2021年3月23日掲載
ワンポイント:この事件が「2020年ネカト世界ランキング」の「4D」の「6」に挙げられたので記事にした。ソッソはカメルーンで育ち、カナダのモントリオール大学(Universite de Montreal)・博士院生になった。2020年4月(30歳?)、ネカトハンターのニック・ブラウウン(Nick Brown)が自分のブログで、ソッソの「2020年2月のScientific Reports」論文のデータねつ造・改ざん、自己盗用を指摘した。ソッソの3論文が撤回された。ただ、事件は単純ではなかった。ソッソは計画的なネカト者と思える。2人の架空の日本人(立命館大学のナカムラと総合研究大学院大学のナカムラ)を共著者とした論文も発表している。モントリオール大学がネカト調査をしているかどうか不明で、ソッソは無処分である。ソッソが処分されると仮定して、国民の損害額(推定)は2億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】
エティンデレ・ソッソ(Etindele Sosso、Faustin Armel Etindele Sosso、ORCID iD:https://orcid.org/0000-0002-1977-0991、写真出典)は、カメルーンで育ち、カナダのモントリオール大学(Universite de Montreal)・博士院生になった。医師免許はない。専門は神経性理学である。
2020年ネカト世界ランキングの「4D」の「6」に挙げられたので記事にした。
2020年4月(30歳?)、ネカトハンターのニック・ブラウン(Nick Brown、Nicholas J L Brown)がエティンデレ・ソッソ(Etindele Sosso)の「2020年2月のScientific Reports」論文のデータねつ造・改ざん、そして自己盗用を指摘した。
上記論文、及び関連する「2018年10月のBio Rxiv」論文が2020年6月に撤回された。
ソッソはデータねつ造・改ざん、自己盗用だけでなく、架空人物を共著者にする論文も発表していた。
例えば、ソッソの「2017年11月のJ Adv Res Biotech」論文では、日本人のオキト・ナカムラ(Okito Nakamura)とミツ・ナカムラ(Mitsu Nakamura)が共著者になっている。しかし、2人の日本人(立命館大学のナカムラと総合研究大学院大学のナカムラ)は実在していない架空人物である。
2021年3月22日(31歳?)現在、モントリオール大学がネカト調査しているかどうか不明で、ソッソは無処分である。
ソッソ事件は、ニック・ブラウン(Nick Brown)の丁寧で紳士的なネカトハンター振りが良く示された事件である。
モントリオール大学(Universite de Montreal)。写真出典
- 国:カナダ
- 成長国:カメルーン
- 医師免許(MD)取得:なし
- 研究博士号(PhD)取得予定:モントリオール大学
- 男女:男性
- 生年月日:不明。仮に1990年1月1日生まれとする。写真の見た目
- 現在の年齢:34 歳?
- 分野:神経生理学
- 不正論文発表:2016~2020年(26~30歳?)
- 発覚年:2020年(30歳?)
- 発覚時地位:モントリオール大学・博士院生
- ステップ1(発覚):第一次追及者はネカトハンターのニック・ブラウン(Nick Brown)で自分のブログに公表し、モントリオール大学に公益通報
- ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、「ニック・ブラウン(Nick Brown)のブログ」、「撤回監視(Retraction Watch)」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌・編集部。②英国とオーストラリアの2大学の調査委員会
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。調査したのかどうか不明
- 大学の透明性:発表なし(✖)
- 不正:データねつ造・改ざん、自己盗用、架空人物を共著者
- 不正論文数:3論文が撤回。「パブピア(PubPeer)」で21論文にコメント
- 時期:研究キャリアの初期から
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
- 処分:すると思う
- 日本人の弟子・友人:不明
【国民の損害額】
ソッソが処分されると仮定して、国民の損害額(推定)は2億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
出典:①Cognitive impairment is correlated with and unstable mental health profile
- 生年月日:不明。仮に1990年1月1日生まれとする。写真の見た目
- xxxx年(xx歳):xx大学(xx)で学士号取得
- xxxx年(xx歳):カメルーンのヤウンデ 第一大学(University of Yaounde I)で修士号取得:微生物学
- xxxx年(xx歳):チュニジアのチュニス中央大学(University Central of Tunis)で修士号取得:麻酔学
- xxxx年(xx歳):カナダのモントリオール大学(Universite de Montreal)・博士院生:神経性理学
- 2020年(30歳?):不正研究が発覚
- 2021年3月22日(31歳?)現在:カナダのモントリオール大学(Universite de Montreal)・博士院生を維持している
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★優秀な院生
エティンデレ・ソッソ(Etindele Sosso、Faustin Armel Etindele Sosso)は、カメルーンとチュニジアで修士号を取得し、カナダのモントリオール大学(Universite de Montreal)・博士院生になった。
2018-2019年のモントリオール大学・健康社会研究所(L’Institut Santé et société de l’UQAM)・奨学金を受賞した。写真(出典)はその授賞式。ソッソは右から2人目。
★発覚
2020年4月(30歳?)、ネカトハンターのニック・ブラウン(Nick Brown、Nicholas J L Brown、似顔絵出典)がエティンデレ・ソッソ(Etindele Sosso)のネカトを指摘した。 → 2020年4月21日のニック・ブラウウン(Nick Brown)のブログ記事:Nick Brown’s blog: Some issues in a recent gaming research article: Etindele Sosso et al. (2020)
引き続き、ネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik、写真出典)もソッソ論文のネカトを「パブピア(PubPeer)」で指摘した。「パブピア(PubPeer)」では21論文にコメントが付いている。
★内容
ニック・ブラウン(Nick Brown)のブログから内容と図表を借りて、以下、エティンデレ・ソッソ(Etindele Sosso)のネカトを理解していこう。
ニック・ブラウン(Nick Brown)が問題視した論文は以下の「2020年2月のScientific Reports」論文だった。
- Insomnia, sleepiness, anxiety and depression among different types of gamers in African countries.
Sosso FAE, Kuss DJ, Vandelanotte C, Jasso-Medrano JL, Husain ME, Curcio G, Papadopoulos D, Aseem A, Bhati P, Lopez-Rosales F, Becerra JR, D’Aurizio G, Mansouri H, Khoury T, Campbell M, Toth AJ.
Sci Rep. 2020 Feb 6;10(1):1937. doi: 10.1038/s41598-020-58462-0.
エティンデレ・ソッソ(Etindele Sosso)が第一著者で、共著者は16人。共著者の16人は、8か国、12の異なる大学・研究機関に所属している。
アフリカの9か国の53,634人のゲーマーに電子メールを送り、重複や不完全な回答を排除し、合計10,566人のゲーマーの回答を分析した(回答率は23.64%)。アフリカのゲーマー10,566人のゲーム障害または精神障害(不眠、不安、うつ病、ゲーム依存症)を解析した論文である。
データ収集だけで2015年11月~2017年6月の約1年8か月がかっているが、論文には研究資金の出所が記載されていない。
【問題点1.数値が同じ】
以下の表の同色枠の数値が同じ。1つだけ書くと、変数「Age」とカテゴリ「24–30」の列「t」で報告された数値は、モデル1と3の両方で29.741と同じ数値だった。
他の問題点も指摘されているが、拡大解釈すると、「2020年2月のScientific Reports」論文のデータはねつ造・改ざんではないかということだ。白楽と違って、ニック・ブラウン(Nick Brown)は紳士なので、「ねつ造・改ざん」などという下卑た言葉は何処にも使っていない。
論文の「方法」の冒頭で、「これは、モントリオール大学に承認されたプロジェクトMHPE(CERAS-2015-16-194-D)中に収集されたデータの二次分析です」とあるが、「プロジェクトMHPE」が何処にも見つからない。
ところが、2018年3月にモントリオール大学に提出したソッソの修士論文とデータがよく似ていることから、元データはソッソの修士論文だろうと、ニック・ブラウン(Nick Brown)は推察した。修士論文の本文はフランス語で書かれているが、ニック・ブラウン(Nick Brown)はフランス語に堪能だ。 → ソッソの2018年3月の修士論文Influence combinée des facteurs psychobiologiques environnementaux et des troubles du sommeil sur la cognition des jeunes adultes
修士論文は、2015年11月~2016年12月、モントリオール大学コミュニティのメンバー(1,344人)のデータを解析した論文である。
また、ソッソはプレプリント論文を「2018年10月のBio Rxiv」論文として発表していた。
- Insomnia and problematic gaming: A study in 9 low‐ and middle-income countries
Faustin Armel Etindele Sosso, Daria J. Kuss
bioRxiv doi: https://doi.org/10.1101/451724
この論文では、アフリカの9カ国から120,460人のゲーマーを対象に研究した結果を述べている。「2020年2月のScientific Reports」論文では、対象者が53,634人なので別の研究なハズだが、驚くべき偶然で、プレプリントで分析した回答者10,566人は「2020年2月のScientific Reports」論文の回答者とまったく同じ人数である。男性(9,366)と女性(1,200)の人数も2つのサンプルで同じだった。ただし、平均年齢と標準偏差は異なっていた。
ニック・ブラウンは「驚くべき偶然」と書いているが、5桁の数字(つまり、10,566人)が「偶然」で一致することはない。ねつ造データということだ。
「2018年10月のBio Rxiv」論文との違いもあるが、いくつかの数値が「驚くべき偶然」で一致していることから、「2020年2月のScientific Reports」論文のデータはプレプリント論文データを使用している(と推察される)。
【問題点2.文章が同じ】
「2020年2月のScientific Reports」論文の「序論」の文章の約80%、「考察」の文章の50%は、「2018年10月のBio Rxiv」論文と同じ、つまり、自己盗用だった。
以下は盗用比較図で、左が「2018年10月のBio Rxiv」論文の「序論」、右が「2020年2月のScientific Reports」論文の「序論」部分である。黄色が同じ文章。
上記と同じスタイルで、「考察」部分を、以下に比較した。左が「2018年10月のBio Rxiv」論文の「考察」、右が「2020年2月のScientific Reports」論文の「考察」部分である。黄色が同じ文章。
ニック・ブラウン(Nick Brown)は他にも丁寧にネカト疑惑を指摘している。
そして、ニック・ブラウン(Nick Brown)の指摘が契機となって、結局、「2018年10月のBio Rxiv」論文と「2020年2月のScientific Reports」論文は、2020年6月に撤回された。
★調査依頼
2020年4月24日、ニック・ブラウウン(Nick Brown)は、ダニエル・ラケンズ(Daniël Lakens)のツイッターを受け、「2020年2月のScientific Reports」論文の16人の共著者の所属先にネカト調査依頼のメールを送付した。 → 2020年5月24日のニック・ブラウウン(Nick Brown)のブログ記事:Nick Brown’s blog: The Silence of the RIOs
メールには、「30日後にこのメールと回答を公開する予定です」と記した。
なお、ニック・ブラウウンは、大学の研究倫理官にネカトと通報しようとしても、通報窓口が不明で、通報先を見つけるのが容易ではなかったと指摘している。
大学のウェブサイトからのリンクをたどれたのは9件の内、1つか2つだけだった。それで、ネカト疑惑者の所属する学部長または部門長、場合によると、学長に手紙を書いたと述べている。
この点、日本の大学はウェブサイトにネカト担当窓口の連絡先が書いてあるので、システムは素晴らしい。
2020年5月24日、ニック・ブラウウン(Nick Brown)はメールと回答を公開した。
調査すると回答してきたのは英国とオーストラリアの2大学だけだった。
メキシコ、インド、イタリア、ギリシャ、カナダ、アイルランド2大学、の計7大学は無回答だった。
エティンデレ・ソッソ(Etindele Sosso)の所属するカナダのモントリオール大学(Universite de Montreal)も無回答だった。
2021年3月22日現在、モントリオール大学がネカト調査しているかどうか不明である。
2021年3月22日現在、英国とオーストラリアの2大学のネカト調査の結果がどうなったのか、白楽は把握出来ていない。
★架空共著者?
ニック・ブラウウン(Nick Brown)が指摘しているのだが、エティンデレ・ソッソ(Etindele Sosso)は、以下の架空の人物(ニック・ブラウウンの英文のママ)を共著者としたり、自分は著者にならないで自分の論文を称賛・引用する論文をねつ造していた。この人たちのアドレスは、Yahoo や Gmailで所属大学のアドレスではない。
- Muller G. Hito, Department of Psychology and Sports Science, Justus-Liebig University, Germany
- Okito Nakamura, Global Research Department, Ritsumeikan University, Japan
- Mitsu Nakamura, The Graduated [sic] University of Advanced Studies, Japan
- John Okutemo, Usman University, Sokoto, Nigeria
- Eryn Rekgai, Department of Psychology and Sports Science, Justus-Liebig University, Germany
- Mbraga Theophile, Kinshasa University, Republic of Congo
- Bern S. Schmidt, Department of Fundamental Neuroscience, University of Lausanne, Switzerland
上記の姓名は、さまざまな組み合わせで、論文の著者になっている。
2017年の論文が多いが、2018年と2019年の論文もある。
以下のソッソの「2017年11月のJ Adv Res Biotech」論文では、日本人のオキト・ナカムラ(Okito Nakamura)とミツ・ナカムラ(Mitsu Nakamura)が共著者になっている。
- African burden of Mental Health: necessity of global exchange between researchers
J Adv Res Biotech. 2(2): 1-2. November 2017
Etindele Sosso FA, Okito Nakamura, Mitsu Nakamura
DOI: 10.15226/2475-4714/2/2/00123
実は、2人とも架空人物である。
共著者のオキト・ナカムラ(Okito Nakamura)の所属は立命館大学のグローバル・イノベーション研究機構(Global Research Department, Ritsumeikan University)となっている。しかし、立命館大学のグローバル・イノベーション研究機構に、オキト・ナカムラ(Okito Nakamura)はいない。ニック・ブラウウンが問い合わせたところ、立命館大学のグローバル・イノベーション研究機構の事務室のマリコ・カジイ(Ms. Mariko Kajii )が「オキト・ナカムラは在籍していない」と回答している。
よく似た姓名に、オオキ・ナカムラ(Oki Nakamura、中村大)がいる。2014年4月1日 ~ 2017年9月30日、立命館大学のグローバル・イノベーション研究機構、助教だった。 → 研究者学術情報データベース、保存版
もう1人の共著者のミツ・ナカムラ(Mitsu Nakamura)の所属は総合研究大学院大学(The Graduate University for Advanced Studies)となっている。しかし、総合研究大学院大学にミツ・ナカムラ(Mitsu Nakamura)はいない(サイト内検索 | 国立大学法人 総合研究大学院大学、保存版)。
少し似た名前にシン・ナカムラ(Shin Nakamura)がいた。シン・ナカムラは2001年に総合研究大学院大学を卒業し、現在、中央大学教授である(SOKENDAI Scientist Award | For Alumni | SOKENDAI、保存版)。
そして、ソッソの論文で使用された2人のナカムラのアドレスは、”okitonaka216@gmail.com”とmitsunaka216@gmail.comで、所属大学のアドレスではなかった。
★コーニール・ヴァンデラノッテ(Corneel Vandelanotte)
「2020年2月のScientific Reports」論文の第3著者は英国のセントラルクイーンズランド大学(Central Queensland University)・研究員のコーニール・ヴァンデラノッテ(Corneel Vandelanotte、写真出典)である。
以下の出典 → 2020年6月12日のレト・サプナル(Leto Sapunar)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:‘How I got fooled’: The story behind the retraction of a study of gamers – Retraction Watch
ヴァンデラノッテ研究員の被害状況が書かれている。
2019年3月、アフリカのアフリカのゲーマーのゲーム障害または精神障害を研究しているというソッソから、論文の改訂を助けてくれないかとのメールを、ヴァンデラノッテは受け取ったた。
ヴァンデラノッテは、初期キャリアの研究者に何度も助言していたので、ソッソの論文改訂に協力することにした。
数か月の間に、ヴァンデラノッテは3つのバージョンの論文を検討し、一般的な推奨事項と執筆アドバイスをした。
最初の原稿は問題点が多く、分析のいくつかは意味がないので、やり直すことを勧めた。 しかし、元データを見ることを求めなかった。
ある時点で、ヴァンデラノットは、ソッソの大学の統計学者に分析を手伝ってもらうことを勧めた。 しかし、ソッソは彼の提案を無視し、テキストの編集を求め続けた。
そして、最終バージョンで、ヴァンデラノッテが第3著者としてリストされた。この時、合計16人の共著者がいることに驚いた。
★ダリア・クス(Daria Kuss)
「2020年2月のScientific Reports」論文の第2著者は英国のノッティンガムトレント大学(Nottingham Trent University)・準教授のダリア・クス(Daria Kuss、写真出典)である。
ヴァンダラノッテと同じように、ソッソの論文の改訂に協力したが、疑念が提起されるまで生データを見ていなかった。
データ収集と分析はソッソが単独で責任を負っている、とクス準教授は主張した。
ただ、クス準教授の場合、プレプリント論文の「2018年10月のBio Rxiv」論文でも共著者になっていた。この論文では、著者はソッソとクス準教授の2人だけである。
クス準教授の説明は、疑念が提起されなければ共著者のママで、提起されると自分に責任はないと、都合のいいところだけ「いいとこどり」している、と白楽は思った。
●【ねつ造・改ざんの具体例】
上記したので省略
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
★パブメド(PubMed)
2021年3月22日現在、パブメド(PubMed)で、エティンデレ・ソッソ(Etindele Sosso、Faustin Armel Etindele Sosso)の論文を「Etindele Sosso [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2016~2021年の6年間の9論文がヒットした。
2021年3月22日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。
★撤回監視データベース
2021年3月22日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでエティンデレ・ソッソ(Etindele Sosso、Faustin Armel Etindele Sosso)を「Etindele Sosso」で検索すると、0論文が訂正、0論文が懸念表明、 3論文が撤回されていた。
「2016年12月のSleep Sci.」論文が2017年3月に、「2018年10月のBio Rxiv」論文が2020年6月に、「2020年2月のScientific Reports」論文が2020年6月に、撤回された。
★パブピア(PubPeer)
2021年3月22日現在、「パブピア(PubPeer)」では、エティンデレ・ソッソ(Etindele Sosso、Faustin Armel Etindele Sosso)の論文のコメントを「”Etindele Sosso”」で検索すると、21論文にコメントがあった。
●7.【白楽の感想】
《1》根っからのネカト者
エティンデレ・ソッソ(Etindele Sosso、写真出典)はカメルーンで育ち、カナダのモントリオール大学(Universite de Montreal)・博士院生になった。
データねつ造・改ざん、自己盗用、架空人物を共著者と、かずかずの悪事を働いていた。ソッソは何処で間違えたか、生き方として不正で学術界を泳ぎ渡ろうとしたと思える。
こうなると、学術界としてはソッソを排除するしかない。早く発見して被害がすくなくて良かったという状況だ。
《2》ニック・ブラウンの流儀
ソッソ事件は、ニック・ブラウン(Nick Brown)の丁寧で紳士的なネカトハンター振りが良く示された事件である。
ニック・ブラウウン(Nick Brown)が、共著者の所属する大学の研究倫理官に丁寧な手紙を書いている。以下英文のママ、冒頭部分を示すが、とても参考になる。全文は → 2020年5月24日のニック・ブラウウン(Nick Brown)のブログ記事:Nick Brown’s blog: The Silence of the RIOs
―――
From: Nicholas Brown <nicholas.brown@lnu.se>
Sent: 24 April 2020 16:04
To: [9 people]
Subject: Possible scientific misconduct in an article published in Nature Scientific Reports
First, allow me to apologise if I have addressed this e-mail to any of you in error, and also if my use of the phrase “Research Integrity Officer” in the above salutation is not an accurate summary of your job title. I had some difficulty in establishing, from your institution’s web site, who was the correct person to write to for questions of research integrity in many cases, including [list]. In those cases I attempted to identify somebody who appears to have a senior function in the relevant department. In the case of [institution], I only found a general contact address — I am trying to reach someone who might have responsibility for the ethical conduct of “XXX” in the XXX Department.
以下略
この英文、同様な問い合わせを手紙を書く時の参考になりますね。
《3》被引用数つり上げネカト論文
2021年1月28日、研究公正局は、テキサス大学健康科学センター・ヒューストン校・ポスドクだったイビン・リン(36歳?)の不正を発表し、10年間の締め出し処分を科した。 → イビン・リン(Yibin Lin)(米) | 白楽の研究者倫理
イビン・リンの不正は「自分の論文被引用数をあげるため、架空の著者のネカト論文を多数発表」だが、ソッソも、自分は著者にならないで自分の論文を称賛・引用する論文をねつ造していた。
被引用数つり上げネカト論文(及び、まとも論文)は、学術論文界にかなり浸透しているのかもしれない。
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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。しかし、もっと大きな視点では、日本は国・社会を動かす人々が劣化している。どうすべきなのか?
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●9.【主要情報源】
① 2020年4月17日のナタリー・コイル博士(Natalie Coyle)の「Platinum Paragon」ブログ記事:Are 30% of African Gamers Addicted? Exploring the Data
② 2020年4月21日のニック・ブラウウン(Nick Brown)のブログ記事:Nick Brown’s blog: Some issues in a recent gaming research article: Etindele Sosso et al. (2020)
③ 2020年4月23日のニック・ブラウウン(Nick Brown)のブログ記事:Nick Brown’s blog: The Mystery of the Missing Authors
④ 2020年5月24日のニック・ブラウウン(Nick Brown)のブログ記事:Nick Brown’s blog: The Silence of the RIOs
⑤ 2020年6月12日のレト・サプナル(Leto Sapunar)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:‘How I got fooled’: The story behind the retraction of a study of gamers – Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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