アショク・パンディ(Ashok Pandey)(インド)

2017年12月17日掲載。

ワンポイント:1997年(41歳)?、インドの国立学際科学技術研究所(CSIR – National Institute for Interdisciplinary Science and Technology (NIIST))・バイオテク/バイオ燃料部門・部門長であるアショク・パンディの「1996年のApplied Microbiology and Biotechnology」論文が盗用だと、被盗用者であるカナダのウェスタンオンタリオ大学(University of Western Ontario)・生物工学のスパイロス・アガソス教授(Spiros N Agathos)が通報した。不思議なことに論文は撤回されなかった。国立学際科学技術研究所は調査せず、パンディは何ら処分を受けなかった。損害額の総額(推定)は4500万円。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

アショク・パンディ(Ashok Pandey、写真出典)は、インドの国立学際科学技術研究所(CSIR – National Institute for Interdisciplinary Science and Technology (NIIST))・バイオテク/バイオ燃料部門(Dept. of Biotechnology and Biofuels Division)・部門長で、専門は生物工学だった。

2016年(60歳)、革新応用バイオプロセス研究所(Centre for Innovative & Applied Bioprocessing)・著名科学者(Eminent Scientist)に転職した。

パンディは著名な研究者で、465報の原著論文/総説、16件の特許、54冊の著者、本の160章を執筆・出版している。2008年、高被引用論文著者賞(Thomson Scientific Citation Laureate Award)を受賞した。

1997年(41歳)?、カナダのウェスタンオンタリオ大学(University of Western Ontario)・生物工学のスパイロス・アガソス教授(Spiros N Agathos)が自分の論文が盗用されているのに気付いて、学術誌編集局に「1996年のApplied Microbiology and Biotechnology」論文が盗用だと指摘した。

論文著者は、バラクリシュナンK (K. Balakrishnan)とアショク・パンディ(Ashok Pandey)の2人である。どちらが盗用の実行犯だったのか、それとも共犯だったのか、不明である。

状況から判断して、バラクリシュナンKがネカト者でアショク・パンディはシロと思われるが、確証はない。本記事では、通説通り、アショク・パンディをクロとして話を進める。

学術誌「Applied Microbiology and Biotechnology」のシュタインブチェル編集長は、バラクリシュナンK (K. Balakrishnan)およびアショク・パンディ(Ashok Pandey)からの原稿を同誌では2度と受理しないというペナルティを科した。同時に、その受理拒否の通知を他の微生物/生物工学系の学術誌編集局に通知した。なお、不可解だが、盗用とされた「1996年のApplied Microbiology and Biotechnology」論文は撤回されていない。

インドの国立学際科学技術研究所(CSIR – National Institute for Interdisciplinary Science and Technology (NIIST))。写真出典

  • 国:インド
  • 成長国:インド
  • 研究博士号(PhD)取得:インドのアラーハーバード大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:1956年1月1日
  • 現在の年齢:62 歳
  • 分野:生物工学
  • 最初の不正論文発表:1996年(40歳)
  • 発覚年:1997年(41歳)?
  • 発覚時地位:国立学際科学技術研究所・部門長
  • ステップ1(発覚):第一次追及者はカナダのウェスタンオンタリオ大学(University of Western Ontario)のスパイロス・アガソス教授(Spiros N Agathos)で、自分の論文が盗用されたのに気が付いて、学術誌編集局に通報した。
  • ステップ2(メディア):
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌「Applied Microbiology and Biotechnology」・編集局
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。国立学際科学技術研究所は調査した気配なし
  • 不正:盗用
  • 盗用ページ率:不明。大幅な盗用
  • 盗用文字率:不明。大幅な盗用
  • 不正論文数:1報。論文は撤回されていない
  • 時期:研究キャリアの中期
  • 損害額:総額(推定)は4500万円。内訳 → ①研究者になるまで5千万円だが、研究者をやめていないので損害額はゼロ円。②研究者の給与・研究費など年間2000万円だが、研究者をやめていないので損害額はゼロ円。③院生の損害はないので損害額はゼロ円。④外部研究費の額は不明で、額は②に含めた。⑤学術誌出版局の調査経費と損害が500万円。⑥裁判経費なし。⑦論文出版・撤回作業が1報につき100万円、撤回論文の共著者の損害が1報につき100万円だが撤回がないのでゼロ円。⑧研究者の時間の無駄と意欲削減が4千万円
  • 結末:無処分

●2.【経歴と経過】

主な出典:https://csir.academia.edu/AshokPandey/CurriculumVitae

  • 1956年:インドに生まれる
  • 1974年(18歳):インドのカーンプル大学(Kanpur University)で学士号取得:化学
  • 1976年(20歳):インドのカーンプル大学(Kanpur University)で修士号取得:化学
  • 1979年(23歳):インドのアラーハーバード大学(University of Allahabad)で研究博士号(PhD)を取得:微生物学
  • 1979-1982年(23-26歳):インドのアラーハーバード大学(University of Allahabad)・ポスドク
  • 1982-1985年(26-29歳):インドの国立砂糖研究所(National Sugar Institute)・研究員
  • 1985-1986年(29-30歳):ドイツのズードズカー社(Südzucker)・研究員
  • 1987-2015年(59歳):インドの国立学際科学技術研究所(CSIR – National Institute for Interdisciplinary Science and Technology (NIIST))・研究員、後に部門長
  • 1997年(41歳)?:盗用が指摘された
  • 2016年(60歳):革新応用バイオプロセス研究所(Centre for Innovative & Applied Bioprocessing)・著名科学者(Eminent Scientist)

【受賞】

  • Life-Time Achievement Award from the International Society for Energy, Environment and Sustainability (2017)
  • Fellow of Royal Society of Biology, UK (2016)
  • Academician of European Academy of Sciences and Arts, Germany (2016)
  • Thomson Scientific India Citation Laureate Award, USA (2008)
アショク・パンディ(Ashok Pandey)(中央)。http://scitechconnect.elsevier.com/the-amazing-ashok/

●5.【不正発覚の経緯と内容】

1997年(41歳)?、「1996年のApplied Microbiology and Biotechnology」論文が盗用と指摘された。

Influence of amino acids on the biosynthesis of cyclosporin A by Tolypocladium inflatum
K. Balakrishnan, A. Pandey
Applied Microbiology and Biotechnology
July 1996, Volume 45, Issue 6, pp 800–803

被盗用論文は以下である。

Effect of amino acids on the production of cyclosporin A by Tolypocladium inflatum.
J. Lee and S.N. Agathos
Biotechnol Lett 11:77–82 (1989)

白楽は盗用分析表を見つけられなかった。盗用ページ率と盗用文字率は不明である。但し、大幅な盗用と記載されている。

 

アレキサンダー・シュタインブチェル教授(Alexander Steinbüchel)
スパイロス・アガソス(Spiros N Agathos)

1997年(41歳)、被盗用者のスパイロス・アガソス(Spiros N Agathos、写真出典)が盗用に気が付いて、学術誌「Applied Microbiology and Biotechnology」編集長であるドイツ・ミュンスター大学のアレキサンダー・シュタインブチェル教授(Alexander Steinbüchel、写真出典)に通報した。

スパイロス・アガソス(Spiros N Agathos)は被盗用論文を出版した時、カナダのウェスタンオンタリオ大学(University of Western Ontario)の生物工学・教授だった。

シュタインブチェル編集長は、バラクリシュナンK (K. Balakrishnan)およびアショク・パンディ(Ashok Pandey)からの原稿を学術誌「Applied Microbiology and Biotechnology」は2度と受理しないというペナルティを科した。同時に、その受理拒否の通知を他の微生物/生物工学系の学術誌編集局に通知した。なお、不可解だが、「1996年のApplied Microbiology and Biotechnology」論文は撤回されていない。

インドの国立学際科学技術研究所(CSIR – National Institute for Interdisciplinary Science and Technology (NIIST))は、盗用の通知を受けたハズだが、調査委員会を設けたという記述がない。従って、バラクリシュナンKおよびアショク・パンディのどちらが盗用の実行犯だったのか、それとも共犯だったのか、不明である。

また、バラクリシュナンKおよびアショク・パンディを処分したという記述がない。調査せず、処分しなかったと思われる。

●6.【論文数と撤回論文】

2017年12月16日現在、パブメド(PubMed)で、アショク・パンディ(Ashok Pandey)の論文を「Ashok Pandey [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002-2017年の16年間の180論文がヒットした。とても多作である。

「Pandey A[Author]」で検索すると、1969-2017年の49年間の2548論文がヒットした。本記事で問題にしている研究者の論文ではない論文が多いと思われる。

2017年12月16日現在、「Pandey A[Author] AND retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、2論文が撤回されていた。

但し、不可解だが、本記事で問題にしている「1996年のApplied Microbiology and Biotechnology」論文は撤回されていない。2撤回論文を以下に示すが、本記事で問題にしている研究者の論文ではないと思われる。

  1. Small-molecule quinolinol inhibitor identified provides protection against BoNT/A in mice.
    Singh P, Singh MK, Chaudhary D, Chauhan V, Bharadwaj P, Pandey A, Upadhyay N, Dhaked RK.
    PLoS One. 2012;7(10):e47110. doi: 10.1371/journal.pone.0047110. Epub 2012 Oct 11. Retraction in: PLoS One. 2013;8(9). doi: 10.1371/annotation/049f74d0-919f-483c-a488-4740ec0a5f4d.
    PMID:23071727
  2. Isd11p protein activates the mitochondrial cysteine desulfurase Nfs1p protein.
    Pandey A, Yoon H, Lyver ER, Dancis A, Pain D.
    J Biol Chem. 2011 Nov 4;286(44):38242-52. doi: 10.1074/jbc.M111.288522. Epub 2011 Sep 9.
    Retraction in: J Biol Chem. 2012 Jun 22;287(26):22152.
    PMID:21908622

●7.【白楽の感想】

《1》詳細は不明

この事件の詳細は不明です。

バラクリシュナンKおよびアショク・パンディのどちらが盗用の実行犯だったのか、それとも共犯だったのか、不明である。盗用分析表が見つからない。「大幅な盗用」とあるが、盗用率を数値で示せない

そして、研究機関は調査しなかったようだ。なぜ調査しなかったのかわからない。

事例分析し、研究ネカトシステムの改善につながる点、学べる点は何か?

全くわかりません。

インドではネカト対処に大きな幅がある。今回の事件の対処は、いい加減なケースの典型である。

ブログでは、比較的、情報が得られる事件を解説しているが、実は、この事件のように、詳細が不明な事件はかなりある。

右がアショク・パンディ(Ashok Pandey)。http://ce2.ntust.edu.tw/files/14-1109-21284,r149-1.php?Lang=en

《2》当局の調査

ウィキペディア英語版(【主要情報源】①)の見出しには「アショク・パンディ教授の論争(Prof Ashok Pandey controversy)」とある。見出しから、アショク・パンディ(Ashok Pandey)が盗用したと思う。さらに、内容を普通に読むと(深読みしないと)、多くの人は、アショク・パンディ(Ashok Pandey)が盗用したと思う。

しかし、本記事で示したように、盗用論文は「1996年のApplied Microbiology and Biotechnology」論文で、著者はバラクリシュナンKとアショク・パンディの2人である。

上記《1》と関連するが、インドの国立学際科学技術研究所が調査していないので、2人は共犯なのかどちらか1人が盗用者なのか判定できない。

アショク・パンディは465報の原著論文/総説、16件の特許、54冊の著者、本の160章を執筆・出版している。他の論文・文書での盗用は指摘されていない。

一方、バラクリシュナンK も「Balakrishnan K[Author]」で論文を検索すると、376報がヒットした。本記事で問題にしているバラクリシュナンKの論文ではない論文がどれほど含まれるかはわからない。撤回論文を「Balakrishnan K[Author] AND retracted」で検索すると0報である

根拠は薄弱だが、「1996年のApplied Microbiology and Biotechnology」論文での盗用者は、アショク・パンディではなくバラクリシュナンKの単独犯だと白楽には思われる。

しかし、当局である国立学際科学技術研究所が「アショク・パンディはシロ」と判定しないと、インド国内でも世界でも判然としない。白楽が「アショク・パンディはシロだと思う」と表明しても、白楽の思いは印象でしかない。事実を調査したわけではない。

というわけで、実際は、インド国内でも世界でも、アショク・パンディがクロだと思われている。

アショク・パンディがシロと主張したいなら、身の潔白を証明してもらうにも、当局の調査は必須である。

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アショク・パンディ(Ashok Pandey)。https://www.ashokpandey.org/

●8.【主要情報源】

① ウィキペディア英語版:Scientific plagiarism in India – Wikipedia
② 2018年9月国際学会の案内。アショク・パンディ(Ashok Pandey)の業績:Biography Ashok Pandey – International Conference on Bioresource Technology for Bioenergy Bioproducts and Environmental Sustainability – Elsevier
③ アショク・パンディ(Ashok Pandey)のウェブサイト:Ashok Pandey
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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