2024年ネカト世界ランキング

2025年1月1日掲載 

ワンポイント:2024年に世界中(含・日本)で起こったネカト関連事件から、特に重要な事件を選んだ(選者が)。ネカトだけでなく、学術界・健康科学界の重要な事件も含まれている。日本の亀田 直弘(かめた なおひろ)事件が「撤回監視」の第3位にランクされた。

  • 分野を記載していないのは生命科学。
  • カタカナ名の赤字は本ブログで解説済み。
  • いくつかの事件は近日中に本ブログの記事にする。
  • 本記事は、更新日を示さずに上書きする。

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★1.「撤回監視(Retraction Watch)」の「2024年の撤回監視トップ10物語」:2024年12月26日

出典:Retraction Watch: “The top 10 stories at Retraction Watch in 2024保存版

特徴として、米国での事件が多い。また、当局がネカトと結論した記事が多い。学術誌や学術出版業界の問題点を指摘する記事もそれなりにある。

白楽は10件の事件の内、ランキング発表前に 3件しか解説していなかった(〇印)。1件は日本の事件なので免責とすると、打率3.33。〇印なしは、ランキング発表後に解説する予定。

  1. 「博士号剥奪」:心理学:ピン・ドン(Ping Dong)(カナダ) | 白楽の研究者倫理 2024年8月5日掲載
  2. リチャード・エッカート(Richard Eckert)(米) | 白楽の研究者倫理 2024年11月5日掲載
  3. 亀田 直弘(かめた なおひろ)(日本
    産業技術総合研究所の上級主任研究員が、2005~2022年の42論文でネカト → Retractions begin for chemist found to have faked data in 42 papers – Retraction Watch
  4. 財政学:クンバ・ディグドウィセソ(Kumba Digdowiseiso)(インドネシア)
  5. 17学術誌のインパクトファクター剥奪
  6. デボラ・ケリー(Deborah Kelly)(米)
  7. 芸術デザイン学:ネリ・オックスマン(Neri Oxman)(米) | 白楽の研究者倫理 2024年4月10日掲載 
  8. 論文売買:フィリッポ・ベルト(Filippo Berto)(ノルウェー)
  9. 学術誌 「MDPI」
  10.  Abbas Mardaniらの「引用/査読カルテル」?

上記以外の「いくつかの重要な成果」を以下に示した。 → 2024年12月26日記事:A look back at 2024 at Retraction Watch, and forward to 2025 – Retraction Watch

「Science」誌と共同で4件の調査記事を出版

  1. インドのサヴィータ歯科大学・学部生の集団引用不正 → 2023 年 6 月 7 日記事:Did a ‘nasty’ publishing scheme help an Indian dental school win high rankings? | Science | AAAS
  2. 著者在順売買 → 2024 年 5 月 3 日記事:Questionable firms tempt young doctors with ‘easy’ publications | Science | AAAS 
  3. 編集者への贈賄 → 2024 年 1 月 18 日記事:Paper mills are bribing editors at scholarly journals, Science investigation finds | Science | AAAS
     → 7-149 学術誌・編集者は不正のグル | 白楽の研究者倫理 2024年6月10日掲載
  4. 編集者への手紙と解説原稿 → 2024 年 12 月 17 日記事:Shoddy commentaries—a quick and dirty route to higher impact numbers—are on the rise | Science | AAAS 

大きなインパクトを与えた記事

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★2.「より良い科学のために(For Better Science)」で2024年に最も読まれた上位10記事:2024年12月27日

出典:Schneider Shorts 27.12.2024 – Happy New Year (with MDPI)! – For Better Science

ランクした人は「より良い科学のために(For Better Science)」ブログ執筆者でネカトハンターのレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)(ドイツ)。フリーランス。細胞生物学者、ジャーナリスト。2007年に研究博士号(PhD):細胞生物学。写真出典

「より良い科学のために(For Better Science)」ブログの上位10記事で、特徴として、欧州での事件が多い。また、当局のネカト判定より前にネカト行為を指摘する記事が多い。

白楽は10件の事件の内、ランキング発表前に2件しか解説していなかった(〇印)。打率2割。「10」は昨年もランク入りしていた。
〇印なしは、ランキング発表後に解説する予定。

  1. ローリー・グリムシャー(Laurie Glimcher)(米) | 白楽の研究者倫理 2024年9月15日掲載 → 2024年1月2日、ネカトハンターのショルト・デイヴィッド(Sholto David)が、グリムシャーを含め、ダナ・ファーバー癌研究所・上層部の4人のデータねつ造・改ざんを「For Better Science」記事で指摘した。
  2. シモーネ・フルダ(Simone Fulda)(ドイツ)
  3. サム・ユン(Sam Yoon)(米)
  4. ダミアン・ウェバー(Damien Weber)(スイス)
  5. ベルント・ミュラー=ローバー(Bernd Müller-Röber)(ドイツ)
  6. グジェゴシュ・クロルチク(Grzegorz Krolczyk)(ポーランド)
  7. ハリ・シャンカール・シャルマ(Hari Shanker Sharma)(スウェーデン)
  8. ムハンマド・ビラル(Muhammad Bilal)(ポーランド)
  9. 物理学:ミハイル・エレメツ(Mikhail Eremets)(ドイツ)
  10. 〇化学:サビーネ・スズネリッツ(Sabine Szunerits)、ラバ・ブケルブ(Rabah Boukherroub)(フランス) | 白楽の研究者倫理 2024年2月25日掲載

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★3.RealClearScience誌の「2024年の最大ガラクタ科学」:2024年12月17日

出典:The Biggest Junk Science of 2024 | RealClearScience保存版

ランクした人はロス・ポメロイ(Ross Pomeroy)。ポメロイは動物学者、生物保護学者でブログ「RealClearScience」のライター。学歴・職歴はよくわからない。
→ Ross Pomeroy – Big Think

8件の最大ガラクタ科学。白楽は8件の事件の内、ランキング発表前に 0件しか解説していなかった。打率0割。

研究者のネカトというより、世間の関心を引くエセ科学なので、白楽ブログでは、記事としては解説しなかったし、今後も解説しない。デタラメ度はかなり高く、よく報道したなあ~という印象。そういう点では面白い。

今年は、第2位だけ紹介する。写真出典は同記事。

第2位:ロバート・F・ケネディ・ジュニアが健康福祉分野にエセ科学を持ち込むかもしれない(米)

現在、ドナルド・トランプ次期大統領はロバート・F・ケネディ・ジュニア(Robert F. Kennedy, Jr)を健康福祉省の長官(Health and Human Services Secretary)に指名し、健康福祉分野の責任者に据える可能性がある。米国の生命科学研究費の大半は健康福祉省傘下のNIHが助成しているので、そうなれば、彼のエセ科学的思い込みが生命科学研究の政策や規制に制度化される可能性がある

ケネディ・ジュニアには奇妙な思い込みがたくさんある。例えば、彼は、ワクチンを自閉症などと誤って結び付けている。HIVはエイズの原因ではないという考えている。

ワクチンが免除され、加熱殺菌処理をしていない搾ったままの生乳が入手しやすくなり、飲料水からフッ化物が除去される可能性がある

トランプ政権1期目に食品医薬品局の長官を務めたスコット・ゴットリーブ(Scott Gottlieb)は、ケネディ・ジュニアの長官就任に警鐘を鳴らしている

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★4.サイメックス(Scimex):「オーストラリア科学メディアセンターが選んだ2024年の上位10大科学話」:2024年11月29日

出典:The AusSMC’s Top 10 Science Stories 2024

記者はジョセフ・ミルトン(Joseph Milton)。ミルトンは英国のセント・アンドルーズ大学(University of St Andrews)で進化生物学と環境生物学の博士号を2008年に取得し、2010年、科学ジャーナリズムの修士号を取得した。2012 年 7 月にオーストラリア科学メディアセンターの上級メディア担当官に就任した。→ Staff – AusSMC、経歴と顔写真出典

上位10位とあるが、ランキングではない。

白楽は10件の事件の内、ランキング発表前に 0件しか解説していなかった。打率0割。

真面目な科学、面白い科学、注目を浴びた科学、の話題だけで、ネカト・クログレイ絡みは1件もなかった。とはいえ、オーストラリアの科学の話題が把握できて面白い。

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★5.ライブサイエンス(Live Science):「2024 年に最も物議を醸した 8 つの科学物語」:2024年12月28日

出典:The 8 most controversial science stories of 2024 | Live Science

記者はサシャ・パレ(Sascha Pare)。パレは英国のサウサンプトン大学 (University of Southampton)で生物学の学士号を2021年に取得し、2022年9月、インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)で科学ジャーナリズムの修士号を取得した。2023年2月にLive Scienceの研修生スタッフライター(Trainee Staff Writer)に就任した。→ 経歴と顔写真出典

ランキングではない。

8件あるが、3件のみ示した。

白楽は8件の事件の内、ランキング発表前に 0件しか解説していなかった。打率0割。

研究ネカトというには微妙で、論争になった科学の話題である。

  1. ピラミッドの建設の仕組み(フランス)
    約 4,500 年前に建造されたエジプトのジョセル王の階段ピラミッドは、油圧リフトが使用された可能性があることが判明したとフランスの研究者が発表。仮説は証明されていないし、否定的な研究者もいる。 → 2024年8月5日論文:On the possible use of hydraulic force to assist with building the step pyramid of saqqara | PLOS ONE
  2. ブラックホールの画像(日本)
    地球から2万6000光年離れたブラックホールの史上初の画像が、2017年にイベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)で撮影され、2022年に公開された。国立天文台の三好 真(みよし まこと)が「リング画像はEHTの画像解析中のエラーから生じたもの」と発表した。 → First picture of Milky Way black hole ‘may not be accurate’ | The Royal Astronomical Society、2024年5月1日論文:independent hybrid imaging of Sgr A* from the data in EHT 2017 observations | Monthly Notices of the Royal Astronomical Society | Oxford Academic
  3. 地球温暖化の進行はもっと早い(オーストラリア)
    2024年2月5日論文:300 years of sclerosponge thermometry shows global warming has exceeded 1.5 °C | Nature Climate Change

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日本の人口は、移民を受け入れなければ、試算では、2100年に現在の7~8割減の3000万人になるとの話だ。国・社会を動かす人間も7~8割減る。現状の日本は、科学技術が衰退し、かつ人間の質が劣化している。スポーツ、観光、娯楽を過度に追及する日本の現状は衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今、科学技術と教育を基幹にし、人口減少に見合う堅実・健全で成熟した良質の人間社会を再構築するよう転換すべきだ。公正・誠実(integrity)・透明・説明責任も徹底する。そういう人物を昇進させ、社会のリーダーに据える。また、人類福祉の観点から、人口過多の発展途上国から、適度な人数の移民を受け入れる。
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★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。