シエタオ・チャオ、曹雪涛(Xuetao Cao)(中国)

2020年1月31日掲載 

ワンポイント:2019年ネカト世界ランキングの「4」の「第3位」に挙げられたので記事にした。チャオは南開大学(Nankai University)・学長で、中国のトップ科学者の1人。2019年11月13日(55歳)、ネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)がチャオの論文の画像に異常がある、とパブピアで指摘した。結局、2004~2019年(16年間)のチャオの60報以上の論文に画像の異常が見つかった。中国工程院の調査は終わっていない。従って、チャオは処分されていない。国民の損害額(推定)は10億円(大雑把)。

【追記】
・2021年6月2日記事:16論文撤回:The 16 secret retractions of Xuetao Cao at JBC – For Better Science
・「間違い」でおとがめなし。部下が処分された。2021年01月21日記事:有关论文涉嫌造假调查处理情况的通报。2021年01月22日の「 Science」記事: High-profile Chinese scientist cleared of fraud and plagiarism charges involving more than 60 papers | Science | AAAS。2021年01月26日の「 Nature」記事: Famed Chinese immunologist cleared of plagiarism and fraud

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

シエタオ・チャオ、曹雪涛(Xuetao Cao、ORCID iD:?、写真出典)は、中国・上海の第二軍医大学(Second Military Medical University in Shanghai)で27年間、教員・教授を務め、2017年12月に南開大学(Nankai University、中国語:南开大学)・学長に就任した。専門は免疫学である。中国免疫学会(Chinese Society of Immunology)・会長などの要職を歴任した。米国科学アカデミー・会員にもなり、中国のトップ科学者の1人である。地位の高い人で、文句なしに高等国民・上級国民である。

チャオは、 3つの大学に免疫の研究室を持っている。1つ目は、上海の第二軍医大学(Second Military Medical University in Shanghai)、2つ目は、北京協和医学院 (Peking Union Medical College)、3つ目は、浙江(せっこう)大学医学院(Zhejiang University School of Medicine)である。上海と浙江(せっこう)は車で3時間の距離だが、北京とは1000㎞以上離れている。各研究室の研究室員の人数を調べていないが、院生・ポスドク・研究員の総計は100人以上いると思える。

2019年11月13日(55歳)、ネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)がチャオの論文の画像に異常がある、とパブピアで指摘したのが発端である。

ネカトハンターのレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)とスマット・クライド(Smut Clyde)が呼応し、また、他の研究者も加わり、結局、2004~2019年(16年間)のチャオの60報以上の論文に画像の異常があるとパブピアで指摘される大事件になった。

中国工程院(ちゅうごくこうていいん、Chinese Academy of Engineering)が調査を始めた。

2019年ネカト世界ランキングの「4」の「第3位」に挙げられたので記事にしたが、2020年1月30日現在、中国工程院の調査は終わっていない。従って、チャオは処分されていない。中国のことだから、チャオのような高等国民・上級国民は処分されない可能性もある。

上海の第二軍医大学(Second Military Medical University in Shanghai)。写真出典

  • 国:中国
  • 成長国:中国
  • 医師免許(MD)取得:?。取得したなら第二軍医大学
  • 研究博士号(PhD)取得:第二軍医大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:1964年7月10日
  • 現在の年齢:59 歳
  • 分野:免疫学
  • 最初の不正論文発表:2004年(40歳)
  • 不正論文発表:2004~2019年(40~55歳)の16年間の64論文
  • 発覚年:2019年(55歳)
  • 発覚時地位:南開大学・学長
  • ステップ1(発覚):第一次追及者はネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)で、チャオの論文の画像に異常がある、とパブピアで指摘した
  • ステップ2(メディア):エリザベス・ビックのブログ、「パブピア(PubPeer)」、「Science」など多数
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌・編集部。②中国工程院・調査委員会
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。中国工程院が調査中
  • 大学の透明性:中国工程院が調査中(ー)。
  • 不正:ねつ造・改ざん
  • 不正論文数:64報のコメントあり。1論文撤回
  • 時期:研究キャリアの中期から
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
  • 処分:調査中なので処分なし
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は10億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

  • 1964年7月10日:中国で生まれる
  • 1981年9月(17歳):上海の第二軍医大学(Second Military Medical University in Shanghai)・入学
  • 1986年7月(22歳):同大学で医学士。医師免許(MD)取得(?)
  • 1990年12月(26歳):同大学で研究博士号(PhD)取得
  • 1990年12月(26歳):同大学・免疫学教研室・講師
  • 1993年(28歳):同大学・教授
  • 1995-2011(31-47歳):同大学・免疫学教研室・主任
  • 2000-2011(36-47歳):同大学・免疫研究所・所長
  • 2004-2011(40-47歳):同大学・副学長
  • 2006-2014(42-50歳):中国免疫学会(Chinese Society of Immunology)・会長
  • 2011-2015(47-51歳):中国医学アカデミー(Chinese Academy of Medical Sciences)・会長
  • 2017年10月16日(53歳):米国科学アカデミー・会員
  • 2017年12月(53歳):南開大学(Nankai University、中国語:南开大学)・学長
  • 2018年1月(53歳):中国人民政治協商会議の第13回全国委員会(13th National Committee of the Chinese People’s Political Consultative Conference.)の委員
  • 2019年11月13日(55歳):不正研究が発覚する

●3.【動画】

【動画1】
中国人が「チャオ・シエタオ」と紹介。
解説動画:「【悦读】方舟子——P图技术谁最高?中国院士曹雪涛 – YouTube」(英語)7分74秒。
司空晓东が2019/11/23に公開

【動画2】
ニュース動画:「南開大學校長曹雪濤回應論文實驗圖片有PS痕跡:複查已經開展 – YouTube」(音楽のみ)1分26秒。
小新闻报中国が2019/11/18に公開

【動画3】
事件の動画ではない。米国人が「テクトゥー・チャオ」と紹介。
パネル討論動画:「China 2015 – Decoding Cancer – YouTube」(英語)1時間0分34秒。
World Economic Forumが2015/09/22に公開

●4.【日本語の解説】

★2019年11月xx日:田中智之(京都薬科大学・教授):研究倫理についての記事:Top Chinese researcher faces questions about image manipulation. Normile, D. Science, 2019

出典 → ココ、(保存版) 

中国の国家重点大学のひとつである南開大学に所属する曹雪涛(Xuetao Cao)博士に対して指摘されているミスコンダクトの疑義に関する記事。Cao博士はトップレベルの免疫学者として有名ですが、ミスコンダクトの指摘に少なくとも1年は専念することを宣言しているBik博士によって60の論文に問題があることが指摘されています。Cao博士は論文が示す結論に影響を与えるものではないと主張する一方で、自分にPIとしての管理責任があることを認め、学術誌とともに対応することを明言しています(Leonid Scheneiderによる記事)。中国のトップ研究者による不正の指摘であったため、Bik博士は特定の国を対象にした指摘ではないことを後日コメントせざるを得ませんでした。Bik博士は約1300の指摘をPubPeerで実施しており、対象となった研究者には日本人も含まれています。

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★偉い科学者で超多忙

シエタオ・チャオ、曹雪涛(Xuetao Cao)。https://forbetterscience.com/2019/11/18/the-teachings-of-chairman-cao/、元はhttp://www.xuetaocao.org/class/view?id=10091(リンク切れ)

シエタオ・チャオ、曹雪涛(Xuetao Cao)は中国の学術界の偉い人で、トップ科学者の1人である。

チャオは、3つの大学に免疫の研究室を持っている。1つ目は、上海の第二軍医大学(Second Military Medical University in Shanghai)、2つ目は、北京協和医学院 (Peking Union Medical College)、3つ目は、浙江大学医学院(Zhejiang University School of Medicine)である。上海と浙江(せっこう)は車で3時間の距離だが、北京とは1000㎞以上離れている。各研究室の研究室員の人数を調べていないが、院生・ポスドク・研究員の総計は100人以上いると思える。

研究室員と自分が共著者になっている論文に目が届いていないと思われる。

2019年11月13日、今回、ネカト事件の当時者になったが、皮肉なことに、チャオは北京の人民大会堂で研究公正(Research Integrity)の講演を行なっている。中国では通常、共産党の指導者のみがこの場所での重要な講演を行なえる。

動画(124分、中国語)(以下の画像出典も) → 2019年全国科学道德和学风建设宣讲教育报告会 报告专家:王泽山、钱七虎、曹雪涛_哔哩哔哩 (゜-゜)つロ 干杯~-bilibili

人民大会堂で6,000人の院生、ポスドク、教授、アカデミーメンバーが講演を聞いただけでなく、講演は全国に同時中継され、中国全大学の80万人の院生と全教員が見るよう命じられていた。講演を視聴したことの確認のために、視聴用紙への記入が強制され、学習しことの報告が義務づけられた。

チャオは、 この講演で「研究公正のボトムラインは、誠実、規範、道徳」だと述べた。

★発覚の経緯

2019年11月19日のネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)が経過を書いている。以下、かいつまんで引用する:Concerns about a top immunology lab – Science Integrity Digest

2019年11月13日(55歳)、ビックがチャオの数編の論文の画像に異常があるとパブピアで指摘した。 → PubPeer – Search publications and join the conversation.(2020年1月30日現在、2004~2019年(16年間)のチャオの64論文にコメントされている)。

呼応して、ネカトハンターのレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)とスマット・クライド(Smut Clyde)が調べ、記事を書いた。 → 2019年11月18日記事:The Teachings of Chairman Cao – For Better Science。 → 2019年11月19日記事:“Promote scientific spirit, build Chinese school of thought” – For Better Science

結局、他の研究者の協力もあり、チャオの300報の論文の画像が検査され、60報以上の論文の画像に異常があるとパブピアで指摘されるまでの大事件になった。

例えば、以下の「2008年のBlood」論文である。

  • CaMKII promotes TLR-triggered proinflammatory cytokine and type I interferon production by directly binding and activating TAK1 and IRF3 in macrophages
    Xingguang Liu , Ming Yao , Nan Li , Chunmei Wang , Yuanyuan Zheng , Xuetao Cao
    Blood (2008) 112 (13): 4961-4970.
    https://doi.org/10.1182/blood-2008-03-144022

図1Aの赤枠の画像が全く同じである。本来、実験条件が異なるので同じ画像になるのはあり得ない。出典:エリザベス・ビック(Elisabeth Bik)の記事:https://pubpeer.com/publications/202EC84573D09857E316D1A9387F5B#1

2019年11月17日(55歳)、チャオは論文の結論は正しいが、画像を間違えた。間違いの調査に協力し、論文を訂正すると約束し、「私の見落としを心からおわび申し上げます」とパブピアに書いた(以下:出典https://pubpeer.com/publications/202EC84573D09857E316D1A9387F5B#4)。

中国工程院(ちゅうごくこうていいん、Chinese Academy of Engineering)が調査を始めた。

★処分はどうなる?

画像の重複使用(ねつ造)は、チャオ自身がしたとは思えない。

この事件は、チャオのようなスター科学者は監督できていないほど大勢の研究員を抱えていること、また、長年の懸念である慢性的なネカト行為を中国当局が対処できていないことを反映した事件だと受け止められている。

イリノイ州ピオリアのブラッドリー大学の図書館司書で情報科学者のシャオシン・チェン(Xiaotian Chen、写真出典)は、2019年に「撤回監視(Retraction Watch)」が示した全撤回論文の少なくとも4分の1は中国人研究者の論文だ、と指摘している。

2017年8月、中国当局は、約100報の撤回論文の400人以上の著者を、研究禁止の処分から昇進・受賞・助成金の取り消しに至る懲戒処分にすると発表していた。

チェンは、

しかし、文化を変えることは困難です。中国ではネカト行為の代償は非常に低いか、または、そもそも、中国はネカト行為者を処分しません。アメリカとヨーロッパでネカト行為をすれば、通常、辞職または解雇につながりますが、中国ではそのような処分を科されることは滅多にありません。

と批判している。

ノッティンガム大学・中国寧波(ねいは)キャンパス(University of Nottingham’s campus in Ningbo, China)の中国研究者であるチャオ・クエタオ(Cao Cuetao、写真出典 )は次のように述べている。

過去2年間、中国政府、共産党、学術団体は研究公正ガイドラインを発行し、ネカト行為に対する罰則を設定しました。このガイドラインに違反した事件が報告されていますが、しかし、現在まで、処分されていません。つまり、今までの中国は、研究公正を高め・維持するための政策のほとんどがすべては無意味になっています。

チャオの調査と処分をどうするのかは、中国当局(中国工程院)の最新のテストケースになると思います。

【問題画像の具体例】

2020年1月30日現在、中国工程院は調査中で、調査結果を公表していない。

2004~2019年(16年間)のチャオの63報の論文に画像の異常があるとパブピアで指摘されている。63報の画像の異常を全部示す意味はないので、最古の「2004年のJ Biol Chem」論文と、比較的新しい「2018年のCell Mol Immunol」論文の問題画像を見ていこう。

★「2004年のJ Biol Chem」論文

「2004年のJ Biol Chem」論文の書誌情報を以下に示す。2020年1月30日現在、撤回されていない。

  • Yang L, Li N, Wang C, Yu Y, Yuan L, Zhang M, Cao X
    Cyclin L2, a novel RNA polymerase II-associated cyclin, is involved in pre-mRNA splicing and induces apoptosis of human hepatocellular carcinoma cells.
    J Biol Chem. 2004 Mar 19;279(12):11639-48. doi: 10.1074/jbc.M312895200. Epub 2003 Dec 17. PMID: 14684736.

2019年11月16日、エリザベス・ビック(Elisabeth Bik)は、図2Cのβアクチン(β-actin)の画像が同じ研究室の「2003年のBBRC」論文の図5のβアクチン(β-actin)の画像と酷似していると指摘した「#1 Elisabeth M Bik (commented November 16th, 2019 5:37 PM and accepted November 16th, 2019 5:37 PM)」。

以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/2DA67F4FE904F63A1EE6F0550077B6#1

上記の問題画像の拡大を以下に示す(出典:同上)。

エリザベス・ビック(Elisabeth Bik)は、図6Cの2つの画像(フローサイトメトリー)も酷似していると指摘した。
以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/2DA67F4FE904F63A1EE6F0550077B6#2

★「2018年のCell Mol Immunol」論文

「2018年のCell Mol Immunol」論文の書誌情報を以下に示す。2019年11月27日、指摘点が訂正された。2020年1月30日現在、撤回されていない。

  • Liu X, Su X, Xu S, Wang H, Han D, Li J, Huang M, Cao X
    MicroRNA in vivo precipitation identifies miR-151-3p as a computational unpredictable miRNA to target Stat3 and inhibits innate IL-6 production.
    Cell Mol Immunol. 2018 Feb;15(2):99-110. doi: 10.1038/cmi.2017.82. Epub 2017 Sep 11.
    Erratum in: Cell Mol Immunol. 2019 Nov 27;:. PMID: 28890541; PMCID: PMC5811685..

2019年11月13日、エリザベス・ビック(Elisabeth Bik)は、図5の画像が相互に酷似していると指摘した「#1 Elisabeth M Bik (commented November 13th, 2019 2:33 PM and accepted November 13th, 2019 2:33 PM)」。

以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/C38007F0D9BE81295CC03584CF6D47#1

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2020年1月30日現在、パブメド(PubMed)で、シエタオ・チャオ(Xuetao Cao)の論文を「Xuetao Cao」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2020年の19年間の 378論文がヒットした。

2020年1月30日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、本記事で問題にしていない「2018年のJBC」論文・1論文が撤回されていた。

★撤回論文データベース

2020年1月30日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回論文データベースでシエタオ・チャオ(Xuetao Cao)を「Xuetao Cao」で検索すると、本記事で問題にしていない「2018年のJBC」論文・1論文がヒットし、1論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2020年1月30日現在、「パブピア(PubPeer)」では、シエタオ・チャオ(Xuetao Cao)の論文のコメントを「Xuetao Cao」で検索すると、2004~2019年の16年間の64論文に、「”Xuetao Cao”」で63論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》途中 

シエタオ・チャオ、曹雪涛(Xuetao Cao、写真出典)の事件は、2019年ネカト世界ランキングの「4」の「第3位」に挙げられたので記事にした。

発覚は、3か月前の2019年11月13日で、2020年1月30日現在、中国工程院の調査は終わっていない。事が決着すれば【追記】する。

《2》間違い?

64報の論文に問題画像が指摘されているが、撤回論文は1報だけである。他のいくつかの論文は訂正で済ませている。

人は間違える。白楽も間違える。しかし、論文である。査読もされている。64論文となると、「スミマセン、間違えました」で済む話ではないだろう。仏の顔も3度までじゃないのか?

《3》中国

世界のネカト事件を調べていると、インドと中国にネカト者が極端に多い。研究者人口に比例して多いわけではない(多分)。密度が高いと思う。

両国とも早急にかつ強力に何とかすべきだ。

《4》非難しない 

ネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)は8か月前の2019年5月に、論文の画像の異常を指摘するサイト「Science Integrity Digest 」を立ち上げた。ビックはそれ以前から、論文の画像の異常を指摘していた。

今回のチャオ事件でもそうだが、ビックは「私はネカト者を非難しません(I am not accusing anyone of misconduct)。これらの画像重複の多くは単なる間違いである可能性があることに留意してください(Please keep in mind that many of these duplications might just be honest errors.)」と、わざわざ、記載している。つまり、画像の異常を指摘するが、その「行為者を非難しない」と、いつも明言している。

白楽は、この明言に、違和感を抱く。

ネカト者を非難すると、名誉棄損で訴えられるのを恐れているのだろ。しかし、ネカトの結果を指摘するだけではネカト防止にならない。結果には原因がある。ネカト行為の原因を解明し、それを取り除かなければネカトは根治しない。ネカト要因を排除する姿勢が必要だと思うが、ビックは、そのような姿勢を示さない。

ビックは、画像の異常を検知する能力に優れているので、人それぞれ、マー、優れた能力を生かせばよいと思うが、物足りない、と白楽は思う。

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、日本に飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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●9.【主要情報源】

① ウィキペディア英語版:Xuetao Cao – Wikipedia
② 百度百科:曹雪涛_百度百科
③ 2019年11月22日のデニス・ノーマイル(Dennis Normile)記者の「Science」記事:Top Chinese researcher faces questions about image manipulation | Science | AAAS Nov. 22, 2019
④ 2019年11月27日のアンドリュー・シルバー(Andrew Silver)記者の「Nature」記事:Chinese ministry investigates duplications in papers by university president
⑤ 2019年11月18日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:The Teachings of Chairman Cao – For Better Science
⑥ 2020年1月12日のフタオ・ファン(Futao Huang)記者の「Times Higher Education」記事:How to tackle academic misconduct among China’s top scientists | Times Higher Education (THE)
⑦ 2019年12月31日のクリストファー・ワンジェク(Christopher Wanjek)記者の「Live Science」記事:Take That Back: The Top Scientific Retractions of 2019 | Live Science
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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