ゴーケン・パティア=ネビオーグ(Görkem Patir-Nebioglu)(ドイツ)

2021年8月20日掲載 

ワンポイント:パティア=ネビオーグはトルコの大学・学部を卒業し、ドイツのハイデルベルク大学(Heidelberg University)の院生になった。2019年2月(32歳?)、「2019年2月のelife」論文を出版したが、直ぐに、「パブピア(PubPeer)」で論文画像の不適切さが指摘された。指導教授のカリン・シューマッハー(Karin Schumacher)が素早く対応し、パティア=ネビオーグをネカト犯とつきとめ、論文は、出版から約1か月後の2019年3月に撤回された。パティア=ネビオーグは研究界から排除された。国民の損害額(推定)は1億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

ゴーケン・パティア=ネビオーグ(M. Görkem Patir Nebioglu、Gorkem Patir-Nebioglu、Meliha Görkem Patir Nebioglu、ORCID iD、写真出典)は、トルコの大学・学部を卒業し、ドイツのハイデルベルク大学(Heidelberg University)の院生になった。医師免許なし。専門は細胞生物学(植物)だった。

2019年2月20日(32歳?)、パティア=ネビオーグは「2019年2月のelife」論文を出版した。この論文で研究博士号(PhD)を取得できるハズだった。

しかし、数日後(推定)、論文画像の不適切さが「パブピア(PubPeer)」で指摘された。

連絡著者で指導教授でもあるカリン・シューマッハー教授(Karin Schumacher)が素早く対応した。

結局、パティア=ネビオーグが画像の不正操作を告白し、論文は、出版から約1か月後の2019年3月26日(32歳?)、撤回された。

パティア=ネビオーグはハイデルベルク大学から退学処分になった。その後、学術界には登場していない。

ハイデルベルク大学(Heidelberg University)。写真出典

ハイデルベルク大学生物研究センター(Centre for Organismal Studies, Heidelberg University)。写真出典

  • 国:ドイツ
  • 成長国:トルコ
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:なし
  • 男女:女性
  • 生年月日:不明。仮に1987年1月1日生まれとする。2005年に大学に入学した時を18歳とした
  • 現在の年齢:34 歳?
  • 分野:細胞生物学
  • 不正論文発表:2019年(32歳?)
  • 発覚年:2019年(32歳?)
  • 発覚時地位:ハイデルベルク大学・院生
  • ステップ1(発覚):第一次追及者(詳細不明)が「パブピア(PubPeer)」で指摘
  • ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①指導教授・カリン・シューマッハー教授(Karin Schumacher)の調査。②ハイデルベルク大学は調査委員会を立ち上げていない
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。大学は調査していない
  • 大学の透明性:大学は調査していないが、指導教授・カリン・シューマッハー教授(Karin Schumacher)が実名で社交メディアで公表した(〇)
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:1報撤回
  • 時期:研究キャリアの初期
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)をやめた・続けられなかった(Ⅹ)
  • 処分:退学処分(推定)
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は1億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

  • 生年月日:不明。仮に1987年1月1日生まれとする。2005年に大学に入学した時を18歳とした
  • 2005~2011年(18~24歳?):トルコの中東工科大学(Orta Dogu Teknik Universitesi、英語でMiddle East Technical University)で学士号取得:Meliha Görkem Patir Nebioglu | Facebook
  • 20xx年(xx歳):ドイツのハイデルベルク大学(Heidelberg University)・大学院入学:細胞生物学
  • 2019年(32歳?):すぐ問題視される「2019年2月のelife」論文を発表
  • 2019年(32歳?):「2019年2月のelife」論文のネカト発覚
  • 2019年(32歳?):ハイデルベルク大学を退学処分(推定)

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★出来の悪い院生?

ゴーケン・パティア=ネビオーグ(Görkem Patir-Nebioglu)はトルコの中東工科大学(Orta Dogu Teknik Universitesi)で学士号を取得した。

なお、読者は憶えていると思うが、中東工科大学の評判はかなり悪い。「化学:ファティ・シェン(Fatih Şen)(トルコ) | 白楽の研究者倫理」に以下の記述をした。

ファティ・シェンの出身大学である中東工科大学(Middle East Technical University)は、トルコでもランクが低い大学との指摘がある。入学試験では答案に自分の名前を書くだけで合格するとバカにされている(ビック記事のコメント:August 25, 2020 at 5:55 am)。

パティア=ネビオーグは中東工科大学の学部卒業後、直ぐかどうか不明だが、ドイツのハイデルベルク大学(Heidelberg University)の大学院に入学した。

カリン・シューマッハー教授(Karin Schumacher、写真出典)の指導を受けていた。

論文は2015年(28歳?)と2018年(31歳?)に各1報出版しているが第一著者ではない。院生としては、かなり出来が悪い方だろう。

2019年2月20日(32歳?)、それでもようやく、初めて第一著者の「2019年2月のelife」論文を出版した。

これで、研究博士号(PhD)をほぼ取得できる状況になった。

指導教授のシューマッハー教授は出版翌日の2019年2月21日、ツイッターで喜びを表明している(保存版)。

★発覚の経緯

上述したように、2019年2月20日(32歳?)、ゴーケン・パティア=ネビオーグ(Görkem Patir-Nebioglu)は「2019年2月のelife」論文を出版した。

脇道の話。 → 本筋とは関係ないが「2019年2月のelife」論文の共著者に日本人がいる。名古屋大学の瀬上紹嗣(SEGAMI Shoji、生命農学研究科・ 研究員)と副総長の前島正義 (Masayoshi Maeshima)である。共著者に日本人がいたからナンダ? と言われると、なんでもありません。

話しを戻す。「2019年2月のelife」論文の書誌情報は以下である。

出版してすぐに、パブピアで図3Eの画像が不適切に操作されていると指摘された(ねつ造・改ざん)。

以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/9AC372375FAC6E016FA054C5771883#2

シューマッハー教授はパブピアの指摘に、最初は軽く、2回目は重く、結局、以下のような返事をした。

図3DとE、図4CとDのウエスタンブロットはゴーケン・パティア=ネビオーグ(Görkem Patir-Nebioglu)が作成した図です。パティア=ネビオーグと話し合った結果、彼女は、画像を操作したことを認めました。科学規範に対する重大な違反をしておりますので、学術誌に論文撤回を要請します。私たちに注意喚起してくれたことを非常に感謝します。

★論文撤回

2019年3月13日、シューマッハー教授は、ツイッターで、とても苦痛だが、「2019年2月のelife」論文を撤回するとつぶやいた(保存版)。

2019年3月26日(32歳?)、論文は撤回された。
 → 撤回告知:Retraction: Pyrophosphate modulates plant stress responses via SUMOylation | eLife

結局、論文は出版から約1か月で撤回された。

このように素早くネカトを検知し、論文の責任者が迅速・誠実に対応したことで、学術界の損害を少なくできた。

ネカト者のパティア=ネビオーグはハイデルベルク大学を退学処分になったと思われる。その後、学術論文を出版していない。研究者になることを諦めたのだろう。

【ねつ造・改ざんの具体例】

上述したので省略。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2021年8月19日現在、パブメド(PubMed)で、ゴーケン・パティア=ネビオーグ(M. Görkem Patir Nebioglu、Gorkem Patir-Nebioglu、Meliha Görkem Patir Nebioglu)の論文を「M. Görkem Patir Nebioglu[Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2015~2019年の5年間の3論文と撤回告知1報がヒットした。

2021年8月19日現在、「2019年2月のelife」論文が2019年3月26日に撤回されていた。

★撤回監視データベース

2021年8月19日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでゴーケン・パティア=ネビオーグ(M. Görkem Patir Nebioglu、Gorkem Patir-Nebioglu、Meliha Görkem Patir Nebioglu)を「Nebioglu」で検索すると、本記事で問題にした「2019年2月のelife」論文・1論文が撤回されていた。

2019年2月20日に出版され、約1か月後の2019年3月26日に撤回された。

★パブピア(PubPeer)

2021年8月19日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ゴーケン・パティア=ネビオーグ(M. Görkem Patir Nebioglu、Gorkem Patir-Nebioglu、Meliha Görkem Patir Nebioglu)の論文のコメントを「Nebioglu」で検索すると、本記事で問題にした「2019年2月のelife」論文・1論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》お茶の水女子大学 

白楽が現職のお茶の水女子大学の教員だった頃、トルコの女性が生物学科の学部の推薦入試に受験してきたことがあった。

トルコの高校を卒業し、試験前、数か月、日本に滞在して日本語の勉強をしたという説明だったが、日本語は会話さえおぼつかなかった。推薦入試だが、日本語で答えるペーパー試験もあって、その成績はかなり悪かった。

しかし、面接では、表裏なく実情を説明し、姿勢が前向き、勉学に貪欲、明るい性格などで、白楽の好感度はとても高かった。この女性は伸びると思った。

合否判定会議の時、白楽は、是非入学させたいと力説したが、他の委員はペーパー試験の成績が悪いので、検討の余地なしとケンもホロロだった。多勢に無勢で、結局、不合格になったが、トルコの若い女性の話になると、あの女性はその後どうなっただろうと思いだす。

もう1人、時々、あの女性はその後どうなっただろうと思う女性がいる。

生物学科長をしていた時、夏休みに研究室にいると、大学本部・事務から電話がかかって来た。

米国在住の母娘が来校し、本学の様子を知りたいので、お話ししていただけないかとのことだった。

了承した。

40歳ほどの日本人女性が中学3年生という娘を連れて研究室にきた。

相談は、米国のサンディエゴに住んでいるが、夫を含め周囲に研究者はいない。しかし、娘は将来研究者になりたがっている。親としても娘の希望をかなえさせてあげたい。それで、米国の大学に入れるかお茶の水女子大学に入れるか迷っている、という。

優秀なお嬢さんらしく、現在の成績を高校まで維持できるとすると、米国のどの大学にも入学できるとのことだった。母親はいろいろ質問してきたが、当の中学3年生はジッと話を聞いているだけで一言も発しない。

白楽は、結局、米国の大学をすすめた。例えば、カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)は素晴らしいと伝えた。

その後、この中学3年生がどのような進路を選んだか知らない。順調に進んでいれば今頃、中堅の研究者になっている年齢だ。

母娘は日本の各大学を回ったのか、お茶の水女子大学だけに来たのかもわからない。夏休みに米国から日本に来て、娘の将来を考える母親の愛情を今でも思いだす。

ついでに、夏休みつながりで3人目も書いておく。

夏休みに研究室でパソコン操作していると、「ちょっといいですか?」と若い女性が入室してきた。

白楽は常時ドアを開けているので、廊下を通れば、室内に白楽がいることがわかる。

「どうぞ」と招き入れると、夏休みを利用して大阪からきた女子高3年生とのことだ。

何を話したか忘れたが、しばらく歓談して帰っていった。

それから、3年と数か月後、お茶の水女子大学・生物学科の3年生が卒業研究をする研究室を選ぶ時期だった。

研究室の話を聞きに1人の3年生が来た。

そして、「先生、3年前、大阪から話を聞きに来た女子高生のことを憶えていらっしゃいますか?」と聞かれた。

白楽は、とっさのことで何を言っているのか把握できなかった。そして「憶えてない」と答えてしまった。3年生はひどくガッカリした様子だった。

それから、数か月後、何かの折にフット、そういえば、夏休みに大阪から研究室に来た女子高生がいたことを思い出した。

その子が、夏休みに東京に来て、お茶の水女子大学の白楽の研究室で話を聞いて、お茶の水女子大学・生物学科を受験し、入学したんだ、と推察した。

そして、3年数か月後、満を持して(と、言い方はヘンだが)、白楽の研究室で卒業研究をしようと尋ねてきたんだ、と思い至った。

気がついたときは、既に別の研究室で卒業研究することになっていたので、今さら取り返しがつかない。

白楽は、トテモ、わるかったと思っている。

その後、20年以上経つが、「夏休みに大阪からきた女子高生」を忘れることはない。まさか、この文を読んでいるとは思わないが、悪かった、忘れてないよ、キミのこと。

カリン・シューマッハー教授(Karin Schumacher)研究室の集合写真。ゴーケン・パティア=ネビオーグ(Görkem Patir-Nebioglu)もいます。見つけられます? 出典不明

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、日本に飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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●9.【主要情報源】

① 2019年3月15日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:“All very painful:” Two retractions to watch for, in eLife and PLOS ONE – Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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