7-48 学術界のイジメと戦う

2020年3月19日掲載 

白楽の意図:日本と世界の研究界はアカハラ問題への理解・対策が不十分である。アカハラ問題を理解する一環で読んだ論文を紹介する。今回は、マリア・スチュワート(Maria Shine Stewart)の「学術界のイジメと戦う」という「2018年8月のInside Higher Ed」論文を紹介しよう。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.論文概要
2.書誌情報と著者
3.日本語の予備解説
4.論文内容
5.関連情報
6.白楽の感想
8.コメント
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【注意】「論文を読んで」は、全文翻訳ではありません。ポイントのみの紹介で、白楽の色に染め直してあります。

●1.【論文概要】

論文に概要がないので、省略。

本論文は学術論文ではなくウェブ記事である。本ブログの統一的な分類名にするため論文と書いた。

●2.【書誌情報と著者】

★書誌情報

★著者

  • 単著:マリア・スチュワート(Maria Shine Stewart)
  • 紹介:Maria Shine Stewart | ChronicleVitae
  • 写真:https://www.insidehighered.com/users/maria-shine-stewart
  • ORCID iD:
  • 履歴:Maria Shine Stewart | ChronicleVitae
  • 国:米国
  • 生年月日:米国。現在の年齢:60 歳?
  • 学歴:1985年に米国オハイオ州のジョン・キャロル大学(John Carroll University)で英語学の修士号、2013年に同大学でカウンセリングの修士号取得
  • 分野:カウンセリング
  • 論文出版時の所属・地位:執筆教師、カウンセラー(teaches writing and a licensed professional counselor)

【動画1】
「マリア・シャイン・スチュワート」と発音している。
自己紹介動画:「Shine Brighter Counseling – YouTube」(英語)3分38秒。
Maria Shine Stewartが2014/07/19に公開

インサイド・ハイヤー・エド社のオフィス(Inside Higher Ed Office、1150 Connecticut Avenue NW Suite 400 • Washington, DC 20036、米国)。写真出典

●3.【日本語の予備解説】

なし

●4.【論文内容】

本論文は学術論文ではなくウェブ記事である。本ブログの統一的な分類名にするため論文とした。

方法論の記述はなく、いきなり、本文から入る。

本記事では、「アカハラ」を「イジメ」という言葉にした

ーーー論文の本文は以下から開始

《1》序論 

「イジメ」は強い反応を呼び起こす言葉です。そして、それに対して、強い、しかし、矛盾した以下のような言葉がアドバイスとして言われる。

「逃げるな!」
「無視しろ!」
「強くなれ! イジメっ子は弱い者をイジメるんだ」
そして、
「あなたの同意なしに、誰もあなたに劣等感を抱かせることはできない」

最後の言葉はエレノア・ルーズベルト大統領夫人の言葉である(訳の出典:エレノア・ルーズベルト名言まとめ(日本語、英語) – e-StoryPost)。

もしあなたが、学術界を含めた職場で実際にイジメが起こっているのを疑うなら、「職場イジメ問題研究所( Workplace Bullying Institute)」を設立したゲリー・ナミエとルース・ナミエ(Gary and Ruth Namie)の活動を調べてください。 → 2009年12月16日記事:アメリカが世界にばら撒く“職場いじめ”の恐るべきメカニズム | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン

《2》「イジメ」加害者のタイプ 

私自身が学術界で過ごした時の経験から、学術界での「イジメ」加害者を8つのタイプに分類し、以下に示す。

それぞれの「イジメ」加害者は、イジメをランダムにするのか、断続的にするのか、慢性的にするのか、わからない。また、徐々に、イジメの方法を巧みにしていくのか、イジメの度合いを増やしていくのか、あるいは状況に適応していくのかも、わからない。

他の人がさまざまな職場での「イジメ」を分類しているのをインターネットで見ると、「イジメ」加害者の分類がとてもよく似ていることに驚く。

  1. 叫ぶ人
    このタイプの人は、大学での「イジメ」加害者の定番です。叫んで脅かし相手をイジメる人です。長い間そのやり方でイジメてきた可能性があります。大声を出すので、このイジメ加害者は大学内ではよく知られた人物になります。
  2. 非難する人
    私たちは皆間違いを犯しますが、非難する人はその間違いを決して忘れさせないのです。この人は、あなたが精神的に弱い時に、あなたに間違いを指摘します。非難する人に非難されても自分を責めないようにしてください。非難する人でかつナルシストだとイジメ度合いが強くなります。
  3. 否定論者
    否定論者は、重要なプロジェクトや新しいアイデアに対して、なにかとイチャモンを付け、他人の不幸を喜ぶ人です。
  4. ナルシスト
    ナルシストは自分自身に恋しているので、他人からの批判・賞賛を気にしないで、相手をイジメます。暴君でナルシストだとイジメ度合いが強くなります。
  5. 暴君
    あなたが大学で暴君に遭遇していた場合、あなたはすでに大学を去っているでしょう。共同で作業することを嫌がり、要求が気難しく、ひどいコメントをします。幼稚園で学ぶはずの人間としてモラルを習得できなかった人です。
  6. 二つの顔を持つ人
    二つの顔をもつことは生涯を通しての欠陥です。このタイプがあなたの大学・研究室で力を振るう場合、あなたはすべての方向を見なければなりません。
  7. 特大自我の人
    フロイトの超自我と混同しないでください。特大自我の人は学術界のすべては自分に仕えていると信じている人です。特大自我の人は、大学入学したばかりの新入生から学長室まで、どこにでもいます。普通の自我は健康的ですが、特大自我は他の人のニーズを無視するまったく別物です。
  8. 噂話者
    噂話やゴシップに強い毒性があることを過小評価しないでください。

私の分類は不完全なのは承知ですが、イジメ加害者に共通するのは、謙虚さの欠如です。社会的知性や感情的知性の欠如もイジメ加害者に共通しています。

私の経験では、ほとんどのイジメ犠牲者はイジメられている事実に蓋をし、何が起こっているのかを直視しません。イジメられている状況をコントロールできなくなると、イジメ犠牲者は現実に失望し、健康を損ない、最悪の場合、キャリア(学業や職業)を失うことになります。

https://shine-brighter.business.site/posts/8263879158684986911

《3》アドバイス 

学術界でのイジメに遭遇した人には、深く考えたアドバイスをすべきです。そして、そのアドバイスはなるべく抽象化すべきです。

イジメは被害者が悪いためにイジメられたのではありません。イジメが発生する状況がおかしいのであって、被害者が自責の念に駆られる事態を避けるべきです。

アドバイスと並行して、イジメ被害者への、セルフケア、友情、熟練したヘルパー、自信を取り戻すチャンス、これらをグループで絶え間なく、優しく続けることです。なお、並行して特定の感情状態を診断することを勧めます。

私自身がイジメられた苦しい経験を通して、そして他人が学術界でイジメられた経験を聞くにつれ、学術界で生きていくことを決めたなら、イジメ被害にあった場合、現在の大学、そして、場合によっては専攻を変えることを考えた方がいいです。そうすることで、私は、結局は、新しい人生が得られることを学びました。モチロン、それでも、別のイジメっ子に遭遇して再び人生の方向を変えなければならないことが起こるかもしれません。

しかし、もしあなたが今イジメに苦しんでいるなら、単に現在の大学をやめてしまい、高等教育を受けるのを断念しないでください。当時、私が大学を変える前に、以下のことを知っていたら、その後の私の人生が違っていただろうと思います。

  • 予想に反しているかもしれないが、イジメを想像しないこと。
  • イジメの状況は変えられない。それで、自分のために、可能な限り、他人に協力や助けを求める。
  • 薬物、アルコール、衝動的な行動をとらない。それらの救済は一時的でしかなく、長期的には、イジメ問題の上にさらに別の問題を重ねることになる。
  • 周囲の誰かが自動的に助けてくれるという無駄な空想を抱かない。学術界で問題が発生すると、周囲の人々は逃げていきます。
  • 加害者はおそらく変わらない。加害者のイジメは性格に由来していて、長い間、彼らの習慣・趣味となっている。

「イジメ」加害者には多くのタイプがあるが、私立・国公立、短大および4年制大学、都心・地方の大学を問わず、人生の重要な場所に出現する。

私のイジメ対処は、クラウディア・ランプマン(Claudia Lampman)などの論文を精査することで習得しました。私は5年前にデイヴィッド・ヤマダ(David Yamada)の活動を見つけ、イジメが精神医学の専門家の間で起こっていることに驚きました。そして、ダン・オルウェス(Dan Olweus)の活動は、私の子供が学校で嫌がらせを受けたとき、役に立ちました。

もちろん、所属する大学や研究室を去らなければならないほど、その環境・文化が有毒な場合もあります。有毒で敵対的な状況下で忍耐すると、身体的または感情的な健康を損ない、結局、その大学や研究室を立ち去ることになる。

しかし、イジメ被害を大学に申し立てることや裁判所で訴訟を起こす以外に、イジメの状況を改善・修正する方法があるのだろう。大学や研究室の文化・雰囲気の精査し、改善することで、イジメっ子の力を減らすのに役立つのではないか。

しかし、おそらくあなたは、まだ懐疑的でしょう。あなたの大学ではイジメはないと思っているでしょう。

大学のウェブサイト、学生募集の大学案内、学生・教職員向けんの大学マニュアル、院生・教職員向けの募集広告に描かれているキャンパス・ライフではイジメが起こっていることを匂わせる記事はありません。それが正しいことを願っていますが、実際のキャンパス・ライフでは、イジメが至るところでアナタを待ち受けています。

●5.【関連情報】

① 論文で一言触れていたクラウディア・ランプマン(Claudia Lampman)の「2008年」論文:Start Talking Handbook :: Difficult Dialogues :: University of Alaska, Anchorage

  • 論文名:Essay – Contrapower Harrassment On Campus: Incidence, Consequences, Implications
    日本語訳:エッセイ:キャンパスでのコントラパワー・ハラスメント:発生率、結果、意味
  • 著者:クラウディア・ランプマン(Claudia Lampman、写真出典)。アラスカ大学アンカレジ校(University of Alaska Anchorage)・心理学・教授
  • 掲載誌・巻・ページ:In K. Landis (Ed.) Start Talking: A Handbook for Engaging Difficult Dialogues in Higher Education
  • 発行年月日:2008年
  • 引用方法:Lampman, C. (2008). Contrapower Harassment on Campus: Incidence, Consequences, Implications. In K. Landis (Ed.) Start Talking: A Handbook for Engaging Difficult Dialogues in Higher Education. Published in partnership by the University of Alaska Anchorage and Alaska Pacific University.
  • DOI:
  • ウェブ:https://web.archive.org/web/20190325102835/http://www.difficultdialoguesuaa.org/handbook/content/essay_contrapower_harrassment_on_campus_incidence_consequences_implications
  • PDF:

●6.【白楽の感想】

《1》論文 

論文は、著者を知らない場合(本ブログではこのケースが多い)、タイトルや導入から「役立ちそう」「面白そう」と判断して読むのだが、読んだ後でなければ、論文内容を評価できない。そして、本論文を読んだ後の評価は・・・、はい、あまり有益な論文ではなかったなあ、という感想です。

毒ラボの研究室でアカハラに悩んでいる院生・ポスドクにとって、本論文を読んでも、アカハラを対処するノウハウを得られないだろう。

指導教授からのアカハラを感じたら、そもそも、「イジメと戦う」意味はない。毒ラボから逃げ出し、別の研究室や別の進路を選ぶべきだ。

もっと重要なことは、研究室に入る前、つまり、研究室を選ぶ時、毒ラボを排除することだ。ここを優先的な選択要因とすべきなのだ。毒ラボでないと判定できれば、研究分野、指導教授の人柄、就職に有利など、自分にとって重要な因子で選べばよい。

《2》アカハラ問題 

アカハラ問題は、深い。イジメは生物の本能に基づいている生存競争の1つで、その制御をどうするか?

つまり、人間社会でイジメはなくならないし、研究界でアカハラはなくならない。

多分、アカハラ研究者は平均以上に優れた研究成果を出している。

となると、学術界で、乱暴にアカハラ研究者を排除すれば、「角を矯めて牛を殺す」ことになる。それも、特上の牛を。

人間は怠け者である。自分が成長するには強いリーダーに率いられたい。強いリーダーにハードワークで応えたい。強いリーダーの厳しい言動を刺激・激励・正しい指導と受け取りたい。しかし、厳しい言動=アカハラである。研究者はこの矛盾した状況をどう管理する・できるのか?

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、日本に飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

●8.【コメント】

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