事件でもある。

また、シュナイダーのブログ記事には別途資料があると記述しているが、白楽は、その資料にアクセスできなかった。それで、資料へのアクセス許可を申請したが、シュナイダーは対応してくれなかった。

【ねつ造・改ざんの具体例】

上記したので省略。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2023年6月9日現在、パブメド(PubMed)で、クシシュトフ・ワブゼク(Krzysztof Łabuzek)の論文を「Krzysztof Łabuzek[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2022年の21年間の93論文がヒットした。

2023年6月9日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、「2016年3月のExp Ther Med」論文・1論文が撤回されていた。

★撤回監視データベース

2023年6月9日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでカクシシュトフ・ワブゼク(Krzysztof Łabuzek)を「Krzysztof Łabuzek」で検索すると、 9論文が訂正、0論文が懸念表明、1論文が撤回されていた。

「2016年1月のExp Ther Med」論文が、細胞株の間違い(error)、データの間違い(error)、図の間違い(error)で2016年12月15日に撤回された。

2009~2015年に出版した9論文が訂正された。内訳は、2017年2月・3月に7報、2017年7月に1報、2018年6月に1報、訂正された。

★パブピア(PubPeer)

2023年6月9日現在、「パブピア(PubPeer)」では、クシシュトフ・ワブゼク(Krzysztof Łabuzek)の論文のコメントを「Krzysztof Łabuzek」で検索すると、0論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》不明 

ワブゼク事件では、クシシュトフ・ワブゼク(Krzysztof Łabuzek)が「どのような状況で、どうして」ネカトをしたのか、見えてこない。

シレジア医科大学はワブゼクに対するネカト調査をしていない「大学のネカト対応怠慢・不作為」事件でもある。

これでは、ネカト対策に役立つ点は少ない。

共著者のボゼナ・ガブリエル(Bożena Gabryel)がネカト者かもしれないが、ガブリエルの素性も顔写真も見つからなかった。

クシシュトフ・ワブゼク(Krzysztof Łabuzek)https://archive.md/wip/uTqAu

 

[事件とは無関係な事件の国の写真]:ポーランドのワルシャワ中央駅。2006年8月。撮影:白楽

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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●9.【主要情報源】

① ウィキペディア・ポーランド語版:Krzysztof Łabuzek – Wikipedia, wolna encyklopedia
② 2017年1月12日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:The western blot doctors of Silesia – For Better Science
③ クシシュトフ・ワブゼク(Krzysztof Łabuzek)のブログ:Prof. dr Krzysztof Łabuzek – Endokrynologia i Diabetologia.、(保存版
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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フォスター
フォスター
2023年6月12日 7:46 PM

ネカトを犯した研究者の99.999%は、不正を指摘されると「間違い」を主張しますが
所属機関が不正研究者の主張を鵜呑みにして調査をしない事例が後を絶ちませんね。
ポーランドの研究公正システムがどうなっているのか考えさせられます。

一応、日本では文科省が「故意によるものではないことが『根拠をもって』明らかにされたものは不正行為には当たらない」としておりますが、遵守されておらず、研究機関は『根拠』を確認すること無く「不正無し」の判定をする事が多いです。
研究機関を監督するはずの文科省も、これらを放置している有様で取りつく島がありません。

一般社会における学術論文の価値が年々下がってしまうのではないか、懸念されますね。