企業:特許切れ医薬品(off-patent drugs、ジェネリック医薬品、generic drugs):ランバクシー・ラボラトリーズ社(Ranbaxy Laboratories)(インド)

2018年3月14日掲載。

ワンポイント:【長文注意】。ランバクシー・ラボラトリーズ社は、日本の第一三共の子会社で、インドで数十種類の特許切れ医薬品を生産し、米国で年間10億ドル(約1000億円)も販売していた。ところが、米国・食品医薬品局(FDA)に提出していた医薬品のすべての検査データがねつ造だったのだ。2004年、35歳の開発部員・ディネッシュ・タクール(Dinesh Thakur、博士号も医師免許もない男性)が上司の指示で社内のネカトを調査し、米国・食品医薬品局(FDA)に告発した。9年間という長い闘争の末、2013年5月13日、ランバクシー・ラボラトリーズ社は、政府に意図的に虚偽の陳述をし、不正行為を目的とした医薬品を販売し、医薬品の不備を報告しなかったことで、米国連邦の7件の罪を犯したと裁定された。ジェネリック医薬品会社に対して最も高額な罰金である5億ドル(約500億円)の罰金が科された。世界での金銭的被害者数は2千万人(一部は健康被害を受けた可能性もある)で、被害額は約2兆円。2014年4月、ランバクシー・ラボラトリーズ社はインドのサン・ファーマ社(Sun Pharma)に吸収合併され、2018年3月13日現在、存在していない。2013年5月、キャサリン・エバン(Katherine Eban)記者が事件の詳細を「Fortune」誌の記事で公表した。損害額の総額(推定)は約2兆550億円(当てずっぽう)。
この事件は、白楽指定の重要ネカト事件である:第一次追及者の情報量の豊富さ、メディアの取材力、透明性の高さ、インドの文化要因。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.日本語の解説
3.事件の経過と内容
4.白楽の感想
5.主要情報源
6.コメント
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●1.【概略】

http://www.india.com/business/sun-pharma-to-buy-ranbaxy-in-all-stock-deal-valued-at-usd-3-2-bn-35022/

1937年、ランバクシー・ラボラトリーズ社(Ranbaxy Laboratories)は、塩野義製薬の販売代理店としてシン兄弟(Ranbir SinghとGurbax Singh)が創立した。2人の名前の一部RanbirとGurbaxを組み合わせてランバクシー(Ranbaxy)という社名にした。

インドの特許切れ医薬品(off-patent drugs、ジェネリック医薬品、generic drugs)の製薬企業として、最も大きな企業に育った。

1961年に製薬会社として設立され、現在では8カ国に製造工場を有し、150カ国以上で販売されている、インド最大級の製薬会社に成長している。またジェネリック医薬品では世界トップ10に入っている。(ランバクシー・ラボラトリーズ – Wikipedia

ランバクシー・ラボラトリーズ社は、インドで数十種類の特許切れ医薬品を生産し、年間10億ドル(約1000億円)も米国で販売していた。

ところが、である。

2004年、35歳の開発部員・ディネッシュ・タクール(Dinesh Thakur、博士号も医師免許もない男性)が上司の指示で社内のネカトを調査すると、米国・食品医薬品局(FDA)に提出していた医薬品のすべての検査データがねつ造だったのである。

タクールの上司は、会社の重役会で問題点を指摘し改善を要求したが、否決された。上司は会社を去った。

タクールも辞職した。悩んだ末、家族と自分に身の危険が降りかかることを心配しつつも、米国に移住し、結局、米国・食品医薬品局(FDA)に告発した。

2008年、日本の第一三共の子会社になった。

2013年5月13日、9年間という長い闘争の末、米国の裁判所は、不正行為を目的とした医薬品を販売し、医薬品が仕様を満たしていないことを報告しなかったこと、政府に意図的に虚偽の陳述をしたことで、ランバクシー・ラボラトリーズ社が、米国連邦の定める7件の罪を犯したと裁定した。ジェネリック医薬品会社に対して最も高額な罰金である5億ドル(約500億円)の罰金も科した。

2014年4月、ランバクシー・ラボラトリーズ社はインドのインドのサン・ファーマ社(Sun Pharma、Sun Pharmaceutical、Sun Pharmaceutical Industries Limited)に吸収合併され、2018年3月13日現在、存在していない。サン・ファーマ社はこの吸収合併でジェネリック医薬品で世界5位になった。(サン・ファーマ – Wikipedia

ランバクシー・ラボラトリーズ社(Ranbaxy Laboratories)。写真出典

  • 国:インド
  • 集団名:ランバクシー・ラボラトリーズ社(ランバクシー・ラボラトリーズ、ランバクシー)
  • 集団名(英語):Ranbaxy Laboratories
  • ウェブサイト(英語):ない(2018年3月13日現在)
  • 集団の概要:1937年、塩野義製薬の販売代理店としてシン兄弟がランバクシー・ラボラトリーズ社(Ranbaxy Laboratories)を設立した。特許切れ医薬品(off-patent drugs、ジェネリック医薬品、generic drugs)の製薬企業として、インドで最大、世界でも10位に入る巨大な会社に育った。2008年、日本の第一三共の子会社になった。2013年には世界150か国に14,600人の従業員を抱え、2012年の売上高は1275億ルピー(約2 100億円)だった。しかし、2014年4月、インドのサン・ファーマ社(Sun Pharma)の買収され消滅した。
  • 事件の首謀者:会社の多数の幹部が組織ぐるみで不正を働いた。
  • 分野:製薬
  • 不正年:1961年の製薬会社設立から2004年の発覚まで(推定)
  • 発覚年:2004年
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は同社・開発部員のディネッシュ・タクール(Dinesh Thakur、博士号も医師免許もない男性)で、米国・食品医薬品局(FDA)に告発した
  • ステップ2(メディア):「Fortune」誌のキャサリン・エバン(Katherine Eban)記者。他の新聞など
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ): ①ランバクシー・ラボラトリーズ社。②米国・食品医薬品局。③米国の裁判所。
  • 不正:ねつ造
  • 不正数:数十種類の特許切れ医薬品の検査データ
  • 被害(者):直接の健康被害者数・死亡者数は不明。2012年の米国での売上高は約1000億円である。1人1万円ランバクシー・ラボラトリーズ社の医薬品を購入したとすると、100万人が薬効のない医薬品購入の金銭的被害を受けたと思われる(同時に、健康被害も受けた可能性もある)。10年間続いたとして、米国だけで被害者数は1千万人で、被害額は約1兆円。150か国で販売していたので、米国の2倍として、被害者数は2千万人で、被害額は約2兆円。
  • 損害額:総額(推定)は約2兆550億円(あてずっぽう)。①米国政府から5億ドル(約500億円)の罰金。②裁判費用などもろもろ50億円(あてずっぽう)。③世界での金銭的被害者数は2千万人(一部は健康被害を受けた可能性もある)で、被害額は約2兆円。
  • 結末:約500億円の罰金。他社に吸収合併
ランバクシー・ラボラトリーズ社で仕事中の科学者。Photo: Hindustan Times 写真出典http://www.livemint.com/Companies/dbVr7ollvSbWRsUxuO7x1J/Ranbaxy-in-surprise-Rs586-cr-Q2-loss-on-rupee-fall.html

●2.【日本語の解説】

日本語の解説は多数ある。それらを「修正」引用する。

★ウィキペディア日本語版:「ランバクシー・ラボラトリーズ」

出典 → ココ

概要

1937年、シン兄弟により塩野義製薬の販売代理店として始まる。1961年に製薬会社として設立され、現在では8カ国に製造工場を有し、150カ国以上で販売されている、インド最大級の製薬会社に成長している。またジェネリック医薬品では世界トップ10に入っている。1973年に株式が公開された。

第一三共による経営関与と品質問題

2008年、日本の第一三共が46億米ドルで買収。第一三共はこれにより、新興国及びジェネリック市場への足掛かりを狙っていた。

しかし、以前からランバクシーの工場における衛生管理問題がFDAから指摘されており、買収発表後の9月に対米輸出停止措置がなされた。FDAとは一度和解で同意したものの、2013年に再び禁輸措置を受けている。翌2014年には禁輸対象が拡大されたほか、試験結果の改竄行為が行われていた事がFDAの報告書で明らかになった。

2014年4月、第一三共はランバクシーを同業のサン・ファーマと合併させることを発表した。これにより第一三共は合併後のサン・ファーマ株約9%を取得する。

★2009年2月27日:「【FDA】印ランバクシー後発品をデータ改ざんで審査中止」、薬事日報ウェブサイト

出典 → ココ

米FDAは2009年2月25日(現地時間)、インドのランバクシーのパオンタ・サヒーブ工場で製造した後発医薬品の審査を停止すると発表した。FDAは昨年9月、ランバクシーの製造工程に深刻な欠陥があるとして、同社製品約30品目の一時輸入停止措置を行っていたが、新たに簡易承認申請に必要な安定性試験データの一部を改ざんしていたと判断。ランバクシーに対し、該当製品の承認再申請か承認取り下げを迫る事態に発展した。

FDAは昨年9月以来、ランバクシー製品の輸入停止措置を継続し、同社の製造工程に関する調査を行ってきた。その過程で、パオンタ・サヒーブ工場で製造された製品から、簡易承認申請に必要な安定性試験データの一部改ざんが新たに見つかった。

★2014年1月28日:ショーン・マクレーン(Sean McLain)、(日本語訳者不明)、「ランバクシー従業員、試験結果を改ざん=米FDA」、ウォール・ストリート・ジャーナル日本版

出典 → ココ

米食品医薬品局(FDA)査察官の報告書によると、インドの製薬大手ランバクシー・ラボラトリーズのパンジャブ州トアンサの工場の従業員は原料と原薬(API)の試験結果を繰り返し改ざんし、基準に満たなかったものを満たしたように見せかけた。

FDAの関係者は今月初めにインド北西部にあるトアンサ工場を査察し、従業員が「基準を満たす結果が得られるまで」繰り返し試験を行い、失敗した試験の結果を削除した複数の事例を発見した。

FDAは先週、ランバクシーのトアンサ工場で製……以下有料(白楽は閲覧していない)

★2016年6月12日:日本経済新聞 電子版、「タクール氏「利潤求める企業にも倫理は必要」」

出典 → ココ

インド後発薬大手ランバクシー・ラボラトリーズの医薬品製造におけるデータ改ざんを米食品医薬品局(FDA)に内部告発したディネッシュ・タクール氏(48)。告発はランバクシーのみならず、一大産業に成長したインド後発薬の品質管理に対し、先進国の規制当局が厳しい目を向ける端緒となった。インドに生まれながらキャリアは米国で磨いた同氏は舞い戻った母国で何をみたのか。…以下有料(白楽は閲覧していない)

●3.【事件の経過と内容】

キャサリン・エバン(Katherine Eban)記者。http://rhodesproject.com/katherine-eban-profile/

以下の文章は、キャサリン・エバン(Katherine Eban、写真上)記者の「Fortune」記事を取捨選択した。
→ 2013年5月15日のキャサリン・エバン(Katherine Eban)の「Fortune」記事:Dirty medicine | Fortune(保存版)

★ランバクシー・ラボラトリーズ社と米国の医薬品

2013年のジェネリック医薬品の世界市場は2,420億ドル(約24兆2千億円)である。

ランバクシー・ラボラトリーズ社(Ranbaxy Laboratories)は、1937年、日本の塩野義製薬の販売として発足し、2008年、第一三共の傘下になった。

世界150か国に14,600人の従業員がいた。

ジェネリック医薬品メーカーの外国企業として、米国では最初だっだ。

ランバクシー・ラボラトリーズ社の2012年の米国での売上高は10億ドル(約1000億円)で、世界での売上高は23億ドル(約2300億円)だった。2013年に世界第6位のジェネリック医薬品メーカーになるまで急成長した。

医療分野の大手調査会社である米国のアイエムエス・健康管理情報社(IMS Institute for Healthcare Informatics)によると、2012年、米国で消費する医薬品の84%は特許切れ医薬品(generic drugs)だった。

また、米国のすべての医薬品の有効成分の80%以上が海外から輸入されていた。完成した錠剤やカプセルの40%も海外から輸入されていた。

しかし、米国会計検査院(Government Accountability Office)の2009年の報告書によると、米国・食品医薬品局(FDA)は国内の製薬企業の40%は査察していたものの、外国の製薬企業の査察はわずか11%だった。

近年は、外国の査察%を国内と同じ数値にする努力をしているが、査察頻度が同じでも、検査内容は米国内と同じではない。

複雑なロジスティクスのために、外国企業の査察は、企業に事前に通知し、査察は1週間未満で済む。一方、国内企業の査察では、企業への事前通知はなく、査察は6週間もかける。つまり、外国企業の査察は、「おざなり」になっているということだ。

ランバクシー・ラボラトリーズ社(Ranbaxy Laboratories)はインドで生産した数十種類の医薬品を米国で販売していた。以下はその製品リストである。

ranbaxy-products

 

★ディネッシュ・タクール(Dinesh Thakur)とレイジンダー・クマール(Rajinder Kumar)

ディネッシュ・タクール(Dinesh Thakur)。http://www.livemint.com/Companies/JGXmKYuyQMLxhUcxx4sNEJ/Ranbaxy-example-of-rogue-firm-that-exploited-gaps-whistlebl.html

ディネッシュ・タクール(Dinesh Thakur、博士号も医師免許の取得していない)は、インドで生まれ育ち、米国の大学を卒業し(ここ推定)、米国のニュージャージー州の製薬会社・ブリストル・マイヤーズスクイブ社(Bristol-Myers Squibb)で10年間働いた。その時、米国に帰化し、米国市民になっていた。

2002年、かつての指導教員(インドの?)に誘われ、33歳のタクールは、妻と息子を連れて、インド最大の製薬会社でインドで最初の多国籍製薬企業であるランバクシー・ラボラトリーズ社(Ranbaxy Laboratories)に転職した。インドへの愛国心に動かされたのである。

上司である研究開発責任者のレイジンダー・クマール(Rajinder Kumar)は、タクールよりわずか2か月早く、大手製薬企業のグラクソ・スミスクライン社(GlaxoSmithKline)からランバクシー・ラボラトリーズ社(Ranbaxy Laboratories)に転職していた。クマール研究開発責任者はエレガントで背が高く、ハンサムで、研究公正観が高い人として尊敬されていた。タクールもクマールを尊敬していた。

レイジンダー・クマール(Rajinder Kumar)http://www.vitaspharma.com/management.html

2004年8月18日、その朝、タクールが上司クマールのオフィスに入ったとき、上司の顔色に驚いた。上司クマールはとても疲れた様子で、目はうつろで、不安におびえ、表情がひどく暗かったのだ。

上司クマールは、出張で南アフリカで政府規制当局に会っていた。前日帰国したばかりだった。南アフリカで問題が発生したのは明らかだった。

上司クマールは「大変なことになっている」と言って、世界保健機関(WHO:World Health Organization)からの手紙をタクールに見せた。

その手紙は、エイズ薬の臨床試験をするためにランバクシー・ラボラトリーズ社が雇ったインドの企業・ヴィンタ・ラボラトリーズ社(Vimta Laboratories)の査察結果を要約したものだった。 ランバクシー・ラボラトリーズ社がエイズ治療薬として南アフリカ政府に販売していた抗レトロウイルス薬(ARV)の査察結果が記載されていた。

タクールは手紙を読み進め、愕然とした。

世界保健機関が、ヴィンタ・ラボラトリーズ社の2人がデータねつ造・改ざんをしていると指摘したのだ。

ヴィンタ・ラボラトリーズ社の臨床試験データはねつ造・改ざんだったのである。例えば、別々の患者の試験結果は異なるのに、ゼロックス・コピーしたように全く同じだったのだ。

上司クマールは南アフリカからインドに戻る飛行機の中で、ランバクシー・ラボラトリーズ社の別の役員と話し合い、問題はヴィンタ・ラボラトリーズ社だけではない、また、抗レトロウイルス薬(ARV)だけでもないと判断した、とタクールに話した。

衝撃的な話を聞かされ、手紙を見せられ、タクールは呆然とし、上司クマールの話をまともに聞けなかった。タクールは、「どういうことなのですか?」と上司クマールに尋ねた。

上司クマールは、「この問題は深刻で根が深い」と述べ、タクールに、今の仕事を脇に置いて、この問題に至急・全力で調査し、対処するよう指示した。

つまり、会社のポートフォリオ(最終的には、すべての薬物、すべての市場、すべての生産ライン)を調査し、ランバクシー・ラボラトリーズ社の検査行為とその責任の所在を明らかにするよう指示したのである。

タクールは、呆然としたまま上司クマールのオフィスを後にした。

夕方、家に戻り、3歳の息子が前の芝生で遊んでいるのを見つけた。息子は昨年、重度の耳感染症を発症した。小児科医はランバクシー・ラボラトリーズ社の強力な抗生物質であるアモキシクラブ(Amoxiclav)を処方した。しかし、38.9度の熱が3日間も続きた。4日目、小児科医は処方箋をグラクソ・スミスクライン社製の抗生物質に変更した。 1日以内に、息子の熱は下がった。

タクールは、これまでずっとそのことを考えていなかったが、今日納得した。ランバクシー・ラボラトリーズ社の医薬品は効かないのだ。今後、ランバクシー・ラボラトリーズ社の医薬品を与えないようにと、妻に伝えた。

タクールは、その時、部下を60人に抱えていた。特に信頼できる部下を6人集め、精力的に調査を始めた。

調査10日後、タクールは、データねつ造している支社と国を特定し、上司クマールに中間報告した。上司クマールから、さらに調査するように指示された。

次の数か月のタクールの調査で、製薬会社の行為の中で最も壊滅的な事実が明らかになった。

https://economictimes.indiatimes.com/news/company/corporate-trends/ranbaxys-top-bosses-wanted-to-destroy-proof-dinesh-thakur/articleshow/20059753.cms

上司クマールは会社の重役会で調査結果をパワーポイントで説明した。

多くに製品の分析結果はねつ造されている。そのねつ造データに基づいた書類を規制当局に提出している。これらの医薬品は規制違反であるばかりでなく、患者の健康を害する可能性が高い。医薬品は市場から即刻回収すべきだと主張した。

この時点で重役会が事態を認識し、上司クマールの要請を受け入れていれば、上司クマールはランバクシー・ラボラトリーズ社を何とか立て直せると考えていた。しかし、重役会は上司クマールの主張を認めなかった。上司クマールはランバクシー・ラボラトリーズ社を辞めた。

2004年11月、タクールは、インドを離れ米国に渡り、半年ほど悩んだ末、米国・食品医薬品局(FDA)に告発にした。この告発で、ランバクシー・ラボラトリーズ社は米国・食品医薬品局(FDA)と数年にわたる闘争になり、司法省も乗り出し、最終的に解決に至るまで、ほぼ9年も要した。

【動画1】
CNBC テレビのインタビュー動画:「インドでは厳格な処方が必要です:ディネッシュ・タクール(INDIA NEEDS A STERN PRESCRIPTION: DINESH THAKUR) – YouTube」(英語)13分23秒。
CNBC-TV18が2016/04/30 に公開

★キャシー・スプリーン医師(Kathy Spreen)

キャシー・スプリーン医師(Kathy Spreen) https://www.pinterest.jp/pin/385761524308812789/

2004年5月、タクールがネカト疑惑の調査に着手する3か月前、キャシー・スプリーン医師(Kathy Spreen)は、ランバクシー・ラボラトリーズ社の米国事務所に、臨床医学および薬物動態担当執行取締役として入社した。

スプリーン医師は、ワイエス社(Wyeth)とアストラゼネカ社(AstraZeneca)で15年間、医薬品製品部門の立ち上げに働いた。既存の医薬品の新しい投薬量と処方を作成する仕事だった。

スプリーン医師はFDAの複雑な医薬品承認システムに精通していたので、ランバクシー・ラボラトリーズ社の医薬品をFDAに申請する手助けと監督のために採用された。

入社してしばらくは、同社の科学レベルはスプリーン医師の期待を上回っていたように思えた。数か月後、彼女は糖尿病薬メトホルミン(Metformin)のジェネリック医薬品であるリオメット(Riomet)の発売について発表用のスライドを準備していた。

血流中の薬物の濃度を示すランバクシー・ラボラトリーズ社のデータは、正規医薬品のデータと完全に一致するように見えた。 「この会社の科学は素晴らしい。ジェネリック医薬品の生物学的同等性のデータは、正規医薬品のデータに重ね合わせることができるほど正確である。ジェネリック医薬品の製造技術はとても高い」と、彼女は感動した。

約1か月後、にきび治療薬イソトレチノイン(Isotretinoin)のランバクシー・ラボラトリーズ社のジェネリック医薬品であるソトレット(Sotret)のデータも、正規医薬品のデータに重ね合わせることができることに気が付いた。

スプリーン医師はこの時初めて、何か異常なことが起こっているのではないかと不安に感じた。 「データが似すぎている。うそみたいに同じだ。これは、ヒョットすると、データをねつ造しているのではないか」と、彼女は感じた。

科学者なら誰でも、基本的に、データは扱いにくいものだということを知っている。同じ会社の同じ工場で、同じ条件で製造した同じ薬の2つのバッチでさえ、化学分析データにわずかな差があるのが普通である。

だから、異なる会社が異なる製法で作った模倣薬の化学分析データは、当然、正規医薬品のデータと異なっているハズだ。

疑念を抱いたスプリーン医師は、インドのランバクシー・ラボラトリーズ社の検査部署に試験結果をサポートする基礎データを送るように依頼した。

しかし、基礎データをなかなか送ってこない。

問い合わせると、彼らは「現在、用意しています。用意でき次第、送ります」と繰り返し約束した。しかし、結局、基礎データは到着しなかった。追及すると、彼らは、「データが”混乱”してしまいました」と言い訳をした。

スプリーン医師は、「トイレットペーパーの裏にデータが書かれていても気にしない。とにかく、私にデータに関する何かを送ってください」と懇願した。しかし、スプリーン医師の手元に基礎データが届くことは決してなかったのである。

米国でランバクシー・ラボラトリーズ社に勤務した6人の他のベテラン科学者たちは経験したことのないような企業文化にとても驚いたと、2010年にフォーチュン誌記者に伝えていた。

ランバクシー・ラボラトリーズ社の幹部たちは、ゲーム感覚で、米国の医薬品規制をだましていた。 彼らは、誰が最も巧みに規制当局を欺いたかを自慢していた。

2005年まで、ランバクシー・ラボラトリーズ社は患者安全部門(patient-safety department,)を持たず、患者からの苦情は箱の中に積み重なり、無視され、分類されなかった。患者からの苦情は米国・食品医薬品局(FDA)に報告する義務があるのだが、もちろん、報告されなかった。

スプリーン医師は、自分なら米国の規制をもっとはっきり説明できるかもしれないし、そうすれば、ランバクシー・ラボラトリーズ社の幹部は状況を理解するだろうと考えた。

しかし、どう説明しても、会社のビジネスを改善できなかった。

糖尿病薬の販売が不振だった時、ある幹部からスプリーン医師に医師免許を使って、社内の皆にその糖尿病薬を処方してくれないかと依頼された。もちろん、スプリーン医師は、依頼を拒否した。

スプリーン医師は、ランバクシー・ラボラトリーズ社のグローバル製造担当重役に、ニキビの抗菌性ゲルが製造品質管理基準(good manufacturing practices、GMP:米国・食品医薬品局(FDA)が定めた医薬品等の製造品質管理基準)を満たして製造されたことを示す文書を送るように頼んだ。

すると、グローバル製造担当重役は形式と紙質が「立派な証明書」を送ってきた。スプリーン医師には、偽造された証明書に見えた。

スプリーン医師は「証明書は見た目が立派だが、米国・食品医薬品局(FDA)が製造品質管理基準を満たす証明書ではなかった。見た目の立派さは私には何の意味もありません」。

2004年夏、レイジンダー・クマールがインドに旅行し、スプリーン医師がすでに抱いていた疑念が正しいことを、静かに、明白に確認した。ランバクシー・ラボラトリーズ社の多くの医薬品の検査データは実際には存在せず、規制当局への申請書を偽造していたことを、静かに、明白に確認したのである。。

スプリーン医師は、ランバクシー・ラボラトリーズ社の上級幹部を説得するのに1年間費やした。しかし、「倫理的であることの意味、患者を保護することの重要性について、会社の幹部は全く理解できないようでした」。結局、スプリーン医師は、2005年6月に退社した。

米国・議会で事件が問題視されると、多数のランバクシー・ラボラトリーズ社の幹部とともに、スプリーン医師は、証言のために米国・議会に召喚された。

★事件の次のステップ

2004‐2005年、ランバクシー・ラボラトリーズ社(Ranbaxy Laboratories)のインド人役員・ディネッシュ・タクール(Dinesh Thakur、36歳)がランバクシー・ラボラトリーズ社の薬物検査レポートがねつ造であると上司である研究開発部長のレイジンダー・クマール(Rajinder Kumar)に伝え、2人で会社を改革しようとした。

しかし、上司クマールは辞職した。結局、タクール1人が会社を告発する形になった。

タクールのオフィスのコンピュータはすぐに意図的な不正操作が加えられた。ランバクシー・ラボラトリーズ社の内部監査で、タクールはオフィスのコンピュータでポルノを閲覧していたと非難され、会社を辞めざるを得なくなった。

タクールはインドを去り米国に渡り、米国・食品医薬品局(FDA)にコンタクトした。

米国・食品医薬品局(FDA)はタクールの主張を受け入れ、調査を開始した。

2007年に米国・食品医薬品局(FDA)に提出したタクールのマル秘の告発ファイルは、米国・食品医薬品局の承認を得るためにどのようにデータねつ造・改ざんしたのかを示していた。

2008年9月16日、米国・食品医薬品局(FDA)は、ランバクシー・ラボラトリーズ社に2通の警告書を発行した。同時に、インドの2つの製造工場で製造されたジェネリック医薬品の輸入警告書(Import Alert)を発行した。
→ 2008年9月16日の米国・食品医薬品局(FDA)プレスリリース:2008 > FDA Issues Warning Letters to Ranbaxy Laboratories Ltd., and an Import Alert for Drugs from Two Ranbaxy Plants in India

【動画2】
ニュース動画:「医薬品企業の巨人・ランバクシーのネカトと不正を話す医者(Doctor tells of fraud and dishonesty at drug giant Ranbaxy – YouTube)」(英語)3分20秒。
USNews001 が2013/11/10 に公開

★裁判

2013年5月13日、ランバクシー・ラボラトリーズ社は、不正行為を目的とした医薬品を販売し、医薬品が仕様を満たしていないことを報告しなかったこと、政府に意図的に虚偽の陳述をしたことで、米国連邦の定める7件の罪を犯したと裁定された。

ランバクシー・ラボラトリーズ社は、5億ドル(約500億円)の罰金を支払うことに同意した。この額はジェネリック医薬品会社に対して最も高額な罰金だった。
→ 2013年5月13日の米国司法省のプレスリリース:Generic Drug Manufacturer Ranbaxy Pleads Guilty and Agrees to Pay $500 Million to Resolve False Claims Allegations, cGMP Violations and False Statements to the FDA | OPA | Department of Justice

事件解決に重要な役割を果たしたことで、連邦告発法(federal whistleblower law)に基づき、タクールに4800万ドル(約48億円)以上の報酬が与えられた。

出典:ジェナー& ブロック レポートThe Jenner & Block Report、May / June 2013 https://jenner.com/system/assets/updates/1234/original/The_Jenner_Block_Report_-_Japanese_-_May_June_2013.pdf?1370537792
https://economictimes.indiatimes.com/industry/healthcare/biotech/pharmaceuticals/ranbaxy-whistleblower-dinesh-thakur-may-set-up-patient-advocacy-group/articleshow/50990731.cms
2013.05.13-Criminal-Information

 

★ディネッシュ・タクール(Dinesh Thakur)のインタビュー

2014年に「Fraud Magazine」誌は、ディック・カロッツァ(Dick Carozza)記者がタクールにインタビューした記事を出版した。
→ 2014年7・8月号のディック・カロッツァ(Dick Carozza)の「Fraud Magazine」記事:Fighting a culture of fraud

―――
質問:ランバクシー・ラボラトリーズ社は、どのように医薬品の文書化を行なったのか?

タクールの回答:ジェネリック医薬品の開発プロセスは、大きく4つのステップに分けられます。

第1に、まず、ラボで錠剤、注射液、懸濁液などの製剤を開発し、それが意図したとおりに機能することを確認します。

第2に、臨床の場でこの処方物を患者に投与し、患者の病気の改善に機能することを証明する。

第3に、処方薬がどれだけ長く安定するか、すなわち有効期間を決定する試験を行ない、有効期間を確立する。

第4に、最後ですが、製造プロセスをスケールアップし、ラボで行なったことを商業規模で複製できることを確認します。

私の調査では、上記の4つのステップのすべてで、会社は作業を端折っていました。製品を市場に出す前にテストしたことはなく、患者の病気に有効であるという証明は、病院でのデータをねつ造していました。
―――
質問:上司クマールが取締役会に出席し、辞任してから3か月後、ランバクシー・ラボラトリーズ社の内部監査員は、10週間にわたりあなたの部門の監査を実施した。同社はあなたのオフィスのコンピュータからポルノサイトの閲覧を見つけたと非難した。その時、あなたは、どのように反応しましたか?

タクールの回答:上司クマールが会社を去った後、私は自分を守る方法がありませんでした。ランバクシー・ラボラトリーズ社は、データを掘り起こしていたのは私であることを知っていました。クマール博士が経営陣に問題を提示した内容の一部でしたから当然です。だから、会社が私に内部監査員を派遣したことには驚きませんでした。

彼らは、財務、人事、調達、プロジェクトの実施など、すべてを監査しました。その当時約60人でした私のグループの多くの人にインタビューしました。そして、企業の情報技術を使って、私が担当していた研究開発部のサーバーを調べ上げたのです。

当初、私は彼らの行為を訴え、怒っていましたが、私はすぐに、証拠を見つけてそれを示すことが最善策だと思い始めました。研究開発 のネットワーク管理者、プロキシサーバーのインターネットプロトコルのテーブルを参照し、内部監査員がどのように証拠を植えつけたかを確認しました。

DNSサーバー(インターネットが動作するWebサイトのIPアドレスを解決するコンピュータ)に出入りするすべてのトラフィックのトレイルがあり、それらをIPテーブルに記録します。私は、研究開発部に属していないIPアドレスを見つけました。

ポルノのWebサイトにリンクされていたIPアドレスは、研究開発部のものではありませんでした。IPテーブル内の特定の行に内部監査員が挿入したのだと思われます。タイムスタンプも矛盾していました。これらが、私が必要とした証拠でした。

私は反証できない証拠を得たのですが、それを私のマネージャーに示し、辞職しました。
―――
質問:辞任した後、米国・食品医薬品局(FDA)やその他の規制当局にどのようにアプローチしたのですか?

タクールの回答:辞任してから米国・食品医薬品局(FDA)にコンタクトするのに約6か月がかかりました。実際に何が起こるのか分からなかったので、コンタクトを取るのはとても不安でした。 インドでは告発者に対する恐ろしい報復の歴史があります。 不正行為を告発した人が殺された歴史があります。

米国・食品医薬品局(FDA)に報告するのは、本当に私の責任なのかどうか、数か月間自分自身と議論し続けました。そして、やっと、そうすることが正しいと思うに至りました。 私は、自分が知ったことに目をつぶった自分自身と一緒に暮らすことができませんでした。

米国・食品医薬品局(FDA)、米国・国際開発庁(USAID)。 英国の医薬品・医療製品規制庁(Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency、MHRA)、 WHO、ブラジルのブラジル国家衛生監督庁(Agência Nacional de Vigilância Sanitária、ANVISA)の多くの人々にメールしました。自分の身元を隠すために特別に作成したYahooアカウントを使いました。
―――
質問:匿名のYahooアカウントでどのように電子メールを規制当局に送ったのですか?

タクールの回答:当時、私は失業しており、インドでは雇用の見通しがありませんでした。私がやろうとしていることをランバクシー・ラボラトリーズ社が知れば、私と私の家族に何が起こるかわかりません。米国と違って、インドの法制度は腐敗に敏感です。

したがって、私はYahooアカウントを仮名で作成しました。私はこの電子メールアドレスを使用して、多くの国の規制当局に8年以上対応してきました。この事件に関連する米国政府とのすべての連絡は、Yahooアカウントの最初の頭文字「M」という仮名で対応しました。
―――
質問:米国・食品医薬品局(FDA)とのコンタクトとその後の調査について説明できますか?

レスター・クロフォード長官(Lester Crawford)http://www.nbcnews.com/id/9455426/ns/health-health_care/t/embattled-fda-chief-lester-crawford-resigns/

タクールの回答:当初私の身元を隠すために、規制当局に書いた文書では、意図的におかしな文法や構文を使いました。

私は、自分が調査する立場なら知りたいと思うことを、なるべくたくさん、食品医薬品局に伝えました。ところが、数週間は何の返事もありませんでした。

それで、私は、食品医薬品局のレスター・クロフォード長官(Lester Crawford)に手紙を書きました。すると、まもなく、食品医薬品局のコンプライアンス責任者から追加情報を求めるメールが送られてきました。

私のケースは、FDA刑事調査部(FDA Office of Criminal Investigations)のエージェントが担当になりました。担当の女性は有能な人で、この事件の全体的な調査にとても役立ちました。

彼女は、8年間の調査の間、米国政府のすべての利害関係者を集めた接着剤でした。彼女の勤勉さ、永続性、忍耐、集中力がなければ、ランバクシー・ラボラトリーズ社事件は、今日のように明らかになっていなかったと断言できます。彼女は模範的な公務員であり、ランバクシー・ラボラトリーズ社事件で被害を被った世界中の患者さんは、彼女のリーダーシップに対して感謝してください。

●4.【白楽の感想】

《1》ヒドイ、暗澹

ランバクシー・ラボラトリーズ社の幹部たちは、ゲーム感覚で、米国の医薬品規制をだましていた。誰が最も巧みに規制当局を欺いたかを自慢していた。

こう明確に書いてあると、インドはヒドイ。インドの研究文化にあきれる。

この事件が描いているインド企業の研究公正の感覚は、米国のネカト事件を分析することでネカトを抑止する方法を学ぶという感覚ではやっていけない。ネカト者や製薬業界にネカトを指摘し改善しようと相談するレベルには程遠い。

防ぐ方法は、ネカトを犯罪とみなし処罰していくことしかない。

標語:「ネカト者に刑事罰と罰金を!」。

実際、ランバクシー・ラボラトリーズ社に巨額の罰金が科された。

しかし、インドの出来事と笑って居られるだろうか?

最近の日本の政治家、高級官僚、財界人の偉い人たちは、高潔、公正、誠実などの精神性が大きく劣化している。日本はいつからこうなってしまったのか? 昔からだったのか? 立場として、日本国民が快適で豊かな人生を送れるよう尽力すべき人たちが、自分の目先の金銭的利益を最優先にし、日本という国をダメにしている。

国は平気でねつ造・改ざんをする。

  • 2018年3月:森友学園書類改ざん。財務省
  • 2018年2月:裁量労働制データねつ造。厚生労働省
  • 2017年7月:南スーダンの「国連平和活動(PKO)」の報告の隠蔽。稲田朋美防衛相

《2》対処は4ステップ

白楽は、研究ネカトの対処は4ステップだと考えている。
→ 1‐5‐3.研究ネカト事件対処の4ステップ説 | 研究倫理(ネカト)

  1. ステップ1「第一次追及者」・・・最初の追及者が必要だ。 → 今回:開発部員のディネッシュ・タクール(Dinesh Thakur、博士号も医師免許もない男性)
  2. ステップ2「マスメディア」・・・第一次追及者の声を社会全体に知らせるのは新聞、テレビ、雑誌のマスメディア → 今回:「Fortune」誌のキャサリン・エバン(Katherine Eban)記者
  3. ステップ3「当局(オーソリティ)」・・・大学・研究所、編集局(論文撤回)、研究公正局、検察、裁判所 → 今回:①米国・食品医薬品局(FDA)、②米国・裁判所
  4. ステップ4「後始末」・・・事件の分析・解説、研究ネカトの教育・研修、法律の制定・改正、制度の見直し → 今回:

研究ネカトは、一次追及者がいないとまるで動かない。そして、メディアもとても重要である。

日本は上記4ステップのどれをとっても弱体だが、特に、第一次追及者の重要性がまるで理解されていない。そして、メディアの機能もとても弱い。

何とかならないだろうか?

《3》告発奨励策

タクールの告発は命がけだった。

そして、連邦告発法(federal whistleblower law)に基づき、タクールに4800万ドル(約48億円)以上の報酬が与えられた。

この額もすごいね。日本もこのような告発奨励制度を導入したらどうなんでしょう。

《4》日本のお粗末な海外戦略

事件が起こった時、ランバクシー・ラボラトリーズ社は日本の第一三共の子会社だった。

2008年6月11日にインド大手の製薬会社ランバクシー・ラボラトリーズ社の買収を発表。同年10月20日に連結子会社としたが、2015年3月24日にサン・ファーマ社がランバクシー・ラボラトリーズ社を吸収合併[2]。合併後もサン・ファーマ社の株式を保有していたが、同年4月21日に保有していた全株式を売却した[3]。これにより、連結子会社ではなくなったものの、今後も業務提携は継続される予定である。(第一三共 – Wikipedia

第一三共はランバクシー・ラボラトリーズ社を買収して、事件を引き寄せた。ろくな目に合っていない。どうしてこんなインチキ会社を買収したんだろう。インドの文化風土を理解していないのか。

東芝も海外戦略で失敗している。

高校の先輩である大前研一が2017年4月3日に東芝の失敗について書いている。

これは経営能力もないのにキャッシュだけは持っている日本企業が陥りやすい世界化の罠の典型的なパターンである。「ウェスチングハウス(WH)」のような海外の名門企業を買って子会社化したのはいいが、自分たちで経営し切れず、子会社幹部にいいように振り回されて最後には不正会計やパワハラが発覚、突如として巨額損失が表面化するのだ(東芝を沈めた原発事業「大誤算」の責任 | プレジデントオンライン | PRESIDENT Online)。

日本の企業はどこもかしこも、どうしてこんな無能な海外戦略をするのだろう。簡単に騙されている。

(注:写真は本文とは関係ありません)。サリーを着て実験している。2008年。白楽撮影。
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●5.【主要情報源】

① ウィキペディア英語版:Ranbaxy Laboratories – Wikipedia
② ウィキペディア日本語版:ランバクシー・ラボラトリーズ – Wikipedia
③ 2009年2月25日、食品医薬品局(FDA)のプレスリリース:2009 > FDA Takes New Regulatory Action Against Ranbaxy’s Paonta Sahib Plant in India 、(保存済)
④ 2013年5月23日のヴィドヤ・クリシュナン(Vidya Krishnan)の「Livemint」記事:Ranbaxy example of rogue firm that exploited gaps: whistleblower – Livemint
⑤ ◎2013年5月15日のキャサリン・エバン(Katherine Eban)の「Fortune」記事:Dirty medicine | Fortune(保存版)
⑥ ◎2014年7・8月号のディック・カロッツァ(Dick Carozza)の「Fraud Magazine」記事:Fighting a culture of fraud(保存版)
⑦ 米国・食品医薬品局(FDA)のランバクシー・ラボラトリーズ社(Ranbaxy Laboratories)への規制行為:Enforcement Activities by FDA > Regulatory Action Against Ranbaxy
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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