ラフール・ジャヤント(Rahul Dev Jayant)(米)

2020年9月9日掲載 

ワンポイント:2020年8月11日(38歳?)、発覚から半年後(早い!)、研究公正局は、テキサス工科大学・医療科学センター(Texas Tech University Health Science Center)・助教授だったジャヤントの5件の研究費申請書に盗用・ねつ造・改ざんがあったと発表した。2020年7月27日(38歳?)から3年間の締め出し処分を科した。なお、ジャヤントはインドで育ち、インドで研究博士号(PhD)を取得し、フランスでのポスドクを経て、テキサス工科大学・医療科学センター・助教授になった。発表論文でのネカトはないので、撤回論文はない。国民の損害額(推定)は2億円(大雑把)。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
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●1.【概略】

ラフール・ジャヤント(Rahul Dev Jayant、ORCID iD:、写真出典)は、インドで育ち、インドで研究博士号(PhD)を取得し、フランスでのポスドクを経て、テキサス工科大学・医療科学センター(Texas Tech University Health Science Center)・助教授になった。専門は薬物乱用学である。

2020年8月11日(38歳?)、発覚から半年後(早い!)、研究公正局はジャヤントの5件の研究費申請書に盗用・ねつ造・改ざんがあったと発表した。2020年7月27日(38歳?)から3年間の締め出し処分を科した。

研究公正局は、5件の研究費申請書のネカトを指摘した。発表論文のネカトは指摘していない。研究費審査員がネカトを見つけたと思える。スゴイ優秀!

テキサス工科大学・医療科学センター(Texas Tech University Health Science Center)。写真出典

  • 国:米国
  • 成長国:インド
  • 医師免許(MD)取得:なし
  • 研究博士号(PhD)取得:インド工科大学ボンベイ校
  • 男女:男性
  • 年月日:不明。仮に1982年1月1日生まれとする。2000年に大学入学した時を18歳とした
  • 現在の年齢:39 歳?
  • 分野:薬物乱用学
  • 最初の不正研究費申請:2018年(36歳?)
  • 不正研究費申請:2018-2020年(36-38歳?)の2年間
  • 発覚年:2020年(38歳?)
  • 発覚時地位:テキサス工科大学・医療科学センター・助教授
  • ステップ1(発覚):第一次追及者は不明。多分、研究費審査委員
  • ステップ2(メディア):「撤回監視(Retraction Watch)」
  • ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):① 研究公正局
  • 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。大学は調査していない
  • 大学の透明性:研究公正局でクロ判定(〇)
  • ネカトの公表年:2020年(38歳?)、研究公正局
  • 不正:盗用・ねつ造・改ざん
  • 不正数:5件の研究費申請書
  • 時期:研究キャリアの初期
  • 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けられなかった(Ⅹ)
  • 処分:NIHから 3年間の締め出し処分
  • 日本人の弟子・友人:不明

【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は2億円(大雑把)。

●2.【経歴と経過】

主な出典:①:Rahul Dev Jayant | LinkedIn

  • 生年月日:不明。仮に1982年1月1日生まれとする。2000年に大学入学した時を18歳とした
  • 2000 – 2004年(18 – 22歳?):インドのデリー薬学研究大学(Delhi Pharmaceutical Sciences and Research University)で学士号
  • 2004 – 2006年(22 – 24歳?):インドの国立薬学教育研究大学(National Institute of Pharmaceutical Education and Research)で修士号
  • 2006 – 2011年(24 – 29歳?):インドのインド工科大学ボンベイ校(Indian Institute of Technology, Bombay)で研究博士号(PhD)を取得:生物医学工学
  • 2011年10月 – 2012年9月(29 – 30歳?):フランスのフランス国立科学研究センターのチャールズ・サドロン研究所(CNRS-Institut Charles Sadron)・ポスドク
  • 2013年8月 – 2018年8月(31 – 36歳?):米国のフロリダ国際大学(Florida International University)・ポスドク。その後、助教授
  • 2018年9月 – 2020年8月(36  – 38歳?):米国のテキサス工科大学医療科学センター(Texas Tech University Health Science Center)・助教授
  • 2020年2月(38歳?):不正研究が発覚(推定)
  • 2020年8月11日(38歳?):研究公正局がネカトと発表

●5.【不正発覚の経緯と内容】

★ネカト発覚

ラフール・ジャヤント(Rahul Dev Jayant、写真出典)はインドで育ち、インドで研究博士号(PhD)を取得し、フランスでのポスドクを経て、テキサス工科大学・医療科学センター・助教授になった。

ジャヤントのネカト発覚の経緯は不明であるが、研究公正局は5件の研究費申請書のネカトを指摘した。発表論文のネカトを指摘していない。

ということは、研究費審査員がネカトを見つけたと思える。スゴイ!

最新の研究費申請書は2020年2月13日に受理した申請書なので、この月日以降、見つけたということだろう。本記事では、発覚年月を2020年2月とした。

★研究公正局

2020年8月11日(38歳?)、研究公正局はジャヤントの5件の研究費申請書に盗用とねつ造・改ざんがあったと発表した。

2020年7月27日(38歳?)から3年間の締め出し処分を科した。3年間の締め出し処分は通常の処分である。

ジャヤントが受領した1件のネカト研究助成は「R03 DA044877」で、NIH・NIDA(国立薬物乱用研究所)のグラントである。以下3件に見えるが、同じグラントの2017年・2018年である:Grantome: Search

また、ジャヤントが申請した4件のネカト研究助成は以下の通りである。研究公正局の英語のママです。ゴメン。

  1. R21 DA051845-01, “DAT- CNS Organoid-Chip Model to Characterize the Effects of Buprenorphine on Fetal Neurodevelopment,” submitted to NIDA, NIH, on October 16, 2019
  2. R01 DA051894-01, “Novel 3D Printed CNS-Organoid Chip Model to Elucidate HAND,” submitted to NIDA, NIH, on November 12, 2019
  3. R21 DA052445-01, “3D Printed Microfluidic Chip Cerebral Organoids (3D-MCCO) to Decode Neurodevelopmental Deficits with Oxycodone Exposure,” submitted to NIDA, NIH, on February 10, 2020
  4. R21 AA028877-01, “3D Printed CNS-Organoid Chip Model to Identify Biomarkers for Prenatal Alcohol Exposure,” submitted to the National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism (NIAAA), NIH, on February 13, 2020

【盗用・ねつ造・改ざんの具体例】

研究公正局はジャヤントが5件の研究費申請書に意図的な盗用・ねつ造・改ざんがあったと発表した。しかし、発表論文でのネカトを指摘していない。

それで、盗用・ねつ造・改ざんの具体例は示しにくいが、概略だけでもと思い、以下に3件示す。

【盗用1】

他人の論文(Nat Protoc. 2014 Oct; 9(10):2329-40)の4つの画像を盗用し、研究費申請書に自分の研究成果のように記載した。ウ~ン、大胆ですね。これなら、研究費審査員は気がつくかもしれない。

【盗用2】

他人の論文(Nature Communications 2018 Oct 9; 9(1):4167)の1つの画像を盗用し、研究費申請書に自分の研究成果のように記載した。ウ~ン、上と同じですね。大胆です。

【ねつ造・改ざん1】

1つの実験データを再利用して異なる3つの実験結果にした。3つの実験結果は、ヒト脳オルガノイドにおけるカスパーゼ3発現の3つの実験結果である。こうなると、文字だけでは、具体性に欠けますね。

盗用・ねつ造・改ざんは他にもあるが、文字で書いても具体性に欠けるので、ここで止めておく。

●6.【論文数と撤回論文とパブピア】

★パブメド(PubMed)

2020年9月8日現在、パブメド(PubMed)で、ラフール・ジャヤント(Rahul Dev Jayant)の論文を「Rahul Dev Jayant [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2010~2020年の11年間の33論文がヒットした。

「Jayant RD」で検索すると、2009~2020年の12年間の42論文がヒットした。

「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。

★撤回監視データベース

2020年9月8日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでラフール・ジャヤント(Rahul Dev Jayant)を「Rahul Dev Jayant」で検索すると、0論文がヒットし、0論文が撤回されていた。

★パブピア(PubPeer)

2020年9月8日現在、「パブピア(PubPeer)」では、ラフール・ジャヤント(Rahul Dev Jayant)の論文のコメントを「”Rahul Dev Jayant”」で検索すると、0論文にコメントがあった。

●7.【白楽の感想】

《1》スゴク、早い! 

研究公正局は、ネカト発覚から半年後にラフール・ジャヤント(Rahul Dev Jayant)をクロと発表した。

スゴク、早い!

今まで、白楽を含め、研究公正局の捜査の遅さを非難する人がかなりいた。この遅さのためにシステムがおかしくなっている。

どうして早かったのか?

2020年4月2日に研究公正局の新体制が発足した。新体制が迅速方針を取り入れ、その成果が表れてきたのか?
 → 米国・研究公正局(ORI、Office of Research Integrity) | 白楽の研究者倫理

あるいは、今回はNIH・研究費審査会で発覚したので、大学のネカト調査に依存していない。研究公正局が直接調査した。それで早くなった。

前者だといいんだけど。

とにかく、おかげで、ネカト研究申請書に研究費を支給するのを止められた。エライ!

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●9.【主要情報源】

①  研究公正局の報告:(1)2020年8月11日:Case Summary: Jayant, Rahul Dev | ORI – The Office of Research Integrity。(2)2020年8月14日の連邦官報:2020-17800.pdf 。(3)2020年8月14日の連邦官報:Federal Register :: Findings of Research Misconduct。(4)2020年8月20日:NOT-OD-20-166: Findings of Research Misconduct
② 2020年8月12日のアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)記者の「撤回監視(Retraction Watch)」記事:Drug abuse researcher faked data in grant applications, says Federal watchdog – Retraction Watch
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

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