2025年5月5日掲載
2022年2月、福岡歯科大学はネカト告発された1件の 学会発表と1報の論文の調査の結果、ねつ造・盗用があったと発表し、ねつ造1論文を撤回すべきとした。同年4月、日本学術振興会は研究資金を5年(福島)と1年(犬塚)不交付にする処分を科した。しかし、3年後の2025年5月4日現在、論文は撤回されていない(推定)。そして、パブピアで6論文(福島)、15論文(犬塚)が疑惑視されている。この現実を知り、日本のネカト調査・対処・処罰は何だったのか、とガッカリした。本件は白楽が告発した事件ではないが、研究不正の告発をしても研究公正の維持・向上に役立たない現実がある。日本のほとんどは同じだろうから、告発で調査を要請するという方法ではダメだ、と強く感じた。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
2.通報・経緯
3.研究不正者
4.調査・対処・処罰と問題点
5.疑惑論文
7.白楽の感想
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- 記述は敬称略。
- 白楽ブログの「5C 日本の研究疑惑:通報と対処」の意図は、日本の研究者の研究不正(含・疑惑)を具体的に示し、該当する研究機関の調査・対処の実態を公表・情報共有することです。そのことで、日本の研究不正調査・対処の問題点を日本国民・メディア、及び研究機関・研究者が一緒に考え、日本の研究倫理体制をより良い方向に改善することです。
情報共有し改善策を考えるため、メールおよび文書は基本的に公表します。
●2.【通報・経緯】
★通報
今回は、「調査済」案件で、調査済なのに、調査の不徹底、調査結果の不履行などがみつかった。これは、当該大学の問題もあるが、もっと根本的に、日本の国の研究不正規則の欠陥、という問題である。
―――以下は白楽のやり取り(新→旧 順)ーーー
ーー通報当日:2025年5月5日 08:00、白楽の福岡歯科大学への通報ーーー
通報していない。
2022年2月に貴大学は研究不正を認定し、ねつ造1論文の撤回を勧告されました。その論文がどの論文なのか、公表しておりませんでしたが、私の調査では、2025年5月4日現在、撤回されておりません。撤回されるよう適切に(例えば、学術誌に要請するなど)手配して下さるようお願い申しあげます。
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●【通報先】
「競争的資金の取り扱い | 福岡歯科大学」に以下が示されている。
福岡歯科大学・教育研究支援課
tsuuhou@fdcnet.ac.jp
●3.【研究不正者】
★研究者の経歴・所属・地位など
- 1人目の研究者:福島秀文(Hidefumi Fukushima)
以下出典:KAKEN — 研究者をさがす | 福島 秀文 (70412624)
2015年度 – 2019年度: 東北大学, 歯学研究科, 准教授
2015年度 – 2017年度: 東北大学, 歯学研究科(研究院), 准教授
2014年度: 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 准教授
2013年度 – 2014年度: 福岡歯科大学, 歯学部, 准教授
2013年度: 九州歯科大学, 九州歯科大学, 福岡歯科大学, 歯学部, 歯学部, 歯学部, 助教, 講師, 准教授
2012年度 – 2013年度: 九州歯科大学, 歯学部, 助教
2012年度: 九州歯科大学, 歯学部, 講師
2007年度 – 2010年度: 九州歯科大学, 歯学部, 助教
2006年度: 福岡歯科大学, 歯学部, 助手- 写真出典
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2人目の研究者:犬塚博之 (Hiroyuki Inuzuka)
以下出典:KAKEN — 研究者をさがす | 犬塚 博之 (20335863)
2016年度 – 2023年度: 東北大学, 歯学研究科, 准教授
2016年度: 東北大学歯学研究科, 歯学部, 准教授- 写真出典
●4.【調査・対処・処罰と問題点】
【調査・対処・処罰】
★福岡歯科大学
2022年2月21日、福岡歯科大学(Fukuoka Dental College)は「福岡歯科大学元教員による研究活動上の特定不正行為の調査結果について」を公表した。
福岡歯科大学。文字入れ前の写真出典
調査結果の要点を経時的にまとめると、以下のようになる。〈 〉内は、白楽が加えた。「 → 」は白楽のコメント
- 2018 年2 月5 日:当該大学〈福岡歯科大学〉の教員が、ネカトを告発した。
被告発者は、〈福岡歯科大学の〉元准教授〈福島秀文〉で、学会での口演パワーポイント資料に他の研究者の掲載論文の図を「盗用」し、 実際に実験を実施したかのように「ねつ造」した。
なお、調査対象者に、本学元准教授〈福島秀文〉の転出先〈東北大学〉所属の准教授〈犬塚博之〉 を加えた。〈犬塚博之〉は〈福島秀文〉の論文の共著者のため、調査開始後、途中から調査対象者とした。
調査対象者は、被告発時に別の研究機関〈東北大学〉に所属していので、当該機関〈東北大学〉と協議し、当該機関〈東北大学〉の協力を得て、本学〈福岡歯科大学〉が本調査を実施した - 2021年2 月2 日:調査終了。 → 調査に3年間もかけたのは異常
- 2021年8 月31 日:調査委員会が学長に調査結果を報告。
- 2021年9月8 日:学長がネカト有無の認定を行なった。
- 2022年2月21日:大学がネカト調査結果を発表。 → 調査結果が出てから発表まで半年は異常
調査報告書は1件の学会発表を「ねつ造・盗用」とし、1報の論文を「ねつ造」とした。ねつ造論文1報は、取り下げするようネカト者に勧告した。
ただ、
ネカト者2人の姓名を隠蔽した。
転出先名を隠蔽した。
撤回すべき論文名も隠蔽した。
ネカト者2人への処罰の記載はないので、処罰は科していない(と思う)。
調査委員会は4人の委員で構成されたが、委員の姓名も隠蔽した。
要するに、調査報告書は公表したが、肝心な箇所を隠蔽した。但し、これらは文部科学省のガイドラインに違反していない。
ネカト者2人の姓名、転出先名は、次節の日本学術振興会の発表と突き合わせて、具体名がようやく判明した。
★日本学術振興会
2022年4月1日、福岡歯科大学のネカト発表の1か月10日後、日本学術振興会が 「科学研究費助成事業に係る研究活動の不正行為について」で、福岡歯科大学のネカト事件を以下のように発表した。
本会は、福岡歯科大学からの研究活動の不正行為に関する調査報告書の提出を受け、「研究活動の不正行為及び研究資金の不正使用等への対応に関する規程」(平成18年12月6日規程第19号)に基づき、以下の措置を講ずることとしました。
- 措置の対象者
福島 秀文 (福岡歯科大学口腔歯学部・元准教授)
犬塚 博之 (東北大学歯学研究科・元准教授) - 不正行為が行われた事業
研究種目:基盤研究(B)
研究課題名: TRP分子による歯牙石灰化機構の解明
交付額:平成25年度~平成27年度 17,750千円研究種目:基盤研究(A)
研究課題名:上皮陥入組織における器官決定機構の解明と人為的誘導法の開発
交付額:平成26年度~平成28年度 41,730千円研究種目:基盤研究(C)
研究課題名: Notch2 Hajdu-Cheney 症候群型変異の病態分子機構の解明
交付額:平成26年度~平成28年度 4,810千円研究種目:基盤研究(B)
研究課題名:脂質メタボッリクスイッチ制御による幹細胞性維持および多分化能制御
交付額:平成28年度~平成30年度 17,420千円研究種目:基盤研究(B)
研究課題名: 増殖因子―細胞間結合分子クロストークによる歯原性上皮・間葉細胞の分化機構の解明
交付額:平成28年度~平成30年度 17,030千円 - 不正行為の内容
調査機関による調査の結果、論文等2編においてねつ造、盗用を行ったと認定された。 - 措置の内容
○研究費の返還命令
不正行為と直接的に因果関係が認められた研究費の支出がないため、返還は求めない。○研究資金を交付しない期間について
福島 秀文 (福岡歯科大学口腔歯学部・元准教授)
令和4年度から令和8年度の5年間、本会の研究資金を交付しないこととする。犬塚 博之 (東北大学歯学研究科・元准教授)
令和4年度の1年間、本会の研究資金を交付しないこととする。
それで、2022年2月21日の福岡歯科大学の発表で隠蔽されていたネカト者が、福島秀文(Hidefumi Fukushima)、犬塚博之 (Hiroyuki Inuzuka)の2人だったこと、転出先は東北大学だったこと、がわかった。
また、研究資金を5年(福島)と1年(犬塚)不交付にする処分が科されたことがわかった。
ただ、撤回すべき論文名は依然としてわからなかったし、現在もわからない。
★文部科学省
文部科学省の予算配分を受けた研究でネカトと結論されると、多くの場合、「文部科学省の予算の配分又は措置により行われる研究活動において不正行為が認定された事案(一覧):文部科学省」にリストされる。
ところが、このネカト事件は2024年度までのリストに入っていない。
日本学術振興会の上記の発表で、「不正行為が行われた事業」に5件の科研費が記載されているのに、文部科学省のリストに記載されない理由はわからない。
ただ、リストに記載されても、ネカト者2人の姓名、撤回すべき論文名は記載されないので、どのみち、今回は役に立たない。
本記事では今後、この件には触れないのでこのままにする。
【問題点】
★問題点その1:論文は撤回されていない(推定)
福岡歯科大学の3年前(2022年2月21日)の発表で、ねつ造論文1報を取り下げするよう「ネカト者に勧告した」とある。
しかし、2025年5月4日現在、撤回監視データベースでチェックすると、福島秀文(Hidefumi Fukushima)の論文は1報も撤回されていない。
福岡歯科大学が撤回すべき論文を示していないので、どの論文なのかわからない。
それで、白楽が探した。
福島秀文・犬塚博之の共著論文で、他の著者を含め著者の誰かが福岡歯科大学の所属で出版した論文をパブメド(PubMed)で、「Hidefumi Fukushima[Author] AND Hiroyuki Inuzuka[Author] AND Fukuoka Dental College[Affiliation] 」で検索すると3論文がヒットした。
3論文は「2017年1月のSci Signal. 」、「2017年2月のOncotarget.」、「2017年11月のMol Cell.」だったが、どれも撤回されていない。ただ、この3論文での福島秀文の所属は福岡歯科大学ではなく、東北大学だった。
経歴から分かるように、福島秀文が福岡歯科大学に所属していたのは、2013年度・2014年度である。
パブメド(PubMed)で検索すると、2013~2014年に8報出版している。しかし、撤回監視データベースでの結論と同じで、論文は1報も撤回されていない。
撤回されていない理由は、一般的に、3つ想定できる。
1つ目の理由は、撤回要請を受けた論文はパブメド(PubMed)に索引付けされていない論文なので、論文が撤回されていたとしても、パブメド(PubMed)では検出できない。撤回監視データベースでは検出できる場合もある。
2つ目の理由は、パブメド(PubMed)に索引付けされているが、学術誌が何らかの理由(怠慢? )で撤回していない。
3つ目の理由は、パブメド(PubMed)に索引付けされているが、ネカト者が撤回を学術誌に要請していない。
白楽は、3つ目の理由ではないかと思い、以下、考察する。
そもそも、福岡歯科大学がネカト論文1報を取り下げするよう「ネカト者に勧告」していた。ここがヘンである。
ヘンではあるが、「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン(平成26年8月26日文部科学大臣決定)」の19ページには以下のようにあり、文部科学省の指示通りなのである。
ネカト者は研究不正者である。その人に、その人の嫌がる論文撤回をするように伝えても、する人もいれば、しない人もいるだろう。調べていないが、思うに、しない人の方が多いのではないだろうか? と、簡単に推察できる。
なぜ、文部科学省は、大学の調査委員会が学術誌に論文撤回を要請する規則にしなかったのか?
文部科学省の規則が現実に合わないと思う。
調べていないが、同じことが頻発に起こっているかもしれないと危惧してしまう。
つまり、日本の大学が調査の結果、ネカト論文と結論した論文なのに、撤回されていないケースがたくさんあるのかもしれない。
ネカト論文が撤回されなければ、害毒(不正論文)は垂れ流されたままである。この責任はどこにあるのだ?
このような現実に直面すると、現行の大学の調査・対処が無駄に思えてくる。とどのつまり、告発も無駄に思えてくる。
★問題点その2:他の論文を調査していない
福岡歯科大学の報告書によると、福岡歯科大学がネカト調査したのは1報だけである。
福島秀文(Hidefumi Fukushima)は6論文のデータ疑惑が「パブピア(PubPeer)」で指摘されている。
犬塚博之 (Hiroyuki Inuzuka)は15論文のデータ疑惑が「パブピア(PubPeer)」で指摘されている。
福岡歯科大学は、どの論文を調査したのか公表していないが、これだけ疑惑論文が指摘されていても、調査したのは告発された1報のみしか調査していない。
つまり、調査委員会は、指摘された「論文」だけしか見ていない。
論文は研究者という1人の人間が、連続する研究キャリアの中で自分のスタイルで出版する。
ある1人の研究者が不正疑惑論文を10報出版したとしよう。不正疑惑が指摘されていなければ、11報目の論文も、12報目の論文も、不正論文かもしれないと、調査委員会は、なぜ、思わないのか?
犯罪捜査では余罪が多数あることも視野に調査するのが常識だが、研究不正では告発された「論文」しか、“調査”しない。
“調査”と書いたけど、これは調査ではなくて、被告発事項の確認でしかない。こんなんでは、告発しても、日本の研究公正は維持されない、向上もしない。告発しても意味がないと思えてくる。
●5.【疑惑論文】
★疑惑の具体例
繰り返しになるが、福島秀文・犬塚博之の共著論文で、他の著者を含め著者の誰かが福岡歯科大学の所属で出版した論文をパブメド(PubMed)で、「Hidefumi Fukushima[Author] AND Hiroyuki Inuzuka[Author] AND Fukuoka Dental College[Affiliation] 」で検索すると3論文がヒットした。
3論文は「2017年1月のSci Signal. 」、「2017年2月のOncotarget.」、「2017年11月のMol Cell.」だったが、どれも撤回されていない。ただ、この3論文での福島秀文の所属は福岡歯科大学ではなく、東北大学だった。
上記3論文の最初と最後の論文は「パブピア(PubPeer)」でデータ疑惑が指摘されている。
福岡歯科大学から出版した論文ではないが、どんな点が研究不正の疑惑をもたれたのか、その2論文を見ていこう。
============【論文1】============
「2017年1月のSci Signal. 」論文
- The SCFβ-TRCP E3 ubiquitin ligase complex targets Lipin1 for ubiquitination and degradation to promote hepatic lipogenesis.Sci Signal. 2017 Jan 3;10(460):eaah4117. doi: 10.1126/scisignal.aah4117.
2025年5月4日現在、論文は撤回されていない。
連絡著者は犬塚博之とWenyi Weiで、両者とも、連絡先の電子メールアドレスは米国のベス・イスラエル・ディーコネス医療センター(BIDMC: Beth Israel Deaconess Medical Center)である。
研究は文部科学省の科研費 (26462829)+その他から助成されている。
ーーーーーーー論文1:重複画像①ーーーーー
2021年1月、Actinopolyspora biskrensisが、図8Aの赤色枠の2 つの画像は、試料が異なるのに同じ画像を使用している。それも、空色矢印で示した部分を削除するなどの加工操作している、とコメントした。出典:https://pubpeer.com/publications/FAF7056223887F0357A644C2E6CCFE
2025年5月4日現在、著者らは、問題の指摘に対して、何も返事をしていない。
実験は異なるのに別の実験で得られた画像を意図的に使用した可能性が高い。データねつ造疑惑である。
============【論文2】============
「2017年11月のMol Cell.」論文
- NOTCH2 Hajdu-Cheney Mutations Escape SCFFBW7-Dependent Proteolysis to Promote Osteoporosis.Mol Cell. 2017 Nov 16;68(4):645-658.e5. doi: 10.1016/j.molcel.2017.10.018.
2025年5月4日現在、論文は撤回されていない。
連絡著者は福島秀文、犬塚博之、Wenyi Weiの3人で、筆頭連絡者(Lead Contact)は犬塚博之である。犬塚博之の所属は東北大学である。
研究は文部科学省の科研費(福島秀文に対して17H04396 と 26462829 。犬塚博之に対して 16H055290 と16K15811。他の共著者に対して26253092 to S.F.と16H05548 to A.Y.がある)+その他から助成されている。
ーーーーーーー論文2:重複画像①ーーーーー
2025年4月、Rhabdophis swinhonis が、図6のAとDの画像に重複箇所があると指摘した。出典:https://pubpeer.com/publications/7F6887597ED80160BECAC29F24F5B0
ーーーーーーー論文2:重複画像②ーーーーー
2025年4月、Rhabdophis swinhonis が、図6Dの画像は、2014年の論文の図4Aの画像を回転などの操作した図と同じであると指摘した。出典:https://pubpeer.com/publications/7F6887597ED80160BECAC29F24F5B0
2025年5月4日現在、著者らは、問題の指摘に対して、何も返事をしていない。
実験は異なるのに別の実験で得られた画像を回転などの意図的な操作をした可能性が高い。データねつ造疑惑である。
●7.【白楽の感想】
《1》調査報告書は何?
2022年2月21日の福岡歯科大学(Fukuoka Dental College)の調査結果の発表は誰に何を伝えたかったのか? → 「福岡歯科大学元教員による研究活動上の特定不正行為の調査結果について」
本文に書いたが、
ネカト者2人の姓名を隠蔽した。
転出先名を隠蔽した。
撤回すべき論文名も隠蔽した。
ネカト者2人への処罰の記載はないので、処罰は科していない(と思う)。
調査委員会は4人の委員で構成されたが、委員名も隠蔽した。
要するに、調査報告書は肝心な箇所を全部隠蔽している。研究者を含めほとんどの国民は、調査報告書が何を示しているかを把握できないだろう。
研究者倫理の専門家でも、日本学術振興会の発表と合わせて読み解かないと、調査報告書の内容を把握できない。福岡歯科大学の事件関係者、東北大学の事件関係者数人しかわからないと思う。
主要新聞は報道していないので、国民全体およびネカト者が所属した福岡歯科大学や東北大学の大多数の研究者も知らないと思う。
本件は白楽が告発した事件ではないが、研究不正の告発をしても、大学の対処がこんなありさまでは、日本の研究公正の維持・向上に十分役立つとはとても思えない。
《2》調査・対処・処罰は何だったのか?
研究不正疑惑者を大学に告発したとしよう。
大学は調査し、ねつ造論文を特定し、撤回するよう勧告した。
日本学術振興会はネカト者の姓名を明記し、研究資金を5年とか1年とか不交付にする処分を科した。
ネカト調査・対処・処罰は順調に進んで、一件落着と思った。
しかし、3年後、論文は撤回されず(推定)、もっと多数の論文が疑惑視されていて、ネカト者の1人は研究職をやめたが、もう1人は研究者として米国で活躍していた。
調査・対処・処罰は何だったのか?
これでは、告発してもコトが済まない。
調査内容を含め大学のネカト対処が妥当だったかを監視する必要がある。しかし、そのような個人・組織は日本にはない。
処罰されたはずのネカト者は、米国で研究を続けているのも問題かもしれないが、ここでは一応、「よし」としよう。
ただ、その研究者がその後もネカト論文を出版している。それらの論文のネカト実行者ではないかもしれないが、共著でネカト論文を出版しているということは、処罰された経験は生かされず、共著者のネカトを阻止していなかったということだ。
研究者は処罰を受けて、もう二度とネカト行為をしない・させない、とならなかったのか? 日本の処罰は何だったのか?
これでは、日本のすべての研究者に、ネカトしても大した問題にならない、抜け道があるよ、と教えているようなものだ。
本件は白楽が告発した事件ではないが、研究不正の告発をしても、こんなありさまでは、日本の研究公正の維持・向上に役立つと、素直には思えなくなった。
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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