7-42 査読の半分は院生やポスドクの代筆

2019年9月21日掲載 

白楽の意図:学術論文の現行の査読システムは利点も多いが、数十年間進歩がなく、問題点も多い。問題点の1つは、白楽も経験しているが、教授の査読報告書を院生やポスドクが代筆していることだ。米国の研究未来社のゲイリー・マクダウェル(Gary S. McDowell)がこの点を調査・分析し、改善案を提言した「2019年4月のBioRxiv」論文を読んだので、紹介しよう。また、キュ・チンチョン(Kyu Jin Chung)の「2019年5月のArchives of Plastic Surgery」論文を査読の説明に使用した。

【追記】
・2020年1月13日記事:Opinion: Postdocs as Competent Peer Reviewers | The Scientist Magazine®
・2020年1月13日記事:Opinion: Exorcising Ghostwriting from Peer Review | The Scientist Magazine®

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.論文概要
2.書誌情報と著者
3.予備解説
4.論文内容
5.関連情報
6.白楽の感想
7.白楽の手紙
8.コメント
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【注意】「論文を読んで」は、全文翻訳ではありません。ポイントのみの紹介で、白楽の色に染め直してあります。

●1.【論文概要】

研究の目的は、早期キャリア研究者(院生やポスドクなど)が学術論文の査読に貢献しているのに、評価されていない問題に光を当てることです。学術誌・編集部は確立した研究者(準教授・正教授など)に査読を依頼するが、実際は、早期キャリア研究者(院生やポスドクなど)が査読し、査読報告書を代筆しているケースがかなりある。その実態を調べると、調査回答者の4分の3が査読を行なっていた。この行為は査読の訓練としては有益な方法(95%が同意)だが、しかし、5分の4は代筆は非倫理的だと答えた。調査結果に基づき、早期キャリア研究者が共同査読したことを学術誌・編集部に伝え、早期キャリア研究者の貢献を顕在化させ、主宰研究者(PI)による早期キャリア研究者の査読の教育訓練とすることを提言する。査読における透明性を確保し、学術界全体の認識を大きく変える必要がある。

●2.【書誌情報と著者】

★書誌情報

  • 論文名:Co-reviewing and ghostwriting by early career researchers in the peer review of manuscripts
    日本語訳:原稿の査読における初期のキャリア研究者による共同査読と代筆
  • 著者:Gary S. McDowell, John Knutsen, June Graham, Sarah K. Oelker, Rebeccah S. Lijek
  • 掲載誌・巻・ページ:BioRxiv
  • 発行年月日:2019年4月26日、オンライン
  • 引用方法:
  • DOI: https://doi.org/10.1101/617373
  • ウェブ:https://www.biorxiv.org/content/10.1101/617373v1
  • PDF:https://www.biorxiv.org/content/biorxiv/early/2019/04/26/617373.full.pdf
  • 著作権:著作権は著者にあるが、CC-BY 4.0 International licenseである。

★第一著者

  • 第一著者:ゲイリー・マクダウェル(Gary S. McDowell)
  • 紹介:http://www.futureofresearch.org/executive-director/
  • 写真:http://www.futureofresearch.org/executive-director/
  • ORCID iD:https://orcid.org/0000-0002-9470-3799
  • 履歴:https://orcid.org/0000-0002-9470-3799
  • 国:米国
  • 生年月日:米国。現在の年齢:36 歳?
  • 学歴:英国のケンブリッジ大学(University of Cambridge)で、2006年に学士号(化学)、2011年に研究博士号(PhD)(腫瘍学)を取得、2011-2013年、米国のハーバード大学医科大学院(Harvard Medical School)・ポスドク(病理学)
  • 分野:科学政策
  • 論文出版時の地位・所属:2016年より研究未来社・専務取締役:Executive Director、The Future of Research, Inc., Abington, MA 02351.

●3.【予備解説】

★キュ・チンチョン(Kyu Jin Chung)の「2019年5月のArchives of Plastic Surgery」論文

韓国の嶺南大学病院(ヨンナムだいがくビョンイン)・形成外科のキュ・チンチョン(Kyu Jin Chung、写真出典)が査読システムの現状と改善を述べた「2019年5月のArchives of Plastic Surgery」論文を発表した。

この論文を査読システムの予備解説としよう。

  • 論文名:The peer review system of Archives of Plastic Surgery: Current status and plans for improvement
    日本語訳:学術誌「Archives of Plastic Surgery」の査読システム:現状と改善計画
  • 著者:Kyu Jin Chung
  • 掲載誌・巻・ページ:Archives of Plastic Surgery 2019;46(3):187-188
  • 発行年月日:2019年5月15日、オンライン
  • 引用方法:
  • DOI: https://doi.org/10.5999/aps.2019.00528
  • ウェブ:https://www.e-aps.org/journal/view.php?doi=10.5999/aps.2019.00528
  • PDF:https://www.researchgate.net/publication/333171152_The_peer_review_system_of_Archives_of_Plastic_Surgery_Current_status_and_plans_for_improvement
  • 著作権:© 2019 The Korean Society of Plastic and Reconstructive Surgeons。この論文は、 Creative Commons Attribution License (http://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/)の条項に基づいて配布されているオープンアクセス論文で、元の著者と出典にクレジットすれば、いかなる媒体でも無制限に使用、配布、複製できる。

学術誌の査読者の役割は、投稿の質と信頼性を審査し、それらが出版に値するかどうかを判断することです。

査読システムは、科学雑誌が高品質の論文を出版するために査読システムに頼るしかないという意味で、医学および科学雑誌の出版において極めて重要な役割を果たしていると考えられています。

学術誌が大量の原稿を受け取り、出版する論文を選ぶ時、原稿に記載された研究成果の品質で選ぶのが、その選別のために査読システムを利用します。

したがって、要約すると、査読システムは、学術誌に掲載される論文を選択し、その総合的な質を向上させ、潜在的な誤りや弱点についてスクリーニングするプロセスとして定義することができます。

査読システムの普遍性と利点にもかかわらず、それは完璧ではありません。

査読の審査プロセスは、数十年間変わっておらず、改善されていません。

このシステムの弱点は、高価で時間がかかることです。審査プロセスは、引用を相互に参照し、原稿に記載されている方法論の審査も必要なので、基本的に時間のかかる面倒な作業です。

さらに、査読者には金銭的な報酬がありません。査読に費やされる時間・エネルギーは未発表の研究成果を知る機会が得られるという報酬で補償されるだけです。査読することで、最新の研究に容易にアクセスでき、そして自分の知識を最新に保つのに役に立つのです。

査読システムは客観的で信頼性があると一般的に信じられています。しかし、信頼性を損なう脆弱な面がいくつもあります。

査読者が競合する他の研究者の原稿を審査する場合、この研究の発表を意図的に遅らせる、または阻止する、あるい研究アイデアを盗む可能性があります。

また、査読偽装という不正行為があります。査読偽装は、論文投稿者が学術誌に「この研究者が査読者に適しています」と査読者を提案する査読システムを悪用する行為です。

提案する査読者(本物の科学者またはねつ造された人物)の電子メールアドレスを自分の管理する電子メールアドレスにすることで投稿した著者自身が、査読者になりすます。そして、良い審査結果を学術誌・編集部に送付することで自分の原稿が受理される可能性を劇的に高めることができます。

このような不正は査読プロセスの正当性に疑問を投げかけています。

不正行為を防止するために学術誌・編集者は注意深く対応する必要があります。

査読システムのこれらの固有の弱点にもかかわらず、適切な代替手段がないため、多くの学術誌は依然としてこのプロセスを利用しています。

編集者が原稿の掲載プロセスを続けるべきかどうかを判断するために、査読報告書は明確かつ簡潔でなければなりません。

方法論を正確に審査することは、査読プロセスの重要な部分です。医学および科学研究には革新的で興味深い内容を含めることが重要ですが、方法論の不適切な説明はバイアスの脆弱性を示唆し、研究結果に疑問を投げかける可能性があります。

原稿が不採択の場合でも、投稿者が自分たちの研究の質や結果の記載方法を改善できるように、査読審査は建設的でなければなりません。

私の関与する学術誌・「整形外科アーカイブス(Archives of Plastic Surgery)」は、韓国形成外科学会(KSPRS)の公式学術誌ですが、40か国の307人が査読者に登録されています。

さらに、300人以上の各専門分野の査読候補者リストがあるので、著者が提案する査読者に査読を依頼する必要はまだありません。しかし、さらに多くの論文が投稿されれば、このようなニーズが生じる可能性はあります。

2013年から2018年の間の分析では、1つの投稿原稿当たり15.69日の平均査読日数で審査されました。

編集者は、査読者を選択し、原稿を採択するかどうかについて最終的な決定を下す責任があるため、査読のプロセス全体を通して中心的な役割を果たします。

ところが、ほとんどの査読者は、正式な査読トレーニングを受けたことがありません。自己流で査読をしています。

多くの学術誌は査読者に独自の論文審査基準を提示していますが、これらの基準は学術誌によって異なるため、査読者が定番の論文審査スキルとして習得することは困難です。

それで、韓国形成外科学会(KSPRS)は査読者のための講義を提供しています。 

査読システムの整合性を改善するために、論文審査手順の標準化、手順の透明性の促進、著者のアイデンティティからの査読者の盲検化、査読者のトレーニング、査読者のより厳格な選択の促進など、いくつかの方法が導入されています。

電子査読の利用、査読者への報奨、査読者への詳細なフィードバックの提供、より多くのチェックリストの使用、専門家リストの作成。これらのさまざまな改善をする必要があります。 より良い出版のためにはそうすることが必要です。

★エルゼビア社の査読者へのサポート

以下の出典:エルゼビア社の査読者へのサポート

査読者は学術的出版において中心的役割を担っています。論文や論文を掲載するジャーナルの品質を維持するためには査読プロセスが必須です。エルゼビアは常に査読プロセスの改善・効率化に注力しています

私たちは査読者を検索し、維持し、期日を守るように働きかけることが、どれほど難しいことか知っています。査読者向けサポートページ では、査読者が質の高い査読を実施するために必要なガイダンス、情報、サポートを提供し、査読関連の業務を支援します。詳細な査読者用ガイドライン、倫理とポリシー情報など、査読者として必要なすべての情報がここに掲載されています。

以下省略するが有益な記載がある。

●4.【論文内容】

《1》序論 

学術原稿の査読は、科学文献の完全性を維持するための基本的な学術活動と見なされています(Baldwin 2018; Tennant et al. 2017)。

キャリア初期研究者※は、多くの場合、この査読に貢献します。

[※キャリア初期研究者(early career researchers:ECRs):学部生、院生、ポスドク、研究員、助教授などの独立していない研究者と定義]。

実際、ライフサイエンスのキャリア初期研究者を対象とした「INSIDE eLife」ブログの最近の調査では、調査対象の92%が査読を行なっていると報告しています(Inside eLIFE 2018)。 

キャリア初期研究者は、主宰研究者(PI、Principal Investigator、教授やグループリーダーなど独立した研究者)の指導下で原稿を査読することが期待されるかもしれませんが、大学院生の37%を含む調査回答者の半数以上が、主宰研究者の指導なしで原稿を査読していると報告した。

  • キャリア初期研究者は、依頼された査読者として査読をしているのか?
  • あるいは、彼らは主宰研究者(PI)に代わって査読を行なっているのか?
  • この場合、学術誌・編集スタッフは、依頼した査読者以外の誰かが査読報告書に貢献したことを知っているのか? そうでない場合、これらのキャリア初期研究者は代筆していることになる。

「INSIDE eLife」調査の結果と、キャリア初期研究者は学術誌・編集スタッフに知られずに査読をしている観察結果から、キャリア初期研究者の査読代筆が広範に行なわれていると考えた。

実際、キャリア初期研究者による共同査読と査読代筆は学術界の一般的な慣行として把握されている。

パターソンとシェクマンは、「多忙なグループリーダーは、博士院生やポスドクに査読の協力を依頼するのが一般的だが、多くの場合、博士院生やポスドクの貢献は表にでません」と要約している(Patterson and Schekman 2018)。

これから述べる私たちの論文は、私たちが主催した「ライフサイエンスの査読における透明性、認識、イノベーション(Transparency, Recognition, and Innovation in Peer Review in the Life Sciences)」の2018年のASAPbio会議をベースにしている(McDowell 2018)。

ただ、上記の会議の出席者を超えて、キャリア初期研究者の査読への関与と査読代筆という査読問題を、証拠を基に、さらに広範に議論したいと考えた。

それで、次のデータを収集しようとした。

  • キャリア初期研究者は査読報告書をどのくらい頻繁に代筆しているか?
  • 彼らはそれに価値があり、倫理的だと思っているのか?
  • なぜそのような慣行が行われているのか?
  • この慣行で生じる懸念はあるのか?
  • これらの問題に対処するためにどんな介入ができるのか?

【結果1.体系的な文献検索】 

キャリア初期研究者が査読プロセスで果たす役割に関する以前の研究を探す目的で、システマティックに論文検索した。特に、キャリア初期研究者の査読代筆の論文があるかどうかを知りたかった。

定義上、代筆は文書に残っていない、不透明、説明責任がないという3重苦なので、証拠に基づいた論文はほとんど、あるいはまったくないと仮定した。

システマティックな文献検索を行なった。

以下の手順は、原稿の査読におけるキャリア初期研究者参加のトピックに関する研究のために体系的な文献検索をするために使用した。これらの手順は、専門図書館員(著者SO)の指導の下で開発され、体系的レビューとメタ分析の優先報告項目(PRISMA)基準に基づいて行なった((Moher et al。2009); 付録図1を参照)。

検索されたデータベースは、ライフサイエンス、公共政策、社会科学にわたる査読論文をカバーしており、PubMed、Psychinfo、Web of Science、PAIS Internationalで構成されていた。

これらのデータベースは、次のキーワード検索戦略を使用して検索した。

検索語は省略(白楽)。

【キャリア初期研究者の査読代筆に関する文献の欠如】

キャリア初期研究者による査読代筆に関する査読付き文献を探したが、1論文も見つからなかった。論文でない1つの出版物はあったが、上記のASAPbio会議後に発表された学術誌eLifeからの査読方針のお知らせだった(Patterson and Schekman 2018)。

【結果2.アンケート回答者の全体像】 

研究倫理審査委員会(IRB)の承認を受けて実施したオンライン調査により、データ収集を2018年9月の1か月間行なった。その1か月間に498件の回答を集めた。

回答者は、地理的に多様な214の大学・研究機関に分布していた。多い順に、北米(n = 370)、ヨーロッパ(n = 87)、アジア(n = 21)の順だった。全回答者の74%が米国在住で、そのうち64%が米国市民または米国永住者で、36%が一時的な在住者だった。米国の40の州(または準州)に分布していた。回答者の多い大学はセントルイスのワシントン大学、ケンタッキー大学、ロックフェラー大学、シカゴ大学だった。

調査回答者の大部分(65%)は、ライフサイエンス分野のキャリア初期研究者だった(図1、白楽は省略)。5大グループは、神経科学、生物医学、生物学、生化学、細胞および/または発生生物学だった。

全回答者の63%はポスドクだった。そのため、この調査は、ポスドクの状況が論文の結果に過剰に影響していると推測されるが、キャリア初期研究者に占めるポスドクの割合は不明なので、キャリアステージごとに研究者の割合を判断することは困難である(Pickett et al. 2017)。

【結果3.代筆は非倫理的と思っているのに頻繁】 

結論から言うと、代筆は非倫理的だという信念にもかかわらず、頻繁に発生していた。

つまり、以下に示すように、調査の結果、キャリア初期研究者による査読が広く行なわれており、しばしば学術誌・編集スタッフに知られていなかった。

全回答者の73%が共同査読を担当した経験があった。査読経験者に絞って、その内訳を見ると、多く(231人、63%)は1〜5回だが、6回以上の共同査読もかなりあった(119人(33%)が6〜20回、16人(4%)が20回以上、図2A)。

 

キャリア初期研究者の共同査読は一般的に行なわれている。

では、ポスドクと院生に絞るとどうなるか?

図2Bが示すように、79%のポスドクと57%の博士院生が、自分自身が編集部から依頼されていない査読を行ない、査読報告書に論文審査のアイデアや文章を提供した。

[白楽注:ココ、数値がヘン。ポスドク の79%は(148+47+13)/(64+148+47+13)=76 %でヘン、博士院生の57%は(40+11)/(38+ 40+11 )=57%で合う]。

これらのデータは、キャリア初期研究者は編集部から自分自身が依頼されていないのに、共同査読をするということが学術界の1つの規範であることを示唆しています。

対照的に、編集部から直接依頼されて査読した経験について尋ねると、全回答者の37%は、そのような経験は一度もなかった。 35%が1〜5回経験した。 6〜20回が20%。そして20回以上が8%だった。 キャリア初期研究者の回答者の55%は、編集部から直接依頼されて独立に査読した経験はなかった(図2C)。

[白楽注:ココ、数値がヘン。図2Cは全部足すと401人。全回答は498人なので、97人はどこ?]

【結果4.共同査読の動機】 

キャリア初期研究者が共同査読する重要な動機は、学術スキルの基本である査読を経験することだと仮定した。

全回答者に、原稿の査読方法をどのように学んだかを尋ねた。

回答者は、「自分自身の論文が受けた査読から学んだ」が1番だったが、これはある意味、受動的に学ばなければならない状況で学んだ。2番目に主宰研究者(PI)からの査読訓練をあげた(図3)。

つまり、キャリア初期研究者が共同査読する重要な動機は、主宰研究者(PI)との共同査読による査読トレーニングだった。

【結果5.代筆の頻度】 

  • 共同査読者は学術誌の査読者欄に名前が掲載されるのだろうか?
  • 別の言い方をすれば、依頼された査読者だけではなく、共同査読者が査読に貢献したことを学術誌・編集部は知っているのか?
  • あなたの知る限り、あなたが共同査読した時、あなたの主宰研究者(PI)は共同査読者としてあなたの名前を学術誌・編集部に伝えましたか?

回答者の分布は以下のようだ。[白楽注:表の数値がヘンなので、白楽が“改ざん”して整合性を持つようにした。白楽が誤解しているかもしれない]

  • 共同査読者(366人:図2Aの数値)は主宰研究者(PI)に短いコメントをしただけ → 解釈:重要な貢献ナシ:149人(41%)
  • 共同査読者(366人:図2Aの数値)は査読報告書を全部書いた → 解釈:重要な貢献アリ:217人(59%)
     ・主宰研究者(PI)は共同査読者を編集部に伝えなかった:100人(46%)
     ・主宰研究者(PI)は共同査読者を編集部に伝えたかどうか知らない:69人(32%)
     ・主宰研究者(PI)は共同査読者を編集部に伝えた:43人(20%)
     ・主宰研究者(PI)の名前はなく、キャリア初期研究者だけの名前を編集部に伝えた:7人(3%)

これらのデータは、共同査読者の代筆の経験に関する別の質問の結果とよく一致しています。

総合すると、これらのデータは、調査回答者の約2人に1人が、依頼された査読者である主宰研究者(PI)に代わって、キャリア初期研究者が査読報告書を代筆したことを示唆しています。

さらに、共同査読を行なった回答者の70%は、クレジットなしで査読報告書に重要な貢献をしていた(表2)。

上記のように、INSIDE eLifeの調査では、全回答者の半数超(共同査読を行なった回答者の70%)が、クレジットなしで査読報告書に重要な貢献をしていたことがわかった(Inside eLIFE 2018)。

【結果6.査読代筆の倫理】 

キャリア初期研究者による共同査読の理論的根拠は、査読方法を習得する学術活動のトレーニングだとしている。一方、、キャリア初期研究者の半数は主宰研究者(PI)との査読プロセスに関与していない。

これは査読教育は学術スキルの1つと考えれば、不適切かつ非効率的です。

学術誌に投稿する前に主宰研究者(PI)からフィードバックを受けずに査読報告書を書くことは、キャリア初期研究者がこの重要なスキルのトレーニングを受ける機会を逃すことになる。

また、学術界は代筆が不正であると認識していることを以下に示す。

別人が書いた査読報告書を主宰研究者(PI)の名前で学術誌・編集部に提出した時、最悪の場合、文章の「盗用」または著者の「ねつ造」となり、研究公正に違犯していると見なされる可能性がある。

NIHの助成を受けた生物医学研究を監督する研究公正局(ORI)は、全米大学教授協会(American Association of University Professors)の言葉によれば、「盗用」を「使用者の作業・研究と見なされることを意図して、他人のアイデア、方法、文章を、承諾なしに使用する行為」と定義しています」(American Association of University Professors 1989)。

より具体的に書くと、研究公正局(ORI)は、「科学における学術的代筆・専門的代筆は規範として受け入れられない」と述べています。なぜなら、「読者(この場合、学術誌・編集スタッフ)は、名前を示された著者による作業・研究と誤解するからである」(Guideline 27; https://ori.hhs.gov/plagiarism-34:Authorship in Faculty-Student Collaborations | ORI )。

私たちの調査の回答者は研究公正局(ORI)の方針に強く同意しています。特に査読報告書の代筆が研究規範に違反していると考えています。

アンケートの回答をいくつか見ていこう(図6)。

  • 83%は、「査読報告書で名前が表明されるべき唯一の人は、査読を実行した人に関係なく、依頼された査読者である」に異議を唱えている。
  • 81%は、「主宰研究者(PI)の査読報告書の代筆は倫理的に健全な科学的慣行である」に異議を唱えている。
  • 77%は、「アイデアを提供し文章を書いたすべての個人の名前を示さずに査読を依頼された査読者(例:PI)が査読報告書を学術誌・編集者に提出することは倫理的である」に異議を唱えている。

別の言い方をすると、

  • 74%は、「査読報告書はアイデアを提供し文章を書いたすべての人を共著者に含めるべきだ」に賛成している。
  • 82%は、「査読報告書に自分の名前を追加すること(学術誌・編集者が共同査読者として認識する、またはクレジットを割り当てる)」に賛成している。
  • 73%は、「依頼された査読者(例:PI)が査読に他の人(例:院生・ポスドク)を関与させることは倫理的である」に同意している。
  • 95%は、「投稿原稿の査読に院生・ポスドクを関与させることは教育訓練として価値がある」に賛成している。

【結果7.査読代筆の動機】 

回答者の5人中4人が代筆は非倫理的と考えているのに、全回答者の半分が査読代筆している理由は何だろう?

査読代筆の動機を、(1)査読の経験に関係なく、すべての調査回答者に、共同査読者の名前を知らせない理由を推測するように依頼した。(2)査読代筆者だけに、共同査読者の名前を知らせない理由を推測するように依頼した。このようにして、文化と実際を比較した。(図7)

  • 73%は、共同査読者に対する最も一般的に信じられている障壁は、学術誌・編集部に名前を知らせる物理的メカニズムがないためだとした。
  • 63%は、「査読は依頼された査読者によってのみ行われるべきであり、他の誰かによって、または支援を受けて行われるべきではないという信念」。
  • 58%は、「査読共著者の情報を伝えると、原稿の機密性が侵害されたことになる」と回答。

後者の応答は、依頼された査読者が事前の許可なしに未公開の原稿を共有することを禁止している学術誌の方針を暗示している。

査読代筆者だけは、上記の回答と対照的に

73%は、「査読報告書に貢献し、学術誌・編集部に名前が知らされていない理由は、回答者の主宰研究者(PI)とそのことについて話し合っていない」と答えた。

これは、査読者と共同査読者間のコミュニケーションが欠如しているという指摘と一致している。

査読代筆を行い、主宰研究者(PI)と問題について話し合った回答者の27%のほとんどの人は、彼らの名前が知らされない理由は、学術誌の方針が禁止している、および/または査読報告書の共著者に関する一般的な研究文化だと述べている。

また、主宰研究者(PI)が共同査読者の名前を知らせなかった理由として、学術誌の査読投稿フォームに共同査読者を書く欄がないなどだった。

多くの書き込みから、キャリア初期研究者が査読に参加するのは良い習慣であることを明確にしている。しかし、同時に、これが共同査読者の名前を知らせない理由を説明できない。

これらのデータは、代筆(名前を知らせない)と共同査読(多くの場合、訓練の目的でキャリア初期研究者に関与させる)を混同していることを示唆している。

【提言1.学術界の大規模な文化的変化】 

提言1.学術界は以下の大規模な文化的変化を認識し対応すべきです。

  1. キャリア初期研究者を査読に関与させることはすでに一般的な活動であり、キャリア初期研究者に査読方法を訓練する最も頻繁に行なわれている方法の1つです。
  2. キャリア初期研究者を査読に参加させることは、この学術活動におけるインタラクティブな訓練の貴重な機会と見なされています。
  3. キャリア初期研究者を含む共同査読者に知的貢献(アイデアおよび/または文章)をさせておきながら、その後、その知的貢献者の名前を学術誌・編集者に伝えないのは非倫理的(研究公正違反)です。
  4. 査読報告書の著者は、論文原稿の著者と同様な真の学術的努力をした人です。
  5. 共同査読者を追加しても、査読報告書の品質が低下することはなく、依頼した査読者の重要な役割も低下しません。これは、論文原稿の著者におけるキャリア初期研究者と主宰研究者の関係とほぼ同じです。
  6. 次の目的のために、すべての共同査読者の名前を学術誌・編集者に開示することには価値があります。
    A.研究公正に違犯せず、査読報告書にアイデアを提供し文章を執筆した人に正当な評価を与えるべきです。
    B.学術誌・編集者の透明性を改善します。キャリア初期研究者を含めることで査読者のプールを広げることができる。
    C.キャリア初期研究者の査読を学術的労働として認められるようにするには、学術誌・編集者だけでなく、パブロンズ(Publons)などのサイトを介して、研究キャリアや移民ステータスの向上という目的のためにも、キャリア初期研究者の貢献を認める必要があります。

【提言2.学術誌・編集委員会と出版規範委員会(Committee on Publication Ethics:COPE)のために】 

内容は省略するが、以下の提言もある(白楽)。

提言3.大学院プログラム、科学団体、その他に
提言4.依頼された査読者および共同査読者に

【議論】 

かなり長い議論がある。

省略。

●5.【関連情報】

この論文の反響は大きい。

①  2018年2月12日のジェフリー・ブレイナード(Jeffrey Brainard)記者の「Science」記事:Researchers debate whether journals should publish signed peer reviews | Science | AAAS
②  2019年6月20日のダルミート・チャウラ(Dalmeet Singh Chawla)記者の「Undark」記事:It’s Time to Lift the Veil on Peer Review
③  2019年5月13日のバージニア・ジェウィン(Virginia Gewin)記者の「Nature」記事:Junior researchers are losing out by ghostwriting peer reviews
④  2019年5月6日のベリル・リエフ・ベンダーリー(Beryl Lieff Benderly)記者の「Science」記事:Early-career researchers commonly ghostwrite peer reviews. That’s a problem | Science | AAAS

さらに、

⑤ 2019年9月2日のダン・ガリスト(Dan Garisto)記者の「Undark」記事:Diversifying Peer Review by Adding Junior Scientists

●6.【白楽の感想】

《1》論文を読んで感動した 

素晴らしい視点、切り口、提言である。ゲイリー・マクダウェル(Gary S. McDowell、写真出典)、すごい!

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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

●8.【コメント】

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