経済学:チュンミン・クァン、管中閔(Chung-ming Kuan)(台湾)

2018年8月5日掲載。

ワンポイント:2018年1月5日(61歳)、チュンミン・クァンは、国立台湾大学(National Taiwan University)の学長に選出された。その19日後、民主進歩党の張廖萬堅(チャン・リャンマンチェン、Chang Liao Wan-chien)議員が、記者会見で、チュンミン・クァンの2017年の学術論文に盗用があると指摘した。国立台湾大学は盗用を否定している。しかし、政治抗争の場になり、日本の文部科学大臣に相当する教育部長はチュンミン・クァンの学長就任を認めず、2018年8月4日(61歳)現在も、学長は空席で宙に浮いている。教育部長はここ半年で2人も辞任した。国民の損害額の総額(推定)は100億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】

チュンミン・クァン、管中閔(Chung-ming Kuan、写真出典)は、2018年1月5日(61歳)、国立台湾大学(National Taiwan University)の学長に選出された。専門は経済学である。2018年2月1日(61歳)に学長就任の予定だった。

2018年1月24日(61歳)、ところが、民主進歩党のリャンワンチェン・チャン(張廖萬堅、Liao Wan-chien Chang )議員が、記者会見で、チュンミン・クァンの2017年の学術論文に盗用があると指摘した。

国立台湾大学は盗用を否定したが、白楽の視点では、明白な盗用に思える。

チュンミン・クァンは前政権の閣僚だったこともあり、盗用以外の点でも問題視され、2018年8月4日(61歳)現在、政府に承認されていない。つまり、学長就任が宙に浮いている。

日本の文部科学大臣に相当する教育部長が学長就任を承認しない政府の責任者だが、教育部長はここ半年で2人辞任し、国立台湾大学・学長人事が政治抗争の場になっている。

230639_medium国立台湾大学(National Taiwan University (NTU))正門。(陳柏州/攝影)。写真出典

  • 国:台湾
  • 成長国:台湾
  • 研究博士号(PhD)取得:米国のカリフォルニア大学サンディエゴ校
  • 男女:男性
  • 生年月日:1956年8月15日
  • 現在の年齢:62歳
  • 分野:経済学
  • 最初の不正論文発表:2017年(60歳)
  • 発覚年:2018年(61歳)
  • 発覚時地位:国立台湾大学の学長に選出されたが、まだ就任できない
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は民主進歩党のリャンワンチェン・チャン(張廖萬堅、Liao Wan-chien Chang )議員で、記者会見で指摘。議員への情報提供者は不明
  • ステップ2(メディア):「Taipei Times」紙のアン・マクソン(Ann Maxon)記者など多数の台湾メディアが報道
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①国立台湾大学。但し、調査委員会を設けていない
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。調査委員会を設けていないので調査報告書はないが、大学広報官と倫理委員会は盗用を否定
  • 大学の透明性:実名報道だが機関のウェブ公表なし(△)
  • 不正:盗用
  • 不正論文数:1報
  • 盗用ページ率:不明
  • 盗用文字率:不明
  • 時期:研究キャリアの後期
  • 職:事件後に学長就任できるかどうかは未確定(ー)。
  • 処分:未確定
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は100億円。内訳 →

  • ⑧損害額(大雑把)の場合:盗用は明白である。学長に選出され、それ以前は閣僚だった。学者そして、政治家として、国と政界・大学の権威・公正・信頼を失墜させ、学術界を腐敗させた。学長は100億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

主な出典:Prabook Chung-Ming Kuan (born August 15, 1956), Chinese researcher, economics professor |

  • 1956年8月15日:台湾の台北に生まれる
  • 19xx年(xx歳):台湾の私立大学である中国文化大学(Chinese Culture University)で学士号取得
  • 19xx年(xx歳):米国のカリフォルニア大学デービス校(University of California, Davis)で修士号取得(?)
  • 1989年(33歳):米国のカリフォルニア大学サンディエゴ校(University California, San Diego)で研究博士号(PhD)を取得
  • 1989‐1996年(33‐40歳):米国のイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(University Illinois, Urbana-Champaign)・経済学科・助教授
  • 1994‐1999年(40‐45歳):国立台湾大学(National Taiwan University)・経済学科・教授
  • 1999年(45歳):台湾の中央研究院(Academia Sinica)の経済学研究所(Research fellow Institute Economics)・研究員(Research fellow)
  • 2001‐2007年(47‐53歳):中央研究院(Academia Sinica)の経済学研究所・所長
  • 2009年(55歳):国立台湾大学(National Taiwan University)・財政学科・学科長
  • 2013年2月‐2014年1月(56‐57歳):行政院経済建設委員会(Council for Economic Planning and Development)・主任委員(日本での大臣、つまり閣僚)
  • 2014年1月‐2015年2月(57‐58歳):国家発展委員会(National Development Council)・主任委員(日本での大臣、つまり閣僚)
  • 2018年1月5日(61歳):国立台湾大学(National Taiwan University)の学長に選出され、2月1日に就任予定だった
  • 2018年1月(61歳):盗用が発覚
  • 2018年8月4日(61歳)現在:政府は国立台湾大学・学長への就任を認めていない

●3.【動画】

【動画1】
ニュース動画:「遭拔「管」後首發文 管中閔:面對威權絕不妥協- YouTube」(中国語)2分12秒。
東森新聞 CH51が2018/04/28 に公開

【動画2】
チュンミン・クァン(管中閔、Chung-ming Kuan)の記者会見動画:「蔡英文政府拿司法殺手鐧!管中閔回擊「卡管」向教育部發最後通牒!少康戰情室 20180322 – YouTube」(中国語)48分19秒。
中华微视 が2018/04/29 に公開

●4.【日本語の解説】

★2018年1月25日:suiyuetui:国民党系の次期学長が論文の剽窃をしたと民進党の議員が告発

出典 → ココ (保存版

台湾の名門大学台湾大学の次期総長に国民党員で国民党政権時代には政権に参加していた管中閔氏が1月5日に選ばれた。しかし昨日民進党の張廖萬立法委員は教育部に徹底調査を要求した。

今日張廖萬立法委員は記者会見を開いて説明した。管中閔氏と暨南大学教授陳建良氏は中研院と台湾大学が開催した「ネットと貿易シンポジウム」で論文を発表したが、暨大碩士班の張姓の学生の学位論文を不当に引用した容疑があるという。

同じ分野の学者の検視によると、内容が同じところは学生の論文からという引用の注釈がないだけでなく参考文献にも列挙していない、学生が作った図表も複製している、明らかに倫理に反しているという、また結論も瓜二つで同じところは20箇所以上になるという。張廖萬立法委員は管中閔氏が学生が彼を剽窃したというが、論文作者に名前が出ている陳建良教授が担当教授だがなぜ学生を卒業させたのかと言った。これについて台湾大学は現在調査中だという。

以下略

★2018年4月28日:フォーカス台湾:葉素萍、陳至中/編集:塚越西穂:教育部、台湾大の学長選任案を差し戻し 利益相反の疑いで

出典 → ココ (保存版

台北 28日 中央社)教育部は27日、馬英九政権下で閣僚を務めた管中閔氏を台湾大の次期学長とする同大の申出を「法的に利益相反が疑われる」とする理由で差し戻し、候補者の資格審査からやり直すよう求めた。これを受け、同大は28日、選考はすべての規定に沿ったものだと強調した上で、遺憾の意と強い不満を表明した。

蔡英文総統は同日、マスコミの取材に対し、「専門的な決定だ」と述べ、教育部の判断を尊重する姿勢を示した。一方、管氏も同日、自身のフェイスブックにコメントを発表。政府の権力はわれわれの大学の自治と学術の自由を守る決意を変えることができないとつづった。

以下略

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★盗用発覚の経緯と内容

チュンミン・クァン(管中閔、Chung-ming Kuan),http://www.chinatimes.com/realtimenews/20180316004129-260405

2018年1月5日(61歳)、チュンミン・クァン(管中閔、Chung-ming Kuan)は、国立台湾大学(National Taiwan University)の学長に選出され、2月1日に就任の予定になった。

チュンミン・クァンの専門は経済学だが、学者というより、前政権の馬英九政権下で2015年2月(58歳)まで、国家発展委員会(National Development Council)・主任委員(日本での大臣、つまり閣僚)を務めた政治家としての機能の方が大きい。

リャンワンチェン・チャン(張廖萬堅、Liao Wan-chien Chang )議員、http://www.chinatimes.com/realtimenews/20180126002216-260407

2018年1月24日(61歳)、ところが、民主進歩党のリャンワンチェン・チャン(張廖萬堅、Liao Wan-chien Chang )議員が、記者会見で、チュンミン・クァンが2017年5月に発表した学術論文は中国の済南大学(さいなんだいがく、Jinan University)(曁南大学)の学生・チャン(Chang、張)の2016年に出版した修士論文と20箇所も同じ(つまり盗用)だと指摘した。

盗用の指摘が皮きりになり、チュンミン・クァンの他の問題も指摘され、2018年8月4日現在、台湾政府はチュンミン・クァンの学長就任を認めていない。

盗用論文の書誌情報は以下の通りである。

  • An Empirical Study of the Effect of the Economic Cooperation Framework Agreement on Exports
    論文題名の日本語訳「輸出に関する経済協力枠組み協定の効果に関する実証研究」
    著者:管中閔(Chung-ming Kuan)と陳建良(Chien-liang Chen)
    2017年5月
    出版は、学術誌ではなく会議論文(conference paper)

被盗用論文の著者である学生・チャン(Chang、張)は、チュンミン・クァンと共著で論文を発表した済南大学の陳建良・教授の教え子である。

チュンミン・クァンは、学生・チャンの論文を知らないと盗用を否定した。また、陳建良・教授は、盗用したのは学生・チャン(Chang、張)の方だと主張した。

国立台湾大学は、「チュンミン・クァンは学術規範に違反していない。なぜなら、会議論文(conference paper)は、学術規範に縛られる正式な論文ではないからだ」という声明を発表した。

会議は国立台湾大学・経済学科と中央研究院(Academia Sinica)の人文社会科学研究センター(RCHSS Research Center for Humanities and Social Sciences)が共催したのだが、国立台湾大学・倫理委員会は、主催側と協議し、「会議は研究者の情報交換ための非公式の会だった。会議論文は査読されず、会議議事録(conference proceeding)としてのみ掲載された」と弁明した。

しかし、会議は、2017年4月4日までに「完全で正式な論文原稿」を提出する必要があり、チュンミン・クァンの会議論文にも予備的な論文という注釈はなく、チュンミン・クァンは完全な論文原稿を作製していたと思われる。

何人もの学者が国立台湾大学は盗用の告発に適切な調査をしていないと非難している。

国立台湾大学・作物栽培学科のウォーレンクオ教授(郭華仁、Warren Kuo)は「論文に公式も非公式もありません。全部、公式です。倫理委員会の委員は職務に不適格です」と批判した。

国立台湾大学・国家発展研究所のチンイ―・リウ教授(劉靜怡、Liu Ching-yi、写真出典)は、「会議で発表された論文が非公式だという国立台湾大学の言い分を支持した中央研究院(Academia Sinica)もおかしい」、と疑問を呈した。

「なぜ中央研究院は自ら、会議の価値を低下させているのか? 中央研究院が開催する会議で発表する予定の有名な学者に、会議で発表しても「正式な」論文として扱われないから、発表する必要はないというメッセージを発していることになる」。

台湾師範大学の英語学教授のハンユー・ファン(黃涵榆、Han-yu Huang)は、「学者は盗用と判定されるかどうかにかかわらず、出版した論文に対して責任を負うべきである。盗用した論文が研究補助金の支援を受けていれば、それは犯罪です」と述べている。

一方、チュンミン・クァンの国立台湾大学の支持者たちは、教育省が大学の自主性を尊重するよう抗議し、ウェブページを作成した。

そして、このページには国立台湾大学の元・学長のチェン・サン(孫震、Chen Sun)とシエン・リー(李嗣涔Si-chen Lee)をはじめとする支持者の署名が1,000件以上集まっている。

★盗用の具体例

盗用論文の書誌情報は以下通りである。

  • An Empirical Study of the Effect of the Economic Cooperation Framework Agreement on Exports
    論文題名の日本語訳「輸出に関する経済協力枠組み協定の効果に関する実証研究」
    著者:管中閔(Chung-ming Kuan)と陳建良(Chien-liang Chen)
    2017年5月
    出版は、学術誌ではなく会議論文

被盗用論文は済南大学の陳建良・教授の教え子・チャン(Chang、張)が2016年に出版した修士論文である。

20箇所も同じだそうだが、盗用比較表は見つからなかった。それで、盗用ページ率と盗用文字率は不明である。

なお、一般的に、盗用には次の4種類がある。①逐語盗用(コピペ、文献提示なし)、 ②加工盗用(ロゲッティング、文献提示なし)、③流用部分が曖昧な盗用(文献提示あり)、 ④翻訳盗用

同じだだった20箇所は上記のどの種類の盗用なのか不明である。

★政治抗争

2018年8月4日(61歳)現在、次期学長としてチュンミン・クァンを選出した国立台湾大学と、学長就任を認めない政府が対立したままである。
→ 2018年8月3日の「Taipei Times」記事:NTU urges ministry to ratify Kuan’s election – Taipei Times

チュンミン・クァンを学長として認めない理由は盗用だけではない。というか、盗用以外の点で、国立台湾大学・学長人事で政治抗争が続いている。現政権は前政権の閣僚経験者を重要ポストにつけたくない。また、学長人事を材料に与野党が政治抗争している。

ネカトとは直接関係ないので掘り下げず、以下、簡単に経過を示す。

同大の学長人事をめぐっては、学術研究機関、中央研究院の院士・管中閔氏が今年1月に学長に選出され、2月1日に就任する予定だったが、選考委員会メンバーの1人と同じ企業の役員だったことや、論文の盗用、禁止されている中国大陸の大学教員の兼職など疑惑が次々と浮上。教育部から学長就任の承認が下りない状態が続いていた。今月上旬、教育部は省庁をまたいだ専門の調査チームを発足させ、管氏の就任が妥当か否か検討を行うと発表。1回目の会議が10日に行われたが、潘氏の辞任で2回目の会議は延期となっていた。(新教育相が就任 台湾大学長人事、来週にも検討再開へ(2018年4月19日) – エキサイトニュース

2018年4月16日(61歳)、教育部長(文部科学相に相当)の潘文忠(Wen-chung Pan)はチュンミン・クァンの国立台湾大学・学長への就任を認めなかった。職権乱用・政治操作と批判され、教育部長を辞任した。

2018年4月19日(61歳)、物理学者の呉茂昆(Maw-kuen Wu)が教育部長(文部科学相に相当)に就任した。

2018年4月27日(61歳)、呉茂昆は、チュンミン・クァンの国立台湾大学・学長への就任を認めないので、別の学長を選任するようにと通達した。

2018年5月29日(61歳)、台湾の呉茂昆が在職41日間で教育部長(文部科学相に相当)を辞任した。東華大学(花蓮県)・学長の時、大学の特許を勝手に利用して米国に会社を設立したと指摘され、検察当局が捜査していた。

2018年7月16日(61歳)、教育部長(文部科学相に相当)に葉俊栄(Jiunn-rong Yeh、写真出典)が就任。
→ 内閣改造 閣僚7人を交代 教育相には葉俊栄内相/台湾 | 政治 | 中央社フォーカス台湾

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

省略。

●7.【白楽の感想】

《1》盗用と政治家

チュンミン・クァンは盗用事件ではあるのだが、事件は政治的要素がずっと強い。

国立台湾大学は台湾で最高の大学だと思われるが、中枢部の言動は、チュンミン・クァンの盗用を盗用ではないかのように誘導している。規範を捻じ曲げ、学問を冒涜している。学者の集まりなのに、情けないほどアホである。

ネカトはネカトで、政治とは切り離すべきだ。

他国でも、政治家の盗用事件がかなり起こっていて、何かと政治抗争の道具に使われる。嘆かわしい。

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https://news.ftv.com.tw/news/detail/2018106L01M1

●8.【主要情報源】

① ウィキペディア英語版:Kuan Chung-ming – Wikipedia
② 2018年1月26日。アン・マクソン(Ann Maxon)記者の「Taipei Times」記事:NTU president-elect accused of plagiarism – Taipei Times
②-2 2018年1月28日。アン・マクソン(Ann Maxon)記者の「Taipei Times」記事:NTU rejects allegations that its future president plagiarized student’s thesis – Taipei Times
③ 2018年1月25日。マシュー・ストロング(Matthew Strong)記者の「Taiwan News」記事:National Taiwan University president-elect faces further scrutiny | Taiwan News
④ 2018年2月23日。エリー・ボスウェル(Ellie Bothwell)記者の「Times Higher Education」記事:National Taiwan University president-elect under fire | Times Higher Education (THE)、(保存版)
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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