2022年1月1日掲載
ワンポイント:2021年に世界中(含・日本)で起こったネカト関連事件から、特に重要な事件を選んだ(選者が)。ネカトだけでなく、学術界・健康科学界の重要な事件も含まれている。
- 分野を記載していないのは生命科学。
- カタカナ名の赤字は本ブログで解説済み。
- いくつかの事件は近日中に本ブログの記事にする。
- 本記事は、更新日を示さずに上書きする。
★1.「The Scientist」誌の「2021年の論文撤回上位」:2021年12月21日
出典:The Top Retractions of 2021 | The Scientist Magazine®、保存版
著者は「撤回監視(Retraction Watch)」。
- ビクター・グレック(Victor Grech)(マルタ)
- ハリ・コール(Hari Koul)(米)
- ハラルド・ワラック(Harald Walach)(ポーランド)
- ジョナサン・プルイット(Jonathan Pruitt)(カナダ)
- 無罪:シリアック・フィリップス(Cyriac Philips)(インド)
- 社会学:ベドア・アルシェブリ(Bedoor AlShebli)(アラブ首長国連邦)
- ピエール・コリー(Pierre Kory)(米)
- クリスチャン・ドロステン(Christian Drosten)(ドイツ)
新型コロナ(COVID-19)のPCR検査の有効性について報告した2020年1月のドロステンの論文が読者から批判を受け、学術誌が精査した。精査後、撤回なしと判定した騒動で、ネカト・クログレイなし - アリ・サマハ(Ali Samaha)(レバノン)
- 複数の著者の多数のガラクタ論文:論文工場?(中国)
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★2.RealClearScience誌の「2021年の最大ガラクタ科学」:2021年12月15日
出典:The Biggest Junk Science of 2021 | RealClearScience 、保存版
ランクした人はロス・ポメロイ(Ross Pomeroy)。ポメロイは動物学者、生物保護学者でブログ「RealClearScience」のライター。学歴・職歴はよくわからない。
→ Ross Pomeroy | Author | RealClearScience
6件の最大ガラクタ科学。
責任研究者・組織、あるいはネカト性が曖昧なので、第2、3、5位はパス。
- 第1位:国研:アデュカヌマブ(Aducanumab)、食品医薬品局(Food and Drug Administration)(米)
アルツハイマー病の治療薬・アデュカヌマブの効能は不明確だが、2021年6月7日、米国の食品医薬品局は承認した。専門家は「最悪の承認」と批判。 - 第2位:有機農業の義務化(スリランカ)
スリランカは有機農業の義務化したことで、農業は混乱し、収穫量は平均19〜25%減少した。2021年9月5日記事:How Sri Lanka’s overnight flip to total organic farming has led to an economic disaster - 第3位:UFOレポート(米)
2021年6月25日、米国政府の国家情報長官は、議会に提出したUFO、つまりUAP(未確認飛行物体)に関するレポートを公表した。US intelligence report on UFOs: No aliens, but government transparency and desire for better data might bring science to the UFO world - 第4位:企業:スマートドット(SmartDot)、エナジー・ドッツ社(EnergyDots)(英)
スマートフォンなどから出るごく微弱な電磁放射線の害を防ぐ1枚数千円のステッカーである。その効能は科学的に証明されていない。 - 第5位:ホメオパシー(homeopathy)(カナダ)
トロントの薬剤師が子供のインフルエンザの治療にホメオパシー(ただの水と同等)を勧めている。薬剤師は無知すぎる。 2021年11月19日記事:Hidden camera reveals some pharmacists recommend homeopathic products to treat kids’ cold and flu - 第6位:マイム・ビアーリク(Mayim Bialik)(米)
ビアーリクは神経科学の研究博士号(PhD)を持つ女優。2020年(44歳)、脳サプリメントのニューリバ(Neuriva)の宣伝で、効能が臨床試験で証明されたと虚偽(ねつ造)情報を流していた。
★2A.RealClearScience誌の「2021年の最大ガラクタ科学:新型コロナ版」:2021年12月11日
出典:The Biggest Junk Science of 2021: COVID-19 Edition | RealClearScience 、保存版
同じ著者
6件の最大ガラクタ科学:新型コロナ版。
研究者レベルのネカトではないのでパスした。
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★3.サイメックス(Scimex):「オーストラリア科学メディアセンターが選んだ2021年の上位10大科学話」:2021年11月29日
出典:The AusSMC’s Top 10 Science Stories 2021、(保存版)。
オーストラリア科学メディアセンター(AusSMC)が選んだとあるが、選んだ人の名前は不記載。
昨年と異なり、今年は、全部、真面目な科学の話題で、ネカト・クログレイ絡みではない。7番目の話題が日本の話題なので、その話題だけを以下に示した。写真の出典は同じ。
日本で世界初の遺伝子編集トマトが販売
2021年9月15日、世界で最初の遺伝子編集食品を日本で販売開始した。 → ゲノム編集トマト青果物の販売開始のお知らせ
日本の新興企業(パイオニアエコサイエンス株式会社)が開発したゲノム編集トマトである。
トマトの種子の遺伝子を編集し、ガンマアミノ酪酸(GABA)を分解する酵素のレベルを下げ、通常のトマトよりも多くのGABAが含まれているトマトを作った。GABAがストレスを解消し睡眠を助けると宣伝している。 → 世界初!ゲノム編集技術によって生まれた「G A B A高蓄積トマト」がサナテックシード(株)から登場
日本では遺伝子組み換え食品は禁止されているが、このトマトには寛容である。遺伝子編集をしなくても、トマトでは自然にGABAレベルの変化が起こる可能性があるからだそうだ。
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★4.ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(London School of Economics):「2021年のレビュー:学術出版の文化」:2021年12月22日
出典:2021 In Review: The Culture of Academic Publishing、(保存版)。
著者はマイケル・テイスター(Michael Taster、写真出典同):2018年に英国のシェフィールド大学(University of Sheffield)で都市計画学の博士号を取得。2019年1月から「The London School of Economics and Political Science (LSE)」の「LSE Impact Blog」編集長(Managing Editor)。
研究上のネカト・クログレイではない。ランキングでもない。しかし、ネカト・クログレイに関係が深い学術出版文化である。その2021年の大きな11話題。
話題の1つを以下に示す。
- 自分の博士論文がアマゾンで販売されていたらどう思う?
自分の博士論文は博士号を取得した大学のリポジトリで公開されている。その論文がAmazonで営利目的で販売されていた。はてさて。
2021年7月8日記事:What happens when you find your open access PhD thesis for sale on Amazon? | Impact of Social Sciences
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★5.「より良い科学のために(For Better Science)」で2021年に読まれた上位10記事:2021年12月31日
出典:Top Ten – Most Read of 2021 – For Better Science、(保存版)
ランクした人は「より良い科学のために(For Better Science)」ブログ執筆者でネカトハンターのレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)(ドイツ)。フリーランス。細胞生物学者、ジャーナリスト。2007年に研究博士号(PhD):細胞生物学。写真出典。
「より良い科学のために(For Better Science)」ブログの上位10記事だが、該当する白楽の記事を示した。
- ロバート・マローン(Robert Malone)(米)
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の治療薬であるファモチジン(famotidine)が新型コロナの治療の有効だとか、食品医薬品局(FDA)はファイザー社のワクチンを承認していないなど、マローンは、新型コロナに関する間違った情報を拡散した。ネカトではなくクログレイ・ズサン事件のようだ。
→ 2021年10月4日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:How Dr Robert Malone invented Antivaxxery – For Better Science - 「レイプ」:デイヴィッド・サバティーニ(David Sabatini)(米) 2021年11月6日・・・レイプ事件ではなくネカト事件として
- パウロ・マッキャリーニ(Paolo Macchiarini)(スウェーデン) 2015年7月4日
- クラウディオ・ヘッツ(Claudio Hetz)(チリ) 2021年11月24日
- アラティ・ラメシュ(Arati Ramesh)、シラディティア・バンディオパダイ(Siladitya Bandyopadhyay)、サスミトナラヤン・チャウドハリー(Susmitnarayan Chaudhury)(インド) 2021年10月28日
- 5位の別の記事
- 「ズサン」:ディディエ・ラウル(Didier Raoult)(仏) 2021年1月10日
- 7位の別の記事
- クリスチャン・ペロン(Christian Perronne)(仏)
ヴェルサイユ・サン・カンタン大学(University of Versailles-St Quentin)・教授 → 2021年10月26日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:Christian Perronne and other Chronic Lymericks – For Better Science - 企業:学術業(academic business):フロンティアーズ社(Frontiers)(スイス) 2019年1月15日
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★6.Plagiarism Todayの「2022年に注視する5つの著作権物語」:2022年1月3日
出典:5 Copyright Stories to Watch in 2022、(保存版)
今年は、学術研究者の盗用事件を1人も取り上げていない。
ランクした人は、ジョナサン・ベイリー(Jonathan Bailey)。2002年に米国・サウスカロライナ大学(University of South Carolina)でジャーナリズムとマスコミの学士号を取得した。知的所有権のコンサルタント会社・コピーバイト(CopyByte)の経営者で「Plagiarism Today」サイトで記事を書いているー。(経歴と写真の出典)。経歴②
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★7.「科学と健康米国協議会(American Council on Science and Health)で公表した202x年の10最悪インチキ科学・インチキ健康話」:202x年12月31日
出典:Top 10 Junk Science And Bogus Health Claims ACSH Debunked In 202x、(保存版)
ここ数年、ベレゾウは「インチキ科学・インチキ健康話」ランキングを書いてきたが、2021年3月、健康米国協議会(American Council on Science and Health)を辞職したので、今後、このランキングは発表されない。
2021年3月16日のアレックス・ベレゾウ(Alex Berezow、写真出典)の「さらば健康米国協議会」記事:A Farewell to ACSH | American Council on Science and Health、保存版
ベレゾウは科学と政治の記者。2000-2004年、米国の南イリノイ大学カーボンデール校(Southern Illinois University, Carbondale)で学士号(微生物学)取得。2004-2010年、シアトルのワシントン大学(University of Washington)で微生物学の研究博士号(PhD)取得。現在、科学と健康米国協議会(American Council on Science and Health)の上級フェロー(2021年3月辞職)。「USA Today」「Wall Street Journal」「BBC」に記事を掲載。著書は2012年『Science Left Behind』、2017年『Little Black Book of Junk Science』(無料PDF版 → ココ)
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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、日本に飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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