7-91 ファイザー社のワクチン治験ネカト:3の3

2022年1月27日掲載 

白楽の意図:2020年9月、ベンタビア社社(Ventavia Research Group)の支部長・ブルック・ジャクソン(Brook Jackson)は、ファイザー社の新型コロナ・ワクチンの臨床試験でデータ改ざんがあったと米国・食品医薬品局(FDA)に電子メールで告発し、即日、解雇された。この事件を報道する記事はたくさんあるが、ジャクソンの写真が載っているのは「3の2」の記事と、今回のハリー・デ・ケットヴィル(Harry de Quetteville)の「2021年12月のTelegraph」論文だけだ。その論文を紹介しつつ、ファイザー社のワクチン治験ネカト事件をまとめた。

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.書誌情報と著者
2.日本語の予備解説
3.論文内容
4.関連動画
5.白楽の感想
6.コメント
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【注意】

学術論文ではなくウェブ記事なども、本ブログでは統一的な名称にするために、「論文」と書いている。

「論文を読んで」は、全文翻訳ではありません。ポイントのみの紹介で、白楽の色に染め直し、さらに、理解しやすいように白楽が写真・解説など加え、色々加工している。

研究者レベルの人で、元論文を引用するなら、自分で原著論文を読むべし。

●1.【書誌情報と著者】

★書誌情報

★著者

  • 単著者:ハリー・デ・ケットヴィル(Harry de Quetteville)
  • 紹介:https://rocketreach.co/harry-de-quetteville-email_32860655
  • 写真: 出典
  • ORCID iD:
  • 履歴:https://www.linkedin.com/in/harry-de-quetteville-186134105/?originalSubdomain=uk
  • 国:英国
  • 生年月日:現在の年齢:49 歳?
  • 学歴:1997年にケンブリッジ大学 (University of Cambridge)で英語学の学士号を取得
  • 分野:政治、科学、技術の調査報道
  • 論文出版時の所属・地位:2018年4月からテレフラフ社の特派員(TELEGRAPH MEDIA GROUP LIMITED、Special Correspondent)

ファイザー社のワクチン。写真出典。By Marco Verch Professional Photographer, Creative Commons 2.0 (Attribution required).

●2.【日本語の予備解説】

★以下の「3の1」と同じなので省略。

7-89 ファイザー社のワクチン治験ネカト:3の1 | 白楽の研究者倫理
7-90 ファイザー社のワクチン治験ネカト:3の2 | 白楽の研究者倫理

●3.【論文内容】

《1》レースに勝つこと 

昨年(2020年)9月16日、世界で最も重要で価値がある医薬品の1つであるファイザー社(Pfizer)の新型コロナ・ワクチンの臨床試験への信頼は、ブルック・ジャクソン(Brook Jackson、写真出典は本論文CREDIT: Dispatches)によって、確実に失った。

「その2020年9月16日は、不正が本当に確実にある、と認識した日でした」と、彼女は彼女が管理を手伝っていた臨床試験について述べた。

「それで、9月17日に、私はすぐに治験参加者の新たな登録をやめるよう伝えました」。

これは、大きな流れを変えようとする動きだった。

当時、世界の製薬会社は、まったく新しいウイルスから人類を守る方法の開発で、激しい競争していた。

いままで何十年も、ワクチン開発の完成までに何年もかかっていた。それで、人類を守る戦いの勝ち目はほとんどないように思えた。

しかし今回は、前例のない世界的なニーズのために、従来のように正確に段階を積み重ねてワクチンを開発するよりも、緊急性を優先する状況だった。

すべての大手製薬会社にとって、ここで勝利すれば、大きな富と名声が得られることは確実だった。それで、社運を賭けた競争になった。

アストラゼネカ社(AstraZeneca)は、ビジネスの原理原則を曲げて、開発したワクチンを原価で販売すると発表した。

他の製薬会社はレースに勝ち、膨大な利益を得たかった。

それから1年以上が経った本論文出版の2021年12月10日、ファイザー社の2021年の利益は、ワクチンからの収益が360億ドル(約3兆6千億円)に達すると報道されていた。

ワクチン・レースに勝つ価値は明白だった。

英国のテレビ番組「チャンネル4」が2021年12月10日(金曜日)の「ワクチン戦争:ファイザー社の真実(Vaccine Wars: Truth About Pfizer)」に出演したジャクソンは、臨床試験の管理のベテランだった。

[白楽注:この動画そのものを入手できなかった。以下が紹介部分のようだ(英語:3分54秒)]
The Truth About Pfizer | Facebook

《2》直ぐに、異常に気づいた 

臨床試験の管理に20年間携わったジャクソンは、昨年(2020年)、ベンタビア社(Ventavia)の地域マネージャーに応募した。ベンタビア社は、ワクチン候補の最終段階の重要な臨床試験を実施する契約をファイザー社と結んでいた。

ライバル社であるアストラゼネカ社は、ウイルスベクター(viral vector)法を使ってワクチンを作成していた。この作成法は、しっかりした基盤を持つ確実なワクチン作成法である。

しかし、ファイザー社のワクチンは新しいmRNA技術を使用した。

ベンタビア社は、ファイザー社のワクチン臨床試験用に米国のテキサス州で3つのサイトを運営し、1,000人以上の臨床試験参加者が集まっていた。

ジャクソンは、ベンタビア社で仕事を始めて直ぐに、異常に気がついた。

彼女が関わった2つの臨床試験サイトの忙しさは「異常」だった。人員不足も「異常」だった。

ベンタビア社の臨床試験サイトでは、現場に医師がいなかった。医学的に訓練されたスタッフもいなかった。臨床試験参加候補者の資格があることを確認、登録するのに、医師も登録看護師(registered nurse)もいなかったのだ。

その状況では、「治験参加者の安全と治験データの公正を維持するのは不可能です」と彼女は言った。

インフォームドコンセント同意書には署名がなかった。その同意書は、後で見ると、署名されていた。

ヘンだなと思ってよく見ると、同じ治験参加者の他の文書への署名とは「全く異なっていました。それで、すぐに私は治験参加者の署名を、スタッフが、ねつ造したと思いました」。

「ベンタビア社内の電子メール通信でも臨床試験データがズサンだと注意されていました」。

最大の問題の1つは、「盲検」化できていないで臨床試験が行なわれていたことだ。

偏見を防ぐために、誰にワクチンを投与し、誰にプラセボを投与したのかをスタッフと治験参加者には知らせないのが「盲検」である。

ところが、ベンタビア社の臨床試験では、誰にワクチンを投与し、誰にプラセボを投与するのかを示す文書が印刷され、「すべての参加者のチャート」に入れられていた。「盲検」化できていなかった。

彼女はまた、他の複数の問題も指摘した。たとえば、「ワクチンの保管温度が適切に維持されていなかった」。この問題は、臨床試験が一時停止されるレベルの問題である。

また、「複数の重篤な有害事象が起きたのに治療されていなかった」報告もあり、治験参加者の生命が危険にさらされていた。

「この治験参加者を緊急治療室に送る必要があったのに、送りもしないし、治療もしなかった。治験参加者の状態を把握するために電話すらしなかった」。

記者が、「これらはデータ公正(改ざん)と関係しますか? 最も重要なのはデータ公正(改ざん)ですよね? つまり、それはワクチンの安全性・有効性の解釈に影響しますか?」と質問した。

ジャクソンは、「答えはイエスです」と返事した。

《3》告発 

ファイザー社はジャクソンの指摘に強く異議を唱えた。

2020年のテキサス州の臨床試験サイトについての問題指摘を受け、ファイザー社は「徹底的な調査を実施し、必要に応じて改善、および改善するための措置を講じた」と述べた。

調査した結果、「データを無効にしたり、研究公正を危うくするような問題や懸念はなかった」とも付け加えた。

ファイザー社の主張を言い換えると、ワクチンは安全で効果的であり続けた。

ファイザー社はまた、米国の規制当局である食品医薬品局(FDA)に独自に警告したとも述べている。

それにもかかわらず、ジャクソンは、異常な事態が繰り返され、彼女が数十年の臨床試験管理キャリアの中でこれまで経験したことのない「混乱の百貨店」だったと指摘している。

2020年9月16日、ジャクソンは、これらすべてを総合的に判断して臨床試験の一時停止の要請を決断した。

翌朝、彼女は臨床試験を一時停止することをベンタビア社に勧めた。

驚いたことに、ベンタビア社は同意した。

2020年9月25日の朝、ベンタビア社の対応に懸念を感じ、ジャクソン自身が食品医薬品局(FDA)に通報した。

その日の午後、彼女は解雇された。

そして、その後「すぐに」、ベンタビア社は治験参加者の登録が再び始めた。

4日後、ジャクソンは、食品医薬品局(FDA)の調査員から電話を受け取った。調査員は「指摘された問題は解決されるでしょう。ベンタビア社が不適切なままなら、閉鎖もあり得ます」と述べた。

しかし、ベンタビア社は閉鎖されなかった。

また、ベンタビア社は、ジャクソンが指摘した問題は「調査した結果、根拠がない指摘でした。研究のコンプライアンス、データ公正(改ざん)、治験参加者の安全を、我が社は真剣に受け止めており、ワクチン開発を支援しています」と述べた。

《4》勝つために手抜き 

ジャクソンはファイザー社を含む製薬企業がワクチンを作成し、世界中の人々の命を救ってきたことに異議を唱えていない。

彼女と彼女の子供たちもワクチンを接種している。

彼女は、ワクチンレースに勝つために安全性のプロセスが手抜きされたこと、そして、研究公正違犯があったたことを問題にしているのだ。

「ベンタビア社が「異常」なスピードで、しかも、検査能力を「異常」に超えて、臨床試験を実施したことがすべての問題の原因であったと確信しています」。

そして、誰がその「異常なスピード」を要求したのか?

ジャクソンの意見は、「それはファイザー社でした。ファイザー社は新型コロナ・ワクチン開発に「最初に成功した会社」という栄誉獲得を目指していました。彼らは、できるだけ多くの臨床試験参加者をできるだけ早く登録するように、ベンタビア社に多大な圧力をかけていたのです」。

ベンタビア社での電子メール、文書、会議の口調は「大至急、急いで、大急ぎで」、などで、彼らは常に「大至急でした」とジャクソンは述べた。

「ファイザー社は臨床試験データに欠陥があり、血液検体が適切に採取、準備、出荷されていないことを知っていたにもかかわらず、ファイザー社はベンタビア社との契約を続けたのは、問題でした」。

《5》ファイザー社が優勝 

ベンタビア社が実施したテキサスの臨床試験は、ファイザー社が世界中で実施した150を超えるサイトのうちの3つにすぎなかった。

150を超えるサイト合計で臨床試験参加者は40,000人を超えていた。

2020年11月9日、ファイザー社は臨床試験の結果、ワクチンは新型コロナ感染の予防に90%効果があり、この数値は予想をはるかに上回っていたと発表した。

それ以降、ファイザー社製ワクチンがゴールドスタンダードと見なされるようになった。

それから1年1か月後の2021年12月8日、ファイザー社製ワクチンはオミクロン株に対しても有効だと発表した。 → 2021年12月8日記事:Three doses of Pfizer vaccine ‘effective’ against omicron Covid variant

物の価値は支払うカネで決まる、という見方では、ワクチンの価値はワクチンの値段できまる。

英国では、1回のワクチン投与あたり、アストラゼネカ社製のワクチンは3ポンド(約470円)で、ファイザー社製ワクチンはその7倍の22ポンド(約3,400円)の費用がかかる。

アストラゼネカ社は英国ケンブリッジに本社を置く製薬会社だが、英国政府はブースタープログラムをアストラゼネカ社製ではなく、ファイザー社製ワクチンに頼ることにした。

一方、アストラゼネカ社製ワクチンは、米国の規制当局への書類提出でヘマってから6か月が経過したが、依然として米国の食品医薬品局(FDA)の承認を得られていない。

結局、ファイザー社がワクチンレースで優勝したのである。

●4.【関連動画】

関連情報はとても多い。ここでは、YouTube動画のいくつかを以下に示す。

中には、296万回視聴・チャンネル登録者数 471万人の動画もある。

以下に示すように、英語、中国語、イタリア語のYouTube動画はあったが、日本語のYouTube動画は見当たらなかった。

【動画1】 8600回視聴
インタビュー動画:「Researcher blows whistle on Pfizer data integrity || Paul Thacker – YouTube」(英語)23分07秒。
Alison Morrowが2021/11/04 に公開

【動画2】 5600回視聴
インタビュー動画:「Brook Jackson Interview – Pfizer Whistleblower Exposes Cover Up Calling Vaccine Data Into Question – YouTube」(英語)1時間8分40秒。
MI Painted Skiesが2021/12/03 に公開

【動画3】 208万回視聴 チャンネル登録者数 209万人
説明動画:「Vaccine trial whistle blower – YouTube」(英語)21分47秒。
Dr. John Campbellが2021/11/07 に公開

【動画4】 296万回視聴 チャンネル登録者数 471万人
説明動画:「”A CRAZY MESS”!! Pfizer Whistleblower SLAMS Vaccine Trials – YouTube」(英語)11分58秒。
Russell Brandが2021/11/24 に公開

【動画5】 11万回視聴
説明動画:「Whistleblower Indicates Unclean Data in Pfizer Vaccine Trials – YouTube」(英語)38分54秒。
Drbeen Medical Lecturesが2021/11/09 に公開

【動画6】 1000回視聴
説明動画:「輝瑞涉偽造數據 醫學雜誌揭最大疫苗騙局。輝瑞公司在其疫苗測試過程中,存在嚴重的數據造假,並揭出輝瑞僱用不合格疫苗接種員等嚴重問題,並且對關鍵的第三階段試驗中的不良事件反應緩慢。 | #新唐人新聞 – YouTube」(中国語)51秒。
Drbeen Medical Lecturesが2021/11/06 に公開

【動画7】 12万回視聴
説明動画:「SPUNTANO RETROSCENA SCOTTANTI SULLO SCANDALO PFIZER ▷ “SUBITO LICENZIATO CHI HA LANCIATO L’ ALLARME” – YouTube」(イタリア語)10分3秒。
Radio Radio TV チャンネル登録者数 38.1万が2021/11/05 に公開

●5.【白楽の感想】

《1》ファイザー社が優勝 

新型コロナ・ワクチン競争ではファイザー社が優勝した。

しかし、もし、副作用が実はたくさんあった、とか、ワクチン接種2年後から副作用がでてきた、だと、世界の数十億人が接種しているので、ファイザー社は最下位どころか、倒産する。

まさかとは思うが、以下の主張をする人もいる。

新型コロナのワクチンを繰り返し接種すると、病気全般を撃退するためにヒトが生来持っている自然免疫が破壊されて免疫不全の状態に近くなる。かえってコロナに感染しやすくなり、コロナ以外の色々な病気にもかかりすくなる。最悪の場合、エイズ(AIDS、免疫不全症候群)のような症状を引き起こしやすくなる。そういった指摘が世界のいくつかの研究筋から出てきている。(2022年1月10日   田中 宇:生来の自然免疫を壊すコロナワクチン

この「まさか」を2021年12月23日のニューヨークタイムズ紙が報道している。つまり、「一部の科学者は、ショットが多すぎると、免疫系の疲労を引き起こされ、コロナウイルスと戦う身体の能力を損なう可能性がある」と。 → Israel May Give 4th Dose of Covid Shot, Despite Experts’ Doubts – The New York Times

もし、今後、ワクチンのマイナス面が強く出てくると、ファイザー社は天国から地獄、大富豪から大貧民、になる。「製薬企業万事塞翁がワクチン」で、スゴイことになる。

話しが世界から身近になるが、こんな状況の2022年1月15日、白楽に、3回目接種のお知らせが来た。接種ワクチンはファイザー社製である。なお、1~2回目もファイザー社製だった。

《2》一難去ってまた一難 

2022年1月18日、本ブログの緊急事態があった。1週間かけてそれをようやく処理したのが1月25日だった。

そして、本記事を準備をしたのだが、2022年1月26日本日も、サーバー会社から別種のクレームが来た。

それでも、ここ約10日間に、「ファイザー社のワクチン治験ネカト」論文を3本公開した。

立役者のブルック・ジャクソン(Brook Jackson)に敬意を表して、もう一度、写真を示す(以下の写真の出典は「3の2」)。

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日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。日本は、40年後に現人口の22%が減少し、今後、飛躍的な経済の発展はない。科学技術と教育を基幹にした堅実・健全で成熟した人間社会をめざすべきだ。科学技術と教育の基本は信頼である。信頼の条件は公正・誠実(integrity)である。人はズルをする。人は過ちを犯す。人は間違える。その前提で、公正・誠実(integrity)を高め維持すべきだ。
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。

●6.【コメント】

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