7-60 食品医薬品局(FDA)が臨床試験のネカトを隠蔽

2020年9月25日掲載 

白楽の意図:米国の食品医薬品局は臨床試験のネカト・クログレイを、毎年約200件特定しているが、その内容を隠蔽している。それを指摘したピーター・サイモンズ(Peter Simons)の「2020年4月のMad in America」論文を読んだので、紹介しよう。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.論文概要
2.書誌情報と著者
3.まえおき
4.論文内容
5.関連情報
6.白楽の感想
8.コメント
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【注意】「論文を読んで」は、全文翻訳ではありません。ポイントのみの紹介で、白楽の色に染め直してあります。

●1.【論文概要】

白楽注:本論文は学術論文ではなくウェブ記事である。本ブログでは統一的な名称にするため論文と書いた。

論文に概要がないので、省略。

●2.【書誌情報と著者】

★書誌情報

★著者

  • 単著者:ピーター・サイモンズ(Peter Simons)
  • 紹介:
  • 写真:https://www.madinamerica.com/2020/04/fda-inspections-revealing-research-misconduct-hidden-from-public-view/
  • ORCID iD:
  • 履歴: https://www.madinamerica.com/team/peter-simons/
  • 国:米国
  • 生年月日:不明
  • 学歴:xx大学の修士号(心理学)。博士号(相談心理学)取得を目指している
  • 分野:
  • 論文出版時の所属・地位:「Mad in America」誌のブログ編集者

「Mad in America」誌の住所の建物。Mad in America Foundation、763 Massachusetts Avenue, Suite #2, Cambridge, MA 02139, USA。写真出典

●3.【まえおき】

ラファエル・ダルレ(Rafael Dal-Ré)の下記論文を読もうと思ったら、閲覧有料で断念した。

  • 論文名:Increasing access to FDA inspection reports on irregularities and misconduct in clinical trials.
    日本語訳:臨床試験における不法行為と不正行為に関する食品医薬品局の検査レポートへのアクセスの増加
  • 著者:Dal-Ré, R., Kesselheim, A. S., & Bourgeois, F. T.
  • 掲載誌・巻・ページ:JAMA. 2020;323(19):1903-1904
  • オンライン発行年月日:2020年4月23日
  • DOI: 10.1001/jama.2020.1631
  • ウェブ:https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2765251

それで、上記論文を解説している(と思える)ピーター・サイモンズ(Peter Simons)の「2020年4月のMad in America」論文を読んだ。

●4.【論文内容】

《1》序論 

米国の食品医薬品局(FDA)は、現場調査で臨床試験でのネカト・クログレイを毎年約200件、特定している。 ただし、これらのネカト・クログレイ情報は公開されない。「2020年4月のJAMA」論文(白楽が読もうとした論文)は、食品医薬品局(FDA)に調査報告書を公表するよう要求している。

「これらの調査報告書は、インフォームドコンセントの取得の失敗、データ改ざん、有害事象報告の違反などの不正行為を明らかにしている」と「2020年4月のJAMA」論文は指摘している。

ただし、これらの調査報告書は「機密の企業情報」が含まれているため、しばしば、一般には公開されない。 ネカト・クログレイで有罪となった製薬企業は、ネカト・クログレイを公表すると製薬企業の「新しい治療法」の提供に事業に支障をきたすと主張し、食品医薬品局(FDA)と秘密裡に話し合い、結局、食品医薬品局(FDA)はネカト・クログレイを黙認している。

《2》3つの例 

食品医薬品局(FDA)が臨床試験のネカト・クログレイを隠蔽している3つの例を以下に示す。

★抗凝固剤アピキサバン

1番目の例は抗凝固剤アピキサバン(apixaban)である。

欧州で2012年4月に、日本で2012年12月に、米国で2012年12月に承認された。当初の承認は心房細動患者の血栓症予防であったが、2014年〜2015年に静脈血栓塞栓症の治療と再発予防について追加承認された。(出典:アピキサバン – Wikipedia

「アリストートル(ARISTOTLE、アリストテレス)」と呼ばれる大規模な臨床試験が多くの施設(以下、サイトと呼ぶ)で実施された(2011年に公開)。 → ARISTOTLE_抗血栓療法トライアルデータベース

情報公開法(Freedom of Information Act)で資料の公開を求めたら、食品医薬品局(FDA)は薬物試験を実施した中国の36施設のうち24施設で、明確なねつ造・改ざんを含めたネカト・クログレイを特定していた。

しかし、食品医薬品局(FDA)は、ブリストル・マイヤーズスクイブ社(Bristol-Meyers Squibb)とファイザー社(Pfizer、アピキサバンの製造企業)と話し合い、1つの施設のデータを除外すると、アピキサバンの死亡率の統計的がおかしくなることを恐れた。

そして、ブリストル・マイヤーズスクイブ社(Bristol-Meyers Squibb)とファイザー社(Pfizer)が、ねつ造データへの懸念に言及せずに、24施設のすべての「ねつ造・改ざん」データを含めて、食品医薬品局(FDA)は、結果を論文として公開することを許可した。

「ねつ造・改ざん」データについて言及していないその論文は、6,900回以上引用され、米国心臓協会および米国心臓病学会の臨床ガイドラインのバックボーンを形成している。

★抗凝固剤リバロキサバン

2番目の例は抗凝固剤リバーロキサバン(rivaroxaban)である。

リバーロキサバン(Rivaroxaban)は経口抗凝固薬の一つである。最初に開発された直接第Xa因子阻害薬である。商品名イグザレルト。消化管からの吸収率が高く、投与4時間後に第Xa因子の阻害効果が最大となり、効果は8〜12時間持続する。しかし第Xa活性は24時間以内では回復しないので、1日1回投与で用いられる。(リバーロキサバン – Wikipedia

リバーロキサバンはバイエル社(Bayer)が開発し、ジャンセン社(Janssen)が販売している。

臨床試験名「RECORD4」と呼ばれる臨床試験が16か所の施設で実施された。 → RECORD4_抗血栓療法トライアルデータベース

食品医薬品局(FDA)が調査したところ、データ改ざんの懸念を含め、8施設のデータは信頼できないことがわかった。

食品医薬品局(FDA)は、リバーロキサバンによる265件の有害事象が報告されていない、という不正を見つけた。この問題を非常に深刻に受け止め、リバーロキサバンの承認時の評価では「RECORD4」臨床試験を除外した。

それにもかかわらず、「RECORD4」臨床試験の結果は2009年に論文として発表され、現在1,100回以上引用され、米国整形外科医学会(American Association of Orthopedic Surgeons)の臨床ガイドラインのバックボーンとなっている。

★エテプリルセン

3番目の例はエテプリルセン(eteplirsen)である。

エテプリルセンEteplirsen(英語版)(商品名 Exondys 51)はデュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する治療薬であり2016年にFDAに承認された。モルフォリノオリゴを用いたジストロフィン遺伝子のエクソン51を標的としたものである。(分子標的治療 – Wikipedia

3番目の例は、エテプリルセンの「201試験(Study 201)」臨床試験である。

エテプリルセンはデュシェンヌ型筋ジストロフィーを治療するためにサレプタ社(Sarepta)が開発した。

食品医薬品局(FDA)の調査結果は発表されていない。しかし、食品医薬品局(FDA)の審査委員は公表された試験報告論文の撤回または訂正を公開で要求した。

しかし、撤回・訂正はされていない。それで、2人の審査委員は信頼できないデータに抗議し審査委員を辞任した。

それにもかかわらず、エテプリルセンは食品医薬品局(FDA)から、2016年に「迅速な承認」を受けた。

一方、食品医薬品局(FDA)がネカト・クログレイ行為を見つけた78論文を分析した「2015年4月のJAMA」論文が出版された。

その論文によると、ネカト・クログレイの懸念について言及している論文は3つだけで、どの論文も撤回・訂正はされていない。

★おわりに

ここで述べた問題を解決するために、「2020年4月のJAMA」論文のラファエル・ダルレ(Rafael Dal-Ré)らの著者たちは、食品医薬品局(FDA)の調査結果を食品医薬品局(FDA)のウェブサイトとClinicaltrials.gov(説明は以下)の両方で公開するよう食品医薬品局(FDA)に要請している。

なお、Clinicaltrials.gov(クリ二カルトライアルズ・ドット・ガブ):

ClinicalTrials.govは、米国国立公衆衛生研究所 (NIH)と米国医薬食品局 (FDA) が共同で、米国国立医学図書館 (NLM) を通じて、現在行われている治験及び臨床研究に関する情報を提供しているデータベースです。

2000年2月に開設され、その後、FDAに医薬品を申請するために該当する臨床試験を事前登録することが義務化されました。2009年には日本を含む172か国で実施された76,000件以上の試験が登録されており、世界最大級の臨床試験登録サイトを構成してます。Clinical Trials. gov(クリ二カルトライアルズ・ドット・ガブ) | がん情報サイト「オンコロ」

ラファエル・ダルレ(Rafael Dal-Ré)らは「2020年4月のJAMA」論文で、「これらの調査報告書の公開は、臨床試験の透明性に関する現在の基準を満たし、研究公正を維持するために必要です」と述べている。

●5.【関連情報】

省略

●6.【白楽の感想】

《1》権威は腐敗する 

白楽は、食品医薬品局(FDA)をそれなりに信頼していた。

この記事によると、食品医薬品局(FDA)はかなりひどい。

ネカトの法則:「権威・権力のある組織は腐敗する。防止法は透明性・批判の確保」

上記法則に例外はない。食品医薬品局(FDA)も例外ではなかった。

一方、日本の臨床試験はどうなっているのか?

2013年に発覚した臨床試験不正のディオバン事件は、記憶に新しい。世界変動展望 著者が「平成の5大ネカト事件」に第2位に挙げている。 → 平成の5大ネカト事件:第2位-第5位 | 白楽の研究者倫理

その後、大きく改善されたようすもない。

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、日本に飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条報は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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★論文中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

●8.【コメント】

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