2024年8月10日掲載 【長文注意】
ワンポイント:「白楽の多撤回カビ理論」。日本は、多数論文撤回者の数が世界でダントツに多いのが特徴である。ダントツに多いので、「日本は研究不正大国」と言われている。ネカト摘発が極端に低いため、研究不正者が5年、10年と研究不正をし続けてしまい多数論文撤回者になる。日本の「1.監視・摘発」「2.調査・処罰」「3.啓発・教育・研究」システムの貧困が原因だと思われるが、さらに、自分の組織を偏って守る「自組織偏守」(特に医学系)が強いことも要因だと思われる。これらを総合して、ここに、「白楽の多撤回カビ理論」を提唱した。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.卓見・浅見
8.白楽の感想
10.コメント
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●1.【卓見・浅見】
★ナゼ、日本は研究不正大国なのか?
「日本は研究不正大国」と言われる。その理由は、他国に比べ、日本に多数論文撤回者が突出して多いからである。
以下は2024年8月9日時点、「「撤回論文数」世界ランキング 」の上位9位。
2024年8月9日時点、日本人は、「撤回論文数」世界ランキングの3位以内に2人、5位以内に3人、10位以内に5人、30位以内に7人、がいた。
第1位はドイツの研究者だが、30位以内には上記1人だけだった。
イランは他に1人、計3人が30位以内に入っていた。
日本人は、「3位以内に2人、5位以内に3人、10位以内に5人」という 上位に突出して多いことに注目し、ナゼ、日本に多数論文撤回者が突出して多いのか、理由を考えた。
答えは簡単ではない。
一歩一歩、考えていこう。
まず、研究不正と限定せず、一般的に不正がはびこる状況を考えた。
2つの状況があるに違いない。悪い人が多いことが1つ。もう1つは、社会が不正に無関心で、不正が野放しになっている状況だ。
で、研究不正に限定しよう。
どの国に「研究不正」が多いのか?
「研究不正」の数を不正論文の数で測るとしよう。学術誌は「研究不正」論文を「撤回(てっかい)」し、赤字などで「撤回(RETRACTED)」という烙印を論文に押す(以下出典:https://www.snexplores.org/article/retractions-righting-wrongs-science)。
「研究不正」ではない理由でも論文は撤回されるが、話が複雑になるので、このまま進める。
「悪い研究者が多い」と、この撤回論文数が多い。
と言っても、その国が出版する論文数の総数が多ければ撤回論文数も多くなる。それで、撤回論文数を総論文数で割った撤回率の方が、その国の「悪い研究者が多い・少ない」割合を評価するには適切である。
すると、この20年間のデータで、「悪い研究者が多い」国の世界ランキング1位がサウジアラビア、2位パキスタン、3位ロシアとなり、10位以内に日本は入ってこなかった。(出典:2023 年12月12日論文:https://www.nature.com/articles/d41586-023-03974-8)
一方、「研究不正に無関心」な国の学術界だと、悪い研究者は摘発されないので、「悪い研究者が多い」だけでなく、5年、10年と研究不正をし続け、1人の研究者が不正論文を10~20報、イヤイヤ、50報も100報も発表する。
その結果、1人で多量の論文が撤回されるケース(多数論文撤回者)がでてくる。
その世界ランキングに日本人は「3位以内に2人、5位以内に3人、10位以内に5人、30位以内に7人」もいる。
国別に見ると日本が1番多く、以下、6人(米国)、3人(イラン)、3人(中国)、2人(インド)、2人(韓国)と続いている。
日本はランキングされた人数が最多というだけでなく、上位者に多いので、総合的に、日本は堂々の第1位である。(出典:「撤回論文数」世界ランキング)
不思議なことに、「悪い研究者が多い」国として挙げた上位3か国のサウジアラビア、パキスタン、ロシアでは誰1人、30位以内に入っていない。
つまり、サウジアラビア、パキスタン、ロシアには「悪い研究者が多い」が、その国の学術界が「研究不正に無関心」ではなかったので、不正の初期に研究不正者を摘発し処分した。それで長期にわたる研究不正者、つまり、多数論文撤回者は少なかった。
一方、日本では研究不正者は多くはないが、日本の学術界が「研究不正に無関心」なので、研究不正者は長年、不正し続けた。
つまり、世界各国と比較して、日本は研究不正に対処するシステムが極端に悪いため、研究不正者が摘発されず、のうのうと教授職や研究職を続けることができ、「日本は研究不正大国」になってしまった。
日本は、サウジアラビア、パキスタン、ロシアよりも、ずっと「研究不正に無関心」な国と解釈できる。
というか、日本の多数論文撤回者の数が世界で最多なので、日本は世界で最も「研究不正に無関心」な国ということになる。
なお、白楽自身、当初、この解釈に違和感があった。
サウジアラビア、パキスタン、ロシアに比べれば、日本社会は犯罪が少なく、平和で、窃盗・強盗などの不正行為は少ない(と思う)。
だから、サウジアラビア、パキスタン、ロシアに比べれば、日本は「研究不正」への関心は高いだろうと思っていた。
しかし、どうやらそうではない。
そして、「研究不正に無関心」、つまり、「無関心」なので、日本が世界で最も「研究不正に無関心」な国であることにも、日本は「無関心」なのだ。
日本は、学術界だけでなく政府や一般社会でも、「研究不正」をあまり話題にしない、問題にしない。「無関心」が浸透しているので、「研究不正に無関心」なことに対しても「無関心」なのである。
★多数論文撤回者
日本は研究不正に対処するシステムが極端に悪いため、摘発されない研究不正者が多く、その研究不正者が長い年月のうのうと教授職や研究職を続け、多数論文撤回者が多くなった。と書いた。
ただ、この「日本は摘発されない研究不正者が多い」という解釈だと、日本には、多数論文撤回者が多いだけでなく、少数の論文が撤回された研究者も多いことになる。
しかし、以下の世界の撤回論文数トップ10か国でみるように、日本は撤回論文数がダントツに多いわけではない(2024年4月1日のX)。
撤回論文数の多い → 少ない順に、中国、米国、インド、ロシア、英国で、日本は第6位で1,671報だった。
Now that @RetractionWatch and @CrossrefOrg have joined forces, which is really good news, one benefit is that the Retraction Watch database is now freely available.
This analysis looks at the top ten countries who have had papers retracted.
This is not the easiest of analysis… pic.twitter.com/dYodHkZHpp
— Publishing with Integrity (@fake_journals) March 31, 2024
最近読んだクリストス・ペトロウ(Christos Petrou)の「2024年4月のScholarly Kitchen」論文の結論も興味深い。 → 7-151 撤回論文数は急増中だが、学術不正は増えていない
ペトロウの論文の結論は、多数論文撤回者を除外すると、日本の論文撤回率は米国やドイツとほぼ同等であること、そしてここ10年、悪化していない。
日本は多数論文撤回者が突出して多いのが特徴で、藤井善隆(フジイ ヨシタカ)、上嶋浩順(ウエシマ ヒロノブ)、佐藤能啓(サトー ヨシヒロ)の3人で、2011~2022年の12年間の日本の撤回論文全体の38%を占めている、とペトロウの論文は述べている。
[白楽注:「撤回論文数」世界ランキング30位以内に、日本は7人で、次点の米国は6人である。だから、ペトロウの「日本は多数論文撤回者が突出して多いのが特徴」という主張は、「3位以内に2人、5位以内に3人、10位以内に5人」という 10位以内に注目するとそうだけど、30位以内にすると、日本と米国の差は小さい。
しかし、日本の上位3人の撤回論文数は日本の全体の撤回論文数 の38%を占めている。対応する米国のこの値は不明だが、多分、値は日本に比べかなり小さい。それで、今回の白楽記事ではペトロウの主張「日本は多数論文撤回者が突出して多いのが特徴」を受け入れて話をすすめる]
ここで、日本には、多数論文撤回者が突出して多いが、少数論文撤回者は米国やドイツと同じ程度だということになる。
つまり、日本は、山のすそ野の広さは米国やドイツと同じだが、山が特に高い。
どうしてこの状況になりえるのか?
★日本の3大特徴
日本は多数論文撤回者が突出して多いが、少数論文撤回者は米国やドイツと同じ程度である。
この原因・理由はなんだろう?
日本は研究不正に対処するシステムが極端に悪いなら、そのどの点が上記の原因・理由になるのだろう?
白楽は、ネカト一般論として、日本の特徴を以下のようとらえてきた。
日本の研究不正対処システムは、欧米に比べ、以下の3点のレベルが際立って低い。
1. 監視・摘発システム
日本も諸外国もネカトを監視・摘発する警察のような公的組織はない。①被盗用者などのネカト被災者やネカト遭遇者が告発する場合と、②個人が無給ボランティアでネカトハンティング活動(研究不正を見つけ、告発する)をする場合がある。前者①は世界の研究不正の約1割、後者②が約9割を摘発している(正確なデータはない。推定)。
外国には数十人のネカトハンターがいるが、日本には、10年以上前に「11jigen」氏など、数年活動する人が少数いたが、今はいない。
ネカトハンターが活動を止めれば、研究不正を恒常的に摘発する人はいなくなる。日本の研究者のネカトを外国のネカトハンターが摘発するが、やはり、日本人ネカトハンターの方が、効率的に日本の研究者のネカトを摘発するだろう。
もう10年近く、日本人ネカトハンターがいないので、日本のネカト監視・摘発システムは欧米に比べ際立って貧弱になっている。
2. 調査・処罰システム
多くの人は信じないだろうが、日本の多くの大学のネカト対処は驚くほどデタラメである。そして、それを指摘・行政指導・是正するシステムが日本ではとても貧弱である。
全部ではないが、多くの大学は権威・信頼の裏で、研究不正を隠蔽し、調査をしない。調査しても御用委員が調査内容を捻じ曲げ、シロと結論する。クロと結論しても、甘すぎる処罰ですます。調査結果を発表しないこともあるが、発表しても隠蔽箇所が多く、ほんの一部分しか発表しない。
つまり、ネカト告発に対し、多くの大学はあらゆる段階・手段で無対応・捻じ曲げ・隠蔽をする。研究不正を改善する姿勢とは真逆の行動をする。
大学のこのデタラメは、欧米にもあるが、日本は過度である。
大学のデタラメを抑止するシステムを、米国を例に比較しよう。①ニューヨーク・タイムズ紙、撤回監視(Retraction Watch)など、そして、研究者が大学のネカト対処を詳細に報道・公表・批判することで、大学の暴走・デタラメを抑制する。また、②連邦政府組織の研究公正局が大学のネカト調査をチェックしている。この①メディア(報道・公表・批判)と②公的組織が、大学の暴走・デタラメに歯止めをかけている。
しかし、日本の①は貧困、②は対応組織がない。それで、大学の暴走・デタラメは是正されず、やりたい放題になっている。
ただ、ネカト疑惑教員を所属大学に調べさせる現在の仕組みに根本的な矛盾があることが本質的な問題ではある。
所属教員を不正だと大学が正直に結論すると、補助金が減らされ、評判は落ちるので、
大学は、当然ながら、無対応・捻じ曲げ・隠蔽する。つまり、調査・処罰システムに構造的な問題がある。
所属大学に調べさせるこの仕組みはほぼ世界共通だが、この仕組みで続けるなら、上記の①②の活動が必須である。ところが、日本は「①は貧困、②は対応組織がない」ので、ネカト調査・処罰システムが際立って貧困になってしまった。
3. 啓発・教育・研究システム
上記「2の①」でも触れたが、日本のメディアは研究不正の問題をほとんど取り上げない。1年間に数10件である。一方、英語圏(米国が多い)では1年間に約600件も報道している:https://haklak.com/page_papers_.html#2。従って、日本は、学術界や一般社会に対して研究不正問題を啓発するシステムが極端に弱い。
そのことと同根だと思うが、研究不正問題を専門に教育・研究してきた(している)日本の大学教員はとても少なく、長年(~30年間)、数人しかいない。
結局、研究不正問題を教育・研究する人材は育ってこない。つまり、日本の啓発・教育・研究システムがとても貧困である。
現在、日本の大学・研究機関の管理者と研究者の研究公正の知識・意識・言動の質は、データはないが、各国と比べるとかなり低いと思われる。
では、これらの「日本の3大特徴」で、「日本は多数論文撤回者が突出して多いが、少数論文撤回者は米国やドイツと同じ程度」を説明できるのか、できないのか?
★説明できるか?
ネカト行為が発覚しにくいと、実際はネカト行為が行なわれているのに、摘発されない。5年、10年と研究不正をし続けてしまう。それで、発覚すると、結果的に多数論文撤回者になってしまう。
このように考えると、上記「日本の3大特徴」の「1.監視・摘発システムの貧弱」が「日本は多数論文撤回者が突出して多い」原因になる。
「日本の3大特徴」のうちの「2.調査・処罰システムのデタラメ」はネカト発覚後の問題だし、「3.啓発・教育・研究システムの貧困」はネカトの全体的問題なので、「多数論文撤回者が突出して多い」原因には該当しそうにない。
ペトロウの論文は「日本は多数論文撤回者が突出して多いが、少数論文撤回者は米国やドイツと同じ程度」だと結論している。
ただ、普通に考えて、「1.監視・摘発システムの貧弱」でネカト行為が発覚しにくいなら、ネカト者全体が増え、少数論文撤回者も増えるハズだ。
となると、「日本の少数論文撤回者は米国やドイツと同じ程度」を説明できない。
米国も多数論文撤回者は多いが、ドイツは少ない。また、「悪い研究者が多い」国として挙げたサウジアラビア、パキスタン、ロシアでは誰1人、多数論文撤回者の30位以内に入っていない。
白楽の視点に、何かが欠けている。
「2.調査・処罰システムのデタラメ」は発覚後の問題だからと、この項の最初で、原因から省いた。
しかし、世界ランク第2位の藤井善隆(フジイ ヨシタカ)の場合、一度、ネカトが発覚したのに、大学が調査・処罰しなかったために、さらに多くのネカト論文を出版し、後に撤回されている。
世界ランク第25位で31報の撤回論文がある森直樹(モリ ナオキ)は、学術界から排除されず、現在、琉球大学の現職の教授である。 → 研究者詳細 – 森 直樹
多数論文撤回者ではないが、最近(2024年)では、名古屋大学の伊丹健一郎の以下の例もある。
合成化学の権威である伊丹氏だが、名大で自身が主宰していた研究チームが2019年6月にイギリスの科学誌『ネイチャー』上で発表した炭素素材グラフェンナノリボンに関する論文で、重大な不正が発覚している。
伊丹氏は責任を問われ、国の研究費用の配分を決める科学技術振興機構(JST)や日本学術振興会(JSPS)からはペナルティとして、研究費用の交付を2025年3月末まで止められている最中。にもかかわらず、主に国からの研究費用が資金源の理研が伊丹氏を採用することは、ペナルティを途中で無意味化させかねない。(2024年1月18日の 奥田 貫記者の記事:理研「名大の不正論文」責任著者を採用の波紋 国の研究費配分機関の処分が無効化するおそれ | 若手研究者が潰される国・日本 | 東洋経済オンライン)
つまり、日本の処罰が甘い。だから、ネカト者と疑惑や認定された大学教員が、そのまま、論文を発表し続ける。
つまり、「2.調査・処罰システムのデタラメ」も「多数論文撤回者が突出して多い」原因になっている。
しかし、それが理由なら、やはり、ネカト者全体が増え、少数論文撤回者も増えるハズだ。となると、「日本の少数論文撤回者は米国やドイツと同じ程度」を説明できない。
本当は、「日本の多数論文撤回者が多数論文撤回に至った状況を調査・研究」し、多数論文撤回者が多い原因を突き止めることだが、誰もそのような調査・研究をしていない。白楽自身は研究する余裕がない。
そのような調査・研究はないが、現在得られるデータに基づいて、「日本は多数論文撤回者が突出して多い」原因を、もう少し、考えてみる。
白楽が、日本の特徴を何かを見落としているに違いない。
何だろう?
ウ~ン、ウ~ン、なかなか答えが見つからない。
米国、ドイツ、そして、サウジアラビア、パキスタン、ロシアと日本との違い。ウ~ン、ウ~ン。
白楽は、ブログで、世界のネカト事件を既に千件近く分析している。
日本のネカト事件はブログでは一覧表を作成しているだけだが、明治7年(1874年)~平成21年(2009年)、136年間の日本の「研究者の全事件」データベースを作り、2011年9月に講談社から、『科学研究者の事件と倫理』として出版した。
だから、日本と米国のネカト事件を自分の知識と経験で比較しても、大きく的を外さないで、かなり本質に迫れるだろう。
目をつぶって瞑想した。
そして、なるほど、これかも、という答えが見つかった。
ネカト事件のデータとして、以下の3点に、日米間で顕著な違いがある。
第1点。
米国では、教授が自分の研究室の院生・ポスドクやテクニシャンのネカトを大学に通報したネカト事件がかなりある。
一方、日本では、これはとても少ない(少なかった)(定性的です。定量的数値データを持っていない)。
米国では、院生がネカトでクロと認定されても、共著論文がある指導教授はシロと判定され、全く無処分である。
一方、日本では、文部科学省が「不正行為に関与していないものの、・・・中略・・・論文等の責任を負う著者」として指導教授を処分するよう指導しているので、指導教授も処分される。 → ●卓見・浅見20【「不正行為に関与していない」人を処分するな!】
従って、日本では、教授が自分の研究室の院生・ポスドクやテクニシャンのネカトを大学に通報したがらない(通報しない、ネカトを隠蔽する)。通報し、室員がクロと判定されると、自分も処分されるからである。
つまり、教授は、院生・ポスドクやテクニシャンのネカトをなるべく、もみ消す・隠蔽する。
第2点。
ネカト事件を調べていると、米国ではネカト調査の部外秘書類が、しばしば公開されている。自分の大学のネカト調査がおかしいと思う内部関係者が、部外秘書類をしばしばリークする。
以下はリークされた例。政府機関である研究公正局の「部外秘/取扱注意(CONFIDENTIAL/SENSITIVE)」書類。冒頭部分(出典:同、赤色は白楽)。全文(5ページ)は → https://www.thetransmitter.org/wp-content/uploads/2024/02/DIO-7758-Letter-10-18-2022.pdf
一方、日本では、自組織内にかん口令を敷き、内部者が部外秘書類をリークすることは滅多にない。
リークすると組織が強い報復をする。大学ではないが、最近の例 → 2024年6月26日記事:鹿児島県警、リークされた記者が驚く「異常すぎる」隠蔽体質“正義の警察官”内部告発を襲う容赦なき制裁(SmartFLASH) – Yahoo!ニュース
第3点。
「撤回論文数」世界ランキングの30位以内に日本人は7人(5位以内に3人)もいて、国別に見ると日本が1番多い。(出典:「撤回論文数」世界ランキング )
ペトロウの「日本は多数論文撤回者が突出して多いのが特徴」という主張を受け入れて、本記事は話を進めている。しかし、ランキングの30位以内に米国は6人で日本の7人と近い。
「日本は多数論文撤回者が突出して多いのが特徴」の「突出して多い」は、「3位以内に2人、5位以内に3人、10位以内に5人」という 10位以内の話である。10位以内に米国は1人しかいない。
ただ、30位以内の米国の6人と日本の7人の研究領域を調べると、米国の6人は生命科学者が2人で、他の4人は電子工学、会計学、法学、物理学、各1人と研究領域が分散している。
一方、日本の7人全員は生命科学者で、内6人は医師で大学・医学部所属だった。
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上記の第1点と第2点から見えてくる日本の特徴は、自分の所属する組織を、公正基準を逸脱してでも、偏(かたよ)って守る「自組織偏守」(じそしきへんしゅ、白楽の造語)が、米国に比べ、日本はとても強いということだ。
さらに、第3点を加えると、日本の医学系は、医学系の特権階級意識が強く、特に医学系に「自組織偏守」の文化が強いということだ。
それで、自分の組織・仲間・子弟のネカトを、公正基準を逸脱してでも、強く糾弾(きゅうだん)しない(したくない、できない)(特に医学系で)。
「自組織偏守」の概念を別の言葉で表すと、「仲間意識、和を乱さない、集団主義、身内意識、滅私奉公、共存共栄」などだが、言葉がシックリこない(誰か、「自組織偏守」より良い用語があれば教えてください)。
繰り返すと、日本の研究者(特に医学系)は、自分の組織・仲間・子弟のネカト行為を知った時、糾弾しない、見て見ぬふりをする(許容)。
あるは、軽く指摘してもネカト者がネカトをやめないとき、「自組織偏守」が強いため、大学への告発などをせず、放置する(許容)。
あるいは、ネカト者のいる研究室を離れ、忘れる。
それで、ネカト者は、5年、10年と研究不正をし続け、1人の研究者が不正論文を50報も100報も発表する。
告発は「自組織偏守」の価値観に反するので、日本では、告発者を裏切者と敵視する文化が強い。
もちろん、米国にも他国、社会、組織にも「仲間意識」はあるが、日本の「自組織偏守」とは質的に異なる。
「自組織偏守」「仲間意識」と公正や社会正義を天秤にかけた時、どちらをどう取るかは、米国と日本で大きく異なる。
いわば、以下の視点に近い。
全体調和と個の尊重
日本人は和を重んじる傾向が強く、公私ともに周りとの調和に意識を向けた行動をします。自分の考えや意見があっても、聞いてもらうことより、周りに合わせることを優先しがちです。組織で決められたルールに従うことに対しても、大きな疑問や抵抗をあまり感じません。その分、周りと違う自分や誰かの行動や言動には敏感に反応します。
一方、外国の人たちは、自分の存在意義をアピールすることに意識が向いています。個々の自分自身の考えに基づいた行動をしますし、意見も積極的に発するのです。たとえ、大多数の人と自分の意見が異なっていても臆せず主張します。その代わり、一人ひとりが違うことが当たり前の彼らは、他人の異なる行動や主張も尊重するのです。(出典:2024年6月10日記事:外国人の仕事の考え方って? 日本人との思考の違いや採用前のトラブル防止策も紹介)
また、コラムニストの荒川和久氏は、2021年4月21日の記事の中で、日本人は男女未既婚年齢関係なく、ほぼ9割が「日本人は集団主義だ」と回答している、と述べている。また、日米中韓の高校生のアンケート調査の結果、米中韓に比べ、日本人は「集団の中に所属している自分」が安心感の土台なので、「自分ひとりだけ異質な存在とみなされる」のを嫌う、と説明している(出典:2021年4月21日記事:
日本人は「みんなと一緒が好き」という大誤解 欧米と比べて集団主義的傾向が強いのは本当か| 東洋経済オンライン)。
一方、「『日本人は集団主義的』という通説は誤り | 東京大学」という高野陽太郎・教授の記事もある(記事に掲載日不記載。多分、2020年9月30日)。
★「白楽の多撤回カビ理論」
上記のように、研究不正で、(特に医学系の)「自組織偏守」が強いのを日本の特徴だとした。
前々章の「1.監視・摘発システムの貧弱」では、ネカトハンターがいないことを日本の特徴とした。
それで、日本はネカト告発されない。その上、「自組織偏守」が強ければ、ますますネカト告発されなくなる。
不届きな研究者たちは、ネカト行為が発覚しない、ネカト告発がされない、のを肌で知る。ネカト行為(者)は多くなる。
さらに、「2.調査・処罰システムのデタラメ」にも、「自組織偏守」が強いことが大きく影響する。
「自組織偏守」が強いために、多くの大学の担当者は自大学を守ることを自分の役目・責務と考え、あらゆる段階で所属教員のネカト告発に無対応、ネカト行為の隠蔽、ネカト調査の捻じ曲げをする。
それで、発覚・告発されても、クロと公表されるネカト事件の割合は少なくなる。
「日本は多数論文撤回者が突出して多いが、少数論文撤回者は米国やドイツと同じ程度」を、「白楽の多数論文撤回者理論(仮説)」で例示しよう(数値は比較のための数値で実数を反映していない)。
米国やドイツのネカト行為者を100人としよう。そのうち、10%である10人が発覚・告発され、うち半数の5人がクロと認定・処罰された。
日本は、「1.監視・摘発」「2.調査・処罰」「3.啓発・教育・研究」システムが貧困なので、ネカト行為者が多い。米国・ドイツの3倍の300人としよう。
発覚・告発は少ないので、米国・ドイツの半分の5%とすると、15人が発覚・告発された。
調査はズサンなので米国とドイツより数割少ないとして、5人がクロと認定された。ただ、5人の処罰は甘く、解雇されなかった。
それで、ネカト・クロ者(=ここでは論文撤回者)は結局、日本も米国やドイツと同じ5人になった。
しかし、処罰が甘く、ネカト者は大学を解雇されないので、5人のネカト・クロ者の中の少数がその後、多数論文撤回者になった。
また、発覚・告発されなかった285人、あるいは、発覚・告発された15人のうちのクロと認定されなかった10人、の大学教員が、そのまま、ネカト論文を発表し続け多数論文撤回者になった。
これで、「日本は多数論文撤回者が突出して多いが、少数論文撤回者は米国やドイツと同じ程度」を説明できた。
ただ、この説明が実際と合うのか?
今のところ、この理論を支持するデータは少ししかないが、この「白楽の多数論文撤回者理論(仮説)」を「白楽の多撤回カビ理論」と命名する。
「日本は多数論文撤回者が突出して多い」のを日本的な「カビ」で表現した。
「カビ」は手入れが悪い日本の学術界のあちこちで増える。
日本は「監視・摘発」が弱いので「カビ」を見逃す。
見つけても「調査」がデタラメなので見落とされる。「処罰」が甘いので、生き残る「カビ」が多い。
そして、生き残った「カビ」は、長い間処理されず、じっくり増える。気が付くと、たくさんの「カビ」が生えていて、多数論文撤回になってしまう。
●8.【白楽の感想】
《1》別の答えがある?
ナゼ、「日本は多数論文撤回者が突出して多い」のか?
答えを模索し、「白楽の多撤回カビ理論」を立てたが、正解なのか、わからない。
どなたか、別の答えがあれば教えてほしい。
日本の多数論文撤回者が多数論文撤回に至った状況を調査・研究しないと、データに基づく回答は得られないだろう。と、実のところ、白楽は思っている。
どなたか、「多数論文撤回に至った状況を調査・研究」し、論文として発表してほしい。
正解を探り出せれば、その部分を改善することで、日本は具体的な対策を立てられる。
なお、どなたか「が」、現在、日本のどこかで、ネカト論文を出版し続け、将来の多数論文撤回者になっている可能性がある(可能性は高い? 低い?)。
どなたか、摘発してほしい。
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日本の人口は、移民を受け入れなければ、試算では、2100年に現在の7~8割減の3000万人になるとの話だ。国・社会を動かす人間も7~8割減る。現状の日本は、科学技術が衰退し、かつ人間の質が劣化している。スポーツ、観光、娯楽を過度に追及する日本の現状は衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今、科学技術と教育を基幹にし、人口減少に見合う堅実・健全で成熟した良質の人間社会を再構築するよう転換すべきだ。公正・誠実(integrity)・透明・説明責任も徹底する。そういう人物を昇進させ、社会のリーダーに据える。また、人類福祉の観点から、人口過多の発展途上国から、適度な人数の移民を受け入れる
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
●コメント
注意:お名前は記載されたまま表示されます。誹謗中傷的なコメントは削除します
アカデミアの外の人間です。学外の地域住民で、学者の元愛人です。
白楽さんの「なぜ日本は研究不正が多いのでしょうか?」という問いに対する、自分なりの回答です。
① 儒教道徳があるから。儒教道徳は、昔、中国から日本に渡ってきた、「親や年長者、医師や教師を尊敬しましょう」という社会規範です。例えば、白楽ロックビル“先生”と呼んだり(呼ばれたことがありますよね?)、「先生がお見えになった」「先生がこうおっしゃった」「先生がいらっしゃった」等というふうに尊敬語を使う習慣があります。小学校等で、教師が子どもに、「おれを先生と呼べ」「『先生がいらっしゃった』と言え」と教えたりしています。自分たちをケアさせるようなことを人々に教えているわけです。医師・教師(大学教師を含む)は儒教道徳によって、スポイルされています。人々が自分を尊敬するのを当然だと思っています。こちらが医師や教師を尊敬しないと、「人々が俺を尊敬しない!」と怒り始めます。
② 学者の手下を作る学者が多いから。大学教員が学生や市民に教育をするときは、「ぼくの言っていることを疑いなさい」と教えるべきです。「健全な懐疑精神を持って、ぼくの話を聞き、ぼくの話に道理が通っていたら賛同し、ちがっていたら、『ちがうと思います。理由は…』と批判をしてください」と教えるべきです。そうじゃなくて、自分のことを「先生」と呼ばせて、自分の伝達した知識をそのまま受容するように求めます。学者の手下を作っています。学者の手下ではなく、論敵を作るべきです。教授は学生に、「おれを超克する研究者になれ。学説で俺を切り殺して、俺の屍を超えていけ」と言うべきです。サイエンス・コミュニケーションと言っている人たちとか、教育哲学の苫野一徳とかひどいです。男の教師同士で対談をやって、さらに、互いに「先生、先生」と呼び合っています。
X(旧称:ツイッター)を見ていても、男性の大学教員のツイートには、リプライがつかないです。市民が無関心というのもあるのですが、大学教員に歯向かうのを畏怖します。私は最近、ものおじせず、ツッコミのリプライを書くようにしています。草の根的に、大学教授に「普通の人が批判するようになったな」と思ってほしいし、他の市民に、「もっと大学教授を批判しよう」という輪が広がるといいなと思っています。
③ クリティカル・シンキングを教えていない。大学教育だけではなく、外国だと小学校から、クリティカル・シンキングを教えているんじゃないか…という情報があります。2020年に発表された、『週刊ダイアモンド』のこの記事の後ろの方に、https://diamond.jp/articles/-/245187 OECD各国でクリティカル・シンキングを教えている国のリストというのがありました。日本だけ教えていなくて、他の国はだいたい教えていました。いまは有料記事になってしまって、会員にならないと、閲覧できなくなっちゃいました。
また、フランス人女性で日本人男性と結婚して、日本で子育てをしている西村カリンさんという新聞記者がいて、『フランス人記者、日本の学校に驚く』(西村カリン著、大和書房、2024)という本を5月に出版しました。私は未読なのですが、帯に「なぜフランスの子は『ちがうと思います』が言えるのか?」と書いてあります。「4章 日本の子は道徳を、フランスの子は哲学を」という小見出しがあって、気になっています。わが国は、「和を以て貴しとなす」という感じの道徳教育をしているので(これは自民党政府が、国民を統治しやすいからそういう教育をしているんだと思います)、教師がまちがったことを言っていても、ツッコミを入れる人が少ないかもしれないです。
④ 福島原発の後で、「自律」で終わってしまった。福島原発事故は、世界中な事故だったと思います。日本の科学者は、世界的な事故を国内で起こしたのに、「自律」(自分たちで自分たちの悪いところを直す)で終わっちゃいました。日本学術会議の『科学者の行動規範』が福島原発事故を機に、改訂版というバージョン2になりました。そこに、自律と書いてあります。科学者と市民社会との関わり方について考える科学技術社会論(STS)という学問分野があるんですけど、そこの哲学が浅かったと思います。平川秀幸、尾内隆之、調麻佐志、藤垣裕子とかじゃないかな…。
科学者が自分たちで自分たちの悪いところを直す“自律”ではなく、学者と闘える市民科学者を養成するべきです。市民科学者の養成がうまくいっていないです。最近、NPO法人市民科学相談室というのはできたみたいで、相談のメールを送ってみたのですが、返事がこないです。
⑤ 学者が市民科学者の団体を植民地化する。大学の学者権力を批判する勢力として、市民科学を振興するべきです。しかし、市民科学の団体ができると、大学人が植民地化します。高木仁三郎市民科学基金というのがあるのですが、2年ぐらい前に発表を見に行ったら、琉球大学の学者が発表していました。市民科学基金なんだから、市民科学者に助成してほしいのに、大学教授が、「最近科学研究費がなかなか配分されないから」という理由で、市民科学基金にたかりに行きます。私は、「基金側の人が断ればいいのに…」と思いました。
私は精神病の患者なのですが、精神障害者の団体、認定NPO法人地域精神保健福祉機構という団体があり、精神科医や心理系の大学教授が役員になり、植民地化しています。患者を集めて、生活保護費を巻き上げて、学者に土下座させる会をやっています。患者団体だったら、患者を役員にして、患者学会等をやってほしいのですが、医者が講師報酬をカモりに行く場になっています。
あと、日本学術振興会等に、市民科学者や弁護士を参画させるべきです。特に、日本学術振興会の研究不正に関するタレコミメールを募集するメールアドレスというのがあるのですが、私は、昔愛人をやっていた学者の研究に不正があったので、「科研費を交付しないでください」というメールをしたのですが、科研費の交付が止まらないです。科学者だけで日本学術振興会をやらせてしまうと、研究不正をもみ消す組織になるんだと思います。外部の人が参画して、「この研究者には5年ぐらい、科学研究費を交付しない」という措置ができるようになってほしいです。市民科学者や外部弁護士が参画して、その人たちが研究不正に関するタレコミメールを見るようにするべきです。
あと、科研費を市民科学者に出してほしいです。市民科学者が学会に行ったときの、学会旅費などを科研費から交付してほしいです。私は6月に日本精神神経学会に行き、3万円ぐらいかかったので、その3万円を誰かから補助してほしいです。
民間の助成金、例えばサントリー文化財団による研究助成等がありますが、みんな学者が使っています。学者に研究をやらせても、研究不正が含まれた研究をされるだけなので、意味がないと思うのですが…。
⑥ 大学自治や学問の自由が、「大学では何をやってもいいし、ハラスメントパラダイス」みたいな感じの言われ方をします。私は、大学自治はまちがいだと思います。天動説のようなもので、観測が雑だったので、いままで横行していた学説だと思います。大学人が大学の外に出てきて、未成年の少女を愛人にして、「それはかっこいい学説」という感じで、マスコミがもてはやしていたことがあって、そうすると、娘をわいせつ教授の毒牙から守りたいお母さん等が、とても闘える感じではないのです。宮台真司が1990年代以降やっていた、「渋谷で援助交際をする女子高生のフィールドワーク」なんですけど、大学人が渋谷に行って、非行少女をカモるのがかっこいい研究ということになっていました。宮台がマスコミや政治家と癒着して、自分のファンを私兵みたいに育てます。インターネットやマスコミで告発がでようものなら、自分の私兵を使ってバッシングさせそうな雰囲気でした。マスコミや政治家も宮台と癒着しちゃってしょうがなかったです。
⑦ ジャーナリストで、学者を追及できる人がいない。新聞記者は、学者からコメントを取ってくることはします。あと、私は「学者サロン」と呼んでいるのですが、ジャーナリストが学者を呼んで、まるで『徹子の部屋』みたいに相手の専門分野の話について話を膨らませるという感じの企画はあります。あと、学会で、「メディアと協働する」と言っているところがあります。日本精神神経学会で、女優やタレント等の自殺があったときに、あまりセンセーショナルに報道すると、後追い自殺が発生するから、穏便に報道してほしいという企画がありました。
学者並みに勉強して、学者を追及できるというジャーナリストがいないです。
あと、「博士号を持っている解説員がいない」というのも問題もあります。昨日、地震があり、政府側の科学者チームが記者会見をしました。しかし、来ているジャーナリストが地震の専門知識がある人ではなかったようです。マスコミで地震等について博士号を持った人を雇って、解説員にする、地震が起きたときの科学者の記者会見にはその解説員を行かせるというふうにしたほうがいいでしょうね。
日本の新聞記者は、「給料が高い」という話なのですが、その割にばかっぽいというか、文系の学卒で終わっています。文系でも、私は文系学者の元愛人なのですが、「文系学者の不祥事について追及する」ということはできるはずです。学長の自宅を突撃し、「この研究不正はどう思いますか?」と追及していいです。殺人事件の犯人や俳優の不倫騒動の時には、相手の自宅を突撃取材しますよね。同じようにやっていいと思います。
ざっくばらんに書いたのですが、白楽さんが考えているより事態は深刻です。白楽さんは「死者が出ていない」と思っているかもしれないですけど、研究不正や大学人による大学内外でのハラスメントによって死者は出ています。それももみけされていると思います。