ディープティ・マルホトラ(Deepti Malhotra)(米)

2019年11月20日掲載 

ワンポイント:2019年11月4日(37歳?)、研究公正局は、2005 – 2011年(23 – 29歳?)にジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院(Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health)・院生・ポスドクだったマルホトラにねつ造・改ざんがあったと発表し、2019年10月1日から4年間の締め出し処分を科した。なお、マルホトラはインドに育ち、インド工科大学ボンベイ校(Indian Institutes of Technology Bombay)で修士号を取得後、米国の院生になった。事件後、マルホトラの消息は不明だが、研究者を廃業し、インドに帰国したと思われる。国民の損害額(推定)は2億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

ディープティ・マルホトラ(Deepti Malhotra、女性、ORCID iD:、顔写真見つからない)は、インドに育ち、インド工科大学ボンベイ校(Indian Institutes of Technology Bombay)で修士号を取得後、2005 – 2011年(23 – 29歳?)、米国のジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院(Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health)・院生・ポスドクになった。専門は病理学(肺がん)である。

ネカト発覚の経緯は不明であるが、2014年12月1日(32歳?)、マルホトラが第一著者の「2011年のJ Clin Invest.」論文が撤回された。

その前年の2013年末頃(31歳?)、ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院がネカト調査を始めたと思われる。

なお、ネカト調査に伴い、マルホトラは研究者を廃業し、インドに帰国したと思われる。

2019年11月4日(37歳?)、ネカト発覚から6年後、研究公正局は、マルホトラにねつ造・改ざんがあったと発表し、2019年10月1日から4年間の締め出し処分を科した。

ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院(Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health)。写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:インド
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院
  • 男女:女性
  • 生年月日:不明。仮に1982年1月1日生まれとする。2000年に大学入学した時を18歳とした
  • 現在の年齢:39 歳?
  • 分野:病理学
  • 最初の不正論文発表:2008年(26歳?)
  • 不正論文発表2008-2012年(26-30歳?)
  • 発覚年:2013年末頃(31歳?)
  • 発覚時地位:ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院・ポスドク
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は不明
  • ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院・調査委員会。②研究公正局
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:研究公正局でクロ判定(〇)
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:研究公正局は5報(含・博士論文)を問題視した。3論文が撤回
  • 時期:研究キャリアの初期
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けられなかった(Ⅹ)
  • 処分: NIHから 4年間の締め出し処分
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は2億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

  • 生年月日:不明。仮に1982年1月1日生まれとする。2000年に大学入学した時を18歳とした
  • 2000 – 2003年(18 – 21歳?):インドのデリー(Delhi University)で学士号を取得:生化学
  • 2003 – 2005年(21 – 23歳?):インドのインド工科大学ボンベイ校(Indian Institutes of Technology Bombay)で修士号取得:生化学
  • 2005 – 2011年(23 – 29歳?):ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院(Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health)で研究博士号(PhD)を取得し、ポスドク
  • 2011 – 2013年(29 – 31歳?):NIH・ポスドク
  • 2013年末頃(31歳?):不正研究が発覚(推定)
  • 2014年12月1日(32歳?):マルホトラが第一著者の「2011年のJ Clin Invest.」論文が撤回
  • 2019年11月4日(37歳?):研究公正局がネカトと発表

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★経歴

ディープティ・マルホトラ(Deepti Malhotra)はインドで生まれ、インドのインド工科大学ボンベイ校(Indian Institutes of Technology Bombay)で生化学の修士号を取得後、2005年(23歳?)に、米国のジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院(Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health)の院生になった。

ボスのシャム・S・ビスワル(Shyam S. Biswal、写真出典)の指導下に研究博士号(PhD)を取得し、同じ研究室でポスドクを務めた。

2011年(29歳?)、NIH・米国立ヒトゲノム研究所のポスドクに移籍した。ボスは中国人のインジ・ヤン(Yingzi Yang、写真出典)で、ヤンは2015年にハーバード大学歯科大学院・教授に栄転した。

★論文撤回

発覚の経緯は不明であるが、2014年12月1日(32歳?)、マルホトラが第一著者の「2011年のJ Clin Invest.」論文がネカトで撤回された。
 → 2014年12月1日の撤回告知:JCI – Denitrosylation of HDAC2 by targeting Nrf2 restores glucocorticosteroid sensitivity in macrophages from COPD patients

2016年2月1日(34歳?)、さらに、「2008年のAm J Respir Crit Care Med」論文と「2009年のAm J Respir Crit Care Med」論文もネカトで撤回された。2論文ともマルホトラが第一著者だった。
 → 2016年2月1日の撤回告知:Retraction: Decline in NRF2-regulated Antioxidants in Chronic Obstructive Pulmonary Disease Lungs Due to Loss of Its Positive Regulator, DJ-1; Heightened Endoplasmic Reticulum Stress in the Lungs of Patients with Chronic Obstructive Pulmonary Disease: The Role of Nrf2-Regulated Proteasomal Activity | American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine

但し、これらの論文撤回に関して、ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院はなにも発表しなかった。

従って、論文撤回時点では、ネカト者が誰なのか特定されていなかった。

★ネカト

2019年11月4日(37歳?)、最初の論文撤回から5年後、研究公正局がマルホトラをねつ造・改ざんでクロと発表した。2019年10月1日から4年間の締め出し処分を科した。 → 2019年11月4日: Case Summary: Malhotra, Deepti

これでようやく、ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院がネカト調査をしていたことも判明した。

また、マルホトラは2013年(31歳?)にNIH・ポスドクを終了してから、消息が不明である。その理由は、2013年末頃にネカトが発覚し、研究者を廃業したのだと推察できる。

マルホトラは 、2014年6月に出版した論文を最後にその後、論文を出版していない。これも、2013年末頃にネカトが発覚したことを裏付ける。

研究公正局がクロと発表するのに、最初の論文撤回から5年もかかった事情はわからないが、多分、マルホトラの米国滞在ビザが切れ、母国インドに帰国したことも一因ではないだろうか(インドへの帰国は推定)。

【ねつ造・改ざんの具体例】

2019年11月4日(37歳?)の研究公正局の発表では、2008-2012年の以下の4論文と2010年8月の博士論文の計5論文に意図的なねつ造・改ざんがあったとした。

  1. Am J Respir Crit Care Med. 2008;178(6):592-604: Retracted in: Am J Respir Crit Care Med. 2016 Feb 1;193(3):344.
  2. Am J Respir Crit Care Med. 2009;180(12):1196-1207: Retracted in: Am J Respir Crit Care Med. 2016 Feb 1;193(3):344.
  3. J Clin Invest. 2011;121(11):4289-4302 : Retracted in: J Clin Invest. 2014 Dec;124(12):5521.
  4. PLoS Comput Biol. 2012;8(7):e1002597
  5. 博士論文:Malhotra D. “Transcription Factor Nuclear Factor (Erythroid-Derived 2) Receptor 2 (Nrf2), A Master Regulator of Environmental Stress Response, Is A Modifier Of Chronic Obstructive Pulmonary Disease (COPD).” A dissertation submitted to the Johns Hopkins University in conformity with the requirements for the degree of Doctor of Philosophy, August 2010 (hereafter referred to as the “Ph.D. Thesis”).

ねつ造・改ざんの全体像は以下のようだ。

ウエスタンブロット画像のねつ造・改ざん、また、PCR生成物のネガティブDNAゲル画像を反転し再ラベルして再利用した。問題画像は4出版論文中の17画像、博士論文中の12画像だった。定量値、統計値、文章もねつ造・改ざんデータに合わせて改変した。

しかし、画像のねつ造・改ざんは文字で説明されてもわかりにく。

仕方がない。「2011年のJ Clin Invest」論文で研究公正局の指摘画像を示して見ていこう。

★「2011年のJ Clin Invest」論文

「2011年のJ Clin Invest」論文の書誌情報を以下に示す。2014年12月に撤回された。

研究公正局の指摘箇所を以下のようだ(図の出典は原著)。

図2D(以下のD)のバンドは図4A(以下のA)の画像を再ラベルし再利用したとある。以下に2画像を上下に並べるが、どこを再利用したのかを示してくれないとよくわからない。

図1A(以下のA)のバンドは図4A(上記のA)の画像を再ラベルし再利用したとある。これも、どこを再利用したのかを示してくれないとよくわからない。

図3F(以下のF)のバンドは、「2012年のPloS Comp Biol」論文の図3B(以下のb)の最下段のパネルのの画像を再ラベルし再利用したとある。これも、そう言われればそうかもしれないというレベルでしかわからない。

図2A(以下のA)をポジティブ画像にし、反転したのを図3B(上記のb)の一部に再利用した。これも、どこを再利用したのかを示してくれないとよくわからない。

他は博士論文の図がらみである。第三者は博士論文に簡単にはアクセスできないので、断念した。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2019年11月19日現在、パブメド(PubMed)で、ディープティ・マルホトラ(Deepti Malhotra)の論文を「Deepti Malhotra [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2005~2014年の10年間の15論文がヒットした。

「Malhotra D[Author]」で検索すると、1978~2019年の42年間の292論文がヒットした。本記事で問題にしている研究者以外の論文が多数含まれていると思われる。

2019年11月19日現在、「Malhotra D[Author] AND Retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、2008~2011年の3論文が撤回されていた。
.
★撤回論文データベース

2019年11月19日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回論文データベースでディープティ・マルホトラ(Deepti Malhotra)を「Malhotra, Deepti」で検索すると、6論文がヒットし、パブメドの論文撤回リストと同じ3論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2019年11月19日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ディープティ・マルホトラ(Deepti Malhotra)の論文のコメントを「Deepti Malhotra」で検索すると4論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》詳細は不明

この事件の詳細は不明です。

2019年11月4日という非常に最近、研究公正局がネカトと公表した事件なのに、ネカト発生状況の情報がない。マルホトラの顔写真を含め、マルホトラの情報はウェブから一掃されている。ネカト発覚が6年前と古いことも起因しているかもしれない。

それで、ネカト防止策は、この事件からは学べない。

《2》関連論文は?

研究公正局はマルホトラの博士論文にもネカトがあったと結論している。ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院は博士号を剥奪するんでしょうね。

また、マルホトラはジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院の後にNIH・米国立ヒトゲノム研究所のポスドクに移籍した。その時に出版した以下の論文についてもネカト調査をすべきじゃないんでしょうかね?

  1. Wnts’ fashion statement: from body stature to dysplasia.
    Malhotra D, Yang Y.
    Bonekey Rep. 2014 Jun 11;3:541. doi: 10.1038/bonekey.2014.36. eCollection 2014. Review.
  2. Activation of Hedgehog signaling by loss of GNAS causes heterotopic ossification.
    Regard JB, Malhotra D, Gvozdenovic-Jeremic J, Josey M, Chen M, Weinstein LS, Lu J, Shore EM, Kaplan FS, Yang Y.
    Nat Med. 2013 Nov;19(11):1505-12. doi: 10.1038/nm.3314. Epub 2013 Sep 29.

ボスのヤンは2015年にハーバード大学歯科大学院・教授に栄転してしまった。今さらNIHに申立てする人はいない?

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日本がもっと豊かに、そして研究界はもっと公正になって欲しい(富国公正)。正直者が得する社会に!
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●9.【主要情報源】

① 研究公正局の報告:(1)2019年11月4日: Case Summary: Malhotra, Deepti(2023年10月にリンク切れる)。(2)2019年11月14日の連邦官報:2019-24691.pdf 。(3)2019年11月14日の連邦官報:Federal Register :: Findings of Research Misconduct
② 2016年2月15日のシャノン・パラス(Shannon Palus)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Johns Hopkins investigation leads to retraction of two lung papers, one highly cited – Retraction Watch
③ 2019年11月6日のアダム・マーカス(Adam Marcus)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Former Johns Hopkins postdoc sanctioned by Feds for data fabrication – Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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