アシム・ミートラ(Ashim Mitra)(米)

2019年10月9日掲載 

ワンポイント:ミートラは、インド出身で、米国で博士号を取得し、米国のミズーリ大学カンザスシティ校薬科大学院(University of Missouri-Kansas City School of Pharmacy)の教授になった。2019年2月26日(63歳?)、院生の研究成果を盗用し、ドライアイの目薬セクアの特許を申請したと大学に訴えられた。1か月後の3月31日、大学を辞職した。現在、裁判の結果はでていない。目薬セクアは米国・食品医薬品局の認可を受け、1,000億円の価値があると評価されたためか、大学は、目の色を変えて、ミートラ元教授を攻撃している。それまでかばっていたミートラ元教授のアカハラ行為をメディアにリークし、ミートラ元教授の悪いイメージを一気に高めている。国民の損害額(推定)は10億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
8.白楽の手紙
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

アシム・ミートラ(Ashim Mitra、ORCID iD:、写真出典)は、インド出身で、米国で博士号を取得し、米国のミズーリ大学カンザスシティ校薬科大学院(University of Missouri-Kansas City School of Pharmacy)・教授になった。専門は薬化学だった。

2019年2月26日(63歳?)、ミズーリ大学カンザスシティ校薬科大学院(University of Missouri-Kansas City School of Pharmacy)は、アシム・ミートラ教授が元院生のキーショア・チョルカー(Kishore Cholkar)の研究成果を盗んで150万ドル(1億5千万円)で売ったと、連邦裁判所に訴えた。

研究成果は、ドライアイの目薬セクアの開発に使用されたと言われている。

目薬セクアが米国・食品医薬品局の承認薬なので、研究成果は、10億ドル(約1,000億円)の価値があると言われている。

ミートラ教授はすでに150万ドル(約1億5千万円)のロイヤリティを得ている。ミートラ教授は、今後5年間のロイヤルティとして目薬セクア(Cequa)の売上高の1%をもらう契約になっているので、今後5年間で1000万ドル(約10億円)を手にするだろうと予測されている。

大学は、医薬品開発を研究していたのは元院生のキーショア・チョルカーだと主張し、チョルカーもお金を得られるべきだとしている。

一方、ミートラ教授は、チョルカーの貢献は、特許を取得した後になされたものだと主張している。

2019年3月31日(63歳?)、ミートラ教授は、ミズーリ大学を辞職した。

なお、特許とは別問題のハズだが、ミートラ元教授の院生はミートラ元教授に奴隷のように奉仕させられたと、ミートラ元教授のアカハラをミズーリ大学に訴えていた。大学はその訴えを長年無視していた。

特許問題が起こってから、ミズーリ大学は、目の色を変えて、ミートラ元教授を攻撃している。そして、それまで長年無視していたミートラ元教授のアカハラ行為をメディアにリークし、ミートラ元教授の悪いイメージを一気に高めている。
 → UMKC professor used students as servants for decades | The Kansas City Star

ミズーリ大学カンザスシティ校薬科大学院(University of Missouri-Kansas City School of Pharmacy)。写真出典:Nightryder84 [CC BY-SA 3.0]

  • 国:米国
  • 成長国:インド
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:カンザス大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:不明。インドで生まれた。仮に1956年1月1日生まれとする。1983年に研究博士号(PhD)を取得した時を27歳とした
  • 現在の年齢:68 歳?
  • 分野:薬化学
  • 最初の不正発表:2019年(63歳?)
  • 不正発表:2019年(63歳?)
  • 発覚年:2019年(63歳?)
  • 発覚時地位:ミズーリ大学カンザスシティ校薬科大学院・教授
  • ステップ1(発覚):ミズーリ大学カンザスシティ校薬科大学院が裁判所に提訴
  • ステップ2(メディア):「Kansas City Star」、多くのメディア
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①ミズーリ大学カンザスシティ校薬科大学院・調査委員会。②裁判所
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 大学の透明性:所属機関の事件への透明性:実名報道だが機関のウェブ公表なし(△)
  • 不正:盗用
  • 不正論文数:論文の盗用ではなく研究成果の盗用で特許申請。大学の主張は、特許1件
  • 時期:研究キャリアの後期
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)をやめた・続けられなかった(Ⅹ)
  • 処分:裁判中
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は10億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

出典:Ashim K. Mitra, PhD | Editor | SciTechnol | Archives of Medical

  • 生年月日:不明。インドで生まれた。仮に1956年1月1日生まれとする。1983年に研究博士号(PhD)を取得した時を27歳とした
  • 19xx年(xx歳):インドのxx大学(xx)で学士号取得
  • 1983年(27歳?):米国のカンザス大学(University of Kansas)で研究博士号(PhD)を取得:薬化学
  • 1983年(27歳?):ネブラスカ大学医療センター(University of Nebraska Medical Center)・助教授
  • 1984年(28歳?):パデュー大学(Purdue University)・助教授
  • 1989年(33歳?):同・準教授
  • 1994年(38歳?):ミズーリ大学カンザスシティ校薬科大学院(University of Missouri-Kansas City School of Pharmacy)・教授
  • 2018年11月20日(62歳?):アカハラだとメディアに報道された
  • 2019年2月26日(63歳?):ミズーリ大学カンザスシティ校薬科大学院に研究盗用だと裁判所に訴えられた
  • 2019年3月31日(63歳?):ミズーリ大学カンザスシティ校薬科大学院・教授を辞職
  • 2019年10月8日(63歳?)現在:裁判の決着はついていない

●3.【動画】

【動画1】
2019年3月3日のCNNニュース。画面の動画をクリックする。(英語)2分27秒。
Professor accused of stealing student’s invention

【動画2】
以下は事件の動画ではない。
2014年の講演:「アシム・ミートラ |ミズーリ大学カンザスシティ校薬科大学院|米国| 眼科2014 (Ashim K. Mitra|University of Missouri-Kansas City School of Pharmacy|USA| Ophthamology 2014)- YouTube」(英語)23分59秒。
Dental and Oral Health 2014が2015/08/25 に公開

●4.【日本語の解説】

★2019年3月3日:CNN.co.jp:米大学、元教授を提訴 学生の研究成果「盗んで売却」

出典 → ココ、(保存版) 

(CNN) 米ミズーリ大学カンザスシティー校の元教授が大学院生の研究成果を盗み、企業に売却したとして、大学側に訴えられている。

ミズーリ大学によると、アシム・ミートラ元教授は在籍中に学生の研究成果を150万ドル(約1億7000万円)で製薬会社に売り渡し、今後さらに最大1000億ドルの特許料収入が見込まれているという。
眼科薬を目に届ける新技術の特許出願や製品化に、ひそかに協力したとされる。この技術を使ったドライアイ治療薬が最近、米食品医薬品局(FDA)に認可された。元教授はすでに同大学のポストを退いている。

訴状の被告にはこのほか、ミズーリ大学の同じ研究室に勤めていた元教授の妻と、協力相手の製薬会社2社が挙げられている。

大学側の主張によると、特許法上の発明者は本来、2010年に研究成果を報告していた学生だという。大学の規定では、在籍中の教職員や学生による発明の権利は大学側に帰属する。商業的な利益が発生した場合は発明者本人が3分の1、大学が3分の2を受け取ることになっている。

一方、元教授はCNNの取材に対し、新薬の技術は私設のコンサルティング業を通し、自身が製薬会社と共同で考案したと主張。学生の研究は目の部位のうち、新薬の効能とは関係のない組織に関する内容で、特許手続きが済んだ後で報告されたものだと強調した。

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★ドライアイ目薬の開発

アシム・ミートラ(Ashim Mitra)はインド出身である。インドの大学を卒業後、渡米したと思われる。

1983年(27歳?)、米国のカンザス大学(University of Kansas)で研究博士号(PhD)を取得した。

1994年(38歳?)、ミズーリ大学カンザスシティ校薬科大学院(以下、ミズーリ大学と略す、University of Missouri-Kansas City School of Pharmacy)・教授になった。ミートラ教授はインドとの関係が強く、研究室の院生・ポスドクは、全員、インドから渡米してきた人たちだった。

ミートラ教授の研究能力は高く、24年間の在職中に236報の論文を出版し、NIHからだけで850万ドル(約8億5千万円)の研究費をミズーリ大学にもたらしている。 

ミートラ教授は、ドライアイに有効な医薬品を開発し、特許を取得し、FDA(米国・医薬品局)の承認を申請した。次項で詳しく述べるが、以下に簡単にそのステップを述べよう。

  1. ドライアイに有効な目薬セクア(Cequa)の発明だが、物質は真菌が産生するが既知の化合物・シクロスポリン(cyclosporine)という環状ポリペプチド抗生物質である。シクロスポリンは、別の人が1971年に分離精製し、別の人が1983年に医学用に用いた。免疫抑制剤として有名である。
  2. ドライアイ目薬としては、シクロスポリンをナノテクノロジーで水溶性ミセルにすることがミートラ教授の発明のポイントで、このことで、副作用なく点眼できる道が開けたのである。特許を2015年に取得した。 → ドライアイの用法:Cyclosporine eent Monograph for Professionals – Drugs.com
  3. この特許(2015年に取得)は、ドライアイの目薬セクア(CEQUA)の根幹の発明で、2018年に米国・医薬品局(FDA)の承認を得た。 → 2018 年8月16日記事:Sun Pharma Announces U.S. FDA Approval of CEQUA™ to Treat Dry Eye Disease | Business Wire
  4. フェーズⅢの臨床試験も好成績をあげた。 → 2019年9月論文:A Phase 3, Randomized, Double-Masked Study of OTX-101 Ophthalmic Solution 0.09% in the Treatment of Dry Eye Disease – ScienceDirect

ミートラ(Ashim Mitra)教授は、総説を2019年1月に出版している。

★ドライアイ目薬の研究成果の盗用

2011年(55歳?)、アシム・ミートラ(Ashim Mitra)教授は目薬セクア(Cequa)の研究成果を、米国ヴァージン諸島に本拠を置く医薬品開発会社・オーベン・セラピューティックス・マネジメント社(Auven Therapeutics Management)に売った。

2013年8月23日(57歳?)、ミートラ教授とオーベン・セラピューティックス・マネジメント社の社員・シドニー・ワイス(Sidney L. Weiss)を発明者とする特許「局所製剤とその用途(Topical formulations and uses thereof)」を申請した。この時、後で問題視される元院生のキーショア・チョルカー(Kishore Cholkar)を発明者に入れなかった。また、ミズーリ大学の承認を得ていなかった。
 → 特許:US20140057854A1 – Topical formulations and uses thereof – Google Patents

2015年3月17日(59歳?)、オーベン・セラピューティックス・マネジメント社は、特許を取得した。

2017年(61歳?)、オーベン・セラピューティックス・マネジメント社はその研究成果をインドのサン・ファーマシュ―ティカル社(Sun Pharmaceutical Industries)に4千万ドル(約40億円)+継続的なロイヤリティで売却した。

2018年11月(62歳?)、ミートラ教授の口座に既に100万ドル(約1億円)が振り込まれていた。その後の振り込みもあり、ミートラ教授は計150万ドル(約1億5千万円)を得た。

そして、ミートラ教授は今後5年間、ロイヤルティとして目薬セクア(Cequa)の売上高の1%をもらう契約になっているので、今後5年間で1000万ドル(約10億円)を手にするだろうと予測されている。

2019年2月26日(63歳?)、ところが、ミズーリ大学は、ミートラ教授が元院生のキーショア・チョルカー(Kishore Cholkar、写真出典)の研究成果を盗んで特許を取得し、特許を150万ドル(約1億5千万円)で売ったと、カンザスシティの連邦地方裁判所(federal district court in Kansas City)に訴訟を起こした。

被告には、 ミートラ教授の研究を手伝っていたミートラ教授の妻のランジャナ(Ranjana)(ミズーリ大学の研究員)も含まれている。

ミズーリ大学は、ミズーリ大学で研究が実施されたので、大学はそれなりのお金が得られるハズだ。また、研究していたのは元院生・チョルカーなので、元院生・チョルカーもそれなりのお金が得られるハズだと主張し、金を争う裁判を起こしたのである。

訴訟では、米国・医薬品局(FDA)の承認薬なので、ミートラ教授の特許は10億ドル(約1,000億円)の価値があると述べている。マー、1,000億円の金なら、裁判で、5%もらえれば、50億円だから、大学も食いつくわけだ。

イヤイヤ、ミズーリ大学の規則では、大学で実施した研究の特許料の3分の2は大学のもので、3分の1は発明者という規則だ。5%ではなく、67%、つまり、1,000億円なら、670億円が大学に転がり込むのである。
 → ミズーリ大学の特許規則:100.020 Patent and Plant Variety Regulations | Collected Rules | Rules and Regulations | University of Missouri System

元院生・チョルカーの貢献度を白楽は知る由もないが、裁判で発明者の1人と認定されれば、発明者 が得る330億円、その3分の1としても110億円を手にできる。目が血走るのも無理はない。

元院生・チョルカーは、2008年にミズーリ大学のミートラ教授・研究室の院生になり、論文を調べると、ミートラ教授・研究室から「2010年のJ Pharm Biomed Anal.」論文-「2017年のMol Pharm」論文と、8年間に21論文を発表している。21論文は全部、ミートラ教授との共著論文である。

ドライアイの目薬に関係しそうな論文で、元院生・チョルカーが第一著者なのは以下の「2016年のInt J Pharm.」論文である。

確かに、この論文で、シクロスポリンをナノテクノロジーで水溶性ミセルにし、ウサギの目に点眼した実験をしている。

一方、ミートラ教授は、元院生・チョルカーの貢献は、特許を取得した後になされたものだと主張している。

前述したように、ミートラ教授が発明をオーベン・セラピューティックス・マネジメント社に売ったのは2011年で、2013年に特許を申請している。だから上記の「2016年のInt J Pharm.」論文の5年前や3年前で、元院生・チョルカーの論文は発明技術にも特許申請にも役に立っていない。 → 2019年3月1日のジュリア・ジェイコブス(Julia Jacobs)記者の「New York Times」記事:Former Missouri Professor Stole Student’s Research to Sell New Drug, Lawsuit Alleges – The New York Times

2011年以前の元院生・チョルカーの論文は目薬とは無関係の「2010年8月のJ Pharm Biomed Anal.」論文が1報あるだけだ。

元院生・チョルカーは、次項で述べるミートラ教授の私的雑用をしなかった。それで、虐待され、ミートラ教授と数年間一緒に研究した成果を発表した時、彼のクレジットを認めてもらえなかったと主張している。だから、本当は、元院生・チョルカーが出した研究成果なのに、論文の著者に入れてくれなかったのだというわけだ。

「昼夜を問わず研究しましたが、私の名前は含まれていませんでした。私はその研究に取り組んだ唯一の院生でした。 私はすべての努力をその研究に注ぎました。それは私の研究成果です。ダマされました」と元院生・チョルカーは述べている。

確かに、特許を取得した2015年以前の元院生・チョルカーの論文には、目薬関係の論文もある。

しかし、元院生・チョルカーの特許への貢献度について、「ない」というミートラ教授の主張が正しい印象を白楽は受けた。だって、元院生・チョルカーが著者でミートラ教授が共著者になっている論文が、 8年間に21論文を発表もある。虐待されて、共著者に入れてもらえなかったという元院生・チョルカー主張はおかしい。8年間に21論文ということは、毎年、3論文近く著者になっている。

しかし、多くのメディアはミートラ教授が院生の研究成果を盗んだと報じている。

2019年3月31日(63歳?)、ミートラ教授は、ミズーリ大学カンザスシティ校薬科大学院(University of Missouri-Kansas City School of Pharmacy)を辞職した。

2019年10月8日(63歳?)現在、裁判の決着はついていない。

★アカハラ

再掲するが、1994年(38歳?)、アシム・ミートラ(Ashim Mitra)はミズーリ大学カンザスシティ校薬科大学院(University of Missouri-Kansas City School of Pharmacy)・教授になった。ミートラ教授はインド出身で、研究室の院生・ポスドクは、全員、インドから渡米してきた人たちだった。

多くの院生・ポスドクは、ミートラ教授の家の雑用をすることに同意しなければ、滞在ビザを剥奪される、と信じていた。 それで、院生はミートラ家の地下室を掃除したり、ミートラ家でパーティがあると裏方サービスをしていた。

ミートラ教授夫妻が出張で自宅を留守にした時、院生たちは芝生や植物に水やり、犬の世話をさせられた。

2014年(58歳?)、現在はミズーリ大学・準教授になっているムリドゥル・ムヘルジ準教授(Mridul Mukherji、写真出典)が、ミートラ教授のアカハラ行為をミズーリ大学に訴えた。

Mukherji-complaint

 

しかし、ミズーリ大学はムヘルジ準教授 の訴えを無視したので、2018年(62歳?)、今度は、ムヘルジ準教授はミートラ教授とミズーリ大学の両方を裁判所に訴えた。

ミズーリ大学はミートラ教授のアカハラ行為を知っていたが、ミートラ教授が数百万ドル(数億円)を研究費に大学に持ってくる最も成功した教員なので、長年、院生の申し立てを無視してきた。という理由で、ムヘルジ準教授はミズーリ大学を訴えた。

一方、ミートラ教授は次のように述べている。

「長年、私は院生を自宅に招き、大学院コースの勉強の手助けをしてきました。そして、妻の作った食事で彼らをもてなしてきました。研究や大学院コースの勉強に関係のない雑用を、彼らに要求したことはありません」。

「私は、院生が滞在ビザを剥奪されるという心配話を信じられません。私は60人以上の院生に滞在ビザ (F1ビザ、研究者ビザ)を取得してもらいミズーリ大学に招いていますが、ビザで異議を申し立てられたり取り消されたりした院生は1人もいません」。

2019年8月29日(63歳?)、とはいえ、ミズーリ大学はムヘルジ準教授に36万ドル(約3,600万円)支払うことで示談した。
 → 2019年9月1日記事:University reaches $360,000 settlement with professor who said his boss used students as servants – University News |

それまで長年無視していたたミートラ元教授のアカハラ行為を、特許紛争で急に態度を変え、メディアにリークしはじめた。ムヘルジ準教授と和解し、ミートラ元教授の悪いイメージを一気に高めている。

ミートラ教授も示談金を払う羽目になるのだろうか?

ミートラ教授の家。写真:Shelly Yang SYANG@KCSTAR.COM、https://www.kansascity.com/news/local/article220872325.html

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2019年10月8日現在、パブメド(PubMed)で、アシム・ミートラ(Ashim Mitra)の論文を「Ashim Mitra [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2019年の18年間の244論文がヒットした。

「Mitra AK[Author]」で検索すると、1950~2019年の70年間の592論文がヒットした。

2019年10月8日現在、「Mitra AK[Author] AND Retracted」でパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。
.
★撤回論文データベース

2019年10月8日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回論文データベースでアシム・ミートラ(Ashim Mitra)を検索すると、0論文がヒットし、0論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2019年10月8日現在、「パブピア(PubPeer)」では、アシム・ミートラ(Ashim Mitra)の論文にコメントはない:PubPeer – Search publications and join the conversation.

●7.【白楽の感想】

《1》研究成果の所有権 

研究成果は誰のものか?

一般的に、院生・ポスドクは研究成果を教授に取られたと思い込む傾向が強い。

研究テーマを提示した時点で、白楽の場合、かなり先までの研究計画を立てている。しかし、院生には期待値を示さない(示すとそれに合うデータを作る可能性が高まるので)。院生が自由に研究を進め、院生が自分で発見するように仕向けることが多かった。

だから、院生は研究を進める過程でひらめいたアイデアを自分のアイデアだと思っただろう。つまり、自分で発見したと思う。先生は研究に何も貢献していない。院生は、そうやって自分のアイデアを広げ、伸びるので、白楽はそれでいいと思っている。

ただ、特許が絡むと、注意が必要だ。

そして、ミートラ事件のように1,000億円の特許使用料がからむと、これはもう、醜い争いの世界だ。日本でも最近目にしている「オプジーボ」をめぐる本庶佑と小野薬品工業の争いと同じだ。
 → 2019年4月10日の「日本経済新聞」記事:本庶氏、小野薬品を改めて批判 オプジーボ対価巡り
 → 2018年10月15日の「FRIDAYデジタル」記事記事:ノーベル賞受賞の本庶佑 オプシーボで「得たカネ」「失ったカネ」

「盗用があったか・なかったか」は通常、「当局・オーソリティ」である大学が判定する。つまり、ミズーリ大学カンザスシティ校薬科大学院(University of Missouri-Kansas City School of Pharmacy)が「当局・オーソリティ」で、その下した判定が尊重される。

しかし、大学の判定は、特許絡みの争いでは役に立たない。研究成果の所有権は裁判所が決めることになる。

しかし、なんかヘンだ。

2011年、ミートラ教授が研究成果を企業に売った時、大学は何もクレーム付けていない。

2013年、ミートラ教授が特許申請した時、大学は何もクレーム付けていない。

2015年、特許が認可された時も、大学は何もクレーム付けていない。

2018年11月、ミートラ教授が特許で100万ドル(約1億円)を得たことを知って、大学は俄然と、乗り出した。

研究公正という観点ではなく、金の臭いをかいで、乗り出したのだ。

それに、本来、誰がその研究成果に大きく貢献したか、つまり研究成果の所有権は法律の問題ではない(気がする)。研究者仲間の評価ではないだろうか?

法律の問題なら、ノーベル賞受賞者も裁判所が決める? そんなバナナ!

と、ここまで書いたが、ミズーリ大学は研究成果の所有権を争っているのではなく、ミートラ教授が大学の規則に違反しているかどうか? 大学の許可なく特許を申請した点を問題にしているのだった。

白楽も、10億・100億のお金に判断を誤った。ゴメン。

《2》アカハラ

ミートラ教授がアカハラをしたという訴えは、特許紛争と本来は無縁だが、ここでは無縁ではない。

何かの折にミートラ家の地下室を掃除したり、パーティの裏方サービス、そして、出張中、ミートラ家の植物に水やり、犬の世話など、アカハラとは思えない。このような相互扶助はインド文化だそうだが、日本文化にも近いものがある。

白楽も学部生の頃、江上不二夫教授の研究室の引っ越しを手伝った(タダで義務のように。しかし、数か月後、三菱生命研を見学させてくれた)。院生の頃、教員の自宅の引っ越しを手伝った(飯・カネ付き)。逆に、米国・NIH・ポスドクの時、テクニシャンにアパートに置いてあった大きな私物を運んでもらった(車がないと運べない。白楽はNIHに隣接のアパートに住んでいて車を持っていなっかった)。このようなことは、アカハラではなく、人間社会の相互扶助じゃないでしょうか。マーいいけど。

米国の文化と法律で判断し、実際にミートラ教授がアカハラをしたのかどうか、白楽は判断できない。

以下は推定だが、ミズーリ大学はミートラ教授を側面攻撃している印象だ。

ミズーリ大学はミートラ教授を悪い奴と印象づけて、特許裁判を有利に進めたい。大学はミートラ教授のアカハラに関する情報をかなり持っている、また、アカハラかどうかの判定に大学はかなりの権限がある。

そして、ミートラ教授の悪い情報をメディアにリークしている。だから、メディアはミートラ教授のアカハラ事件を大きく報じている。日本語のメディアも尻馬に乗っている。

そして、ついに、2019年8月29日(63歳?)、ミズーリ大学とミートラ教授を訴えていたムヘルジ準教授にミズーリ大学は36万ドル(約3,600万円)を支払う示談をした。

こうすれば、ミートラ教授の立場は益々悪くなる。ムヘルジ準教授はミズーリ大学を訴えながらも、ミズーリ大学と内通していたのではないだろうか?

ミズーリ大学はムヘルジ準教授 に3,600万円払ったところで、ミートラ教授の特許を獲得できれば、約670億円が手に入る。3,600万円は安いものだ。

汚いぞ、ミズーリ大学!

イヤ、賢いぞ、ミズーリ大学! でしょうか?

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●9.【主要情報源】

①  2018年11月20日のマイク・ヘンドリックス(Mike Hendricks)記者とマラ・ローズ・ウィリアムズ(Marà Rose Williams)記者の「Kansas City Star」記事:UMKC suspends professor in ‘slave labor’ investigation | The Kansas City Star
② 2019年2月26日のダン・マーゴリーズ(Dan Margolies)記者の「KCUR」記事::UMKC Says Pharmacy Professor Stole Student’s Research And Sold It For $1.5 Million | KCUR
③  2019年2月26日のマイク・ヘンドリックス(Mike Hendricks)記者とマラ・ローズ・ウィリアムズ(Marà Rose Williams)記者の「Kansas City Star」記事:UMKC: pharmacy professor stole student’s research, sold it | The Kansas City Star MIKE HENDRICKS AND MARÁ ROSE WILLIAMS
④  2019年2月27日のAP通信(Associated Press)記者とマキシン・シェン(Maxine Shen)記者の「Daily Mail Online」記事:Univ of Missouri pharmacy professor ‘stole and sold student’s research worth $10M in royalties’ | Daily Mail Online
⑤  2019年3月1日のジュリア・ジェイコブス(Julia Jacobs)記者の「New York Times」記事:Former Missouri Professor Stole Student’s Research to Sell New Drug, Lawsuit Alleges – The New York Times
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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