5C 名古屋大学・博士論文の盗用疑惑事件:② 隠蔽工作?

2021年3月12日掲載 

ワンポイント:名古屋大学・博士論文の盗用疑惑事件は、2020年5月に発覚以来、いろいろなことが起こっています。今回は、2020年11月~2021年3月、名古屋大学が隠蔽工作しているかもしれない事実を中心にお伝えします。なお、この記事で、特定の個人を攻撃する意図はありません。研究者は研究倫理を尊重し、ネカト不正をしない、そして、大学はネカト対処標準を順守し、ネカト告発に透明で誠実に対処する。これらのことで、日本の研究公正が改善され、高い状態で維持されることを願う。

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名古屋大学・博士論文の盗用疑惑事件シリーズ
 ① 驚愕の判定(2020年8月17日掲載、2021年5月3日改訂) ←<新展開>
 ② 隠蔽工作?(2021年3月12日掲載)
 ③ 疑惑の証明(2021年3月26日掲載) 
 ④ その後(予定)

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目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.初めての人向けの説明
2.名古屋大学・監査室
3.名古屋大学・教育発達科学研究科長からのメール
4.名古屋大学・公正研究委員会へ申立て
5.名古屋大学総長へ申立て
6.文部科学省と北海道科学大学
7.名古屋大学の2重の研究不正
8.白楽の感想
9.コメント
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●1.【初めての人向けの説明】

この1章は、事件をご存知の方は飛ばしてお進みください。

名古屋大学・博士論文の盗用疑惑事件の事実を世間に知ってもらうシリーズ記事を書いています。

発端から詳しく知りたい方は、まず、「シリーズ① 驚愕の判定」をお読みください。

本記事の白楽が執筆した部分は、引用・出典記載なく流用してかまいません。

以下敬称略(但し、資料等中の敬称はそのまま)。
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2020年8月17日の「シリーズ① 驚愕の判定」で既に以下のことを公表した。

具体的に書かないと正確な事実が伝わらない。特に盗用事件では、盗用論文、盗用疑惑者、被盗用者を書かないとまるでわからない。それで、具体的に書いた。これは、公共の利害に関する事実を伝え、論文「盗用」の理解を深めるためで、専ら公益目的で示した結果である。関係者の名誉を傷つける意図はない。また、読者の皆様にも、個人を誹謗中傷しないようお願いする。

2020年春、後藤惠子(ごとう けいこ、東京理科大学・客員教授)は、自分が第一著者の共著論文の「自分が書いた部分の文章」が、野呂瀬崇彦(のろせ たかひこ、北海道科学大学・准教授)の名古屋大学・博士論文に盗用されたと思った。

野呂瀬崇彦の博士論文:『薬学教育における模擬患者参加型実習で薬学生は「何を」「どう」学ぶのか』(保存版PDF):2020年2月28日、学位授与:博士(教育)(「論文審査の結果の要旨および担当者」)

今回、後藤惠子は次のように経過を述べた。

野呂瀬氏並びに指導教員に自浄作用を期待し、メールで博士論文の盗用を指摘しました。その後、野呂瀬氏からは後藤の質問に対する返答メールが、指導教員からは経緯についての問い合わせがありました。当然、自ら博士論文を取り下げると期待し、彼らの対応をしばらく待ちました。

ところが、突然、名古屋大学・教育発達科学研究科長から「博士論文について、執筆者本人から、指導教員を通じて研究不正をした可能性があるとの連絡を受けた。調査が開始されるよう上申し、リポジトリの公開はこの手続きを待たずに早急に停止できるようにする」とのメールを受けとりました(文章を少し整えたが、内容は変えていない)。

*その後の公正研究委員会からの通知書では、「連絡を受けた」が「訴えがあるとの報告があった」に変わっていました。

後藤惠子は資料を提供する用意があり、調査に協力すると伝えたが、名古屋大学・公正研究委員会は、後藤惠子に資料の提出を一切求めなかった。疑惑状況の聞き取り調査も一切なかった。

ところが、2020年8月6日、名古屋大学・公正研究委員会は調査の結果、「盗用には該当せず、不正行為の存在は認められない」という2020年8月4日付けの判定結果を、後藤惠子に伝えてきた。
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●2.【名古屋大学・監査室】

2020年11月2日、後藤惠子は次のように対応した。

2020年11月2日、名古屋大学の監査室に、「令和2年8月4日の公正研究委員会の判定」(名大研企第8号)は公正研究委員会が誠実・公正・十分に調査した結果ではない疑惑があると、通報いたしました。

2020年12月10日付けの以下の文書を、後藤惠子は受け取った。

到底納得できず、「執筆者への指導方法及び論文審査の過程において確認された問題点を具体的に開示するよう」要求いたしました。しかし、返答はありませんでした。

名古屋大学・監査室は、上記の2020年12月10日付けの文書で、名古屋大学・教育発達科学研究科から、「執筆者への指導方法に問題があった」こと、また、「論文審査の過程に問題があった」ことの報告を受けた、と書いている(なお、「 」は、わかりやすいように、元の文章を白楽が整えた)。

つまり、教育発達科学研究科は、博士論文そのもの、及び、博士論文審査過程に問題があったと認識している。ただ、後藤惠子がその内容の開示を要求したのに、誠実に対応せず、無視していた。

●3.【名古屋大学・教育発達科学研究科長からのメール】

繰り返すが、2020年11月に名古屋大学・監査室から指摘され、名古屋大学・教育発達科学研究科・科長は、「執筆者への指導方法に問題があった」こと、また、「論文審査の過程に問題があった」ことを報告した。

後藤惠子は、「この回答に到底納得できず、問題点を具体的に開示するよう」要求した。推測だが、その要求が、監査室から名古屋大学・教育発達科学研究科・科長に伝えられたと思われる。

以下は、後藤惠子の記述。

2021年2月1日、突然、名古屋大学・教育発達科学研究科長からメール(以下)が届きました。多くの疑問が残り、かつ、深く失望した内容でした。

後藤惠子は「疑問と深い失望」を次のように述べている。

上記メールの内容について

1)未だに、申立者=盗用者のみの不公正な証拠証言だけで、2020年8月4日の間違った判定のままである。

2)研究上の特定不正行為である「盗用」には一切触れず、「不適切な引用」としたままである。

3)博士論文審査委員会と関与した研究科の先生方が、野呂瀬氏の博士論文盗用と論文審査での失態を組織ぐるみで隠蔽しようとしている。

4)著作権は学会にあり学会から訴えられていないので侵害に当たらないとする盗用者の主張だが、著作権は文章を執筆した著作者に留保されているのではないか。

著作権法違反なので審査した野呂瀬氏の博士論文を取り下げ、盗用箇所を削除し、再登録(非公開もあり)で、盗用なしとする不正に上塗りはありなのでしょうか? 論文を一旦取り下げても、学位はそのままはありなのでしょうか? 学位授与論文と異なる論文でも学位は成立するものなのでしょうか?

野呂瀬氏はメールで「主査、指導団の先生がたに、使用承諾をすでに当方(後藤惠子)に出しことを相談したが、主査、指導団の先生がたも了解の上で」、博士論文審査が進められた、などと書いている。この部分、引っかかります。

野呂瀬氏の盗用は大きな問題ですが、主査、指導団の先生がたは、その懸念を十分調査せず、博士論文審査を進めたと思える。「盗用」を指摘され、今になって、論文審査過程に問題があったことを隠蔽しようと、組織ぐるみで防衛しているように思えます。

★不可解の連続

教育発達科学研究科長のメールを読んで、白楽は、不思議な感覚にとらわれた。

メールでは、本学(つまり、名古屋大学)・公正研究委員会から、「共著論文の使用においては、適正な引用の範囲を超えており、また共同執筆者全員からの明確な使用許諾を得ていなかった」ことの指摘を受けました。

とある。

アレッと思うのは、名古屋大学・公正研究委員会が、「適正な引用の範囲を超えている」と指摘している点だ。つまり、著作権法違反と指摘をしている。以下、著作権法 第三十二条(下線は白楽)。

著作権法 第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。(著作権法

また、「共同執筆者全員からの明確な使用許諾を得ていなかった」問題も指摘している。これも、アレッと思った。

というのは、後藤惠子が野呂瀬崇彦を含め共同執筆者全員から使用許諾を得ていた。野呂瀬崇彦も使用許諾をしているので、野呂瀬崇彦自身が使用許諾を得られるハズがない。そのことを本人は知っている。

野呂瀬崇彦は使用許諾を得られないので、名古屋大学・博士論文・審査員の先生方に、「使用許諾を得ていないけど良いのでしょうか」と打診した(白楽の推測)。

そして、名古屋大学・博士論文・審査員の先生方は野呂瀬崇彦が使用許諾を得ていないことを承知で」(白楽の推測)、博士論文の審査を進め、合格と判定したようだ。

これが、名古屋大学・教育発達科学研究科が認めている「論文審査の過程に問題があった」内容の1部なのだ、と白楽は推測した。

そして、次のくだりは、アレッ、アレッ、アレッと思った。

審査委員会からは、問題となっている章の論述内容は、論文全体の補遺に相当するものであり、当該博士論文から問題の章を除いたとしても、本論文の学術的な質に影響を与えるものではなく、学位論文として成立する旨の審議結果の報告がありました。本研究科では、この報告を審議し、意見交換の後、修正後の論文を総長に提出、報告する旨、承認いたしました。現在、修正論文の取扱と機関リポジトリへの掲載他について、準備中であります。

ここで「問題となっている章」とあるのは5章のことで、5章が問題であることを認めている。

5章が問題であることを認めた上で、問題そのものに向き合わず、あたかも問題が無かったかのように対処する(少なくとも、記録として残る機関リポジトリでは問題が無かったかのようにする)方策を練っている。

その方策として、問題の5章を削除した論文を提出し問題視された博士論文と置き換える(とは書いてないが、そう理解できる)ことを研究科として承認している。

こうなると、研究科が問題に真摯に向き合わず、隠蔽工作をしているように思えてくる。

学術論文の公正倫理の標準は、論文の大きな変更は「訂正」ではなく「撤回」である。5章を削除するなら、博士論文は撤回である。その上、新たに提出した博士論文で論文審査をするのが手順だろう。

また、研究科は論点をすり替えている。つまり、「盗用」部分を削除した博士論文に変えて、「盗用がなかった」ことにしよう、とは言っていないが、そういう意図を感じる。

「盗んだものを返しても」=「盗んでなかった」ことにはならない。博士論文に「盗用」があったなら、新しい博士論文を提出しても、盗用がなかったことにはならない。

★リポジトリから削除された

2021年3月11日に確認すると、野呂瀬崇彦の『薬学教育における模擬患者参加型実習で薬学生は「何を」「どう」学ぶのか』(保存版PDF)は、名古屋大学・教育発達科学研究科の博士論文(教育博・論教育博)リポジトリから削除されていた。

2020年8月時点で以下の記載があった。2021年3月11日にはない。

野呂瀬崇彦の博士論文(教育博・論教育博)は上記のように「(2020-02-28) , 13901甲第12967号」で、以下の2つの間にリストされていた。それが、削除されていた。 → 名古屋大学・教育発達科学研究科の博士論文(教育博・論教育博)リポジトリ(2021年3月11日保存版

2021年3月11日、「名古屋大学学術機関リポジトリ」で「野呂瀬崇彦」を検索すると、「一致する情報は見つかりませんでした」とでた。
 → 検索結果(2021年3月11日保存版

同じ2021年3月11日、名古屋大学とは別に、日本全部の博士論文を検索できるサイトがある。その「日本の博士論文をさがす – 国立情報学研究所」で「野呂瀬崇彦」を検索すると、以下に示すように野呂瀬崇彦の博士論文はヒットした(2021年3月11日保存版)。但し、論文の閲覧は・・・、です。

●4.【名古屋大学・公正研究委員会へ申立て】

2021年2月9日、後藤惠子は名古屋大学・公正研究委員会に申立てを行なった。

申立書は全部で59ページと大部である。以下、資料部分を除いた最初の3ページを示す。

2021年2月26日付けの以下の返事が後藤惠子に届いた(受領は2021年3月3日)。

以下のように、「2020年8月6日通知の事案と同じ申立内容で、既に学内調査が終了している。今回の申立ては受けとらない」との回答だった。注:8月6日通知は8月4日の間違い。

後藤惠子は次のように述べている。

1)前回通知した「事案と同じ申立内容」とあるが、前回当方は申立者でも調査対象者でもなく、証拠や証言を求められていない。

一方的に通知してきて、盗用に該当しないとしたが、今般正当な証拠証言を元に申立者となったのであり、事案が同じとして、その証拠証言は前回求められなかった。被盗用者からの証拠証言は、真反対である盗用者のものと内容が同じであるはずはない。何を指して「同じ申立内容」と言えるのか。

2)「本学での調査が終了していること」とあるが、前回は、当方を一切調査してない。どのような調査かも不明であった。今回初めて被盗用者からの証拠証言を提示したにも関わらず、終了しているので調査をしないで済まされるはずもない。

名古屋大学不正行為に関する取り扱い規定、第12条 受理後速やかに調査を実施するものとする、とあり、前回の調査に不公正があり申立てをしたのであって、調査をしないのは、規定違反である。

3)「お受けいたしかねる」とあるが、取り扱い規定、第9条 不正行為があると思料する者は、何人も申立てができるとある。違った内容で初めて申立てをするのに、終わったから受け付けないは規定違反である。

●5.【名古屋大学総長へ申立て】

後藤惠子は名古屋大学・公正研究委員会が「今回の申立ては受けとらない」と回答してきたこと納得できなかった。それで、「名古屋大学の研究上の不正行為に関する取扱規程」を読み、次のように思った(黄色は原文のママ)。

名古屋大学の研究上の不正行為に関する取扱規程から

第2条 二 不正行為定義 ハ 盗用 に該当

第3条 総長は、公正研究委員会を置くとあり、責任は総長にある

第9条 不正行為の疑いがあると思料する者は、何人も、窓口を通じ、申立てを行うことができるとあり、申立てを受けないとする判定は、間違い。盗用者の申立ては受け、被害者の被盗用者の申立てを受けない合理性はない。

第11条 総長は、第9条の窓口への申立ての有無にかかわらず、相当の信頼性のある情報に基づき不正行為があると疑われる場合は、当該行為に係る調査の開始を研究倫理推進総括責任者に命ずることができる、とあり、前回の判定に疑義があるので、今般、被盗用者が初めて申立てを行った。

2021年3月10日、後藤惠子は名古屋大学・公正研究委員会が「今回の申立ては受けない」という通知は「名古屋大学の研究上の不正行為に関する取扱規程に違反していると、名古屋大学総長に「異議申立書」を提出した(以下)。

●6.【文部科学省と北海道科学大学】

後藤惠子は「思い悩んだ末」、上記と類似の資料を添付し、以下の関係者にも通報した。

★文部科学省

2021年2月9日、文部科学省の「研究に関する不正の告発窓口」である科学技術・学術政策局人材政策課研究公正推進室に、告発をいたしました。

現時点で当方への問い合せや回答はなし。

★北海道科学大学

北海道科学大学は野呂瀬崇彦(のろせ たかひこ)が所属する大学である。

2020年秋、文部科学省・研究公正推進室から現所属の北海道科学大学に告発するよう案内がありました。調査とは異なるという疑念が少しありましたので、その旨、伝えると、ルールだからとのことでした。それで告発することにしました。

2021年2月26日、北海道科学大学・副学長宛に申立てをいたしました。

現時点で当方への問い合せや回答はなし。

●7.【名古屋大学の2重の研究不正】

後藤惠子は、結局、名古屋大学は2重の研究不正をしていると、白楽に訴えてきた。

1) 「盗用」とそれを「隠蔽」する2重の不正。野呂瀬氏の「盗用」、教育発達科学研究科が公正研究委員会を巻き込んだ「隠蔽」。

2) 「隠蔽」は、博士の学位はそのままにし、博士号を授与した博士論文を一旦取り下げ、盗用部分を削除後、修正した博士論文として再登録することを、複数の教員が関与して、総長に提出準備中という行為である。これは、組織ぐるみの「隠蔽」で、身内擁護の不正である。

●8.【白楽の感想】

《1》不可解:その1

2020年8月4日の名古屋大学・公正研究委員会の判定のポイントは以下である(出典:同通知文)。

野呂瀬氏自身が共同研究者として、アイデアの構想、研究成果の発表の提案及び執筆に加わっており、また、共著者の名前が列記されているものの、研究分担の記載はなく、客観的には共著者全員がオーサーシップの条件を満たしていると考えられる。したがって、「『他人の』研究内容又は文章を・・・流用」したものではなく、取扱い規定にいう「盗用」には該当せず、「不正行為」の存在は認められない。

イエイエ、日本の著作権法でも世界の研究論文の通念でも、共著であろうがなかろうが、後藤惠子が書いた文章は、書いた時点で、どこの承認を得ずとも、自動的に後藤惠子に著作権がある。

野呂瀬崇彦がその部分を加筆修正していないので、共著論文でも分離利用が可能な文章である。野呂瀬崇彦にとっては「他人の書いた文章」で、著作権はない。

どうして、名古屋大学は、日本及び世界の大半とは異なる定義(or解釈)で「盗用」を定義(or解釈)するのか、不可解である。

名古屋大学の教員・学生がその定義(or解釈)に素直に従って、共著論文中の「他人の書いた文章」を「自分の文章」として扱うと、名古屋大学の管轄外では盗用と判定されると思う。研究者として、とんでもない不幸に見舞われる可能性が高い、と危惧する。

名古屋大学・教育発達科学研究科でそういう教育を受けた大学院生が、博士号取得後、教育者として日本の各地で教育・研究すると思う。その時、同じ盗用の定義(or解釈)で教育・研究するのは、「マズイ」し「危険」という危惧が白楽の中で増幅している。

《2》不可解:その2 

今まで、白楽は世界(除・日本)の約700件のネカト事件を分析してきた。日本の数百件のネカト事件も把握している。

盗用事件の中で逐語盗用は最も件数が多い。そして、今回のように、逐語盗用した学術研究者が盗用を否定し続けるのは、非常に珍しい。世界で最初のケースだと白楽は思う(多分)。

というのは、盗用比較図で盗用文と被盗用文を比べれば、中高生だって、同じ文章だと分かるからだ。

論文の画像データに「間違い」はある。数値データにも「間違い」はある。生データでは「23」だったのが論文で「123」となっていても、その原因が「100の位に1が“たまたま”入ってしまった」のはあり得る。数値や文章の「間違い」はランダムまたは規則的に起こる。

しかし、逐語盗用に「間違い」はない。意図せずに盗用することはできない。例えは不適切かもしれないが、お店の商品を意図せずに盗むことはできない。「魔がさして」という意味の「間違い」はあるが、盗む行為は能動的行為だからである。

そして、逐語盗用の文章に対して「盗用がなかった」という調査委員会の判定は、世界広しと言えども、聞いたことがない。納得できないような軽い処分を科した(あるいは実質的には無処分の)事件はある。それでも、「盗用があった」ことは認めている。逐語盗用は誰が見ても「盗用が明白」だからだ。

この実情を知る白楽は、2020年8月4日の名古屋大学・公正研究委員会の結論に、非常に驚いた。

《3》不可解:その3 

本文で以下のことを書いた。

後藤惠子は資料を提供する用意があり、調査に協力すると伝えたが、名古屋大学・公正研究委員会は、後藤惠子に資料の提出を一切求めなかった。疑惑状況の聞き取り調査も一切なかった。

犯罪に例えるのは妥当ではないかもしれないが、理解しやすいので、例える。

この場合、盗用した人は加害者、被盗用者は被害者となる。そして、例えなので調査を捜査と言い換える。

今回、名古屋大学・公正研究委員会は、加害者の主張だけで、捜査し、被害者が「資料を提供する用意があり、調査(捜査)に協力すると伝えた」のに、被害者の主張を一切聞かないで、「不正なし」と結論した。

一般的に考えて、犯罪捜査(例えです)で、加害者の主張だけで捜査を終了し、無罪と結論するなんて、あり得るだろうか?

例えは不適切かもしれないが、大学生がお店のゲームソフトを盗んだとしよう。店主は親を呼び出し、注意した。すると、大学生は「盗んでいない」と親に主張した。被害者である店主は大学生がお店のゲームソフトを盗んだビデオ動画を証拠として持っている。

しかし、親は息子(大学生)の主張だけ聞いて、被害者である店主の話もビデオ動画の証拠も見ないで、息子(大学生)は盗んでいないと結論した。

被害者である後藤惠子が、被害者の主張を聞かないのは不当だと名古屋大学・公正研究委員会に訴えても、「本学での調査が終了している」と被害者の主張を聞くことを拒否している。

白楽は、2020年8月4日の公正研究委員会の判定「不正なし」を不可解に思っていたが、2021年2月26日の公正研究委員会の調査拒否で、白楽の中で不可解さが大きく増幅した。「公正」「誠実」に調査する気がないと、感じた。

名古屋大学の教授陣や公正研究委員会の委員が「公正」「誠実」に対処しないのは、どういう意図なんだろうかと、白楽は、素直に理解できなかった。

そして、この1か月半(2021年2~3月11日)、教育発達科学研究科長の2021年2月1日のメールの盗用部分を削除した論文に置き換える行動と合わせて、愚鈍な白楽は、名古屋大学の教授陣や公正研究委員会の委員が隠蔽工作をしているのだと、ようやく理解でき、腑に落ちたのである。

例えは不適切かもしれないが、上記のゲームソフトを盗んだ大学生の例で言えば、店主は理不尽な成り行きに憤慨し、窃盗事件として、警察に訴えた。

すると、大学生の親はたまたま警察官だった。そして、親と同じ所属の警察署(例では、公正研究委員会)が事件の管轄だった。その捜査で、加害者の大学生とその親(仲間の警察官)の主張だけ聞いて、窃盗はなかったと結論した。しかし、盗んだゲームソフトはどうする? ゲームソフトをお店のあった場所に戻して、盗みはなかったことにしよう、と警察署と親(警察官)が結託している、ように見えてしまった。

また、隠蔽工作の一環なのか、白楽の思い違いなのか、記事の予告をしてから、「名古屋大学・博士論文の盗用疑惑事件」関連サイトやリンクが削除されている。また、白楽ブログがサイバー攻撃を受け始めた。多分、白楽の思い違いだろう。

《4》「あった」のを「なかった」ことにする? 

3章で述べたが、名古屋大学・教育発達科学研究科は博士論文が盗用であることを認識したうえで、盗用部分を削除した論文に置き換える隠蔽工作をしている、という後藤惠子の指摘が真実という印象を受けた。

名古屋大学・教育発達科学研究科は「執筆者への指導方法に問題があった」・「論文審査の過程に問題があった」ことを認めている。その始末として、この2つの問題は「なかった」ことにしようという、隠蔽工作をしているように思える。

「なかったことにしたい」としても、しかし、「盗用があった」のだから、「なかったこと」にできない。「あったこと」を「なかったこと」にできないのは、1000%の真実だ。誠実に対処すべきだと思う。

それをせずに、「盗用があった」事実を隠蔽するという1つの「判断の間違い」が、次の「判断の間違い」を呼び、さらには、周囲を巻き込み、今や、「判断の間違い」が雪だるま式に巨大な「間違い」(不正)になって、現在進行中だという印象を受けた。

小さな「判断の間違い」を大きな「判断の間違い」にし、結果として大勢が死亡した映画「八甲田山 」を、白楽は思い出してしまった。→ 八甲田雪中行軍遭難事件 – Wikipedia

《5》過去は消せない 

ハッキリしていることは、「盗んだものを返しても」=「盗んでなかった」ことにはならない。

つまり、「盗用」部分を削除した博士論文に変えても、「盗用がなかった」ことにはならない。

名古屋大学は、研究公正とは真逆の行動をしていると思える。引き返すなら、今だと思うのだが、どうなんでしょうか? 

白楽の誤解だといいのですが。

《6》ネカト調査の妥当性をチェックする仕組み 

世界の約700件のネカト事件を分析した経験から言うと、今回の名古屋大学・公正研究委員会の判定だけでなく、日本のあちこち、そして、世界のあちこちのネカト調査委員会の判定に問題が指摘されている。

人間の調査・判定だから、「間違い」もあれば「調査不足」もある。そして、残念ながら「自組織をかばう」「利害関係」「偏向」「能力不足」「保身」「隠蔽」「証拠隠滅」「恫喝」など、あってはならない動機・原因・行動で「おかしな」判定をしていると思われるケースは珍しくない。

日本を含めほとんどの国では、当該大学が行なうネカト調査が最終結論とされている。

そして、その妥当性をチェックする仕組みがない。

大学のネカト調査委員会の判定が「おかしな」判定をしても、それが最終結論になってしまう。

だからこそ、大学のネカト調査委員会は十分な調査を行ない、高い倫理基準・公正基準で判定して欲しい。

ネカト調査委員会は最後の「審判」である。誠実に対応し、公正に判定することで、権威を保ってもらいたい。

名古屋大学・公正研究委員会の委員についてはわからないが、しかし、一般的に言えば、ネカト調査委員会の多くの委員は、研究倫理の知識や判断に関しては素人である。

弁護士が加わった場合でも、弁護士は法律の専門家で、研究倫理の知識や判断に関して十分な知識や判断力を持っていない場合がある。

ところが、現行では、ネカト調査委員会の判定に「物言い(ものいい)」を付ける方策がない。

相撲の行事が、「間違えた?」判定をした時、審判委員や控えの力士が「物言い(ものいい)」を付ける仕組みがある。最も厳正と言える裁判でも、地裁の判決を不服と高裁、高裁の判決を不服と最高裁、と3段階がある。そして、相撲も裁判も透明性が高く、国民は判定した人やその過程をつぶさに知ることができる。

一方、調査報告書が公表されれば、それなりに透明性があると言えるが、ネカト調査委員会の調査過程を国民は知ることがほぼできないことが多い。一般論を言えば、透明性は世界各国でバラバラで、日本国内でもバラバラである。比較すれば、本事件では透明性が低い部類である。

透明性が低いと真実を知ることが難しい。現行ではネカト調査委員会の判定に「物言い(ものいい)」を付けるシステムはない。何とか改善してもらえないかと、何年も思っているし、白楽ブログでもそう書いてきた。

今回、被盗用者の後藤惠子が「資料の提出を一切求められなかった。疑惑状況の聞き取り調査も一切なかった」と述べているので、名古屋大学・公正研究委員会は、少なくとも、十分な調査を行なっていない。この点だけでも、「間違えた」判定をしていると思う。

《7》関係者は声をあげて! 

ネカト事件を調べていると、研究「公正」や研究「倫理」の問題なのに、「公正」や「倫理」が侵害されているケースがそこそこある。

今回の事件では、被害者が疑念を発し続けている。それなのに、名古屋大学がその疑念に誠実に対応しない。

名古屋大学は、その教育目標として「勇気ある知識人」の育成を掲げていて、教育発達科学研究科長は、「勇気ある探究者」を育成することによって社会に貢献したい と、名古屋大学・教育発達科学研究科長は述べておられる(  出典:研究科長からのメッセージ : 名古屋大学大学院教育発達科学研究科・教育学部

名古屋大学・教育発達科学研究科の教員の皆様、「勇気ある探究者」を実践し、名古屋大学の教員の皆様、是非、是非、「勇気ある知識人」として、声をあげて、事態を正常化していただきたい。

教育発達科学研究科の「あってはならなかった」黒歴史にしないために、名古屋大学の「あってはならなかった」黒歴史にしないために、是非、立ち上がっていただきたい。

《8》証拠 

後藤惠子は以下のように書いている。

当然、自ら博士論文を取り下げると期待し、彼らの対応をしばらく待ちました。

後藤惠子が「論文を取り下げると期待」したのは、事件前は友好的な研究者仲間だったので、誠実に対応してくれると予想した。それに、万一、不誠実な対応をされても、盗用と判断できる証拠を持っているからだと、白楽は思っている。

不適切かもしれない例えで恐縮だが、大学生がお店のゲームソフトを盗んだビデオ動画、のような証拠だろう(白楽の憶測)。

今回の記事で事態が好転しないなら、次の「記事②」では、そのあたりを公開できるかもしれない(白楽の憶測)。

《9》メディア記者の皆さん 

テレビ、新聞、週刊誌、月刊誌、各種メディアにそこそこ通報しました。記者の皆さん、是非、番組や記事で取りあげてください。

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名古屋大学・博士論文の盗用疑惑事件シリーズ
 ① 驚愕の判定(2020年8月17日掲載、2021年5月3日改訂) ←<新展開>
 ② 隠蔽工作?(2021年3月12日掲載)
 ③ 疑惑の証明(2021年3月26日掲載) 
 ④ その後(予定)

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2021年3月26日 6:19 PM

国立大学で、しかも教育学部で、何を教えているのか。
隠蔽、盗用、改ざん⁉︎  
正しいこと、正しくないことを教えるのが教育と思うが。
内部からの通報もないのか、6名のノーベル賞が泣く。