3‐2‐1 アカハラの規則・言動例

2020年4月18日掲載 

ワンポイント:【長文注意】。アカハラ (アカデミック・ハラスメント)は和製英語「Academic Harassment」で、対応する英語は「Bullying in Academia」や「Bullying in Higher Education」、または単に「Bullying」「Mobbing」である。本ブログでは、アカハラを学術界・高等教育界・研究界でのすべての「イジメ」「嫌がらせ」言動(ただし、性不正と犯罪はそちらで扱う)と定義する。キャンパス・ハラスメント、パワハラ(パワーハラスメント)、モラハラ、マタハラ、コクハラ(告発ハラスメント)、人種差別、もアカハラに含める。日本、米国、英国の事情を調べた。

【追記】
・2020年9月12日記事: アカデミック・ハラスメント-調査要請の放置はどの程度で違法になるのか? – 弁護士 師子角允彬のブログ
・ 2020年9月13日記事:アカデミック・ハラスメント-指導担当教員の変更、学位論文審査委員からの除斥の権利性 – 弁護士 師子角允彬のブログ

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.用語(日本語と英語)
2.アカハラ規則・言動例:日本
《1》日本政府のアカハラに関する法律
《2》大学のアカハラ規則・言動例
《3》民間のアカハラ言動例
3.アカハラ規則・言動例:世界
4.アカハラ規則・言動例:米国
《1》米国政府のアカハラに関する法律
《2》研究助成機関のアカハラ規則・言動例
《3》全米科学アカデミー(NASEM)のアカハラ規則・言動例
《4》学術団体のアカハラ規則・言動例
《5》大学のアカハラ規則・言動例
5.アカハラ規則・言動例:英国
《1》英国政府のアカハラに関する法律
《2》研究助成機関のアカハラ規則・言動例
《3》大学のアカハラ規則・言動例
6.白楽の感想
7.白楽の手紙
8.コメント
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●1.【用語(日本語と英語)】

★アカハラの定義

本ブログでは、アカハラを学術界・高等教育界・研究界でのすべての「イジメ」「嫌がらせ」言動(ただし、性不正と犯罪はそちらで扱う)と定義する。画像(利用無料)出典

一般的に「イジメ」「嫌がらせ」という用語は、性的な「イジメ」「嫌がらせ」や犯罪行為を含む。しかし、本ブログでは、性不正と犯罪行為はそちらで扱うので、アカハラには性的な「イジメ」「嫌がらせ」や犯罪行為を含めない。

モチロン、1つの事件で「アカハラ」と「セクハラ」(「性不正」の1つ)や犯罪行為の複数が該当する場合もある。その時は、主力の行為で区分けする。優先順位は、原則として、犯罪行為>性的な「イジメ」「嫌がらせ」>アカハラであるが、アカハラの枠で扱った事件が犯罪行為に該当する場合もある。つまり、分類は厳密ではない。「アカハラ・セクハラ」と併記する場合もある。

本ブログのアカハラには、言葉と概念として、キャンパス・ハラスメント、パワハラ(パワーハラスメント)、モラハラ、マタハラ、コクハラ(告発ハラスメント)、人種差別、も含める。

ただ、学術界・高等教育界・研究界で行なわれた行為でなければ、アカハラとしない。例えば、大学教授が、街のレストランで外国人ウェイトレスに人種差別的発言をしても、アカハラとしない。

★アカハラの英語

アカハラ (アカデミック・ハラスメント)は和製英語「Academic Harassment」である。

対応する英語を英語版ウィキペディアで探ると、「Workplace bullying in academia」、「 Bullying in academia」、「Bullying in higher education」、「Bullying of students in higher education」が該当する。

アカハラの英語について、以下に詳しい説明がある。改変引用する。 → 出典:2017年9月12日の「有元美津世のGet Global!」記事:和製英語に気をつけよう(37)ー パワハラ – 外資・海外転職に役立つ情報満載!<グローバル転職NAVI>、(保存版

「パワハラ」「モラハラ」「マタハラ」に対して、英語でPower Harassment, Moral Harassment, Maternity Harassmentといった表現は、一般的に使われません。

「パワーハラスメント」という言葉を生み出したのは日本のコンサルティング会社であり、英語ではAbuse of Authority(権限の乱用)、Workplace Bullying(職場でのいじめ)などと表現されます。

「モラハラ」は英語では、上記のWorkplace Bullying以外に、Psychological Abuse at Work/in the Workplace(職場での精神的虐待)、Mental Harassment(精神的ハラスメント)、Verbal Harassment(言葉によるハラスメント)を使うこともできます。

それ以外にMobbingがあります。MobbingはBullyingの酷いもので、元々、動物が群れを成して天敵を襲う行為を指し、それから転じて「集団で一人を虐める」という意味で使われます。直接的な虐めだけでなく、虐めの対象となる社員に関し悪い噂を広めたり、皆でシカトしたりといった行動も含まれます。部下が集団で上司をターゲットにする場合もあります。

妊婦・出産に対するハラスメント「マタハラ」は、英語ではPregnancy Discrimination。

日本語では、ハラスメントの内容によって、それぞれ呼称が違いますが、英語では、Sexual Harassment以外は、総してWorkplace Harassment, Harassment at Work/ in the Workplace(職場でのハラスメント)などが使われます。

「アカハラ」Academic Harassmentも主に日本で使われますが、海外でも一部使われ、Academic Harassmentとは「offensive, hostile, or intimidating behavior which interferes with a student’s ability to work or learn (学生が研究や学習をする力を妨げる不快な、敵対的または威圧的行為」と定義しているアメリカの大学もあります。

★アカハラの加害者と被害者の関係

加害者と被害者の典型例は、男性教授が研究室に所属する院生・ポスドク(男女不問)に暴言を吐く・無理な要求をするケースである。

しかし、加害者と被害者の関係は、1対1、1対多、多対1、多対多のすべてがある。上下関係のイジメだけでなく、同僚に対するイジメ、下位者が上位者をイジメも場合もある。加害者と被害者の性は男女を問わない。性不正と同じで、研究者ではない大学事務員が被害者になる場合も、加害者になる場合もある。

他研究室、他学部、他大学の研究者・研修生(院生・ポスドクなど)に対するアカハラ行為もある。

●2.【アカハラ規則・言動例:日本】

《1》日本政府のアカハラに関する法律 

★文部科学省の態度

文部科学省のサイトに「コレコレをアカハラ行為と定義する。そして、アカハラ行為をした者に次の処分を科す」という規則やガイドラインが見つからなかった。

念のため、文部科学省に「御質問」で問い合わせた。以下のように「御質問」は回答されるのが原則、と文部科学省が書いている。

「御質問」については、原則として入力いただいたメールアドレス宛に回答させていただきますが、回答に時間を要する場合があります。また、内容によっては回答できかねることがありますので御了承ください。(文部科学省に関する御意見・お問合せ窓口案内:文部科学省

質問は以下の通り。

約20日前に「御質問」したが、回答がなかった。それで、再度、10日前に「御質問」した。それでも回答がない。

文部科学省の対応は、どうなってんの? 信じられない怠慢さだ。

★文部科学省のアカハラ規則・言動例

結論を先に言う。不思議なことに、文部科学省は「コレコレをアカハラ行為と定義する。そして、アカハラ行為をした者に次の処分を科す」という規則を示していない。アカハラ行為の定義や規則がない。ガイドラインがない。

「文部科学省 アカハラ」でググると、次のサイトがヒットした。文部科学省 アカハラ – Google 検索

2019年2月12日の高等教育局大学振興課の説明資料「文科省等におけるハラスメント対策に関する取組 … – 文部科学省」がヒットしたが、記載されているのはセクハラであって、アカハラではない。

他のサイトもヒットしたが、文部科学省のアカハラ規則らしきものにヒットしない。

文部科学省のサイト内でも「アカハラ」を検索した。29件ヒットしたが、アカハラ規則はない。 → 検索結果:文部科学省

それで、再記するが、オドロイタことに、文部科学省には「コレコレをアカハラ行為と定義する。そして、アカハラ行為をした者に次の処分を科す」という規則がない。

すでに、日本の大学教員の100人以上がアカハラで処分されている。それなのに、その根本となる規則がない。
 → 日本のネカト・性不正・アカハラ・クログレイ事件一覧 | 研究者倫理

★人事院のアカハラ規則・言動例

文部科学省にアカハラ行為の定義や規則がないということは、不思議なことだが、日本政府に規則がないのだろう。

日本には、国家公務員がパワハラをしたとき規則や指針が今までなかった。2020年6月の指針改正でパワハラの処分規定を導入する予定だ。

人事院は2020年3月7日、国家公務員の懲戒処分の指針を改正し、パワハラで相手を精神疾患に追い込む悪質な事例は免職を含む厳しい処分とする方針を固めた。現行の指針にはパワハラに関する記載はないが、処分基準を明示して未然防止につなげる。各省庁に相談体制の整備や職員研修の実施も求める方針だ。

パワハラ防止策を大企業に義務付ける法律の施行に合わせ、2020年6月から改正指針を適用する。(2020年3月8日記事:パワハラ、悪質なら免職に 国家公務員、懲戒指針改正へ―人事院:時事ドットコム

★刑法が示すアカハラ行為と罰則

文部科学省がアカハラ規則を設けてないとすると、ヒョットとしてアカハラ行為は刑法で犯罪扱いされているのだろうか?

「あなたを救うかもしれない法律トリビア」のサイトが「セクハラ・アカハラ・パワハラは、どこから刑法上の何の罪になりますか?、(保存版)」で次のように示している。

【傷害罪(刑法204条)】:(アカハラ行為の一環として)、暴行し、相手が傷害を負ったときは、傷害罪になる。15年以下の懲役又は50万円以下の罰金

具体的には、以下の行為が傷害罪として認められた。 → 傷害罪にあてはまる、あなたの知らない意外なセクハラ・アカハラ・パワハラ行為

• キスマークを付ける
• 失神させる
• 胸部の疼痛を引き起こす
• 騒音や嫌がらせで不安に陥れたり、抑うつ状態にさせる
• 名誉毀損行為を繰り返して、精神的ストレスを与えることによって睡眠障害を引き起こす
• 拡声器で大声を出して難聴にさせる
• 無理やり酒を飲ませて急性アルコール中毒にさせる
• 女性の頭髪を根元から切断する
• 睡眠薬等で薬物中毒を引き起こす
• 脅迫してノイローゼにさせる
• だまして病原菌や毒物を飲ませることによって中毒症状を引き起こす

傷害の程度は以下の通り。

① ある程度持続的なキズや苦痛であること
② その被害によって日常生活に一定の支障があること
③ しかし、1と2の条件を満たせば、キズや苦痛そのものは軽微なものであっても構わないこと

あてはまる被害行為があれば、まずはなるべく早く病院へ行って医師の診察を受けることが第一です。
そのうえで、診断書という証拠をとっておきましょう。

【暴行罪(刑法208条)】:(アカハラ行為の一環として)、暴行し、相手が傷害を負わなかったときは、暴行罪になる。2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料

具体的には、以下の行為が暴行罪として認められた。 → < 要注意!こんなセクハラ・アカハラ・パワハラ行為が暴行罪(刑法208条)になる

• 殴る・蹴る・突く
• 着衣をつかみ引っ張る
• 女性の頭髪を切断する
• 頭や顔に食塩をふりかける
• 太鼓を連打して意識朦朧とさせたり貧血を引き起こし、息詰まる程度にさせる
• 女性の尻をなで回す
• 人を驚かせる目的で数歩手前を狙って石を投げる
• 足もとに椅子を投げつける
• 悪口を浴びせながら瓦の破片を投げ、追いかける気勢を上げる

【脅迫罪(刑法222条)】:(アカハラ行為の一環として)、脅迫すると、脅迫罪になる。2年以下の懲役又は30万円以下の罰金。

• 脅迫された本人が実際に怖いと思ったかどうかは考慮しない。たとえば、判例では、関係が悪化している特定不能の者から、現実に出火がないにも関わらず、「出火お見舞い申し上げます、火の元にご用心」という趣旨の葉書の内容も脅迫に当たります。
• アカハラも、優位的な地位を背景にしておこなわれる嫌がらせですから、脅迫にあたる害悪の告知が伴う場面も当然多くなります。
 o 降格などの人事上の不利益な取り扱い
 o 秘密の暴露
 o 単位の不認定や卒業の妨害
といったアカハラにおける典型例が害悪の告知にあたる場合、脅迫罪が成立します
• 害悪の告知の方法には制限がありません。口頭でも、書面でも、電話、メールやSNS、態度の表明でも害悪の告知として脅迫罪が成立するし、直接・間接を問いません。それらによって害悪の告知を相手方が認識した時点で脅迫罪が成立します。

【強要罪(刑法223条)】:(アカハラ行為の一環として)、生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。。

行為者に何の権限もないのに、

 土下座をさせる
 重い物を持たせて長時間立たせる
 謝罪文を書かせる
 誓約書を書かせる
 人を解雇させようとする

【名誉毀損罪(刑法230条)・侮辱罪(同231条)】:(アカハラ行為の一環として)、公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。。

  • 相手の社会的評価を貶めるようなことを言ったり、そうしたことを書いたものを配ったりなどすること。
  • 摘示された事実が真実であっても、そうでなくても名誉毀損罪は成立します。事実が摘示されたとき、被害者の社会的評価(外部的名誉という)が実際に低下したかどうかは関係ありません。また、被害者の感情や自尊心(名誉感情という)が実際に傷ついたかどうかも関係ありません。
  • 被害者および事実が特定できる限りは、噂や風評であっても名誉毀損罪が成立します。
  • 方法としては、文書や図画、インターネット掲示板、SNS、口頭によるものでも、名誉毀損罪は成立します。

こうやって刑法を見ると、多くのアカハラ行為が犯罪に該当する。

しかし、日本でのアカハラ被害者は上記したような罪で加害者を訴えるケースはまれである。どうして、訴えないのだろう?

加害者を訴えるケースはまれだが、「まれ」のケースはどういうアカハラ事件だったのか、軽く書いておこう。

2002年に大阪外国語大学の教授が31歳の女性院生にアカハラをし、地裁が国に女性に 110 万円を支払うように命じた事件である。

しかし、白楽は裁判になった事件を上記を含め数件しか知らない。

ほぼ全部のアカハラが刑事事件になり、裁判になってもいいように思うが、誤解があるのだろうか?

《2》大学のアカハラ規則・言動例 

文部科学省にアカハラ行為の定義や規則がないが、日本の各大学にはよく似た文言のアカハラ規則がある。原典はどこなのか判明しないが、以下に2つの大学のアカハラ規則を見ていこう。

★東京大学のアカハラ規則・言動例

東京大学は「東京大学ハラスメント相談所」という表題のウェブサイトを設けている。 → 東京大学ハラスメント相談所

そのサイトでは「セクハラ」と「アカハラ」の具体的行為が示されている。 → 規則・資料等 | 東京大学ハラスメント相談所

「アカハラ」を次のように定義している。
 → Microsoft Word – 03 アカデミックハラスメント防止宣言(2013.9版)

アカデミックハラスメントとは、大学の構成員が、教育・研究上の権力を濫用し、他の構成員に対して不適切で不当な言動を行うことにより、その者に、修学・教育・研究ないし職務遂行上の不利益を与え、あるいはその修学・教育・研究ないし職務遂行に差し支えるような精神的・身体的損害を与えることを内容とする人格権侵害をいう。東京大学憲章19 に定める基本的人権を侵害する行為もこれに含まれる。

話が脇にそれるが、「ウィキペディアのアカハラ」は東京大学の定義を引用している(下線は同じ文言」)。

アカデミックハラスメント和製英語academic harassment)とは、大学などの学術機関において、教職員が教育・研究上の権力を濫用し、ほかの構成員に対して不適切で不当な言動を行うことにより、その者に対して修学・教育・研究ないし職務遂行上の不利益を与え、あるいはその修学・教育・研究ないし職務遂行に差し支えるような精神的・身体的損害を与えることを内容とする人格権侵害[1]のことである。(アカデミックハラスメント – Wikipedia

話を戻す。

東京大学は「アカハラ」の具体的行為を次のように示している。
 → 相談できること | 東京大学ハラスメント相談所

 教員や先輩に怒鳴られたり、無視されたりする
 みんなの前で「無能だな」と人格を否定することを言われる
 論文指導を希望しても「忙しい」と言われ、長期間放置される
 自分が書いた論文なのに第一著書にしてもらえない
 研究室員の行動はすべて厳しく管理されている
 教授が望む実験結果が出なかった場合に「どうしたらいいかわかるでしょ?」と不正を示唆される
 学会発表や論文投稿など研究活動を理由なく禁止される
 研究室で、自分の考えや先生への反対意見は言えない
 教育指導上の妥当な説明なく学位取得や卒業、就職を諦めるよう言われる

ウィキペディアのアカハラでもそうだが、基本的にどれも定性的である。

★立命館大学のアカハラ規則・言動例

立命館大学は「セクハラ」「アカハラ」「パワハラ」「その他のハラスメント」とハラスメントをまとめて扱っているウェブサイトがある → 立命館大学ハラスメント防止の取り組み、(保存版

「ハラスメント相談員」もいるが、専任ではない。各学部・研究科から選出された教員、各学部事務室、学生オフィス、保健センター(保健課)、給与厚生課等の事務職員を、「ハラスメント相談員」としている。(出典:ハラスメント相談員について(規程 第 14 条)

アカハラは次のように定義し、具体的に説明している(出典:2.セクシュアル・ハラスメント)。

(1)アカデミック・ハラスメントの定義 (規程第 2 条第 1 項第 2 号)

規程では、アカデミック・ハラスメントを「立命館大学における教育活動または研究活動と関連して、教育研究上の優位な立場に基づく言動(相手の意に反する性的な言動を除く。)により、相手に対し、苦痛もしくは不快感を与え、または当該教育研究上の関係において不利益な処遇を与える行為」と定めています。

優位な立場とは、上下関係だけではなく、力関係や優越的な地位なども含まれます。

なお、個人の受取り方によっては、教育・研究上や就労上で必要な指示や注意・指導に不満を持ったり不快を感じたりすることもありますが、教育・研究上や就労の適正な範囲で行われている場合は、ハラスメントに該当しません。

アカデミック・ハラスメントを類型化し、例をあげると次のとおりとなります。

1)教育上のハラスメント
① 必要な教育的指導を理由なく拒否または放置すること
② 過度の課題を強要すること
③ 学位や単位取得にかかわって不当な評価を行う等、不公正な取り扱いをすること
④ 進路・就職について自由な選択を侵害、またはこれを脅かすこと

2)研究上のハラスメント
① 研究テーマを与えない、機器・設備を使用させない、研究発表を不当に制限すること(「研究疎外型」)
② 研究成果や個人的アイデアを不当に流用すること(「研究搾取型」)

★金沢大学のアカハラニュース動画

【動画】
「学生に嫌がらせ”アカハラ” 金沢大学の男性教授に懲戒処分 2019.3.16放送– YouTube」(日本語)1分10秒。
北陸朝日放送公式ページが2019/03/17に公開

 

《3》民間のアカハラ言動例 

★ウィキペディアが示すアカハラ行為

ウィキペディアに詳細に記載されている(アカデミックハラスメント – Wikipedia)。

アカデミックハラスメント和製英語academic harassment)とは、大学などの学術機関において、教職員が教育・研究上の権力を濫用し、ほかの構成員に対して不適切で不当な言動を行うことにより、その者に対して修学・教育・研究ないし職務遂行上の不利益を与え、あるいはその修学・教育・研究ないし職務遂行に差し支えるような精神的・身体的損害を与えることを内容とする人格権侵害[1]のことである。パワーハラスメントの一類型。略称はアカハラ

白楽は、学術界・高等教育界・研究界で行なわれる広義の「イジメ」「嫌がらせ」と定義している。それで、上記の定義と異なる点を示す。

  1. 白楽の定義では、「教育・研究上の権力を濫用」の有無を問わない。例えば、准教授が教授に暴言を吐いてもアカハラとする。
  2. 研修生(院生・ポスドクなど)の間の「イジメ」「嫌がらせ」、研修生(院生・ポスドクなど)から教員への「イジメ」「嫌がらせ」もアカハラに含める。
  3. 「人格権侵害」の有無を問わない。例えば、単なる暴力行為もアカハラとする。

ウィキペディアに詳細に記載されている(アカデミックハラスメント – Wikipedia)の具体的行為は以下である。長いけど引用しよう。

学習・研究活動への妨害
研究教育機関における正当な活動を直接的・間接的に妨害すること。
• 研究テーマを与えない。
• 文献・図書や機器類を使わせない。
• 実験機器や試薬などを勝手に廃棄する。
• 研究に必要な物品の購入や出張を、必要な書類に押印しないという手段で妨害する。
• 机を与えない。また机を廊下に出したり、条件の悪い部屋や他の研究室員とは別の部屋に隔離したりする。
• 正当な理由がないのに研究室への立ち入りを禁止する。
• 研究費の応募申請を妨害する。
• 学会等への参加を正当な理由なく許可しない[要出典]。

卒業、単位、進級の妨害
卒業・進級妨害[学生の進級・卒業・修了を正当な理由無く認めないこと。また正当な理由無く単位を与えないこと。
• 卒業研究を開始して間もないのに、早々に留年を言い渡す。
• 理由を示さずに単位を与えない。
• 卒業・修了の判定基準を恣意的に変更して留年させる。
• 卒業研究は完了しているのに “お礼奉公”としての実験を強要し、それを行わなければ卒業させない。

選択権の侵害
就職・進学の妨害、望まない異動の強要など。
• 指導教員を途中で変更したら自動的に留年。
• 本人の希望に反する学習・研究計画や研究テーマを押しつける。
• 就職や他大学進学に必要な推薦書を書かない。
• 就職活動を禁止する。
• 会社に圧力をかけて内定を取り消させる。
• 他の研究教育組織への異動を強要する。
• 「結婚したら研究者としてやってはいけない」などと言って、結婚と学問の二者択一を迫る。

研究成果の収奪
研究論文の著者を決める国際的なルールを破ること、アイデアの盗用など。
• 加筆訂正したというだけなのに、指導教員が第一著者となる。
• 実験を行う・アイデアを出すなど研究を主体的に行って、その研究に最も大きな貢献をした者を第一著者にしない。
• 著者の順番を教授が勝手に決める。
• その研究に全くあるいは少ししか関わっていない者を共著者に入れることを強要する。
• 学生が出したアイデアを使って、こっそり論文を書く。

暴言、過度の叱責
本人がその場に居るか否かにかかわらず、学生や部下を傷つけるネガティブな言動を行うこと。発奮させる手段としては適切。
• 学生や部下が持ってきた論文原稿をゴミ箱につっこむ、破り捨てる、受け取らない、きちんと読まない。
• 学生や部下が出したアイデアに全く検討を加えず、それを頭から否定する。
• ささいなミスを大声で叱責する。

そのママ引用したけど、ウィキペディアが日本のアカハラ行為を定義しているわけではない。[白楽の感想。こんな行為までアカハラに含めるのかと驚いた。また、この行為はアカハラではありません、という記述も欲しいと思った。]

具体的行為としてウィキペディアのアカハラ行為を引用したが、基本的にはどれも定性的である。この定義に基づいて実際に判定するとなると、恣意的になりやすい。もっと、定量的で具体的な基準が必要だ。

なお、研究上の不利益を与える妨害行為の一部は、米国・研究公正局は「ねつ造・改ざん」として扱っている。

★アカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク(NAAH)が示すアカハラ行為

「アカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク(NAAH)」という特定非営利活動法人(NPO)が2001年10月5日に設立された。

大学など高等教育機関において発生しているアカデミックハラスメントに対処することを目的として設立されたNPO(特定非営利活動法人)である(出典:アカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク – Wikipedia)。

そのサイトがアカハラ行為を具体的に示している。 → アカデミック・ハラスメントとは|NAAH

今まで述べてきたのと類似しているので、以下、一部だけ記載し、他は省略する。

学習・研究活動への妨害
[研究教育機関における正当な活動を直接的・間接的に妨害すること。]

 文献・図書や機器類を使わせない。
 実験機器や試薬などを勝手に廃棄する。
 研究に必要な物品の購入や出張を、必要な書類に押印しないという手段で妨害する。
 机を与えない。また机を廊下に出したり、条件の悪い部屋や他の研究室員とは別の部屋に隔離したりする。
 正当な理由がないのに研究室への立ち入りを禁止する。
 研究費の応募申請を妨害する。
 学会等への参加を正当な理由なく許可しない。

★他

アカハラ行為を具体的に示している記事(記者名なし)もある → 2020年3月8日記事:黙殺されがちな「大学教員による学生へのハラスメント」実態調査

教員の行動

男性の教授に『卒論を見てあげるから』と大学のそばにある高級ホテルのカフェに呼ばれた。途中まで書いた卒論を印刷して持参したら、まったく読んでもらえず。徐々に体を触ってきた。 → 白楽注:これは性的暴行

教員の発言

  • 「講義中に騒いでいた学生に向かって『おまえは多動症だ。いくら注意しても病気なんだから仕方ないな』と
  • 「就職活動で遅れてしまい、走って講義に向かったら30分遅刻してしまった。500人位の大教室だったが、教授にマイクを通して『おい! 遅れてきて資料だけもらうなんて図々しい』『遅れたのに平然と俺の講義を受けようとするな!』
  • 「うつ病が悪化し、2年休学をしていた。復学をしてカウンセラーさんにサポートしてもらいながら、徐々に回復してきたところで、ある男性教員に『なんで1年の必修なのに、再履修しているんだ?』と聞かれた。『うつ病で通えなかったため』と答えたら、他の学生がいる前で『は? 男ならうつ病なんかに負けんな!』 → 白楽注:これはセクハラ
  • 理系の研究室で修士課程の女性は私一人。必ず教授に『じゃあ、お酒お願い!』などと指図され、男性の先輩、教授全員にビールを注がされる。 → 白楽注:これはセクハラ
  • 「うちのゼミの准教授が、ゼミ生の女性に『◯◯はメンヘラだ』『メンヘラだからそういう恋愛ばかりするんだよ』などと発言
  • ゼミの先生が『うちのゼミは可愛い子ばっかりだから嬉しい』『容姿端麗な子が集まるから華やかで、写真にも映える』『可愛い子は毎年うちのゼミに集まる』と発言 → 白楽注:これはセクハラ
  • 「自分は戸籍上男性だが、アイデンティティは女性。ファッションも大学3年になってから徐々に好きなもの、着たい服、したいメイクをするようになった。容姿の変化に気づいた教授から、『あれ? ◯◯君ってオネエ系だったっけ?(笑い)』と
  • 教授が、『あそこの出版社の編集者は美人なんだよ。エロいから執筆仕事を受けちゃうね。でも某社はブスばっかりだから、仕事もしたくない。書きたいと思わせる編集者がいないとキツイ』などと発言 → 白楽注:これはセクハラ

●3.【アカハラ規則・言動例:世界】

以下は、ホリー・エルス(Holly Else)の「2018年のNature」論文による。 → Does science have a bullying problem?
文章は、「7-50 研究界のアカハラ問題」から流用した。

アカハラ禁止規則は世界中で大きく異なっている。

英国のほとんどの大学は、アカハラ禁止規則を制定しているが、米国の大学は一般的ではない。高等教育でのイジメを研究しているメリーランド州のモーガン州立大学(Morgan State University in Baltimore, Maryland)のリア・ホリス準教授(Leah Hollis、写真出典)による未発表の研究によると、米国の大学の5分の1程度しかアカハラ禁止規則を制定していない。

フランスでは、職場でのイジメは「モラハラ(moral harassment)」と呼ばれ、法律に違反する。オーストラリア、スウェーデン、ベルギー、カナダにも同様の法律がある。

世界各国のアカハラ規則を調べた論文や記述がない。思うに、上記のように少数の国と大学がアカハラ規則を設けているのが現状のようだ。

●4.【アカハラ規則・言動例:米国】

《1》米国政府のアカハラに関する法律 

大学でのアカハラ禁止に関する米国政府の法律はない。各州の法律もない。

●2016年11月更新:井上奈緒子・弁護士の「シアトル最大の日本語情報サイト Junglecity.com」記事:第14回 アメリカの職場でのハラスメントと差別の違い

修正引用

アメリカでは、ハラスメントそのものは、身体的暴力行為のように私法(tort)上で被害を受けた場合以外は一般的に違法ではありません。

従って、職場でハラスメントを受けた被害者が加害者を法に訴えるには、ハラスメントを受けた被害者が特殊なカテゴリに該当する必要があります。そのカテゴリとは、年齢、人種、国籍、性別、宗教、身体障害などで、これらのカテゴリにあてはまる被害者がハラスメントを受けた場合は、その度合いによっては加害者の違法行為として認められます。

日本の職場の例で言えば、同僚の女性が他の女性の前でわざと咳をして嫌がらせをしたとか、同性の同僚から無視されたということは、差別ではありません。これは単なるハラスメント(モラル・ハラスメント)です。これがひどくなり、被害者の精神状態に支障をきたした場合は、差別法上ではなく私法上で訴えることは可能ですが、証明の基準が非常に高く、ほとんどの申し立ては却下されます。

それに対して、もし男性の上司が女性の部下(この女性がただ一人の所属女性社員である場合)にトイレの掃除をさせたり、この女性社員のみを部のミーティングからはずすなどの行為を繰り返すなどの嫌がらせをした場合は、一般的に差別として認められます。これは日本ではパワー・ハラスメントとして対処されますが、アメリカでは加害者が男性で被害者が女性の場合は、女性差別として扱われます。

●2019年7月9日:飯島真由美・弁護士の「Daily Sun New York」記事: Legal Cafe Vol.43 職場でのハラスメント | Daily Sun New York

米国ではパワーハラスメントという言葉は一般的ではなく、ハラスメントまたはブリーング(bullying)と言います。しかしニューヨーク州の職場でもこうした行為は大きな問題となっており、私の事務所でも相談を受けます。

ただし日本で言われる、「暴言」「虐め」「社員の前での叱責」などのパワハラ行為は、米国では通常、人種、国籍、性別、性的指向、年齢などの差別が根拠となっている場合に違法行為とみなされます。

逆にこれらの差別に基づかないでパワハラを受けている場合は、その度合いにもよりますが、法的措置を講じるのは難しくなります。また精神的苦痛(emotional distress)を理由に提訴する場合の要件は非常に高くなります。パワハラを受けたと思ったらまず、上司や人事部などに報告・相談しましょう。会社はパワハラについて報告義務を定めていますし、早急な解決につながることが多いです。

《2》研究助成機関のアカハラ規則・言動例 

以下は、ホリー・エルス(Holly Else)の「2018年のNature」論文による。 → Does science have a bullying problem?
文章は、「7-50 研究界のアカハラ問題」から流用した。

米国のNIH(US National Institutes of Health)や科学庁(US National Science Foundation)は、アカハラ対策について特になにも言及してない。

★NIHのアカハラ規則・言動例

ホリー・エルス(Holly Else)の「2018年のNature」論文では、「NIHはアカハラ対策について特になにも言及していない」とあるが、実際は、アカハラ防止計画がある。

【動画】
「NIHのアカハラ防止計画(NIH Anti-Harassment Program) – YouTube」(英語)6分10秒。
NIHODが2018/10/22に公開

話の脇道。

上の動画で、なんか見覚えのある顔だと思ったら、マイケル・M・ゴッテスマン(Michael M. Gottesman)とでました。マイケルは、白楽がNIH・国立がん研究所(NCI)・分子生物学部のポスドクとして過ごした時、分子生物学部の数研究室の1つの室長でした。奥様も研究者です。普段は廊下で、ラボ・セミナー、ラボ・ピクニックなどでも一緒でした。今や、NIH副所長なんですね。偉くなったもんです。

The NIH Civil Program 」では、以下の行為を禁止している。本記事ではアカハラの英語を「harassment」や「bullying」としたが、それ以外も禁止してますね。

 harassment:ハラスメント
 sexual harassment:性的嫌がらせ
 inappropriate conduct:不適切な行為
 intimidation:脅迫
 bullying:イジメ
 other unproductive, disruptive, and/or violent behaviors:他の非生産的、破壊的、および/または暴力的な行動

【アカハラの具体例】

アカハラの具体例も以下のように示している。 → Statement on Workplace Harassment | Office of Human Resources

 セクハラを含む嫌がらせ
 公然とまたは陰で、言葉による虐待(攻撃的な言葉を含む)
 評判を傷つけることを目的とした言葉による虐待
 傷つけ孤立させ、仕事・研究・学習を損なう行為または意図的な不作為
 脅威または脅迫
 身体的暴行
 財産の損害または破壊
 武器の隠蔽または使用

【処罰】

以下の処罰を科す。「この行為に対してこの処罰」という、具体的な処罰例ではない。

大学・研究所がアカハラと認定した研究代表者への助成金の停止または研究代表者の変更などの処置をする。

つまり、NIHとしてアカハラ調査はしない。研究者が所属する大学・研究所がアカハラ調査をする。

研究公正局はネカトを調査・教育・処分する部局だが、アカハラには対処しない。研究公正局と同等の、アカハラを対処する部局はない。

【議会の要求】

2020年3月、米国議会は、最新の予算案の優先事項として、NIHがアカハラをネカトと同レベルの問題として扱うよう要求している。 → 2020年3月13日記事:FY21 Budget Request: National Institutes of Health | American Institute of Physics

NIHはこのことで、所属研究者がアカハラをした場合、研究代表者への助成金の停止または研究代表者の変更などの処置をするので、大学はNIHにアカハラを報告するよう、既に要求していると、コメントした。

NIHは、研究代表者の変更を最善の措置としている。というのは、その措置なら、アカハラ被害者を含め、採択研究課題の研究を進めている他のスタッフが研究を続けられる。採択研究課題の研究もそれなりに進むと書いているが、白楽が思うに、こちらは付け足しだろう。

NIHはさらに、アカハラの報告における透明性と説明責任の強化、安全な研究環境を促進するためのより広範な研究室文化野改善に取り組んでいるとも述べている。

★科学庁(NSF)のアカハラ規則・言動例

ホリー・エルス(Holly Else)の「2018年のNature」論文では、「科学庁(NSF)はアカハラ対策について特になにも言及していない」とあるが、実際は、アカハラ防止計画が「少し」ある。

科学庁(NSF)はハラスメントのポータルサイトを設置した。しかし、タイトルは「セクハラ」となっている。つまり、主力はセクハラ対策で、アカハラ対策への関心は薄い。 → Office of Diversity and Inclusion (ODI) – Sexual Harassment | NSF – National Science Foundation

科学庁(NSF)は、科学庁(NSF)内はもちろん、研究助成した大学・研究所、野外研究現場など研究や教育が行なわれるいかなる場所でのアカハラを許容しない、と記載している。 → Non-harassment Affirmation Policy 2018.pdf

【動画】
「フランス・コルドバ科学庁長官のハラスメント声明(NSF Director France Córdova statement on harassment) – YouTube」(英語)1分18秒。
National Science Foundationが2018/09/19に公開

【定義】

連邦公民権法(federal civil rights laws)の行動規範、法令、規制が個人へのイジメを禁止している。

科学庁(NSF)としてアカハラの定義をしていないし、この行為に対してこの処罰というような、具体的な処罰例を示していない。

【処罰】

助成金受領者のアカハラを見つけたら、大学・研究所が科学庁(NSF)へ報告するよう義務付けた。 → Important Notice No. 144: Harassment (in144) | NSF – National Science Foundation

つまり、科学庁(NSF)としてアカハラ調査はしない。研究者が所属する大学・研究所がアカハラ調査をする。

大学・研究所が報告を怠った時の処罰を明確に書いていない。また、報告した時、アカハラ加害者への研究助成金を停止すると思われるが明確に書いていない。

《3》全米科学アカデミー(NASEM)のアカハラ規則・言動例 

全米科学アカデミー(NASEM、National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine – Wikipedia)は、アカハラ禁止規則を設定している。 →  Policy on Discrimination, Harassment, and Bullying for Participants in Academies Activities

会員、従業員、ボランティア、スポンサー、ベンダー、ゲストが出席するすべての委員会、会議、ワークショップ、業務、社会活動で、参加者に対する差別、嫌がらせ、イジメを禁止する。

【定義】
アカハラは、学術界で、他人を支配するために歓迎されない攻撃的な行動をすることで、影響力、脅威、脅迫を使い、強制して行なわれる。

【調査】
アカハラの報告を受けたら、全米科学アカデミー(NASEM)の人事局(The Office of Human Resources)が、法律顧問部(Office of the General Counsel)と相談して違反を調査する。

【処罰】
アカハラ加害者と認定されたら、該当者をNASEM活動から解任する。また、今後の活動への参加を禁止する。

《4》学術団体のアカハラ規則・言動例 

★米国南極プログラムのアカハラ規則・言動例

米国南極プログラム(United States Antarctic Program)のアカハラ禁止規則が科学庁(NSF)のサイトに掲載されている。
 → Non-harassment Affirmation Policy 2018.pdf

【定義】

科学庁(NSF)と同じように、「アカハラは連邦法で禁止されている(Harassment is prohibited by Federal law)」、と記載している。

アカハラを、人種、肌の色、宗教、性別、障害、年齢、出身国、性的指向、遺伝情報に基づく不快な言動で、個人の雇用状況を変えるような客観的にみて攻撃的言動と定義する。アカハラは、従業員のパフォ-マンスを理不尽に阻害し、脅迫的、敵対的、不快な職場環境を作る。同様に、苦情を通報した個人に対するいかなる報復も違法である。

【処罰】

記載なし。

★米国生化学・分子生物学会のアカハラ規則・言動例

米国生化学・分子生物学会は1906年設立で1万1千人以上の会員を擁する学会で、生命科学領域の根幹学会の1つである。 → American Society for Biochemistry and Molecular Biology

米国生化学・分子生物学会のサイトでアカハラの英語「bullying」を検索すると4件しかヒットしなかった。 → Site Search

その4件には米国生化学・分子生物学会のアカハラ禁止に関する規則やガイドラインはなかった。

この学会で示したように、米国のほぼ全ての学会は、アカハラ禁止に関する規則やガイドラインを設けていない。

《5》大学のアカハラ規則・言動例 

米国の大学はアカハラ対策に関する規則の作成を義務付けられていない。

本記事で何度も引用するが、以下は、ホリー・エルス(Holly Else)の「2018年のNature」論文による。 → Does science have a bullying problem?
文章は、「7-50 研究界のアカハラ問題」から流用した。

英国のほとんどの大学は、アカハラ禁止規則を制定しているが、米国の大学は一般的ではない。高等教育でのイジメを研究しているメリーランド州のモーガン州立大学(Morgan State University in Baltimore, Maryland)のリア・ホリス準教授(Leah Hollis、写真出典)による未発表の研究によると、米国の大学の5分の1程度しかアカハラ禁止規則を制定していない。

以下に例示した大学は、アカハラ禁止規則を制定している大学である。

★マサチューセッツ工科大学のアカハラ規則・言動例

東部の名門大学・マサチューセッツ工科大学(MIT – Massachusetts Institute of Technology)を調べてみよう。

マサチューセッツ工科大学は学則集・「Policies & Procedures 」の「9.0 Relations and Responsibilities Within the MIT Community に、アカハラ規則・「9.4 Harassment | Policies」がある。

【定義】

アカハラ(Harassment)は、個人の教育、仕事・研究・学習、生活に悪影響を与える職場環境や教育・研究・学習環境を作り出す言葉、非言語、または身体的な好ましくない行為で、合理的な人が威圧的、敵対的、虐待的であると考える行為である。

【アカハラの具体例】

アカハラの可能性がある行為例
公共および個人への長期間の厳しい攻撃。 意図的な繰り返しの屈辱。 他人の生活・人生または仕事・研究・学習に対する故意の干渉。 特定の人種的表現の使用。 宗教的な記事または場所の故意の冒涜。年齢による個人的能力および職業的能力の喪失を繰り返し侮辱。

アカハラではない可能性がある行為例
能力・業績の評価(否定的なのを含む)や仕事の割り当てなどの管理行為。研究領域の変更、同僚の変更など、めったにない出来事に関連した決定(但し、厳しい攻撃や人種差別的な行為は除く)。

【処罰】

この行為に対してこの処罰というような、具体的な処罰は不明だった。

★イースタン・ワシントン大学のアカハラ規則・言動例

イースタン・ワシントン大学(Eastern Washington University):2018年10月5日施行:EWU 901-04: Bullying Prevention and Response

【定義】

 意図的で
 個人またはグループを対象に
 威圧的、脅迫的な環境を作り、他の人が大学の授業・研究・プログラム・活動への参加、勉強・研究、交友などを実質的に妨げるほど深刻、広範で客観的に不快な言動をすること。

攻撃的な行動は、虐待的な言葉、悪口、侮辱、口汚い言葉などの不適切な言動だが、これらに限定されない。他の不快な行動には、卑劣な言葉、屈辱的な言葉、下品な言葉の使用、罵る、怒鳴る、不適切な言葉の使用、節度を欠いたジェスチャー、嘲ることなどである。

【処罰】

アカハラと認定されたら、その後のアカハラ行為を防止するための制裁措置を講じる。制裁措置は、解雇を含む懲戒処分である。

★バージニア工科大学のアカハラ規則・言動例

バージニア工科大学のアカハラ・サイトが充実している。このサイトから、米国の大学でのアカハラの捉え方を学ぼう:Disrupting Academic Bullying | Graduate School | Virginia Tech

基本的には、前項目で書いたイースタン・ワシントン大学(Eastern Washington University)の規則に基づいている。それで、定義は同じなので省略する。

【動画】
バージニア工科大学のアカハラ説明動画。5部のうちの最初の1部。「アカハラを破壊:パート1:何、どうして(Disrupting Academic Bullying Part 1 – The what and the why) – YouTube」(英語)7分41秒。
Virginia Tech Graduate Schoolが2018/04/21 に公開

【アカハラの具体例】

 解雇すると絶え間なく脅す
 自尊心または自信を破壊・損傷する
 否定的な発言、批判、皮肉を絶え間なく発言する
 時間、非現実的な作業要求、または作業の過負荷について一貫しています。
 孤立させる
 虚偽の情報や噂を広める
 あいまいな仕事、矛盾する仕事、意味のない仕事を課す
 嫌みを言う。個人の尊厳、誠実さ、自己イメージに対する攻撃
 屈辱的言動

●5.【アカハラ規則・言動例:英国】

《1》英国政府のアカハラに関する法律 

★平等法(Equality Act 2010)

英国は平等法(Equality Act 2010)が基本である。

平等法は、人種、性別、障害、年齢、性的指向、宗教・思想信条、性別の再適正化(gender reassignment)、婚姻・シビルパートナーシップ、妊娠・母性の九つを保護特性として定義し、それぞれについて、直接差別、 間接差別(特定の特性の者に不利な基準や慣行)、ハラスメント、権利の行使に対する被害(victimisation) の禁止を規定している。(欧米諸国のLGBTの就労をめぐる状況(イギリス:2017年4月)|フォーカス|労働政策研究・研修機構(JILPT)

嫌がらせ(Harassment)は、2010年の平等法(Equality Act 2010)で定義されているが、イジメ(Bullying)は、定義されていない。

英国では、嫌がらせ(Harassment)とイジメ(Bullying)は別の概念・言動と捉えられている。

《2》研究助成機関のアカハラ規則・言動例 

英国の主要な研究助成機関であるウェルカム・トラスト(Wellcome Trust)やキャンサー・リサーチUK(Cancer Research UK:CRUK)は、大学・研究所が所属研究者のアカハラ調査を開始したら、その研究者への助成金交付を止めるアカハラ禁止政策を導入した。
 → 2018 年10月4日のホリー・エルス(Holly Else)の「Nature」記事:Leading cancer-research charity takes tough stance on bullying

★ウェルカム・トラスト(Wellcome Trust)のアカハラ規則・言動例

ウェルカム・トラスト(The Wellcome Trust、ギッブス・ビル、写真出典)は、イギリスに本拠地を持つ医学研究支援等を目的とする公益信託団体。アメリカ出身の製薬長者のサー・ヘンリー・ウェルカムの財産を管理するため、1936年に設立された。

ウェルカム・トラストは民間団体としては世界で二番目に裕福な医学研究支援団体であり、その純資産は2006年9月30日時点で134億ポンドを越える。トラストの使命は、人および動物の健康増進を目的とする研究を助成することにある。また、生物医学研究への資金提供に加え、一般の科学理解を深めるための支援もしている(ウェルカム・トラスト – Wikipedia)。

2018年5月3日、ウェルカム・トラストは英国の助成機関として初めて性不正・アカハラの規則を導入した。
 → Bullying and harassment policy | Wellcome
 → 2019年6月27日記事:How we want to work with organisations to handle bullying and harassment investigations | Wellcome

【定義】

イジメ(Bullying)と嫌がらせ(Harassment)を以下のように定義した。

イジメ(Bullying)は、攻撃的、脅迫的、悪意の、または侮辱的な行為です。権力の誤用を含め、被害者を傷つきやすく、動揺させ、屈辱を与え、衰弱させ、脅す可能性があります。

嫌がらせ(Harassment)は、望ましくない肉体的または言語的な行為で、脅迫的、敵対的、侮辱的、屈辱的、侮辱的な環境を作り、個人の尊厳を侵害します。繰り返しの行為と単発の行為の両方があります。

【処罰】

大学・研究機関が「イジメ(Bullying)」「嫌がらせ(Harassment)」でクロと判定した場合、ウェルカム・トラストは次の処罰のいずれかまたは複数を科す。

  1. 助成金を取り消す。そのプロジェクトの他のスタッフへの影響を最小限に抑えるため大学・研究機関と相談する。
  2. ウェルカムプログラムの博士院生の指導者になることを禁止する
  3. 一時的または恒久的に将来の補助金申請を制限する
  4. 将来の補助金の申請を許可するが、大学・研究機関に監視を要求する

大学・研究機関が「イジメ(Bullying)」「嫌がらせ(Harassment)」の苦情に適切に対応しなかった場合、あるいは、事件をウェルカム・トラストに通知しなかった場合、ウェルカム・トラストは大学・研究機関に次の制裁を科す。

  1. 限られた期間、新しい補助金の申請を受け付けない
  2. 博士院生プログラムへの参加や海外での研究を許可しないなど、特定の助成金タイプの申請を制限する
  3. 極端な場合には大学・研究機関への資金提供を停止する

もっとも、何人かの研究者はこの新方針の実行に懐疑的である。例えば、英国のオックスフォード大学・数理生物学のフィリップ・マイニ教授(Philip Maini、写真出典も)は、「NatureやScienceに多数の論文を出版している研究者が「イジメ(Bullying)」「嫌がらせ(Harassment)」で訴えられたとき、その大学・研究機関は本当に彼らに対して行動を起こすでしょうか?」と批判的である。
 → 2018年5月4日のダイアナ・クォン(Diana Kwon)記者の「Scientist」記事:Wellcome Trust Makes Reporting Harassment Mandatory | The Scientist Magazine®

★キャンサー・リサーチUK(Cancer Research UK:CRUK)のアカハラ規則・言動例

キャンサー・リサーチUK(The Cancer Research UK:CRUK)は、バイオメディカル研究チャリティー機関として、研究助成額がウェルカム財団に次いで英国で二番目に大きく、多くの大学の研究者がCRUKから研究助成金を受けている。また、大学の中には、CRUKの研究ユニットが組み込まれている所もある。(山田直:英国大学事情2011年9月号「キャンサー・リサーチUK<英国の大規模医学研究チャリティー機関>」 | SciencePortal

キャンサー・リサーチUKも「イジメ(Bullying)」「嫌がらせ(Harassment)」の禁止規則を導入した。 → Policy on Dignity at Work in Research | Cancer Research UK

定義と処罰はウェルカム・トラストのルールとよく似ているので省略する。多分、関係者が協議して統一的な方法を採用していると思われる。

★英国心臓財団(British Heart Foundation)のアカハラ規則・言動例

英国では、ウェルカム財団やキャンサー・リサーチUKのほか、ブリティッシュ・ハート・ファンデーション(British Heart Foundation)など、医学研究への多額な助成をしている大規模なチャリティー機関がある。

ブリティッシュ・ハート・ファンデーションでは、2009・10年度に年間1億2,000万ポンド(162億円)の募金活動収入があり、そのうちの43%は遺産の寄贈による。キャンサー・リサーチUKやブリティッシュ・ハート・ファンデーションにおける最大の収入源は遺産による寄贈であることは興味深い。

ちなみに、ブリティッシュ・ハート・ファンデーションは1961年に医療従事者たちによって設立され、現在では年間約5,000万ポンド(68億円)を心臓病研究への助成、約4,000万ポンド(54億円)を心臓病の予防やケアへの助成を行っている。(山田直:英国大学事情2011年9月号「キャンサー・リサーチUK<英国の大規模医学研究チャリティー機関>」 | SciencePortal

英国心臓財団(British Heart Foundation)も「イジメ(Bullying)」「嫌がらせ(Harassment)」の禁止規則を導入した。
 → Bullying, harassment and misconduct in research

定義と処罰はウェルカム・トラストのルールと基本はよく似ているが、かなり丁寧に記述している。イジメ(Bullying)は省略するが、嫌がらせ(Harassment)の定義を以下に示そう。

嫌がらせ(Harassment)とは、その人の尊厳を侵害したり、その人に脅迫的、敵対的、侮辱的、屈辱的、または攻撃的な環境を作り出す、あらゆる形態の望ましくない行動である。嫌がらせや脅迫的行動は、性別、人種、民族的出身、国籍、性的指向、身体障害、宗教、年齢などの違いを理由としている。嫌がらせは、通常、特定の人にたいして行ない、その人に嫌がらせ受けている、軽蔑されているという感情を抱かせる、

嫌がらせやイジメにはさまざまな形態がある。例えば、不快で意図的な身体的接触、個人空間への侵入、一方的で不要な贈り物、悪ふざけ、不快な言葉、陰口、気分を害するメール、性交の強制的同意、望まない提案、誰かを疎外しようとする繰り返しの意図的な試み。

特定の言動に対する個人の見解はさまざまだが、誰もが研究室・職場で尊敬され、他人の言動が不適切だと感じたとき、「不適切です」と気楽に表明できる状況が必要である。

《3》大学のアカハラ規則・言動例 

本記事で何度も引用するが、以下は、ホリー・エルス(Holly Else)の「2018年のNature」論文による。 → Does science have a bullying problem?
文章は、「7-50 研究界のアカハラ問題」から流用した。

英国のほとんどの大学は、アカハラ禁止規則を制定している。通常、これらの規則はアカハラの定義と具体例を示していて、アカハラ問題に遭遇した場合の対処方法についてのアドバイスもしている、とマット・ワダップは指摘する

★ダンディー大学のアカハラ規則・言動例

ダンディー大学(University of Dundee)。出典

英国の大学のアカハラ規則・言動例を、スコットランドの名門・ダンディー大学(University of Dundee)で探ってみよう。

ダンディー大学(University of Dundee)に嫌がらせ(Harassment)とイジメ(Bullying)の規則があった。嫌がらせ(Harassment)とイジメ(Bullying)は別の概念・言動と捉えられている。 → dignity-at-work-and-study-2019.pdf

【嫌がらせ(Harassment)】

「イジメ(Bullying)」と「嫌がらせ(Harassment)」という用語はしばしば同じ意味で使用され、「イジメ(Bullying)」は「嫌がらせ(Harassment)」の1種と見なされることは珍しくない。ただし、法律上は、2つは明白に異なる。

平等法2010(Equality Act 2010)では、「嫌がらせ(Harassment)」は、保護された特性に関する望ましくない行為で、その行為が個人の尊厳を侵害する行為と定義している。大学は、「嫌がらせ(Harassment)」に対してゼロトレランスの方針を採用している。

保護特性(平等法で定義されている)は次のとおり。

(a) 年齢
(b) 障害
(c) 性別転換(Gender reassignment)
(d) 人種
(e) 宗教又は信条(Religion or Belief)
(f) 性
(g) 性的指向(Sexual orientation)

「嫌がらせ(Harassment)」は、特定の個人またはグループを対象とする。

【嫌がらせ(Harassment)の具体例】

16例が示されているが、多いので2例だけ示す。

  1. 性的指向、性同一性、年齢、障害、民族、宗教など、その人の特定の特徴について軽蔑するような発言やステレオタイプな発言をする
  2. 意図的または繰り返し、好みの名前と代名詞を使う。たとえば、特定の女性を男性に使用される名前を使って呼ぶ。

【イジメ(Bullying)】

イジメ(Bullying)は、脅迫、侮辱、虐待、中傷、威圧的な行動など、他人を見下す力の行使である。また、他人に自信を無くさせ、村八分や除外するという不適切な行為もある。イジメ(Bullying)は、脅迫的、敵対的、攻撃的な職場環境、学習環境、研究環境、社会活動を作る。

イジメ(Bullying)には、単発的、散発的、継続的のすべてがある。

イジメ(Bullying)は、個人が別の個人をイジメる場合(指導教員が院生になど)、個人がグループをイジメる場合(教員が数人の同僚に向かってなど)がある。また、同様に、グループが個人をイジメる場合、とグループが別のグループをイジメる場合もある。

【イジメ(Bullying)の具体例】

17例が示されているが、多いので2例だけ示す。

  1. 権力、地位、知識、行動を乱用し、他人を恐れさせ苦痛を与える
  2. 他人を怒鳴る、皮肉を言う、嘲笑する、侮辱する

●6.【白楽の感想】

《1》アカハラ改革は難しい

アカハラへの対処はセクハラより遅れている。学術界もそうだが、政界・産業界・メディアを含めすべての領域で、アカハラしてきた人が偉くなり、各界を支配している。

従って、アカハラを改革する仕組みがない。

と思うのは、考え過ぎだろうか?

《2》日本はアカハラ後進国

日本、米国、英国のアカハラ規則を比較すると、英国が一番厳しく、法令で禁止している。研究助成財団もしっかり対応している。次が米国で、アカハラそのものではないが、禁止している。研究助成財団も対応しつつある。最もダメなのが日本である。日本よ、ナントかしてください。

《3》刑法

刑法が示すアカハラ行為と罰則」で示したように、アカハラ行為を刑法で訴えたら、アカハラ行為が激減すると思う。どうして、アカハラ被害者は刑法に訴えないのだろう?

《4》アカハラの判定

アカハラ規則の多くは「・・・するとアカハラです」、とある。些細な行為がかなりあり、この規則では現場の混乱を引き起こしかねない。的外れな規則は守られない規則になってしまう。

例えば、東京大学ハラスメント相談所が「アカハラ」の次の行為を具体的行為としている。

論文指導を希望しても「忙しい」と言われ、長期間放置される

教員が本当に「忙しく」て後にしてほしい時、どうすれば、アカハラではないのか? 

一般的にヒマな教員は少ない。「長期間放置」はどの程度だと長期間になるのか? 論文指導して欲しい院生と教員の間で、「長期間」の感覚はかなり異なるだろう。

立命館大学は次の行為を具体的な「アカハラ」行為としている。

② 過度の課題を強要すること

ここで「過度」とはどういう程度なのだろう? 「強要」とはどういう行為だろう? 「頑張ってね」と激励すると「強要」になるのだろうか?

ここでは、2例だけ示したが、具体的な「アカハラ」行為のかなりの多くが定性的にしか書いておらず、境界線が示されず、不適切である。不適切だと、結局、規則が守れない、というか、規則が実情に合わず成り立たない。

逆に、この程度の行為はアカハラではありませんという事例を、具体的に記述すべきだ。

《5》相手は人間

白楽の経験を話そう。

ある年の卒論生が、修士レベルと思えるテーマを研究したいと言ってきた。研究を始める前は、卒論生の実力を把握できないし、学生の能力にはかなりの幅がある。修士レベルのテーマをしたいということは、修士課程まで進んで3年間で完成すれば良いと考えていると想定した。それで、やらせてみた。

しかし、1か月も経たないうちに、とても無理なことが明らかになった。白楽の研究室では、毎週1回、データ検討会を白楽と学生が1対1で行なっていたので、こちらのアドバイスをこなせない、1週間の進展がまるでないことは、本人もハッキリする。無理なことは、本人も身に染みてわかっているように思えた。

それで、もう少し荷が軽いテーマに切り替えようと提案したが、その卒論生は、プライドが非常に高く、頑として受け付けない。白楽は、困った。

仕方ないので、研究テーマを変更せずに進めたが、毎週1回のデータ検討会は形だけになった。結局、卒論は中身のないものになってしまった。この場合、卒論生から見たら、白楽は「過度の課題を強要」したのだろうか?

白楽の経験では、ほとんどの学生・院生は、研究テーマの荷を軽くしようとすると拒否する。学生・院生の方が「過度の課題」を要求し、「適度な課題」を「過」と受け止め、拒否する。自分で、遂行できないと理解しても、「過度の課題」を続けたがる。

●7.【白楽の手紙】

本文中の手紙を再掲する。

★文部科学省へ

文部科学省は「コレコレをアカハラ行為と定義する。そして、アカハラ行為をした者に次の処分を科す」という規則やガイドラインが見つからなかったので。

念のため、文部科学省に「御質問」で問い合わせた。以下のように「御質問」は回答されるのが原則、と文部科学省が書いている。

「御質問」については、原則として入力いただいたメールアドレス宛に回答させていただきますが、回答に時間を要する場合があります。また、内容によっては回答できかねることがありますので御了承ください。(文部科学省に関する御意見・お問合せ窓口案内:文部科学省

質問は以下の通り。

約20日前に「御質問」したが、回答がなかった。それで、再度、10日前に「御質問」した。それでも回答がない。

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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

●8.【コメント】

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