2017年1月30日掲載。
ワンポイント:盗博サイトのヴロニプラーク・ウィキの3番目(女性)。ハイデルベルク大学で哲学の博士号を 2001 年(30歳)に取得し、33歳で欧州議会議員に当選した。美人で賢く将来を嘱望され、欧州議会・副議長までなったが、2011 年(40歳)に盗博がバレ、2011 年(40歳)に博士号がはく奪された。欧州議会議員を辞職した。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.盗用解析
7.白楽の感想
8.主要情報源
9.コメント
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●1.【概略】
シルヴァーナ・コッホ=メーリン(Silvana Koch-Mehrin、写真出典)はドイツ人の欧州議会議員で、2001 年(30歳)にハイデルベルク大学(Ruprecht-Karls-Universität Heidelberg)で哲学の博士号を取得した。
2011年4月10日(40歳)、ヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)が盗博を告発した。
→ 1‐4‐10.ヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)
2011 年6月15日(40歳)、ハイデルベルク大学は2001 年にコッホ=メーリンに授与した博士号をはく奪した。この時、コッホ=メーリンはドイツの欧州議会議員だった。
シルヴァーナ・コッホ=メーリンは「ヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)」で3番目に告発された盗博事件である。
ハイデルベルク大学(Ruprecht-Karls-Universität Heidelberg)。写真出典
- 不正:盗博(盗用博士論文)
- 国:ドイツ
- 成長国:ドイツ
- 研究博士号(PhD)取得年月日:2001年(30歳)
- 研究博士号(PhD)取得大学:ハイデルベルク大学
- 分野:哲学
- 博士論文タイトル: Historische Währungsunion zwischen Wirtschaft und Politik(ビジネスと政治の間の歴史的通貨統合 )
- 博士論文指導教授:Prof. Dr. Volker Sellin, Prof. Dr. Clemens Zimmermann.
- 公開: Baden-Baden 2001. → Nachweis Deutsche Nationalbibliothek → ISBN 3-7890-7631-7.
- 裁判:敗訴。2013年3月28日(42歳)Entscheidungsgründe der erfolglosen Klage gegen die Aberkennung: Pressemitteilung VG Karlsruhe vom 28. März 2013
- 盗博発覚年月日:2011年4月10日(40歳)
- 盗用ページ率:34.3%
- 研究博士号(PhD)はく奪状況:2011 年6月15日(40歳)、はく奪
- 男女:女性
- 生年月日:1970年11月17日
- 現在の年齢:53 歳
- 発覚時地位:欧州議会議員で欧州議会の副議長
- ステップ1(発覚):第一次追及者はヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)の人(詳細不明)
- ステップ2(メディア):
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①ハイデルベルク大学・調査委員会
- 結末:博士号はく奪、欧州議会議員・辞職
- 1970年11月17日:ドイツのヴッパータール(Wuppertal)に生まれる
- xxxx年(xx歳):xx大学で学士号取得
- 1997 ‐ 2004年(26 ‐ 33歳):ブリュッセルで欧州経済戦略コンサルティング会社を起業し経営
- 2001年(30歳):ハイデルベルク大学で哲学・博士号取得
- xxxx年(xx歳):ドイツのテレビのトークショー司会者
- 2004年7月20日 (33歳):欧州議会議員
- 2009年(38歳):ヨーロッパ自由民主同盟の第一副議長
- 2009年7月14日(38歳):欧州議会の副議長
- 2011年4月10日(40歳):盗博が発覚
- 2011年5月10日(40歳):欧州議会の副議長・辞任
- 2011年6月15日(40歳):ハイデルベルク大学が博士号はく奪
- 2013年(42歳):「議会の女性・国際フォーラム(Women in Parliaments Global Forum:WIP)」 を創設し会長に就任
- 2014年6月30日 (43歳):欧州議会議員・辞職
●3.【動画】
【動画1】
盗博事件のニュース「Plagiatsaffäre: Koch-Mehrin gibt auf」(ドイツ語)0分50秒
euronews (deutsch)が2011/05/12 にアップロード
高橋容子の以下の2つの解説がとてもわかりやすい。少し長いけど、引用する。
★2011年6月xx日(推定):高橋容子「ジルヴァーナ・コッホ=メーリン 」
出典 →ジルヴァーナ・コッホ=メーリン – ドイツ生活情報満載!ドイツニュースダイジェスト(保存版)
「若く、美しく、賢い女性政治家」を売りに欧州議会のスター議員になっていたが、前国防相の博士論文盗用事件をきっかけに開発された盗用チェックソフトによって、自著の博士論文(2000年)にも盗用疑惑が発覚。5月11日に自由民主党(FDP)の欧州議員団代表と欧州自由民主連合(ALDE)の副団長ポストを辞任して、騒ぎをかわしたはずだった。
しかし6月15日、ハイデルベルク大学から博士号をはく奪され、さらにタイミング悪く、22日に欧州産業・研究・エネルギー委員会の後任議長に就く予定であることが発表されたために、科学界が「論文を盗用した人物に科学を委ねるのか」と猛反発。ついに26日、別の専門委員会へ移る方針を発表したことで、スキャンダルの収束を図っている。
国民経済学と歴史を修め、1997年からEU の拠点ブリュッセルで欧州経済戦略コンサルティングを起業、2004年に党のトップ候補として欧州議会入りするまで経営を続けてきた。それまで10年間、EU の立法府に入れなかったFDP にとって、自由と資本主義を実践し、事実婚で娘3人を持つこのスーパーウーマンは救いの女神そのものだった。
しかし、順風満帆なキャリアには過信が付き物。09年にメディアから議会を休み過ぎると指摘され、今回の盗用疑惑でも「大学は内容的な弱点を承知で博士号を付与してくれたのです」と発言したことで大学の逆鱗に触れてしまった。
★2011年6月15日:高橋容子「ハイデルベルグ大学は、Koch-Mehrinの盗作を有罪と判断! 」
出典 →ハイデルベルグ大学は、Koch-Mehrinの盗作を有罪と判断! | 2011-06-15 | Time-AZ(保存版)
出典 → Chuck Penfold (dpa, AFP)記者の「DW.COM」記事:University of Heidelberg finds Koch-Mehrin guilty of plagiarism | Germany | DW.COM | 15.06.2011
ドイツのDeutsche Welleは、ハイデルベルグ大学(University of Heidelberg)が元FDP(Freie Demokratische Partei/ドイツ自由民主党)の政治家シルヴァーナ・コッホ-マーリン(Silvana Koch-Mehrin)の哲学科博士論文の盗作が有罪であると判断し、博士号を剥奪したと報告した。
ハイデルベルグ大学は、盗作の主張を調査している博士号委員会が、論文が彼女自身のものでなかったことを示すための脚注が全くないように、彼女の論文が他のソースから抜粋されたかなりの部分を含むことがわかったと言った。
論文で、脚注が抜けると言うことは、命取りである。
約2ヶ月間かかった調査で委員会は、120以上が19世紀ラテン通貨同盟のコッホ-マーリンの博士論文の80ページ以上で盗作したことが判った。
彼らは30人のさまざまなリソースから来ていた。しかし、その2/3は特定されなかった。
ハイデルベルグ大学哲学科と言えば、カント、ハイデッカーなど、そうそうたる教授陣がいた名門である。
ハイデルベルグの州検察官は、彼らが「ケースを観測していて」、盗作の罪名が調査を保証できたと言った。
先月まで、40歳のシルヴァーナ・コッホ-マーリンは、ドイツ自由民主党でもっとも著名な政治家の一人であった。
しかし、先月の新聞記事で公表され、盗作の主張の後に、彼女はヨーロッパの欧州議会の副プレジデントとドイツFDP代表を辞職した。
●5.【不正発覚の経緯と内容】
高橋容子の上記の2つの解説以上に書くことは難しい。それで、以下は、パラパラ文章です。
シルヴァーナ・コッホ=メーリン(Silvana Koch-Mehrin)は、 2001 年(30歳)にハイデルベルク大学で哲学の博士号を取得した。
2011年4月10日(40歳)、ヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)が盗博を告発した。
2011 年6月15日(40歳)、ハイデルベルク大学がコッホ=メーリンに授与した博士号をはく奪した。
●6.【盗用解析】
シルヴァーナ・コッホ=メーリン(Silvana Koch-Mehrin)の博士論文のタイトルは 「Energieversorgungssicherheit im Recht der Europäischen Union(欧州連合のエネルギー供給の安全保障法)」である。
博士論文の盗用分析図は以下の5色のバーコードである。博士論文は227ページ、本文201ページで、盗用ページ率は34.33%だった。
★イラスト表示
以下はページ毎に色分けしたイラスト表示である。
盗用の色分けは、灰色= 逐語盗用(コピペ、文献提示なし)、赤色 = 加工盗用(ロゲッティング、文献提示なし)、黄色 =流用部分が曖昧な盗用(文献提示あり)、 青色 = 翻訳盗用、である。
★各ページの盗用分析
シルヴァーナ・コッホ=メーリン(Silvana Koch-Mehrin)の博士論文の各ページ毎に盗用分析がされている。盗用があるページは青色で、盗用がないページは赤色である。青色をクリックすると、各ページが開く。
【26ページ目】
1例として、26ページ目(つまり、026)をクリックすると、盗用比較図が出てくる。以下はその1部分を示した。
左側がプロフロックの博士論文で右が被盗用論文である。着色部分の文章が同一である。
●7.【白楽の感想】
《1》若くて優秀な政治家が盗博で失脚
今まで、ヴロニプラーク・ウィキで指摘された盗博者を数人記事にした。
先に記事にしたカール=テオドール・グッテンベルクは若くて優秀な政治家(男性)で、将来はドイツ首相と言われていた。
→ 盗博VP:カール=テオドール・グッテンベルク(Karl-Theodor Guttenberg)(ドイツ)
今回のシルヴァーナ・コッホ=メーリン(Silvana Koch-Mehrin)は、女性だが、グッテンベルクと同じように、若くて優秀な政治家という評判だった。しかし、盗博が発覚し政界を去った。
シルヴァーナ・コッホ=メーリンは33歳で欧州議会議員に当選、38歳で欧州議会・副議長に就任した。ということは、将来は欧州議会・議長は確実であり、それ以上の活躍をすると期待されていた。
若くて優秀な政治家が、政治ではなく、盗博で、失脚した。ドイツ政界・欧州政界に痛手だろう。しかし、不正を働いた者は国の要職をになえない、と国民は強く主張し、グッテンベルクもコッホ=メーリンも了承した。
ひるがえって、日本はどうだろう? 不正を働いた要人を国民・メディアがしっかり非難しない、任命者が解雇しない、本人は辞職しない。社会のありようが歪んでいる気がするのは白楽の迷いごとだろうか?
出典:https://www.dw.com/en/plagiarizing-politician-koch-mehrin-outrages-scientific-community/a-15189978
●8.【主要情報源】
① ヴロニプラーク・ウィキ(VroniPlag Wiki)のシルヴァーナ・コッホ=メーリン(Silvana Koch-Mehrin)サイト:Skm | VroniPlag Wiki | Fandom powered by Wikia
② ウィキペディア・英語版:Silvana Koch-Mehrin – Wikipedia
③ 欧州議会議員記録:Silvana KOCH-MEHRIN | History of parliamentary service | MEPs | European Parliament(保存版)
④ 2011年5月12日のニコール・ゴーベル(Nicole Goebel)記者の「DW.COM」記事:Second German politician resigns over plagiarism allegations | Germany | DW.COM | 12.05.2011(保存版)
⑤ 2011年4月14日の「BBC News」記事:German politics rocked by new plagiarism probe – BBC News(保存版)
⑥ シルヴァーナ・コッホ=メーリン(Silvana Koch-Mehrin)のサイト:Silvana Koch-Mehrin(保存版)
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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