2025年2月12日掲載最初 随時更新 【進行中/終了】
静岡県立大学・看護学部に所属する井上健一郎・教授が、2009~2025年の16年間に出版した4報の論文に盗用疑惑(含・二重出版疑惑)があります。4報のうち3報は京都大学・教授だった高野 裕久・名誉教授(京都大学)と共著です。適切な調査・対処をして下さるようお願い申しあげます。
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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.最終評価
2.通報・経緯
3.各段階の評価
4.疑惑者
5.疑惑論文
7.白楽の感想
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- 記述は敬称略。
- 白楽ブログの「5C 日本の研究疑惑:通報と対処」は、研究公正(のあり方)を改善するために研究不正(含・疑惑)の具体的事実を公表し、該当する研究機関に適切な調査・対処をお願いしている。
●1.【最終評価】
★ステップ
【進行中/終了】
発覚 → 通報(allegation) → 通報対応 → 告発判断(assessment) → 予備調査(inquiry) → 本調査(investigation) → 認定(finding) → 行政措置(懲戒処分など)の裁定(adjudication) → 不服申立て(appeal)
★白楽の最終評価とコメント(終了時に記述する)
静岡県立大学 看護学部。写真出典:https://nursing.u-shizuoka-ken.ac.jp:443/
●2.【通報・経緯】
★通報
今回は、「未公開」案件なので、研究不正疑惑はどこにも公表されていない。
井上健一郎の2009~2025年の16年間に出版した盗用疑惑論文は、4論文のうち、3論文が京都大学・教授だった高野 裕久と共著だが、1論文は井上健一郎の単著である。
井上健一郎を主役に記述した。
それで、井上健一郎が現在所属する静岡県立大学に通報し調査・対処を依頼した。
今後、「パブピア(PubPeer)」などで指摘を公開する予定である。
―――以下は白楽のやり取り(新→旧 順)ーーー
ーー通報当日:2025年2月12日 13:32、静岡県立大学 → 白楽ーーー
白楽ロックビル 様
平素よりお世話になっております。
静岡県立大学 地域・産学連携推進室の青島と申します。
本日、令和7年2月12日に本学不正通報窓口へ研究不正に係る
通報をされた件につきまして、通報を受け付けました。
今後、内容を精査のうえ、
以上、御連絡となります。
:・―・:・―・:・―・:・―・:・―・:・―・:・―・: 静岡県公立大学法人 静岡県立大学 事務局 教育研究推進部 地域・産学連携推進室 主査 青島 裕真(Aoshima Yuma)
ーー通報当日:2025年2月12日 08:00、白楽の静岡県立大学への通報ーーー
静岡県立大学・看護学部に所属する井上健一郎・教授が、2009~2025年の16年間に出版した4報の論文に盗用疑惑(含・二重出版疑惑)があります。4報のうち3報は京都大学・教授だった高野 裕久・名誉教授(京都大学)と共著です。適切な調査・対処をして下さるようお願い申しあげます。
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●【通報先】
静岡県立大学 地域・産学連携推進室
renkei@u-shizuoka-ken.ac.jp
- 通報(告発)先は、一般的に、学術誌、所属大学・研究機関、調査機関、メディア(新聞など)、ネカト・ウオッチャー(①撤回監視:リトラクション・ウオッチ:Retraction Watch、②パブピア:PubPeer、③より良い科学のために:For Better Science、など)、ネカト・ハンターがある。
- ネカト疑惑者には直接、問い合わせしない方が良いとされている。
- 一般的に、疑惑発見者は疑惑者の所属機関と学術誌に告発する。
- かなりの割合で、学術誌はネカト調査で疑惑者の所属機関に連絡する。
- 「パブピア(PubPeer)」は自動的に第一著者と連絡著者にコメントを伝える仕組みになっている。
★通報窓口のあらまし:静岡県立大学
ーーー日本語版ーーー
研究活動の不正行為防止の取り組み | 静岡県立大学
https://www.u-shizuoka-ken.ac.jp/cooperation/research/research-activities/
静岡県立大学 地域・産学連携推進室
〒422-8526 静岡市駿河区谷田52-1
電話 054-264-5124
FAX 054-264-5099
メールアドレス renkei@u-shizuoka-ken.ac.jp
ーーー英語版ーーー
英語で通報:できない。
静岡県立大学の英語サイトで「research misconduct」「research integrity」を検索しても通報窓口は見つからなかった。 → Search | UNIVERSITY OF SHIZUOKA
●3.【各段階の評価】
★通報:静岡県立大学:評価(優/良/可/不可/悪質/なし)とコメント
- 日本語版の通報方法はわかり易い。
しかし、英語版がない(または、見つからなかった)。外国人は英語で通報する。英語で通報できるようにしてほしい。
★通報対応:評価(優/良/可/不可/悪質/なし)とコメント
●4.【疑惑者】
★疑惑:盗用
★研究者の経歴・所属・地位など:井上健一郎
研究者:井上健一郎(イノウエ ケンイチロウ)(Ken-ichiro Inoue)
- 部署①:静岡県立大学・看護学科
職位:教授 - 部署②:静岡県立大学・健康支援センター
職位:分所長 - 写真出典:7ページ目
人物・研究の情報は以下にもある。
- 井上健一郎 – Wikipedia
- 井上 健一郎(INOUE Ken-ichiro):静岡県立大学教員データベース
- KAKEN — 井上 健一郎 (20373219)
- パブメドで検索すると、122論文 「”Inoue KI”[Author]」、あるいは、149論文「Ken-ichiro Inoue」~193論文「Inoue KI」を出版している。(なお、似た姓名の研究者が複数いるので、正確な論文数を得るのは難しい。例えば、井上 賢一:Inoue Ken-ichi。また、井上 謙一:Ken-ichi Inoue、1人目、2人目、などの論文もヒットしてしまう)。
- パブメドを[“Inoue KI”[Author] OR “Inoue K”[Author] ]AND [Takano H[Author]]で検索すると、175論文ヒットした。175論文のうち、初期の論文は別人の論文である。井上健一郎と高野 裕久の共著論文は「2001年10月のLancet」論文以降にリストされた172論文と思われる。
★研究者の経歴・所属・地位など:高野 裕久
研究者:高野 裕久(タカノ ヒロヒサ)(Hirohisa Takano)
- 部署①:京都大学、地球環境学堂
職位:研究員
なお、2011~2022年度は、 京都大学・工学部・教授で、現在は京都大学・名誉教授である - 部署②:京都先端科学大学、国際学術研究院
職位:特任教授 - 写真出典
人物・研究の情報は以下にもある。
- 高野裕久 – Wikipedia
- 高野 裕久(地球環境学堂 地球親和技術学廊) | 京都大学 教育研究活動データベース
- KAKEN — 高野 裕久 (60281698)
- パブメドで検索すると、1,969論文 、あるいは、270論文を出版している。270論文のうち、132論文が井上 健一郎と共著と思われる。その期間は2002~2023年の22年間に及ぶ。単なる子弟というより生涯の共同研究者だ。
- パブメドを[“Inoue KI”[Author] OR “Inoue K”[Author] ]AND [Takano H[Author]]で検索すると、175論文ヒットした。175論文のうち、初期の論文は別人の論文である。本ブログで問題にした井上健一郎と高野 裕久の共著論文は「2001年10月のLancet」論文以降の172論文だと思われる。
●5.【疑惑論文】
★疑惑の具体例
疑惑論文は少なくとも2009~2025年に発表した4論文である。調べるとさらに増えると思う。
以下、4論文の疑惑の一部を示した。くどいけど、疑惑の全部ではありません。
論文は「新しい → 古い論文」順に示した。つまり、2025年、2024年、2013年、2009年に出版した論文の順に示した。
============【論文1】============
盗用論文:「2025年1月のIntern Med.」論文
- Tetramine in Patients with Myasthenia Gravis.
Inoue KI.
Intern Med. 2025 Jan 1;64(1):1-2. doi: 10.2169/internalmedicine.3627-24. Epub 2024 Apr 9.PMID: 38599857
井上健一郎の単著で所属は静岡県立大学である。
上記の論文タイトルは改訂(updated)版の論文にリンクしているが、論文が改訂されたという記述と、改訂前の旧版もウェブ上にある。
研究助成金は論文に記載されていない。
この論文は、発表後、改訂された(updated)。
誰かに盗用と指摘されたために改訂した(updated)のかもしれない。しかし、盗んだものを返しても窃盗罪は成り立つ。盗用論文を発表後、改訂(update)しても、盗用という研究不正行為を行なった事実は残る。
窃盗罪は犯人が物を盗って自分の物にした時点で成立し、その後の行動によって犯罪の成否は変わりません。最初から自分の物にするつもりで盗ったときには、後から心変わりして被害者に返したとしても窃盗罪です。(出典:最終更新日:2023.10.13、「窃盗・強盗被害にあったら」、リード法律事務所)
ーーーー論文1:被盗用論文①ーーーー
被盗用論文:「2021年のMedicina (Kaunas) 」論文
Critical Tetramine Poisoning after Sea Snail Ingestion in a Patient on Peritoneal Dialysis: A Case Report.
Medicina (Kaunas). 2021 Jun 2;57(6):564.
doi: 10.3390/medicina57060564.PMID: 34199537
ーーーー論文1:盗用箇所① 「冒頭」ーーーー
改訂前の論文の「冒頭」部分。
以下の盗用比較図は、左が盗用論文、右が被盗用論文。
全く同じ単語群を黄色と緑色で示した。少し単語を言い換えたり、前後にずらした部分を含めると、ここに示した部分は、論旨は同じで、9割以上同じ単語群である。
============【論文2】============
盗用論文:「2024年のMol. Genet. Microbiol. Virol.」論文
- Binding Assays of Drug and Biological Molecule for Screening Drug Repositioning Candidates as Therapeutic Option against Emerging Infectious Diseases
Akiko Honda, Ken-ichiro Inoue & Hirohisa Takano
Mol. Genet. Microbiol. Virol. 39, 95–101 (2024)
https://doi.org/10.3103/S0891416824700101
連絡著者は井上健一郎で所属は静岡県立大学、高野 裕久は最後著者で所属は京都大学である。
研究助成金(論文から引用):This work was supported by the Core Research for Evolutional Science and Technology (CREST) program of the Japan Science and Technology Agency (JST), Japan (grant no. JPMJCR19H3).
研究助成金の解説:研究は2019 年度に採択された科学技術振興機構(JST)の1件の戦略的創造研究推進事業(CREST) (JPMJCR19H3)の研究費を使用した。研究代表者は論文の最後著者である高野 裕久(Hirohisa Takano)、京都大学大学院地球環境学堂・名誉教授である。使用研究費は不記載だが、戦略的創造研究推進事業(CREST)は1チーム当たり1.5~5億円で研究期間は5.5年以内とある。
ーーーー論文2:被盗用論文①ーーーー
被盗用論文:「2022年のACS Infect Dis.」論文
- Suite of TMPRSS2 Assays for Screening Drug Repurposing Candidates as Potential Treatments of COVID-19.
Shrimp JH, Janiszewski J, Chen CZ, Xu M, Wilson KM, Kales SC, Sanderson PE, Shinn P, Schneider R, Itkin Z, Guo H, Shen M, Klumpp-Thomas C, Michael SG, Zheng W, Simeonov A, Hall MD.
ACS Infect Dis. 2022 Jun 10;8(6):1191-1203. doi: 10.1021/acsinfecdis.2c00172. Epub 2022 Jun 1.
PMID: 35648838
ーーーー論文2:盗用箇所①「アブストラクト」ーーーー
論文の「アブストラクト」、前半部分。
以下の盗用比較図は、左が盗用論文、右が被盗用論文。
全く同じ単語群を黄色と緑色で示した。少し単語を言い換えたり、前後にずらした部分を含めると、ここに示した部分は、論旨は同じで、6割程度同じ単語群である。
ーーーー論文2:盗用箇所② 「序論」ーーーー
論文の「序論」、前半部分の盗用比較図。
以下の盗用比較図は、左が盗用論文、右が被盗用論文。
全く同じ単語群を黄色と緑色で示した。少し単語を言い換えたり、前後にずらした部分を含めると、ここに示した部分は、論旨は同じで、9割以上同じ単語群である。
ーーーー論文2:盗用箇所③ 「参考文献」ーーーー
論文の「参考文献」部分。
以下の盗用比較図は、左が盗用論文、右が被盗用論文。
最初の10論文が全く同じ(著者名のみ黄色で示した)。掲載した学術誌が異なるので書式スタイルが異なる。長くなるので被盗用論文の参考文献は7件の表示で止めた。
論文の序論が9割以上同じ単語群なので、井上健一郎ら著者は「参考文献」の最初の10論文を全く同じ論文にした。
============【論文3】============
盗用論文:「2013年のCurr Pharm Biotechnol.」論文
- Metallothionein as a negative regulator of pulmonary inflammation.
Inoue K, Takano H.
Curr Pharm Biotechnol. 2013;14(4):414-9.
doi: 10.2174/1389201011314040005.PMID: 23590139
連絡著者は井上健一郎である。
井上健一郎が国立環境研究所生体影響評価研究室・室長だった時の論文である。著者は2人で、2人目の著者の高野 裕久は国立環境研究所、環境健康研究領域・領域長だった。
研究助成金は論文に記載されていない。
論文「本文の最後」に開示(DISCLOSURE)があり、原文は「Some parts of this manuscript has been taken from our already published work in Volume 2009 (2009), Article ID 101659, 7 pages.」である。つまり、「原稿の一部は、自分たちの「2009年のMediators Inflamm.」論文から流用した」とある。
この場合、「一部(Some parts)」とあるのは、どの程度の量なのか? また、この開示でどの程度の流用量なら許されるのか?
ーーーー論文3:被盗用論文①ーーーー
- Metallothionein as an anti-inflammatory mediator.Mediators Inflamm. 2009;2009:101659.
doi: 10.1155/2009/101659. Epub 2009 May 11.PMID: 19436762
ーーーー論文3:盗用箇所① 「Abstract」ーーーー
以下、論文3の「Abstract」全文を示す。
盗用比較図は、左が盗用論文、右が被盗用論文。
全く同じ単語群を黄色で示した。少し単語を言い換えた部分を含めると、ここに示した部分は、論旨は同じで、9割以上(ほぼ100%)は同じ単語群である。
ーーーー論文3:盗用箇所② 「CONCLUSION」ーーーー
以下、論文3の「CONCLUSION」全文を示す。
盗用比較図は、左が盗用論文、右が被盗用論文。
全く同じ単語群を黄色で示した。少し単語を言い換えた部分を含めると、ここに示した部分は、論旨は同じで、9割以上(ほぼ100%)は同じ単語群である。
ーーーー論文3:全体のコメントーーーー
論文は以下の構成である。
Abstract・・・盗用比較図で示した
1. INTRODUCTION
2. CLASSIFICATION
3. CHARACTERISTICS AND FUNCTION UNDER PHYSIOLOGICAL CONDITIONS
4. FUNCTION OF MT UNDER PATHOPHYSIOLOGI CAL CONDITIONS IN LUNG INFLAMMATION
5.CONCLUSION・・・盗用比較図で示した
CONFLICT OF INTEREST
ACKNOWLEDGEMENTS
DISCLOSURE
REFERENCES
「Abstract」と「CONCLUSION」は盗用比較図で示したように、ほぼ全文、「2009年のMediators Inflamm.」論文と同じである。
論文主要箇所である上記「1、2、3」は、盗用比較図を示していないが、ほぼ全文、「2009年のMediators Inflamm.」論文と同じである。
論文主要箇所である上記「4」は、白楽が疲れはてて、ちゃんとは調べていない。
全体として、「Abstract」と「CONCLUSION」、つまり、「要旨」と「結論」が「2009年のMediators Inflamm.」論文のそれらとソックリ同じなら、文章だけでなく、内容も「2009年のMediators Inflamm.」論文と同じ論文となる。
なお、「開示事項(DISCLOSURE)」に、「原稿の一部(Some parts)は、自分たちの2009年のMediators Inflamm. 論文から流用した」とあるのを、どうとらえるか?
「Abstract」「1、2、3」「CONCLUSION」の流用は、量が多く、ソックリ同じである。「原稿の一部(Some parts)」を流用したレベルの話ではない。つまり、二重出版だと、白楽は思う。
また、編集スタイルの問題だが、論文の本文の最後に、開示(DISCLOSURE)で「原稿の一部(Some parts)」の流用を記載している。この位置に示すのは不適切である。
読者は、最後まで読んで初めて、「2009年のMediators Inflamm.」論文の一部(Some parts)を流用した論文だと知らされるが、実際の流用量は一部(Some parts)ではない。それでも「流用を告知していた」と弁解できるように記載したのだと思われる。
流用を最後に記載されていると、読者はダマされた気分になる。論文の最初のページに示すべきである。これは学術誌の問題なのか、編集者の問題なのか、著者の問題なのか、白楽は判断できない。
============【論文4】============
盗用論文:「2009年のMediators Inflamm.」論文
- Metallothionein as an anti-inflammatory mediator.Mediators Inflamm. 2009;2009:101659.
doi: 10.1155/2009/101659. Epub 2009 May 11.PMID: 19436762
連絡著者は井上健一郎である。
井上健一郎が国立環境研究所生体影響評価研究室・室長だった時の論文である。高野 裕久は第二著者で、国立環境研究所、環境健康研究領域・領域長だった。
研究助成金は論文に記載されていない。
ーーーー論文4:被盗用論文①ーーーー
被盗用論文:「2007年のJ Gastroenterol.」論文
- Metallothionein: an overview.World
J Gastroenterol. 2007 Feb 21;13(7):993-6.
doi: 10.3748/wjg.v13.i7.993.PMID: 17373731
ーーーー論文4:被盗用論文②ーーーー
被盗用論文:「2000年のJ Nutr.」論文
- Metallothionein expression in animals: a physiological perspective on function.J Nutr. 2000 May;130(5):1085-8.
doi: 10.1093/jn/130.5.1085.PMID: 10801901
ーーーー論文4:盗用箇所① 「2.Classification」ーーーー
論文4の「2.Classification」後半の約3分の2を示す。
盗用比較図は、左が盗用論文、右が被盗用論文①。
全く同じ単語群を黄色と緑色で示した。少し単語を言い換えたり、前後にずらした部分を含めると、ここに示した部分は、被盗用論文①の文章と約7割程度同じである。
ーーーー論文4:盗用箇所② 「3.Characteristics」ーーーー
論文4の「3.Characteristics」全文を示す。
盗用比較図は、左が盗用論文、右が被盗用論文①。
全く同じ単語群を黄色と緑色で示した。少し単語を言い換えたり、前後にずらした部分を含めると、ここに示した部分は、論旨は同じで、9割以上(ほぼ100%)同じ単語群である。
ーーーー論文4:盗用箇所③ 「4.Function under Physiological Conditions」ーーーー
論文4の「4.Function under Physiological Conditions」の前半部分。
盗用比較図は、左が盗用論文、右が被盗用論文②。
全く同じ単語群を黄色と緑色と空色で示した。離れた箇所は線で結んだ。少し単語を言い換えた部分を含めると、ここに示した部分は、論旨は同じで、9割以上(ほぼ100%)同じ単語群である。
●7.【白楽の感想】
《1》迅速に公表
今回は、「未公開」案件なので、研究不正疑惑はどこにも示されていない。盗用疑惑の公開は白楽ブログが最初である。
白楽の今までの経験だと、いくつかの大学は、研究不正行為を矮小化したり、隠蔽したり、調査結果を捻じ曲げてクロをシロと判定してきた。また、大学はネカト調査に6か月~2年の時間をかけるので、その間、不正を知らずに論文を読む・引用する、助成金を支給する、賞を授与するなどの二次被害が生じる。
それで、今回、判断を仰ぎやすくするため、また、日本の研究者・学生、助成機関、賞選考委員会などの二次被害を防ぎやすいように、盗用と思える証拠を迅速に公表した。
「パブピア(PubPeer)」で指摘し、世界での二次被害も防ぐ予定である。
《2》氷山の一角?
白楽ブログでは井上健一郎の4論文の盗用の証拠を示したが、白楽は有料の盗用検出ソフトを使用していない。
文章の類似性を調べるのには、設備、能力、時間がかかる。
白楽の能力は高いけど(冗談です)、設備は貧弱で、かなり過労気味です。それでも、なるべく早く、盗用疑惑を公表することが重要だと考え、あまり時間をかけないで、見つけた盗用個所だけを示した。
白楽ブログで示した4論文を参考に、大学の調査委員の方に「しっかり」調査していただきたい。
ただ、白楽ブログで示した4論文の盗用個所はミニマムである。この4論文の別の箇所でも盗用している可能性は高い(推定)。
また、疑惑論文は「論文1,2、3、4」の4論文だけとは思えない。
井上健一郎と高野 裕久は、16年前の論文である「2009年のMediators Inflamm.」論文で、既に盗用をしている。つまり、少なくとも16年間に渡って盗用してきた。
今回十分に調べていないが、井上健一郎の全論文を調べると、もっと多数の盗用論文が見つかると思われる。
パブメドで、[“Inoue KI”[Author] OR “Inoue K”[Author] ]AND [Takano H[Author]]と検索すると、175論文ヒットした。175論文のうち、初期の論文は別人の論文で、本ブログで問題にした井上健一郎と高野 裕久の共著論文は「2001年10月のLancet」論文以降の172論文もあると思われる。
- ネカトの法則:「ネカトはその人の研究スタイルなので、他論文でもネカトしている」。
- ネカトの法則:「強い衝撃がなければ、研究者はネカトを止めない」
日本でTurnitin(盗用検出ソフト)を最初に導入したのは2012年の早稲田大学である。 → 【早稲田大学様の事例】日本市場で初の大規模導入
なので、一般論として、その頃以前の日本の論文を調べれば、多数の盗用論文が見つかると思う。
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
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