2019年3月31日掲載。
ワンポイント:フランスで医師免許・博士号を取得し、1997年(38歳)、スイス・ジュネーブ大学・教授(神経精神医学)、ジュネーブ大学付属病院・精神病遺伝学ユニット長に就任し、18年間、勤務した。2013年(54歳)、論文のデータねつ造が発覚した。さらに、2014年(55歳)、ネカトとは別に約1億9千万円の研究費横領が発覚し、フランスで逮捕された。国民の損害額(推定)は10億円(大雑把)。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】
アラン・マラフォス (Alain Malafosse、 写真出典)は、アルジェリア系フランス人で、フランスで医師免許・博士号を取得した。1997年(38歳)、スイス・ジュネーブ大学・教授(神経精神医学)、ジュネーブ大学付属病院・精神病遺伝学ユニット長に就任し、18年間、勤務した。
2013年(54歳)、論文のデータねつ造が発覚した。
2014年2月(55歳)、データねつ造とは別に、170万フラン(約1億9千万円)の研究費横領でスイス・ジュネーブ州検察から逮捕状が出た。
しかし、逮捕される前に、南仏のモンペリエ近くの小さな街・サンブレ(Saint-Bres)市の副市長(市会議員、評議員?)に再選され、フランスに移住していた。
2014年6月(55歳)、フランスのサンブレで逮捕された。
スイス・ジュネーブ大学病院(Hopitaux Universitaires de Geneve:HUG)。出典
スイス・ジュネーブ大学病院(Hopitaux Universitaires de Geneve:HUG)入口。出典
- 国:スイス
- 成長国:フランス
- 医師免許(MD)取得:xx大学
- 研究博士号(PhD)取得:xx大学
- 男女:男性
- 生年月日:1959年1月1日生まれとする。2014年4月3日の新聞記事に55歳とあるので。
- 現在の年齢:65 歳
- 分野:精神病遺伝学
- 最初の不正論文発表:2013年(54歳)
- 不正論文発表:2013年(54歳)
- 発覚年:2014年(55歳)
- 発覚時地位::スイス・ジュネーブ大学・教授(神経精神医学)、ジュネーブ大学付属病院・精神病遺伝学ユニット長
- ステップ1(発覚):内部告発。第一次追及者は詳細不明
- ステップ2(メディア): 「The Local」紙、「撤回監視(Retraction Watch)」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①スイス・ジュネーブ大学医学部の内部調査。2014年1月~2014年5月。調査期間は4か月。②スイス・ジュネーブ州検察(研究費横領に関して)。③ スイスで裁判(研究費横領に関して)(?)
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
- 大学の透明性:実名報道だが機関のウェブ公表なし(△)
- 不正:ねつ造・改ざん、研究費横領
- 不正論文数:1報(撤回)
- 時期:研究キャリアの中期
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)をやめた・続けられなかった(Ⅹ)(研究費横領に関して)
- 処分:スイス・ジュネーブ州検察の逮捕状(研究費横領に関して)。大学辞職(研究費横領に関して)。ネカトでの処分なし
- 日本人の弟子・友人:不明
●2.【経歴と経過】
不明点が多い。
- 生年月日:1959年1月1日生まれとする。2014年4月3日の新聞記事に55歳とあるので。
- 19xx年(xx歳):フランスの〇×医科大学を卒業。医師免許
- 19xx年(xx歳):フランスの〇×医科大学で研究博士号(PhD)取得
- 1988年(29歳)(推定):フランス国立科学研究センター(CNRS)・神経生物・分子細胞研究室ポスドク
- 1991年(32歳)(推定):フランス国立保健医学研究所(INSERM)・実験医学研究室を主宰
- 1997年(38歳):スイス・ジュネーブ大学医学部・神経精神医学・教授(推定)、大学病院・精神病遺伝学ユニット長(推定)
- 2013年(54歳):データねつ造論文を出版。この時点で、精神病遺伝学では世界的に著名である
- 2014年(55歳):データねつ造が発覚する。フランスに移動。サンブレ(Saint-Bres)市の副市長(市会議員、評議員?)に就任し、同時に、大学と大学病院は辞職
- 2014年(55歳):研究費の私財化で、スイス・ジュネーブ州検察からの逮捕状。フランスが逮捕。
●3.【動画】
以下は事件の動画ではない。
★【動画】
アラン・マラフォスの学術講演「Conference Alain Malafosse, Fondation FondaMental, 12 decembre 2012」、(仏語)54分48秒、fondationfondamentalが2012/12/19 に公開
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★研究内容
アラン・マラフォスは、大雑把に言えば、「精神病は遺伝子(制御の変化)によって引き起こされる」という、とても画期的で魅力的な学説を提唱していた。
2013年6月6日(54歳)、アラン・マラフォスは、「児童虐待を受けている子供はグルココルチコイド受容体(glucocorticoid receptor)遺伝子NR3C1がメチル化(遺伝子の変化)され、それが視床下部-下垂体-副腎系(hypothalamic-pituitary-adrenal axis、HPA軸)の変化を引き起こし、大人になって双極性障害を引き起こす」という「2014年のBr J Psychiatry」の論文を発表した。著者7人の「2014年のBr J Psychiatry」論文で、マラフォスは、 6番目の著者だった。紙版は2014年1月の出版だが、電子版は2013年6月6日に出版された。
ここで、「双極性障害とは何か?」を学んでおこう(以下出典:双極性障害 – Wikipedia)。
双極性障害(そうきょくせいしょうがい、英: bipolar disorder)は、躁状態と鬱状態という病相を繰り返す精神疾患である。ICD-10では、うつ病とともに「気分障害」のカテゴリに含まれている。古い呼び名では躁うつ病、あるいは他の名称として双極性感情障害とも言う。
一卵性双生児における一致率は50 – 80%と、二卵性双生児 (5 – 30%) よりも高いことから、遺伝的要因の関与が高いことが指摘されている。
関連遺伝子を多数持ち潜在的リスクのある人が、ストレスなどの外的要因にさらされた時に発生すると考えられ、統合失調症と同様に、ストレス脆弱モデルという概念で説明されうる。
写真出典:https://fuzzyscience.wikispaces.com/Bipolar+Disorder
★データねつ造
アラン・マラフォスは研究費不正で逮捕されるのだが、データねつ造でも告発された。データねつ造は研究費不正の告発より後だが、ココはネカトブログだし、話しが単純なのでこちらを先に書く。
2014年1月(55歳)、アラン・マラフォスがデータねつ造しているとの公益通報がジュネーブ大学医学部長アンリ・ブエナムン(Henri Bounameaux)になされ、医学部内の調査委員会が調査を開始した。
写真出典:ジュネーブ大学医学部長アンリ・ブエナムン(Henri Bounameaux)
その結果、2013年6月6日電子版出版の以下の「2014年のBr J Psychiatry」論文にデータねつ造があったことが判明し、2014年8月に撤回された。
- Childhood maltreatment and methylation of the glucocorticoid receptor gene NR3C1 in bipolar disorder.
Perroud N, Dayer A, Piguet C, Nallet A, Favre S, Malafosse A, Aubry JM.
Br J Psychiatry. 2014 Jan;204(1):30-5. doi: 10.1192/bjp.bp.112.120055. Epub 2013 Jun 6.
PMID:23743517
つまり、遺伝子NR3C1のメチル化に変化があったと論文に記載されていたが、実際、変化を示す実験データはなかった。
その点に関して、アラン・マラフォスは「私に責任がある」と述べ、6人の共著者は「アラン・マラフォスのデータねつ造を全く知らなかった」と述べている。
なお、上記撤回論文の3か月後の2014年4月に出版した「2014年のWorld J Biol Psychiatry」論文もよく似た論文である。大学の調査委員会はこの論文を調査したのかどうかわからないが、大丈夫なのだろうか? 信用する研究者はいないと思うけど。
- The Tutsi genocide and transgenerational transmission of maternal stress: epigenetics and biology of the HPA axis.
Perroud N, Rutembesa E, Paoloni-Giacobino A, Mutabaruka J, Mutesa L, Stenz L, Malafosse A, Karege F.
World J Biol Psychiatry. 2014 May;15(4):334-45. doi: 10.3109/15622975.2013.866693. Epub 2014 Apr 1.
「妊娠時にPTSD(心的外傷後ストレス障害)だった母親から生まれた子供はグルココルチコイド受容体(glucocorticoid receptor)遺伝子NR3C1のメチル化(遺伝子の変化)が多く、視床下部-下垂体-副腎系(hypothalamic-pituitary-adrenal axis、HPA軸)の変化を引き起こしているかもしれない」という内容である。著者8人でアラン・マラフォスは7番目の著者である。
なお、ネカトがハッキリする前に大学を辞職していたため、そしてもっと大きい事件である研究費横領が発覚したため、ネカトによる処分はなかったようだ。
★研究費不正
2013年12月(55歳)、データねつ造の告発の1か月前、アラン・マラフォスが公的研究費を私財化していると、スイス、ジュネーブ大学に公益通報があった。
2014年2月(55歳)、170万フラン(約1億9千万円)の研究費詐欺でスイス・ジュネーブ州検察からの逮捕状が出た。
しかし、逮捕される前の2013年4月(54歳)、スイスのジュネーブ大学と大学病院を辞職し、南仏のモンペリエ近くの小さな街・サンブレ(Saint-Bres)市の副市長(市会議員、評議員?)に再選され、フランスに移住し、就任していた。フランスは自国民を他国に引き渡すことはないとの話だ。
地図で見ると、スイスのジュネーブ(赤楕円)は、ほぼフランスに囲まれている。モンペリエ(青楕円)は450㎞ほど離れている。サンブレ(Saint-Bres)はモンペリエ郊外の人口630人(2007年)の小さな街である(SAINT-BRES – Map of Saint-Bres 30500 France)。
本当にアラン・マラフォスが公的研究費を私財化したのだろうか?
2014年4月3日の記事によると以下のようだ(原典がフランス語なので誤解があるかも):Herault : un conseiller municipal de Saint-Bres recherche par la Suisse
マラフォスは私財化していないと主張している。
1995年以来、ジュネーブ大学病院の精神科はグループで、自殺の生物医学的原因を研究していた。自殺を試みた自殺精神疾患者のエピジェネティクス研究である(エピジェネティクス、epigenetics:DNA塩基配列の変化を伴わない後天的な遺伝子制御の変化)。
この研究には研究材料として自殺を試みた多数の患者が必要である。しかし、スイスだけで患者を集めるのは非常に困難だった。それで、フランスで、フランスでも困難だが、フランスでも集めていた。
フランスのモンペリエに関連のNPO法人を設立し、そのNPO法人の活動として、自殺精神疾患患者を集め、患者からのアンケートや血液サンプルを収集し、スイス・ジュネーブ大学病院の精神科研究室に送ってもらう。それらを元に、自殺精神疾患者のエピジェネティクス研究、神経学的評価を行なった。
マラフォスのチームがフランスのNPO法人に支払った額は毎年約10万ユーロ(約1,200万円)だった。支払いは、スイス・ジュネーブ大学のマラフォス研究室の予算で執行していた。
マラフォスは、「この支払はスイス・ジュネーブ大学病院(HUG)のルールに従っている。大学病院事務局の関知しないところで、勝手に執行したのではない」と主張している。
そして、「私(マラフォス)は、ねつ造疑惑の調査委員会が設立されたことを2013年11月17日に知ったが、研究費横領捜査の存在は知りませんでした。2013年12月、病気休暇でスイスからフランスのサンブレ(Saint-Bres)に行きました。2014年1月初めにスイスに戻った時、私は自分のアパートの鍵が変更されていたので、何か異常なことが起こっていることに気がついて、それ以来、アパートには戻りませんでした」。
ただ、フランスのモンペリエのNPO法人の住所がマラフォスの親戚の住所と同じなので、このNPO法人は研究費の私財化するためのダミー組織だと疑われた。
写真出典
2014年6月25日(55歳)、スイス警察の国際的依頼で、南仏のモンペリエ近くにある小さな街・サンブレ(Saint-Bres)でマラフォスは逮捕され、7月1日に正式に副市長(市会議員、評議員?)を辞職した(Scoop34: EXCLUSIF/ Mandat d’arret, Alain Malafosse entendu)。
2014年11月(55歳)時点で、スイス・ジュネーブ大学・神経科学センターの研究グループのリストから、アラン・マラフォスは削除されていた(University of Geneva – Geneva Neuroscience Center)。ただ、アラン・マラフォスのサイトは残っていた:University of Geneva – Geneva Neuroscience Center。このサイトは2019年3月30日現在、削除されていたが、2016年4月12日の保存版は見つかった。
アラン・マラフォスは逮捕された後、有罪なのか無罪なのか白楽は把握できていない。但し、2015年以降、論文を発表していない。大学教授に戻れず、研究者を廃業したと思われる。
2017年10月12日(58歳)、南フランスのポー(Pau)で開業医として働いていた。2019年3月30日現在(60歳)も同じ開業医として働いていると思われる。
→ Dr Alain Malafosse, Medecin generaliste a Pau
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
2019年3月30日現在、パブメドhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmedで、アラン・マラフォス (Alain Malafosse)の論文を「Alain Malafosse [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2014年の13年間の80論文がヒットした。
「Malafosse A[Author]」で検索すると、1986~2014年の39年間の164論文がヒットした。
2019年3月30日現在、「Malafosse A[Author] AND Retracted 」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、下記の1論文が撤回されていた。2014年1月の論文が2014年8月に撤回された。
- Childhood maltreatment and methylation of the glucocorticoid receptor gene NR3C1 in bipolar disorder.
Perroud N, Dayer A, Piguet C, Nallet A, Favre S, Malafosse A, Aubry JM.
Br J Psychiatry. 2014 Jan;204(1):30-5. doi: 10.1192/bjp.bp.112.120055. Epub 2013 Jun 6.
PMID:23743517
★撤回論文データベース
2019年3月30日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回論文データベースでアラン・マラフォス (Alain Malafosse)を検索すると、1論文がヒットし、1論文が撤回されていた。
→ Retraction Watch Databaseの上右「Nature of Notice」の右にチェックを入れ、「Retraction」にすると、撤回論文(数)が表示される。
★パブピア(PubPeer)
2019年3月30日現在、「パブピア(PubPeer)」は、アラン・マラフォス (Alain Malafosse)の1論文にコメントしている。
●7.【白楽の感想】
《1》国外逃亡
スイスの大学で事件を起こしたフランス国籍の教授が、逮捕される前に、自分の家があるフランスの小さな街・サンブレ(Saint-Bres)に移動した。フランスは自国民を他国に引き渡すことはない。EUになって欧州域内は自由に移動でき、就職できても、スイスはEU加盟国ではない。犯罪者は引き渡さない。という記述もあったが、結局、引き渡したようだ。
日本に在住の外国人研究者が事件を起こしたとき、海外に逃亡したらどうなるのだろうか?
あるいは逆に、外国に在住の日本人研究者が事件を起こしたとき、日本に逃亡したらどうなるのだろうか?
各国は他国からの要求があっても犯罪人を引き渡す義務を負うものではないが、犯罪人引渡し条約を2国間または多国間で結ぶことで犯罪人の引渡しの義務を相互に約する。2016年現在、日本は2か国、フランスは96か国、イギリスは115か国、アメリカは69か国、韓国は25か国と犯罪人引渡し条約を締結している。(犯罪人引渡し条約 – Wikipedia)
犯罪は逃亡国によっては、引き渡されるかもしれない。しかし、ネカトは犯罪ではないので、国外逃亡可能である。
日本人研究者は外国で研究ネカト事件を起こしても、日本のメディアで報道されることはマレだから、日本で大学教授・研究者に在職している人がかなりいる。調査し対処する公的機関を設けるべきだろう。
《2》著者7人の論文の6番目著者
名門大学の臨床医学系の教授が55歳で小さな街の副市長(市会議員、評議員?)に就任した。
ふ~ん。欧州ではよくあることなのだろうか? 欧州や米国では大学教授から国会議員になった人はそこそこいるので、地方の首長も珍しくないのだろう。
日本でもいる。
上智大学・教授から衆議院議員の猪口邦子、古くは東京教育大学教授だった美濃部亮吉(みのべりょうきち)が都知事になった。
《3》著者7人の論文の6番目著者
撤回された「2014年のBr J Psychiatry」論文は、著者7人の論文で、アラン・マラフォスは6番目の著者である。生物医学論文の常識では、この論文が高く評価されれば、栄誉は第一著者または最終著者が得る。著者7人の論文の6番目著者は、論文への貢献度が最も低い研究者で、まあ、つけたしである。栄誉はいかない。
それなのにどうして、悪いことの責任だけをとらされるのか? 論文ねつ造の責任が第一著者か最終著者にいかないのは不思議だし、6番目の著者にいくのは「かなり」不思議である。語られていない事実があるように思えて仕方ない。
それに、撤回された「2014年のBr J Psychiatry」論文の大きなポイントは、「遺伝子NR3C1がメチル化(遺伝子の変化)され」たことだ。この部分がデータねつ造だと、論文撤回は当然だが、逆に、この部分のデータをアラン・マラフォスが提供したなら、著者7人の論文の6番目というのはヘンだ。
著者7人の所属を並べてみよう。全員、ジュネーブ大学医学部に所属し、番号4に同じ研究室の人が2人いるが、他は研究室が異なる。
1. Nader Perroud, MD, Department of Mental Health and Psychiatry, Service of Psychiatric Specialties, University Hospitals of Geneva, and Department of Psychiatry, University of Geneva;
2. Alexandre Dayer, MD, Department of Mental Health and Psychiatry, Service of Psychiatric Specialties, University Hospitals of Geneva, and Departments of Basic Neuroscience and of Psychiatry, University of Geneva;
3. Camille Piguet, MD, Department of Neuroscience, Faculty of Medicine, University of Geneva;
4. Audrey Nallet, MSc, Sophie Favre, PhD, Department of Psychiatry, University of Geneva;
5. Alain Malafosse, MD, PhD, Department of Psychiatry, University of Geneva, and Department of Genetic Medicine and Laboratories, Psychiatric Genetic Unit, University Hospitals of Geneva;
6. Jean-Michel Aubry, MD, Department of Mental Health and Psychiatry, Bipolar Programme, Service of Psychiatric Specialties, University Hospitals of Geneva, Switzerland.
アラン・マラフォスの研究室からアラン・マラフォス1人だけが著者である。アラン・マラフォスだけがMD, PhDである。
疑問は解けない。
《4》54歳の教授
撤回された「2014年のBr J Psychiatry」論文のねつ造部分はDNAのメチル化である。54歳の医学部・教授が、自分で実験作業をするだろうか? 日本では、通常、あり得ない。スイスではどうなっているのだろう?
では、
- 誰も実験しないで、アラン・マラフォスがデータをねつ造した
- テクニシャンが出したデータを、アラン・マラフォスが改ざんした
- テクニシャンがデータをねつ造したのを、アラン・マラフォスが責任をとった → これはないでしょう。
事実はどれなのでしょう?
そして、アラン・マラフォスはすでに、精神病遺伝学では世界的に著名である。そのような人が、54歳で初めてデータねつ造をするだろうか?
法則:「ネカト癖は研究キャリアの初期に形成されることが多い」。
多分、「2014年のBr J Psychiatry」論文以外にも多数の論文でネカトがあるのではないだろうか? 研究費不正の事件が大きいので、ネカト調査をいい加減に済ませたのではないだろうか?
そうでなければ、著者7人の論文の6番目の論文で、しかも名声が確立した医学部教授が、データをねつ造した動機がどうも理解できない。失うものが大きい一方、得るものがほとんどない行為を、どうして、54歳で初めてしたのだろう?
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日本がもっと豊かに、そして研究界はもっと公正になって欲しい(富国公正)。正直者が得する社会に!
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写真出典
●8.【主要情報源】
① 2014年9月4日のアダム・マーカス記者(Retraction appears for psychiatrist sought for arrest in alleged fraud scheme | Retraction Watch
② 2014年4月3日の「The Local」紙の記事:Doc sought for Geneva fraud elected in France – The Local
③ 2014年9月26日の「Medical Observer」紙の記事: Journal Retracts Bipolar Study with ‘Fabricated’ Data | Medical Observer
④ 2014年9月25日の「Ouest France」紙の記事:Un psychiatre francais aurait falsifie des donnees medicales
⑤ 2014年6月25日の「France 3 Occitanie」紙の記事:Un chercheur francais entendu a Montpellier pour des malversations presumees en Suisse – France 3 Occitanie
⑥ 旧版:2014年11月9日
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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