ロナルド・プラスターク(Ronald Plasterk)(オランダ)

2021年2月15日掲載 

ワンポイント:この事件は、2020年ネカト世界ランキングの「4E」の「2」に挙げられたので記事にした。プラスタークは学術界から政界に身を転じ、2007年から10年間、オランダ政府の大臣(教育・文化・科学大臣など)を務めた重要人物である。2015年4月(56歳)、ネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)がプラスタークの「2007年1月のScience」論文の画像に不正があると「Science」編集部に伝えた。5年間、「Science」編集部は無対応だったので、2020年3月11日(62歳)、ビックはツイッターで問題を公表した。ネカトウオッチャーの多くが反応し、2020年11月20日(63歳)、論文は撤回された。ネカト者は特定されていないが、プラスタークが論文の責任著者でかつ重要人物なのでプラスタークを主役に記事にした。研究所のネカト調査は十分ではなく、誰も処分されていない。大臣になった人のネカト事件なので、科学界への信用が落ちた。国民の損害額(推定)は20億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
4.日本語の解説
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

ロナルド・プラスターク(ロナルド・プラステルク、Ronald Plasterk、Ronald H A Plasterk、ORCID iD:?、写真出典)は、オランダのヒューブレヒト研究所(Hubrecht Institute)・所長で、オランダの最高の科学者の1人である。専門は分子遺伝学だが、2007年から10年間、オランダ政府の大臣(教育・文化・科学大臣など)を務めた。

2015年4月(58歳)、ネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)がプラスタークの「2007年1月のScience」論文にデータねつ造を見つけ、「Science」編集部に伝えた。この論文は、プラスタークがヒューブレヒト研究所(Hubrecht Institute)・所長として出版した論文だったが、ネカトが発覚した時、プラスタークはオランダ政府の大臣だった。

「Science」編集部はその後5年間、何も対処しなかった。

2020年3月11日(62歳)、「Science」編集部が5年間も対応しなかったので、ビックはツイッターで問題を公表した。

ネカトウオッチャーの多くが反応し、2020年11月20日(63歳)、論文は撤回された。

論文の著者は4人で、ヒューブレヒト研究所はネカト調査をしているらしいが、まともな調査ではなさそうである。調査結果は発表されていない。

ネカト者は特定されていない。誰も処分されていない。

プラスタークが責任著者で、プラスタークが群を抜いて重要人物である。それで、本記事ではプラスタークを中心に話を進める。

2020年11月23日(63歳)、ビックは自分のブログ「Science Integrity Digest」にこの事件の状況を詳細に記述した。

この事件は、2020年ネカト世界ランキングの「4E」の「2」に挙げられた。

ヒューブレヒト研究所(Hubrecht Institute)。写真出典

  • 国:オランダ
  • 成長国:オランダ
  • 医師免許(MD)取得:
  • 研究博士号(PhD)取得:ライデン大学
  • 男女:男性
  • 生年月日:1957年4月12日
  • 現在の年齢:64歳
  • 分野:分子遺伝学
  • 最初の不正論文発表:2004年(46歳)
  • 不正論文発表:2007年(49歳)
  • 発覚年:2015年(58歳)
  • 発覚時地位:オランダ政府の大臣
  • ステップ1(発覚):第一次追及者はネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)で、2015年に該当学術誌に通報したが、対応が悪く、5年後の2020年、彼女の「Science Integrity Digest」に記事をアップ
  • ステップ2(メディア):レオニッド・シュナイダー、「パブピア(PubPeer)」、「撤回監視(Retraction Watch)」、「Science Integrity Digest」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①学術誌・編集部。②ヒューブレヒト研究所・調査委員会は調査しているらしい(?)
  • 研究所・調査報告書のウェブ上での公表:なし
  • 研究所の透明性:調査中(ー)
  • 不正:ねつ造
  • 不正論文数:6報
  • 時期:研究キャリアの初期から
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
  • 処分:なし
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は20億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

  • 1957年4月12日:オランダで生まれる
  • 1979年(22歳):オランダのライデン大学(Leiden University)で生物学、アムステルダム大学(University of Amsterdam)で経済学の学士号取得
  • 1981年(24歳):オランダのライデン大学(Leiden University)で修士号取得:生物学
  • 1982年10月11日-1984年9月1日(25-27歳):オランダのライデン市・市会議員
  • 1984年(27歳):オランダのライデン大学(Leiden University)で研究博士号(PhD)を取得:分子遺伝学
  • 1985年-1986年(28-29歳):米国のカリフォルニア工科大学(California Institute of Technology)・ポスドク
  • 1986年-1987年(29-30歳):英国のMRC分子生物学研究所(MRC Laboratory of Molecular Biology)・ポスドク
  • 1987年(30歳):オランダ癌研究所(Netherlands Cancer Institute)・室長。後に部長
  • 1997年(40歳):アムステルダム大学(University of Amsterdam)・教授
  • 2000年2月(42歳):オランダのヒューブレヒト研究所(Hubrecht Institute)・所長
  • 2007年1月(49歳):後で問題視される「2007年1月のScience」論文を出版
  • 2007年2月22日-2017年10月26日(49-60歳):オランダ政府の大臣(教育・文化・科学大臣など)
  • 2015年4月(58歳):エリザベス・ビック(Elisabeth Bik)が「2007年1月のScience」論文にネカト発見・通報
  • 2020年11月(63歳):エリザベス・ビック(Elisabeth Bik)が「2007年1月のScience」論文のネカトをブログで公表

●3.【動画】

以下は事件の動画ではない。

【動画1】
「Plasterk」を「プラスターク」と紹介。
ニュース動画:「https://www.youtube.com/watch?v=NOgNbu_RocQ- YouTube」(オランダ語)4分16秒。
Omroep PowNedが2014/02/10に公開

【動画2】
「Ronald Plasterk」を「ロブ・ブラタレイ」と紹介(6分44秒時点)。
インタビュー動画:「Connected Citizens Summit — Interview with Ronald Plasterk and Rob Wainwright – YouTube」(英語)39分23秒。
POLITICO Europeが2018/11/19に公開

●4.【日本語の解説】

以下は事件の解説ではない。

★2006年11月xx日:Nature Digest news@nature.com:アリソン・アボット(Alison Abbott)著(訳者不記載):「RNA干渉の若手研究者がつかんだノーベル医学生理学賞」

出典 → ココ、(保存版) 

以前ファイヤーと一緒に研究したことがあるユトレヒト大学の Ronald Plasterk は、彼がそのうちノーベル賞を受賞することは確信していたものの、これほど早くだとは思っていなかったと語る。今年の発表の朝、Plasterk は冗談のつもりで、研究室のポスドクにファイヤーに電話してみろよ、なんて話をしていたという。「ところが彼が本当に受賞したことがわかったので、ジョークは立ち消えになってしまった」。

★2009年10月23日:理化学研究所:著者不記載:「SNPを用いた科学捜査の研究が初の国際協力でスタート」

出典 → ココ、(保存版) 

調印式は、2009年10月26日14時20分より、東京大学医科学研究所 1号館2階 会議室で開催し、オランダのロナルド・プラステルク(Ronald Plasterk)教育文化科学大臣、倉持隆雄文部科学省大臣官房審議官(研究振興局担当)、中村祐輔ゲノム医科学研究センター長らが出席します。

★2017年2月2日:AFPBB News:著者不記載:「オランダ総選挙、開票は手作業に サイバー攻撃を懸念」

出典 → ココ、(保存版) 

【2月2日 AFP】オランダ当局は、来月行われる総選挙でサイバー攻撃を阻止するため、「脆弱(ぜいじゃく)な」ソフトウエアの使用をやめ、すべての票を手作業で集計する。ロナルド・プラステルク(Ronald Plasterk)内相が1日、発表した。

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★オランダ最高の科学者の1人

ロナルド・プラスターク(Ronald Plasterk)は学部時代にオランダのライデン大学(Leiden University)で生物学の学士号を取得し、アムステルダム大学(University of Amsterdam)で経済学の学士号を取得という、学者としては珍しく科学と経済という2つの異なる領域を学んだ。

また、大学院博士課程の時(25-27歳)、2年間、オランダのライデン市・市会議員も務めている。若い時から政治の世界に興味を持ち、実際に活動していたのだ。

学問としては、修士・博士で生物学(分子遺伝学)を選択し、米国や英国の名門でポスドクを行なうなど、分子遺伝学の研究者として順調なコースを進んだ。

2000年2月(42歳)、オランダの著名な研究所であるヒューブレヒト研究所(Hubrecht Institute)・所長に就任し、2007年1月(49歳)、後で問題視される「2007年1月のScience」論文を出版した。

その直後、学術界から政界に身を転じ、2007年2月22日-2017年10月26日(49-60歳)の10年間、オランダ政府の大臣(教育・文化・科学大臣など)を務めた。

ロナルド・プラスターク(Ronald Plasterk), https://berniemag.nl/ronald-plasterk-loopbaan-zorg/

★発覚

2015年4月(58歳)、ネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik、写真出典)がロナルド・プラスターク(Ronald Plasterk)の「2007年1月のScience」論文にデータねつ造を見つけ、「Science」編集部に伝えた。同時にプラスタークにも伝えた(らしい)。

その時、プラスタークはオランダ政府の大臣(教育・文化・科学大臣など)だった。プラスタークは2007年に学術界から政界に身を転じ、以後、2017年までの10年間、オランダ政府の大臣(教育・文化・科学大臣など)を歴任していた。

「2007年1月のScience」論文の書誌情報を以下に示す。所属はオランダのヒューブレヒト研究所(Hubrecht Institute)である。

不思議なことに、「Science」編集部は何も対応しなかった。

2015年10月(58歳)、それで、エリザベス・ビックは問題点を「Peer 1(仮名)」でパブピアに投稿した。

呆れるが、この時もその後もしかし、「Science」編集部は何も対応しなかった。

2017年9月(60歳)、最初の通報から2年5か月後、エリザベス・ビックは「Science」編集長に連絡したが、結局、「Science」編集長は何も対応しなかった。

最初の通報から5年間が経過した。

「Science」編集部は何も対応しなかった。

2020年3月11日(62歳)、それで、エリザベス・ビックはツイッターで問題を指摘した。以下の下部の部分が本記事の「2007年1月のScience」論文関連の話である。

2020年3月20日(62歳)、ツイッターの9日後、ヒューブレヒト研究所(Hubrecht Institute)はネカト調査をするとツイートした。

プラスタークは、ヒューブレヒト研究所から「2007年1月のScience」論文にデータねつ造疑惑があると知らされた。

プラスタークは、自分で論文の図をみて、明かに問題があると思った。それで、他の共著者に連絡した。

プラスタークは、「撤回監視(Retraction Watch)」に次のように語った。

第一著者(2人いる)のティティア・セイエン(Titia Sijen)は、オートラジオグラムの元データを探しにヒューブレヒト研究所に行きましたが、元データを見つけられませんでした。そのことを「Science」編集者に知らせました。自分たちの研究室でも他の研究室でも論文の結論は再現できていますが、掲載した図は間違っているので、論文を撤回することにしました。

2020年11月20日、論文出版から13年後、ビックが最初に指摘してから5年7か月後、「2007年1月のScience」論文はようやく撤回された。 → 2020年11月20日撤回公告:Retraction | Science

撤回理由は、図2D、補足図S1C、補足図S3Cの重複である。著者は全員、実験を行なったヒューブレヒト研究所(Hubrecht Institute)を去っていて、元データを見つけようとしたが、見つけられなかった。すべてのデータは整合性があるが、図2D、補足図S1C、補足図S3Cを削除すると論文の結論が弱くなる。それで、論文を撤回します。

2020年11月23日、ビックは自分のブログ「Science Integrity Digest」にプラスターク事件の詳細を明らかにしている。 → 2020年11月23日のエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)の「Science Integrity Digest」記事:Science paper from Dutch top-institute retracted – Science Integrity Digest

そして、「撤回監視(Retraction Watch)」に「Science」誌の無能ぶりを次のように批判している。

私の知る限り、「Science」誌は、私が指摘したねつ造疑惑について私に問い合わせてきたことはありません。「Science」誌は、私が2015年に疑惑を通報した時、何も対処しなかったと思います。プラスタークは2020年に初めてネカト疑惑について知ったと述べているので、「Science」誌は2015年にプラスタークにもヒューブレヒト研究所にも連絡しなかったようです。この「Science」誌の対応は出版規範委員会(COPE)のガイドラインを完全に逸脱しています。

2020年11月19日、私は突然、「2007年1月のScience」論文が撤回されることを知りました。しかし、私はこの事実を「Science」誌からも、著者からも、ヒューブレヒト研究所からも知らされたわけではありません。撤回の当日、11月19日の「撤回監視(Retraction Watch)」の記事を執筆したアダム・マーカス(Adam Marcus)記者から知らされたのです。

「Science」誌もヒューブレヒト研究所も、私に知らせなかったのは異常ですし、また、出版規範委員会(COPE)のガイドラインを逸脱しています。 また、「Science」誌が行動を起こすのに非常に時間がかかりました。私が公式に通知してから5年もかかったのです。私がそのことをツイッターで公表した後で初めて行動を起こしたことも、とても残念です。

★ネカト犯は誰?

「2007年1月のScience」論文の著者は4人いる。「Titia Sijen, Florian A. Steiner, Karen L. Thijssen, Ronald H. A. Plasterk」である

公式なネカト調査がされていないので、ネカト犯の氏名は発表されていない。

ネカトの法則:「強い衝撃がなければ、研究者はネカトを止めない」

ネカトの指摘は2015年なので、2015年まで、ネカトをし続けていたハズだ。

白楽が、パブピア(PubPeer)でのコメント数を調べた。

2人いる第一著者の1人、ティティア・セイエン(Titia Sijen、写真出典) は、現在、アムステルダム大学・教授に就いている。彼女の2007-2009年の3論文にコメントがあった。プラスタークが共著者に入っていないのは2009年の1報だけだ。

2人いる第一著者のもう1人、 フロリアン・シュタイナー(Florian A. Steiner、写真出典) は、現在、スイスのジュネーヴ大学(University of Geneva)・助教授に就いている。彼の2006-2009年の4論文にコメントがあった。プラスタークが共著者に入っていないのは2009年の1報だけ。

第三著者のカレン・ティッセン(Karen L. Thijssen、写真出典)はテクニシャンで、現在、エラスムス大学医療センター(Erasmus MC)・テクニシャンに就いている。彼女に2007年の2論文にコメントがあった。2論文ともプラスタークが共著者に入ってる。

責任著者で最後著者のロナルド・プラスターク(Ronald H. A. Plasterk)は6論文にコメントがあった。。

パブピア(PubPeer)でのコメント数はプラスタークが一番多い。それに、プラスタークが共著者に入っていないのは2009年の1報だけである。ということは、プラスタークがネカト犯?

次項の【ねつ造の具体例】で述べるが、プラスタークの「2004年12月のNucleic Acids Res」論文にもねつ造・画像が指摘されている。その論文の著者は4人いるが、「2007年1月のScience」論文の著者と共通する著者はロナルド・プラスターク(Ronald Plasterk)だけである。

ということは、やはり、プラスタークがネカト犯?

【ねつ造の具体例】

★「2007年1月のScience」論文

「2007年1月のScience」論文の書誌情報を以下に示す。所属はオランダのヒューブレヒト研究所(Hubrecht Institute)である。13年後の2020年11月20日に撤回された。

エリザベス・ビック(Elisabeth Bik)の指摘を見ていこう。

以下の画像と内容の出典 → 2020年11月23日のエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)の「Science Integrity Digest」記事:Science paper from Dutch top-institute retracted – Science Integrity Digest

図2Dのオレンジ色枠のRNAバンドは同じなのに、そのレーンの上部が異なる。バンドを加工したねつ造データである。

また、ビックは、以下の図S1Cの青色枠で囲ったバンドが同じバンド(つまり、ねつ造データ)だと指摘した。

さらに、ビックは、以下の図S3Cの同色枠で囲ったバンドが同じバンド(つまり、ねつ造データ)だと指摘した。

他の論文からの画像の流用も指摘している。 → 出典:2020年7月7日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:Science misconduct – For Better Science

★「2004年12月のNucleic Acids Res」論文

「2004年12月のNucleic Acids Res」論文の書誌情報を以下に示す。所属はオランダのヒューブレヒト研究所(Hubrecht Institute)である。12年後の2016年7月8日に懸念表明(Expression of concern)が付いた。2021年2月14日現在、撤回されていない。

なお、本記事で扱ってきた「2007年1月のScience」論文の著者と共通する著者はロナルド・プラスターク(Ronald Plasterk)だけである。

2016年2月17日、#4 Peer 2が図3bと図4bでの画像の重複使用を指摘した(commented February 17th, 2016 6:41 AM and accepted February 17th, 2016 6:41 AM)。同色枠で囲った画像が同じ画像(つまり、ねつ造データ)である。

以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/4A87A7D2EF4890219C8B3FE359D253#4

同じ日、Peer 2は、また、図5Bの画像の重複使用を指摘した。同色枠で囲った画像が同じ画像(つまり、ねつ造データ)である。以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/4A87A7D2EF4890219C8B3FE359D253#5

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2021年2月14日現在、パブメド(PubMed)で、ロナルド・プラスターク(Ronald Plasterk)の論文を「Ronald Plasterk [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、1997年の1報と2002~2020年の19年間の101報の計・102論文がヒットした。

「Plasterk RHA」で検索すると、1997年の1報と2002~2020年の19年間の95報の計・96論文がヒットした。

2021年2月14日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、本記事で問題にしている「2007年1月のScience」論文・1論文が撤回されていた。

★撤回監視データベース

2021年2月14日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでロナルド・プラスターク(Ronald Plasterk)を「Plasterk」で検索すると、0論文が訂正、0論文が懸念表明、本記事で問題にした「2007年1月のScience」論文・1論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2021年2月14日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ロナルド・プラスターク(Ronald Plasterk)の論文のコメントを「Ronald Plasterk」で検索すると、本記事で問題にした「2007年1月のScience」論文を含め6論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》隠蔽 

前から指摘しているが、ネカト調査を大学に任せるのは原理的にオカシイ。利益相反、ネカト調査素人の調査、捜査権なし、教授・大学にとって「余計な負担」などなど、最初からオカシイ設計である。その上、日本の場合、監督責任など連帯責任を負わせるから、研究室も大学も極力隠蔽する。

そして、同様な理由で、ネカト調査を学術誌・編集部に任せるのも原理的にオカシイ。

両者とも、自分たちの組織からの不正を隠蔽することで自分たちの組織を守ろうとする。

隠蔽の最初の手段がネカト通報の無視である。プラスターク事件でビックが「Science」誌の見事な隠蔽体質を指摘した。

今回は大学ではないが、同じように大学や研究所も頻繁にネカト通報を無視する。大学だと、数段ある各段階で隠蔽する。

通報を無視せず、通報に対応したとても、次の予備調査段階で隠蔽する。つまり、予備調査でシロと結論し、本調査をしない。予備調査委員は大学が選ぶので、ほぼ全員、大学側の御用委員である。

例え、予備調査段階でクロと結論し、本調査に入っても、本調査で隠蔽する。つまり、本調査段階でシロと結論し、・・・、書いてて、バカらしくなる。

本調査でクロになっても隠蔽する。つまり、調査結果を公表しない。

公表したとしても隠蔽する。つまり、ネカト者の所属や名前を隠蔽する。

さらには、所属や名前を記しても、人目につかないように発表する。学内の掲示板に1週間発表したと述べた国立大学もあった(学外者は知る由もなし)。

そして、ウェブ上に発表してもすぐに削除する。

要するに、いつでも、どこでも、可能な限り、隠蔽するのである。

それで、国民の膨大なお金が無駄に使われ、まっとうな研究者の就職・昇進が奪われ、国民の健康被害・文化被害が起こる。正義は駆逐される。

これに対抗するには、どうしたらよいか? 

1‐3‐2.研究ネカトは警察が捜査せよ! 」だと思う。ただ、そこに至るまで、年月がかかる。

現時点では、「1‐5‐1 ネカトハンターとネカトウオッチャー」の活躍に期待するしかないのでしょうか?

どなたか、エリザベス・ビック(Elisabeth Bik)みたいな、ネカトハンター活動しませんかね?

《2》信頼 

10年間、オランダ政府の大臣(教育・文化・科学大臣など)を務めたロナルド・プラスターク(Ronald Plasterk、写真出典)が、生命科学研究者として業績を上げていた頃、研究データのねつ造をしていた。ネカトの主犯かどうかは不明だが、結局、責任著者の論文が撤回された。

オランダ国民はこの事件をどう見ているのだろうか? 研究そのものと学者への尊敬の気持ちや信頼はかなり落ちただろう。

《3》ワクチン拒否 

「研究そのものと学者への尊敬の気持ち」に触れたので、日本人がワクチン接種を望まないことも書いておこう。

2021年02月12日の「時事ドットコムニュース」によると、新型コロナウイルスのワクチン接種を望まない日本人は23.7%ととても高い割合である。しかも15か国で比べるとこの数値が最も高い(2021年2月4日:コロナワクチン、世界で接種意欲が高まる 日仏は懐疑的=調査 | ロイター)  

背景について土田氏は、「自分は感染しない」という思い込みや、副反応への恐怖があると指摘。(2021年02月12日記事:ワクチン接種、希望しない人も 専門家「冷静判断を」―新型コロナ:時事ドットコム

イヤ、そうではないだろう。

日本国民は、悲しいことに、政府を信用できない。政府側の科学者を信用できない。最近辞めた首相もそうだが、政治家が平気でウソをつき、御用学者がのさばってきた。日本は長年、そういう状況だったからだ。

科学的な事でいえば、例えば、原子力発電所は安全だと、政府と政府側の科学者に長年、国民はダマされてきた。

でも、ワクチンなら自分が拒否すれば自分への害は防げる。政府と政府側の科学者がどれほど大声で「安全」と叫ぼうが、ワクチンを打たなければ、自分への害は防げる。

日 本 は な ぜ 「 ワ ク チ ン 後 進 国 」 と な っ た の か

1989年から開始されたMMR(麻しん・ムンプス・風しん混合)ワクチンでは、ムンプスワクチンの成分による無菌性髄膜炎が多発し国に対する訴訟等が相次いだ結果、わずか4年で中止されるという事態になった。この他にも、2005年に起きた日本脳炎ワクチン接種後の急性散在性脳脊髄炎(ADEM)発症や2011年のHibワクチンと小児用肺炎球菌ワクチン同時接種後の死亡事案、また最近では、2013年に子宮頸がんを予防するHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの接種勧奨差し控え等の事例があるが、いずれも、事あるごとにワクチンの負の面ばかりがセンセーショナルに報道され、国民の予防接種に対する不安が助長されたといえる。(2018年6月1日の福岡市医師会医療情報室。「特 集:日本特有のワクチン問題とは?」、保存版

「事あるごとにワクチンの負の面ばかりがセンセーショナルに報道」されたかもしれない。しかし、「ワクチンの正の面」はもっと報道されていたハズだ。

報道量ではなく、政府と政府側の科学者への信用度の問題だと、白楽は思う。

実際、日本はネカト天国と揶揄されているのに、依然として科学者のネカト行為への取り締まりが甘い。

性不正・アカハラも同じで、性不正・アカハラした教授を解雇しないので、その教授の講義を被害者が受講しなければならない状況がある。

おかしくないかい。

ネカト・性不正・アカハラ対処の、日本のこの状況をおかしいと思わない人・報道陣が多い日本の状況を、白楽は、とても「おかしい」と思う。

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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●9.【主要情報源】

① ウィキペディア英語版:Ronald Plasterk – Wikipedia
② 2020年7月7日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:Science misconduct – For Better Science
③ 2020年11月19日のアダム・マーカス(Adam Marcus)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Science retracts paper co-authored by high-profile scientist and former Dutch minister – Retraction Watch
④ 2020年11月23日のエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)の「Science Integrity Digest」記事:Science paper from Dutch top-institute retracted – Science Integrity Digest
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

●コメント

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